(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の目的は、三相ブラシレスモータの駆動回路内の1つのスイッチング素子が短絡故障した場合に、三相ブラシレスモータが負荷となる負荷領域を特定することができるモータ制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための請求項1に記載の発明は、ロータおよび界磁コイルを有する三相ブラシレスモータ(18)を制御するためのモータ制御装置であって、2個のスイッチング素子(31
UH,31
UL;31
VH,31
VL;31
WH,31
WL)が直列に接続された直列回路を三相の各相に対応して3組備え、電源(33)と接地(34)との間においてそれらの直列回路が並列接続されており、各スイッチング素子に回生ダイオード(32
UH,32
UL,32
VH,32
VL,32
WH,32
WL)が並列に接続されている駆動回路(30)と、前記複数のスイッチング素子のうちの1つのスイッチング素子が短絡故障したときに、前記三相ブラシレスモータが負荷となるロータ回転角領域を負荷領域として特定する負荷領域特定手段(41)と
、前記三相ブラシレスモータのロータ回転角が前記負荷領域特定手段によって特定された負荷領域にあるときに、当該負荷領域において負荷電流が流れると推定される閉回路内の回生ダイオードをオフにさせる負荷電流抑制手段(43)とを含み、前記負荷領域特定手段は、スイッチング素子が短絡故障していない2つの正常相のうちの一方の正常相を第1正常相とし、他方の正常相を第2正常相とすると、短絡故障したスイッチング素子以外の全てのスイッチング素子がオフとなっている状態において前記三相ブラシレスモータのロータが回転されたときに、短絡故障したスイッチング素子と、前記第1正常相のスイッチング素子に並列接続された回生ダイオードと、前記モータの界磁コイルの一部とを含む第1閉回路に負荷電流が流れると推定される第1ロータ回転角領域と、短絡故障したスイッチング素子以外の全てのスイッチング素子がオフとなっている状態において前記三相ブラシレスモータのロータが回転されたときに、短絡故障したスイッチング素子と、前記第2正常相のスイッチング素子に並列接続された回生ダイオードと、前記モータの界磁コイルの一部とを含む第2閉回路に負荷電流が流れると推定される第2ロータ回転角領域とからなるロータ回転角領域を、前記負荷領域として特定するように構成されている、モータ制御装置である。なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表すが、むろん、この発明の範囲は当該実施形態に限定されない。以下、この項において同じ。
【0006】
複数のスイッチング素子のうちの1つのスイッチング素子が短絡故障したとき、短絡故障したスイッチング素子以外の全てのスイッチング素子がオフとなっている状態において三相ブラシレスモータのロータが回転されると、ロータが或る第1回転角領域にあるときに、短絡故障したスイッチング素子(たとえば、31
VL)と、第1正常相のスイッチング素子(たとえば、31
UL)に並列接続された回生ダイオード(たとえば、32
UL)と、モータの界磁コイルの一部とを含む第1閉回路(たとえば、61)に負荷電流が流れ、ロータが或る第2回転角領域にあるときに、短絡故障したスイッチング素子(たとえば、31
VL)と、第2正常相のスイッチング素子(たとえば、31
WL)に並列接続された回生ダイオード(たとえば、32
WL)と、モータの界磁コイルの一部とを含む第2閉回路(たとえば、62)に負荷電流が流れる。このような負荷電流が流れると推定される第1ロータ回転角領域および第2ロータ回転角領域からなるロータ回転領域が、三相ブラシレスモータが負荷となる負荷領域として特定される。このようにして、三相ブラシレスモータの駆動回路内の1つのスイッチング素子が短絡故障した場合に、三相ブラシレスモータが負荷となる負荷領域を特定することができるようになる。
また、この構成では、三相ブラシレスモータのロータ回転角が負荷領域特定手段によって特定された負荷領域にあるときに、当該負荷領域において負荷電流が流れると推定される閉回路(たとえば、61)内の回生ダイオード(たとえば、32UL)がオフにされる。これにより、当該閉回路に負荷電流が流れるのを阻止または抑制することができる。
請求項2記載の発明は、前記負荷電流抑制手段は、前記三相ブラシレスモータのロータ回転角が前記負荷領域特定手段によって特定された負荷領域にあるときに、当該負荷領域において負荷電流が流れると推定される閉回路内の回生ダイオードに直列に接続されているスイッチング素子を、通常駆動時よりも高いキャリア周波数でパルス幅変調駆動する手段を含む、請求項1に記載のモータ制御装置である。
この構成では、三相ブラシレスモータのロータ回転角が負荷領域特定手段によって特定された負荷領域にあるときに、当該負荷領域において負荷電流が流れると推定される閉回路(たとえば、61)内の回生ダイオード(たとえば、32UL)に直列に接続されているスイッチング素子(たとえば、31UH)が、通常駆動時よりも高いキャリア周波数でパルス幅変調駆動される。これにより、当該閉回路内の界磁コイルのインピーダンスが大きくなり、当該閉回路内の回生ダイオード(たとえば、32UL)のカソード側電位がアノード側電位より高くなる。この結果、当該回生ダイオードがオフとなるから、当該閉回路に負荷電流が流れるのを阻止または抑制することができる。
【0007】
請求項
3に記載の発明は、前記負荷領域特定手段は、短絡故障したスイッチング素子がハイサイドスイッチング素子である場合に、短絡故障したスイッチング素子以外の全てのスイッチング素子がオフとなっている状態において、短絡故障したスイッチング素子に対応する故障相の誘起電圧が、他の2つの正常相の誘起電圧のいずれかより小さくなるロータ回転角領域を、前記負荷領域として特定する手段と、短絡故障したスイッチング素子がローサイドスイッチング素子である場合に、短絡故障したスイッチング素子以外の全てのスイッチング素子がオフとなっている状態において、短絡故障したスイッチング素子に対応する故障相の誘起電圧が、他の2つの正常相の誘起電圧のいずれかより大きくなるロータ回転角領域を、前記負荷領域として特定する手段とを含む、請求項1
または2に記載のモータ制御装置である。
【0008】
この構成では、短絡故障したスイッチング素子がハイサイドスイッチング素子(たとえば、31
VH)である場合には、短絡故障したスイッチング素子以外の全てのスイッチング素子がオフとなっている状態において、短絡故障したスイッチング素子に対応する故障相の誘起電圧(たとえば、V
V)が、他の2つの正常相の誘起電圧(たとえば、V
U,V
W)のいずれかより小さくなるロータ回転角領域が、負荷領域として特定される。一方、短絡故障したスイッチング素子がローサイドスイッチング素子(たとえば、31
VL)である場合には、短絡故障したスイッチング素子以外の全てのスイッチング素子がオフとなっている状態において、短絡故障したスイッチング素子に対応する故障相の誘起電圧(たとえば、V
V)が、他の2つの正常相の誘起電圧(たとえば、V
U,V
W)のいずれかより大きくなるロータ回転角領域が、負荷領域として特定される。
【0009】
請求項
4に記載の発明は、前記負荷領域特定手段は、前記駆動回路側から前記三相ブラシレスモータ側に向かって流れる電流の極性を正とすると、短絡故障したスイッチング素子がハイサイドスイッチング素子である場合に、短絡故障したスイッチング素子以外の全てのスイッチング素子がオフとなっている状態において、正常相の相電流のいずれかが負となるロータ回転角領域を、前記負荷領域として特定する手段と、短絡故障したスイッチング素子がローサイドスイッチング素子である場合に、短絡故障したスイッチング素子以外の全てのスイッチング素子がオフとなっている状態において、正常相の相電流のいずれかが正となるロータ回転角領域を、前記負荷領域として特定する手段とを含む、請求項1
または2に記載のモータ制御装置である。
【0010】
この構成では、駆動回路側から三相ブラシレスモータ側に向かって流れる電流の極性を正とすると、短絡故障したスイッチング素子がハイサイドスイッチング素子(たとえば、31
VH)である場合には、短絡故障したスイッチング素子以外の全てのスイッチング素子がオフとなっている状態において、正常相の相電流(たとえば、I
U,I
W)のいずれかが負となるロータ回転角領域が、負荷領域として特定される。一方、短絡故障したスイッチング素子がローサイドスイッチング素子(たとえば、31
VL)である場合には、短絡故障したスイッチング素子以外の全てのスイッチング素子がオフとなっている状態において、正常相の相電流(たとえば、I
U,I
W)のいずれかが正となるロータ回転角領域が、負荷領域として特定される。
【0011】
請求項
5記載の発明は、前記負荷領域特定手段は、短絡故障したスイッチング素子の位置を表す情報と、予め作成されかつ短絡故障したスイッチング素子の位置から負荷領域を特定するための情報とに基づいて、前記負荷領域を特定するものである
、請求項1
または2に記載のモータ制御装置である。この構成では、短絡故障したスイッチング素子の位置を表す情報と、予め作成されかつ短絡故障したスイッチング素子の位置から負荷領域を特定するための情報とに基づいて、負荷領域が特定される。短絡故障したスイッチング素子の位置から負荷領域を特定するための情報として、たとえば、スイッチング素子毎にそのスイッチング素子が短絡故障した場合の負荷領域を記憶したマップがあらかじめ作成される。このようなマップは、理論値または計測データに基づいて作成される。このようにして作成されたマップと、短絡故障したスイッチング素子の位置を表す情報とに基づいて、負荷領域が特定される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、この発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るモータ制御装置が適用された、電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。
電動パワーステアリング装置1は、操舵部材としてのステアリングホイール2と、このステアリングホイール2の回転に連動して転舵輪3を転舵する転舵機構4と、運転者の操舵を補助するための操舵補助機構5とを備えている。ステアリングホイール2と転舵機構4とは、ステアリングシャフト6および中間軸7を介して機械的に連結されている。
【0017】
ステアリングシャフト6は、直線状に延びている。また、ステアリングシャフト6は、ステアリングホイール2に連結された入力軸8と、中間軸7に連結された出力軸9とを含む。入力軸8と出力軸9とは、トーションバー10を介して同一軸線上で相対回転可能に連結されている。すなわち、ステアリングホイール2が回転されると、入力軸8および出力軸9は、互いに相対回転しつつ同一方向に回転するようになっている。
【0018】
ステアリングシャフト6の周囲に配置されたトルクセンサ11は、入力軸8および出力軸9の相対回転変位量に基いて、ステアリングホイール2に与えられた操舵トルクを検出する。トルクセンサ11によって検出される操舵トルクは、ECU(電子制御ユニット:Electronic Control Unit)12に入力される。また、ECU12には、車速センサ23によって検出される車速が入力される。
【0019】
転舵機構4は、ピニオン軸13と、転舵軸としてのラック軸14とを含むラックアンドピニオン機構からなる。ラック軸14の各端部には、タイロッド15およびナックルアーム(図示略)を介して転舵輪3が連結されている。ピニオン軸13は、中間軸7に連結されている。ピニオン軸13は、ステアリングホイール2の操舵に連動して回転するようになっている。ピニオン軸13の先端(
図1では下端)には、ピニオン16が連結されている。
【0020】
ラック軸14は、自動車の左右方向に沿って直線状に延びている。ラック軸14の軸方向の中間部には、ピニオン16に噛み合うラック17が形成されている。このピニオン16およびラック17によって、ピニオン軸13の回転がラック軸14の軸方向移動に変換される。ラック軸14を軸方向に移動させることによって、転舵輪3を転舵することができる。
【0021】
ステアリングホイール2が操舵(回転)されると、この回転が、ステアリングシャフト6および中間軸7を介して、ピニオン軸13に伝達される。そして、ピニオン軸13の回転は、ピニオン16およびラック17によって、ラック軸13の軸方向移動に変換される。これにより、転舵輪3が転舵される。
操舵補助機構5は、操舵補助用の電動モータ18と、電動モータ18の出力トルクを転舵機構4に伝達するための減速機構19とを含む。電動モータ3は、この実施形態では、三相ブラシレスモータからなる。減速機構19は、ウォーム軸20と、このウォーム軸20と噛み合うウォームホイール21とを含むウォームギヤ機構からなる。減速機構19は、伝達機構ハウジングとしてのギヤハウジング22内に収容されている。
【0022】
ウォーム軸20は、電動モータ18によって回転駆動される。また、ウォームホイール21は、ステアリングシャフト6とは同方向に回転可能に連結されている。ウォームホイール21は、ウォーム軸20によって回転駆動される。
電動モータ18によってウォーム軸20が回転駆動されると、ウォームホイール21が回転駆動され、ステアリングシャフト6が回転する。そして、ステアリングシャフト6の回転は、中間軸7を介してピニオン軸13に伝達される。ピニオン軸13の回転は、ラック軸14の軸方向移動に変換される。これにより、転舵輪3が転舵される。すなわち、電動モータ18によってウォーム軸2を回転駆動することによって、転舵輪3が転舵されるようになっている。
【0023】
電動モータ18は、モータ制御装置としてのECU12によって制御される。ECU12は、トルクセンサ11によって検出される操舵トルク、車速センサ23によって検出される車速等に基いて、電動モータ18を制御する。具体的には、ECU12では、操舵トルクと目標アシスト量との関係を車速ごとに記憶したマップを用いて目標アシスト量を決定し、電動モータ18の発生するアシスト力が目標アシスト量に近づくように制御する。
【0024】
図2は、モータ制御装置としてのECU12の電気的構成を示す概略図である。電動モータ18は、U相界磁コイル18U、V相界磁コイル18V、W相界磁コイル18Wを有するステータと、これらの界磁コイル18U,18V,18Wからの反発磁界を受ける永久磁石が固定されたロータとを備えている。
ECU12は、電動モータ18の駆動電力を生成する駆動回路30と、駆動回路30を制御するための制御部40とを備えている。制御部40は、CPUとこのCPUの動作プログラム等を記憶したメモリ(ROM,RAM,不揮発性メモリ等)とを含むマイクロコンピュータで構成されている。
【0025】
駆動回路30は、三相ブリッジインバータ回路である。この駆動回路30では、電動モータ18のU相に対応した一対のFET(電界効果トランジスタ)31
UH,31
ULの直列回路と、V相に対応した一対のFET31
VH,31
VLの直列回路と、W相に対応した一対のFET31
WH,31
WLの直列回路とが、直流電源33と接地34との間に並列に接続されている。また、各FET31
UH〜31
WLには、それぞれ回生ダイオード32
UH〜32
WLが、接地34側から直流電源33側に順方向電流が流れるような向きで、並列に接続されている。
【0026】
以下において、各相の一対のFETのうち、電源側のものを「ハイサイドFET」といい、接地34側のものを「ローサイドFET」という場合がある。また、6つのFET31
UH〜31
WLを総称するときには、「FET31」ということにする。同様に、6つの回生ダイオード32
UH〜32
WLを総称するときには、「回生ダイオード32」ということにする。
【0027】
電動モータ18のU相界磁コイル18Uは、U相に対応した一対のFET31
UH,31
ULの間の接続点に接続されている。電動モータ18のV相界磁コイル18Vは、V相に対応した一対のFET31
VH,31
VLの間の接続点に接続されている。電動モータ18のW相界磁コイル18Wは、W相に対応した一対のFET31
WH,31
WLの間の接続点に接続されている。各相の界磁コイル18U,18V,18Wと駆動回路30とを接続するための各接続線には、各相の相電流I
U,I
V,I
Wを検出するための電流センサ51
U,51
V,51
Wが設けられている。電動モータ18側には、ロータの回転角(電気角)を検出するためのレゾルバ等の回転角センサ52が設けられている。
【0028】
制御部40は、メモリに格納された所定の動作プログラムを実行することによって、複数の機能処理部として機能するようになっている。この複数の機能処理部には、負荷領域特定部41と、正弦波駆動部42と、負荷電流発生抑制部43とが含まれる。
正弦波駆動部42は、故障が発生していない通常時において、各FET31を制御することにより、電動モータ18を正弦波駆動するものである。正弦波駆動部42には、回転角センサ54によって検出されるロータの回転角(電気角)と、トルクセンサ11によって検出される操舵トルクと、車速センサ23によって検出される車速と、電流センサ51
U,51
V,51
Wによって検出される各相の相電流I
U,I
V,I
Wが入力される。正弦波駆動部42は、たとえば、操舵トルクと目標アシスト量(電流目標値)との関係を車速毎に記憶したマップと、トルクセンサ11によって検出された操舵トルクと、車速センサ23によって検出された車速とに基づいて、目標アシスト量を決定する。そして、正弦波駆動部42は、目標アシスト量と、電流センサ51
U,51
V,51
Wによって検出される各相の相電流I
U,I
V,I
Wと、回転角センサ52によって検出されるロータ回転角とに基いて、電動モータ18の発生するアシスト力(トルク)が目標アシスト量に近づくように、各FET31をPWM(Pulse Width Modulation)制御する。
【0029】
負荷領域特定部41は、電動モータ18の異常が検出されたときに、電動モータ18の駆動を停止させるための制御と、FET31に短絡故障が発生しているか否かの判定と、FET31に短絡故障が発生している場合に短絡故障が発生しているFET31の特定と、負荷領域の特定とを行う。負荷領域とは、電動モータ18が負荷となるロータ回転角領域である。この実施形態では、6つのFET31
UH〜31
WLのうちの1つのFETが短絡故障した場合に、他のFETの全てがオフとなっている状態でロータが回転されたときに、短絡故障したFETと、正常なFETに並列接続された回生ダイオードとによって形成される閉回路に負荷電流が流れると推定されるロータ回転角領域が負荷領域として特定される。
【0030】
図3に示すように、たとえば、V相のローサイドFET31
VLが短絡故障した場合に、他のFETの全てがオフとなっている状態で、運転者による操舵によってロータが回転されたとする。そうすると、電動モータ18に誘起電圧が発生し、この誘起電圧によって、符号61で示す第1の閉回路や符号62で示す第2の閉回路に矢印で示す方向に負荷電流が流れるようになる。
【0031】
第1の閉回路61は、短絡故障したV相のローサイドFET31
VLと、正常相であるU相のローサイドFET31
ULに並列接続された回生ダイオード32
ULと、U相界磁コイル18Uと、V相界磁コイル18Vとを含んでいる。一方、第2の閉回路62は、短絡故障したV相のローサイドFET31
VLと、正常相であるW相のローサイドFET31
WLに並列接続された回生ダイオード32
WLと、W相界磁コイル18Wと、V相界磁コイル18Vとを含んでいる。
【0032】
したがって、V相のローサイドFET31
VLが短絡故障した場合には、前記第1の閉回路61または前記第2の閉回路62に負荷電流が流れるロータ回転角領域が負荷領域となる。特に、U相界磁コイル18Uを含む第1の閉回路61に負荷電流が流れるロータ回転角領域をU相の負荷領域といい、W相界磁コイル18Wを含む第2の閉回路62に負荷電流が流れるロータ回転角領域をW相の負荷領域ということにする。
【0033】
一方、
図4に示すように、V相のハイサイドFET31
VHが短絡故障した場合において、他のFETの全てがオフとなっている状態で、運転者による操舵操作によってロータが回転されたとする。そうすると、電動モータ18に誘起電圧が発生し、この誘起電圧によって、符号63で示す第3の閉回路や符号64で示す第4の閉回路に矢印で示す方向に負荷電流が流れるようになる。
【0034】
第3の閉回路63は、短絡故障したV相のハイサイドFET31
VHと、V相界磁コイル18Vと、U相界磁コイル18Uと、正常相であるU相のハイサイドFET31
UHに並列接続された回生ダイオード32
UHとを含んでいる。一方、第4の閉回路64は、短絡故障したV相のハイサイドFET31
VHと、V相界磁コイル18Vと、W相界磁コイル18Wと、正常相であるW相のハイサイドFET31
WHに並列接続された回生ダイオード32
WHとを含んでいる。
【0035】
したがって、V相のハイサイドFET31
VHが短絡故障した場合には、前記第3の閉回路63または前記第4の閉回路64に負荷電流が流れるロータ回転角領域が負荷領域となる。特に、U相界磁コイル18Uを含む第3の閉回路63に負荷電流が流れるロータ回転角領域をU相の負荷領域といい、W相界磁コイル18Wを含む第4の閉回路64に負荷電流が流れるロータ回転角領域をW相の負荷領域ということにする。以下において、短絡故障しているFET31が存在している相を短絡故障相といい、他の相を正常相という場合がある。
【0036】
図3に示すように、V相のローサイドFET31
VLが短絡故障している場合において、U相界磁コイル18Uを含む第1の閉回路61に矢印で示す方向に負荷電流が流れるためには、短絡故障相であるV相の相電圧V
Vが正常相であるU相の相電圧V
Uより高い(大きい)ことが必要となる。また、この場合、駆動回路30から電動モータ18に向かって流れる電流の極性を正とすると、正常相であるU相の相電流I
U の極性は正となる。同様に、W相界磁コイル18Wを含む第2の閉回路62に矢印で示す方向に負荷電流が流れるためには、短絡故障相であるV相の相電圧V
Vが正常相であるW相の相電圧V
Wより高いことが必要となる。また、この場合、正常相であるW相の相電流I
W の極性は正となる。
【0037】
図4に示すように、V相のハイサイドFET31
VHが短絡故障している場合において、U相界磁コイル18Uを含む第3の閉回路63に矢印で示す方向に負荷電流が流れるためには、短絡故障相であるV相の相電圧V
Vが正常相であるU相の相電圧V
Uより低い(小さい)ことが必要となる。また、この場合、正常相であるU相の相電流I
Uの極性は負となる。同様に、W相界磁コイル18Wを含む第4の閉回路64に矢印で示す方向に負荷電流が流れるためには、短絡故障相であるV相の相電圧V
Vが正常相であるW相の相電圧V
Wより低いことが必要となる。また、この場合、正常相であるW相の相電流I
W の極性は負となる。
【0038】
負荷電流発生抑制部43は、負荷領域特定部41によって特定された負荷領域において、負荷電流が発生するのを抑制するための処理を行なうものである。
図5は、故障が発生したときの制御部40の動作を示すフローチャートである。
負荷領域特定部41は、電動モータ18が正弦波駆動部42によって正弦波駆動されている場合に、電動モータ18に動作不良(故障)が発生したことを検出すると、正弦波駆動部42にモータ停止指令に与える(ステップS1)。正弦波駆動部42は、故障判定部41からのモータ停止指令を受信すると、正弦波駆動を中止して、全てのFET31をオフにさせる。これにより、電動モータ18が停止する。
【0039】
この後、負荷領域特定部41は、相電圧V
U,V
V,V
Wに基いて、短絡故障が発生しているか否か、および短絡故障が発生している場合には短絡故障が発生しているFETを特定するための処理を行なう(ステップS2)。具体的には、負荷領域特定部41は、まず、一次判定処理を行なう。一次判定処理では、負荷領域特定部41は、相電圧V
U,V
V,V
Wを取得する。そして、いずれかの相電圧が所定のグランドレベルVG(たとえば0.5[V])以下であるという第1条件を満たしているか否か、およびいずれかの相電圧が所定の電源レベルVB(たとえば5.0[V])以上であるという第2条件を満たしているか否かを調べる。第1条件を満たしている場合には、負荷領域特定部41は、いずれかの相のローサイドFETが短絡故障であると判定する。第2条件を満たしている場合には、負荷領域特定部41は、いずれかの相のハイサイドFETが短絡故障であると判定する。第1条件および第2条件のいずれをも満たしていない場合には、負荷領域特定部41は、短絡故障が発生していないと判別する。
【0040】
一次判定処理によって短絡故障が発生しているFET31がハイサイドFETであるかローサイドFETであるかを特定できた場合には、負荷領域特定部41は、二次判定処理を行なう。二次判定処理においては、負荷領域特定部41は、ロータ回転角に応じて各FET31を制御することにより、電動モータ18に電流を流す(強制転流制御)。そして、負荷領域特定部41は、相電圧V
U,V
V,V
Wを監視し、それらの電圧波形に基づいて、短絡故障が発生しているFET31の相(短絡故障相)を特定する。これにより、短絡故障が発生している一つのFET31を特定することができる。
【0041】
短絡故障が発生しているFETを特定できなかった場合(短絡故障が発生していないと判定した場合も含まれる)には(ステップS3:NO)、後述する負荷領域の特定処理以外の処理(以下、「他の処理」という)を行う(ステップS6)。この「他の処理」には、何ら処理を行なわないことも含まれる。短絡故障が発生しているFETを特定できた場合には(ステップS3:YES)、負荷領域特定部41は、負荷領域の特定処理を行なう(ステップS4)。この処理の詳細については、後述する。負荷領域が特定されると、負荷電流発生抑制部43による負荷電流発生抑制処理が開始される(ステップS5)。この処理の詳細については、後述する。
【0042】
前記ステップS4の負荷領域の特定処理について説明する。負荷領域を特定する方法には、以下の3種類の方法がある。
(a)相電圧(誘起電圧)に基いて負荷領域を特定する方法(以下、「第1方法」という)。
(b)相電流(負荷電流)に基いて負荷領域を特定する方法(以下、「第2方法」という)。
(c)短絡故障相と他の2つの正常相との相関係に基いて、負荷領域を特定する方法(以下、「第3方法」という)。
【0043】
第1方法と第2方法とは、誘起電圧が発生している状態で、負荷領域を特定する方法である。このため、ロータが回転されていることが必要となる。したがって、運転者の操舵操作により電動モータ18が回転されている場合には、その状態で負荷領域を特定することが可能であるが、操舵操作により電動モータ18が回転されていない場合には、負荷領域特定部41は、ロータ回転角に応じて各FET31を制御することにより、強制的に電動モータ18を回転駆動させる必要がある。これに対して、第3方法は、予め算出された理論値または予め計測されたデータに基づいて、負荷領域を特定するものであるため、ロータが回転されている必要はない。
【0044】
第1方法について説明する。短絡故障しているFETがローサイドFETである場合と、ハイサイドFETである場合とに分けて説明する。まず、ローサイドFETが短絡故障している場合について説明する。ここでは、
図3に示されているように、V相のローサイドFET31
VLが短絡故障している場合を例にとって説明する。負荷領域特定部41は、短絡故障相(この例ではV相)の相電圧が、正常相(U相、W相)のいずれかの相電圧より大きくなるロータ回転角領域を、負荷領域として特定する。ロータ回転角(電気角)は、回転角センサ52から得られる。
【0045】
図6Aは、V相のローサイドFET31
VLが短絡故障している場合に、操舵操作によって電動モータ18のロータが回転されたときの、各相の相電圧(誘起電圧)V
U,V
V,V
Wを示している。短絡故障相であるV相の相電圧V
VがU相の相電圧V
Uより大きくなる電気角領域が、U相の負荷領域A
Uとして特定される。また、短絡故障相であるV相の相電圧V
VがW相の相電圧V
Wより大きくなる電気角領域が、W相の負荷領域A
Wとして特定される。
【0046】
ハイサイドFETが短絡故障している場合について説明する。ここでは、
図4に示されているように、V相のハイサイドFET31
VHが短絡故障している場合を例にとって説明する。
図6Bは、V相のハイサイドFET31
VHが短絡故障している場合に、操舵操作によって電動モータ18のロータが回転されたときの、各相の相電圧(誘起電圧)V
U,V
V,V
Wを示している。負荷領域特定部41は、短絡故障相(この例ではV相)の相電圧が、正常相(U相、W相)のいずれかの相電圧より小さくなる電気角領域を、負荷領域として特定する。より具体的には、短絡故障相であるV相の相電圧V
VがU相の相電圧V
Uより小さくなる電気角領域が、U相の負荷領域A
Uとして特定される。また、短絡故障相であるV相の相電圧V
VがW相の相電圧V
Wより小さくなる電気角領域が、W相の負荷領域A
Wとして特定される。
【0047】
次に、第2方法について説明する。第2方法を適用する場合には、
図2に破線で示すように、電流センサ51
U,51
V,51
Wによって検出される相電流が、負荷領域特定部41に入力される。短絡故障しているFETがローサイドFETである場合と、ハイサイドFETである場合とに分けて説明する。まず、ローサイドFETが短絡故障している場合について説明する。ここでは、
図3に示されているように、V相のローサイドFET31
VLが短絡故障している場合を例にとって説明する。負荷領域特定部41は、正常相であるU相およびW相の相電流I
U,I
Wのいずれかの極性が正となる電気角領域を、負荷領域として特定する。
【0048】
図7Aは、V相のローサイドFET31
VLが短絡故障している場合に、操舵操作によって電動モータ18のロータが回転されたときの、各相電流I
U,I
V,I
Wを示している。正常相であるU相の相電流I
Uの極性が正となる電気角領域が、U相の負荷領域A
Uとして特定される。また、正常相であるW相の相電流I
Wの極性が正となる電気角領域が、W相の負荷領域A
Wとして特定される。
【0049】
ハイサイドFETが短絡故障している場合について説明する。ここでは、
図4に示されているように、V相のハイサイドFET31
VHが短絡故障している場合を例にとって説明する。
図7Bは、V相のハイサイドFET31
VHが短絡故障している場合に、操舵操作によって電動モータ18のロータが回転されたときの、各相電流I
U,I
V,I
Wを示している。負荷領域特定部41は、正常相であるU相およびW相の相電流I
U,I
Wのいずれかの極性が負となる電気角領域を、負荷領域として特定する。より具体的には、正常相であるU相の相電流I
Uの極性が負となる電気角領域が、U相の負荷領域A
Uとして特定される。また、正常相であるW相の相電流I
Wの極性が負となる電気角領域が、W相の負荷領域A
Wとして特定される。
【0050】
第3方法について説明する。第3方法では、FET31毎にそのFET31が短絡故障相した場合の負荷領域を記憶したマップがあらかじめ作成されて、不揮発性メモリに格納される。このようなマップは、理論値または計測データに基づいて作成される。負荷領域特定部41は、短絡故障したFET31の位置を表す情報と、前記マップとに基づいて、負荷領域を特定する。
【0051】
マップを、理論値に基づいて作成する場合について説明する。
図8Aは、V相のローサイドFET31
VLが短絡故障したと仮定した場合の、電気角θに対する各相の相電圧(誘起電圧)V
U,V
V,V
Wおよび各相電流I
U,I
V,I
Wの理論値(シミュレーション値)を示している。この例では、通常駆動時において、U相の誘起電圧波形が正から負へと変化する点が電気角θの0°として設定されている。
図8Aに示されるような理論値に基づいて、V相のローサイドFET31
VLが短絡故障した場合の負荷領域が予め求められる。具体的には、U相の負荷領域A
U(この例では330°〜150°)と、W相の負荷領域A
W(この例では270°〜90°)とが予め求められる。
【0052】
図8Bは、V相のハイサイドFET31
VHが短絡故障したと仮定した場合の、電気角θに対する各相の相電圧(誘起電圧)V
U,V
V,V
Wの理論値(シミュレーション値)を示している。
図8Bに示されるような理論値に基づいて、V相のハイサイドFET31
VHが短絡故障した場合の負荷領域が予め求められる。具体的には、U相の負荷領域A
U(この例では150°〜330°)と、W相の負荷領域A
W(この例では90°〜270°)とが予め求められる。
【0053】
同様にして、U相のローサイドFET31
ULが短絡故障した場合の負荷領域、U相のハイサイドFET31
UHが短絡故障した場合の負荷領域、W相のローサイドFET31
WLが短絡故障した場合の負荷領域およびW相のハイサイドFET31
WHが短絡故障した場合の負荷領域が予め求められる。このようにして求められた負荷領域に基づいて、FET31毎にそのFET31が短絡故障相した場合の負荷領域を記憶したマップが予め作成される。
【0054】
次に、
図5のステップS5の負荷電流発生抑制処理について説明する。
図3または
図4に示されている第1〜第4の閉回路61,62,63,64に負荷電流が流れるためには、誘起電圧によって、短絡故障のFET31
VL,31
VHを通じて、当該閉回路内の回生ダイオード32
UL,32
WL,32
UH,32
WHがオンとなる必要がある。したがって、負荷電流の発生を抑制するためには、回転角センサ52によって検出されるロータ回転角が負荷領域特定部41によって特定された負荷領域にあるときに、当該負荷領域において負荷電流が流れると推定される閉回路内の回生ダイオードをオフにさせればよい。
【0055】
ローサイドFETが短絡故障した場合と、ハイサイドFETが短絡故障した場合とに分けて、より具体的に説明する。まず、ローサイドFETが短絡故障した場合について説明する。たとえば、
図3に示されているように、V相のローサイドFET31
VLが短絡故障した場合を例にとって説明する。
前述したように、U相の負荷領域A
Uにおいては、第1の閉回路61に負荷電流が流れると推定される。そこで、ロータ回転角がU相の負荷領域A
Uにあるときには、次のような方法により、第1の閉回路61内の回生ダイオード32
ULをオフにさせる。つまり、負荷電流発生抑制部43は、第1の閉回路61内の回生ダイオード32
ULに直列に接続されているFET、すなわち、U相のハイサイドFET31
UHを、通常駆動時よりも高いキャリア周波数でPWM(パルス幅変調)駆動させる。たとえば、通常時のキャリア周波数が20kHz程度である場合には、負荷電流発生抑制部43は、FET31
UHを300kHz程度のキャリア周波数でPWM駆動させる。
【0056】
そうすると、電源33からU相のハイサイドFET31
UH、2つの界磁コイル18U,18Vの直列回路および短絡故障FET31
VLを介して電流が接地34側に流れる。2つの界磁コイル18U,18Vの直列回路のインピーダンスZは、当該直列回路の抵抗成分をRとし、当該直列回路のインダクタンス成分をLとし、当該直列回路に流れる電流の周波数をfとすると、Z=R+j(2πfL)(ただし、jは虚数単位)で表される。この場合には、キャリア周波数が通常駆動時よりも高くされているので、当該直列回路に流れる電流の周波数fが高くなる。これにより、前記直列回路の誘導性リアクタンス(2πfL)が大きくなるので、前記直列回路のインピーダンスZが非常に大きくなる。この結果、第1の閉回路61内の回生ダイオード32
ULのカソード側電位V
Uがアノード側電位V
Vより高くなるので、当該回生ダイオード32
ULがオフとなる。これにより、第1の閉回路61に負荷電流が流れるのを阻止または抑制することができる。
【0057】
同様に、ロータ回転角がW相の負荷領域A
Wにあるときには、負荷電流発生抑制部43は、第2の閉回路62内の回生ダイオード32
WLに直列に接続されているFET、すなわち、W相のハイサイドFET31
WHを、通常駆動時よりも高いキャリア周波数でPWM(パルス幅変調)駆動させればよい。このようにすると、電源33からW相のハイサイドFET31
WH、2つの界磁コイル18W,18Vの直列回路および短絡故障FET31
VLを介して電流が接地34側に流れる。この際、2つの界磁コイル18W,18Vの直列回路のインピーダンスが非常に大きくなるので、第2の閉回路62内の回生ダイオード32
WLのカソード側電位V
Wがアノード側電位V
Vより高くなる。この結果、当該回生ダイオード32
ULがオフとなる。これにより、第2の閉回路62に負荷電流が流れるのを阻止または抑制することができる。
【0058】
つまり、負荷電流発生抑制部43は、ローサイドFETが短絡故障した場合には、回転角センサ52によって検出されたロータ回転角が各正常相の負荷領域にあるときに、当該正常相のハイサイドFETを、通常駆動時よりも高いキャリア周波数でPWM駆動させる。なお、負荷電流発生抑制部43は、各正常相(前記の例では、U相およびW相)の負荷領域を区別することなく、ロータ回転角がいずれかの正常相の負荷領域にあるときには、両正常相のハイサイドFETを、通常駆動時よりも高いキャリア周波数でPWM駆動させるようにしてもよい。
【0059】
次に、ハイサイドFETが短絡故障した場合について説明する。たとえば、
図4に示されているように、V相のハイサイドFET31
VHが短絡故障した場合を例にとって説明する。前述したように、U相の負荷領域においては、第3の閉回路63に負荷電流が流れると推定される。そこで、ロータ回転角がU相の負荷領域にあるときには、次のような方法により、第3の閉回路63内の回生ダイオード32
UHをオフにさせる。つまり、負荷電流発生抑制部43は、第3の閉回路63内の回生ダイオード32
UHに直列に接続されているFET、すなわち、U相のローサイドFET31
ULを、通常駆動時よりも高いキャリア周波数でPWM(パルス幅変調)駆動させる。そうすると、電源33から短絡故障FET31
VH、2つの界磁コイル18V,18Uの直列回路およびU相のローサイドFET31
ULを介して電流が接地34側に流れる。この際、2つの界磁コイル18V,18Uの直列回路のインピーダンスZが非常に大きくなるので、第3の閉回路63内の回生ダイオード32
UHのカソード側電位V
Vがアノード側電位V
Uより高くなる。この結果、当該回生ダイオード32
UHがオフとなる。これにより、第3の閉回路63に負荷電流が流れるのを阻止または抑制することができる。
【0060】
同様に、ロータ回転角がW相の負荷領域にあるときには、負荷電流発生抑制部43は、第4の閉回路64内の回生ダイオード32
WHに直列に接続されているFET、すなわち、W相のローサイドFET31
WLを、通常駆動時よりも高いキャリア周波数でPWM駆動させればよい。このようにすると、電源33から短絡故障FET31
VH、2つの界磁コイル18V,18Wの直列回路およびW相のローサイドFET31
WLを介して電流が接地34側に流れる。この際、2つの界磁コイル18V,18Wの直列回路のインピーダンスZが非常に大きくなるので、第4の閉回路64内の回生ダイオード32
WHのカソード側電位V
Vがアノード側電位V
Wより高くなる。この結果、当該回生ダイオード32
WHがオフとなる。これにより、第4の閉回路64に負荷電流が流れるのを阻止または抑制することができる。
【0061】
つまり、負荷電流発生抑制部43は、ハイサイドFETが短絡故障した場合には、回転角センサ52によって検出されたロータ回転角が各正常相の負荷領域にあるときに、当該正常相のローサイドFETを、通常駆動時よりも高いキャリア周波数でPWM駆動させる。なお、負荷電流発生抑制部43は、各正常相(前記の例では、U相およびW相)の負荷領域を区別することなく、ロータ回転角がいずれかの正常相の負荷領域にあるときには、両正常相のローサイドFETを、通常駆動時よりも高いキャリア周波数でPWM駆動させるようにしてもよい。
【0062】
上記実施の形態によれば、駆動回路30内の6つのFETのうち、1つのFETに短絡故障が発生した場合において、電動モータ18が負荷となる負荷領域を特定することができるようになる。また、このような場合において、負荷電流の発生を抑制することができるので、操舵が重くなるのを抑制または防止できるようになる。
なお、この発明は、電動パワーステアリング装置以外の用途に使用されている三相ブラシレスモータに対しても、適用することができる。
【0063】
その他、この発明は、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。