特許第5761544号(P5761544)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5761544塩素含有灰の脱塩処理方法および脱塩処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5761544
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】塩素含有灰の脱塩処理方法および脱塩処理装置
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/00 20060101AFI20150723BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20150723BHJP
   B03B 5/28 20060101ALI20150723BHJP
   B03B 9/06 20060101ALI20150723BHJP
   C04B 7/38 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
   B09B3/00 304G
   B09B5/00 NZAB
   B03B5/28 B
   B03B9/06
   C04B7/38
【請求項の数】11
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-212930(P2014-212930)
(22)【出願日】2014年10月17日
【審査請求日】2014年11月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088719
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 博史
(72)【発明者】
【氏名】原口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】林 浩志
(72)【発明者】
【氏名】矢島 達哉
【審査官】 原 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−193456(JP,A)
【文献】 特開2009−142790(JP,A)
【文献】 特開2009−061365(JP,A)
【文献】 特開2009−090173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00−5/00
B03B 5/00−5/74,9/00−9/06
C04B 7/36−7/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素含有灰に洗浄水を加えて初期スラリーにして塩素を水に浸出する初期洗浄工程と、該初期スラリーに高分子凝集剤を加えて凝集フロックを沈降分離させて初期濃縮スラリーを形成すると共に該塩素含有灰の塩素を一次上澄水に移行させる初期濃縮工程と、該初期濃縮スラリーを加水した後に湿式サイクロンを用いて細粒スラリーと粗粒スラリーに分離する分級工程と、さらに該細粒スラリーに高分子凝集剤を加えて細粒凝集フロックを沈降分離させて細粒濃縮スラリーを形成すると共に該細粒の塩素を二次上澄水に移行させる細粒濃縮工程とを有し、上記初期濃縮工程の一次上澄水および上記細粒濃縮工程の二次上澄水を排水して脱塩すると共に、上記細粒濃縮スラリーを脱水洗浄して脱塩した細粒洗浄灰を回収する工程と、上記粗粒スラリーを脱水洗浄して脱塩した粗粒洗浄灰を回収する工程を有することを特徴とする塩素含有灰の脱塩処理方法。
【請求項2】
塩素含有灰に洗浄水を加えて固形分濃度30〜300g/Lの初期スラリーにし、該初期スラリーに高分子凝集剤を添加して固形分濃度が該初期スラリーの2倍以上に濃縮した初期濃縮スラリーと、一次上澄水とに分離し、該一次上澄水に塩素含有灰に含まれる塩素量の40〜90%を移行させて系外に除去する請求項1に記載する塩素含有灰の脱塩処理方法。
【請求項3】
初期濃縮スラリーに洗浄水を加えて固形分濃度10〜150g/Lの希釈スラリーにし、該希釈スラリーを湿式サイクロンに導入して、50%粒子径が30μm以上〜1000μm以下の粗粒を含む粗粒スラリーと、50%粒子径が30μm未満の細粒を含む細粒スラリーとに分級する請求項1または請求項2に記載する塩素含有灰の脱塩処理方法。
【請求項4】
細粒スラリーに高分子凝集剤を添加して細粒灰を沈降分離させて固形分濃度が該細粒スラリーの2倍以上に濃縮した細粒濃縮スラリーと、二次上澄水とに分離し、該二次上澄水に塩素含有灰に含まれる塩素量の5〜60%を移行させて系外に除去し、該細粒濃縮スラリーを回収する請求項1〜請求項3の何れかに記載する塩素含有灰の脱塩処理方法。
【請求項5】
回収した細粒濃縮スラリーを脱水洗浄して、処理開始時の塩素含有灰に含まれる塩素量を1/2〜1/60に低減した細粒洗浄灰を回収する請求項1〜請求項4の何れかに記載する塩素含有灰の脱塩処理方法。
【請求項6】
粗粒スラリーを洗浄し固液分離して、処理開始時の塩素含有灰に含まれる塩素量を1/2〜1/100に低減した粗粒洗浄灰を回収する請求項1〜請求項4の何れかに記載する塩素含有灰の脱塩処理方法。
【請求項7】
希釈スラリーを湿式サイクロンに導入して細粒スラリーと粗粒スラリーに分級する工程を複数回行う請求項1〜請求項6の何れかに記載する塩素含有灰の脱塩処理方法。
【請求項8】
希釈スラリーを湿式サイクロンに導入して一次細粒スラリーと一次粗粒スラリーに分級し、該一次粗粒スラリーに洗浄水を加えて固形分濃度10〜150g/Lの二次希釈スラリーにし、該二次希釈スラリーを再び湿式サイクロンに導入して二次細粒スラリーと二次粗粒スラリーに分級し、該二次細粒スラリーと上記一次細粒スラリーを混合して総細粒スラリーにし、該総細粒スラリーに高分子凝集剤を加え、細粒を沈降させて細粒濃縮スラリーにする請求項7に記載する塩素含有灰の脱塩処理方法。
【請求項9】
粗粒洗浄灰および細粒洗浄灰を回収してセメント原料として用いる請求項1〜請求項8の何れかに記載する塩素含有灰の脱塩処理方法。
【請求項10】
都市ごみの中間処理から発生する主灰および飛灰、産業廃棄物の中間処理から発生する燃え殻および煤塵、埋め立て処分場の再生工事で発生する掘り起こし灰、またはセメント工場から発生する塩素バイパスダストを処理する請求項1〜請求項9の何れかに記載する塩素含有灰の脱塩処理方法。
【請求項11】
塩素含有灰に洗浄水を加えて初期スラリーにして塩素を水に浸出する手段、該初期スラリーを撹拌する手段、該初期スラリーに高分子凝集剤を添加する手段、凝集フロックを沈降分離させて初期濃縮スラリーを形成すると共に該塩素含有灰の塩素を一次上澄水に移行させて上澄水と分離する手段、該上澄水を系外に除去する手段、該初期濃縮スラリーに洗浄水を加えて希釈スラリーにする手段、該希釈スラリーを細粒スラリーと粗粒スラリーに分級する湿式サイクロン、該細粒スラリーに高分子凝集剤を加えて細粒を沈降分離させて細粒濃縮スラリーを形成すると共に該細粒の塩素を上澄水に移行させて上澄水と分離する手段、該細粒濃縮スラリーを脱水洗浄して脱塩した細粒洗浄灰を回収する手段、上記粗粒スラリーを脱水洗浄して脱塩した粗粒洗浄灰を回収する手段を備えることを特徴とする塩素含有灰の脱塩処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩素含有灰の脱塩技術方法に係り、特に都市ごみや産業廃棄物の焼却炉から排出される焼却灰(主灰、飛灰、燃え殻、煤塵)、埋め立て処分場からの掘り起こし焼却灰、またはセメント工場から発生する塩素バイパスダスト等の塩素濃度の高い焼却灰を少量の洗浄水で効率よく脱塩処理する技術に関する。本発明の脱塩処理技術は塩素濃度の高い焼却灰等をセメント原料として利用できるように脱塩することができる。なお、本発明において、塩素含有灰は、都市ごみや産業廃棄物の焼却施設から排出される焼却灰(主灰、飛灰、燃え殻、煤塵)、埋め立て処分場からの掘り起こし焼却灰、セメント工場から発生する塩素バイパスダストの何れか一種またはこれらの混合物を意味する。
【背景技術】
【0002】
都市ごみや産業廃棄物の中間処理によって発生する焼却灰は、従来は埋め立て処分、あるいは溶融処理して減容化した後に埋め立て処分される。しかしながら、既存の埋め立て処分場の拡張や新規処分場の建設は、環境規制や近隣住民との合意が得られない等の社会的な要因から困難な状況にある。セメントは、カルシウム、ケイ素、アルミニウム、鉄などの酸化物が主成分であり、これらを含む廃棄物はセメント原料として活用することができる。高炉スラグや石炭灰など種々の廃棄物がセメント原料として積極的に利用されている。都市ごみ、産業廃棄物を中間処理したときに発生する焼却灰についても、セメント原料として活用されつつある。
【0003】
しかし、都市ごみ、産業廃棄物などの焼却灰には高濃度の塩素が含まれているため、セメント原料として利用すると生成するセメントも塩素を大量に含むことになる。セメント中に塩素が大量に含まれている場合には、鉄筋が腐食しやすくなるので、鉄筋コンクリートの耐久性が低下する。JIS規格(JIS R 5210)では、普通ポルトランドセメント中の塩素含有量を350ppm以下と規定している。一方、焼却灰には1〜25wt%程度の塩素が含まれている。焼却灰のような高濃度に塩素を含むものをセメントの原料として活用しようとすると、ごく少量しか使うことができない。埋め立て処分場の再生工事で発生する掘り起こし灰、セメント工場から発生する塩素バイパスダストをセメント原料に活用するときにも同様の問題が生じる。
【0004】
そこで、焼却灰のように塩素濃度の高い廃棄物を脱塩する方法として水浸出による湿式脱塩法が知られている。塩素含有灰を水洗すると、塩素等の可溶成分は水中に溶解するため、洗浄後の灰の塩素濃度は減少する。洗浄灰の塩素濃度を十分に下げることで、セメント原料として大量に活用することができる。同様の湿式脱塩処理により、塩素含有灰を焼成骨材の原料として活用することもできる。また、同様の湿式脱塩処理は塩素含有灰を溶融処理するときの前処理とすることができる。
【0005】
しかし高塩素濃度の灰スラリーを一段の洗浄処理で脱塩し、固液分離して洗浄灰を回収しようとすると、洗浄灰の脱塩率が低く、あるいは洗浄灰の塩素濃度のばらつきが大きいためセメント原料に適さないことが多い。また、洗浄排水の塩素濃度は数g/L、しばしば10g/L以上になるので設備の金属腐食を起こしやすく、またカルシウムなどの金属イオンも高濃度に含むため配管や設備にスケールを生成したり、固液分離に使用する濾布の閉塞を生じやすいなど、装置に対する負担も大きいなどの問題が生じる。
【0006】
このような問題を避けるため、塩素含有廃棄物の処理方法として以下の方法が知られている。
(イ) 焼却灰と水を混合撹拌し、摩砕してスラリー化した後に水簸で粗粒と細粒に分級し、細粒スラリーに酸を添加して脱塩する方法(特許文献1)。
(ロ) 焼却灰を、篩や湿式サイクロンを用いて粗粒と細粒に分級した後、粗粒は水洗浄し、細粒は水洗浄と共に化学的あるいは物理的に洗浄して脱塩する方法(特許文献2)。
(ハ) 焼却灰と水の混合と脱水を繰り返して焼却灰を洗浄し、一次洗浄と二次洗浄の間に遠心分離を行い、固形分の湿潤灰の含水率が60wt%以下になるまで脱水して高塩素濃度の洗浄水を分離して脱塩する方法(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5561326号公報
【特許文献2】特許第4937074号公報
【特許文献3】特許第3818924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1および特許文献2の脱塩方法は、焼却灰を水で粗洗浄した後に撹拌混合などにより一次洗浄し、湿式サイクロンもしくは水簸によって、細粒スラリーと粗粒スラリーに分級し、それぞれ水洗浄、あるいは酸添加などによる化学的洗浄によって二次的洗浄を行っている。しかし、これらの方法では分級後も各々のスラリー液中の塩素濃度は一次洗浄時の液性と変わらず、液中の塩素濃度は数g/L以上〜10g/L以上と高いままである。そのため、水や薬剤を添加し二次洗浄を実施しても塩素の浸出が抑制され、十分な脱塩ができず、また脱塩を促進するための水量や薬剤量が増大する。
【0009】
また、特許文献1の方法では、細粒と粗粒の湿式分級に水簸を用いているが、水簸は粒子の粒子径差や沈降速度差を利用しているため、灰粒子どうしがフロック状の凝集塊を形成していると、灰粒子の本来の粒度分布とは異なる分級が行われてしまい、分級効率が低下する問題がある。さらに、特許文献2の方法では、分級および脱塩洗浄の手段として湿式サイクロンを用いる例を示しているが、サイクロン内部の滞留時間は数秒と非常に短時間であるため、水への塩素の浸出は不十分である。また、湿式サイクロンは灰と水が十分に混合してスラリー化していないと分級効率が低下する。
【0010】
特許文献3の脱塩方法は、一次洗浄と二次洗浄の間に遠心分離を行い、固形分の湿潤灰の含水率が60wt%以下になるまで脱水して高塩素濃度の洗浄水を分離しているが、含水率60wt%以下の湿潤灰は固く圧搾されたケーキ状であるため、再懸濁して脱塩洗浄するためには細かく解砕する必要がある。解砕が足りないと二次洗浄以降の脱塩効率が低下する。さらに、含水率60wt%以下の湿潤灰を再懸濁するために羽根車を用いた強撹拌装置を用いているが、羽根車の摩耗などによりランニングコストが増大する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の脱塩処理方法は、従来の上記方法における問題を克服したものであり、塩素含有灰に水を加えたスラリーを所定時間撹拌して脱塩洗浄を行い、該スラリーに高分子凝集剤を加えて凝集フロックを沈降分離させて濃縮スラリーを形成するスラリー濃縮工程を行い、次に、このように形成した濃縮スラリーを粗粒スラリーと細粒スラリーに分離する分級工程を組み合わせることによって、高い脱塩効果を達成し、セメント原料に適する洗浄灰を回収することができる脱塩処理方法と脱塩処理装置を提供する。
【0012】
本発明によれば、上記課題の解決手段として、以下の構成を有する脱塩処理方法が提供される。
〔1〕塩素含有灰に洗浄水を加えて初期スラリーにして塩素を水に浸出する初期洗浄工程と、該初期スラリーに高分子凝集剤を加えて凝集フロックを沈降分離させて初期濃縮スラリーを形成すると共に該塩素含有灰の塩素を一次上澄水に移行させる初期濃縮工程と、該初期濃縮スラリーを加水した後に湿式サイクロンを用いて細粒スラリーと粗粒スラリーに分離する分級工程と、さらに該細粒スラリーに高分子凝集剤を加えて細粒凝集フロックを沈降分離させて細粒濃縮スラリーを形成すると共に該細粒の塩素を二次上澄水に移行させる細粒濃縮工程とを有し、上記初期濃縮工程の一次上澄水および上記細粒濃縮工程の二次上澄水を排水して脱塩すると共に、上記細粒濃縮スラリーを脱水洗浄して脱塩した細粒洗浄灰を回収する工程と、上記粗粒スラリーを脱水洗浄して脱塩した粗粒洗浄灰を回収する工程を有することを特徴とする塩素含有灰の脱塩処理方法。
〔2〕塩素含有灰に洗浄水を加えて固形分濃度30〜300g/Lの初期スラリーにし、該初期スラリーに高分子凝集剤を添加して固形分濃度が該初期スラリーの2倍以上に濃縮した初期濃縮スラリーと、一次上澄水とに分離し、該一次上澄水に塩素含有灰に含まれる塩素量の40〜90%を移行させて系外に除去する上記[1]に記載する塩素含有灰の脱塩処理方法。
〔3〕初期濃縮スラリーに洗浄水を加えて固形分濃度10〜150g/Lの希釈スラリーにし、該希釈スラリーを湿式サイクロンに導入して、50%粒子径が30μm以上〜1000μm以下の粗粒を含む粗粒スラリーと、50%粒子径が30μm未満の細粒を含む細粒スラリーとに分級する上記[1]または上記[2]に記載する塩素含有灰の脱塩処理方法。
〔4〕細粒スラリーに高分子凝集剤を添加して細粒灰を沈降分離させて固形分濃度が該細粒スラリーの2倍以上に濃縮した細粒濃縮スラリーと、二次上澄水とに分離し、該二次上澄水に塩素含有灰に含まれる塩素量の5〜60%を移行させて系外に除去し、該細粒濃縮スラリーを回収する上記[1]〜上記[3]の何れかに記載する塩素含有灰の脱塩処理方法。
〔5〕回収した細粒濃縮スラリーを脱水洗浄して、処理開始時の塩素含有灰に含まれる塩素量を1/2〜1/60に低減した細粒洗浄灰を回収する上記[1]〜上記[4]の何れかに記載する塩素含有灰の脱塩処理方法。
〔6〕粗粒スラリーを洗浄し固液分離して、処理開始時の塩素含有灰に含まれる塩素量を1/2〜1/100に低減した粗粒洗浄灰を回収する上記[1]〜上記[4]の何れかに記載する塩素含有灰の脱塩処理方法。
〔7〕希釈スラリーを湿式サイクロンに導入して細粒スラリーと粗粒スラリーに分級する工程を複数回行う上記[1]〜上記[6]の何れかに記載する塩素含有灰の脱塩処理方法。
〔8〕希釈スラリーを湿式サイクロンに導入して一次細粒スラリーと一次粗粒スラリーに分級し、該一次粗粒スラリーに洗浄水を加えて固形分濃度10〜150g/Lの二次希釈スラリーにし、該二次希釈スラリーを再び湿式サイクロンに導入して二次細粒スラリーと二次粗粒スラリーに分級し、該二次細粒スラリーと上記一次細粒スラリーを混合して総細粒スラリーにし、該総細粒スラリーに高分子凝集剤を加え、細粒を沈降させて細粒濃縮スラリーにする上記[7]に記載する塩素含有灰の脱塩処理方法。
〔9〕粗粒洗浄灰および細粒洗浄灰を回収してセメント原料として用いる上記[1]〜上記[8]の何れかに記載する塩素含有灰の脱塩処理方法。
〔10〕都市ごみの中間処理から発生する主灰および飛灰、産業廃棄物の中間処理から発生する燃え殻および煤塵、埋め立て処分場の再生工事で発生する掘り起こし灰、またはセメント工場から発生する塩素バイパスダストを処理する上記[1]〜上記[9]の何れかに記載する塩素含有灰の脱塩処理方法。
【0013】
また、本発明によれば、以下の構成を有する脱塩処理装置が提供される。
〔11〕塩素含有灰に洗浄水を加えて初期スラリーにして塩素を水に浸出する手段、該初期スラリーを撹拌する手段、該初期スラリーに高分子凝集剤を添加する手段、凝集フロックを沈降分離させて初期濃縮スラリーを形成すると共に該塩素含有灰の塩素を一次上澄水に移行させて上澄水と分離する手段、該上澄水を系外に除去する手段、該初期濃縮スラリーに洗浄水を加えて希釈スラリーにする手段、該希釈スラリーを細粒スラリーと粗粒スラリーに分級する湿式サイクロン、該細粒スラリーに高分子凝集剤を加えて細粒を沈降分離させて細粒濃縮スラリーを形成すると共に該細粒の塩素を上澄水に移行させて上澄水と分離する手段、該細粒濃縮スラリーを脱水洗浄して脱塩した細粒洗浄灰を回収する手段、上記粗粒スラリーを脱水洗浄して脱塩した粗粒洗浄灰を回収する手段を備えることを特徴とする塩素含有灰の脱塩処理装置。
【0014】
〔具体的な説明〕
本発明の脱塩処理方法は、塩素含有灰に洗浄水を加えて初期スラリーにして塩素を水に浸出する初期洗浄工程と、該初期スラリーに高分子凝集剤を加えてスラリー中の灰粒子を凝集フロックとして沈降分離させて初期濃縮スラリーを形成する初期濃縮工程と、該初期濃縮スラリーを湿式サイクロンによって細粒スラリーと粗粒スラリーに分離する分級工程と、さらに該細粒スラリーに高分子凝集剤を加えて細粒凝集フロックを沈降分離させて細粒濃縮スラリーを形成する細粒濃縮工程と、該細粒濃縮スラリーを脱水洗浄して細粒洗浄灰を回収する工程と、上記粗粒スラリーを脱水洗浄して粗粒洗浄灰を回収する工程を有することを特徴とする塩素含有灰の脱塩処理方法である。
本発明の脱塩処理方法の工程図を図1図4に示す。
【0015】
〔初期洗浄工程〕
本発明の脱塩処理方法は、最初の工程として、塩素含有灰に洗浄水を加えて混合槽に導き、所定時間撹拌し、初期スラリーにして塩素を水に浸出させる(初期洗浄工程)。洗浄水量は、後段の沈降分離において塩素含有灰に含まれる塩素量の40〜90%を上澄水に移行させる水量が好ましく、具体的には、例えば固形分濃度30〜300g/Lのスラリーにするのが好ましい。この固形分濃度にするには、概ね、処理開始時の塩素含有灰重量の2倍量〜20倍量の洗浄水を加えると良い。スラリーの水分量がこれより少ないと、塩素含有灰に含まれている塩素を水に溶解するのが不十分になる。またスラリーの水分量がこれより多いと沈降分離槽の上澄水の水量が多くなるので、排水処理の負担が過大になる。初期洗浄は、一般的な化学装置で用いられるような撹拌装置付きの角型または円筒型の完全混合槽、あるいは回転ドラム式混合槽を用いることができる。完全混合槽は1つの槽でもよいし、複数の槽を直列または並列に配置してもよい。回転ドラム式混合槽は、スラリーをそのまま撹拌してもよいし、あるいはボール状やロッド状の粉砕媒体をいれてもよい。塩素含有灰に粒子径5〜20mm以上の灰とは性状の異なる異物が混入しているときには、ふるい分けあるいは磁選してあらかじめ除去するとよい。
【0016】
〔初期濃縮工程〕
該初期スラリーに高分子凝集剤を加えてスラリー中の灰粒子を凝集フロックとして沈降分離させ、初期濃縮スラリーを形成する(初期濃縮工程)。例えば、高分子凝集剤を加えた初期スラリーを沈降分離槽に導いて灰粒子を沈降分離させ、初期濃縮スラリーを形成する。固形分濃度が該初期スラリーの2倍以上に濃縮したスラリーにするのが好ましい。例えば、初期スラリーの固形分濃度が60g/Lのものは300g/L程度に濃縮し、初期スラリーの固形分濃度が30g/Lのものは250g/L以上に濃縮するのが好ましい。なお、通常、スラリーの固形分濃度を400g/L以上に濃縮するには沈降時間が長時間になり、また配管内の閉塞も起こりやすくなるため、実操業では固形分濃度の上限を400g/L程度にして濃縮を行うのが好ましい。
【0017】
スラリーを濃縮することによって、濃縮した灰に含まれる塩素が洗浄水に浸出しやすくなる。スラリーの固形分濃度を該初期スラリーの2倍以上に濃縮することによって、塩素含有灰に含まれる塩素量の概ね40〜90%を一次上澄水に移行させて、系外に排出させることができる。沈降分離槽では槽底の初期濃縮スラリーとその上側の一次上澄水に分離し、該一次上澄水には塩素やカルシウムが多量に浸出しているので、該一次上澄水を系外に除去し、上記初期濃縮スラリーを沈降分離槽から抜き出す。
【0018】
〔分級工程〕
沈降分離槽から抜き出した初期濃縮スラリーに洗浄水を加えて希釈スラリーにする。希釈スラリーの固形分濃度は10〜150g/Lが好ましい。この固形分濃度にするには、概ね、スラリーの0.5倍量〜40倍量の洗浄水を初期濃縮スラリーに加えると良い。希釈スラリーの水分量がこれより少ないと、スラリーの粘性が大きくなるので流動状態が不良なり粗粒と細粒の分級が難くなる。一方、希釈スラリーの水分量がこれより多いと後工程の細粒濃縮工程における沈降分離の負担が過大になる。
【0019】
上記希釈スラリーを湿式サイクロンに導入して粗粒スラリーと細粒スラリーとに分級する。該希釈スラリー中の灰粒子は、高分子凝集剤の架橋作用によって多数の粒子どうしが高次に凝集したフロックを形成している。このため通常の水簸や篩分けを行うと、凝集フロックの粒径サイズに応じた分級が行われるため、本来の灰粒子の粒度分布とは異なる分級結果になる。一方、湿式サイクロンではその遠心力による剪断ストレスによって高分子凝集剤による架橋結合が切断され、一次粒子に分散させる効果があるため、灰粒子の粒度分布に対応する分級結果が得られやすい。
【0020】
分級は、50%粒子径30μm以上〜1000μm以下の粗粒を含む粗粒スラリーと50%粒子径が30μm未満の細粒を含む細粒スラリーとに分級するのが好ましい。ここで50%径粒子とは、粒子の体積粒度分布の積算重量割合の分布曲線において、50%を示す粒子径である。一般的に細粒に塩素が濃縮しやすいため、粗粒灰に比べて、細粒灰の塩素濃度の方が高い。希釈スラリーを細粒スラリーと粗粒スラリーに分級することによって、細粒スラリーに塩素を多く移行させ、粗粒スラリーの塩素濃度を低減することができる。粗粒と細粒に分級する基準の粒子径(分級径と云う)は30μm〜100μmが好ましく、より好ましくは30μm〜80μmが望ましい。分級径がこの範囲より小さいと、精密な分級を実施しなければならないため湿式サイクロンの処理流量が低下したり、湿式サイクロンの多段処理を行わなければならないことから、灰重量当たりの処理コストが上がる。一方、分級基準の粒子径がこの範囲より大きいと細粒スラリーに移行する粒子の分配率が高くなりすぎ、後段にある細粒スラリーの固液分離設備への負荷が大きくなる。特に最適な分級基準の粒子径は、塩素含有灰の粒度分布および細粒洗浄灰と固形洗浄灰の重量分配比を考慮して決定するとよい。細粒洗浄灰と固形洗浄灰の重量分配比が1:1前後〜1:3前後となるような分級径が好ましく、より好ましくは、1:1前後となるような分級径が望ましい。分級径は、粒子の遠心力に影響を及ぼす因子、例えばサイクロン内径あるいはサイクロンへのスラリー流量を増減することによって調整することができる。
【0021】
〔細粒濃縮工程〕
細粒スラリーを抜き出して高分子凝集剤を添加し、細粒灰を沈降分離させて細粒濃縮スラリーにする(細粒濃縮工程)。例えば、高分子凝集剤を加えた細粒スラリーを沈降分離槽に導いて細粒灰を凝集フロックとして沈降分離させ、細粒濃縮スラリーを形成する。固形分濃度が細粒スラリーの2倍以上に濃縮したスラリーにするのが好ましい。
【0022】
スラリーを濃縮することによって、細粒灰に含まれていた塩素を上澄液として系外に排出することができる。スラリーの固形分濃度を該細粒スラリーの2倍以上に濃縮することによって、焼却灰に含まれる塩素量の概ね5〜60%を二次上澄水に移行させて、系外に排出させることができる。沈降分離槽では槽底の細粒濃縮スラリーとその上側の二次上澄水に分離し、該二次上澄水には塩素が比較的多く溶解しているので、該二次上澄水を除去し、上記細粒濃縮スラリーを沈降分離槽から抜き出す。なお、細粒スラリーに脱塩助剤を加えてから高分子凝集剤を加えることによって濃縮時の脱塩を促進しても良い。また、細粒スラリーに高分子凝集剤と共に沈降助剤を加えて沈降分離の速度を促進しても良い。
【0023】
希釈スラリーを湿式サイクロンに導入して細粒スラリーと粗粒スラリーに分級する工程を複数回行って脱塩効果を高めることができる。分級を二段階に行う例を図2に示す。
【0024】
図2に示すように、希釈スラリーを湿式サイクロンに導入して一次細粒スラリーと一次粗粒スラリーとに分級する。さらに、該一次粗粒スラリーに洗浄水を加えて二次希釈スラリーにする。固形分濃度10〜150g/Lに希釈するのが好ましい。この固形分濃度にするには、概ね、処理開始時の灰重量の0.5倍量〜60倍量の洗浄水を一次細粒スラリーに加えると良い。
【0025】
該二次希釈スラリーを再び湿式サイクロンに導入して二次細粒スラリーと二次粗粒スラリーに分級する。さらに、該二次細粒スラリーと上記一次細粒スラリーを混合して総細粒スラリーにする。該総細粒スラリーに高分子凝集剤を加え、細粒灰を凝集フロックにして沈降分離させて細粒濃縮スラリーにする。
【0026】
〔細粒洗浄灰の回収工程〕
細粒濃縮スラリーを沈降分離槽から抜き出して脱水し洗浄する。例えば、微細スラリーをフィルタープレスで脱水し、この脱水ケーキを洗浄してケーキ中の間隙水を洗浄水で置換して脱塩し、細粒固形分(細粒洗浄灰)を回収する。本発明の脱塩処理方法によれば、例えば、処理開始時の灰に含まれる塩素量を1/2〜1/60に低減した細粒洗浄灰を回収することができる。
【0027】
〔粗粒洗浄灰の回収工程〕
粗粒スラリーまたは二次粗粒スラリーは湿式サイクロンから抜き出し、固液分離して粗粒固形分(粗粒洗浄灰)を回収する。フィルタープレスは価格が高く単位時間当たりの処理量が低いので、粗粒希釈スラリーの固液分離は遠心分離機などの連続処理装置を用い、フィルタープレスへの負荷を軽減すると良い。本発明の脱塩処理方法によれば、例えば、処理開始時の灰に含まれる塩素量を1/2〜1/100に低減した粗粒洗浄灰を回収することができる。粗粒スラリーまたは二次粗粒スラリーの粒子濃度が高すぎて流動化しにくい場合には、固形分濃度が100〜400g/Lになるように水を添加するとよい。
【0028】
また、粗粒スラリーまたは二次粗粒スラリーの塩素濃度が高いときには、固液分離する前に水を添加して塩素を水中に浸出させて排水とともに塩素を排出するとよい。粗粒の含有量が極めて少ない灰の場合、あるいは処理する灰の総量が非常に少ない場合には、粗粒と細粒を別々に処理すると効率が低下することがある。そのような場合には、粗粒スラリーを細粒スラリーと混合してフィルタープレスで処理してもよい。
【0029】
本発明の上記処理方法において、沈降分離槽から抜き出した二次上澄水あるいは固液分離で発生するろ過水や洗浄水のうち、塩素濃度が低いものは上段の処理工程に戻して再利用すると良い。例えば、塩素濃度が5g/L以下の二次上澄水であれば、塩素含有灰の初期洗浄工程の洗浄水、または初期濃縮スラリーの希釈する洗浄水として再利用することが出来る。固液分離工程のろ過水や洗浄水であれば、塩素含有灰の初期洗浄工程の洗浄水、あるいは初期濃縮スラリーの洗浄水、あるいは一次粗粒スラリーを二次希釈スラリーにする工程の洗浄水に再利用することが出来る。
【0030】
また、上記処理方法において、高分子凝集剤としては市販のアニオン系高分子凝集剤を用いると良い。高分子凝集剤はあらかじめ0.01〜0.1%濃度に溶解した液を使用するとよい。また脱塩助剤として硫酸、硝酸、炭酸、酢酸などの酸類、あるいはそのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、鉄塩などの液体あるいは固形粉末を用いることができる。
【0031】
本発明の上記脱塩処理方法を実施例する装置として、塩素含有灰に洗浄水を加えて初期スラリーとして塩素成分を水に浸出させる手段、該初期スラリーに高分子凝集剤を添加する手段、凝集フロックを沈降分離させて初期濃縮スラリーと上澄水とに分離する手段、該上澄水を系外に除去する手段、該初期濃縮スラリーに洗浄水を加えて希釈スラリーにする手段、該希釈スラリーを細粒スラリーと粗粒スラリーに分級する湿式サイクロン、該細粒スラリーに高分子凝集剤を加えて細粒灰を沈降分離させて細粒濃縮スラリーと上澄水に分離する手段、該細粒濃縮スラリーを脱水洗浄して細粒洗浄灰を回収する手段、上記粗粒スラリーを脱水洗浄して粗粒固形分粗粒洗浄灰を回収する手段を備える脱塩処理装置を用いることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の脱塩処理方法は、塩素含有灰をスラリーにして塩素成分を水に浸出させる初期洗浄工程を行い、該スラリーに高分子凝集剤を加えて凝集フロックを沈降分離させて濃縮スラリーを形成するスラリー濃縮工程を行い、次に、このように形成した濃縮スラリーを粗粒スラリーと細粒スラリーに分離する分級工程を組み合わせた処理方法であり、最初にスラリー濃縮することによって早い段階で塩素濃度が高い上澄水を系外に除去するので、後段の脱塩洗浄が容易になり、洗浄灰の塩素濃度を大幅に低減することができる。また、段階的に塩素濃度を低減するので、確実に塩素濃度を下げることができ、洗浄灰の塩素濃度も安定する。さらに、装置の腐食やスケール生成を軽減することができ、また水使用量を削減することができる。
【0033】
本発明の脱塩処理方法は、初期濃縮工程の後に、湿式サイクロンによる分級を行うので、凝集フロックを破壊して本来の灰粒子の粒度分布に対応する分級が行われ、細粒または粗粒に最適な脱塩洗浄および固液分離がなされるので、高い脱塩効果を得ることができる。分級の前に凝集処理を行うことは、見かけ上は分級効果を低下させるように誤認されやすいので従来の処理方法では行われていないが、本発明の処理方法では、湿式サイクロンの剪断ストレスを利用して凝集フロックを破壊しつつ分級することができるため、分級効果を格段に高めることができる。
【0034】
本発明の脱塩処理方法によれば、例えば、塩素濃度14wt%〜15wt%の高塩素含有焼却灰等について、粗粒洗浄灰の塩素を96%以上除去し、また細粒洗浄灰の塩素を94%以上除去することができ、この粗粒洗浄灰および細粒洗浄灰はセメント原料として用いることができる。同様の方法で脱塩処理した洗浄灰は、焼成骨材の原料として用いることもできる。また、上記脱塩処理方法は、塩素含有灰を溶融処理するときの前処理として適用することができる。
【0035】
細粒洗浄灰の塩素濃度が高くて再利用が困難な場合には、粗粒洗浄灰のみを再利用することができる。この場合、細粒灰は埋め立て処分されるが、脱塩洗浄処理前の灰と比べると、可溶成分および粗粒灰分の重量が減少するために、埋め立て処分する灰重量はおよそ3/10以下に低減しており、大きい減容効果がある。
【0036】
本発明の脱塩処理方法は、都市ごみや産業廃棄物の焼却灰(主灰、飛灰、燃え殻、煤塵)に限らず、最終処分場の再生工事で発生する掘り起こし灰、またはセメント工場から発生する塩素バイパスダストなどの塩素濃度の高い焼却灰等を単独あるいは複数を同時に処理することができる。発明の脱塩処理方法はこれらの塩素含有灰を処理する態様を含む。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の脱塩処理方法(実施例1、5、7、9)の例を示す工程図。
図2】本発明の脱塩処理方法(実施例2、6、8、10)の例を示す工程図。
図3】本発明の脱塩処理方法(実施例4、12)の例を示す工程図。
図4】本発明の脱塩処理方法(実施例3、11)の例を示す工程図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の実施例を比較例と共に以下に示す。塩素含有灰の塩素濃度は10%硝酸溶解後に残渣をろ過し、ろ液中の塩素濃度を電量滴定法により測定することで評価した。電量滴定装置は中研コンサルティング社製品のSALMATE−100を使用した。湿式サイクロンは日立造船社製品のサイクロンMD−3を用いた。湿式篩は東京スクリーン社製品の目開き32マイクロメートルの標準ふるいを用いた。
【0039】
〔実施例1〕
産業廃棄物を焼却処理したときに発生した煤塵(塩素濃度13wt%)10kgを混合撹拌槽に投入し、該煤塵重量の10倍量の洗浄水を投入し、固形分濃度95g/Lの初期スラリーとして調整し、10分間混合撹拌した。10分間混合撹拌後の固形分濃度は、可溶成分が水に溶解したことにより、60g/Lに減少した。該スラリーに撹拌槽内濃度が1ppmになるようにアニオン系高分子凝集剤(商品名ダイヤフロックAP-825B)を添加して混合した後に、沈降分離槽に導入し、固形分濃度が4.3倍に濃縮するまで静置して固形分を沈降させて、上側の一次上澄水80.4Lを抜出して除去し、初期濃縮スラリーにした。該一次上澄水の塩素濃度は13.4g/Lであった。
初期濃縮スラリーを沈降分離槽から24.6Lを抜き出した。この固形分濃度は256g/Lであった。初期煤塵重量の5倍量の洗浄水を加えて固形分濃度84g/Lの希釈スラリーにし、10分間混合撹拌した。該希釈スラリーを湿式サイクロンに導入して、アンダーフロー側に粗粒スラリー17.4Lを分級し、オーバーフロー側に細粒スラリー57.2Lを分級した。このとき、粗粒スラリーの50%粒子径は75μmであり、細粒スラリーの50%粒子径は15μmであった。
該粗粒スラリーに初期煤塵重量の4倍量の洗浄水を加えて10分間混合撹拌して固形分濃度71g/Lの粗粒希釈スラリーにした。該粗粒希釈スラリーを遠心分離機に入れて脱水処理した後に、この脱水ケーキを初期煤塵重量の1倍量の洗浄水を用いて洗浄し、表面の付着水を除去し、粗粒洗浄灰4.1kgを得た。水分は粗粒濾液として排水した。
一方、細粒スラリーを湿式サイクロンから抜き出して混合撹拌層に導入し、アニオン系高分子凝集剤(商品名ダイヤフロックAP-825B)を撹拌槽内濃度が0.5ppmになるように添加して撹拌混合した後に沈降分離槽に導き、固形分濃度が上記細粒スラリーの4.3倍に濃縮するまで静置して固形分を沈降させ、固形分濃度165g/Lの細粒濃縮スラリーにした。該細粒濃縮スラリーの上側の二次上澄水を抜き出した。該二次上澄水の塩素濃度は3.7g/Lであった。該細粒濃縮スラリーをフィルタープレスで脱水し、この脱水ケーキを初期煤塵重量の2倍量の洗浄水で洗浄し、表面の付着水を除去して細粒洗浄灰2.2kgを得た。水分は細粒濾液として排水した。
回収した粗粒洗浄灰と細粒洗浄灰の塩素濃度はおのおの0.40wt%、0.44wt%であり、何れもセメント原料として利用可能であった。
【0040】
〔実施例2〕
産業廃棄物を焼却処理したときに発生した煤塵(塩素濃度13wt%)10kgを混合撹拌槽に投入し、該煤塵重量の10倍量の洗浄水を投入し、固形分濃度95g/Lの初期スラリーとして調整し、10分間混合撹拌した。10分間混合撹拌後の固形分濃度は、可溶成分が水に溶解したことにより、60g/Lに減少した。該スラリーに撹拌槽内濃度が1ppmになるようにアニオン系高分子凝集剤(商品名ダイヤフロックAP-825B)を添加して混合した後に、沈降分離槽に導入し、固形分濃度が4.3倍に濃縮するまで静置して固形分を沈降させて、上側の一次上澄水80.4Lを抜出して除去し、初期濃縮スラリーにした。該一次上澄水の塩素濃度は13.4g/Lであった。
初期濃縮スラリーを沈降分離槽から24.6Lを抜き出した。この固形分濃度は256g/Lであった。初期煤塵重量の5倍量の洗浄水を加えて固形分濃度84g/Lの一次希釈スラリーにし、10分間混合撹拌した。該一次希釈スラリーを湿式サイクロンに導入して、アンダーフロー側に一次粗粒スラリー17.4Lを分級し、オーバーフロー側に一次細粒スラリー57.2Lを分級した。このとき、一次粗粒スラリーの50%粒子径は75μmであり、一次細粒スラリーの50%粒子径は15μmであった。
該一次粗粒スラリーを湿式サイクロンから抜き出して、初期煤塵重量の4倍量の洗浄水を加えて固形分濃度71g/Lの二次希釈スラリーにし、10分間混合撹拌した。該二次希釈スラリーを湿式サイクロンに導入して、二次粗粒スラリー14.3Lと二次細粒スラリー43.1Lに分級した。このとき、二次粗粒スラリーの50%粒子径は71μmであり、二次細粒スラリーの50%粒子径は18μmであった。該二次粗粒スラリーを遠心分離機に入れて脱水処理した後に、この脱水ケーキを初期煤塵重量の1倍量の洗浄水を用いて洗浄し、表面の付着水を除去し、粗粒洗浄灰3.1kgを得た。水分は粗粒濾液として排水した。
一方、一次細粒スラリーと二次細粒スラリーをおのおの湿式サイクロンから抜き出して混合し、総細粒スラリーにした。この総細粒スラリーにアニオン系高分子凝集剤(商品名ダイヤフロックAP-825B)を撹拌槽内濃度が0.5ppmになるように添加して撹拌混合した後に沈降槽に導き、固形分濃度が総細粒スラリーの4.1倍に濃縮するまで静置して固形分を沈降させ、固形分濃度131g/Lの細粒濃縮スラリーにした。該細粒濃縮スラリーの上側の二次上澄水を抜き出した。該二次上澄水の塩素濃度は2.6g/Lであった。該細粒濃縮スラリーをフィルタープレスで脱水し、この脱水ケーキを初期煤塵重量の2倍量の洗浄水で洗浄し、表面の付着水を除去して細粒洗浄灰3.2kgを得た。水分は細粒濾液として排水した。
回収した粗粒洗浄灰と細粒洗浄灰の塩素濃度はおのおの0.30wt%、0.44wt%であり、何れもセメント原料として利用可能であった。
【0041】
〔実施例3〕
実施例1と同様の試験を実施し、塩素濃度3.7g/Lの二次上澄水43.9Lと、
粗粒濾液と細粒濾液をそれぞれ全量混合した塩素濃度0.38g/Lの脱水洗浄水90.8Lを得た。該二次上澄水43.9Lと該脱水洗浄水56.1Lを初期スラリーの洗浄水100Lとして、該脱水洗浄水34.7Lを希釈スラリーの洗浄水50Lの一部として再利用する以外は、実施例1と同様に煤塵(塩素濃度13wt%)10kgを処理し、粗粒洗浄灰4.1kg、細粒洗浄灰2.2kgを得た。回収した粗粒洗浄灰と細粒洗浄灰の塩素濃度はおのおの0.41wt%、0.46wt%であり、何れもセメント原料として利用可能であった。
【0042】
〔実施例4〕
実施例2と同様の試験を実施し、塩素濃度2.6g/Lの二次上澄水75.8Lと、
粗粒濾液と細粒濾液をそれぞれ全量混合した塩素濃度0.10g/Lの脱水洗浄水58.5Lを得た。該二次上澄水75.8Lと該脱水洗浄水24.2Lを初期スラリーの洗浄水100Lとして、該脱水洗浄水34.3Lを希釈スラリーの洗浄水50Lの一部として再利用する以外は、実施例2と同様に煤塵(塩素濃度13wt%)10kgを処理し、粗粒洗浄灰3.1kg、細粒洗浄灰3.2kgを得た。回収した粗粒洗浄灰と細粒洗浄灰の塩素濃度はおのおの0.31wt%、0.47wt%であり、何れもセメント原料として利用可能であった。
【0043】
〔実施例5〕
産業廃棄物を焼却処理したときに発生した燃え殻(塩素濃度1.6wt%)10kgを混合撹拌槽に投入し、該燃え殻重量の10倍量の洗浄水を投入し、固形分濃度95g/Lの初期スラリーとして調整し、10分間混合撹拌した。10分間混合撹拌後の固形分濃度は、可溶成分が水に溶解したことにより、90g/Lに減少した。該スラリーに撹拌槽内濃度が1ppmになるようにアニオン系高分子凝集剤(商品名ダイヤフロックAP-825B)を添加して混合した後に、沈降分離槽に導入し、固形分濃度が3.4倍に濃縮するまで静置して固形分を沈降させて、上側の一次上澄水74.3Lを抜出して除去し、初期濃縮スラリーにした。該一次上澄水の塩素濃度は1.6g/Lであった。
初期濃縮スラリーを沈降分離槽から30.7Lを抜き出した。この固形分濃度は309g/Lであった。初期燃え殻重量の5倍量の洗浄水を加えて固形分濃度118g/Lの希釈スラリーにし、10分間混合撹拌した。該希釈スラリーを湿式サイクロンに導入して、アンダーフロー側に粗粒スラリー18.8Lを分級し、オーバーフロー側に細粒スラリー61.9Lを分級した。このとき、粗粒スラリーの50%粒子径は435μmであり、細粒スラリーの50%粒子径は10μmであった。
該粗粒スラリーに初期燃え殻重量の4倍量の洗浄水を加えて10分間混合撹拌して固形分濃度112g/Lの粗粒希釈スラリーにした。該粗粒希釈スラリーを遠心分離機に入れて脱水処理した後に、この脱水ケーキを初期燃え殻重量の1倍量の洗浄水を用いて洗浄し、表面の付着水を除去し、粗粒洗浄灰6.6kgを得た。水分は粗粒濾液として排水した。
一方、細粒スラリーを湿式サイクロンから抜き出して混合撹拌層に導入し、アニオン系高分子凝集剤(商品名ダイヤフロックAP-825B)を撹拌槽内濃度が0.5ppmになるように添加して撹拌混合した後に沈降分離槽に導き、固形分濃度が上記細粒スラリーの3.9倍に濃縮するまで静置して固形分を沈降させ、固形分濃度183g/Lの細粒濃縮スラリーにした。該細粒濃縮スラリーの上側の二次上澄水を抜き出した。該二次上澄水の塩素濃度は0.44g/Lであった。該細粒濃縮スラリーをフィルタープレスで脱水し、この脱水ケーキを初期燃え殻重量の2倍量の洗浄水で洗浄し、表面の付着水を除去して細粒洗浄灰2.9kgを得た。水分は細粒濾液として排水した。
回収した粗粒洗浄灰と細粒洗浄灰の塩素濃度はおのおの0.13wt%、0.16wt%であり、何れもセメント原料として利用可能であった。
【0044】
〔実施例6〕
産業廃棄物を焼却処理したときに発生した燃え殻(塩素濃度1.6wt%)10kgを混合撹拌槽に投入し、該燃え殻重量の10倍量の洗浄水を投入し、固形分濃度95g/Lの初期スラリーとして調整し、10分間混合撹拌した。10分間混合撹拌後の固形分濃度は、可溶成分が水に溶解したことにより、90g/Lに減少した。該スラリーに撹拌槽内濃度が1ppmになるようにアニオン系高分子凝集剤(商品名ダイヤフロックAP-825B)を添加して混合した後に、沈降分離槽に導入し、固形分濃度が3.4倍に濃縮するまで静置して固形分を沈降させて、上側の一次上澄水74.3Lを抜出して除去し、初期濃縮スラリーにした。該一次上澄水の塩素濃度は1.6g/Lであった。
初期濃縮スラリーを沈降分離槽から30.7Lを抜き出した。この固形分濃度は309g/Lであった。初期燃え殻重量の5倍量の洗浄水を加えて固形分濃度118g/Lの一次希釈スラリーにし、10分間混合撹拌した。該一次希釈スラリーを湿式サイクロンに導入して、アンダーフロー側に一次粗粒スラリー18.8Lを分級し、オーバーフロー側に一次細粒スラリー61.9Lを分級した。このとき、一次粗粒スラリーの50%粒子径は435μmであり、一次細粒スラリーの50%粒子径は10μmであった。
該一次粗粒スラリーを湿式サイクロンから抜き出して、初期燃え殻重量の4倍量の洗浄水を加えて固形分濃度112g/Lの二次希釈スラリーにし、10分間混合撹拌した。該二次希釈スラリーを湿式サイクロンに導入して、アンダーフロー側に二次粗粒スラリー14.7Lを分級し、オーバーフロー側に二次細粒スラリー44.1Lを分級した。このとき、二次粗粒スラリーの50%粒子径は445μmであり、二次細粒スラリーの50%粒子径は12μmであった。該二次粗粒スラリーを遠心分離機に入れて脱水処理した後に、この脱水ケーキを初期燃え殻重量の1倍量の洗浄水を用いて洗浄し、表面の付着水を除去し、粗粒洗浄灰4.9kgを得た。水分は粗粒濾液として排水した。
一方、一次細粒スラリーと二次細粒スラリーをおのおの湿式サイクロンから抜き出して混合し、総細粒スラリーにした。この総細粒スラリーにアニオン系高分子凝集剤(商品名ダイヤフロックAP-825B)を撹拌槽内濃度が0.5ppmになるように添加して撹拌混合した後に沈降槽に導き、固形分濃度が総細粒スラリーの4.0倍に濃縮するまで静置して固形分を沈降させ、固形分濃度174g/Lの細粒濃縮スラリーにした。該細粒濃縮スラリーの上側の二次上澄水を抜き出した。該二次上澄水の塩素濃度は0.28g/Lであった。該細粒濃縮スラリーをフィルタープレスで脱水し、この脱水ケーキを初期燃え殻重量の2倍量の洗浄水で洗浄し、表面の付着水を除去して細粒洗浄灰4.6kgを得た。水分は細粒濾液として排水した。
回収した粗粒洗浄灰と細粒洗浄灰の塩素濃度はおのおの0.11wt%、0.16wt%であり、何れもセメント原料として利用可能であった。
【0045】
〔実施例7〕
産業廃棄物を焼却処理したときに発生した燃え殻(塩素濃度1.6wt%)10kgを混合撹拌槽に投入し、該燃え殻重量の10倍量の洗浄水を投入し、固形分濃度95g/Lの初期スラリーとして調整し、10分間混合撹拌した。10分間混合撹拌後の固形分濃度は、可溶成分が水に溶解したことにより、90g/Lに減少した。該スラリーに撹拌槽内濃度が1ppmになるようにアニオン系高分子凝集剤(商品名ダイヤフロックAP-825B)を添加して混合した後に、沈降分離槽に導入し、固形分濃度が3.4倍に濃縮するまで静置して固形分を沈降させて、上側の一次上澄水74.3Lを抜出して除去し、初期濃縮スラリーにした。該一次上澄水の塩素濃度は1.6g/Lであった。
初期濃縮スラリーを沈降分離槽から30.7Lを抜き出した。この固形分濃度は309g/Lであった。初期燃え殻重量の5倍量の洗浄水を加えて固形分濃度118g/Lの希釈スラリーにし、10分間混合撹拌した。該希釈スラリーを湿式サイクロンに導入して、アンダーフロー側に粗粒スラリー17.0Lを分級し、オーバーフロー側に細粒スラリー63.7Lを分級した。このとき、粗粒スラリーの50%粒子径は454μmであり、細粒スラリーの50%粒子径は24μmであった。
該粗粒スラリーに初期燃え殻重量の4倍量の洗浄水を加えて10分間混合撹拌して固形分濃度105g/Lの粗粒希釈スラリーにした。該粗粒希釈スラリーを遠心分離機に入れて脱水処理した後に、この脱水ケーキを初期燃え殻重量の1倍量の洗浄水を用いて洗浄し、表面の付着水を除去し、粗粒洗浄灰6.0kgを得た。水分は粗粒濾液として排水した。
一方、細粒スラリーを湿式サイクロンから抜き出して混合撹拌層に導入し、アニオン系高分子凝集剤(商品名ダイヤフロックAP-825B)を撹拌槽内濃度が0.5ppmになるように添加して撹拌混合した後に沈降分離槽に導き、固形分濃度が上記細粒スラリーの3.5倍に濃縮するまで静置して固形分を沈降させ、固形分濃度198g/Lの細粒濃縮スラリーにした。該細粒濃縮スラリーの上側の二次上澄水を抜き出した。該二次上澄水の塩素濃度は0.39g/Lであった。該細粒濃縮スラリーをフィルタープレスで脱水し、この脱水ケーキを初期燃え殻重量の2倍量の洗浄水で洗浄し、表面の付着水を除去して細粒洗浄灰3.5kgを得た。水分は細粒濾液として排水した。
回収した粗粒洗浄灰と細粒洗浄灰の塩素濃度はおのおの0.12wt%、0.17wt%であり、何れもセメント原料として利用可能であった。
【0046】
〔実施例8〕
産業廃棄物を焼却処理したときに発生した燃え殻(塩素濃度1.6wt%)10kgを混合撹拌槽に投入し、該燃え殻重量の10倍量の洗浄水を投入し、固形分濃度95g/Lの初期スラリーとして調整し、10分間混合撹拌した。10分間混合撹拌後の固形分濃度は、可溶成分が水に溶解したことにより、90g/Lに減少した。該スラリーに撹拌槽内濃度が1ppmになるようにアニオン系高分子凝集剤(商品名ダイヤフロックAP-825B)を添加して混合した後に、沈降分離槽に導入し、固形分濃度が3.4倍に濃縮するまで静置して固形分を沈降させて、上側の一次上澄水74.3Lを抜出して除去し、初期濃縮スラリーにした。該一次上澄水の塩素濃度は1.6g/Lであった。
初期濃縮スラリーを沈降分離槽から30.7Lを抜き出した。この固形分濃度は309g/Lであった。初期燃え殻重量の5倍量の洗浄水を加えて固形分濃度118g/Lの一次希釈スラリーにし、10分間混合撹拌した。該一次希釈スラリーを湿式サイクロンに導入して、アンダーフロー側に一次粗粒スラリー17.0Lを分級し、オーバーフロー側に一次細粒スラリー63.7Lを分級した。このとき、一次粗粒スラリーの50%粒子径は454μmであり、一次細粒スラリーの50%粒子径は24μmであった。
該一次粗粒スラリーを湿式サイクロンから抜き出して、初期燃え殻重量の4倍量の洗浄水を加えて固形分濃度105g/Lの二次希釈スラリーにし、10分間混合撹拌した。該二次希釈スラリーを湿式サイクロンに導入して、二次粗粒スラリー12.0Lと二次細粒スラリー45.0Lとに分級した。このとき、二次粗粒スラリーの50%粒子径は461μmであり、二次細粒スラリーの50%粒子径は26μmであった。該二次粗粒スラリーを遠心分離機に入れて脱水処理した後に、この脱水ケーキを初期燃え殻重量の1倍量の洗浄水を用いて洗浄し、表面の付着水を除去し、粗粒洗浄灰4.7kgを得た。水分は粗粒濾液として排水した。
一方、一次細粒スラリーと二次細粒スラリーをおのおの湿式サイクロンから抜き出して混合し、総細粒スラリーにした。この総細粒スラリーにアニオン系高分子凝集剤(商品名ダイヤフロックAP-825B)を撹拌槽内濃度が0.5ppmになるように添加して撹拌混合した後に沈降槽に導き、固形分濃度が総細粒スラリーの4.1倍に濃縮するまで静置して固形分を沈降させ、固形分濃度186g/Lの細粒濃縮スラリーにした。該細粒濃縮スラリーの上側の二次上澄水を抜き出した。該二次上澄水の塩素濃度は0.21g/Lであった。該細粒濃縮スラリーをフィルタープレスで脱水し、この脱水ケーキを初期燃え殻重量の2倍量の洗浄水で洗浄し、表面の付着水を除去して細粒洗浄灰4.8kgを得た。水分は細粒濾液として排水した。
回収した粗粒洗浄灰と細粒洗浄灰の塩素濃度はおのおの0.10wt%、0.18wt%であり、何れもセメント原料として利用可能であった。
【0047】
〔実施例9〕
産業廃棄物を焼却処理したときに発生した燃え殻(塩素濃度1.6wt%)10kg を混合撹拌槽に投入し、該燃え殻重量の5倍量の洗浄水を投入し、固形分濃度181g/Lの初期スラリーとして調整し、10分間混合撹拌した。10分間混合撹拌後の固形分濃度は、可溶成分が水に溶解したことにより、173g/Lに減少した。該スラリーに撹拌槽内濃度が1ppmになるようにアニオン系高分子凝集剤(商品名ダイヤフロックAP-825B)を添加して混合した後に、沈降分離槽に導入し、固形分濃度が2.0倍に濃縮するまで静置して固形分を沈降させて、上側の一次上澄水27.5Lを抜出して除去し、初期濃縮スラリーにした。該一次上澄水の塩素濃度は3.1g/Lであった。
初期濃縮スラリーを沈降分離槽から27.5Lを抜き出した。この固形分濃度は344g/Lであった。初期燃え殻重量の5倍量の洗浄水を加えて固形分濃度123g/Lの希釈スラリーにし、10分間混合撹拌した。該希釈スラリーを湿式サイクロンに導入して、アンダーフロー側に粗粒スラリー18.1Lを分級し、オーバーフロー側に細粒スラリー59.4Lを分級した。このとき、粗粒スラリーの50%粒子径は442μmであり、細粒スラリーの50%粒子径は11μmであった。
該粗粒スラリーに初期燃え殻重量の4倍量の洗浄水を加えて10分間混合撹拌して固形分濃度112g/Lの粗粒希釈スラリーにした。該粗粒希釈スラリーを遠心分離機に入れて脱水処理した後に、この脱水ケーキを初期燃え殻重量の1倍量の洗浄水を用いて洗浄し、表面の付着水を除去し、粗粒洗浄灰6.5kgを得た。水分は粗粒濾液として排水した。
一方、細粒スラリーを湿式サイクロンから抜き出して混合撹拌層に導入し、アニオン系高分子凝集剤(商品名ダイヤフロックAP-825B)を撹拌槽内濃度が0.5ppmになるように添加して撹拌混合した後に沈降分離槽に導き、固形分濃度が上記細粒スラリーの3.5倍に濃縮するまで静置して固形分を沈降させ、固形分濃度176g/Lの細粒濃縮スラリーにした。該細粒濃縮スラリーの上側の二次上澄水を抜き出した。該二次上澄水の塩素濃度は1.1g/Lであった。該細粒濃縮スラリーをフィルタープレスで脱水し、この脱水ケーキを初期燃え殻重量の2倍量の洗浄水で洗浄し、表面の付着水を除去して細粒洗浄灰3.0kgを得た。水分は細粒濾液として排水した。
回収した粗粒洗浄灰と細粒洗浄灰の塩素濃度はおのおの0.20wt%、0.28wt%であり、何れもセメント原料として利用可能であった。
【0048】
〔実施例10〕
産業廃棄物を焼却処理したときに発生した燃え殻(塩素濃度1.6wt%)10kg を混合撹拌槽に投入し、該燃え殻重量の5倍量の洗浄水を投入し、固形分濃度181g/Lの初期スラリーとして調整し、10分間混合撹拌した。10分間混合撹拌後の固形分濃度は、可溶成分が水に溶解したことにより、173g/Lに減少した。該スラリーに撹拌槽内濃度が1ppmになるようにアニオン系高分子凝集剤(商品名ダイヤフロックAP-825B)を添加して混合した後に、沈降分離槽に導入し、固形分濃度が2.0倍に濃縮するまで静置して固形分を沈降させて、上側の一次上澄水27.5Lを抜出して除去し、初期濃縮スラリーにした。該一次上澄水の塩素濃度は3.1g/Lであった。
初期濃縮スラリーを沈降分離槽から27.5Lを抜き出した。この固形分濃度は344g/Lであった。初期燃え殻重量の5倍量の洗浄水を加えて固形分濃度123g/Lの一次希釈スラリーにし、10分間混合撹拌した。該一次希釈スラリーを湿式サイクロンに導入して、アンダーフロー側に一次粗粒スラリー18.1Lを分級し、オーバーフロー側に一次細粒スラリー59.4Lを分級した。このとき、一次粗粒スラリーの50%粒子径は442μmであり、一次細粒スラリーの50%粒子径は11μmであった。
該一次粗粒スラリーを湿式サイクロンから抜き出して、初期燃え殻重量の4倍量の洗浄水を加えて固形分濃度112g/Lの二次希釈スラリーにし、10分間混合撹拌した。該二次希釈スラリーを湿式サイクロンに導入して、二次粗粒スラリー14.5Lと二次細粒スラリー43.5Lに分級した。このとき、二次粗粒スラリーの50%粒子径は451μmであり、二次細粒スラリーの50%粒子径は10μmであった。該二次粗粒スラリーを遠心分離機に入れて脱水処理した後に、この脱水ケーキを初期燃え殻重量の1倍量の洗浄水を用いて洗浄し、表面の付着水を除去し、粗粒洗浄灰4.7kgを得た。水分は粗粒濾液として排水した。
一方、一次細粒スラリーと二次細粒スラリーをおのおの湿式サイクロンから抜き出して混合し、総細粒スラリーにした。この総細粒スラリーにアニオン系高分子凝集剤(商品名ダイヤフロックAP-825B)を撹拌槽内濃度が0.5ppmになるように添加して撹拌混合した後に沈降槽に導き、固形分濃度が総細粒スラリーの3.6倍に濃縮するまで静置して固形分を沈降させ、固形分濃度168g/Lの細粒濃縮スラリーにした。該細粒濃縮スラリーの上側の二次上澄水を抜き出した。該二次上澄水の塩素濃度は0.73g/Lであった。該細粒濃縮スラリーをフィルタープレスで脱水し、この脱水ケーキを初期燃え殻重量の2倍量の洗浄水で洗浄し、表面の付着水を除去して細粒洗浄灰4.8kgを得た。水分は細粒濾液として排水した。
回収した粗粒洗浄灰と細粒洗浄灰の塩素濃度はおのおの0.12wt%、0.21wt%であり、何れもセメント原料として利用可能であった。
【0049】
〔実施例11〕
実施例9と同様の試験を実施し、塩素濃度1.1g/Lの二次上澄水42.5Lと、
粗粒濾液と細粒濾液をそれぞれ全量混合した塩素濃度0.07g/Lの脱水洗浄水92.8Lを得た。該二次上澄水42.5Lと該脱水洗浄水7.5Lを初期スラリーの洗浄水50Lとして、該脱水洗浄水50Lを希釈スラリーの洗浄水50Lとして、該脱水洗浄水35.3Lを粗粒希釈スラリーの洗浄水40Lの一部として再利用する以外は、実施例9と同様に燃え殻(塩素濃度1.6wt%)10kg を処理し、粗粒洗浄灰6.5kg、細粒洗浄灰3.0kgを得た。回収した粗粒洗浄灰と細粒洗浄灰の塩素濃度はおのおの0.29wt%、0.39wt%であり、何れもセメント原料として利用可能であった。
【0050】
〔実施例12〕
実施例10と同様の試験を実施し、塩素濃度1.1g/Lの二次上澄水74.4Lと、
粗粒濾液と細粒濾液をそれぞれ全量混合した塩素濃度0.08g/Lの脱水洗浄水60.2Lを得た。該二次上澄水50Lを初期スラリーの洗浄水50Lとして、該脱水洗浄水24.4Lと脱水洗浄水25.6Lを希釈スラリーの洗浄水50Lとして、該脱水洗浄水34.6Lを粗粒希釈スラリーの洗浄水40Lの一部として再利用する以外は、実施例10と同様に燃え殻(塩素濃度1.6wt%)10kg を処理し、粗粒洗浄灰4.7kg、細粒洗浄灰4.8kgを得た。回収した粗粒洗浄灰と細粒洗浄灰の塩素濃度はおのおの0.20wt%、0.39wt%であり、何れもセメント原料として利用可能であった。
【0051】
〔比較例1〕
産業廃棄物を焼却処理したときに発生した煤塵(塩素濃度13wt%)10kgを混合撹拌槽に投入し、該煤塵重量の10倍量の洗浄水を投入し、固形分濃度95g/Lの初期スラリーとして調整し、10分間混合撹拌した。10分間混合撹拌後の固形分濃度は60g/Lとなった。該スラリーに撹拌槽内濃度が1ppmになるようにアニオン系高分子凝集剤(商品名ダイヤフロックAP-825B)を添加して混合した後に沈降分離槽に導入し、固形分濃度が4.3倍に濃縮するまで静置して固形分を沈降させて初期濃縮スラリーにした。この初期濃縮スラリーの上側の一次上澄水80.4Lを抜出して除去した。該一次上澄水の塩素濃度は13.4g/Lであった。
初期濃縮スラリーを沈降分離槽から抜き出して、初期煤塵重量の5倍量の洗浄水を加えて固形分濃度84g/Lの一次希釈スラリーにし、10分間混合撹拌した。該一次希釈スラリーに撹拌槽内濃度が1ppmになるようにアニオン系高分子凝集剤(商品名ダイヤフロックAP-825B)を添加して混合した後に沈降分離槽に導入し、固形分濃度が一次希釈スラリーの2.9倍に濃縮するまで静置して固形分を沈降させて一次濃縮スラリーにした。この一次濃縮スラリーの上側の二次上澄水を抜出して除去した。該二次上澄水の塩素濃度は3.7g/Lであった。
さらに、一次濃縮スラリーを沈降分離槽から抜き出して、初期煤塵重量の4倍量の洗浄水を加えて固形分濃度96g/Lの二次希釈スラリーにし、10分間混合撹拌した。該二次濃縮スラリーを脱水し、この脱水ケーキを初期煤塵重量の3倍量の洗浄水で洗浄し、表面の付着水を除去して洗浄灰6.3kgを得た。この洗浄灰の塩素濃度は0.60wt%であり、塩素濃度が高いのでセメント原料としては好ましくないものであった。
【0052】
〔比較例2〕
産業廃棄物を焼却処理したときに発生した煤塵(塩素濃度13wt%)10kgを混合撹拌槽に投入し、該煤塵重量の10倍量の洗浄水を投入し、固形分濃度95g/Lの初期スラリーとして調整し、10分間混合撹拌した。10分間混合撹拌後の固形分濃度は60g/Lとなった。該スラリーを脱水し、この脱水ケーキを初期煤塵重量の12倍量の洗浄水で洗浄し、表面の付着水を除去して洗浄灰6.3kgを得た。この洗浄灰の塩素濃度は1.1wt%であり、塩素濃度が高いのでセメント原料としては好ましくないものであった。
【0053】
〔比較例3〕
湿式サイクロンに代えて湿式篩(篩の目開きは32μm)を用いた以外は実施例2と同様にして粗粒洗浄灰4.3kgおよび細粒洗浄灰2.0kgを得た。回収した粗粒洗浄灰と細粒洗浄灰の塩素濃度はおのおの0.58wt%、0.60wt%であり、塩素濃度が高いのでセメント原料としては好ましくないものであった。
【0054】
〔比較例4〕
沈降分離において、アニオン系高分子凝集剤を用いない以外は実施例2と同様にして粗粒洗浄灰3.0kgおよび細粒洗浄灰3.3kgを得た。なお、初期スラリーは固形分濃度が1.5倍に濃縮するまで静置、総細粒スラリーは固形分濃度が1.5倍に濃縮するまで静置した。回収した粗粒洗浄灰と細粒洗浄灰の塩素濃度はおのおの0.55wt%、0.71wt%であり、塩素濃度が高いのでセメント原料としては好ましくないものであった。
【0055】
表1に実施例1〜12および比較例1〜4の処理結果を示す。なお、表1において、初期スラリーの固形分濃度は撹拌後の可溶性成分が溶解した後の濃度(g/L)である。初期濃縮スラリーの濃縮比は初期スラリーの固形分濃度Aに対する初期濃縮スラリーの固形分濃度Bの比(B/A)である。50%粒径は粒子の体積粒度分布の積算重量割合の分布曲線において50%を示す粒子径である。細粒濃縮スラリーの濃縮比は細粒スラリーの固形分濃度Cに対する細粒濃縮スラリーの固形分濃度Dの比(D/C)である。ただし、比較例1のみ、一次希釈スラリーの固形分濃度に対する一次濃縮スラリーの固形分濃度の比(3.0倍)を示している。脱水洗浄使用水は、分級操作を実施したものは、粗粒洗浄灰の洗浄脱水に10L、細粒洗浄灰の洗浄脱水に20L、それぞれ使用した。実施例3、実施例4、実施例11、および実施例12は、二次上澄水と、粗粒濾液と細粒濾液を全量混合した脱水洗浄水を再利用して、繰り返し脱塩処理を実施した。
【0056】
表2に実施例1〜12および比較例1〜4における一次上澄液と二次上澄液への塩素の移行率、および各洗浄灰の塩素の低減割合を示す。塩素の移行率とは、処理開始時の塩素含有灰に元々含まれる塩素量のうち、上澄液に浸出し、上澄液の抜出と除去とともに、系外に排出された塩素量の割合である。塩素の低減割合とは、処理開始時の塩素含有灰に元々含まれる塩素量に対する、処理後の各洗浄灰中の塩素量の割合である。
【0057】
表1および表2に示すように、本発明の脱塩処理方法によれば、初期濃縮工程の沈降分離による塩素含有上澄水の除去と、湿式サイクロンによる分級工程の組み合わせによって高い脱塩効果が得られる。この脱塩処理した粗粒洗浄灰および細粒洗浄灰はセメント原料あるいは焼成骨材原料に用いることができる。また、二次上澄水と脱水洗浄水を再利用して、繰り返し脱塩処理を実施することによって、清水の使用量を大きく低減させることができる。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【要約】
【課題】高い脱塩効果を達成し、セメント原料または焼成骨材原料に適する洗浄灰を回収することができる脱塩処理方法と脱塩処理装置を提供する。
【解決手段】塩素含有灰に洗浄水を加えて初期スラリーにして塩素を水に浸出する初期洗浄工程と、該初期スラリーに高分子凝集剤を加えて凝集フロックを沈降分離させて初期濃縮スラリーを形成する初期濃縮工程と、該初期濃縮スラリーを加水した後に湿式サイクロンを用いて細粒スラリーと粗粒スラリーに分離する分級工程と、さらに該細粒スラリーに高分子凝集剤を加えて細粒凝集フロックを沈降分離させて細粒濃縮スラリーを形成する細粒濃縮工程と、該細粒濃縮スラリーを脱水洗浄して細粒洗浄灰を回収する工程と、上記粗粒スラリーを脱水洗浄して粗粒洗浄灰を回収する工程を有することを特徴とする塩素含有灰の脱塩処理方法および脱塩処理装置。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4