(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5761612
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
B66B 31/00 20060101AFI20150723BHJP
B66B 23/02 20060101ALI20150723BHJP
B66B 29/00 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
B66B31/00 F
B66B23/02 A
B66B29/00 B
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-272395(P2011-272395)
(22)【出願日】2011年12月13日
(65)【公開番号】特開2013-124145(P2013-124145A)
(43)【公開日】2013年6月24日
【審査請求日】2014年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100124707
【弁理士】
【氏名又は名称】夫 世進
(72)【発明者】
【氏名】藤原 憲治
【審査官】
藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−238062(JP,A)
【文献】
特開2006−143424(JP,A)
【文献】
特開2010−168160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00−31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に連結され循環移動する複数の踏段と、
前記踏段を相互に連結する無端状の踏段チェーンと、
前記踏段チェーンが巻き付けられ、前記踏段チェーンを駆動する踏段ホイールと、
前記踏段ホイールと同軸に設けられた駆動大ホイールと、
駆動小ホイールを駆動する駆動装置と、
前記駆動大ホイールと前記駆動小ホイールをとの間に掛け渡された駆動チェーンと、
前記踏段ホイールと同軸に設けられたラチェットホイールと、
トラスに設けられた水平な連結軸を中心に回転自在に吊り下げられたシューレバーと、
前記シューレバーの下端に取り付けられ、自重によって前記駆動チェーン上に載置される押さえ部材と、
前記連結軸を中心に前記シューレバーと共に回転して、前記ラチェットホイールと噛み合うラチェットポールと、
を有し、
前記押さえ部材は連結板を有し、前記連結板は、前記駆動チェーンの前後方向に沿って長い長方形状の板材であり、
前記連結板の下面には、前記踏段チェーンに接触するすり板が設けられ、
前記連結板の側面には、油カバーが取り付けられ、前記油カバーは、前記すり板と前記駆動チェーンの接触面よりも下方まで延設され、かつ、前記押さえ部材より前後方向にそれぞれ突出している、
乗客コンベア。
【請求項2】
前記油カバーが、前記駆動チェーンの外側に位置している、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
前記すり板の下面には、前記踏段チェーンに対応した前後方向の溝が設けられている、
請求項1又は2に記載の乗客コンベア。
【請求項4】
前記油カバーに吸油材が設けられている、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の乗客コンベア。
【請求項5】
前記吸油材が、前記油カバーに対し着脱自在である、
請求項4に記載の乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エスカレータや動く歩道などの乗客コンベアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
乗客コンベアの複数の踏段は、踏段チェーンにより循環移動し、この踏段チェーンは踏段ホイールにより駆動する。一方、踏段の駆動機構であるモータには減速装置を介して駆動小ホイールが取り付けられ、踏段ホイールと同軸に取り付けられた駆動大ホイールと駆動小ホイールとの間を駆動チェーンが掛け渡されている。
【0003】
また、従来より駆動チェーンの切断、又は、伸びを検出して踏段の移動を非常停止させる非常停止装置が設けられている。この非常停止装置は、駆動チェーンに押さえ部材であるシューが載置され、このシューはシューレバーによって回動自在であり、そして、駆動チェーンが切断したり伸びたりしてシューが移動すると、このシューレバーと共にラチェットホイールが回転して、踏段ホイールと同軸に取り付けられているラチェットホイールに噛み合い、踏段の移動を非常停止させる。
【0004】
また、従来より、複数の踏段を連結する踏段チェーンの油飛散防止装置として、垂れ落ちる油をオイルパンによって受けて、外装板への汚れを防ぐ構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−143424号公報
【特許文献2】実開平7−13877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようなシューレバーの下端に設けられている押さえ部材によって、駆動チェーンの振動を抑制して、振動による駆動チェーンの油の飛散を防止することは可能であるが、運転状態が高速であったりして駆動チェーンへの給油量が多い場合には、押さえ部材の端部より油が飛散するという問題点がある。また、このように飛散した油は、オイルパンでは受けることができず、外装板などを汚すという問題点もある。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、駆動チェーンが切断、又は、伸びたりした場合に、非常停止装置として作用すると共に、駆動チェーンからの油の飛散を防止できる乗客コンベアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態は、無端状に連結され循環移動する複数の踏段と、前記踏段を相互に連結する無端状の踏段チェーンと、前記踏段チェーンが巻き付けられ、前記踏段チェーンを駆動する踏段ホイールと、前記踏段ホイールと同軸に設けられた駆動大ホイールと、駆動小ホイールを駆動する駆動装置と、前記駆動大ホイールと前記駆動
小ホイールをとの間に掛け渡された駆動チェーンと、前記踏段ホイールと同軸に設けられたラチェットホイールと、トラスに設けられた水平な連結軸を中心に回転自在に吊り下げられたシューレバーと、前記シューレバーの下端に取り付けられ、自重によって前記駆動チェーン上に載置される押さえ部材と、前記連結軸を中心に前記シューレバーと共に回転して、前記ラチェットホイールと噛み合うラチェットポールと、
を有し、前記押さえ部材は連結板を有し、前記連結板は、前記駆動チェーンの前後方向に沿って長い長方形状の板材であり、前記連結板の下面には、前記踏段チェーンに接触するすり板が設けられ、前記連結板の側面には、油カバーが取り付けられ、前記油カバーは、前記すり板と前記駆動チェーンの接触面よりも下方まで延設され、かつ、前記押さえ部材より前後方向にそれぞれ突出している、乗客コンベアである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態のエスカレータの側面から見た説明図である。
【
図3】ラチェット梁とラチェットポールと押さえ部材と機械室の後方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態である乗客コンベアについて、
図1〜
図4に基づいて説明する。本実施形態では、乗客コンベアとしてエスカレータ10で説明する。
【0011】
(1)エスカレータ10の構造
エスカレータ10の構造について、
図1に基づいて説明する。
【0012】
エスカレータ10が設置される建屋の上階床と下階床との間に渡ってトラス12が設置されている。このトラス12の内部には、無端状に連結された複数の踏段14が設けられている。トラス12の上面の左右両側部には左右一対の欄干16,16が設けられ、この欄干16の周縁部には移動手すり18が設けられている。
【0013】
トラス12の上階側には機械室20が設けられ、この機械室20内部には、エスカレータ10の駆動源であるモータ22、減速装置24、減速装置24の出力側に設けられた駆動小ホイール26が設けられている。また、複数の踏段14を移動させるために無端状の踏段チェーン28が設けられ、この踏段チェーン28を駆動させるために、機械室20内部には踏段ホイール30が設けられている。一方、下階側の機械室32内部にも踏段ホイール34が設けられ、この踏段ホイール30と踏段ホイール34との間に前記した踏段チェーン28が掛け渡されている。
【0014】
踏段ホイール30と同軸に駆動大ホイール36が設けられ、駆動大ホイール36と駆動小ホイール26との間に駆動チェーン38が掛け渡されている。この駆動チェーン38が切断などの異常が発生した場合に、それを検知して踏段ホイール30の回転を停止させる非常停止装置40が上階側の機械室20内部に設けられている。この非常停止装置40については後から詳しく説明する。
【0015】
(2)非常停止装置40の構造
次に、非常停止装置40の構造について
図2〜
図4に基づいて説明する。
【0016】
図2に示すように、上階側の機械室20内部には、上記したようにモータ22、減速装置24が設置され、減速装置24には駆動小ホイール26が取り付けられている。踏段ホイール30と同軸に駆動大ホイール36とラチェットホイール42が設けられている。
【0017】
図2に示すように、上階側の機械室20を構成するトラス12の枠体44において機械室20の上面の左右方向にはラチェット梁46が設けられている。このラチェット梁46は枠体44に強固に固定されている。
【0018】
図3に示すように、ラチェット梁46に沿って連結軸48が回動自在に設けられている。この連結軸48の左側には、ラチェットポール50が吊り下げられ、連結軸48を中心に回動し、その先端がラチェットホイール42と噛み合う。
【0019】
図3に示すように、連結軸48の右側には、シューレバー52が吊り下げられ、このシューレバー52の下端部には押さえ部材(シュー)54が設けられている。押さえ部材54は、駆動チェーン38の上に載置されるものであり、連結板56を有している。この連結板56は、駆動チェーン38の前後方向に沿って長い長方形状の板材であって、
図4に示すように、左端部が上方に折曲され、ピン58を介してシューレバー52の下端部に回動自在に吊り下げられている。連結板56の下面には、直方体状のすり板60が設けられている。このすり板60の下面には前後方向に溝62が設けられ、
図4に示すように、この溝62の部分を除いてすり板60の下面が駆動チェーン38の上に接触するように載置される。このすり板60の材質としては、例えば、ゴム、又は、合成樹脂である。
【0020】
図4に示すように、連結板56の上面には、油カバー64が取り付けられている。この油カバー64は、逆L字状に折曲され、油カバー64の上面66が連結板56に固定され、折曲された側板68が、駆動チェーン38の外側に位置している。この側板68は、機械室20の内側でなく、外側(建屋側)に設けられている。側板68の内側には、板状の吸油材70がネジ72によって固定されている。油カバー64の前後方向の長さは、すり板60よりも前後ともに長く、また、側板68は、すり板60と駆動チェーン38の接触面よりも下方まで延設されている。吸油材70の材質としては、紙、布などである。
【0021】
(3)非常停止装置40の動作
非常停止装置40の動作状態を説明する。
【0022】
押さえ部材54は、常に駆動チェーン38の上に載置されている。エスカレータ10が駆動し、駆動チェーン38が移動しても、すり板60が駆動チェーン38の上に載置され(
図4参照)、駆動チェーン38の上下方向の振動を抑えている。一方、油カバー64の側面68に取り付けられた吸油材70は、移動している駆動チェーン38から飛び散る油を吸収し、駆動チェーン38から外側(建屋側)に飛び散る油を防止でき、トラス12外に油が飛散することを防止できる。特に、油カバー64は、駆動チェーン38の上方及び外側方を覆うように設けられ、かつ、側板68の下端が駆動チェーン38とすり板60の接触面よりも下方に延設されているため、すり板60と駆動チェーン38の接触部分からの油の飛び散り防止できる。
【0023】
駆動チェーン38が何らかの理由により切断又は延びたりすると、押さえ部材54が下方に移動し、それと共にシューレバー52が回動する(
図4参照)。シューレバー52が回動すると、連結軸48を介してラチェットポール50も同様に回動し、ラチェットポール50の先端がラチェットホイール42に噛み合い、踏段ホイール30の回転を停止させ、エスカレータ10が非常停止する。これによって、エスカレータ10の利用客の安全を確保できる。
【0024】
(4)効果
上記実施形態によれば、駆動チェーン38が移動しているときは、油カバー64によって駆動チェーン38の上面、外側方を覆うため、駆動チェーン38からの油の飛散、特に、トラス12から建屋側に飛散する油を防止できる。また、すり板60と駆動チェーン38の接触面よりも下方に側板68が延設されているため、この接触部分から飛び散る油の飛散を防止できる。そのため、駆動チェーン38の移動速度が上がっても、トラス12外に油が飛散することがない。
【0025】
飛散した油は、吸油材70に吸収されるため、油カバー64から油が垂れ落ちたりすることがない。この吸油材70は、ネジ72によって固定されているため、ネジ72を外すと吸油材70が油カバー64から取り外すことができ、吸油材70で吸収された油の量が一定量越えた場合に、保守作業において新しい吸油材70に簡単に交換できる。
【0026】
上記実施形態では、エスカレータ10で説明したが、これに代えて動く歩道に適用してもよい。
【0027】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0028】
10・・・エスカレータ、12・・・トラス、14・・・踏段、20・・・機械室、22・・・モータ、24・・・減速装置、26・・・駆動小ホイール、28・・・踏段チェーン、30・・・踏段ホイール、36・・・駆動大ホイール、38・・・駆動チェーン、40・・・非常停止装置、42・・・ラチェットホイール、48・・・連結軸、50・・・ラチェットポール、52・・・シューレバー、54・・・押さえ部材、56・・・連結板、58・・・ピン、60・・・すり板、64・・・油カバー、66・・・上面、68・・・側板、70・・・吸油材、72・・・ネジ