特許第5761630号(P5761630)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5761630
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】乗客コンベアの間隙異常判定装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 29/00 20060101AFI20150723BHJP
【FI】
   B66B29/00 D
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-140150(P2014-140150)
(22)【出願日】2014年7月8日
【審査請求日】2014年7月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】中村 久仁子
【審査官】 筑波 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−106808(JP,A)
【文献】 特開2006−273549(JP,A)
【文献】 特開2002−87750(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00 − 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に連結されて移動する複数の踏段と、前記踏段の側方に設けられたスカートガードと、乗客が乗降時に通過する一対の乗降板とを有する乗客コンベアの、前記踏段と前記スカートガードとの間の間隙の異常を判定する乗客コンベアの間隙異常判定装置であって、
前記乗客コンベアの運転時に前記踏段が通過する位置に隣接して配設され、前記踏段が通過開始または通過終了したことを検出する第1センサと、
前記第1センサと前記乗降板の幅方向に離間して配設され、前記踏段が通過開始または通過終了したことを検出する第2センサと、
前記第1センサが前記踏段の通過開始または通過終了を検出した第1時刻と、前記第1時刻が前記踏段の通過開始を検出した時刻である場合には前記第2センサが前記踏段の通過開始を検出した時刻を第2時刻とし、前記第1時刻が前記踏段の通過終了を検出した時刻である場合には前記第2センサが前記踏段の通過終了を検出した時刻を第2時刻として、前記第2時刻との差が第1しきい値以上である場合に、前記間隙の異常ありと判定する判定部と、
を備えることを特徴とする乗客コンベアの間隙異常判定装置。
【請求項2】
前記第1センサおよび前記第2センサは、少なくともいずれか一方の前記乗降板に配設されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベアの間隙異常判定装置。
【請求項3】
前記第1しきい値は、前記踏段の幅方向の長さと、前記踏段の奥行き方向の長さと、前記乗客コンベアの速度とに基づいて算出される、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の乗客コンベアの間隙異常判定装置。
【請求項4】
前記判定部によって前記間隙の異常ありと判定された場合に、判定結果を記憶する記憶部と、
を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の乗客コンベアの間隙異常判定装置。
【請求項5】
前記判定部によって、前記第1時刻と前記第2時刻との差が、前記第1しきい値よりも大きい第2しきい値以上であり、前記間隙の異常ありと判定された場合に、判定結果を外部に報知する報知部と、
を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の乗客コンベアの間隙異常判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗客コンベアの間隙異常判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗客コンベアの踏段とスカートガードとの間には、踏段が昇降するために間隙が設定されている。踏段は、幅方向両端部に配設された駆動チェーンによって昇降されるが、駆動チェーンは経年変化や外部要因によって伸びることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−087750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、駆動チェーンの伸びが不均衡である場合は、踏段とスカートガードとの間の間隙が変化して、踏段はスカートガードに対してずれた状態で昇降する。そして、踏段がスカートガードに接触することにより擦過傷をつけて、美観を損なうことがある。
【0005】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、踏段とスカートガードの間隙の異常を判定する乗客コンベアの間隙異常判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の乗客コンベアの間隙異常判定装置は、無端状に連結されて移動する複数の踏段と、前記踏段の側方に設けられたスカートガードと、乗客が乗降時に通過する一対の乗降板とを有する乗客コンベアの、前記踏段と前記スカートガードとの間の間隙の異常を判定するものである。そして、間隙異常判定装置は、第1センサと、第2センサと、判定部とを備える。第1センサは、前記乗客コンベアの運転時に前記踏段が通過する位置に隣接して配設され、前記踏段が通過開始または通過終了したことを検出する。第2センサは、前記第1センサと前記乗降板の幅方向に離間して配設され、前記踏段が通過開始または通過終了したことを検出する。判定部は、前記第1センサが前記踏段の通過開始または通過終了を検出した第1時刻と、前記第2センサが前記踏段の通過開始または通過終了を検出した第2時刻との差が第1しきい値以上である場合に、前記間隙の異常ありと判定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る乗客コンベアの間隙異常判定装置を備えた乗客コンベアの全体構成を示す概略図である。
図2図2は、実施形態に係る乗客コンベアの間隙異常判定装置の構成を示す概略図である。
図3図3は、実施形態に係る乗客コンベアの間隙異常判定装置を備えた乗客コンベアの乗降板と踏段との位置関係を示す概略図である。
図4図4は、実施形態に係る乗客コンベアの間隙異常判定装置の第1センサと第2センサと踏段との位置関係を示す平面図である。
図5図5は、実施形態に係る乗客コンベアの間隙異常判定装置の構成を示すブロック図である。
図6図6は、実施形態に係る乗客コンベアの間隙異常判定装置によって測定された信号の一例を示す図である。
図7図7は、実施形態に係る乗客コンベアの間隙異常判定装置における情報処理を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態に係る乗客コンベアの間隙異常判定装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、下記の実施形態は例示であり、発明の範囲がそれらに限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0009】
[実施形態]
実施形態に係る乗客コンベアの間隙異常判定装置(以下、単に、間隙異常判定装置と記す)1は、図1に示すように、乗客コンベアとしてのエスカレータ100を構成する。エスカレータ100は、建造物(建築物ともいう)に設置されて、この建造物の一の階(以下、下階と呼ぶ)とこの下階よりも上方の他の階(以下、上階と呼ぶ)とに亘って乗客などを運搬する。
【0010】
エスカレータ100は、図1に示すように、主として、トラス(構造フレーム)110と、複数の踏段120と、欄干130と、乗降板140とを備えている。トラス110は、建造物の下階と上階とに亘って、この建造物の躯体内に設けられている。また、トラス110内には、図示しない駆動源としてのモータと減速機とに接続された駆動輪111と、従動輪112と、チェーン113とを備えている。駆動輪111は、上階側に回転自在に設けられ、従動輪112は、下階側に回転自在に設けられている。
【0011】
チェーン113は、無端状に形成され、駆動輪111と従動輪112とに亘って掛けられている。チェーン113は、駆動輪111がモータの駆動力により回転されることで、駆動輪111と従動輪112との周りを循環走行(移動)する。チェーン113は、経年変化や外部要因によって不均衡な伸びが生じる。
【0012】
踏段120は、図2に示すように、上面の踏み面に乗客などが乗ることができる平面状であり、その平面形状は長辺(幅方向の長さ)L1、短辺(奥行き方向の長さ)L2の矩形状に形成されている。踏段120の頂部をQ1、Q2、Q3、Q4とする。また、踏段120の踏み面には、図示しないクリートと呼ばれる溝が形成されている。踏段120は、図3に示すように、長手方向がエスカレータ100の長手方向に対して直交した状態、すなわち、長手方向が後述する乗降板140の長手方向と平行な状態で設置されている(図中において破線で示す踏段120参照)。踏段120は、後述する一対のスカートガード131から間隙d2だけ離間して配設されている。ここで、間隙d2は、取り付け時の値(基準値)が約5mmに設定されている。
【0013】
踏段120は、図1に示すように、長手方向の両端部がチェーン113に取り付けられている。複数の踏段120は、チェーン113により無端状に連結されている。そして、チェーン113が駆動輪111と従動輪112とに亘って循環走行(移動)することで、踏段120はチェーン113とともに循環走行(移動)して、踏み面に乗せた乗客を下階と上階とに亘って運搬する。このため、チェーン113に不均衡な伸びが生じた場合には、踏段120は、図2に示すように、長手方向が乗降板140の長手方向と平行な状態からずれて角度を有する(図3中において実線で示す踏段120参照)。このとき、間隙d2は、頂部Q1においては基準値よりも拡大し、頂部Q4においては基準値よりも縮小している。
【0014】
欄干130は、図1に示すように、複数連結された踏段120の幅方向の両側方から立設している。すなわち、欄干130は、一対が設けられ、複数連結された踏段120に隣接して設けられている。欄干130は、それぞれ、複数連結された踏段120の長手方向、すなわち、トラス110の長手方向に沿って直線状に延在している。欄干130は、踏段120と隣接し、かつ、下階と上階とに亘って設けられたスカートガード131と、スカートガード131から立設し、かつ、下階と上階とに亘って設けられた側板132と、側板132の外縁を踏段120と同方向に循環走行する手すりベルト133とを有している。すなわち、図3に示すように、スカートガード131は、踏段120の両側方に設けられている。
【0015】
乗降板140は、図1に示すように、下階側乗降口101および上階側乗降口102に配設され、乗客がエスカレータ100の乗降時にその上を通行するものである。踏段120は、乗客を乗せる踏み面を水平状として、一方の乗降板140に沿ってトラス110内から進出し、他方の乗降板140に沿ってトラス110内へ進入する。
【0016】
乗降板140は、図4に示すように、その長辺に、コム141と呼ばれる溝が形成されている。このコム141によって、踏段120のクリートがガイドされて乗降板140の下方を通過して、トラス110内に進入する。
【0017】
前述した構成のエスカレータ100は、図1に示すように、チェーン113を駆動輪111と従動輪112との周りに循環走行させて、踏段120を下階と上階とに亘って移動させて、踏段120上の乗客を下階と上階とに亘って運搬する。エスカレータ100は、図示しない制御盤に設けられる後述する制御装置4によって動作を制御可能になっており、制御盤は、図示しない機械室に設置されている。このようなエスカレータ100は、間隙異常判定装置1を備えている。
【0018】
間隙異常判定装置1は、図1に示すように、無端状に連結されて移動する複数の踏段120と、踏段120の側方に設けられたスカートガード131と、乗客が乗降時に通過する一対の乗降板140とを有するエスカレータ100の踏段120とスカートガード131との間の間隙d2(図3参照)の異常を判定するものである。本実施形態では、図5に示すように、制御装置4は、判定部5と制御部6とを有している。判定部5は、第1センサ2と第2センサ3からの信号などを受信可能に接続されており、これらの信号から踏段120とスカートガード131との間の間隙d2(図3参照)の異常を判定するように構成されている。制御部6は、判定部5による判定結果に基づいて、記録部7や外部報知部8に対して制御信号を送信可能に構成されている。このような判定部5と制御部6は、制御装置4の機能の一部として実現されている。また、本実施形態では、第1センサ2と、第2センサ3と、制御装置4を構成する判定部5と制御部6と、記録部7と、外部報知部8とが間隙異常判定装置1として機能する。
【0019】
第1センサ2は、エスカレータ100の運転時に踏段120が通過する位置に隣接して配設され、踏段120が第1センサ2の下方を通過開始または通過終了したことを検出する静電容量型や誘導型のセンサである。第1センサ2は、図2に示すように、上階の乗降板140のコム141の幅方向一端部に配設され(図4参照)、踏段120が通過開始したこと、踏段120が通過終了したことを検出する。
【0020】
具体的には、第1センサ2は、乗降板140の幅方向一端部の下方を、踏段120が通過開始したことを検出すると、信号H(図6参照)と検出時刻とを判定部5(図4参照)に送信する。また、第1センサ2は、乗降板140の幅方向一端部の下方を、踏段120が通過終了したことを検出すると、信号L(図6参照)と検出時刻とを判定部5(図4参照)に送信する。これにより、図6に示すように、踏段120が乗降板140の幅方向一端部の下方を通過している間は、判定部5が第1センサ2から受信する信号はHで一定となり、踏段120と踏段120との間が乗降板140の幅方向一端部の下方を通過している間は、判定部5が第1センサ2から受信する信号はLに復帰して一定となる。
【0021】
第2センサ3は、第1センサ2と同様に構成されており、図2に示すように、第1センサ2と乗降板140の幅方向に離間して配設され、踏段120が第2センサ3の下方を通過開始または通過終了したことを検出するセンサである。第2センサ3は、図2に示すように、上階の乗降板140のコム141の幅方向他端部に配設され(図4参照)、踏段120が通過開始したこと、踏段120が通過終了したことを検出する。
【0022】
具体的には、第2センサ3は、乗降板140の幅方向他端部の下方を、踏段120が通過開始したことを検出すると、信号H(図6参照)と検出時刻とを判定部5(図4参照)に送信する。また、第2センサ3は、乗降板140の幅方向他端部の下方を、踏段120が通過終了したことを検出すると、信号L(図6参照)と検出時刻とを判定部5(図4参照)に送信する。
【0023】
このような第1センサ2と第2センサ3との距離は、踏段120の長辺L1と略同等に設定されている。
【0024】
制御装置4は、制御盤に配設され、エスカレータ100の動作を制御可能なものである。制御装置4は、物理的には、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)などを有するコンピュータである。後述する制御装置4の各機能は、ROMに保持されるプログラムやタスクをRAMにロードしてCPUで実行することによって、CPUの制御のもとでエスカレータ100内の各種装置を動作させるとともに、RAMやROMにおけるデータの読み出しおよび書き込みを行うことで実現される。
【0025】
判定部5は、第1センサ2が踏段120の通過開始を検出した第1時刻と、第2センサ3が踏段120の通過開始を検出した第2時刻との時刻差Δtが第1しきい値以上である場合に、「間隙d2の異常あり」と判定する機能を有するプログラム、タスクである。なお、判定部5は、第1センサ2が踏段120の通過終了を検出した時刻を第1時刻とした場合には、第2センサ3が踏段120の通過終了を検出した時刻を第2時刻として、第1時刻と第2時刻との時刻差Δtが第1しきい値以上である場合に、「間隙d2の異常あり」と判定する。そして、判定部5は、当該エスカレータ100において異常があった旨のデータ(信号、検出時刻、時刻差Δt)を記録する。
【0026】
また、判定部5は、同様に、第1センサ2が踏段120の通過開始を検出した第1時刻と、第2センサ3が踏段120の通過開始を検出した第2時刻との時刻差Δtが第2しきい値以上である場合に、「間隙d2の異常あり(報知要)」と判定する機能を有するプログラム、タスクである。ここで、第2しきい値とは、第1しきい値よりも大きい値である。さらに、判定部5は、第1センサ2が踏段120の通過終了を検出した時刻を第1時刻とした場合には、第2センサ3が踏段120の通過終了を検出した時刻を第2時刻として、第1時刻と第2時刻との時刻差Δtが第2しきい値以上である場合に、「間隙d2の異常あり(報知要)」と判定する。そして、判定部5は、音声や光、文字などで当該データを報知するための制御信号を制御部6および外部報知部8を介して後述する監視盤200に送信する。
【0027】
ここで、踏段120の長手方向がトラス110の長手方向に対して直交からずれて角度を有する場合、すなわち、踏段120の長手方向が乗降板140の長手方向と平行な状態からずれて角度を有する場合(図2において実線で示す踏段120参照)において、第1しきい値の算出方法を説明する。この場合は、第1センサ2が踏段120の通過開始を検出する第1時刻と、第2センサ3が踏段120の通過開始を検出する第2時刻とに時刻差Δtが生じる。すなわち、図6に示すように、第1センサ2からの信号がHとなる時刻と、第2センサ3からの信号がHとなる時刻に時刻差Δtが生じる。同様に、第1センサ2からの信号がLに復帰する時刻と、第2センサ3からの信号がLに復帰する時刻にも時刻差Δtが生じる。
【0028】
まず、第1センサ2が踏段120の通過開始を検出したときの、第2センサ3と踏段120の頂部Q2との距離d1(図2参照)を、次式で算出する。なお、エスカレータ100の速度はVとする。速度Vは、後述する制御装置4の制御部6を介して取得可能である。
d1=V・Δt (式1)
【0029】
つぎに、踏段120の頂部Q1と頂部Q4の、乗降板140の幅方向のズレd0(図2参照)を、次式で算出する。
d0=V・Δt・L2/L1 (式2)
ズレd0が拡大して間隙d2が縮小すると、踏段120はスカートガード131に接触するため、踏段120がスカートガード131に接触しないように、ズレd0について第1ズレしきい値を設定する。ズレd0の第1ズレしきい値は、例えば、間隙d2の基準値の5割に相当する「約0.25mm」や、「0.20mm」のように、エスカレータ100に合わせて適切な値を設定する。また、ズレd0の第1ズレしきい値よりも大きなしきい値として、間隙d2の7割である「約0.35mm」や、「0.30mm」のように、ズレd0の第1ズレしきい値より厳しい値を第2ズレしきい値として設定する。
【0030】
つづいて、式2より、第1センサ2からの信号がHとなる時刻と、第2センサ3からの信号がHとなる時刻との時刻差Δt、第1センサ2からの信号がLに復帰する時刻と第2センサ3からの信号がLに復帰する時刻との時刻差Δtは、次式で算出される。
Δt=d0・L1/L2/V (式3)
式3より、上記のように設定したズレd0の第1ズレしきい値と、L1、L2とに基づいて第1しきい値(記録用しきい値)が算出される。同様に、第2ズレしきい値と、L1、L2とに基づいて第2しきい値(報知用しきい値)が算出される。
【0031】
したがって、時刻差Δtが第1しきい値(記録用しきい値)以上の場合に、判定部5は、「間隙d2の異常あり」と判定する。また、時刻差Δtが第2しきい値(報知用しきい値)以上の場合に、判定部5は、「間隙d2の異常あり(報知要)」と判定する。
【0032】
判定部5における処理について説明する。以下、第1センサ2が踏段120の通過終了を検出した時刻を第1時刻とし、第2センサ3が踏段120の通過終了を検出した時刻を第2時刻とする場合について説明する。
【0033】
判定部5は、図7に示すように、第1センサ2および第2センサ3からの信号受信を常時、監視して、第1センサ2から受信した信号または第2センサ3から受信した信号のいずれかがHからLに変化するまで(復帰するまで)待機する(ステップS1)。そして、判定部5が第1センサ2から受信した信号または第2センサ3から受信した信号のいずれか一方のセンサから受信した信号がHからLに変化した(復帰した)と判定した場合(「Yes」の場合)は、判定部5は、他方のセンサから受信した信号、すなわち、第2センサ3から受信した信号または第1センサ2から受信した信号がHからLに変化するまで(復帰するまで)待機する(ステップS2)。
【0034】
そして、判定部5が第2センサ3から受信した信号または第1センサ2から受信した信号がHからLに変化した(復帰した)と判定した場合、すなわち、第1センサ2から受信した信号および第2センサ3から受信した信号のいずれもHからLに変化した(復帰した)場合(「Yes」の場合)は、判定部5は、第1センサ2から受信した信号がHからLに変化したときの検出時刻(第1時刻)と、第2センサ3から受信した信号がHからLに変化したときの検出時刻(第2時刻)との時刻差Δtが、第1しきい値以上であるか否かを判定する(ステップS3)。判定部5が、時刻差Δtは第1しきい値以上ではないと判定した場合(「No」の場合)は、判定部5は「正常(間隙d2の異常なし)」と判定する(ステップS4)。また、判定部5が、時刻差Δtは第1しきい値以上であると判定した場合(「Yes」の場合)は、判定部5は「間隙d2の異常あり」と判定する。そして、判定部5は、後述する記録部7に対して、当該エスカレータ100において異常があった旨のデータを記録させる制御信号を、制御部6を介して送信する(ステップS5)。
【0035】
さらに、判定部5は、時刻差Δtが第2しきい値以上であるか否かを判定する(ステップS6)。判定部5が、時刻差Δtは第2しきい値以上ではないと判定した場合(「No」の場合)は、この処理を終了する。判定部5が、時刻差Δtは第2しきい値以上であると判定した場合(「Yes」の場合)は、判定部5は「間隙d2の異常あり(報知要)」と判定する。そして、判定部5は、後述する監視盤200に対して、音声や光、文字などで当該データを報知するための制御信号を制御部6および外部報知部8を介して送信する(ステップS7)。
【0036】
制御部6は、判定部5による判定結果に基づいて、記録部7や監視盤200に対する制御信号を送信する。また、制御部6は、図示しない駆動源としてのモータや減速機を含む各部の駆動を制御する制御信号を送信して、エスカレータ100の運転を制御する。
【0037】
記録部7は、データを記憶するための記憶装置であり、判定部5が「間隙d2の異常あり」と判定した場合に、制御部6からの制御信号に基づいて当該データを記録する。
【0038】
外部報知部8は、例えば、管理者や保守会社に設置された監視盤200と有線または無線にて接続可能であり、監視盤200に対して、当該エスカレータ100において異常があった旨の当該データを出力するための制御信号を送信する。また、外部報知部8は、当該エスカレータ100の下階側乗降口101付近や上階側乗降口102付近に配設された報知装置9に対して、当該エスカレータ100において異常があった旨を、音声や光、文字などで報知させるための制御信号を送信する。
【0039】
報知装置9は、例えば、スピーカ、警報器、警報灯などで構成される。
【0040】
監視盤200は、管理者や保守会社の監視下にあるエスカレータ100を含む設備を監視、管理するための監視画面や、スピーカ、警報器、警報灯を含む監視装置である。この監視盤200は、外部報知部8からの制御信号に基づいて、異常があったエスカレータ100と当該データを文字や画像、映像で表示したり、音声で出力したりする。
【0041】
実施形態に係る間隙異常判定装置1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0042】
エスカレータ100が速度Vで運転を開始すると、間隙異常判定装置1は、常時、踏段120とスカートガード131との間の間隙d2の異常を判定する。具体的には、第1センサ2は、踏段120が通過開始したことを検出すると、信号Hと検出時刻とを判定部5に送信する。また、第1センサ2は、踏段120が通過終了したことを検出すると、信号Lと検出時刻とを判定部5に送信する。同様に、第2センサ3は、踏段120が通過開始したことを検出すると、信号Hと検出時刻とを判定部5に送信する。また、第2センサ3は、踏段120が通過終了したことを検出すると、信号Lと検出時刻とを判定部5に送信する。
【0043】
踏段120の長手方向が乗降板140の長手方向と平行な状態の場合や、踏段120の長手方向が乗降板140の長手方向と平行な状態からずれて角度を有しているが、ズレd0が小さい場合について説明する。この場合は、判定部5は、時刻差Δtが第1しきい値以上ではないと判定する。
【0044】
つぎに、踏段120の長手方向が乗降板140の長手方向と平行な状態からずれて角度を有しており、ズレd0が大きくなった場合について説明する。この場合は、判定部5は、時刻差Δtが第1しきい値以上であるか否かを判定する。この場合は、判定部5は、時刻差Δtが第1しきい値以上であり、「間隙d2の異常あり」と判定する。そして、判定部5は、記録部7に対して、当該データを記録するための制御信号を、制御部6を介して送信する。
【0045】
つづいて、踏段120の長手方向が乗降板140の長手方向と平行な状態からずれて角度を有しており、ズレd0がさらに大きくなった場合について説明する。判定部5は、時刻差Δtが第2しきい値以上であり、「間隙d2の異常あり(報知要)」と判定する。そして、判定部5は、監視盤200に対して、異常があったエスカレータ100と当該データを文字や画像、映像で表示したり、音声で出力したりする制御信号を制御部6および外部報知部8を介して送信する。
【0046】
また、エスカレータ100の乗降客が途切れて、エスカレータ100の速度Vが小さく調整された場合について説明する。エスカレータ100の速度Vが変化しても、制御装置4の制御部6を介して常に最新の速度Vが取得可能である。そして、制御部6は、速度Vが変化したと判定した場合は、最新の速度Vに基づいて、ズレd0と時刻差Δtとを再度算出する。そして、算出した最新の時刻差Δtに基づいて、判定部5は上記と同様に判定処理を行う。
【0047】
実施形態に係る間隙異常判定装置1は、以上のごとき構成作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0048】
第1センサ2と第2センサ3と判定部5とにより、エスカレータ100の運転中は、常時、時刻差Δtが第1しきい値以上であるか否かを判定する。このため、時刻差Δtが第1しきい値以上となって、踏段120の乗降板140に対する幅方向のズレd0が大きくなったこと、すなわち、踏段120とスカートガード131の間隙d2が所定値以下となったことを検出可能である。このように、踏段120とスカートガード131の間隙d2が所定値以下となったことを検出すると、当該データを記録部7に記憶したり、監視盤200に表示、出力したりすることができる。このため、管理者や保守会社は、間隙d2が所定値以下となったことを把握可能となり、早期に保守、点検を実施できる。そして、早期に保守、点検を実施することにより、踏段120がスカートガード131と接触して擦過傷をつけることを防ぐことができるので、エスカレータ100の美観を損なうことを抑制できる。
【0049】
また、判定部5が、時刻差Δtは第1しきい値以上であると判定した場合は、当該データを記録部7に記録することができる。このため、踏段120とスカートガード131の間隙d2が所定値以下となった際の当該データを記録することができる。
【0050】
しかも、判定部5が、時刻差Δtは第2しきい値以上であると判定した場合は、監視盤200を介して異常があったエスカレータ100と当該データを文字や画像、映像で表示したり、音声で出力したりする。このため、管理者や保守会社は、遠隔地において、踏段120とスカートガード131の間隙d2が所定値以下となったことを確認することができる。
【0051】
前述した実施形態では、乗客コンベアとして、下階と上階とに亘って乗客を運搬するエスカレータ100を示している。しかしながら、本発明では、乗客コンベアとして、連続的に平らな踏段を有した所謂動く歩道に適用してもよい。
【0052】
第1センサ2の配設位置は、下階の乗降板140のコム141の幅方向一端部に配設して、第2センサ3の配設位置は、下階の乗降板140のコム141の幅方向他端部に配設してもよい。
【0053】
また、踏段120に、第1センサ2によって検出可能な、例えば、二次元コードで構成された第1検出マークを記しておき、第1センサ2が第1検出マークを検出することによって、第1センサ2が踏段120の通過開始または通過終了を検出したこととしてもよい。この場合、同様に、踏段120に第2検出マークを記しておき、第2センサ3が第2検出マークを検出することによって、第2センサ3が踏段120の通過開始または通過終了を検出したこととする。
【0054】
さらに、判定部5は、数回連続して、時刻差Δtが第1しきい値以上であり、「間隙d2の異常あり」と判定した場合に、一組の当該データを記録部7に記録するようにしてもよい。これにより、記録部7に記録する容量を削減することができる。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0056】
1 間隙異常判定装置(乗客コンベアの間隙異常判定装置)、2 第1センサ、3 第2センサ、4 制御装置、5 判定部、7 記録部、8 外部報知部、100 エスカレータ(乗客コンベア)、110 トラス、113 チェーン、120 踏段、130 欄干、131 スカートガード、140 乗降板、141 コム、Q1 頂部、Q2 頂部、Q3 頂部、Q4 頂部、200 監視盤
【要約】
【課題】踏段とスカートガードの間隙の異常を判定すること。
【解決手段】実施形態の間隙異常判定装置1は、エスカレータ100の、踏段120とスカートガード131との間の間隙d2の異常を判定するものである。間隙異常判定装置1は、第1センサ2と、第2センサ3と、判定部5とを備える。第1センサ2は、エスカレータ100運転時に踏段120が通過する位置に隣接して配設され、踏段120が通過開始または通過終了したことを検出する。第2センサ3は、第1センサ2と乗降板140の幅方向に離間して配設され、踏段120が通過開始または通過終了したことを検出する。判定部5は、第1センサ2が踏段120の通過開始または通過終了を検出した第1時刻と、第2センサ3が踏段120の通過開始または通過終了を検出した第2時刻との時刻差Δtが第1しきい値以上である場合に、間隙d2の異常ありと判定する。
【選択図】図1
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