特許第5761745号(P5761745)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5761745カート利用効率化装置、システム、方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5761745
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】カート利用効率化装置、システム、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/30 20120101AFI20150723BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
   G06Q50/30 100
   G08G1/00 X
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-94336(P2011-94336)
(22)【出願日】2011年4月20日
(65)【公開番号】特開2012-226601(P2012-226601A)
(43)【公開日】2012年11月15日
【審査請求日】2014年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232254
【氏名又は名称】日本電気通信システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩壁 冬樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124501
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 誠人
(72)【発明者】
【氏名】大島 達裕
【審査官】 野崎 大進
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/123075(WO,A1)
【文献】 特開2007−249918(JP,A)
【文献】 特開2008−186380(JP,A)
【文献】 特開2003−044777(JP,A)
【文献】 特開2003−331394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 50/30
G08G 1/00
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの属性情報と予め定められた判断条件とに基づいて、該ユーザがカートの利用対象者であるか否かを判断し、利用対象者であると判断した場合には利用優先度を判断する優先度判断手段と、
前記優先度判断手段の判断結果とカートの運用状況を示すカート運用状況情報とに基づいて、カートの移動先を決定する移動決定手段とを備えた
とを特徴とするカート利用効率化装置。
【請求項2】
優先度判断手段は、ユーザの属性情報及び予め定められた判断条件とともに該ユーザの現在位置及び目的位置を示す位置情報に基づいて、該ユーザがカートの利用対象者であるか否かを判断し、利用対象者であると判断した場合には利用優先度を判断する
請求項1記載のカート利用効率化装置
【請求項3】
ユーザが保持するRFIDタグを読み取る読取手段と、
前記読取手段が設けられている位置及び前記ユーザの目的位置を示す位置情報に基づいて、所定期間ごとに前記ユーザの現在位置を示す位置情報を更新する位置情報更新手段とを備えた
請求項2記載のカート利用効率化装置。
【請求項4】
ユーザの位置情報とともに優先度判断手段が判断した利用優先度を表示装置に表示させるように制御する表示制御手段を備え、
前記表示制御手段は、動先決定手段が決定した移動先を表示装置に表示させるように制御する
請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載のカート利用効率化装置。
【請求項5】
優先度判断手段は、予め定められた複数の判断条件のうちのいずれかを満たせばカートの利用対象者であると判断する
請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載のカート利用効率化装置。
【請求項6】
優先度判断手段は、合致した判断条件の数に基づいて優先度を判断する
請求項1から請求項5のうちのいずれか1項に記載のカート利用効率化装置。
【請求項7】
ユーザの属性情報と予め定められた判断条件とに基づいて、該ユーザがカートの利用対象者であるか否かを判断し、利用対象者であると判断した場合には利用優先度を判断する優先度判断手段と、
前記優先度判断手段の判断結果とカートの運用状況を示すカート運用状況情報とに基づいて、カートの移動先を決定する移動決定手段とを備えた
とを特徴とするカート利用効率化システム。
【請求項8】
サーバ装置が、
ユーザ属性情報記憶手段に記憶されたユーザの属性情報と予め定められた判断条件とに基づいて、該ユーザがカートの利用対象者であるか否かを判断し、利用対象者であると判断した場合には利用優先度を判断し、
判断結果とカート運用状況情報記憶手段に記憶されたカートの運用状況を示すカート運用状況情報とに基づいて、カートの移動先を決定する
ことを特徴とするカート利用効率化方法。
【請求項9】
コンピュータに、
ユーザ属性情報記憶手段に記憶されたユーザの属性情報と予め定められた判断条件とに基づいて、該ユーザがカートの利用対象者であるか否かを判断し、利用対象者であると判断した場合には利用優先度を判断する優先度判断処理と、
判断結果とカート運用状況情報記憶手段に記憶されたカートの運用状況を示すカート運用状況情報とに基づいて、カートの移動先を決定する移動決定処理とを
実行させるためのカート利用効率化プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カート利用効率化装置、カート利用効率化システム、カート利用効率化方法及びカート利用効率化プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
施設内の目的場所までの距離がある大規模な空港などにおいては、目的場所までの歩行が困難な人のために電動カートが用意されていることがある。このような電動カートは、例えば、あらかじめ入場前に利用予約をした利用希望者によって利用される。
【0003】
また、利用予約がされていなくても、電動カートの運転者は特定の場所で待機し、高齢者や歩行が困難な方を運転者自身の目視によって確認し、「目的の場所が遠いかどうか」、「利用するかどうか」などの声かけを行ったうえで、応諾した方を電動カート利用者として探し出している。
【0004】
これに関連する技術として、例えば特許文献1〜4には、位置情報を利用した電動カートなどの移動体の運行管理/監視に関するシステムが記載されている。
【0005】
また、例えば特許文献5には、顧客の移動管理に関するシステムが記載されている。また、例えば特許文献6には、顧客の道案内表示に関するシステムが記載されている。
【0006】
また、例えば特許文献7には、施設利用者が施設係員を呼び出すシステムが記載されている。また、例えば特許文献8には、特定顧客が来店した時に適切な応対を提供できる入場者案内システムが記載されている。
【0007】
また、例えば特許文献9には、複数の利用者で車両を共用するシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−304906号公報
【特許文献2】特開2002−197569号公報
【特許文献3】特開2004−061247号公報
【特許文献4】特開平4−267406号公報
【特許文献5】特開2006−127322号公報
【特許文献6】特開2007−048132号公報
【特許文献7】特開2002−244674号公報
【特許文献8】特開2006−018614号公報
【特許文献9】特開2003−196782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
目的場所までの歩行が困難な人のために用意された電動カートは、あらかじめ入場前に利用予約をした利用希望者によって利用される場合もある。しかしながら、多くの場合には、電動カートの運転手などの施設係員が、高齢者や歩行が困難な方を目視によって確認し、能動的に利用者を探し出している。また、近年では、自動チェックイン機能や携帯端末によるチケットレス入場をする割合が増えている。そのため、チェックイン窓口で目的場所までの歩行が困難な人を見つけ出して、電動カートの利用を事前に勧めることができない場合もある。
【0010】
電動カートの運転者が能動的に利用者を探し出す方法では、特定の方向を目的地とする利用者が集中した場合、その逆側で待機している電動カートは利用されていないにも関わらず待機しつづける場合があり、電動カートの利用効率が悪くなる。また、電動カートの運転者が目視によって確認しても、目的場所が遠い利用者を効率的に判断することができない。さらに、電動カートの利用予約をした利用者が同時に同方向に集中した場合にも、複数の電動カート間での連携をうまくとれないことがある。
【0011】
特許文献1〜4に記載された技術は、これらは電動カート側を管理/監視するシステムであり、電動カート運転者が能動的に利用者を探し出す目的に適用することはできない。また、特許文献5、6に記載された技術についても、電動カート運転者が能動的に利用者を探し出す目的に適用することはできない。
【0012】
また、特許文献7、8に記載された技術は、いずれも、電動カートによる支援が必要な人に優先順位をつけて能動的に見つけ出す目的に適用することはできない。
【0013】
また、特許文献9に記載された技術は、複数の利用者が車両を共用するためのものであり、電動カート運転者が能動的に利用者を探し出す目的にそのまま適用することはできない。
【0014】
そこで、本発明は、カートの利用効率を高めることができるカート利用効率化装置、カート利用効率化システム、カート利用効率化方法及びカート利用効率化プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によるカート利用効率化装置は、ユーザの属性情報と予め定められた判断条件とに基づいて、該ユーザがカートの利用対象者であるか否かを判断し、利用対象者であると判断した場合には利用優先度を判断する優先度判断手段と、優先度判断手段の判断結果とカートの運用状況を示すカート運用状況情報とに基づいて、カートの移動先を決定する移動決定手段とを備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明によるカート利用効率化システムは、ユーザの属性情報と予め定められた判断条件とに基づいて、該ユーザがカートの利用対象者であるか否かを判断し、利用対象者であると判断した場合には利用優先度を判断する優先度判断手段と、優先度判断手段の判断結果とカートの運用状況を示すカート運用状況情報とに基づいて、カートの移動先を決定する移動決定手段とを備えたことを特徴とする。
【0017】
本発明によるカート利用効率化方法は、サーバ装置が、ユーザ属性情報記憶手段に記憶されたユーザの属性情報と予め定められた判断条件とに基づいて、該ユーザがカートの利用対象者であるか否かを判断し、利用対象者であると判断した場合には利用優先度を判断し、判断結果とカート運用状況情報記憶手段に記憶されたカートの運用状況を示すカート運用状況情報とに基づいて、カートの移動先を決定することを特徴とする。
【0018】
本発明によるカート利用効率化プログラムは、コンピュータに、ユーザ属性情報記憶手段に記憶されたユーザの属性情報と予め定められた判断条件とに基づいて、該ユーザがカートの利用対象者であるか否かを判断し、利用対象者であると判断した場合には利用優先度を判断する優先度判断処理と、判断結果とカート運用状況情報記憶手段に記憶されたカートの運用状況を示すカート運用状況情報とに基づいて、カートの移動先を決定する移動決定処理とを実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、カートの利用効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明によるカート利用効率化システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2】カート利用効率化システムが実行する処理例を示す流れ図である。
図3】空港内施設の一例を示す平面図である。
図4】空港内施設の平面図における位置情報のための座標図である。
図5】利用者データベース記憶手段が記憶するデータの一例を示す説明図である。
図6】予約情報記憶手段が記憶するデータの一例を示す説明図である。
図7】施設利用状況記憶手段が記憶するデータの一例を示す説明図である。
図8】電動カート運用状況記憶手段が記憶するデータの一例を示す説明図である。
図9】カート利用効率化システムの最小の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明によるカート利用効率化システムの構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、カート利用効率化システムは、ホストコンピュータ1、施設運用サーバ装置2、電動カート管理サーバ装置3及び電動カートの表示装置52を備えている。
【0022】
また、ホストコンピュータ1と、施設運用サーバ装置2と、電動カート運用サーバ装置3とは、LANやインターネット等のネットワークを介して相互に接続されている。また、電動カート管理サーバ装置3は、電動カート51と通信可能な通信手段41にネットワークを介して接続されている。なお、本実施形態では、電動カートを例として説明するが、これに限らず、電気以外を動力とするカートにも適用可能である。
【0023】
ホストコンピュータ1は、具体的には、プログラムに従って動作するパーソナルコンピュータ等の情報処理装置によって実現される。ホストコンピュータ1は、利用者データベース記憶手段11と予約情報記憶手段12とを含む。
【0024】
利用者データベース記憶手段11は、具体的には、光ディスク装置や磁気ディスク装置等の記憶装置によって実現される。利用者データベース記憶手段11は、利用者の属性情報として、いわゆる顧客情報や会員情報を記憶する。具体的には、利用者データベース記憶手段11は、顧客の年齢や携帯電話番号、身体障害者であるか否かを登録した障害者情報、施設の利用頻度や電動カートの利用実績を示す情報を記憶する。
【0025】
予約情報記憶手段12は、具体的には、光ディスク装置や磁気ディスク装置等の記憶装置によって実現される。予約情報記憶手段12は、いわゆる航空機利用などのイベントの予約情報を記憶する。
【0026】
施設運用サーバ装置2は、具体的には、プログラムに従って動作するパーソナルコンピュータ等の情報処理装置によって実現される。施設運用サーバ装置2は、施設利用状況記憶手段21を含む。
【0027】
施設利用状況記憶手段21は、具体的には、光ディスク装置や磁気ディスク装置等の記憶装置によって実現される。施設利用状況記憶手段21は、航空機やイベントを利用する際の施設において、施設のどこから入場し、現在どの位置にいて、どの場所まで向かうのかといった情報を記憶する。
【0028】
電動カート管理サーバ装置3は、具体的には、プログラムに従って動作するパーソナルコンピュータ等の情報処理装置によって実現される。電動カート管理サーバ装置3は、電動カート運用状況記憶手段31と電動カート利用優先度判断手段32と移動先決定手段33と表示制御手段34とを含む。
【0029】
電動カート運用状況記憶手段31は、具体的には、光ディスク装置や磁気ディスク装置等の記憶装置によって実現される。電動カート運用状況記憶手段31は、収集された電動カートの実際の稼働/利用状況や位置の情報や、各電動カートの運用状態や移動指示命令を記憶する。
【0030】
電動カート利用優先度判断手段32は、具体的には、プログラムに従って動作する情報処理装置のCPUによって実現される。電動カート利用優先度判断手段32は、利用者データベース記憶手段11および施設利用状況記憶手段21のデータと電動カート運用状況記憶手段31のデータとを比較し、電動カート利用優先度の高い施設入場者が施設内のどの場所に多く分布しているのかを判断する機能を備えている。
【0031】
移動先決定手段33は、具体的には、プログラムに従って動作する情報処理装置のCPUによって実現される。移動先決定手段33は、利用者データベース記憶手段11および施設利用状況記憶手段21のデータと電動カート運用状況記憶手段31のデータとを比較し、どの電動カートがどの場所に移動した方が効率的に電動カートを運用できるのかを判断し、電動カートの移動先を決定する機能を備えている。
【0032】
表示制御手段34は、具体的には、プログラムに従って動作する情報処理装置のCPUによって実現される。表示制御手段34は、電動カート利用優先度判断手段32による判断結果や移動先決定手段33が決定した移動先を示す情報を電動カートの表示装置52に表示させるように制御する機能を備えている。例えば、表示制御手段34は、電動カートの表示装置52に対して、ネットワーク及び通信手段41を介して、表示要求とともに表示させる情報を送信する。
【0033】
通信手段41は、具体的には、アクセスポイントによって実現される
【0034】
電動カート51は、通信手段41が無線通信を行い送信したデータの内容を表示可能な電動カートの表示装置52を搭載している。電動カートの表示装置52は、具体的には、通信機能を備えたタブレットコンピュータ等によって実現される。
【0035】
次に、カート利用効率化システムの動作について図面を参照して説明する。図2は、カート利用効率化システムが実行する処理例を示す流れ図である。
【0036】
多くの航空会社では、会員情報を用いた航空機利用サービスを提供している。会員情報には、例えば個人情報として、名前や連絡先(住所、電話番号)、年齢、搭乗のお手伝いが必要か否か(搭乗口までの移動が困難な方であるか否かを示す情報)、嗜好、航空会社の利用頻度などが含まれている。このような会員情報は、会員登録時などに利用者データベース記憶手段11に登録される。
【0037】
また、航空機を利用する旅客は、出発空港や到着空港、搭乗便、必要に応じて電動カート利用有無などを、WEBサイトや電話、窓口などで問い合わせて航空会社に連絡する。すると、これらの情報は、受け付けたオペレータやWEBシステムによって、予約情報として予約情報記憶手段12に登録される。
【0038】
以上のような会員情報および予約情報が登録された旅客は、航空機に搭乗する際に、空港内オープンフロアにある入場ゲートから、搭乗待ちの施設内に入る。また、入場に際して旅客は、例えば、搭乗券を読取装置にかざして入場可能かどうかチェックを受ける。この時、読取装置は、旅客が施設のどの入場ゲートから入場し、現在どの位置にいて、どの場所まで向かうのかといった情報を施設利用状況記憶手段21に登録する(ステップS1)。
【0039】
例えば、RFIDリーダを搭載した読取装置は、RFIDタグが埋め込まれた搭乗券からデータを読み取る。ここでは、読取装置は、例えば会員番号を読み取る。そして、読取装置は、読み取った会員番号と、予め読取装置ごとに定められた読取装置の位置情報とを施設運用サーバ装置2に送信する。すると、施設運用サーバ装置2は、受信した会員番号に対応付けられた予約情報を予約情報記憶手段12から抽出し、位置情報と対応付けて施設利用状況記憶手段21に登録する。またこの時、施設運用サーバ装置2は、「入場有無」情報を「有り」として施設利用状況記憶手段21に登録する。
【0040】
入場ゲートを通過した旅客は、常に搭乗口に向かって移動していることが考えられる。そのため、入場ゲート通過から所定時間を過ぎた場合には、利用対象者(すなわち旅客)の位置情報を更新する必要がある。そこで、カート利用効率化システムは、所定期間ごとに旅客の位置情報を取得し、施設利用状況記憶手段21が記憶する位置情報を更新する(ステップS2)。近年では、利用対象者が保持する携帯端末が位置情報を把握する技術を備えている場合があるので、それらの技術を利用して、利用対象者の位置情報を更新してもよい。例えば、携帯端末が位置情報を取得して施設運用サーバ装置2に送信すると、施設運用サーバ装置2は、受信した位置情報で施設利用状況記憶手段21が記憶する情報を更新する。
【0041】
次いで、電動カート管理サーバ装置3の電動カート利用優先度判断手段32は、入場ゲートを通過した旅客が、電動カートの利用対象者であるか否かと、その優先度とを、利用者データベース記憶手段11、予約情報記憶手段12及び施設利用状況記憶手段21が記憶する情報と、あらかじめ設定された条件とに従って判断する(ステップS3)。
【0042】
設定された判断の条件として例えば、「高齢者であるか(具体的には、所定の年齢以上であるか否か)」や「搭乗口までの移動に支援が必要か(具体的には、障害情報が登録されているか否か)」、「入場ゲートから出発搭乗口まで距離が遠いか(具体的には、所定の距離以上であるか否か)」、「電動カートの利用予約をしているか」、「航空機利用頻度が高い方か」などがあげられる。なお、これらの条件を示す情報は、例えば、電動カート管理サーバ装置3に記憶されている。
【0043】
例えば、電動カート利用優先度判断手段32は、いずれかの条件を満たす場合に電動カートの利用対象者と判断し、満たす条件が多いほど優先度が高いと判断する。なお、満たす条件の数に限らず、例えば、あらかじめ条件ごとに優先度の重みづけをしておき、それらに基づいて最終的な優先度を判断するようにしてもよい。また、例えば、いずれかの条件を満たせば優先度を最も高くするようにしてもよい。
【0044】
例えば、電動カート利用優先度判断手段32は、利用者データベース記憶手段11から抽出した年齢が所定値以上であれば、年齢条件に合致すると判断する。また、電動カート利用優先度判断手段32は、施設利用状況記憶手段21から抽出した「搭乗口」及び「現在位置」と、予め記憶している空港施設内の地図情報とに基づいて移動距離を算出し、算出した移動距離が所定距離以上であれば距離条件に合致すると判断する。
【0045】
また、例えば、旅客ごとに電動カートの利用回数を記憶しておき、電動カート利用優先度判断手段32は、利用回数が所定回数以上であれば利用回数条件に合致すると判断する。そして、例えば、電動カート利用優先度判断手段32は、年齢条件や距離条件、利用回数条件等の条件のうち合致した数をカウントして、数が多い順に優先度が高いと判断する。
【0046】
次いで、移動先決定手段33は、電動カート利用優先度判断手段32の判断結果に基づいて、どの電動カートがどの場所に移動した方が効率的に電動カートを運用できるのかを判断し、電動カートの移動先を決定する。そして、移動先決定手段33は、判断結果に基づいて、電動カート運用状況記憶手段31の「移動先位置」情報を更新する。(ステップS4)。
【0047】
次いで、表示制御手段34は、施設利用状況記憶手段21が記憶し、リアルタイムに更新される電動カートの利用対象者の情報(例えば、「現在位置」や「電動カート利用」情報など)と、電動カート運用状況記憶手段31が記憶する移動させる電動カートの「移動先位置」情報とを、ネットワーク及び通信手段41を介して、稼働中の電動カート51に送信する。すると、電動カートの表示装置52は、受信した情報を表示する(ステップS5)。
【0048】
例えば、電動カートの表示装置52は、図4に示すような空港内施設の座標図に、受信した位置情報に基づいて利用対象者を表示する。また、この時に、電動カートの表示装置52は、利用対象者を表示する際に、受信した「電動カート利用」情報によって示される優先度も同時に複数表示してもよい。この表示された情報を見ることによって、電動カートの運転者は、電動カートを利用した方がよいと思われる人がどこにどれくらい分布しているか、どの順番に優先して利用者を探せばよいか、また、各電動カートがどこに移動すれば稼動効率が上がるのかを認識することができる。
【0049】
なお、本実施形態では、電動カートに搭載された表示装置を例として説明するが、これに限らず、例えば、電動カートの運転者が所持している携帯端末の表示部や、電動カートの待機場所に設置された表示装置に表示させるようにしてもよい。
【0050】
その後、電動カートの運転者は、電動カートの表示装置52に表示された情報に基づいて、電動カートを移動させる。
【0051】
次に、空港利用日を仮に10月5日とした例で、さらに詳しく解説する。図3は、空港内施設の平面図の一例である。また、図4は、空港内施設の平面図における位置情報のための座標図である。
【0052】
また、利用者データベース記憶手段11は、図5に示すようにデータを記憶しているものとする。また、予約情報記憶手段12は、図6に示すようにデータを記憶しているものとする。また、施設利用状況記憶手段21は、図7に示すようにデータを記憶しているものとする。また、電動カート運用状況記憶手段31は、図8に示すようにデータを記憶しているものとする。
【0053】
まず、図3の「入場ゲートA」を4名の会員が同時に通過すると、カート利用効率化システムは、図7の施設利用状況記憶手段21の、「入場有無」情報を「有り」と、旅客の「現在位置」情報の座標位置を「A403」と更新する。
【0054】
さらに、電動カート利用優先度判断手段32は、電動カートの利用対象者であるか否かとその優先度とを判断し、判断結果に基づいて、施設利用状況記憶手段21の「電動カート利用」情報を更新する。
【0055】
このデータ例の場合、電動カート利用優先度判断手段32は、会員情報0007の会員について、年齢が若い健常者であるため電動カートの利用不可と判断する。具体的には、電動カート利用優先度判断手段32は、会員の年齢が予め定められた所定の年齢を下回る場合に、その会員を若いと判断する。
【0056】
会員情報0002〜0004の会員の年齢は、いずれも70歳と高齢であり電動カート利用条件を満たす。ここで、会員番号0002の会員は、図5の利用者データベース記憶手段11の「障害情報」によると、介助が必要な車椅子の方となっている。そのため、電動カート利用優先度判断手段32は、会員番号0002の会員について、電動カート利用可であり、その優先度が高いと判断する。また、電動カート利用優先度判断手段32は、会員番号0004の会員については、出発搭乗口が近いため、優先度が低いと判断する。
【0057】
一方、電動カートについては、図3に示されるように2台が稼動しており、電動カートC1が稼働中、電動カートC2が待機中である。この情報は、図8の電動カート運用記憶手段31のデータ例にて「稼動状況」「現在地」「移動先位置」情報として更新保存されている。
【0058】
例えば、電動カート51は、位置情報取得手段を備え、取得した位置情報を所定期間ごとに施設運用サーバ装置2に送信して、施設利用状況記憶手段21の「現在地」情報を更新可能とするようにしてもよい。また、電動カート51は、運転者の操作に従って、現在の稼働状況を示す情報を施設運用サーバ装置2に送信して、施設利用状況記憶手段21の「稼働状況」情報を更新可能とするようにしてもよい。
【0059】
電動カートC2は、通常搭乗口71〜75に向かう歩行困難者の運搬を行うため入場ゲートB近くで待機している。そのため、移動先決定手段33は、施設利用状況記憶手段21の電動カートの利用対象者の「現在位置」に基づいて、電動カートC2の移動先を決定し、電動カート運用状況記憶手段31の「移動先位置」情報を「A403」に変更する。
【0060】
次いで、表示制御手段34は、電動カートの利用対象者の情報及び該当する電動カートの「移動先位置」情報を、ネットワーク及び通信手段41を介して電動カートC2に送信する。すると、電動カートの表示装置52は、電動カート利用優先度判断手段32から受信した情報を表示する。
【0061】
その後、電動カートC2の運転者は、表示装置52に示された情報を元に「A403」位置の近くに電動カートC2を移動させ、電動カート利用対象者を探して電動カートの利用を勧める。
【0062】
以上のように、本実施形態では、電動カート利用者優先度判断手段は、会員情報や予約情報、施設の利用状況を示す情報に基づいて、電動カートの利用対象者であるか否かと、その優先度とを判断する。また、移動先決定手段は、それらの情報に基づいて、どの電動カートがどの場所に移動すると効率的に運用できるのかを判断する。
【0063】
したがって、電動カートを利用した方がよいと思われる人が、どこにどれくらい分布しているか、また、各電動カートがどこに移動すれば稼動効率が上がるのかを、待機中の電動カートの運転者に通知することができる。これにより、電動カートの運転者は、表示装置に表示された「電動カートを利用した方がよいと思われる人の分布情報」と「電動カート待機場所情報」とに従って、電動カートを滞りなく最適な待機場所に効率よく移動することが可能となる。一方、電動カートを利用したい人にとっても、待機中の電動カートを見つけやすくなるという効果がある。
【0064】
すなわち、本発明によれば、電動カートの利用を必要とすると思われる人が「施設のどの入場ゲートを通過したのか」または「位置情報にもとづき施設内特定の場所に移動したのか」を時間や位置情報や目的場所のデータベースより抽出して、電動カートに付属された表示端末、電動カートの運転者が所持している携帯端末、または、電動カートの待機場所に用意された表示端末に、電動カートの利用を必要とすると思われる人がどこにどのくらいの割合でいるのか優先順序をつけて表示させるように制御し、また電動カートをどの場所で待機させたほうがよいのかを表示させるように制御して電動カートの利用効率を高めることができる。
【0065】
次に、本発明によるカート利用効率化装置の最小構成について説明する。図9は、カート利用効率化装置の最小の構成例を示すブロック図である。図9に示すように、カート利用効率化装置は、最小の構成要素として、優先度判断手段100を含む。
【0066】
図9に示す最小構成のカート利用効率化装置では、優先度判断手段100は、ユーザの属性情報と予め定められた判断条件とに基づいて、ユーザがカートの利用対象者であるか否かを判断し、利用対象者であると判断した場合には利用優先度を判断する。従って、最小構成のカート利用効率化装置によれば、カートの利用効率を高めることができる。
【0067】
なお、本実施形態では、以下の(1)〜(6)に示すようなカート利用効率化装置の特徴的構成が示されている。
【0068】
(1)カート利用効率化装置は、ユーザの属性情報(例えば、利用者データベース記憶手段11が記憶する会員情報や予約情報記憶手段12が記憶する予約情報)と予め定められた判断条件(例えば、高齢であるか否か等)とに基づいて、ユーザがカートの利用対象者であるか否かを判断し、利用対象者であると判断した場合には利用優先度を判断する優先度判断手段(具体的には、電動カート利用優先度判断手段32によって実現される)を含むことを特徴とする。
【0069】
(2)カート利用効率化装置において、優先度判断手段は、ユーザの属性情報及び予め定められた判断条件とともにユーザの現在位置及び目的位置を示す位置情報(例えば、施設利用状況記憶手段21が記憶する「搭乗口」や「現在位置」情報)に基づいて、ユーザがカートの利用対象者であるか否かを判断し、利用対象者であると判断した場合には利用優先度を判断するように構成されていてもよい。
【0070】
(3)カート利用効率化装置において、ユーザの位置情報とともに優先度判断手段が判断した利用優先度を表示装置(具体的には、電動カートの表示装置52)に表示させるように制御する表示制御手段(具体的には、電動カート利用優先度判断手段32によって実現される)を備えるように構成されていてもよい。
【0071】
(4)カート利用効率化装置において、優先順位判断手段の判断結果に基づいて、カートの移動先を決定する移動決定手段(具体的には、電動カート利用優先度判断手段32によって実現される)を備え、表示制御手段は、移動先決定手段が決定した移動先を表示装置に表示させるように制御するように構成されていてもよい。
【0072】
(5)カート利用効率化装置において、優先度判断手段は、予め定められた複数の判断条件のうちのいずれかを満たせばカートの利用対象者であると判断するように構成されていてもよい。
【0073】
(6)カート利用効率化装置において、優先度判断手段は、合致した判断条件の数に基づいて優先度を判断するように構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、空港や公共施設などにおけるカート利用システムに関し、特に、電動カート係員に対して適切な支援を行い易いシステムを実現する用途に適用可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 ホストコンピュータ
2 施設運用サーバ装置
3 電動カート管理サーバ装置
11 利用者データベース記憶手段
12 予約情報記憶手段
21 施設利用状況記憶手段
31 電動カート運用状況記憶手段
32 電動カート利用優先度判断手段
41 通信手段
51 電動カート
52 電動カートの表示装置
100 優先度判断手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9