特許第5761513号(P5761513)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5761513-ストラットマウント構造 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5761513
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】ストラットマウント構造
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/54 20060101AFI20150723BHJP
   F16F 9/58 20060101ALI20150723BHJP
   B60G 15/06 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
   F16F9/54
   F16F9/58 B
   B60G15/06
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-225783(P2011-225783)
(22)【出願日】2011年10月13日
(65)【公開番号】特開2013-87784(P2013-87784A)
(43)【公開日】2013年5月13日
【審査請求日】2014年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174366
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 史郎
(72)【発明者】
【氏名】菊谷 真大
(72)【発明者】
【氏名】新名 祐三
(72)【発明者】
【氏名】水口 健夫
【審査官】 岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−118440(JP,U)
【文献】 特開2003−028227(JP,A)
【文献】 特表2004−504559(JP,A)
【文献】 特開平07−233845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/54
F16F 9/58
B60G 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショックアブソーバのシリンダにより軸方向にスライド可能に支持されるピストンロッドの先端部に固定される芯金部材と、
前記芯金部材の上面側に配置され、車体側に固定されるアッパプレートと、
前記芯金部材の外径よりも小さい内径の開口部を有し、前記開口部に前記ピストンロッドが挿通された状態で前記芯金部材の下面側に配置され、前記アッパプレートと共に前記芯金部材を内包しつつ車体側に固定されるロアプレートと、
前記ロアプレートの下面側に配設され、スプリングを受けるスプリングシートと、
前記ピストンロッドが挿通可能な筒状で、上方側の部位が前記芯金部材を包含するとともに前記アッパプレートと前記ロアプレートとの間に内包され、下方側の部位が前記ピストンロッドに沿って前記ロアプレートの前記開口部から下方向に突出するように延設されて、前記ショックアブソーバの前記シリンダの上方への移動を規制するバンプストッパと、を備え
前記ロアプレートの前記開口部の周縁は、前記バンプストッパに沿って下方向に突出する筒状に形成され、
前記芯金部材は、金属の薄板で形成され、前記芯金部材の外周端部を上方向に曲げ、更に内側方向に曲げて形成され、
前記芯金部材の外周端部は、上側に折り曲げられ形成されている
ことを特徴とするストラットマウント構造。
【請求項2】
前記上側に折り曲げられ形成されている芯金部材の外周端部は、前記バンプストッパの上方側の部位の中に存在していることを特徴とする、請求項1に記載のストラットマウント構造。
【請求項3】
前記芯金部材と前記バンプストッパは、加硫接着され、
前記アッパプレートは、前記芯金部材と前記バンプストッパとの加硫接着時に併せて前記バンプストッパと加硫接着されることを特徴とする、請求項1或いは2に記載のストラットマウント構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストラットマウント構造に係り、コスト低減可能なマウント構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、ホイールと車体との間にショックアブソーバやコイルスプリング等で構成されるサスペンション装置が配設され、ホイールからの振動や衝撃等の入力をショックアブソーバとコイルスプリングの作用により減衰し吸収するようにし、車体への入力を低減している。
このようなサスペンション装置では、ホイールからの入力は、コイルスプリングやゴム材で形成されるバンプストッパやショックアブソーバのピストンロッドを経て、サスペンション装置の車体への取付部であるストラットマウントを経由して車体に伝達される。ストラットマウントは、特許文献1のように、ショックアブソーバのピストンロッドが固定される芯金部材(内側部材)と、互いに対向するように配置されて芯金部材の外周を上下から囲むとともに車体に固定されるアッパプレート及びロアプレート(外側部材の2つのハット状部材)と、芯金部材の周縁部に取着されてアッパプレート及びロアプレートとの間に配設される制振部材(弾性体)とで構成されている。そして、ロアプレートの下部には、コイルスプリングを受けるスプリングシートが、スプリングシートの下方には、バンプストッパを受けるカップ状の受け部材がそれぞれ設けられている。
【0003】
このようなストラットマウンドでは、コイルスプリングやバンプストッパからの比較的大きな入力を、それぞれスプリングシートおよび受け部材を介してロアプレート(下方側のハット状部材)で受けている。一方、ピストンロッドからの振動等の入力は、芯金部材を介して制振部材で吸収するとともにアッパプレート(上方側のハット状部材)で受けている。このように、アッパプレート及びロアプレート(外側部材)を介して、衝撃や振動等の入力を車体へ伝達するような構造とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−233845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、上記特許文献1のストラットマウント構造では、コイルスプリング及びバンプストッパからの比較的大きな入力を下方側のハット状部材であるロアプレートを介して車体へ伝達している。したがって、コイルスプリング及びバンプストッパからの入力が大きくなると、ロアプレートに加わる負荷が大きくなることから、ロアプレートの板厚を厚くしたり、形状や材料及びロアプレート周辺の構造を工夫したりして強度を向上させる必要がある。
【0006】
しかしながら、ロアプレートの形状やロアプレート周辺構造を複雑にしたり、ロアプレートに高強度な高級材料を用いたりすることは、コストの増大に繋がる上、場合によっては重量の増加を招くため好ましいことではない。
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、部品構成を簡素化しコストを低減することのできるストラットマウント構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1のストラットマウント構造では、ショックアブソーバのシリンダにより軸方向にスライド可能に支持されるピストンロッドの先端部に固定される芯金部材と、前記芯金部材の上面側に配置され、車体側に固定されるアッパプレートと、前記芯金部材の外径よりも小さい内径の開口部を有し、前記開口部に前記ピストンロッドが挿通された状態で前記芯金部材の下面側に配置され、前記アッパプレートと共に前記芯金部材を内包しつつ車体側に固定されるロアプレートと、前記ロアプレートの下面側に配設され、スプリングを受けるスプリングシートと、前記ピストンロッドが挿通可能な筒状で、上方側の部位が前記芯金部材を包含するとともに前記アッパプレートと前記ロアプレートとの間に内包され、下方側の部位が前記ピストンロッドに沿って前記ロアプレートの前記開口部から下方向に突出するように延設されて、前記ショックアブソーバの前記シリンダの上方への移動を規制するバンプストッパと、を備え、前記ロアプレートの前記開口部の周縁は、前記バンプストッパに沿って下方向に突出する筒状に形成され、前記芯金部材は、金属の薄板で形成され、前記芯金部材の外周端部を上方向に曲げ、更に内側方向に曲げて形成され、前記芯金部材の外周端部は、上側に折り曲げられ形成されていることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2のストラットマウント構造では、請求項1において、前記上側に折り曲げられ形成されている芯金部材の外周端部は、前記バンプストッパの上方側の部位の中に存在していることを特徴とする。
また、請求項3のストラットマウント構造では、請求項1或いは2において、前記芯金部材と前記バンプストッパは、加硫接着され、前記アッパプレートは、前記芯金部材と前記バンプストッパとの加硫接着時に併せて前記バンプストッパと加硫接着されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明では、上方側の部位が芯金部材を包含するとともにアッパプレートとロアプレートとの間に内包され、下方側の部位がピストンロッドに沿ってロアプレートの開口部から下方向に突出するよう延設された構成のバンプストッパを備え、このバンプストッパによって、ショックアブソーバのシリンダの上方への移動を規制してショックアブソーバからの入力をアッパプレートを介して車体に伝達するとともに、ショックアブソーバのピストンロッドからの振動等の入力を吸収するようにしている。
【0010】
すなわち、本発明では、従来では別々に配置されていた、ショックアブソーバのピストンロッド先端部の芯金部材と車体との間に設けられているゴム等の制振部材と、ショックアブソーバのシリンダの移動を規制するバンプストッパの2つの部材を一体とし、当該バンプストッパで制振部材を兼用する構成としているので、ストラットマウント構造の部品点数を低減して構成を簡素化でき、コストを低減することができる。また、バンプストッパで受けたショックアブソーバのシリンダからの入力をバンプストッパからアッパプレートを介して車体に伝達する構成としているので、スプリングシートとロアプレートを介して車体に伝達されるスプリングからの入力とは異なる経路とすることができる。すなわち、バンプストッパからの入力とスプリングからの入力の比較的大きな入力をそれぞれ別々の経路を通って車体に伝達するようにしており、ロアプレートとアッパプレートの強度を比較的低く設定することが可能となる。したがって、これらの部材の板厚を厚くしたり、高強度の高級部材を用いたりする必要もなく、材料コストを抑えることができる。更にバンプストッパをアッパプレートで受ける構成としているので、バンプストッパを全体的に車体側(インシュレータアッパ側)に近づけた位置に配置することができる。したがって、車体への取り付けにおいて従来と同様のバンプストッパ位置となるように車体を設計すると車両のボンネット位置を低く設計することができ、車両のデザイン性を良くすることができる。
【0011】
しかも、ロアプレートの開口部の周縁下方向に突出する筒状に形成されており、ショックアブソーバからの入力でバンプストッパが圧縮されることによる径方向への変形を抑制して、バンプストッパの荷重方向を安定させことができるので、設計時におけるバンプストッパの減衰特性を確実に得ることができる。
そのうえ、芯金部材金属の薄板で形成し、芯金部材の外周端部を上方向に曲げ、更に内側方向に曲げて形成し、芯金部材の外周端部が上側に折り曲げられ形成されたり、請求項2の発明のように上側に折り曲げられ形成されている芯金部材の外周端部が、前記バンプストッパの上方側の部位の中に存在されたりすることにより、芯金部材と制振部材を介して接触するアッパプレートとの接触面積を広くすることができ、バンプストッパの耐久性を向上させることができる。
【0012】
また、請求項3の発明では、芯金部材とバンプストッパとアッパプレートとを同時に加硫接着するようにしているので、製造工程を減らして更にコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係るストラットマウント構造を適用したサスペンション装置の概略構成を示す図である。
図2図1のA部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
まずは、本発明に係るストラットマウント構造を適用したサスペンション装置の概略構成を説明する。
図1は、本発明に係るストラットマウント構造を適用したサスペンション装置の概略構成を示す図である。また、図2は、図1のA部の拡大図である。
【0015】
図1及び図2に示すように、サスペンション装置100は、大きくショックアブソーバ110と、コイルスプリング(スプリング)120と、ロアスプリングシート130と、アッパスプリングシート(スプリングシート)140と、芯金部材150と、バンプストッパ160と、インシュレータロア(ロアプレート)170と、インシュレータアッパ(アッパプレート)180とで構成されている。
【0016】
ショックアブソーバ110は、ホイールからの振動や衝撃が入力されるシリンダ111と、シリンダ111への入力を減衰させるピストンロッド112とで、シリンダ111とピストンロッド112とが相対的に上下動可能に一体で構成されている。そして、ショックアブソーバ110は、ホイールからの振動や衝撃がシリンダ111に入力され、シリンダ111が上下動することで振動や衝撃を減衰するものである。
【0017】
シリンダ111は、金属で一端が閉塞し他端が開放した円筒状に形成されている。そして、シリンダ111の閉塞した一端側の端部には、車両の懸架装置への取付部113が形成されている。また、シリンダ111の一端と他端との中間位置には、ロアスプリングシート130を介してコイルスプリング120を支持するスプリング受け部114が設けられている。
【0018】
ピストンロッド112は、一端にホイールからの入力によりシリンダ111が上下動することで入力を減衰させる図示しないピストンを有し、他端に芯金部材150が取り付けられる芯金部材取付部115に芯金部材150をナット190で固定するためのネジ部116が形成されている。
コイルスプリング120は、金属でコイル状に形成されたスプリングである。そして、コイルスプリング120は、ショックアブソーバ110に入力された振動や衝撃が伝達され、コイルスプリング120の全長が縮められることで振動や衝撃を吸収するものである。
【0019】
ロアスプリングシート130は、ゴム材で形成されており、ショックアブソーバ110のシリンダ111のスプリング受け部114に配設されてコイルスプリング120の下端を支持するものである。
アッパスプリングシート140は、ゴム材で形成されており、後述するインシュレータロア170の外周部の下面に配設されてコイルスプリング120の上端を支持するものである。また、アッパスプリングシート140は、ショックアブソーバ110の作動時にコイルスプリング120とアッパスプリングシート140との接触部にてコイルスプリング120が滑動可能に形成され、コイルスプリング120の全長の変化による周方向への変形を吸収している。また、アッパスプリングシート140には、ショックアブソーバ110のピストンロッド112を泥等から保護するための蛇腹状の保護部141が形成されている。
【0020】
芯金部材150は、金属の薄板で外周端部が上方側に折り曲げられた略円筒状に形成されている。そして芯金部材150の中心部には、ピストンロッド112を挿通する挿通孔151が形成されている。芯金部材150の外周端部は、上方に折り曲げられた状態からさらに内側に折り曲げられており、芯金部材150をピストンロッド112に固定するナット190を挿入可能な内径の挿入孔152を形成している。
【0021】
バンプストッパ160は、ゴム材等の弾性を有する制振部材により形成されており、下方側に向かって縮径される略円錐形状の筒状とされている。バンプストッパ160は、上端部がインシュレータアッパ180に当接されるとともに、インシュレータアッパ180とインシュレータロア170との間に内包されるベース部161(上方側の部位)と、ベース部161よりも小径でベース部161からインシュレータロア170よりも下方側に延びるストッパ部162(下方側の部位)とから構成されている。バンプストッパ160のベース部161には、芯金部材150が埋め込まれた状態で内包されており、バンプストッパ160に加硫接着されている。そして、バンプストッパ160のストッパ部162の下端部には、平面状の当接部163が形成されている。またバンプストッパ160の中心部には、ストッパ部162の下端部(当接部163)より芯金部材150に到達するように軸方向に貫通されてショックアブソーバ110のピストンロッド112が挿通される挿通孔164と、ベース部161の上端面より芯金部材150に到達するように軸方向に貫通されてナット190を挿入可能な内径の挿入孔165とが形成されている。そして、バンプストッパ160は、ホイールからの過大な衝撃の入力によりショックアブソーバ110のシリンダ111が大きく移動した時にシリンダ111と当接しバンプストッパ160が圧縮されることで入力を吸収するものである。
【0022】
インシュレータロア170は、金属の円盤形状或いは略三角形状で中心部に向かうにつれ下方側に突出するように形成されている。また、インシュレータロア170の中心部には、バンプストッパ160のストッパ部162を挿入可能で芯金部材150の外径よりも小さい内径の開口部171が設けられている。開口部171の周縁は、バンプストッパ160のストッパ部162の軸方向に沿って下方側に突出された筒状に形成されており、バンプストッパ160のストッパ部162の径方向への変形を規制するバンプストッパ規制部172を構成している。そして、インシュレータロア170の外周部には、インシュレータロア170をインシュレータアッパ180を介して車体200に固定する複数の植え込みボルト191が備えられている。
【0023】
インシュレータアッパ180は、金属の円盤形状或いは略三角形状で中心部にバンプストッパ160のベース部161を挿入可能な内径で上方に突出するバンプストッパ挿入部181が形成されている。そして、バンプストッパ挿入部181の中心部には、ナット190を挿入可能な内径の挿入孔182が形成されている。また、インシュレータアッパ180の外周部には、インシュレータロア170に備えられる植え込みボルト191の位置に対応するように植え込みボルト191が挿通される複数のボルト穴183が形成されている。そして、インシュレータアッパ180のバンプストッパ挿入部181には、バンプストッパ160のベース部161が加硫接着され、インシュレータアッパ180とバンプストッパ160とが一体に形成される。
【0024】
また、このような部品で構成されるサスペンション装置100は、図1及び図2に示すように組み立てられ、車体200に固定される。詳しくは、ショックアブソーバ110のスプリング受け部114には、スプリング受け部114側から順にロアスプリングシート130と、コイルスプリング120と、アッパスプリングシート140とインシュレータロア170とが載せられる。そして、アッパスプリングシート140の保護部141の端部は、ショックアブソーバ110のシリンダ111の外周に被せられる。また、インシュレータアッパ180が加硫接着されたバンプストッパ160は、挿通孔164にショックアブソーバ110のピストンロッド112を挿通しつつ、ストッパ部162がインシュレータロア170の開口部171からバンプストッパ規制部172に挿入される。つまり、バンプストッパ160は、ストッパ部162が開口部171(バンプストッパ規制部172)からピストンロッド112に沿ってインシュレータロア170の下方側に突出した状態とされる。次に、インシュレータアッパ180の外周部に形成されるボルト穴183にインシュレータロア170の外周部に備えられる植え込みボルト191が挿通されて互いの外周部が重ね合わせられる。この時、バンプストッパ160の芯金部材150を包含しているベース部161がインシュレータアッパ180とインシュレータロア170との間に内包された状態とされる。そして、ピストンロッド112のネジ部116にナット190を螺合して、ショックアブソーバ110とバンプストッパ160とを固定することで、サスペンション装置100を構成するショックアブソーバ110と、コイルスプリング120と、ロアスプリングシート130と、アッパスプリングシート140と、インシュレータロア170と、インシュレータアッパ180と、バンプストッパ160とが一体に組み立てられる。そして、インシュレータロア170の植え込みボルト191を車体200に挿通しナット201を螺合することで、サスペンション装置100が組み立てられた状態で車体200に固定される。
【0025】
このように構成された本発明に係るストラットマウント構造を適用したサスペンション装置100は、通常時にはショックアブソーバ110のシリンダ111に車両のホイールより振動及び衝撃等が入力されると、シリンダ111がバンプストッパ160に近付く方向に移動しコイルスプリング120を圧縮して振動及び衝撃等の入力を吸収する。そして、コイルスプリング120に受けた力は、アッパスプリングシート140を経てインシュレータロア170に伝達され、車体200に伝達される。更に、ショックアブソーバ110のピストンロッド112に伝達した振動等は、芯金部材150を介して、その周囲のバンプストッパ160のベース部161に吸収される。
【0026】
また、コイルスプリング120で吸収が不可能な大きな衝撃が車両のホイールよりショックアブソーバ110のシリンダ111に入力されると、ショックアブソーバ110のシリンダ111がコイルスプリング120を圧縮して衝撃を吸収しつつ、更に移動してバンプストッパ160のストッパ部162の当接部163と当接し圧縮して衝撃を吸収する。また、ショックアブソーバ110のシリンダ111が当接してバンプストッパ160へ入力した衝撃は、バンプストッパ160からインシュレータアッパ180を介して車体200に伝達される。
【0027】
以下、このように構成された本発明に係るストラットマウント構造を適用したサスペンション装置100の作用及び効果について説明する。
本実施形態では、バンプストッパ160が、芯金部材150を包含してインシュレータロア170とインシュレータアッパ180との間に内包されるベース部161と、インシュレータロア170の開口部171の周縁部に形成される筒状のバンプストッパ規制部172よりインシュレータロア170の下方向に突出するように延設されたストッパ部162とで構成され、このバンプストッパ160によって、ショックアブソーバ110のシリンダ111の上方への移動を規制してショックアブソーバ110からの入力をインシュレータアッパ180を介して車体200に伝達するようにするとともに、ショックアブソーバ110のピストンロッド112からの振動等の入力を吸収して、車体200への伝達を抑制するようにしている。すなわち、従来では別々に配置されていたピストンロッド112からの振動等の入力を吸収する制振部材と、シリンダ111の移動を規制するバンプストッパとの2部材を一体とし、バンプストッパで制振部材を兼用する構成としている。これにより、ストラットマウント構造の部品点数を低減して構成を簡素化でき、コストを低減することができる。
【0028】
また、車両のホイールからの大きな衝撃等が入力したときには、コイルスプリング120からの入力をアッパスプリングシート140で受けインシュレータロア170を介して車体200に伝達するようにし、更にショックアブソーバ110のシリンダ111からの入力をバンプストッパ160で受けインシュレータアッパ180を介して車体200に伝達するようにしている。
【0029】
すなわち、比較的大きな入力であるバンプストッパ160への入力とコイルスプリング120への入力とを二分して別々の経路を通って車体200に伝達することができるので、インシュレータロア170もしくはインシュレータアッパ180の一方に偏って入力が集中することがなく、インシュレータロア170とインシュレータアッパ180の強度を比較的低く設定することが可能となる。したがって、これらのインシュレータロア170及びインシュレータアッパ180に対して、部材の板厚を厚くしたり、高強度の高級材料を用いたりする必要がないので、材料コストを抑えることができる。更にバンプストッパ160をインシュレータアッパ180で受ける構成とすることで、バンプストッパ160を全体的に車体200側(インシュレータアッパ180側)に近づけた位置に配置させることができるので、車体200への取り付けにおいて従来と同様のバンプストッパ位置となるように車体200を設計すると車両のボンネット位置を低く設計することができ、車両のデザイン性を良くすることができる。
【0030】
また、インシュレータロア170のバンプストッパ規制部172を下方向に突出する筒状に形成しており、ショックアブソーバ110からの入力でバンプストッパ160が圧縮されることによる径方向への変形を抑制して、バンプストッパ160の荷重方向を安定させことができるので、設計時におけるバンプストッパ160の減衰特性を確実に得ることができる。
【0031】
また、芯金部材150を金属の薄板で、外周端部が上方側に折り曲げられた後、更に内側方向に曲げられた円筒形状に形成し、芯金部材150の端部がシリンダから入力方向と同じ方向に向かないような形状としている。これにより、芯金部材150とゴム材で形成されるバンプストッパ160のベース部161との接触面積を広くすることができるので、芯金部材150からバンプストッパ160のベース部161に入力される応力が一部に集中することが抑制され、バンプストッパ160の耐久性を向上させることができる。
【0032】
以上で発明の実施形態の説明を終えるが、発明の形態は本実施形態に限定されるものではない。
例えば、本実施形態は、バンプストッパ160と芯金部材150の加硫接着と、バンプストッパ160とインシュレータアッパ180との加硫接着を個別に行うようにしているが、これに限定されるものではなく、双方の加硫接着を同時に行うようにしても良く、加硫接着を同時に行うことで、製造工程を減らすことができるので更にコストを低減することができる。
【0033】
また、本実施形態では、ショックアブソーバ110の作動時にコイルスプリング120とアッパスプリングシート140との接触部にてコイルスプリング120とアッパスプリングシート140とを相対的に滑動可能に形成しているが、これに限定されるものではなく、アッパスプリングシート140とインシュレータロア170との間にベアリングを配設し、ベアリングによりアッパスプリングシート140とインシュレータロア170とを相対的に滑動可能とするようにしてもよく、本願実施形態と同様にコイルスプリング120の全長の変化による周方向への変形を吸収することができる。
【0034】
また、アッパスプリングシート140にピストンロッド112を保護するための蛇腹状の保護部141を一体に形成するようにしているが、これに限定されるものではなく、それぞれを別々に形成するようにしても良い。
【符号の説明】
【0035】
100 サスペンション装置
110 ショックアブソーバ
111 シリンダ
112 ピストンロッド
120 コイルスプリング(スプリング)
140 アッパスプリングシート(スプリングシート)
160 バンプストッパ
161 ベース部
162 ストッパ部
170 インシュレータロア(ロアプレート)
171 開口部
172 バンプストッパ規制部
180 インシュレータアッパ(アッパプレート)
200 車体
図1
図2