特許第5761497号(P5761497)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5761497
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】狭隘部異物除去装置
(51)【国際特許分類】
   F27D 25/00 20100101AFI20150723BHJP
   C03B 5/16 20060101ALI20150723BHJP
   G21F 9/16 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
   F27D25/00
   C03B5/16
   G21F9/16 541M
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-62602(P2011-62602)
(22)【出願日】2011年3月22日
(65)【公開番号】特開2012-197981(P2012-197981A)
(43)【公開日】2012年10月18日
【審査請求日】2014年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(74)【代理人】
【識別番号】100118267
【弁理士】
【氏名又は名称】越前 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】三浦 智亮
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 彰
(72)【発明者】
【氏名】小牧 晃洋
【審査官】 田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−346496(JP,A)
【文献】 特開2007−144378(JP,A)
【文献】 特開2011−006730(JP,A)
【文献】 特開2004−116801(JP,A)
【文献】 特開2003−231906(JP,A)
【文献】 実開平07−012892(JP,U)
【文献】 特開昭60−247194(JP,A)
【文献】 特開2010−275133(JP,A)
【文献】 特開2000−028790(JP,A)
【文献】 特開2002−267797(JP,A)
【文献】 特開2005−083913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 25/00
G21F 9/16
C03B 5/16
B08B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉内底部に配置されるとともに狭隘部を有する底部電極と、該底部電極の上部に位置する炉壁に形成された管台と、を含むガラス溶融炉における、前記狭隘部を閉塞する異物の除去を行う狭隘部異物除去装置であって、
前記管台から挿入されるシャフト形状の支持部材と、
該支持部材に固定されたガイドパイプと、
該ガイドパイプに挿入されたフレキシブルシャフトと、
該フレキシブルシャフトの先端に接続されたドリルと、
前記フレキシブルシャフトを介して前記ドリルを回転させる第一駆動手段と、
前記フレキシブルシャフトを介して前記ドリルを前記ガイドパイプに沿って移動させる第二駆動手段と、
を有する、ことを特徴とする狭隘部異物除去装置。
【請求項2】
前記ガラス溶融炉は、前記底部電極に向かって溶融物が流れるように傾斜した底部を有し、前記狭隘部は、前記底部を形成する炉壁部の傾斜角度よりも小さい傾斜角度を有している、ことを特徴とする請求項1に記載の狭隘部異物除去装置。
【請求項3】
前記ガイドパイプは、前記ドリルの進入角度と前記狭隘部の傾斜角度とが一致するように形成されている、ことを特徴とする請求項2に記載の狭隘部異物除去装置。
【請求項4】
前記ドリルは、回転軸を含まない先端部の一部に凹部を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の狭隘部異物除去装置。
【請求項5】
前記支持部材を水平面内、上下方向又は軸方向に移動可能に支持する位置調整手段を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の狭隘部異物除去装置。
【請求項6】
前記支持部材に固定され前記狭隘部を撮像する撮像手段を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の狭隘部異物除去装置。
【請求項7】
前記支持部材に接続され前記ドリルの先端部に切削水を供給する切削水供給手段を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の狭隘部異物除去装置。
【請求項8】
前記管台は、前記ガラス溶融炉の中心軸上に形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の狭隘部異物除去装置。
【請求項9】
前記狭隘部は、前記炉内底部の中心部に配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載の狭隘部異物除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、狭隘部を閉塞する異物の除去を行う狭隘部異物除去装置に関し、特に、作業者が近付くことができない狭隘部における異物の除去に適した狭隘部異物除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、溶融炉内の固着物を除去する方法として、特許文献1に記載された除去装置が既に提案されている。特許文献1に記載された除去装置は、側壁下部に点検孔を有する炉の内側の固着物を除去する装置であって、炉外に配置されるキャタピラ駆動式の走行台車と、該走行台車に回動可能かつ伸縮可能に接続されたアームと、該アームに接続された掘削ドリルと、を有し、前記走行台車に搭乗した作業者が前記アームを操作して前記点検孔から前記掘削ドリルを炉内に挿入し、炉内の固着物を除去するものである。
【0003】
ところで、原子力発電所から排出された放射性廃棄物をガラス固化するためにガラス溶融炉が使用されている(例えば、特許文献2参照)。国内における一般的なガラス溶融炉は、上部から放射性廃棄物とガラス原料とを炉内に投入し、主電極、底部電極及び間接加熱装置を使用して加熱し、下部の流下ノズルから放射性廃棄物を含んだ溶融ガラスを流下し、炉下に設置されたキャニスタの中で固化するように構成されている。
【0004】
かかるガラス溶融炉では、底部電極にスリット状の狭隘部が形成されており、異物が堆積したり詰まったりする可能性がある。また、メンテナンス時に炉内の溶融ガラスを排出する際に、完全に溶融ガラスを排除することができず、底部電極の狭隘部でガラスが固化してしまう可能性もある。かかる狭隘部を閉塞する異物を放置しておくと、ガラス溶融炉の運転に支障をきたす可能性もあるため、メンテナンス時に除去しておく必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−308174号公報
【特許文献2】特開2010−189240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1に記載された除去装置では、側壁下部に点検孔を有する場合を前提としており、上述したガラス溶融炉のように、かかる点検孔を有しない場合には使用することができないという問題があった。また、ガラス溶融炉のように放射性物質を取り扱う施設では、メンテナンス時であっても、作業者が現場に近付くことができないという問題もあった。
【0007】
本発明は、上述した問題点に鑑み創案されたものであり、作業者が近付くことができない狭隘部であっても遠隔操作により異物を除去することができる狭隘部異物除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、炉内底部に配置されるとともに狭隘部を有する底部電極と、該底部電極の上部に位置する炉壁に形成された管台と、を含むガラス溶融炉における、前記狭隘部を閉塞する異物の除去を行う狭隘部異物除去装置であって、前記管台から挿入されるシャフト形状の支持部材と、該支持部材に固定されたガイドパイプと、該ガイドパイプに挿入されたフレキシブルシャフトと、該フレキシブルシャフトの先端に接続されたドリルと、前記フレキシブルシャフトを介して前記ドリルを回転させる第一駆動手段と、前記フレキシブルシャフトを介して前記ドリルを前記ガイドパイプに沿って移動させる第二駆動手段と、を有する、ことを特徴とする狭隘部異物除去装置が提供される。
【0009】
前記ガラス溶融炉は、前記底部電極に向かって溶融物が流れるように傾斜した底部を有し、前記狭隘部は、前記底部を形成する炉壁部の傾斜角度よりも小さい傾斜角度を有していてもよい。また、前記ガイドパイプは、前記ドリルの進入角度と前記狭隘部の傾斜角度とが一致するように形成されていてもよい。
【0010】
前記ドリルは、回転軸を含まない先端部の一部に凹部を有していてもよい。また、前記
支持部材を水平面内、上下方向又は軸方向に移動可能に支持する位置調整手段を有してい
てもよい。また、前記支持部材に固定され前記狭隘部を撮像する撮像手段を有していても
よい。また、前記支持部材に接続され前記ドリルの先端部に切削水を供給する切削水供給
手段を有していてもよい。前記管台は、前記ガラス溶融炉の中心軸上に形成されていても
よい。前記狭隘部は、前記炉内底部の中心部に配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
上述した本発明に係る狭隘部異物除去装置によれば、管台から挿入可能な支持部材にフレキシブルシャフトの先端に接続されたドリルを配置したことにより、ガイドパイプの形状に応じてドリルの進入角度を変更することができ、作業者が近付くことができない狭隘部であっても、支持部材の位置又は向きを調整するだけで所望の狭隘部にドリルを配置することができ、遠隔操作により異物を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第一実施形態に係る狭隘部異物除去装置を示す全体構成図である。
図2図1に示した底部電極の平面図であり、(a)は矩形の底部電極、(b)は円形の底部電極、を示している。
図3図1に示した狭隘部の拡大断面図である。
図4】ドリルの形状を示す図であり、(a)は第一例、(b)は第二例、(c)は第三例、(d)は第四例、を示している。
図5】位置調整手段の一例を示す概略断面図である。
図6】本発明の第二実施形態に係る狭隘部異物除去装置を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る狭隘部異物除去装置について、図1図6を用いて説明する。ここで、図1は、本発明の第一実施形態に係る狭隘部異物除去装置を示す全体構成図である。図2は、図1に示した底部電極の平面図であり、(a)は矩形の底部電極、(b)は円形の底部電極、を示している。図3は、図1に示した狭隘部の拡大断面図である。図4は、ドリルの形状を示す図であり、(a)は第一例、(b)は第二例、(c)は第三例、(d)は第四例、を示している。
【0014】
本発明の第一実施形態に係る狭隘部異物除去装置1は、図1に示したように、管台91を有する炉内92に形成された狭隘部Cを閉塞する異物Mの除去を行う装置であって、管台91から挿入される支持部材2と、支持部材2に固定されたガイドパイプ3と、ガイドパイプ3に挿入されたフレキシブルシャフト4と、フレキシブルシャフト4の先端に接続されたドリル5と、フレキシブルシャフト4を介してドリル5を回転させる第一駆動手段6と、フレキシブルシャフト4を介してドリル5をガイドパイプ3に沿って移動させる第二駆動手段7と、を有する。
【0015】
前記狭隘部Cは、例えば、放射性廃棄物をガラス固化するためのガラス溶融炉90における底部電極93に形成されている。したがって、炉内92は、ここでは、ガラス溶融炉90の内部を意味する。また、管台91は、一般に、ガラス溶融炉90の中心軸L上に形成されている。管台91は、直径Dを有する。
【0016】
底部電極93は、例えば、図2(a)及び(b)に示したように、矩形や円形を有し、ガラス溶融炉90の底部中心部に配置されている。図2(a)に示した底部電極93は、例えば、ガラス溶融炉90の底部の炉壁部94が稜線94aを有する四角錐状に形成されている場合に使用される。図2(b)に示した底部電極93は、例えば、ガラス溶融炉90の底部の炉壁部94が円錐状に形成されている場合に使用される。
【0017】
かかる底部電極93は、炉壁部94に埋め込まれる下部93aと、下部93aに配置された複数の支柱93bと、支柱93bに接続された上部93cと、下部93aに形成されたノズル部93dと、を有する。狭隘部Cは、支柱93bによって連結された下部93aと上部93cとの隙間によって形成される。
【0018】
前記支持部材2は、シャフト状に形成されており、管台91から挿入されるとともに、管台91に固定される部品である。また、支持部材2は、炉内92の高さ、すなわち、管台91から底部電極93までの距離に相当する長さを有する。狭隘部異物除去装置1は、一般に、各炉の専用治具となるため、各炉の形状に応じて長さが設定される。また、管台91が炉の中心軸L上に形成されている場合には、支持部材2を管台91に設置する際に、水平面内で回転させることによって、ドリル5の位置を任意の位置に配置することができる。
【0019】
また、ここでは、底部電極93の中心部にノズル部93dが形成されているため、支持部材2の先端に突出部21を形成し、突出部21をノズル部93dに挿入することによって支持部材2を位置決めできるように構成している。なお、支持部材2は、炉壁部94に着地可能な脚部により位置決めされてもよいし、管台91から吊り下げられた状態で位置決めされてもよい。
【0020】
前記ガイドパイプ3は、ドリル5の進入角度を設定するための部品である。図3に示したように、狭隘部Cは、傾斜角度θ1が隣接する炉壁部94の傾斜角度θ2よりも小さく形成されている場合がある。この場合、狭隘部Cの傾斜角度θ1よりも炉壁部94の傾斜角度θ2の方が大きく、傾斜がきつくなっているため、炉壁部94に沿ってドリル5を狭隘部Cに進入させると、ドリル5は底部電極93の下部93aに接触してしまい、異物Mを掘削することができない。そこで、狭隘部Cの傾斜角度θ1と炉壁部94の傾斜角度θ2との差分を吸収するためにガイドパイプ3が使用される。すなわち、ガイドパイプ3は、ドリル5の進入角度と狭隘部Cの傾斜角度θ1とが一致するように形成されている。
【0021】
具体的には、ガイドパイプ3は、支持部材2と略平行に配置された直線部31と、略円弧形状に形成された曲線部32と、を有し、平板形状の固定部材33により支持部材2に固定されている。直線部31を形成することにより、支持部材2に沿ってフレキシブルシャフト4を移動させた場合に、フレキシブルシャフト4をガイドパイプ3に沿って円滑に移動させることができる。曲線部32は、ガイドパイプ3を炉壁部94に接触させたときに、ドリル5の進入角度と狭隘部Cの傾斜角度θ1とが一致するように構成されている。
【0022】
かかる構成により、支持部材2を炉内92に挿入し、ガイドパイプ3を炉壁部94に接触させるだけで、ドリル5の進入角度と狭隘部Cの傾斜角度θ1とを容易に一致させることができ、狭隘部Cにドリル5を進入させて異物Mを掘削することができる。なお、ガイドパイプ3の形状は、図示したものに限定されるものではなく、狭隘部Cの位置、傾斜角度θ1の大きさ、炉壁部94の傾斜角度θ2の大きさ等の条件によって適宜変更されるものであり、直線状、L字状、S字状等、種々の形状に形成することができる。
【0023】
また、ガイドパイプ3は、例えば、中空の鋼管であり、内部にフレキシブルシャフト4を挿入できるように構成されている。なお、ガイドパイプ3は、一定の形状を維持できるとともにフレキシブルシャフト4を回転させたときの摩擦や衝撃に耐え得る程度の剛性を有する金属や合成樹脂であってもよいし、放射能汚染に強い金属や合成樹脂であってもよい。
【0024】
前記フレキシブルシャフト4は、ガイドパイプ3に沿って変形するとともにドリル5に駆動トルクを伝達する部品である。フレキシブルシャフト4は、例えば、ワイヤや合成樹脂により構成され、市販のものを使用することができる。また、フレキシブルシャフト4とガイドパイプ3との隙間が大きくなると、フレキシブルシャフト4がうねりを生じ、駆動トルクをドリル5に伝達し難くなってしまう。そこで、フレキシブルシャフト4とガイドパイプ3との隙間が、できるだけ小さくなるように、フレキシブルシャフト4の径やガイドパイプ3の内径の大きさを選定することが好ましい。
【0025】
前記ドリル5は、異物Mを掘削する部品である。ドリル5は、フレキシブルシャフト4の先端に接続される。ドリル5がガイドパイプ3の内部に挿入できるようにする場合には、ドリル5の最大外径とフレキシブルシャフト4との差分をできるだけ小さくすることが好ましい。この差分が大きいとフレキシブルシャフト4とガイドパイプ3との隙間が大きくなってしまうためである。ドリル5には、例えば、ダイヤモンド粒子をメタルボンドで焼結したものを使用する。
【0026】
また、ドリル5には、図4に示したように、種々の形式のものを使用することができる。なお、図4(a)〜(c)において、上図はドリル5の平面図、下図はドリル5の斜視図、を示している。図4(a)に示した第一例は、最もノーマルな形状であり、円柱形状を有する。
【0027】
図4(b)に示した第二例は、回転軸Pを含まない先端部の一部に一つの凹部51を有する。凹部51が回転軸Pを含む場合には、ドリル5の掘削を進めると回転軸P上に柱状の異物Mが残存することとなり、掘削の進行を阻害することとなる。また、凹部51を形成することにより、ドリル5の摩擦抵抗を低減することができ、ドリル5の磨耗を抑制することができる。また、凹部51を形成することにより、掘削屑を容易に掻き出すこともできる。
【0028】
図4(c)に示した第三例は、回転軸Pを含まない先端部の一部に複数の凹部51を有する。凹部51の個数を増やすことにより、ドリル5の摩擦抵抗をより低減することができ、ドリル5の磨耗をより抑制することができ、掘削速度を速めることができる。図4(d)に示した第四例は、突形状の先端部52を有する。先端部52を突形状に形成することにより、掘削速度をより速めることができる。
【0029】
前記第一駆動手段6は、ドリル5の駆動トルクを発生させる部品である。第一駆動手段6は、例えば、電動モータやエアモータ等であり、出力軸がフレキシブルシャフト4の後端に接続されている。第一駆動手段6を駆動させると、フレキシブルシャフト4が回転し、最終的にドリル5が回転する。なお、ガラス溶融炉90の場合には、放射能汚染に強いエアモータを使用することが好ましい。
【0030】
前記第二駆動手段7は、ドリル5を異物Mに押し付ける動力を発生させる部品である。例えば、第二駆動手段7は、電動スライダやエアスライダ等により構成されるが、ガラス溶融炉90の場合には、放射能汚染に強いエアスライダを使用することが好ましい。例えば、第二駆動手段7は、支持部材2に固定されたレール71と、レール71に沿って移動可能な台車72と、台車72をレール71に沿って移動させるエアシリンダ73と、を有する。
【0031】
台車72には、第一駆動手段6及びフレキシブルシャフト4が接続されており、台車72を移動させることにより、第一駆動手段6及びフレキシブルシャフト4をレール71に沿って移動させることができる。かかる移動により、ドリル5を異物Mに押し付けることができ、所望の深さまで掘削することができる。この第二駆動手段7によるドリル5の押し付けは、連続的であってもよいし、間欠的であってもよい。
【0032】
また、図1に示したように、狭隘部異物除去装置1は、支持部材2に接続されドリル5の先端部に切削水を供給する切削水供給手段8を有していてもよい。切削水供給手段8は、例えば、流量調整弁とホースとを有し、炉外から切削水を供給できるように構成されている。切削水をドリル5に供給することにより、潤滑剤及び冷却水として作用させることができる。
【0033】
上述した第一実施形態に係る狭隘部異物除去装置1によれば、管台91から挿入可能な支持部材2にフレキシブルシャフト4の先端に接続されたドリル5を配置したことにより、ガイドパイプ3の形状に応じてドリル5の進入角度を変更することができ、作業者が近付くことができない狭隘部Cであっても、支持部材2の位置又は向きを調整するだけで所望の狭隘部Cにドリル5を配置することができ、遠隔操作により異物Mを除去することができる。なお、狭隘部異物除去装置1の幅Wは、管台91の直径Dよりも小さくなるように構成される。
【0034】
例えば、図2(a)に示したように、稜線94aを有する狭隘部Cでは、稜線94aに沿って異物Mが堆積しやすい。また、ガラス溶融炉90の場合には、溶融ガラス中の白金族類の金属が稜線94aに沿って流下し、外部に排出される。したがって、稜線94aに沿った四箇所のA部(破線で囲んだ部分)に存在する異物Mは、優先的に除去する必要がある。四箇所のA部について異物Mを除去する場合には、支持部材2を回転させることによって、ドリル5の位置を容易に変更することができる。
【0035】
ここで、「除去」とは、異物Mを破砕して取り除く場合だけでなく、異物Mを掘削して一部に貫通孔を形成する場合も含まれる。異物Mに貫通孔を形成することによって、ガラス溶融炉90の運転初期における流下性能を確保することができる。なお、溶融ガラスの温度が十分上昇した場合には、異物Mの種類によっては自然に溶融除去される。
【0036】
また、狭隘部異物除去装置1は、支持部材2を水平面内、上下方向又は軸方向に移動可能に支持する位置調整手段10を有していてもよい。ここで、図5は、位置調整手段の一例を示す概略断面図である。
【0037】
位置調整手段10は、管台91に固定される台座101と、台座101上に配置された第一テーブル102と、第一テーブル102上に配置された第二テーブル103と、を有する。第一テーブル102は、支持部材2をY方向に移動させるY方向移動機構を有し、第二テーブル103は、支持部材2をX方向に移動させるX方向移動機構を有する。
【0038】
Y方向移動機構は、台座101の上面に配置されたY方向レール101aと、第一テーブル102の下面に配置されたY方向スライダ102aと、第一テーブル102の下面に配置されたY方向ラック102bと、Y方向ラック102bと噛合するとともに台座101の上面に配置されたY方向ピニオン101bと、Y方向ピニオン101bを回転させるY方向ハンドル101cと、を有する。Y方向ハンドル101cの回転をY方向ピニオン101bに伝達するには、例えば、傘歯車機構(図示せず)が使用される。Y方向ハンドル101cを回転させると、Y方向ピニオン101bが回転し、Y方向ラック102bがY方向に移動する。Y方向ラック102bは、第一テーブル102に接続されているため、第一テーブル102はY方向レール101a上を移動することとなる。なお、Y方向スライダ102aは車輪によって構成してもよい。
【0039】
X方向移動機構は、第一テーブル102の上面に配置されたX方向レール102cと、第二テーブル103の下面に配置されたX方向スライダ103aと、第二テーブル103の下面に配置されたX方向ラック103bと、X方向ラック103bと噛合するとともに第一テーブル102の上面に配置されたX方向ピニオン102dと、X方向ピニオン102dを回転させるX方向ハンドル102eと、を有する。X方向ハンドル102eの回転をX方向ピニオン102dに伝達するには、例えば、傘歯車機構102fが使用される。X方向ハンドル102eを回転させると、X方向ピニオン102dが回転し、X方向ラック103bがX方向に移動する。X方向ラック103bは、第二テーブル103に接続されているため、第二テーブル103はX方向レール102c上を移動することとなる。なお、X方向スライダ103aは車輪によって構成してもよい。
【0040】
また、第二テーブル103上には、支持部材2をZ方向に移動させるZ方向移動機構と、支持部材2を中心軸L周りに回転させる回転駆動機構と、を有していてもよい。
【0041】
Z方向移動機構は、第二テーブル103の上面に立設されたZ方向レール103cと、Z方向レール103cの上部に配置された第三テーブル104と、第三テーブル104に支持されたボールネジ104aと、ボールネジ104aを回転させるZ方向ハンドル104bと、を有する。Z方向ハンドル104bを回転させると、ボールネジ104aが回転し、Z方向レール103cに対して第三テーブル104を相対的にZ方向に移動させることができる。なお、支持部材2は、フランジ部2aとZ方向レール103cとにより、Z方向に移動可能に支持されている。
【0042】
回転駆動機構は、第三テーブル104の上面に回転可能に配置された歯車104cと、支持部材2の上端部の側面に形成された外歯2bと、歯車104cを回転させる回転駆動ハンドル104dと、を有する。回転駆動ハンドル104dを回転させると、歯車104cが回転し、それと噛合する支持部材2が中心軸L周りに回転する。なお、支持部材2の上端部は、ボールベアリングにより第三テーブル104上に回転可能に支持されている。
【0043】
上述した位置調整手段10によれば、X方向、Y方向、Z方向及び回転方向の駆動を各ハンドル(X方向ハンドル102e、Y方向ハンドル101c、Z方向ハンドル104b、回転駆動ハンドル104d)により操作することができ、ロボット等により容易に遠隔操作することができる。なお、かかる位置調整手段10の構成は単なる一例であり、他の構成であってもよい。また、台座101を管台91に固定する際に、スペーサ(図示せず)を介在させることによって、支持部材2を傾斜させることができる。
【0044】
このように、支持部材2をXYZ方向に移動させたり、中心軸L周りに回転させたり、傾斜させたりすることにより、ドリル5の位置を、X方向、Y方向、Z方向、回転方向又は傾斜方向に容易に調整することができる。
【0045】
次に、本発明の第二実施形態に係る狭隘部異物除去装置1について説明する。ここで、図6は、本発明の第二実施形態に係る狭隘部異物除去装置を示す全体構成図である。なお、上述した第一実施形態と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0046】
図6に示した第二実施形態は、支持部材2に固定され狭隘部Cを撮像する撮像手段11を有する。撮像手段11は、例えば、支持部材2に接続された固定部材33に接続される。撮像手段11は、ドリル5の位置を確認するためのものであり、狭隘部Cとドリル5の位置関係を把握できる角度に配置される。かかる撮像手段11を使用することにより、ドリル5を正確に位置決めすることができる。なお、狭隘部異物除去装置1全体の大まかな位置決めを行う場合には、別の管台から別の撮像手段を挿入するようにすればよい。
【0047】
上述した本発明の実施形態に係る狭隘部異物除去装置1に関し、遠隔操作する場合には、各種駆動部のケーブルをガラス溶融炉90の外部に引き出し、所望のインターフェースボックスを介して建屋の外部までケーブルを延伸し、外部から操作するようにすればよい。勿論、放射性物質を扱わない工業炉に狭隘部異物除去装置1を使用する場合には、建屋の外部までケーブルを延伸する必要はなく炉外から遠隔操作するようにしてもよい。
【0048】
本発明は上述した実施形態に限定されず、狭隘部異物除去装置1はガラス溶融炉90以外の工業炉にも使用することができる等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0049】
1 狭隘部異物除去装置
2 支持部材
3 ガイドパイプ
4 フレキシブルシャフト
5 ドリル
6 第一駆動手段
7 第二駆動手段
8 切削水供給手段
10 位置調整手段
11 撮像手段
51 凹部
91 管台
92 炉内
93 底部電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6