特許第5761744号(P5761744)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5761744
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】歪ゲージ用FPC基板
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/22 20060101AFI20150723BHJP
【FI】
   G01L1/22 A
   G01L1/22 E
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-91340(P2011-91340)
(22)【出願日】2011年4月15日
(65)【公開番号】特開2012-225685(P2012-225685A)
(43)【公開日】2012年11月15日
【審査請求日】2014年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000127570
【氏名又は名称】株式会社エー・アンド・デイ
(74)【代理人】
【識別番号】100087826
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀人
(72)【発明者】
【氏名】金澤 広史
(72)【発明者】
【氏名】奥口 真人
【審査官】 濱本 禎広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−117884(JP,A)
【文献】 特開2003−207399(JP,A)
【文献】 実開昭59−037528(JP,U)
【文献】 特開2010−243192(JP,A)
【文献】 特開平10−339677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/00−1/26
G01L 5/00−5/28、25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性フィルムと、前記絶縁性フィルム上に積層された所定の配線用導体パターンと、前記配線用導体パターンに設けられた複数の歪みゲージ接続用端子とを備え、
複数の歪みゲージが設けられたロードセルの起歪体表面に沿って配設されて、歪みゲージ同士を接続するために使用される歪みゲージ用FPC基板であって、
歪みゲージ接続用端子をそれぞれ設けたゲージ接続部分同士が、起歪体の応力作用方向に沿って配設される帯状の連結部分で繋がれるとともに、
前記帯状の連結部分には、巾方向に湾曲または屈曲する湾・屈曲部が面一に形成され、該湾・屈曲部が荷重に起因する起歪体の変形に追随して面一な形態のまま伸縮する伸縮自在部を構成することを特徴とする歪みゲージ用FPC基板。
【請求項2】
前記湾・屈曲部を含む帯状の連結部分は、前記起歪体に配設された場合に、起歪体の側方にはみ出ない形状に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の歪みゲージ用FPC基板。
【請求項3】
前記歪みゲージ用FPC基板は、前記配線用導体パターンに設けられた複数の外部回路接続用端子を備え、
前記歪みゲージ用FPC基板の上面側には、前記配線用導体パターンを覆う絶縁性フィルムが積層されるとともに、前記絶縁性フィルムの所定位置に開口が設けられ、前記開口から露出する部位によって前記外部回路接続用端子および前記歪みゲージ接続用端子が構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の歪みゲージ用FPC基板。
【請求項4】
前記歪みゲージ用FPC基板における前記帯状の連結部分を除く領域の裏面側には、該歪みゲージ用FPC基板をロードセルの起歪体表面に接着固定するための粘着層が設けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の歪みゲージ用FPC基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁性フィルム上に所定の配線用導体パターンが積層一体化されたFPC(Flexible Printed Circuits)基板であって、ロードセルの起歪体表面に設けられた複数の歪みゲージ同士を接続するために起歪体表面に沿って配設される歪みゲージ用FPC基板に係り、特に、荷重に起因する起歪体の変形に追随して伸縮する伸縮自在部を備えた歪みゲージ用FPC基板に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1(図7、8参照)に示すように、歪みゲージ用FPC基板4は、例えば、ポリイミド等の絶縁フィルム上に配線用の銅箔パターン(導電路)5を積層一体化したフラットで可撓性に優れた構造として公知であり、複数の歪みゲージ2を設けたロードセルの起歪体1(の起歪部1a)の表面所定位置に接着等により配設されて、歪みゲージ2,2同士を接続するために使用される。図7,8において、符号6は、FPC基板4に設けられている歪みゲージ接続用端子である。
【0003】
歪みゲージ式ロードセルでは、荷重に起因する起歪体1の変形(歪)が歪みゲージ2を介して検出されるが、起歪体1が荷重により変形した場合に、起歪体1に配設(固定)されているFPC基板4が起歪体1の変形を抑制し、荷重に対応した変形(歪)が起歪体1(の起歪部1a)に発生せず、正確な荷重の検出ができないおそれがある。
【0004】
そこで、FPC基板4では、歪ゲージ接続用端子6が設けられているゲージ接続部分4a,4b(4c,4d)同士が帯状の連結部分4e(4f)で繋がれるとともに、FPC基板4を起歪体1に配設する際に、図8に示すように、帯状の連結部分4e(4f)によって上方にブリッジ状に浮いた伸縮自在部Pを構成して、起歪体1が荷重により変形した場合に、起歪体1表面から浮いたブリッジ状の伸縮自在部Pが起歪体1の変形に追随して伸縮して、起歪体1(の起歪部1a)に発生する変形(歪)がFPC基板4の影響を受けない構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−117884号公報(段落0017、0018、図1,2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記した従来の歪ゲージ用FPC基板4では、帯状の連結部分4e(4f)を含む全体が面一に形成されているが、該基板4を起歪体1に配設(固定)する際に、その連結部分4e(4f)が起歪体1表面から上方に浮いたブリッジ状となるように、ゲージ接続部分4a,4b、4c,4dをゲージ2,2に対し所定位置に位置決めして接着等で固定しなければならず、FPC基板4を起歪体1に配設する作業が非常に面倒であるという第1の課題があった。
【0007】
また、起歪体1に配設されたFPC基板4は、その伸縮自在部Pが起歪体1の表面上方および起歪体1の側方(図8上下方向)に突出しているため、ロードセルを組み立てたりロードセルを搬送したりする際に、起歪体1の表面や側面から突出している伸縮自在部Pが他部材と干渉してFPC基板4が破損し易いという第2の課題があった。
【0008】
本発明は前記した従来技術の課題に鑑みてなされたもので、その目的は、起歪体の表面に配設された形態において起歪体表面に沿って延在する伸縮自在部を備えた歪みゲージ用FPC基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記第1,第2の課題を解決するために、本発明に係る歪みゲージ用FPC基板においては、絶縁性フィルムと、前記絶縁性フィルム上に積層された所定の配線用導体パターンと、前記配線用導体パターンに設けられた複数の歪みゲージ接続用端子とを備え、
【0010】
複数の歪みゲージを設けたロードセルの起歪体表面に沿って配設されて、歪みゲージ同士を接続するために使用される歪みゲージ用FPC基板であって、
【0011】
歪みゲージ接続用端子をそれぞれ設けた前記ゲージ接続部分同士を、起歪体の応力作用方向に沿って配設される帯状の連結部分で繋ぐとともに、
【0012】
前記帯状の連結部分に、巾方向に湾曲または屈曲する湾・屈曲部を面一に形成し、該湾・屈曲部が荷重に起因する起歪体の変形に追随して伸縮する伸縮自在部を構成するようにした。
【0013】
(作用)歪みゲージ式ロードセルでは、荷重に起因する起歪体の変形(歪)が起歪体に設けられている歪みゲージを介して検出されるが、荷重に起因する起歪体の変形に伴って、起歪体表面に沿って配設されているFPC基板も変形する。特に、起歪体の応力作用方向に沿って配設されている帯状連結部分には、荷重に起因する起歪体の変形に伴う引張り力または圧縮力が作用する。しかし、帯状連結部分に形成されている湾・屈曲部が該帯状連結部分に作用する引張り力または圧縮力によって伸縮し、起歪体に配設されているFPC基板が起歪体の変形(起歪体に発生する歪)に影響を与えることはない。即ち、帯状連結部分に形成されている湾・屈曲部が、荷重に起因する起歪体の変形に追随して伸縮する伸縮自在部として機能するので、起歪体は、FPC基板の影響を受けることなく、荷重に対応する変形(歪)だけが発生する。
【0014】
また、帯状の連結部分に形成されている湾・屈曲部は、FPC基板全体が面一の形態のままで伸縮自在部として機能(作用)するので、FPC基板を起歪体に配設するには、従来のFPC基板に求められている面倒な作業、即ち、帯状の連結部分をブリッジ状に浮くように変形させて起歪体に配設するという面倒な作業が省かれて、FPC基板を起歪体の表面所定位置に単に配設(固定)するだけでよい。
【0015】
また、起歪体に配設されたFPC基板は、帯状の連結部分を含むFPC基板全体が起歪体の表面に沿って延在して、従来のFPC基板の伸縮自在部のように、起歪体の表面から上方に突出しないため、ロードセルを組み立てたりロードセルを搬送したりする際に、伸縮自在部が他部材と干渉してFPC基板が破損するおそれが少ない。
【0016】
また、起歪体のゲージ取付面には、配設されたFPC基板と歪ゲージとを接続するリード線等の導電部が露出しており、FPC基板の破損防止や導電部の防塵・防水のために、起歪体のゲージ取付面全体を伸縮自在なシリコンゴム等の絶縁保護層で覆うという処理を行う場合があるが、帯状の連結部分を含むFPC基板全体が起歪体のゲージ取付面に沿って略面一に延在するため、FPC基板全体を覆うようにゲージ取付面に形成する絶縁保護層を薄くできる。
【0017】
前記第2の課題を解決するために、請求項2においては、請求項1に記載の歪みゲージ用FPC基板において、前記湾・屈曲部を含む帯状の連結部分を、該湾・屈曲部を含む帯状の連結部分を前記起歪体の応力作用方向に沿って配設した場合に起歪体の側方にはみ出ない形状に形成した。
【0018】
(作用)起歪体に配設されると帯状連結部分(伸縮自在部)が起歪体の側方にはみ出す従来のFPC基板とは異なり、湾・屈曲部を含む帯状連結部分(伸縮自在部)が起歪体の側方にはみ出さないため、それだけ歪みゲージ式ロードセルを組み立てたり搬送したりする際に、帯状連結部分(伸縮自在部)が他部材と干渉してFPC基板が破損するのおそれがより少ない。
【0019】
請求項3においては、請求項1または2に記載の歪みゲージ用FPC基板において、前記歪みゲージ用FPC基板は、前記配線用導体パターンに設けられた複数の外部回路接続用端子(入出力端子)を備え、
【0020】
前記歪みゲージ用FPC基板の上面側に前記配線用導体パターンを覆う絶縁性フィルムを積層するとともに、前記上面側絶縁性フィルムの所定位置に開口を設け、前記配線用導体パターンの前記開口から露出する部位によって前記外部回路接続用端子および前記歪みゲージ接続用端子を構成するようにした。
【0021】
(作用)FPC基板を製造するには、例えば、所定のマスクを用いたエッチングにより、絶縁性ベースフィルム上に銅等の導電膜を全面的に形成する。次に、所定のエッチングマスクを用いて導電膜をエッチングすることにより、所定の配線用導体パターン(導電路)を形成する。最後に、ゲージ接続用端子および外部回路接続用端子(入出力端子)に対応する部位を除いて、配線用導体パターン(導電路)を覆うように、絶縁性保護フィルムを積層形成することで、配線用導体パターン(導電路)の所定の部位が開口部から露出するゲージ接続用端子,外部回路接続用端子(入出力端子)が設けられたFPC基板ができ上がる。
【0022】
請求項4においては、請求項3に記載の歪みゲージ用FPC基板において、前記起歪体の表面に配設される、前記ゲージ接続部分同士を前記連結部分で繋いだ一対のゲージ接続部分・連結部分連続体を、前記起歪体の基端部の側面に配設される、外部回路接続用端子(入出力端子)を設けた外部回路接続部分で繋いで、前記FPC基板を平面視略コ字型に形成し、
【0023】
前記外部回路接続部分には、前記起歪体の基端部(固定端側の端部)を水平に貫通して該起歪体の側面に開口する配線挿通孔に整合する孔を設け、該孔の周縁部近傍に、該孔を貫通するように前記配線挿通孔から導出する外部回路用配線を接続する前記外部回路接続用端子(入出力端子)を設けるようにした。
【0024】
(作用)外部回路接続用端子(入出力端子)は、外部回路接続部分に設けられた孔(起歪体の側面に開口する配線挿通孔に整合する孔)の周縁部近傍に設けられているので、起歪体側面の配線挿通孔から導出する外部回路用配線の導出長さは短く、しかも該配線は、起歪体の基端部の側面に沿って配設されるので、外部回路用配線が起歪体の基端部(固定端側の端部)の側面から大きく突出しない。このため、ロードセルを組み立てたりロードセルを搬送したりする際に、起歪体の側面に導出する外部回路用配線が他部材と干渉してFPC基板が破損するおそれが少ない。
【0025】
また、起歪体の側面に露出している導電部(外部回路接続部分における導電部)の絶縁や防塵、防水を確保するためには、起歪体の側面に配設した外部回路接続部分全体を樹脂モールドした端子カバーで覆って、外部回路接続部分における導電部を封止することが望ましいが、外部回路接続部分に設けた配線挿通孔から導出する外部回路用配線は、外部回路接続部分に沿って延在して配線挿通孔の周縁部近傍に設けられた外部回路接続用端子(入出力端子)に接続されるので、外部回路接続部分を覆う端子カバーの高さを低くできるとともに、端子カバー内に注入する樹脂モールドの量も少なくて済むし、なによりも外部回路接続部分を覆う端子カバーの高さが低い分、歪みゲージ式ロードセルを組み立てたり搬送したりする際に、端子カバーが他部材と干渉してFPC基板が破損するおそれが少ない。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る歪みゲージ用FPC基板によれば、ゲージ接続部分同士を繋ぐ帯状の連結部分に形成されている湾・屈曲部が荷重に起因する起歪体の変形に追随して伸縮する伸縮自在部として機能し、起歪体に配設されているFPC基板が起歪体の変形(起歪体に発生する歪)に影響を与えることはないので、正確な荷重測定が可能な歪みゲージ式ロードセルを提供できる。
【0027】
また、FPC基板を起歪体に配設するには、FPC基板を起歪体の表面所定位置に単に配設すればよいので、FPC基板の起歪体への配設作業が簡単かつ迅速となって、歪みゲージ式ロードセルの量産に大きく貢献できる。
【0028】
また、歪みゲージ式ロードセルを組み立てたり搬送したりする際に、起歪体の伸縮自在部が他部材と干渉してFPC基板が破損するのおそれが少なくなくなるので、ロードセルを組み立てたりロードセルを搬送したりする作業がそれだけ簡便となる。
【0029】
また、起歪体のゲージ取付面に配設されたFPC基板の破損防止や露出する導電部の防塵・防水のために、起歪体のゲージ取付面全体を伸縮自在なシリコンゴム等の絶縁保護層で覆う場合があるが、FPC基板を覆う絶縁保護層を薄く形成できるので、それだけ絶縁保護層が起歪体の変形(起歪体に発生する歪)に影響を与えることがなく、起歪体のゲージ取付面に露出する導電部における絶縁が確保された正確な荷重測定が可能な歪みゲージ式ロードセルを提供できる。
【0030】
請求項2によれば、歪みゲージ式ロードセルを組み立てたり搬送したりする際に、帯状連結部分(伸縮自在部)が他部材と干渉してFPC基板が破損するおそれがより少なくなるので、ロードセルを組み立てたりロードセルを搬送したりする作業がさらに簡便となる。
【0031】
請求項3によれば、外部回路接続用端子(入出力端子)および歪みゲージ接続用端子を設けた歪みゲージ用FPC基板を簡単に製造できる。
【0032】
請求項4によれば、外部回路用配線が起歪体の側面から大きく突出しないので、歪みゲージ式ロードセルを組み立てたり搬送したりする際に、外部回路用配線が他部材と干渉してFPC基板が破損するのおそれが少ないので、ロードセルを組み立てたりロードセルを搬送したりする作業がさらにいっそう簡便となる。
【0033】
特に、起歪体の基端部の側面に露出する導電部を樹脂モールドした端子カバーで覆うようにすれば、ロードセルを組み立てたりロードセルを搬送したりする作業がさらにいっそう簡便となるとともに、起歪体の側面に露出する導電部の絶縁が確保された正確な荷重測定が可能な歪みゲージ式ロードセルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明に係るロードセル用FPC基板の第1の実施例の構成を概略的に示す平面図である。
図2】第1の実施例に係るロードセル用FPC基板を配設した起歪体(歪ゲージ式ロードセル)の斜視図である。
図3】同ロードセル用FPC基板を配設した起歪体(歪ゲージ式ロードセル)の要部拡大斜視図(起歪体の側面を上向きにした図)である。
図4】FPC基板(ゲージ接続部分のゲージ接続用端子)と歪ゲージ(のタグ)の接続部の拡大縦断面図である。
図5】第2の実施例に係るロードセル用FPC基板の構成を概略的に示す平面図である。
図6】他の実施例に係るロードセル用FPC基板の構成を概略的に示す平面図である。
図7】従来のロードセル用FPC基板の平面図である。
図8】従来のFPC基板を配設した起歪体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。
【0036】
図1は本発明に係るロードセル用FPC基板の第1の実施例の構成を概略的に示す平面図、図2,3はそれぞれ第1の実施例に係るロードセル用FPC基板を配設した起歪体(歪ゲージ式ロードセル)の斜視図で、図2は起歪体の上面を上に向けた形態の斜視図、図3は起歪体の側面を上に向けた形態の斜視図、図4はFPC基板(ゲージ接続部分のゲージ接続用端子)と歪ゲージ(のタグ)の接続部の拡大縦断面図である。
【0037】
これらの図、特に図2,3において、歪ゲージ式ロードセル10は、4個所の歪み発生部である起歪部12が設けられた中空直方体形状のアルミニウム製の起歪体11と、各起歪部12に対応する起歪体11の表面(外面)にそれぞれ設けられた歪みゲージ14と、ホイートストンブリッジ回路(図示せず)を構成するように歪みゲージ14を互いに接続するFPC基板20とを備えて構成されている。
【0038】
FPC基板20は、ポリイミド等の絶縁性ベースフィルム21の上に例えば厚さ35μmの所定の配線用の導体パターン(導電路)22が積層され、さらにその上にポリイミド等の絶縁性保護フィルム23が積層一体化されて、例えば、厚さ0.5〜1mmの可撓性に優れた構造(図4参照)とされている。FPC基板20の上面側には、絶縁性保護フィルム23の所定位置に形成された開口部23aから導体パターン22の表面がそれぞれ露呈した構造のゲージ接続用端子31,外部回路接続用端子(入出力端子)37,その他の端子が設けられており、歪みゲージ14を設けたロードセル10の起歪体11表面(ゲージ取付面11c)に沿って配設されて、歪みゲージ14,14同士を接続するとともに、4個の歪ゲージ14によって構成されるホイートストンブリッジ回路を外部回路(デジタル表示器)に接続するために使用される。
【0039】
また、FPC基板20は、図1に拡大して示すように、ゲージ接続用端子31が設けられた平面視矩形状のゲージ接続部分30(30A,30B,30C,30D)と、ゲージ接続部分30(30Aと30B、30Cと30D)同士を繋ぐ幅狭帯状の連結部分32,32と、ゲージ接続部分30Aと30Cを繋ぐとともに、外部回路接続用端子(入出力端子)37が設けられた平面視T字形状の外部回路接続部分36を有し、全体が正面視略コ字形状に形成されている。なお、FPC基板20は、起歪体11の上下の表面(ゲージ取付面11c)に配設される、ゲージ接続部分30(30Aと30B、30Cと30D)同士を連結部分32で繋いだ一対のゲージ接続部分・連結部分連続体34,34が、起歪体11の基端部(固定端側の端部)11aの側面に配設される、外部回路接続用端子(入出力端子)37(37a,37b,37c,37d)を設けた外部回路接続部分36で繋がれている、とも言える。
【0040】
なお、FPC基板20を製造するには、例えば、所定のマスクを用いたエッチングにより、絶縁性ベースフィルム21上に銅等の導電膜を全面的に形成する。次に、所定のエッチングマスクを用いて導電膜をエッチングすることにより、所定の配線用導体パターン(導電路)22および目印用導体パターン22a(後で説明する)を形成する。最後に、ゲージ接続用端子31,外部回路接続用端子(入出力端子)37およびその他の端子に対応する部位23a,23b,23c,23dを除いて、導体パターン22,22aを覆うように絶縁性保護フィルム23を積層形成することで、配線用導体パターン(導電路)22の所定の部位が開口部23a,23bから露出するゲージ接続用端子31,外部回路接続用端子37およびその他の端子が設けられたFPC基板20が出来上がる。
【0041】
また、ゲージ接続部分30(30A,30B,30C,30D)および外部回路接続部分36は、その裏面側に設けた粘着層24(図4参照)によって起歪体2の表面(ゲージ取付面11c)に接着固定されるが、起歪体11の応力作用方向(図2左右方向)に沿って配設される巾狭帯状の連結部分32,32は、その裏面側に粘着層24が設けられておらず、起歪体11の表面に沿って配設されているものの、途中に湾曲部33が設けられることで、起歪体11の応力作用方向(図2左右方向)に対し自由に伸縮できる。
【0042】
即ち、ゲージ接続部分30,30同士を繋ぐ帯状の連結部分32には、巾方向に湾曲する湾曲部33が面一に形成されて、該湾曲部33が荷重に起因する起歪体11の変形に追随して伸縮する伸縮自在部を構成している。
【0043】
詳しくは、歪みゲージ式ロードセル10では、荷重に起因する起歪体11の変形(歪)が起歪体11に設けられている歪みゲージ14を介して検出されるが、荷重に起因する起歪体11の変形に伴って、ゲージ取付面11cに沿って配設されているFPC基板20も変形する。特に、起歪体11の応力作用方向に沿って配設されている巾狭帯状連結部分32には、荷重に起因する起歪体11の変形に伴う引張り力または圧縮力が作用する。しかし、帯状連結部分32に形成されている湾曲部33が該帯状連結部分32に作用する引張り力または圧縮力によって伸縮し、起歪体11に配設されているFPC基板20が起歪体11の変形(起歪体11に発生する歪)に影響を与えることはない。換言すれば、帯状連結部分32に形成されている湾曲部33が、荷重に起因する起歪体11の変形に追随して伸縮する伸縮自在部として機能するので、起歪体11は、ゲージ取付面11cに配設されているFPC基板20の影響を受けることなく、荷重に対応する変形(歪)だけが発生する。
【0044】
また、帯状の連結部分32に形成されている湾曲部33は、FPC基板20(ゲージ接続部分・連結部分連続体34)全体が面一の形態のままで伸縮自在部として機能(作用)するので、FPC基板20を起歪体11に配設するには、従来のFPC基板(図7,8参照)のように、帯状の連結部分をブリッジ状に浮くように変形させて起歪体に配設するという面倒な作業が省かれて、FPC基板20(ゲージ接続部分・連結部分連続体34)を起歪体11のゲージ取付面11c所定位置に単に配設(固定)するだけでよい。
【0045】
なお、ゲージ接続部分・連結部分連続体34と外部回路接続部分36は、図2に示すように、従来のFPC基板の場合と同様に、所定位置で直交するように折り曲げて、起歪体11のゲージ取付面11cから側面にかけて貼りつける。
【0046】
また、図4に示すように、ゲージ接続部分30に設けたゲージ接続用端子31と歪ゲージ14側のタグ(ゲージ側端子)14aとは、ハンダ溶接したリード線15により接続されるが、ゲージ接続部分30と歪ゲージ14とが図4左右方向に離間していると、ゲージ接続用端子31とタグ(ゲージ側端子)14aとを接続するリード線15が起歪体11と接触して絶縁不良となる(絶縁を確保できない)おそれがある。さらに、ゲージ接続部分30と歪ゲージ14とが接近していたとしても、ゲージ接続部分30と歪ゲージ14間の隙間に水分やゴミが侵入し、リード線15と起歪体11とが水分やゴミを介して導通し、絶縁不良となる(絶縁を確保できない)おそれがある。符号15a,15bはハンダ溶接部である。
【0047】
そこで、本実施例では、図4に示すように、ゲージ接続部分30の端縁部30aが歪ゲージ14上に重なる(ゲージ14側の端子であるタグ14aに接近する)ように、FPC基板20を歪ゲージ14に対して位置決めすることで、ゲージ接続部分30と歪ゲージ14とを接続するリード線15と起歪体11間の絶縁が確保されている。
【0048】
また、図1に示すように、ゲージ接続部分30の歪ゲージ14に臨む側の端縁部30aから所定距離だけ離間する位置には、端縁部30aと平行に延びる一対の導体パターン22aで構成された目印30b,30bが設けられている。この目印30b(導体パターン22a)は、導体パターン22と同じ構造(上下の絶縁性フィルム21,23間に導体パターン22aが積層する構造)で、ゲージ接続部分30の端縁部30aを目印30b,30bと平行となるように切り落として、歪ゲージ14(のタグ14a)の位置に応じてゲージ接続部分30の端縁部30aの位置(ゲージ接続部分30の長さL1,L2)を調整できる。
【0049】
また、ゲージ接続部分30A,30B(30C,30D)には、4個のゲージ接続用端子31(31a,31b,31c,31d)が並設して設けられており、起歪体11に設けられた歪ゲージ14の位置(起歪体11の巾方向に対する位置)に応じて、歪ゲージ14(のタグ14a)に接続するゲージ接続用端子31(31a,31bまたは31c,31d)を選択できるようになっている。
【0050】
また、起歪体11に配設されたFPC基板20は、ゲージ接続部分・連結部分連続体34全体が起歪体11のゲージ取付面11cに沿って延在して、従来のFPC基板の伸縮自在部(図8参照)のように起歪体の表面から上方に突出しない。
【0051】
さらに、湾曲部33を含む帯状の連結部分32は、FPC基板22を起歪体11に配設した場合に起歪体11の側方にはみ出ない形状(起歪体のゲージ取付面11cの幅方向内側に湾曲する形状)に形成されている。
【0052】
このように、本実施例のFPC基板20は、起歪体11に配設されると帯状連結部分(伸縮自在部)が起歪体の表面上に突出したり側方にはみ出したりする従来のFPC基板とは異なり、起歪体11に配設したとしても、帯状連結部分22の湾曲部33がゲージ取付面11cから突出したり側方に突出することがないので、歪みゲージ式ロードセル10を組み立てたり搬送したりする際に、帯状連結部分22の湾曲部33が他部材と干渉してFPC基板20が破損するおそれが少ない。
【0053】
また、起歪体11のゲージ取付面11cには、配設されたFPC基板20(のゲージ接続部分30)と歪ゲージ14との間の設けられている導電部(歪ゲージ接続用端子31,歪ゲージ14のタグ14aおよび両者を接続するリード線15等)が露出しているが、これらの導電部は、起歪体11のゲージ取付面11c全域に密着するように配設されたシリコンゴム等の伸縮自在な絶縁保護層16(図2参照)で覆われて、破損防止や防塵・防水が確保されている。
【0054】
特に、起歪体11のゲージ取付面11cは、起歪体11の基端部(固定端側の端部)11aや自由端側の端部11bの上下の表面よりも幾分低く形成されているため、FPC基板20を覆うように絶縁保護層16を形成したとしても、絶縁保護層16の外表面が起歪体11の基端部(固定端側の端部)11aや自由端側の端部11bの上下の表面よりも高くなることはない。
【0055】
また、ゲージ接続部分30(30Aと30B、30Cと30D)同士を連結部分32で繋いだ一対のゲージ接続部分・連結部分連続体34,34全体が起歪体11の表面(ゲージ取付面11c)に沿って略面一に延在するため、ゲージ接続部分・連結部分連続体34全体を覆う絶縁保護層16をそれだけ薄く形成できる。
【0056】
したがって、FPC基板20を覆う薄厚の絶縁保護層16が起歪体11の変形(起歪体11に発生する歪)に影響を与えることはなく、起歪体11のゲージ取付面11cに露出する導電部における絶縁が確保された、正確な荷重測定が可能な歪みゲージ式ロードセルが提供される。
【0057】
また、起歪体11の基端部11aには、起歪体11を水平に貫通して起歪体11の側面に開口する配線挿通孔18が設けられており、一方、起歪体11の基端部11aの側面に接着固定される外部回路接続部分36には、起歪体11の側面に開口する配線挿通孔18に整合する孔36aが設けられ、該孔36aの周縁部近傍には、該孔36aを貫通するように配線挿通孔18から導出した外部回路用配線40が接続される外部回路接続用端子(入出力端子)37(37a,37b,37c,37d)が設けられている。
【0058】
また、ゲージ接続部分30Aから外部回路接続部分36に延びる導体パターン(導電路)22およびゲージ接続部分30Dから外部回路接続部分36に延びる導体パターン(導電路)22は、それぞれ端子35a,35bを介して外部回路接続用端子(入出力端子)37cに導通している。
【0059】
また、外部回路接続部分36の外部回路接続用端子(入出力端子)37aからゲージ接続部分30Cのゲージ接続用端子31bに延びる導体パターン(導電路)22に設けられた端子35c,35d間には、感温抵抗器39が挿入されている。
【0060】
端子35a,35b間に設けた複数の端子35gは、ロードセルの零点の温度調整用抵抗を挿入するための端子、端子37a,37c間の端子35e,35fは、その他の予備的端子である。
【0061】
また、図3に拡大して示すように、外部回路用配線40は複数のリード線41の束として構成されているが、外部回路接続部分36の孔36aを貫通するように配線挿通孔18から導出する外部回路用配線40は、配線40を構成する各リード線41がそれぞれの絶縁被覆層を剥がされた芯線(裸リード線)41aとして導出して、孔36a周縁部近傍に設けられた外部回路接続用端子37(37a,37b,37c,37d)にハンダ溶接されている。
【0062】
本実施例では、外部回路接続用端子37(37a〜37d)が外部回路接続部分36に設けた孔36aの近傍に設けられているので、起歪体11の基端部11aの側面に開口する配線挿通孔18から導出する外部回路用配線40(を構成する各リード線41)の導出長さが短くて済み、しかも芯線41aを起歪体11の基端部11aの側面に沿って配設できるので、外部回路用配線40(芯線41a)が起歪体11の基端部11aの側面から大きく突出しない。
【0063】
このため、本実施例では、ロードセル10を組み立てたりロードセル10を搬送したりする際に、起歪体11の基端部11aの側面に導出する外部回路用配線40が他部材と干渉してFPC基板20が破損するおそれが少ない。
さらに、図3に示すように、起歪体11の基端部11aの側面に露出している、外部回路接続部分36における導電部(入出力端子37やリード線41の芯線41a等)は、樹脂モールドした端子カバー50で覆うことで、外部回路接続部分36における導電部の絶縁および防塵・防水が確保されている。
【0064】
図3における符号52は、端子カバー50を固定するための取り付けネジで、起歪体11の基端部11aの側面に設けられたネジ孔11eに螺着される。符号36bは、外部回路接続部分36に設けられた、取り付けネジ52挿通用の孔(ネジ孔11eに対応する孔)である。
【0065】
特に、本実施例では、外部回路接続部分36に設けた孔36aから導出する外部回路用配線40(リード線41の芯線41a)が、起歪体11の側面に密着する外部回路接続部分36に沿って配設されているので、外部回路接続部分36を覆う端子カバー50の高さを低くできるとともに、端子カバー50内に注入する樹脂モールドの量も少なくて済むし、なによりも外部回路接続部分36を覆う端子カバー50の高さが低い分、歪みゲージ式ロードセル10を組み立てたり搬送したりする際に、端子カバー50が他部材と干渉してFPC基板20が破損するおそれが少ない。
【0066】
図5は、本発明の第2の実施例に係るロードセル用FPC基板の構成を概略的に示す平面図である。
【0067】
この第2の実施例におけるロードセル用FPC基板20Aは、起歪体の高さH(起歪体11の基端部(固定端側の端部)11aの側面の巾、図2参照)に対応して、ゲージ接続部分30(30Aと30B、30Cと30D)同士を連結部分32,32で繋いだ一対のゲージ接続部分・連結部分連続体34,34の間隔dが前記した第1の実施例のFPC基板20と比べて大きく構成されている。
【0068】
ゲージ接続部分30A,30B(30C,30D)には、それぞれ2個のゲージ接続用端子31(31a,31b)が設けられており、4個のゲージ接続用端子31を併設した第1の実施例のように、歪ゲージ14の起歪体11巾方向の位置に応じて、歪ゲージ14に接続するゲージ接続用端子31を選択することはきない。
【0069】
また、外部回路接続部分36の端縁部36cには、起歪体11の配線挿通孔18の形状に対応する円弧状の切欠36dが設けられている。
【0070】
その他の構造は、前記した第1の実施例のFPC基板20と同一であるので、同一の符号を付すことで、その重複した説明は省略する。
【0071】
なお、前記した第1,第2の実施例では、ゲージ接続部分30同士を繋ぐ巾狭帯状の連結部分32に設けられた伸縮自在部が、巾狭帯状の連結部分32の巾方向に湾曲する湾曲部33で構成されているが、図6(a)〜(d)に示すFPC基板20B〜0Eのように、巾方向に屈曲する屈曲部33A,33B,33Cや湾曲部33Dといった、起歪体11の応力作用方向に対する弛み(伸縮自在部)を構成する平面的(二次元的)な湾・屈曲部で構成してもよい。
【0072】
また、ゲージ接続部分30同士を繋ぐ巾狭帯状の連結部分32に設けられた伸縮自在部である湾曲部33は、ロードセルの要求する精度に応じて、その大きさや形状を変えることができる。たとえば、高精度のロードセルほど湾曲部33の曲率を大きく(曲率半径を小さく)することで、湾曲部33における伸縮自在性を高めることがのぞましい。
【符号の説明】
【0073】
10 ロードセル
11 起歪体
11a 起歪体の基端部(固定端部)
11c ゲージ取付面
12 起歪部
14 歪ゲージ
14a タグ
15 裸リード線
16 絶縁保護層
18 配線挿通孔
20,2OA,20B,2OC,20D,20E FPC基板
21 絶縁性ベースフィルム
22 配線用導体パターン(導電路)
22a 目印用導体パターン
23 絶縁性保護フィルム
23a,23b,23c,23d 絶縁性保護フィルムに設けた開口部
30(30A,30B,30C,30D) ゲージ接続部分
30a ゲージ接続部分の端縁部
30b 切断用の目印
31(31a,31b,31c,31d) ゲージ接続用端子
32 巾狭帯状の連結部分
33,33A,33B,33C,33D 伸縮自在部を構成する湾・屈曲部
34 ゲージ接続部分・連結部分連続体
36 外部回路接続部分
36a 配線挿通孔に整合する孔
37(37a,37b,37c,37d) 外部回路接続用端子(入出力端子)
40 外部回路用配線
41 外部回路用配線を構成するリード線
41a リード線の芯線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8