(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記吸引ステップにおいて前記吸引手段による前記ノズルからの液体の吸引が終了した後、前記液滴吐出ヘッドによる液滴の吐出が開始されるまでの間に、前記ノズル面における液体の圧力を前記指定圧力に戻す圧力復帰ステップを更に含む、請求項1〜3の何れか1項に記載のノズル吸引方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、液滴吐出装置では、液滴の吐出を良好にすべく、ノズル内のインクを所定のメニスカスに形成する必要がある。メニスカスの形成は、ノズル径や使用する液体の種類など、様々なパラメータによって変化するため、液滴吐出ヘッド毎に、ノズル面におけるインクの圧力(指定圧力)が指定されている。なお、この指定圧力は負圧となる。そこで、液滴吐出ヘッドに液体を供給するタンクをノズル面よりも下方に配置したり、このタンクの上部空間を負圧にしたりすることで、ノズル面におけるインクの圧力を指定圧力に保持し、メニスカスの形成を実現している。
【0005】
しかしながら、ノズル面におけるインクの圧力を指定圧力に保持すると、インクをノズル内に引き込む力が発生するため、ノズルからインクを吸引するためには、強い吸引力を発生させる必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、小さい吸引力でノズルから液体を吸引することができる液体吐出装置
のノズル吸引方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る液滴吐出装置のノズル吸引方法は、液体を貯留する液体貯留容器と、前記液体貯留容器から供給された前記液体を、複数のノズルが形成されたノズル面から液滴として吐出する液滴吐出ヘッドと、前記ノズル面における前記液体の圧力を、前記ノズルに供給された前記液体がメニスカスを形成する指定圧力に保持する
ため、印刷時には前記液体貯留容器の上部空間の制御圧を前記液体の水頭圧を相殺する負圧と前記指定圧力を加算した標準制御設定圧にする調圧手段と、前記ノズル面および前記ノズルから前記液体を吸引する吸引手段と、を有する液滴吐出装置のノズル吸引方法であって、前記液体貯留容器は、前記液滴吐出ヘッドが搭載されるキャリッジに搭載されると共に、該液滴吐出ヘッドに前記液体の水頭圧が作用するように該液滴吐出ヘッドの上方に配置されており、前記吸引手段により前記ノズルから前記液体を吸引する際、前記調圧手段が前記液体貯留容器の上部空間の制御圧を
前記標準制御設定圧よりも高くすることにより、前記ノズル面における前記液体の圧力を前記指定圧力よりも高く、前記ノズル面に前記液体が滲まない圧力以下
であって、略大気圧になる圧力に設定する圧力設定ステップと、前記吸引手段により、前記液滴吐出ヘッドに形成された前記ノズルから前記液体を吸引する吸引ステップと、を含む。
【0008】
これによれば、ノズルから液体を吸引する際に、ノズル面における液体の圧力を指定圧力よりも高くすることで、ノズル内に液体を引き込む力が弱くなるため、ノズルから液体を吸引する吸引力を小さくすることができる。
【0009】
上記の吸引手段は、液滴吐出ヘッドに形成されたノズルのうち一部のノズルから液体を吸引することが好ましい。このように、一部のノズルから液体を吸引することで、小さい力で大きな吸引力を発生させることができる。このため、ノズルから液体を効果的に吸引することができるとともに、液体の吸引力が液滴吐出ヘッド内の液体の流路を通じて他のノズルに影響するのを抑制することができる。
【0010】
また、液滴吐出ヘッドに形成されたノズルのうち吐出不良の可能性がある不良ノズルを検出する不良ノズル検出手段を更に有し、吸引手段は、不良ノズル検出手段により検出された不良ノズルを含む一部のノズルから液体を吸引することが好ましい。このように、不良ノズルを含む一部のノズルから液体を吸引することで、液体の無駄な吸引を低減することができる。これにより、廃棄される液体量を大幅に低減することができるとともに、液体の吸引に要する一連の作業時間を短縮することができる。
【0011】
そして、吸引手段によりノズルから液体を吸引する際、ノズル面における液体の圧力を、ノズル面に液体が滲まない圧力以下とすることが好ましい。このように、ノズルから液体を吸引する際に、ノズル面における液体の圧力を、ノズル面に液体が滲まない圧力以下とすることで、液体の吸引終了後に、ノズル面が液体で汚れるのを防止することができるとともに、液滴が漏れ落ちるのを防止することができる。
【0012】
この場合、吸引手段によりノズルから液体を吸引する際、ノズル面における液体の圧力を略大気圧とすることが好ましい。このように、ノズルから液体を吸引する際に、ノズル面における液体の圧力を略大気圧とすることで、液体の吸引終了後に、ノズル面が液体で汚れるのを確実に防止することができるとともに、液滴が漏れ落ちるのを確実に防止することができる。
【0013】
そして、吸引手段によるノズルからの液体の吸引が終了した後、液滴吐出ヘッドによる液滴の吐出が開始されるまでの間に、ノズル面における液体の圧力を指定圧力に戻すことが好ましい。このように、吸引手段によるノズルからの液体の吸引が終了してから液滴吐出ヘッドによる液滴の吐出が開始されるまでの間に、ノズル面における液体の圧力を指定圧力に戻すことで、ノズル内の液体がメニスカスに形成された状態で液滴の吐出を行うことができる。
【0014】
上記の液体貯留容器は、液滴吐出ヘッドの上方に配置されており、調圧手段は、液体貯留容器の上部空間の圧力を調整することで、ノズル面における液体の圧力を調整することが好ましい。このように、液体貯留容器を液滴吐出ヘッドの上方に配置すると、液滴吐出ヘッドのノズル面に液体の水頭圧が作用するが、液体貯留容器の上部空間の圧力を調整することで、簡易に、ノズル面における液体の圧力を調整することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、小さい吸引力でノズルからインクを吸引することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係る液滴吐出装置及びノズル吸引方法の好適な実施形態について詳細に説明する。本実施形態は、本発明に係る液滴吐出装置及びノズル吸引方法を、液滴吐出装置であるインクジェットプリンタに適用したものである。なお、同一又は相当部分には同一符号を付すこととする。
【0020】
図1は、実施形態に係るインクジェットプリンタの概略構成図である。
図1に示すように、インクジェットプリンタ1は、インクジェットヘッド2と、タンク3と、調圧ポンプ4と、掃引ユニット6と、ノズルチェック装置7と、制御部10と、を備えている。
【0021】
インクジェットヘッド2は、タンク3から供給されたインクを液滴状のインク液滴として吐出する液滴吐出ヘッドある。このインクジェットヘッド2は、その下面に、多数のノズル2aが形成されたノズル面2bが配置されている。そして、タンク3からインクジェットヘッド2に供給されたインクは、インクジェットヘッド2内の共通インク流路(不図示)を通って各ノズル2aに分配供給され、圧電素子などの駆動制御によりノズル面2bからインク液滴として吐出される。
【0022】
このインクジェットヘッド2には、各ノズル2aにおいて所定のメニスカスを形成するために、ノズル面2bにおけるインクの圧力(指定圧力)が指定されている。指定圧力は、負圧となっており、ノズル径や使用するインクの種類など、様々パラメータに応じて適宜設定される。このため、ノズル面2bにおけるインクの圧力を指定圧力に保持することで、各ノズル2aに供給されたインクが所定のメニスカスに形成される。なお、一般に、指定圧力は所定の幅で指定されている。このため、指定圧力が所定の幅で指定されている場合に、指定圧力よりも高い圧力とは、指定圧力の範囲において最も高い圧力よりも高い圧力となる。例えば、指定圧力が−1.0kPa±400Paの範囲で指定された場合、指定圧力よりも高い圧力は、−600Pa(−1.0kPa+400Pa)よりも高い圧力となる。但し、本実施形態では、説明の便宜上、指定圧力に幅がなく一定の値であるものとして説明する。
【0023】
また、このインクジェットヘッド2は、図示しないキャリッジにより走査方向において移動可能となっており、インクジェットヘッド2の移動する端部が、インクジェットヘッド2のノズルチェックを行うための第一メンテナンス位置、及び、インクジェットヘッド2をクリーニングするための第二メンテナンス位置となっている。なお、第一メンテナンス位置と第二メンテナンス位置とは、別の位置であっても良く、同じ位置であっても良い。第一メンテナンス位置と第二メンテナンス位置とが同じ位置である場合は、ノズルチェック装置7と掃引ユニット6とを択一的にメンテナンス位置に移動させる。そして、インクジェットヘッド2は、第一メンテナンス位置及び第二メンテナンス位置において上下方向に移動可能となっている。なお、インクジェットヘッド2の上下動は、図示しない駆動装置により、キャリッジに対してインクジェットヘッド2を上下動させることにより実現されるが、キャリッジ自体を上下動させても良い。
【0024】
タンク3は、インクジェットヘッド2に供給するインクを一時的に貯留するものである。このタンク3は、図示しないインクタンクやインクカートリッジなどのインク貯留容器から供給されるインクを貯留するタンクであって、サブタンクや、インクジェットヘッド2に供給するインクの圧力変動を抑制するダイアフラム膜が設けられたダンパなどの中間タンクとして機能する。このタンク3は、オンキャリッジ型を採用している。すなわち、タンク3は、インクジェットヘッド2が搭載されるキャリッジに搭載されて、インクジェットヘッド2の上方に配置されている。そして、タンク3は、インクジェットヘッド2に連通されたチューブを介して、貯留しているインクをインクジェットヘッド2に供給する。このため、インクジェットヘッド2のノズル面2bには、タンク3に貯留されたインクの水頭圧が作用する。
【0025】
調圧ポンプ4は、タンク3における上部空間Aの圧力を調節することで、ノズル面2bにおけるインクの圧力を調節する調圧手段である。調圧ポンプ4は、定圧ポンプなどで構成されており、タンク3の上部空間Aに連通されている。このため、調圧ポンプ4は、制御部10による駆動制御により、上部空間Aの圧力を調節することが可能となっている。
【0026】
ここで、
図2を参照して、調圧ポンプ4による上部空間Aの制御圧Pcについて説明する。
図2は、調圧ポンプによる上部空間の制御圧を説明するための模式図である。
図2に示すように、ノズル面2bには、ノズル面2bからタンク3の液面に至るインクの水頭圧(正圧)が作用する。このため、インクの水頭圧(正圧)の正負を逆にした圧力(負圧)を、調圧ポンプ4による上部空間Aの制御圧Pc(負圧)とすることで、ノズル面2bに作用するインクの水頭圧が上部空間Aの負圧により相殺され、ノズル面2bにおけるインクの圧力が大気圧となる。ここで、大気圧とは、ゲージ圧が0Pa(gauge)である状態をいう。そこで、インクの水頭圧を相殺する圧力(負圧)とインクジェットヘッド2の指定圧力(負圧)とを加算した標準制御設定圧(負圧)を、調圧ポンプ4による上部空間Aの制御圧Pc(負圧)とすることで、ノズル面2bにおけるインクの圧力が指定圧力(負圧)となる。例えば、インクの水頭圧が1kPa、インクジェットヘッド2の指定圧力が−300Paであった場合を考える。この場合、インクの水頭圧を相殺する圧力は、−1kPaとなる。このため、上部空間Aの制御圧Pcを、指定圧力(−300Pa)にインクの水頭圧を相殺する圧力(−1kPa)を加えた−1.3kPaに設定することで、ノズル面2bにおけるインクの圧力を、指定圧力である−300Paにすることができる。
【0027】
なお、インクジェットヘッド2内のインク流路又はインクジェットヘッド2の近傍のインク流路に圧力計(不図示)を取り付けておき、この圧力計の測定結果をフィードバックすることにより、ノズル面2bにおけるインクの圧力を確認することができる。
【0028】
掃引ユニット6は、インクジェットヘッド2に形成されたノズル2aのうち一部のノズル2aからインクを吸引する吸引手段である。このため、掃引ユニット6は、クリーニングノズル6aと、クリーニングノズル6aに吸引力を発生させる吸引ポンプ6bと、クリーニングノズル6aから吸引したインクを貯留する廃液タンク6cと、を備えている。
【0029】
クリーニングノズル6aは、第二メンテナンス位置に移動したインクジェットヘッド2の下方に配置されており、その上面に、ノズル面2bに対向配置されて吸引力を発生する吸引面6dが形成されている(
図3参照)。吸引面6dは、ノズル面2bよりも小さい大きさ(面積)であって、1又は複数のノズル2aのみを覆う大きさ(面積)に形成されている。このため、第二メンテナンス位置に移動したインクジェットヘッド2を下方に移動させてノズル面2bと吸引面6dとを近接させると、ノズル面2bの一部のみが吸引面6dにより覆われる。このとき、吸引面6dにより覆われるノズル2aは、インクジェットヘッド2に形成されたノズル2aのうち、一部のノズル2aのみとなる。一部のノズル2aとは、1のノズル2aの場合だけでなく、2以上の複数のノズル2aの場合もある。
【0030】
この吸引面6dには、吸引ポンプ6bに連結される吸引口6eが形成されている。このため、吸引ポンプ6bを吸引駆動して吸引口6eに吸引力を発生させることで、吸引面6dに覆われるノズル面2bの一部のみから、ノズル面2bに付着したインクを吸引することが可能となっており、また、吸引面6dに覆われる1又は複数のノズル2aのみから、ノズル2a内のインクを吸引することが可能となっている。
【0031】
また、クリーニングノズル6aは、第二メンテナンス位置において下降したインクジェットヘッド2のノズル面2bに沿って移動可能に保持されている。このため、クリーニングノズル6aをノズル面2bに沿って移動させることで、吸引面6dがノズル面2bに沿って移動し、ノズル面2bの任意の位置に付着したインクを吸引することが可能となり、また、任意のノズル2aからインクを吸引することが可能となる。
【0032】
なお、吸引面6dは、1つのノズル2aのみを覆う大きさに形成することが好ましいが、ノズル面2bに形成される全てのノズル2aのうち、1/4程度の数のノズル2aを覆う大きさであれば、ノズル面2bに付着したインクの吸引や、ノズル2a内からのインクの吸引を効果的に行うことができる。
【0033】
図3に、掃引ユニット6とインクジェットヘッド2との関係を示す。
図3は、掃引ユニットとインクジェットヘッドの関係図であり、(a)は、底面図、(b)は、(a)のb−b線断面図である。
図3に示すように、実際のインクジェットヘッド2では、ノズル面2bが保持ブロック2cにより下方から保持されている。この保持ブロック2cは、上方に窪んだ凹状に形成されており、この窪みにノズル面2bが配置されている。このため、インクジェットヘッド2とクリーニングノズル6aとを当接させると、ノズル面2b自体は吸引面6dに当接されることなく、ノズル面2bと吸引面6dとの間に空間Bが生じる。なお、ノズル面2bと吸引面6dとのギャップの最小値は、保持ブロック2cの窪みの深さとなる。
【0034】
ここで、吸引口6eに吸引力を発生させると、空間Bが負圧になるため、周囲の空気が空間Bに流れ込んで吸引口6eに吸い込まれる気流が発生する。この気流により、ノズル面2bに付着したインクが吸引される。一方、空間Bを流れる空気と吸引面6d及びノズル面2bとの摩擦により圧損が生じるため、周囲から空気を吸引口6eに吸引する力と、この空間Bに発生する負圧との間に差分が生じる。この差分の負圧により、ノズル2a内からインクが吸引される。このため、吸引口6eに発生させる吸引力を大きくして圧損を大きくすることで、ノズル面2bに付着したインクの吸引だけでなくノズル2a内からのインクの吸引も行うことができ、反対に、吸引口6eに発生させる吸引力を小さくして圧損を小さくすることで、ノズル2a内からのインクの吸引を抑え、主にノズル面2bに付着したインクの吸引を行うことができる。
【0035】
そこで、本実施形態では、吸引口6eに発生させる吸引力のうち、ノズル面2bに付着したインクの吸引だけでなくノズル2a内からのインクの吸引も行うことができる大きな吸引力を第一吸引力P1とし、ノズル2a内からのインクの吸引を抑え、主にノズル面2bに付着したインクの吸引を行うことができる小さな吸引力を第二吸引力P2とする。第一吸引力P1及び第二吸引力P2は、ノズル面2bと吸引面6dとのギャップ、吸引面6dの面積、ノズル2aの径、吸引面6dに覆われるノズル2aの数、などに応じて適宜設定される。なお、第一吸引力P1と第二吸引力P2との関係は、P1>P2となっている。
【0036】
ノズルチェック装置7は、吐出不良の可能性がある不良ノズルを検出する不良ノズル検出手段である。ここで、吐出不良の可能性がある不良ノズルとは、例えば、ノズル抜けの発生などによりインクが充填されていないノズルや、異物が詰まっているノズルなどが挙げられる。このノズルチェック装置7は、例えば、第一メンテナンス位置に移動したインクジェットヘッド2の下方に配置されており、第一メンテナンス位置に移動したインクジェットヘッド2を下方に移動させることで、吸引が必要な(吐出不良の可能性がある)ノズル2aを検出することができる。
【0037】
不良ノズルの検出は、様々な手法により行うことができ、例えば、ノズル2aを撮像する手法や、ノズルチェックパターンを印刷させる手法や、直接インク液滴の吐出有無を検出する手法などにより行うことができる。ノズル2aを撮像する手法は、例えば、ノズル面2b側から各ノズル2aを撮像し、各ノズル2aの撮像画像をパターンマッチングすることで、不良ノズルを検出するものである。ノズルチェックパターンを印刷させる手法は、例えば、所定のノズルチェックパターンを印刷し、このノズルチェックパターンの印刷状態を分析することで、不良ノズルを検出するものである。直接インク液滴の吐出有無を検出する手法は、例えば、インク液滴の着弾を検出するセンサを設け、各ノズル2aから順次インク液滴を吐出させることで、不良ノズルを検出するものである。
【0038】
制御部10は、インクジェットヘッド2、調圧ポンプ4、掃引ユニット6及びノズルチェック装置7などと電気的に接続されており、インクジェットプリンタ1の印刷処理やノズルチェック装置7の検出結果に基づいたインクジェットヘッド2のクリーニング処理などを行うものである。なお、制御部10は、例えば、CPU、ROM、RAMを含むコンピュータを主体として構成されている。そして、後述する制御部10の各制御は、CPUやRAM上に所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませ、CPUの制御のもとで動作させることで実現される。
【0039】
次に、
図4を参照して、インクジェットプリンタ1の動作について説明する。
図4は、インクジェットプリンタの動作を示したフローチャートである。なお、以下に説明するインクジェットプリンタ1の処理動作は、制御部10の制御により行われる。すなわち、制御部10において、CPUなどで構成される処理部が、ROMなどの記憶装置に記録されたプログラムに従い、各機能を統括管理することで、以下の処理が行われる。
【0040】
図4に示すように、制御部10は、まず初期設定として、ノズル面2bにおけるインクの圧力を指定圧力に設定する(ステップS1)。すなわち、制御部10は、調圧ポンプ4の駆動制御を行い、上部空間Aの制御圧Pcを標準制御設定圧に保持する。これにより、ノズル面2bにおけるインクの圧力が指定圧力に保持され、各ノズルにおいてメニスカスが形成される。このとき、制御部10は、インクジェットヘッド2内のインク流路又はインクジェットヘッド2の近傍のインク流路に取り付けられた圧力計(不図示)の測定圧力をフィードバックすることにより、ノズル面2bにおけるインクの圧力が指定圧力になっているか否かを判断することが好ましい。
【0041】
なお、ステップS1により、ノズル面2bにおけるインクの圧力が指定圧力に保持された後、印刷動作などの様々な処理が行われる。
【0042】
次に、制御部10は、インクジェットヘッド2のクリーニングを行うか否かを判断する(ステップS2)。なお、ステップS2では、操作者による操作入力の有無や、予め設定されたシーケンスなどに基づいて、インクジェットヘッド2のクリーニングを行うか否かを判断する。
【0043】
そして、インクジェットヘッド2のクリーニングを行うと判断するまでは(ステップS2:NO)、制御部10は、ノズル面2bにおけるインクの圧力を指定圧力に保持しておく。
【0044】
一方、インクジェットヘッド2のクリーニングを行うと判断すると(ステップS2:YES)、制御部10は、以下に説明するクリーニングを行うために、キャリッジの駆動制御を行い、インクジェットヘッド2を第一メンテナンス位置に移動させる(ステップS3)。
【0045】
次に、制御部10は、不良ノズルの検出を行う(ステップS4)。すなわち、制御部10は、インクジェットヘッド2の駆動制御を行い、インクジェットヘッド2を下降させる。そして、ノズルチェック装置7により、ノズル2aを撮像する手法や、ノズルチェックパターンを印刷させる手法や、直接インク液滴の吐出有無を検出する手法などを用いて、ノズル面2bに形成されたノズル2aのうち、吐出不良の可能性がある不良ノズルを検出する。
【0046】
次に、制御部10は、ノズル面2bにおけるインクの圧力を上げ、指定圧力より高い圧力に設定する(ステップS5)。すなわち、制御部10は、調圧ポンプ4の駆動制御を行い、ノズル面2bにおけるインクの圧力が指定圧力よりも高くなるように、上部空間Aの制御圧Pcを標準制御設定圧よりも高くする。このとき、上部空間Aの制御圧Pcは、ノズル面2bにインクが滲まない程度の圧力以下とする。この範囲の中でも、特に、ノズル面2bにおけるインクの圧力が略大気圧になる圧力とすることが好ましい。但し、後述するように、後段のステップS8でノズル面2bをクリーニングするため、インクの経済性が問題とならなければ、ステップS5における制御圧Pcの最大値は特に制限されない。
【0047】
ここで、ノズル面2bにインクが滲まない状態とは、ノズル2aに供給されたインクが、ノズル2a内に納まっている状態のほか、ノズル2aから飛び出しているものの、インクの表面張力によりノズル2aから溢れ出していない状態をいう。一方、ノズル面2bにインクが滲む状態とは、インクの表面張力の限界を超えて、インクがノズル2aから溢れ出して広がる状態をいう。なお、上部空間Aの制御圧Pcの最大値は、使用するインクの種類やノズル径などによって変わり、粘度の極端に高いインクを使用する場合などは、ノズル面2bにおけるインクの圧力が100kPa程度になる圧力とする場合も考えられる。また、略大気圧とは、大気圧を中心とした約±300Paの範囲内の圧力をいう。
【0048】
次に、制御部10は、キャリッジの駆動制御を行い、インクジェットヘッド2を第二メンテナンス位置に移動させる(ステップS6)。
【0049】
次に、制御部10は、第一吸引力P1で不良ノズルからインクを吸引する(ステップS7)。すなわち、制御部10は、インクジェットヘッド2の駆動制御を行い、インクジェットヘッド2を下降させて、ノズル面2bと吸引面6dとを所定のギャップまで近接させる。なお、クリーニングノズル6aを上方に移動させることにより、ノズル面2bと吸引面6dとを近接させても良い。そして、制御部10は、クリーニングノズル6aの駆動制御を行い、クリーニングノズル6aを不良ノズルの直下に移動させ、吸引ポンプ6bの駆動制御を行い、吸引口6eに第一吸引力P1を発生させる。すると、ノズル面2bと吸引面6dとの間の空間が負圧状態となり、ノズル面2bの吸引面6dに覆われた部分に付着したインクが吸引口6eに吸引されるとともに、不良ノズル内からインクや異物などが吸引口6eに吸引される。これにより、インクが充填されていなかったノズル2aにはインクが充填され、異物が詰まっていたノズル2aからは異物が排出される。なお、ノズル面2b及び不良ノズルから吸引されたインクや凝集物などは、クリーニングノズル6aから廃液タンク6cに運ばれて貯留される。
【0050】
次に、制御部10は、第二吸引力P2でノズル面2bを掃引する(ステップS8)。すなわち、制御部10は、吸引ポンプ6bの駆動制御を行い、吸引口6eに第二吸引力P2を発生させる。そして、制御部10は、クリーニングノズル6aの駆動制御を行い、クリーニングノズル6aをノズル面2bに沿って移動させる。すると、ノズル面2bと吸引面6dとの間の空間が負圧状態となり、ノズル面2bにおける吸引面6dに覆われた部分に付着したインクが吸引口6eに吸引される。そして、クリーニングノズル6aの移動に伴い、順次、ノズル面2bにおける吸引面6dに覆われた部分に付着したインクが吸引口6eに吸引され、最終的に、ノズル面2b全面から付着したインクが吸引口6eに吸引される。なお、ノズル面2bから吸引されたインクは、クリーニングノズル6aから廃液タンク6cに運ばれて貯留される。
【0051】
次に、制御部10は、ステップS8の掃引処理が終了した後、印刷が行われる前に、ノズル面2bにおけるインクの圧力を指定圧力に戻す(ステップS9)。すなわち、制御部10は、調圧ポンプ4の駆動制御を行い、ノズル面2bにおけるインクの圧力が指定圧力となるように、上部空間Aの制御圧Pcを標準制御設定圧に設定する。なお、ステップS9の圧力制御は、ステップS8の掃引処理が終了した後、且つ、印刷が行われる前であれば、如何なるタイミングで行っても良い。
【0052】
このように、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1によれば、ノズル2aからインクを吸引する際に、ノズル面2bにおけるインクの圧力を指定圧力よりも高くすることで、ノズル2a内にインクを引き込む力が弱くなるため、ノズル2aからインクを吸引する吸引力を小さくすることができる。
【0053】
そして、掃引ユニット6により、インクジェットヘッド2に形成されたノズル2aのうち一部のノズル2aからインクを吸引することで、小さい力で大きな吸引力を発生させることができる。このため、ノズル2aからインクを効果的に吸引することができるとともに、インクの吸引力がインクジェットヘッド2内の共通インク流路を通じて他のノズル2aに影響するのを抑制することができる。
【0054】
特に、ノズルチェック装置7により検出された不良ノズルが含まれる一部のノズル2aからインクを吸引することで、インクの無駄な吸引を低減することができる。これにより、廃棄されるインク量を大幅に低減することができるとともに、クリーニング時間を短縮することができる。
【0055】
また、クリーニング時の制御圧Pcを、ノズル面2bにインクが滲まない圧力以下とすることで、クリーニング終了後に、ノズル面2bがインクで汚れるのを防止することができるとともに、液滴が漏れ落ちるのを防止することができる。特に、クリーニング時の制御圧Pcを、ノズル面2bにおけるインクの圧力が略大気圧となる圧力とすることで、これらの効果がより顕著となる。
【0056】
そして、印刷が開始される前に、ノズル面2bにおけるインクの圧力を指定圧力に戻すことで、ノズル2a内のインクが所定のメニスカスに形成された状態で印刷を行うことができる。
【0057】
更に、調圧ポンプ4により上部空間Aの圧力制御を行うことで、タンク3の位置に関わらず、ノズル面2bにおけるインクの圧力を調整することができる。
【0058】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態において、ノズル面2bにおけるインクの圧力を上げる処理(ステップS5)を行うタイミングは、不良ノズルの検出(ステップS4)の後であるものとして説明したが、不良ノズルからインクを吸引する吸引処理(ステップS7)より前であれば、如何なるタイミングであっても良い。例えば、ノズル面2bにおけるインクの圧力を上げる処理(ステップS5)を、インクジェットヘッド2を第二メンテナンス位置に移動させる処理(ステップS6)の後に行っても良い。但し、不良ノズル検出(ステップS4)では、不良ノズルの検出精度を高くするためにも、ノズル面2bにおけるインクの圧力を上げる処理(ステップS5)を、不良ノズルの検出(ステップS4)よりも後に行うことが好ましい。
【0059】
また、上記実施形態では、不良ノズルの吸引(ステップS7)として、不良ノズルを含む一部のノズル2aのみを吸引するものとして説明したが、インクジェットヘッド2に形成される全てのノズル2aを吸引するものとしても良い。
【0060】
また、上記実施形態では、インクジェットヘッド2のクリーニングとして、不良ノズルの吸引と、ノズル面2bの掃引とを行うものとして説明したが、不良ノズルの吸引さえ行えば、特にノズル面2bの掃引は行わなくても良く、また、ノズル面2bの掃引の代わりにキャッピングやワイピングなどを行っても良い。
【0061】
また、上記実施形態において、不良ノズルの吸引は、インクジェットヘッド2のクリーニング時に行うものとして説明したが、例えば、タンク3を交換した場合など、インクジェットヘッド2に供給されたインクを各ノズル2aに分配供給する初期設定時に行うものとしても良い。
【0062】
また、上記実施形態において、ノズル面2bのクリーニングは、掃引ユニット6を用いた掃引により実現するものとして説明したが、ノズル面2bからインクを除去することができれば、如何なる手段により実現しても良い。例えば、キャッピングによりノズル面2bに付着したインクを吸引しても良く、ワイピングによりノズル面2bに付着したインクを拭き取っても良い。
【0063】
また、上記実施形態では、オンキャリッジ型のタンク3を採用するインクジェットプリンタ1を用いて説明したが、インクジェットヘッド2に対するタンク3の上下方向の位置を移動させるなど、ノズル面2bにおけるインクの圧力を調整することができれば、タンク3の位置は特に限定されない。
【0064】
また、上記実施形態では、本発明の一例としてインク液滴を吐出するインクジェットプリンタについて説明したが、本発明を、食用オイルや接着剤などの高粘度液体を液滴として吐出する工業用液滴吐出装置などに適用しても良い。