(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の液体吐出ヘッドが走査方向に重なって配置された当該液体吐出ヘッドの液体吐出面に密着して覆うとともに、各液体吐出面のノズルから吸引された液体を回収するキャッピング機構を備えた液体吐出装置のクリーニング装置であって、
前記キャッピング機構は、前記複数の液体吐出ヘッドにそれぞれ対応する複数のキャップ部材を有し、当該複数のキャップ部材を、前記液体吐出ヘッドから退避した退避位置と前記液体吐出ヘッドに対して各々密着するキャップ位置との間を移動させるキャッピング移動機構と、
前記各キャップ部材に設けられ、前記液体吐出ヘッドの走査方向と直交方向に当接可能な当接部と、
前記各キャップ部材を、前記当接部が各液体吐出ヘッドの側壁から離間した離間位置と各液体吐出ヘッドの側壁に付勢状態で当接する当接位置との間を移動させる位置決め移動機構と、を具備し、
前記液体吐出ヘッドの前記キャップ位置への移動に伴って、前記キャッピング移動機構が前記キャッピング機構を前記退避位置から前記キャップ位置へ移動させ、前記位置決め移動機構が前記キャッピング機構を前記離間位置から前記当接位置へ移動させてキャッピングを行うことを特徴とするクリーニング装置。
前記液体吐出ヘッドの前記キャップ位置への移動に応じて当該液体吐出ヘッドを搭載するキャリッジの一部に係止したままスライド可能なスライドフレームがベースフレームに対してスライドかつ昇降可能に支持されており、前記キャッピング機構は前記スライドフレームに対して前記液体吐出ヘッドの走査方向と直交方向にスライド可能に組み付けられている請求項1又は請求項2記載のクリーニング装置。
前記ベースフレームの前記液体吐出ヘッドの走査方向に対する直交方向両側に起立する起立壁には、スリット孔が各々形成されており、前記スライドフレームの両側壁に突設されたガイドピンが前記スリット孔に貫通して前記ベースフレームと係止したまま当該スライドフレームがスライドすることで前記キャップ部材が前記退避位置と前記キャップ位置との間を移動する請求項3記載のクリーニング装置。
前記ベースフレームと前記スライドフレームとの間には、前記キャップ部材が退避位置に留まるように前記スライドフレームを常時付勢する第1付勢手段と、前記キャッピング機構を前記スライドフレームに対してスライド可能に支持するガイド軸の一端が常時押し当てられるガイド壁と、を備え、
前記スライドフレームと前記キャッピング機構との間には、当該キャッピング機構を前記液体吐出ヘッドの走査方向と直交方向外側から側壁へ当接する当接位置へ向かって常時付勢する第2付勢手段と、を備えており、
前記キャップ部材が退避位置にあるとき、前記ガイド壁は前記第2付勢手段の付勢に抗して前記ガイド軸を押し戻して前記キャッピング機構どうしが前記液体吐出ヘッドの走査方向と直交方向外側へ前記側壁より離間した離間位置へ移動するようガイドする請求項4記載のクリーニング装置。
請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載のクリーニング装置を備えて液体吐出ヘッドが待機位置に待機する間前記キャッピング機構のキャップ部材により覆われてクリーニング動作が行われることを特徴とする液体吐出装置。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置の一例であるインクジェット記録装置は、例えば紫外線硬化インク、水性顔料インク、ソルベントインク、昇華インクなどのインク(液体)を吐出する吐出ヘッド(液体吐出ヘッド)と、該吐出ヘッドから媒体(メディア)に吐出されたインクに対して紫外線を照射する紫外線ランプ、ヒーター、乾燥ファンなどの定着部を備えている。吐出ヘッドは、媒体の幅方向に走査されるキャリッジに搭載され、キャリッジを走査しながら吐出ヘッドのノズルから媒体に吐出されたインク滴を定着(硬化或いは乾燥)させて記録を行っている。
【0003】
インクジェット記録装置は、記録待機状態が長く続いたり、長時間使用されない状態が続くと、ノズル内のインクが乾燥したり粘度が増加したりして、ノズルが目詰まりし吐出不良を発生するおそれがある。このため、キャリッジが待機位置に戻ると、吐出ヘッドをキャッピング部材で覆ってノズル内のインクの乾燥を防ぎ、記録に先立って、ノズル内の粘度が増化したインクを吸引除去するクリーニングを行なうクリーニング装置が設けられている。
【0004】
例えばキャリッジがキャッピング装置の直上を通過した際に、キャリッジに設けられた係合体がスライダーの係合体と当接することで、スライダーはスプリングの引張力に抗しながらアームを介して立ち上がりキャップ受け部材に搭載されたキャップ部材がキャリッジに配置された記録ヘッドを封止するようになっている(特許文献1参照)。
【0005】
或いは、主駆動モータと噛み合う伝達ギヤの回転軸に主駆動切替アームが回動可能に連繋し、主駆動切替アームには主駆動遊星ギヤが回転可能に軸支されている。主駆動切替アームが上方にあるとき、主駆動遊星ギヤがピニオンと噛み合うラックを介してキャリッジを往復動させる。また、主駆動切替アームが下方にあるとき、主駆動遊星ギヤがキャップギヤと噛み合い、伝達ギヤを介してカム回転ギヤに伝達され、偏心カムを回転させて当該偏心カムに当接する支持棒を介してキャップ部材を上下動させることで駆動源を共通化したクリーニング装置も提案されている(特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したキャリッジに搭載された吐出ヘッドは、プリント幅をかせぐため複数の吐出ヘッドが走査方向と直交方向に重なってスタガ配置された吐出ヘッドが用いられる場合がある。
この場合、特許文献1のように単一の吐出ヘッドのクリーニング装置を想定した構成をそのまま適用することができない。また、特許文献2のようにモータ駆動で駆動伝達されて昇降するキャッピング部材もそのまま適用することができない。
なぜなら、吐出ヘッド組み付け時やヘッド交換時に、ヘッドの傾きや重なり量の調整を行なわれることから、キャップ位置が微妙に変化する場合がある。この場合、キャッピング部材に吐出ヘッドの位置調整に合わせて微調整する機能がないと、キャッピング部材を吐出ヘッドの吐出面に密着させて覆うことができないからである。
【0008】
また、特許文献2のように、駆動源を共通化した場合には、駆動伝達機構がおおがかりになり、装置が大型化するうえに、駆動切り替えをおこなってからキャップの昇降動作に時間がかかる。
【0009】
さらには、キャッッピング部材に吐出ヘッドと位置合わせするための当接部材(爪)を突設する場合には、キャリッジが待機位置に戻る際に吐出ヘッドと干渉するおそれがあった。
【0010】
本発明の目的は、上記課題を解決し、複数の液体吐出ヘッドの取付け位置の微調整が行なわれてもこれに追従してキャッピング動作を確実かつ迅速に行なうことができ、しかもキャップ位置へ移動する液体吐出ヘッドと干渉することがない信頼性の高いクリーニング装置及びこれを備えて高品位画像を記録することができる液体吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係るクリーニング装置は、以下の構成を備える。
即ち、複数の液体吐出ヘッドが走査方向に重なって配置された当該液体吐出ヘッドの液体吐出面に密着して覆うとともに、各液体吐出面のノズルから吸引された液体を回収するキャッピング機構を備えた液体吐出装置のクリーニング装置であって、前記キャッピング機構は、前記複数の液体吐出ヘッドにそれぞれ対応する複数のキャップ部材を有し、当該複数のキャップ部材を、前記液体吐出ヘッドから退避した退避位置と前記液体吐出ヘッドに対して各々密着するキャップ位置との間を移動させるキャッピング移動機構と、
前記各キャップ部材に設けられ、前記液体吐出ヘッドの走査方向と直交方向に当接可能な当接部と、前記各キャップ部材を
、前記当接部が各液体吐出ヘッドの側壁から離間した離間位置と各液体吐出ヘッドの側壁に付勢状態で当接
する当接位置との間を移動させる位置決め移動機構と、を具備し、前記液体吐出ヘッドの前記キャップ位置への移動に伴って、前記キャッピング移動機構が前記キャッピング機構を前記退避位置から前記キャップ位置へ移動させ、前記位置決め移動機構が前記キャッピング機構を前記離間位置から前記当接位置へ移動させてキャッピングを行うことを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、液体吐出ヘッドのキャップ位置への移動に伴って、キャッピング移動機構がキャッピング機構を退避位置からキャップ位置へ移動させ、かつ位置決め移動機構がキャッピング機構を離間位置から当接位置へ移動させてキャッピングを行うため、複数の液体吐出ヘッドの取付位置が調整されていても、これに追従してキャップ部材を液体吐出面に密着させて確実にキャッピングすることができる。
また、液体吐出ヘッドのキャップ位置への移動に伴ってキャッピング移動機構及び位置決め移動機構が動作するため、格別な駆動源も不要であり、コンパクトで少ない移動量で迅速なキャッピング動作が行なえる。
更には、位置決め移動機構はキャッピング機構を各液体吐出ヘッドの側壁から離間した離間位置から各液体吐出ヘッドの側壁に付勢状態で位置決めされる当接位置へ移動させるため、キャッピング機構がキャップ位置へ移動する液体吐出ヘッドと干渉するおそれはない。
【0013】
また、前記各キャップ部材の前記液体吐出ヘッドの走査方向と直交方向
外側には前記キャップ位置において前記各液体吐出ヘッドの前記側壁に当接可能な当接部が突設されているのが好ましい。
これによれば、キャップ部材がキャップ位置において当接部が液体吐出ヘッドの側壁に当接したままキャッピングされるので、キャッピング機構の姿勢が当接部によって液体吐出ヘッドの位置に倣って補正され液体吐出面を確実にキャッピングすることができる。
【0014】
また、本発明においては、前記液体吐出ヘッドのキャップ位置への移動に応じて当該液体吐出ヘッドを搭載するキャリッジの一部に係止したままスライド可能なスライドフレームがベースフレームに対してスライドかつ昇降可能に支持されており、前記キャッピング機構は前記スライドフレームに対して前記液体吐出ヘッドの走査方向と直交方向にスライド可能に組み付けられているのが好ましい。
これによれば、液体吐出ヘッドのキャップ位置への移動に追従してスライドフレームをスライドさせてベースフレームに対して上昇させることができ、スライドフレームに組み付けられたキャッピング機構を退避位置からキャップ位置へ移動させることができる。また、キャッピング機構はスライドフレームに対して液体吐出ヘッドの走査方向と直交方向にスライド可能に組み付けられているので、液体吐出ヘッドの取付位置の調整量に応じてキャップ部材の姿勢を微調整しながらキャッピング動作が行なえる。
【0015】
また、本発明においては、前記ベースフレームの前記液体吐出ヘッドの走査方向
に対する直交方向両側に起立する起立壁には、スリット孔が各々形成されており、前記スライドフレームの両側壁に突設されたガイドピンが前記スリット孔に貫通して前記ベースフレームと係止したまま当該スライドフレームがスライドすることで前記キャップ部材が前記退避位置と前記キャップ位置との間を移動することが好ましい。
【0016】
また、本発明においては、前記ベースフレームと前記スライドフレームとの間には、前記キャップ部材が退避位置に留まるように前記スライドフレームを常時付勢する第1付勢手段と、前記キャッピング機構を前記スライドフレームに対してスライド可能に支持するガイド軸の一端が常時押し当てられるガイド壁と、を備え、前記スライドフレームと前記キャッピング機構との間には、当該キャッピング機構を前記液体吐出ヘッドの走査方向と直交方向外側から側壁へ当接する当接位置へ向かって常時付勢する第2付勢手段と、を備えており、前記キャップ部材が退避位置にあるとき、前記ガイド壁は前記第2付勢手段の付勢に抗して前記ガイド軸を押し戻して前記キャッピング機構どうしが前記液体吐出ヘッドの走査方向と直交方向外側へ側壁より離間した離間位置へ移動するようガイドするのが好ましい。
これによれば、キャップ部材が退避位置にあるとき、ガイド壁は第2付勢手段の付勢に抗してガイド軸を押し戻しキャッピング機構どうしが液体吐出ヘッドの走査方向と直交方向外側へ側壁より離間した離間位置へ移動するようガイドするので、キャップ位置へ移動する液体吐出ヘッドとキャッピング機構が干渉することがない。
【0017】
また、上述したいずれかのクリーニング装置を備えた液体吐出装置においては、液体吐出ヘッドが待機位置に待機する間キャッピング機構のキャップ部材により覆われてクリーニング動作が行われることを特徴とする。
これによれば、液体吐出ヘッドが待機位置に待機する間、クリーニング装置による液体吐出面のクリーニング動作が確実に行なえるので高品位画像を記録することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数の液体吐出ヘッドの取付け位置の微調整が行なわれてもこれに追従してキャッピング動作を確実かつ迅速に行なうことができ、しかもキャップ位置へ移動する液体吐出ヘッドと干渉することがない信頼性の高いクリーニング装置及びこれを備えて高品位画像を記録することができる液体吐出装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るクリーニング装置及びこれを用いた液体吐出装置の実施形態について詳細に説明する。以下では、液体吐出装置の一例として、インクジェット記録装置について、インクジェット記録装置用のクリーニング装置について説明する。また、主走査方向は、媒体(メディア)の搬送方向(X軸方向)、副走査方向は主走査方向と直交するキャリッジが往復動する方向(Y軸方向)を指し示すものとする。
【0021】
図1は、インクジェット記録装置の外観を示す斜視図である。同図に示すように、インクジェット記録装置1は、媒体(メディア)として例えば大判で長尺状のロールシート(ポリエステルシートなど)が用いられる。繰出し軸2に巻かれた繰出しロール(図示せず)から繰り出されたシート材は、記録ユニット3及び対向するプラテン4(
図2参照)を経て主走査方向に搬送され巻取り軸5に巻き取られて巻取りロール6が形成される。巻取りロール6より搬送方向上流側には乾燥装置(ヒーター及び乾燥ファン)7が設けられている。また、繰出しロール(図示せず)の搬送方向下流側及び巻取りロール6の搬送方向上流側にはテンションバー8,9が各々設けられており、記録ユニット3と対向するプラテン4上に形成される記録位置へシート材をたるみなく搬送されるようになっている。
【0022】
図3において、記録ユニット3は、吐出ヘッド10a,10b(液体吐出ヘッド)が、シート材の搬送方向と直交する副走査方向に往復走査可能なキャリッジに搭載されている。
図2において、キャリッジは、記録ユニット3の長手方向に形成されたY軸方向支持部材(Yバー)11に沿って設けられたY軸ガイドレール12に沿って往復移動するように設けられる。具体的には、キャリッジは図示しない駆動源により正逆回転駆動される無端状のタイミングベルトの一部に連繋して移動するようになっている。
図3に示すようにキャリッジに搭載される吐出ヘッド10a,10bは、プリント幅をかせぐため2つの吐出ヘッド10a,10bがキャリッジの走査方向(矢印方向)と直交方向に重なってスタガ配置されている。この2つの吐出ヘッド10a,10bには、
図1に示すインクカートリッジ13から図示しないインクチューブを介してM(マゼンタ),Y(イエロー),C(シアン),K(ブラック)などの各色ソルベントインク、昇華インクなどのインク(液体)が供給され記録信号に応じてノズルからインク滴が吐出される。
【0023】
また、
図3において、2つの吐出ヘッド10a,10bは、キャリッジに組み付けられるベースプレート14に対して位置調整可能に組み付けられている。ベースプレート14には、キャリッジの走査方向と直交する方向にスライド調整可能なスライドプレート15が設けられている。また、スライドプレート15には、キャリッジの走査方向に対するヘッドの傾きを調整可能な回転プレート16aが支点19aを中心に回転可能に設けられている。また、ベースプレート14にはスライドプレート15と同様に、キャリッジの走査方向に対するヘッドの傾きを調整可能な回転プレート16bが支点19bを中心に回転可能に設けられている。
【0024】
回転プレート16a,16bは板バネ20a,20b(図示せず)によって付勢されて偏心カム17a,17bのカム面に押し当てられている。偏心カム17aはスライドプレート15に回転可能に軸支されておりレバー18aによって回転操作される。偏心カム17bは、ベースプレート14に回転可能に軸支されており、レバー18bによって回転操作される。
また、スライドプレート15は、図示しないコイルバネ等によりキャリッジの走査方向と直交する方向に付勢されて、偏心カム17cのカム面に押し当てられている。偏心カム17cはベースプレート14に回転可能に軸支されており、レバー18cにより回転操作される。
【0025】
吐出ヘッド10aは回転プレート16a上に組み付けられて、当該回転プレート16a、スライドプレート15、ベースプレート14を貫通する貫通孔に嵌め込まれてノズル面がプラテン4側に露出するように支持されている。
また、吐出ヘッド10bは回転プレート16b上に組み付けられて、当該回転プレート16a、スライドプレート15、ベースプレート14を貫通する貫通孔に嵌め込まれてノズル面がプラテン4側に露出するように支持されている。
【0026】
上記吐出ヘッド10a,10bは、製品の出荷時或いはヘッド交換時に、ヘッドの傾きや重なり量の調整が行なわれる。具体的には、レバー18a,18bを回転操作して回転する偏心カム17a,17bにより回転プレート16a,16bが支点19a,19bを中心に回転させて走査方向に対する傾き角度をそろえる。次いで、レバー18cを回転操作して回転する偏心カム17cによってスライドプレート15を走査方向と直交する方向にスライドさせて吐出ヘッド10a,10bどうしの重なり量を調整する。これにより、スタガ配置された吐出ヘッド10a,10bどうしの組み付け位置を簡単な操作で調整することができる。
【0027】
また、
図2において、キャリッジの走査範囲の一端である待機位置には、クリーニング装置21が設けられている。クリーニング装置21は、
図4に示すように待機位置にある吐出ヘッド10a,10bのインク吐出面に密着して覆うとともに、各インク吐出面のノズルから吸引されたインクを回収するキャッピング機構22,23を備えている。
【0028】
以下、クリーニング装置21の構成について
図4乃至
図9を参照してクリーニング動作と共に説明する。
図4において、キャッピング機構22,23は、吐出ヘッド10a,10bのインク吐出面に密着して覆い、吐出ノズル内に残留するするインクを吸引除去する。尚、
図4では、キャリッジを省略して、吐出ヘッド10a,10bとキャッピング機構22,23のみが図示されている。
【0029】
キャッピング機構22,23は、インク吐出面を覆うキャップ部材22a,23aと、該キャップ部材22a,23aをコイルばね22b,23bを介してフローティング支持する支持プレート22c,23cと、該支持プレート22c,23cをねじ止め固定してキャリッジの走査方向と直交方向にスライド可能に支持するキャップスライド部材22d,23dと、を備えている。また、キャップ部材22a,23aには、複数のインク吸引チューブ22e,23eがチューブ連結具22f,23fを介して連結されている。インク吸引チューブ22e,23eは、コイルばね22b,23b、支持プレート22c,23c、キャップスライド部材22d,23dの中心孔を介して図示しない吸引機構に接続されている。インク吸引チューブ22e,23eを通じて吸引されたインクは、図示しない廃インク容器に回収される。
【0030】
キャップ部材22a,23aのキャリッジ走査方向と直交方向両側(外側)にはキャップ位置において吐出ヘッドの外壁面に当接可能な当接部22g,23gが2か所に突設されている。キャップ部材22a,23aのインク吐出面を覆う対向面にはノズル面を保護するため柔軟性、吸湿性を有する保護シート(フェルトなど不織布シート)に覆われている。
【0031】
また、キャップスライド部材22d,23dは、スライドフレーム24に対して、当該スライドフレーム24をキャリッジの走査方向と直交方向に貫通する一対のガイド軸25,26(一方のスライド軸は省略)に挿通して組み付けられている。キャップスライド部材22d,23dはガイド軸25,26に対して両側に嵌め込まれた止め輪27,28によって抜け止めされて一体に組み付けられる。また、スライドフレーム24の走査方向一端側には、キャリッジの一部が係止する係止部24aがねじ止め固定されている。
【0032】
また、スライドフレーム24は、ベースフレーム29に対してスライドかつ昇降可能に支持されている。ベースフレーム29のキャリッジ走査方向
に対する直交方向両側に起立する起立壁29aには、長手方向に2か所にスリット孔29bが各々形成されている。
スライドフレーム24の両側壁に突設されたガイドピン30がスリット孔29bに貫通してベースフレーム29と係止したまま当該スライドフレーム24がスライドすることでキャッピング機構22,23(キャップ部材22a,23a)が退避位置とキャップ位置との間を移動するようになっている。スライド孔29bは、斜め下方位置から斜め上方位置へ向かって傾斜するように形成されており、キャッピング機構22,23が退避位置にあるときガイドピン30は斜め下方位置に係止しており、キャッピング機構22,23がキャップ位置に移動すると、ガイドピン30は斜め上方位置に移動して係止するようになっている。
【0033】
また、
図5において、ベースフレーム29には、キャッピング機構22,23をスライドフレーム24に対してスライド可能に支持するガイド軸25,26の一端が押し当てられるガイド壁29c,29dが両側起立壁29aに沿って各々ねじ止め固定されている。ガイド壁29c,29dのキャリッジ走査方向で待機位置と反対端部は対向面側に折り曲げられた折り曲げ部29e,29fが各々形成されている。また、ベースフレーム29上には、スライドフレーム24の移動端位置にストッパ29gが設けられている。
【0034】
また、
図6(b)に示すように、ベースフレーム29とスライドフレーム24との間には、キャッピング機構22,23(キャップ部材22a,23a)が退避位置に留まるようにスライドフレーム24を付勢する第1引張ばね31a,31b(第1付勢手段)が連結されている。
【0035】
図6(a)(b)に示すように、キャップスライド部材22d,23dとスライドフレーム24との間には、第2引張ばね32a,32b、33a,33b(第2付勢手段)が各々連結されている。このため、キャッピング機構22,23は、第2引張ばね32a,32b、33a,33bによって、吐出ヘッド10a,10bの走査方向と直交方向外側の離間位置から側壁へ当接する当接位置へ向かって常時付勢されている。よって、キャップスライド部材22d,23dを通じてガイド軸25,26はガイド壁29c、29dへ常時押し当てられている(
図6(b)参照)。
【0036】
キャッピング機構22,23(キャップ部材22a,23a)が退避位置にあるとき、ガイド壁29c,29dに設けられた折り曲げ部29e,29fが第2引張ばね32a,32b、33a,33bの付勢に抗してガイド軸25,26を外側に向かって押し戻してキャッピング機構22,23どうしが吐出ヘッド10a,10bの走査方向と直交方向外側へ側壁より離間した離間位置へ移動するようガイドする。
【0037】
上述したように、クリーニング装置21は、キャリッジの待機位置への移動にともなって、キャッピング機構22,23を搭載したスライドプレート24がベースプレート29に対してスライドすることで、キャップ部材22a,23aが吐出ヘッド10a,10bから離間した退避位置と吐出ヘッド10a,10bに対して各々密着するキャップ位置との間を移動させるキャッピング移動機構を備えている。
また、キャッピング機構22,23を吐出ヘッド10a,10bの側壁から離間した離間位置と吐出ヘッド10a,10bの側壁に付勢状態で当接して位置決めされる当接位置との間を移動させる位置決め移動機構を備えている。
よって、吐出ヘッド10a,10bのキャップ位置への移動に伴って、キャッピング移動機構がキャッピング機構22,23を退避位置からキャップ位置へ移動させ、位置決め移動機構がキャッピング機構22,23を離間位置から当接位置へ移動させてキャッピングを行うようになっている。
【0038】
次にクリーニング動作について
図7乃至
図9を参照して説明する。
キャリッジが移動している間は、
図9(a)に示すように、スライドフレーム24はベースフレーム29に対してキャリッジ走査方向で待機位置とは反対側に第1引張ばね31a,31bにより引っ張られている。このとき、起立壁29aのスリット29bを挿通するガイドピン30は斜め下方の孔端部に係止している。よって、
図8(a)(b)に示すようにスライドフレーム24は、ベースフレーム29に対して下降位置にあり、キャッピング機構22,23(キャップ部材22a,23a)は退避位置にある。
【0039】
このとき、
図7(a)〜(c)に示すように、キャッピング機構22,23は、第2引張ばね32a,32b、33a,33bによって、キャリッジの走査方向と直交方向外側の離間位置から吐出ヘッド10a,10bの側壁に当接する当接位置に向かって常時付勢されている。このため、ガイド軸25,26がガイド壁29c,29dに常時突き当てられている。またキャッピング機構22,23(キャップ部材22a,23a)は退避位置にあるときガイド軸25,26は折り曲げ部29e,29fに当接しており、第2引張ばね32a,32b、33a,33bの付勢に抗してガイド軸25,26を外側に向かって押し戻してキャッピング機構22,23どうしがキャリッジ走査方向と直交方向外側へ離間した離間位置に保持されている(
図6(b)参照)。
よって、
図8(c)に示すようにキャリッジ34がクリーニング装置21の直上を待機位置へ移動しても、キャップ部材22a,23aに突設された当接部22g,23gが吐出ヘッド10a,10bと干渉することはない。
【0040】
次に、
図8(c)(d)に示すように、キャリッジ34がクリーニング装置21の直上である待機位置へ移動すると、キャリッジ34の移動方向前端部34aとスライドフレーム24に突設された係止部24aが係止して、キャリッジ34の走査に伴ってスライドフレーム24も第1引張ばね31a,31bの付勢に抗して同方向へスライドさせる。
このとき、スライドフレーム24は、起立壁29aのスリット29bを挿通するガイドピン30が斜め下方の孔端部から斜め上方の孔端部までスライドして係止する。よって、
図8(c)(d)に示すようにスライドフレーム24は、ベースフレーム29に対して上昇位置にあり、キャッピング機構22,23(キャップ部材22a,23a)はキャップ位置に移動してインク吐出面に密着する。
【0041】
また、
図7(d)〜(f)に示すように、キャッピング機構22,23は、第2引張ばね32a,32b、33a,33bによって、キャリッジ34の走査方向と直交方向外側の離間位置からヘッドに近接する当接位置に向かって常時付勢されている。このため、スライドフレーム24のスライド動作によってガイド壁29c,29dの折り曲げ部29e,29fに当接していたガイド軸25,26が当該折り曲げ部29e,29fより外れてガイド壁29,29dに沿って移動するため、第2引張ばね32a,32b、33a,33bの引張力によってキャッピング機構22,23は退避位置からキャップ位置へ上昇しながら吐出ヘッド10a,10bの両側の離間位置から当接部22g,23gがヘッド外側壁に当接する当接位置へ移動する(
図8(d)、
図9(b)参照)。これにより、スタガ配置された吐出ヘッド10a,10bが回転及びスライドにより位置調整されていても、当接部22g,23gがヘッド外側壁に倣って両側から当接するのでキャップ部材22a,23aの姿勢位置がずれることなくインク吐出面に密着して覆うことができる(
図4参照)。
【0042】
キャッピング機構22,23は吐出ヘッド10a,10bのインク吐出面をキャップ部材22a,23aが覆ったまま、図示しない吸引機構によりノズル内に残留するインクを吸引除去して、次の記録動作に備える。
【0043】
上記構成によれば、吐出ヘッド10a,10bのキャップ位置への移動に伴って、キャッピング移動機構がキャッピング機構22,23を退避位置からキャップ位置へ移動させ、かつ位置決め移動機構がキャッピング機構22,23を離間位置から当接位置へ移動させてキャッピングを行うため、複数の吐出ヘッド10a,10bが位置調整されていても、これに追従してキャッピング機構22,23をインク吐出面に密着させて確実にキャッピングすることができる。
また、吐出ヘッド10a,10bのキャップ位置への移動に伴ってキャッピング移動機構及び位置決め移動機構が動作するため、格別な駆動源も不要であり、コンパクトで迅速なキャッピング動作が行なえる。
更には、位置決め移動機構はキャッピング機構22,23を吐出ヘッド10a,10bの外側壁から離間した離間位置から吐出ヘッド10a,10bの外側壁に付勢状態で当接して位置決めされる当接位置へ移動させるため、キャップ位置へ移動する吐出ヘッド10a,10bがキャッピング機構22,23と干渉するおそれはない。
【0044】
また、キャッピング機構22,23がキャップ位置において当接部22g,23gが吐出ヘッド10a,10bの側壁に当接したままキャッピングされるので、キャッピング機構22,23の姿勢が当接部22g,23gによって吐出ヘッド10a,10bの位置調整に倣って補正され確実にキャッピングすることができる。
【0045】
また、吐出ヘッド10a,10bの待機位置への移動に追従してスライドフレーム24がスライドしながらベースフレーム29に対して上昇させることができ、スライドフレーム24に組み付けられたキャッピング機構22,23を退避位置からキャップ位置へ移動させることができる。また、キャッピング機構22,23はスライドフレーム24に対して吐出ヘッド10a,10bの走査方向と直交方向にスライド可能に組み付けられているので、吐出ヘッド10a,10bの取付位置の調整に応じてキャップ部材22a,23aの姿勢を微調整しながらキャッピング動作が行なえる。
【0046】
また、キャッピング機構22,23(キャップ部材22a,23a)が退避位置にあるとき、ガイド壁29c,29dは折り曲げ部29e,29fによって第2引張ばね32a,32b、33a,33bの付勢に抗してガイド軸25,26を押し戻しキャッピング機構22,23どうしが吐出ヘッド10a,10bの走査方向と直交方向外側へ側壁より離間した離間位置へ移動するようガイドするので、キャップ位置へ移動する吐出ヘッド10a,10bがキャッピング機構22,23(当接部22g,23g)と干渉することがない。
【0047】
また、上述したクリーニング装置21を備えたインクジェット記録装置1においては、吐出ヘッド10a,10bが待機位置に待機する間インク吐出面がキャッピング機構22,23のキャップ部材22a,23aにより覆われてクリーニング動作が行われるので、ノズルの目詰まりのない高品位画像を記録することができる。