特許第5761728号(P5761728)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5761728アルミニウム電解コンデンサ電解液及びアルミニウム電解コンデンサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5761728
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】アルミニウム電解コンデンサ電解液及びアルミニウム電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/035 20060101AFI20150723BHJP
【FI】
   H01G9/02 311
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-528844(P2014-528844)
(86)(22)【出願日】2012年9月7日
(65)【公表番号】特表2014-524159(P2014-524159A)
(43)【公表日】2014年9月18日
(86)【国際出願番号】CN2012081118
(87)【国際公開番号】WO2014023055
(87)【国際公開日】20140213
【審査請求日】2013年9月3日
(31)【優先権主張番号】201210277017.2
(32)【優先日】2012年8月6日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513222359
【氏名又は名称】シェンズェン カプチェム テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHENZHEN CAPCHEM TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100089196
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 良之
(74)【代理人】
【識別番号】100104226
【弁理士】
【氏名又は名称】須原 誠
(72)【発明者】
【氏名】ズェン ゾンティアン
(72)【発明者】
【氏名】ヘ ティアンキアン
(72)【発明者】
【氏名】チェン チャンチュン
【審査官】 中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−232630(JP,A)
【文献】 特開2004−047595(JP,A)
【文献】 特開2001−326146(JP,A)
【文献】 特開2006−156707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/035
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒と、2−ヘキシルアジピン酸とそのアンモニウム塩の組み合わせとを含み、
−ヘキシルアジピン酸とそのアンモニウム塩組み合わせの含有量は、2−ヘキシルアジピン酸に換算してアルミニウム電解コンデンサ電解液全量に対して1〜30質量%であることを特徴とする、アルミニウム電解コンデンサ電解液。
【請求項2】
前記アルミニウム電解コンデンサ電解液に、更に炭素原子が8〜11個の二塩基カルボン酸、炭素原子が4〜7個の一塩基カルボン酸またはホウ酸に対応するアンモニウム塩、または炭素原子が8〜11個の二塩基カルボン酸、炭素原子が4〜7個の一塩基カルボン酸またはホウ酸とそのアンモニウム塩との組み合わせを含み、
炭素原子が8〜11個の二塩基カルボン酸、炭素原子が4〜7個の一塩基カルボン酸またはホウ酸に対応するアンモニウム塩、または炭素原子が8〜11個の二塩基カルボン酸、炭素原子が4〜7個の一塩基カルボン酸またはホウ酸とそのアンモニウム塩との組み合わせの含有量は、対応する酸に換算してアルミニウム電解コンデンサ電解液全量に対して1〜5質量%であることを特徴とする、請求項1に記載のアルミニウム電解コンデンサ電解液。
【請求項3】
記2−ヘキシルアジピン酸とそのアンモニウム塩との組み合わせの含有量は、2−ヘキシルアジピン酸に換算してアルミニウム電解コンデンサ電解液全量において2.5〜10質量%であることを特徴とする、請求項2に記載のアルミニウム電解コンデンサ電解液。
【請求項4】
前記アルミニウム電解コンデンサ電解液に、更に水素吸収剤を含むことを特徴とする、請求項3に記載のアルミニウム電解コンデンサ電解液。
【請求項5】
前記水素吸収剤は、4−ニトロ安息香酸、4−ニトロベンジルアルコール、3'−ニトロアセトフェノン、2−ニトロアニソールから選ばれる一つ又は複数の化合物であり、
前記水素吸収剤の含有量は、アルミニウム電解コンデンサ電解液全体に対し、0.1〜5質量%であることを特徴とする、請求項4に記載のアルミニウム電解コンデンサ電解液。
【請求項6】
前記水素吸収剤の含有量は、アルミニウム電解コンデンサ電解液全体に対し、0.1〜0.5質量%であることを特徴とする、請求項5に記載のアルミニウム電解コンデンサ電解液。
【請求項7】
前記アルミニウム電解コンデンサ電解液に、更に電流漏れを抑制し、且つ化成性能を高める添加剤を含むことを特徴とする、請求項2に記載のアルミニウム電解コンデンサ電解液。
【請求項8】
前記電流漏れを抑制し、且つ化成性能を高める添加剤は、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、リン酸モノエステル、並びに、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸及びリン酸モノエステルのアンモニウム塩から選ばれる一つまたは複数の化合物であり、
前記電流漏れを抑制し、且つ化成性能を高める添加剤の含有量は、その対応する酸またはモノエステルに換算してアルミニウム電解コンデンサ電解液全量に対して0.1〜0.5質量%であることを特徴とする、請求項7に記載のアルミニウム電解コンデンサ電解液。
【請求項9】
前記炭素原子が8〜11個の二塩基カルボン酸は、スベリン酸アンモニウム、アゼライン酸アンモニウム、セバシン酸アンモニウム、ドデカンジカルボン酸アンモニウムから選ばれる一つ又は複数の二塩基カルボン酸であることを特徴とする、請求項2〜8の何れか一項に記載のアルミニウム電解コンデンサ電解液。
【請求項10】
前記有機溶媒は、エチレングリコール又はγ−ブチロラクトンであることを特徴とする、請求項2〜8の何れか一項に記載のアルミニウム電解コンデンサ電解液。
【請求項11】
アルミニウム電解コンデンサの電解液として、請求項1〜10の何れか一項に記載のアルミニウム電解コンデンサ電解液が用いられていることを特徴とする、アルミニウム電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気化学分野に属し、具体的には、アルミニウム電解コンデンサ電解液及びアルミニウム電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
コンデンサはエネルギー貯蔵素子であり、電気回路において整流、濾波、カップリング、バイパス、エネルギー変換及び遅延に用いられている。アルミニウム電解コンデンサの特徴として挙げられるのは、容量が大きいということであるが、電流漏れ及び誤差が大きく、安定性に劣っていることから交流電流のバイパス及び濾波によく使われ、要求がそれほど高くない場合には信号カップリングにも使われる。アルミニウム電解コンデンサの典型的な構造は、アルミニウム円筒を陰極とし、その中に液体電解質を入れ、一つの湾曲したアルミニウム帯を差し込んで陽極とする。コンデンサ素子は、陽極としてのアルミニウム箔、電解液を含浸したセパレータ紙、陰極としてのアルミニウム箔、自然酸化膜などを重ねて巻回することによって構成されるものであり、コンデンサ素子には電解液が含浸され、アルミニウムケースとゴムカバーで密封して一つの電解コンデンサを構成する。そのうち、アルミニウム電解コンデンサの電解液は、以下のような進化を遂げている。
【0003】
(1)ホウ酸・エチレングリコール系:当該電解液系は、初期のアルミニウム電解コンデンサで使われる電解液であり、このような電解液において、エチレングリコールとホウ酸との酢化反応により大量の縮合水が形成され、電解液系内部の水分含有量が高くなり、その結果として、100℃を超える使用温度で当該電解液を使用する場合、電解液中の水が水蒸気となって蒸発し、次第に電解コンデンサのアセンブリの内部圧力が上昇するので、いわゆる破壊の問題が生じる恐れがある。当該電解液系については、高温の雰囲気に適応できず、ほぼ使用する価値がないと見なされている。
【0004】
(2)直鎖カルボン酸塩・エチレングリコール系:アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸などの直鎖型の飽和ジカルボン酸、またはその塩を電解質として含む電解液を採用しており、現在、国内において最も広く使われている電解液系である。しかしながら、直鎖カルボン酸塩は、低温領域において結晶を析出する傾向があり、コンデンサの低温性能に影響を与える一方、直鎖カルボン酸塩系の電気伝導率が変化し易く、且つコンデンサの損耗が大きく、これらの問題はいずれもコンデンサ性能の更なる向上に影響を与えている。
【0005】
(3)分岐カルボン酸塩・エチレングリコール系:海外の製造業者の多くは、分岐カルボン酸塩をメイン電解質として使っている。直鎖カルボン酸に比べ、分岐カルボン酸は、側鎖基を導入することによってその高温条件のエステル化に対する抑制能力が向上し、よって、高温安定性が高くなっている。また、側鎖基の立体阻害作用及びアルコキシ基の極性化作用によってエチレングリコールにおける溶解度が増大し、よって、その低温領域における性能が改善されている。つまり、分岐カルボン酸塩は、溶解度と熱安定性においていずれも直鎖カルボン酸塩より優れており、性能が更に改善されたコンデンサ製品の製造に応用することができる。
【0006】
中国特許出願201110100364.3(公開番号:CN102254690 A)に駆動用の高電圧作業用電解液が開示されており、その電解液は、エチレングリコールを溶媒とし、2,2,4−トリメチルアジピン酸と2,4,4−トリメチルアジピン酸との混合酸及びその塩をメイン電解質とし、更に様々な添加剤を添加して調製することによって構成される。当該電解液を使用することで火花電圧が380〜410Vとなり、耐高温性及び長寿命化が実現され、125℃での寿命試験で2000時間以上の耐性を示しているが、当該電解液による火花電圧はそれほど高くない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、火花電圧が高く、熱安定性に優れるアルミニウム電解コンデンサ電解液を提供することを目的とする。一方、本発明は、更に上記電解液を用いて製造されるアルミニウム電解コンデンサを提供する。
【発明を解決するたもの手段】
【0008】
上述した第1の発明の目的を実現するために、本発明はアルミニウム電解コンデンサの電解液を提供し、その特徴として、以下の成分を含む。即ち、有機溶媒と、2−ヘキシルアジピン酸アンモニウム、または2−ヘキシルアジピン酸とそのアンモニウム塩の組み合わせとを含み、上記成分の電解液における総含有量は、2−ヘキシルアジピン酸に換算してアルミニウム電解コンデンサの電解液全量に対して1〜30質量%である。添加量がアルミニウム電解コンデンサの電解液全量において1質量%未満の場合、火花電圧及び熱安定性の向上効果が得られず、一方、濃度がアルミニウム電解コンデンサの電解液全量に対して30質量%を超えると、低温領域における電解コンデンサの性能が低下する。
【0009】
本発明に係わる電解液に、2−ヘキシルアジピン酸のアンモニウム塩を含んでもよく、更に2−ヘキシルアジピン酸とそのアンモニウム塩の両方を同時に含んでもよい。各成分の異なる配合による含有率を統一的に表すために、本発明において2−ヘキシルアジピン酸アンモニウムの含有量は、物質量として同量の2−ヘキシルアジピン酸に換算して質量百分比で算出した値で表される。
【0010】
本発明に係わる電解液に、以下の成分の内、一つの成分またはそれらの組み合わせを含むことができる。即ち、成分aとして、炭素原子が8〜11個の二塩基カルボン酸のアンモニウム塩、または当該カルボン酸とそのアンモニウム塩の組み合わせが挙げられ、成分bとして、4〜7個の炭素原子を含む一塩基カルボン酸のアンモニウム塩、または当該カルボン酸とそのアンモニウム塩の組み合わせが挙げられ、成分cとして、ホウ酸のアンモニウム塩、またはホウ酸とそのアンモニウム塩の組み合わせが挙げられる。上記成分a、b、cまたはその組み合わせの総含有量は、上記と同様の含有量の算出法に従い、物質量として同量であるその対応するカルボン酸またはホウ酸の含有量に換算してアルミニウム電解コンデンサ電解液全量において1〜5質量%である。
【0011】
本発明の好ましい形態として、前記2−ヘキシルアジピン酸又はそのアンモニウム塩の含有量は、2−ヘキシルアジピン酸に換算してアルミニウム電解コンデンサ電解液全量において2.5〜10質量%である。
【0012】
本発明の好ましい形態として、前記アルミニウム電解コンデンサ電解液に、更に水素吸収剤を含む。
【0013】
本発明のより好ましい形態として、前記水素吸収剤は、4−ニトロ安息香酸、4−ニトロベンジルアルコール、3’−ニトロアセトフェノン、2−ニトロアニソールから選ばれる一つ又は複数の化合物であり、これらの化合物のニトロ基が還元性を持っていることから水素ガスを吸収する作用がある。
【0014】
更に、前記水素吸収剤の含有量は、アルミニウム電解コンデンサ電解液全体に対し、0.1〜5質量%であり、更に好ましくは0.1〜0.5質量%である。
【0015】
本発明の好ましい形態として、前記アルミニウム電解コンデンサ電解液に、更に電流漏れを抑制し、且つ化成性能を高める添加剤を含む。
【0016】
本発明のより好ましい形態として、前記電流漏れを抑制し、且つ化成性能を高める添加剤は、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、リン酸モノエステル、及び前記化合物のアンモニウム塩(つまり、電解液に上記酸またはモノエステル化合物を含んでもよく、更に上記酸またはモノエステル化合物のアンモニウム塩を含んでもよく、更に上記酸またはモノエステル化合物、及びそのアンモニウム塩の両者を同時に含んでもよい)から選ばれる一つまたは複数の化合物である。これらの化合物は、電極箔に吸着することによってコンデンサ性能を損害することなく電極箔と水の反応を抑制することができる。
【0017】
更に、前記電流漏れを抑制し、且つ化成性能を高める添加剤の含有量は、物質量として同量であるその対応する酸またはモノエステルに換算してアルミニウム電解コンデンサ電解液全体において0.1〜1.0質量%である。
【0018】
本発明の好ましい形態として、8〜11個の炭素原子を含む直鎖二塩基カルボン酸は、スベリン酸アンモニウム、アゼライン酸アンモニウム、セバシン酸アンモニウム、ドデカンジカルボン酸アンモニウムから選ばれる一つ又は複数の二塩基カルボン酸である。
【0019】
本発明の好ましい形態として、前記有機溶媒は、エチレングリコール又はγ−ブチロラクトンである。
【0020】
なお、本発明は更にアルミニウム電解コンデンサを提供し、前記アルミニウム電解コンデンサの電解液として、本発明に係わるアルミニウム電解コンデンサ電解液を採用する。
【発明の効果】
【0021】
本発明により提供される電解液は、より高い火花電圧とより優れた熱安定性を持ち、且つ本発明に係わる2−ヘキシルアジピン酸及びそのアンモニウム塩は、エチレングリコールにおいてより優れた溶解性を示し、当該電解液を含むアルミニウム電解コンデンサは、耐電圧性がよく、コンデンサ寿命が長いとの特徴がある。また、2−ヘキシルアジピン酸及びそのアンモニウム塩、8〜11個の炭素原子を含む二塩基カルボン酸アンモニウム塩、または4〜7個の炭素原子を含む一塩基カルボン酸アンモニウム塩両者は相乗効果があり、電解液のコンデンサ特性を更に一層高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の技術内容、実現しようとする目的及び効果を詳しく説明するため、以下、実施形態に基づいて具体的に詳述する。
【0023】
<実施例1>
2−ヘキシルアジピン酸とそのアンモニウム塩(5%、即ち、電解液全量に対して5重量%。以下、各実施例の関連記述についての説明は省略する)をエチレングリコールに溶かして溶液を形成し、更に順に4−ニトロ安息香酸(0.2%)及び次亜リン酸(0.2%)を加え、ステンレス製ボトルに封入して105℃の定温に保持した。
【0024】
<実施例2>
2−ヘキシルアジピン酸とそのアンモニウム塩(2.5%)をエチレングリコールに溶かして溶液を形成し、更に順にセバシン酸アンモニウム(2.5%)と4−ニトロベンジルアルコール(0.1%)及び次亜リン酸(0.1%)を加え、ステンレス製ボトルに封入して105℃の定温に保持した。
【0025】
<実施例3>
2−ヘキシルアジピン酸とそのアンモニウム塩(4%)をエチレングリコールに溶かして溶液を形成し、更に順にアゼライン酸水素アンモニウム(1%)と3’−ニトロアセトフェノン(0.5%)及び次亜リン酸(0.1%)を加え、ステンレス製ボトルに封入して105℃の定温に保持した。
【0026】
<実施例4>
2−ヘキシルアジピン酸とそのアンモニウム塩(3%)をエチレングリコールに溶かして溶液を形成し、更に順にドデカンジカルボン酸アンモニウム(2%)と2−ニトロアニソール(0.3%)及びリン酸モノエステル(0.1%)を加え、ステンレス製ボトルに封入して105℃の定温に保持した。
【0027】
<実施例5>
2−ヘキシルアジピン酸とそのアンモニウム塩(3%)をエチレングリコールに溶かして溶液を形成し、更に順にヘキサン酸アンモニウム(4%)と2−ニトロアニソール(0.3%)及び次亜リン酸(0.1%)を加え、ステンレス製ボトルに封入して105℃の定温に保持した。
【0028】
<実施例6>
2−ヘキシルアジピン酸とそのアンモニウム塩(3%)をエチレングリコールに溶かして溶液を形成し、更に順にヘプタン酸アンモニウム(4%)と2−ニトロアニソール(0.3%)及びリン酸モノエステル(0.1%)を加え、ステンレス製ボトルに封入して105℃の定温に保持した。
【0029】
<実施例7>
2−ヘキシルアジピン酸とそのアンモニウム塩(1%)をエチレングリコールに溶かして溶液を形成し、更に順にスベリン酸アンモニウム(5%)、4−ニトロベンジルアルコール(2%)及びリン酸(0.3%)を加え、ステンレス製ボトルに封入して105℃の定温に保持した。
【0030】
<実施例8>
2−ヘキシルアジピン酸とそのアンモニウム塩(30%)をエチレングリコールに溶かして溶液を形成し、更に順にセバシン酸水素アンモニウム(1%)、4−ニトロベンジルアルコール(5%)及び亜リン酸アンモニウム(0.5%)を加え、ステンレス製ボトルに封入して105℃の定温に保持した。
【0031】
<比較例1>
セバシン酸アンモニウム(5%)をエチレングリコールに溶かして溶液を形成し、更に次亜リン酸アンモニウム(0.2%)と4−ニトロ安息香酸(0.2%)を加え、ステンレス製ボトル内に封入して105℃の定温に保持した。
【0032】
<比較例2>
ドデカンジカルボン酸アンモニウム(5%)をエチレングリコールに溶かして溶液を形成し、更に2−ニトロアニソール(0.3%)及びリン酸モノブチルエステル(0.1%)を加え、ステンレス製ボトル内に封入して105℃の定温に保持した。
【0033】
<比較例3>
ヘキサン酸アンモニウム(4%)をエチレングリコールに溶かして溶液を形成し、更にドデカンジカルボン酸アンモニウム(4%)、2−ニトロアニソール(0.3%)及び次亜リン酸アンモニウム(0.1%)を加え、ステンレス製ボトル内に封入して105℃の定温に保持した。
【0034】
上述の各実施例及び比較例について、常用の技術手段を用いて各評価項目ごとの指標を測定し、得られた結果を表1と表2に示す。
【0035】
【表1】
*表において、溶質1の2−ヘキシルアジピン酸とそのアンモニウム塩の含有量は、両者を物質量として同量の2−ヘキシルアジピン酸に換算した後、電解液全体における質量百分比で算出した値である。溶質2と添加剤2の含有量も同様に算出し、この後においてこれらに関する説明は省略する。
【0036】
【表2】
【0037】
上記表1と表2に示されるように、本発明に係わる2−ヘキシルアジピン酸とそのアンモニウム塩をメイン溶質とするアルミニウム電解コンデンサ電解液は、電気伝導率及び電気伝導率保持率などの指標において従来の電解液と比べて大幅に向上されていることが確認できる。
【0038】
本発明の実施例1〜8と比較例1〜3に対応する電解液を用いてそれぞれ400V、10μFのアルミニウム電解コンデンサを製作し、105℃での高温寿命試験を行い、表3に示されるデータを得た。
【0039】
【表3】
【0040】
上記表3に示されるように、実施例1〜8と比較例1〜3で製作したコンデンサは、初期値において顕著な差が見られない。ところが、105℃、2000時間の寿命試験を行った後、比較例1〜3に対応するコンデンサのDF値が大きく上昇することに対し、実施例1〜8に対応するコンデンサは、比較的高い熱安定性を示している。
【0041】
以上の記述は、本発明の実施例であり、本発明の特許請求の範囲を制限するものではない。また、本発明の明細書内容に基づいた変形や変更、並び他の関連の技術分野への直接的または間接的な応用は、いずれも本発明の特許請求の範囲に含まれている。