(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の実施形態に係る
電力伝送システムのブロック図である。また、
図2は本発明の実施形態に係る電力伝送システムを車両充電設備に適用した例を示す図である。
図2は
図1中の(A)の構成の具体例である。本発明の電力伝送システムは、例えば、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)などの車両への充電のためのシステムに用いるのに好適である。そこで、
図2に示すような車両充電設備への適用例を用いて以下説明する。なお、本発明の電力伝送システムは、車両充電設備以外の電力伝送にももちろん用いることが可能である。
【0012】
本発明の電力伝送システムにおける電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)には、車両搭載バッテリーに充電する電力を車両充電設備から受電するため、車両の底面部においては、受電を行うことを可能にする受電アンテナ202が配されてなる。
【0013】
本実施形態に係る電力伝送システムでは、上記のような車両に対して電力を非接触で伝送するため、当該車両を停車させることが可能な停車スペースに設けられる。車両充電用のスペースである当該停車スペースには、本実施形態に係る電力伝送システムの送電アンテナ108などが地中部に埋設されるような構成となっている。車両のユーザーは本実施形態に係る電力伝送システムが設けられている停車スペースに車両を停車させて、送電アンテナ108から車両に搭載されている受電アンテナ202に対して、電磁場を介し電気エネルギー(電力)を伝送する。
【0014】
車両を停車スペースに停車させる際には、車両搭載の受電アンテナ202が、送電アンテナ210に対して最も伝送効率が良い位置(送電アンテナ210と受電アンテナ202との間の結合係数が最大となる、送電アンテナ210と受電アンテナ202との相対的位置)の関係になるとは限らない。そこで、本実施形態に係る電力伝送システムにおいては、受電アンテナ202と送電アンテナ210との相対的位置関係を、結合係数に基づいて把握した上で、電力伝送効率が最高となるように、最適なパラメーターを選択するように構成されている。
【0015】
図3は本発明の実施形態に係る電力伝送システムにおける送電アンテナ210と受電アンテナ202の位置関係の定義を説明する図である。送電アンテナ108、受電アンテナ202はいずれも渦巻き状に巻回された略矩形のコイルである。受電アンテナ202が車輌に搭載さているという制約の下、送電アンテナ210と受電アンテナ202との間の結合係数が最大となる、送電アンテナ210と受電アンテナ202との相対的位置を、最適相対的位置として定義すると、送電アンテナ210と受電アンテナ202との間の位置ずれ量は、この最適相対的位置からの相違として定義することができる。最適相対的位置からのアンテナ間の位置ずれ量が大きくなればなるほど、結合係数は小さくなる。
【0016】
送電アンテナ210と受電アンテナ202が同じ大きさ、同じ形状のアンテナである場合、結合係数を実際の数値として導出しなくても、最適相対的位置からのアンテナ間の位置ずれ量を求めることで、間接的に結合係数を求めていることと同じとなる。また、送電アンテナ210と受電アンテナ202が異なる大きさ、異なる形状であっても、これら大きさ、形状に応じた最適相対的位置からの位置ずれ量と結合係数との関係を予め記憶しておく等によって、結合係数を実際の数値として導出しなくても、位置ずれ量を求めることで、間接的に結合係数を求めていることと同じとなる。
【0017】
本発明の実施形態に係る電力伝送システムでは、送電側システム100側の送電アンテナ108から、受電側システム200側の受電アンテナ202へ効率的に電力を伝送することを目的としている。このとき、送電アンテナ108の共振周波数と、受電アンテナ202の共振周波数とを同一とすることで、送電側アンテナから受電側アンテナに対し、効率的にエネルギー伝達を行うようにする。送電アンテナ108はコイルとコンデンサとで構成されており、送電アンテナ108を構成するコイルのインダクタンスはLtであり、
コンデンサのキャパシタンスはCtである。また、受電アンテナ202も、送電アンテナ
同様、コイルとコンデンサとで構成されており、受電アンテナ202を構成するコイルのインダクタンスはLxであり、コンデンサのキャパシタンスはCxである。
【0018】
図2において、一点鎖線の下側に示す構成が送電側システム100であり、本例では車両充電設備となっている。一方、一点鎖線の上側に示す構成は受電側システム200であり、本例では電気自動車などの車両となっている。上記のような送電側システム100は、例えば、地中部に埋設されるような構成となっており、電力を伝送する際には、地中埋設された送電側システム100の送電アンテナ108に対して、車両を移動させて、車両に搭載される受電アンテナ202を位置合わせした上で、電力の送受を行うようにする。車両の受電アンテナ202は、車両の底面部に配されてなるものである。
【0019】
送電側システム100におけるAC/DC変換部104は、入力される商用電源を一定の直流に変換するコンバータである。このAC/DC変換部104からの出力は2系統あり、一方は高電圧部105に、他方は低電圧部109に出力される。高電圧部105はインバータ部106に供給する高電圧を生成する回路であり、低電圧部109は制御部110に用いられるロジック回路に供給する低電圧を生成する回路である。また、高電圧部105で生成される電圧の設定は制御部110から制御可能となっている。
【0020】
インバータ部106は、高電圧部105から供給される高電圧から所定の交流電圧を生成して、送電アンテナ108に供給するものである。また、インバータ部106から送電アンテナ108に供給される電力の電流成分は電流検出部107によって検出可能に構成される。
【0021】
インバータ部106周辺の構成について
図4を参照してより詳細に説明する。
図4は本発明の実施形態に係る電力伝送システムのインバータ回路を示す図である。この
図4は、
図1中の(B)の構成を具体的に示すものでもある。
【0022】
インバータ部106は
図4に示すように、フルブリッジ方式で接続されたQ
A乃至Q
Dからなる4つの電界効果トランジスタ(FET)によって構成されている。
【0023】
本実施形態においては、直列接続されたスイッチング素子Q
Aとスイッチング素子Q
Bの間の接続部T1と、直列接続されたスイッチング素子Q
Cとスイッチング素子Q
Dとの間の接続部T2との間に送電アンテナ108が接続される構成となっており、
図6に示されるようにスイッチング素子Q
Aとスイッチング素子Q
Dがオンのとき、スイッチング素子Q
B
とスイッチング素子Q
Cがオフとされ、引き続きスイッチング素子Q
Bとスイッチング素子Q
Cがオンのとき、スイッチング素子Q
Aとスイッチング素子Q
Dがオフとされることで、
接続部T1と接続部T2との間に矩形波の交流電圧を発生させる。
【0024】
上記のようなインバータ部106を構成するスイッチング素子Q
A乃至Q
Dに対する駆動信号は制御部110から入力されるようになっている。制御部110による駆動信号で、インバータ部106から出力する交流の周波数や、電力を制御することができるようになっている。
【0025】
なお、本実施形態では、定電圧源からの直流電圧を交流電圧として矩形波形の交流電圧を出力するように制御しているが、電圧を制御するのではなく、電流を制御するように構成しても良い。また、本実施形態ではインバータをフルブリッジ構成としたがハーフブリッジ構成としても同様の効果が得られる。
【0026】
制御部110は、後述するようにマイクロコンピュータと論理回路などから構成される
ものであり、送電側システム100の全体的な制御を行う。特に、制御部110は電流検出部107で検出された電流値に基づくデータ処理を行うようになっている。
【0027】
送電側システム100におけるデータテーブル115は、電流検出部107で検出される電流値の包絡線信号の推移から取得される時間値と、送電アンテナ108と受電アンテナ202との間の位置ずれ量との相関関係がある結合係数と、伝送電力との関係を記憶するテーブルである。
【0028】
送電側システム100における制御部110は、電流検出部107で検出される電流値とこれらのテーブルとを参照して、電力伝送時における制御を行うようになっている。
【0029】
次に、車両側に設けられている受電側システム200について説明する。受電側システム200において、受電アンテナ202は、送電アンテナ108と共鳴することによって、送電アンテナ108から出力される電気エネルギーを受電するものである。受電アンテナ202にも、送電側のアンテナ部と同様、インダクタンス成分Lxを有するコイルと共に、キャパシタンス成分Cxを有するコンデンサも含まれる構成となっている。
【0030】
受電アンテナ202で受電された矩形波の交流電力は、整流部203において整流され、整流された電力は充電制御部204を通してバッテリー205に蓄電されるようになっている。充電制御部204は不図示の受電側システム200主制御部からの指令に基づいてバッテリー205の蓄電を制御する。
【0031】
次に、送電側システム100における制御部110において、送電アンテナ108と受電アンテナ202との間の位置ずれを求める方法についてより詳しく説明する。ここで、
図5に示す送電アンテナ108と受電アンテナ202の等価回路について検討する。
【0032】
図5において、送電アンテナ108は、インダクタンス成分Ltを有するコイルとキャパシタンス成分Ctを有するコンデンサとから構成されている。また、Rtは送電アンテナ108の抵抗成分である。
【0033】
受電アンテナ202は、インダクタンス成分Lxを有するコイルと共に、キャパシタンス成分Cxを有するコンデンサとから構成されている。Rxは受電アンテナ202の抵抗成分である。
【0034】
また、送電アンテナ108と受電アンテナ202との間の誘導性結合の結合係数をK、また送電アンテナ108と受電アンテナ202との間の容量性結合成分をCsとする。RLは負荷抵抗、すなわちバッテリーを示し、バッテリー電圧と充電電流とで決まる抵抗値となる。Cdは整流器で交流から直流変換された電圧を平滑化するための平滑コンデンサである。
【0035】
また、送電アンテナ108と受電アンテナ202との間の誘導性結合の結合係数をK、また送電アンテナ108と受電アンテナ202との間の容量性結合成分をCsとする。RLはバッテリー205の抵抗成分また、Cdはバッテリー205のキャパシタンス成分を示している。
【0036】
ここで充電制御部204は所定電圧以上、例えば充電制御部204の入力電圧が接続されているバッテリー電圧より低い場合、充電制御部204は充電動作をしない構成にしてあるとして、バッテリー205の充電電圧(例えば、200V)に対して、低い電圧(例えば、30V程度。充電電圧の1/6〜1/5程度の電圧)が、送電アンテナ108から入力される場合には、負荷抵抗RLはバッテリー205の電圧と充電電流により変動する
が、充電動作が始まる前段においては、負荷抵抗RLはほぼ無限大なので開放状態と考えることができる。すなわち、平滑コンデンサCdにある程度充電されるまでは、受電アンテナ202の出力端は短絡状態に等しいと考えることができる。
【0037】
上記のような充電電圧に対し低い電圧で、インバータ部106によって1サイクルの交流電圧を出力させた場合、すなわち、インバータ部106において、Q
A、Q
Dがオンして、次にQ
C、QBがオンする1サイクル分だけ動作させた場合、例えば、
図6に示すよう
なシミュレーション結果を得ることができる。
【0038】
送電アンテナ108に流れる電流(電流検出部107で検出される電流)を
図7に示す検波回路を通して得られる包絡線となる。この電流波形は送電アンテナ108、受電アンテナ202の結合係数K、すなわち、位置ずれ量により包絡線周期が変わるため、この周期から結合係数K、すなわち送電アンテナ108と前記受電アンテナ202との間の位置ずれ量が判る。
【0039】
図6において、インバータ部106によって1サイクルの交流電圧を出力した時間から送電アンテナ108に流れる電流値の包絡線信号(該電流値に比例した電圧値)を、所定レベル電圧(Vk)と比較し、包絡線信号がVkより大きい状態から小さい状態になるまでの時間をTkとすると、Tkは結合係数が大きくなると小さく、結合係数が小さくなると大きくなる。すなわち、送受電アンテナ間距離が小さくなるとTkは小さくなり、送受電アンテナ間距離が大きくなるとTkは大きくなる。ここで、
図6(A)は結合係数K=0.2、
図6(B)は結合係数K=0.15、
図6(C)は結合係数K=0.1の例であり、Tk0、Tk1、Tk2は各々において、包絡線信号がVkより大きい状態から小さい状態になるまでの時間となる。このような関係Tkと結合係数K(位置ずれ量)との関係は、データテーブル115にテーブル化して記憶しておく。
図8はデータテーブル115におけるテーブルの構成例を示す図である。
【0040】
上で述べたように、1サイクルの交流電圧出力開始時間から送電アンテナ108に流れる電流包絡線信号が所定レベルより大きい状態から小さい状態になるまでの時間を計測することで結合係数を計測でき、更に結合係数と送受電アンテナ間の距離は相関があることから
図9に示すようなテーブルを構成すると、送電アンテナ電流の包絡線信号が所定レベルより大きい状態から小さい状態になるまでの時間を計測すること最大効率を与える伝送電力がいくらかを求めることができる。
【0041】
具体的には時間Tkを計測したら
図9のテーブルで“Tk”欄から該当する時間値、もしくは該当する値に最も近い値を探し出し、該時間値にひも付けされる効率データ群の中から最良の効率値を引き出し、該効率値から該効率値を与える電力値を求めることができる。
【0042】
このような本発明に係る電力伝送システムによれば、送電アンテナ108と受電アンテナ202との間の結合係数、位置ずれを適切に把握することができ、効率的な電力伝送を実行することが可能となる。
【0043】
次に、以上のようにして求められた送電アンテナ108と受電アンテナ202との間の位置ずれ量に基づいて、電力伝送時における最適なパラメーターを取得する方法を例示的に説明する。
【0044】
図10は、電力伝送時における伝送電力と伝送効率との間の関係を示す図である。
図10を参照すると、アンテナ間の結合係数(位置ずれ量)に応じて、伝送効率のプロフィールが異なることがわかる。そして、アンテナ間の結合係数(位置ずれ量)に応じて伝送効
率が最も高くなる電力量が異なっている。例えば、結合係数K=0.2(位置ずれ量A)である場合には、(a)のポイントにおける電力量によると、最も良い効率で電力伝送を行うことができ、結合係数K=0.13(位置ずれ量B)である場合には、(b)のポイントにおける電力量によると、最も良い効率で電力伝送を行うことができ、結合係数K=0.1(位置ずれ量C)である場合には、(C)のポイントにおける電力量によると、最も良い効率で電力伝送を行うことができる。
【0045】
このように、送電アンテナ108と受電アンテナ202との間の結合係数(位置ずれ量)に応じた、最も良い電力伝送効率を与える伝送電力量がある。このような関係に基づいて、送電アンテナ108と受電アンテナ202との間の結合係数(位置ずれ量)と、伝送電力量Wの関係を
図10に示すようにテーブル化している。
【0046】
本実施形態に係る電力伝送システムにおいては、制御部110は、これまで説明した方法により、送電アンテナ108と受電アンテナ202との間の結合係数、すなわち、位置ずれ量を検出する。そして、検出された位置ずれ量から最良効率を与える電力伝送時の伝送電力量Wを決定する。
【0047】
なお、送電アンテナ108と受電アンテナ202との間の結合係数(位置ずれ量)を検出するためには、上記の方法以外の方法を用いることもできる。例えば、結合係数(位置ずれ量)による電圧、電流、周波数などの電気的特性の変化を予め学習・記憶しておき、それを用いて、結合係数(位置ずれ量)を求めるようにしても良い。また、周知のセンサなどにより、直接的に計測するようにしても良い。
【0048】
以上のような、本実施形態に係る電力伝送システムによれば、送電アンテナ108と受電アンテナ202との間の結合係数(位置ずれ量)を適切に把握することができ、結合係数(位置ずれ量)に基づいた、電力伝送時の適切なパラメーター(伝送電力量W)を選定することができるようになり、効率的な電力伝送を実行することが可能となる。