特許第5761768号(P5761768)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5761768光増感色素ならびに該色素を含む金属酸化物半導体電極および色素増感太陽電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5761768
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】光増感色素ならびに該色素を含む金属酸化物半導体電極および色素増感太陽電池
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/20 20060101AFI20150723BHJP
   C09B 47/18 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
   H01G9/20 113B
   H01G9/20 309
   C09B47/18
   H01G9/20 105
【請求項の数】8
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-130510(P2014-130510)
(22)【出願日】2014年6月25日
(65)【公開番号】特開2015-29082(P2015-29082A)
(43)【公開日】2015年2月12日
【審査請求日】2014年12月24日
(31)【優先権主張番号】特願2013-136847(P2013-136847)
(32)【優先日】2013年6月28日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591282205
【氏名又は名称】島根県
(73)【特許権者】
【識別番号】598041795
【氏名又は名称】神戸天然物化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504155293
【氏名又は名称】国立大学法人島根大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉野 勝美
(72)【発明者】
【氏名】今若 直人
(72)【発明者】
【氏名】松林 和彦
(72)【発明者】
【氏名】兒玉 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝一
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕
(72)【発明者】
【氏名】半田 真
(72)【発明者】
【氏名】池上 崇久
【審査官】 井原 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−074003(JP,A)
【文献】 特表2001−510199(JP,A)
【文献】 特開2011−060669(JP,A)
【文献】 Ahmad Tuhl,et al,Reverse saturation absorption spectra and optical limiting properties of chlorinated tetrasubstituted phthalocyanines containing different metals,Optical Materials,2012年 6月18日,Vol.34,p.1869-1877
【文献】 Saad Makhseed, et al,New highly soluble phenoxy-substituted phthalocyanine and azaphthalocyanine derivatives: Synthesis, photochemical and photophysical studies and atypical aggregation behavior,Dyes and Pigments,2012年 5月22日,Vol.95,p.351-357
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/20
C09B 47/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるフタロシアニン錯体またはその塩である太陽電池用光増感色素。
【化1】
(式(1)中、Aは無置換または置換基を有するアルケン、アルキン、アリールまたはヘテロアリールであり、前記Aが置換基を有する場合、前記Aは、分岐を含んでもよいC1〜20のアルキル、C1〜20のアルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲンからなる群から選択される一の置換基で置換され、nは0または1〜3の整数であり、R1およびR2はそれぞれ独立してメチル基、エチル基、n−ブチル基からなる群から選択される低級アルキル基であり、Mはn価の金属イオンまたはケイ素である)
【請求項2】
前記Mは、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、銅、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ロジウム、オスミニウム、鉛、および錫からなる金属元素の群またはケイ素から選択されることを特徴とする請求項1に記載の光増感色素。
【請求項3】
前記Aは、無置換または置換されたエチレン、ブテン、ヘキセン、オクテン、デセン、ドデセン、エチン、ブチン、ヘキシン、フェニレン環、ナフタレン環、チオフェン環、ピロール環、フラン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、および1,2,3−トリアジン環からなる群から選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の光増感色素。
【請求項4】
前記アリールは、フェニレン環またはナフタレン環であり、前記へテロアリールは、チオフェン環、ピロール環、フラン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、1,2,3−トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、キナゾリン環、フタラジン環、プテリジン環、クマリン環、クロモン環、1,4−ベンゾジアゼピン環、インドール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾフラン環、プリン環、アクリジン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環からなる群から選択されるヘテロアリールであることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の光増感色素
【請求項5】
前記置換されたアリールまたは前記置換されたヘテロアリールは、分岐を含んでもよいC1〜20のアルキル、C1〜20のシクロアルキル、C1〜20のアルコキシ、およびハロゲンからなる群から選択される置換基により置換されることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の光増感色素。
【請求項6】
下記構造A〜Gのいずれかで表されるフタロシアニン錯体またはその塩である太陽電池用光増感色素。
【化2】



【請求項7】
請求項1〜のいずれか一項に記載の光増感色素を酸化物半導体上に吸着させたことを特徴とする酸化物半導体電極。
【請求項8】
請求項の酸化物半導体電極、透明電極、電解質および対電極を含む色素増感太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑色の新規光増感色素、ならびに該色素を含む金属酸化物半導体電極および該色素を含む色素増感太陽電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化石燃料の枯渇およびその燃焼による地球温暖化に伴い、これに替わる新エネルギーの開発が急務になってきている。太陽エネルギーは次世代の持続的発展を支えるに十分なポテンシャルを有するクリーンで環境にやさしいエネルギー源である。太陽エネルギーを電気に変換する方法としては、シリコン系の半導体太陽電池が開発されてきている。しかし、ここで使用されるシリコンは非常に高純度である必要があり、この精製工程に費やされる多大なエネルギーと複雑な工程のため高い製造コストが要求される。
【0003】
色素増感太陽電池は、比較的高い変換効率を有し、従来型の太陽電池と比べ低コストであるため、現在、学問的また営業的に広く注目されてきている。特に、1991年にグレッツェルらが報告したこの色素増感太陽電池は、光電変換効率が10〜11%に達してきている。これはナノチタニア粒子表面に色素を吸着することにより、可視光領域の光を吸収することを可能にするものであり、色素の役割は光捕集作用を有することから特に重要である。このような色素としては、N3と呼ばれるシス−ビス(イソチオシアナト)−ビス(2,2’−ビピリジン−4,4’−カルボキシレート)ルテニウム(II)、N719と呼ばれるシス−ビス(イソチオシアナト)−ビス(2,2’−ビピリジン−4,4’−カルボキシレート)ルテニウム(II)ビス(テトラn−ブチルアンモニウム)およびZ907と呼ばれるシス−ビス(イソチオシアナト)−(2,2’−ビピリジン−4,4’−カルボキシレート)−(2,2’−ビピリジン−4,4’−ジノニル)ルテニウム(II)がよく知られている。
【0004】
また、色素増感太陽電池は、シリコン系半導体太陽電池と異なり、複数の色素を用いることでセルの多色化が可能となる。セルの多色化により、より広域の波長の吸収が可能となって効率的なエネルギー変換が期待されることに加え、外観的に魅力的な製品を提供することが可能となる。
【0005】
従来、色素増感太陽電池に用いられてきた色素は、大部分が赤色を示すポリピリジンRu系色素であった(特許文献1〜4)。
【0006】
近年、ポリピリジン系以外の骨格を有する色素の開発が行われており、例えば、ポルフィリン系色素(特許文献5および6)やフタロシアニン系色素の利用なども試みられている(特許文献7および8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−272721号公報
【特許文献2】特開2003−212851号公報
【特許文献3】特開2005−47857号公報
【特許文献4】特開2005−120042号公報
【特許文献5】特願2012−027274号明細書
【特許文献6】特願2012−027276号明細書
【特許文献7】特許第4953658号公報
【特許文献8】特開2011−60669号公報
【特許文献9】国際公開第2012/014414号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、セルの多色化に寄与し、かつ良好な光電変換効率を有する新規な緑色光増感色素、これを酸化物半導体上に吸着させた金属酸化物半導体電極、および該酸化物半導体電極を用いた色素増感太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、下記式(1)の構造を有する化合物またはその塩が、良好な光電変換効率を有する緑色の太陽電池用光増感色素であることを見出し、本発明を完成するにいたった。
【0010】
【化1】
【0011】
(式(1)中、Aは無置換または置換基を有するアルケン、アルキン、アリールまたはヘテロアリールであり、nは0または1〜3の整数であり、RおよびRはそれぞれ独立してメチル基、エチル基、n−ブチル基からなる群から選択される低級アルキル基であり、Mはn価の金属イオンまたはケイ素である。)
【発明の効果】
【0012】
本発明の光増感色素を用いた太陽電池は、鮮やかな緑色の外観を示し、かつ良好な光電変換効率および耐久性を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の光増感色素を用いた太陽電池の構造である。
図2】本発明の光増感色素A、ならびに比較例1および2の吸収スペクトルである。
図3】本発明の光増感色素A〜E、ならびに比較例3および4の吸収スペクトルである。
図4】本発明の光増感色素A、ならびに比較例および2を用いた太陽電池の分光感度である。
図5】本発明の光増感色素A〜E、ならびに比較例3および4を用いた太陽電池の分光感度である。
図6】本発明の光増感色素A、ならびに比較例1および2を用いて作製した太陽電池の外観である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、光増感色素ならびにそれを用いた酸化物半導体電極および太陽電池に関する。以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明の単なる一例であって、当業者であれば、適宜設計変更可能である。
【0015】
(光増感色素)
本発明の光増感色素は、下記式(1)の構造を有するフタロシアニン錯体またはその塩である。
【0016】
【化2】
【0017】
(式(1)中、Aは無置換または置換基を有するアルケン、アルキン、アリールまたはヘテロアリールであり、nは0または1〜3の整数であり、RおよびRはそれぞれ独立してメチル基、エチル基、n−ブチル基からなる群から選択される低級アルキル基であり、Mはn価の金属イオンまたはケイ素である。)
本発明の光増感色素は、n価の中心元素Mが配位したフタロシアニン骨格を有する。
【0018】
前記式(1)中、Aは無置換または置換基を有するアルケン、アルキン、アリールまたはヘテロアリールであり、nは0または1〜3の整数である。前記Aのアルケンとしては、これらに限定されないが、エチレン、ブテン、ヘキセン、オクテン、デセン、ドデセンを含み、前記Aのアルキンとしては、これらに限定されないが、エチン、ブチン、ヘキシンを含む。前記Aのアリールとしては、これらに限定されないが、フェニレン環およびナフタレン環を含み、前記Aのへテロアリールとしては、チオフェン環、ピロール環、フラン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環などの5員環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、1,2,3−トリアジン環などの6員環を含む。好ましくは、単環式のアリールまたはヘテロアリールである。
【0019】
前記Aのアリールまたはヘテロアリールは、置換基として、分岐を含んでもよいC1〜20のアルキル、C1〜20のアルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲンを有してもよい。前記置換基は好ましくは電子供与性である。好ましくは、前記Aは一の置換基で置換される。
【0020】
前記式(1)中、RおよびRはそれぞれ独立してメチル基、エチル基、n−ブチル基からなる群から選択される低級アルキル基である。好ましくは、RおよびRはいずれもメチル基である。R1およびR2が低級アルキル基から選択されることにより、本発明の光増感色素は有機溶媒に溶解しやすく、取り扱いが容易となる。また、該光増感色素を合成する場合においても、溶解性および取り扱い性の向上により、R1およびR2に嵩高い置換基を有する場合に比べ、収率の向上が見込まれる。
【0021】
中心元素Mは、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、銅、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ロジウム、オスミニウム、鉛、および錫からなる金属元素の群またはケイ素から選択される。好ましくは、亜鉛である。
【0022】
式(1)で表されるフタロシアニン錯体またはその塩である本願発明の光増感色素は、例えば、以下の化合物A〜Gまたはその塩を含む。なお、本発明の光増感色素の製造方法に関しては、以下に示す実施例において具体的に詳述する。
【0023】
【化3】
【0024】
【化4】
【0025】
【化5】

【0026】
(金属酸化物半導体電極)
本発明は、さらに該光増感色素を用いた金属酸化物半導体電極に関する。本発明の金属酸化物半導体電極は、上述した本発明の光増感色素を金属酸化物半導体の電極の表面に吸着させたものである。この金属酸化物半導体電極は、好ましくは多孔質電極とする。これによって、前記電極の実質的な表面積を増大させることができ、前記電極への光増感色素の吸着量を増大させて、前記金属酸化物半導体電極を含む太陽電池の光電変換効率を増大させることができるようになる。
【0027】
本発明の金属酸化物半導体には、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、もしくはタンタルの酸化物、またはチタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、もしくはニオブ酸カリウムなどのぺロブスカイト構造を有する化合物を用いることができる。
【0028】
該光増感色素を金属酸化物半導体薄膜上に吸着させる方法としては、任意の公知の方法を用いることができる。たとえば、二酸化チタン等の金属酸化物半導体薄膜を本発明の光増感色素溶液に所定の温度で浸漬する方法(ディップ法、ローラ法、エヤーナイフ法など)や、該光増感色素溶液を金属酸化物半導体層状面に塗布する方法(ワイヤーバー法、アプリケーション法、スピン法、スプレー法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法など)を挙げることができる。
【0029】
(色素増感太陽電池)
本発明はさらに、透明電極1、上記金属酸化物半導体電極2、電解質3、および対電極4を含む色素増感太陽電池に関する(図1参照)。
【0030】
透明電極1は、透明基板上に透明導電層を形成して構成される(図示せず)。透明基板は、汎用のガラス基板、石英基板、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、およびポリエチレンなどの透明プラスチック基板を用いることができる。透明導電層は、酸化スズ、フッ素ドープ酸化スズ、ITO、ATO、酸化亜鉛、アルミドープ酸化亜鉛、またはこれらの表面に酸化スズもしくはフッ素ドープ酸化スズの皮膜を設けた光透過性の透明導電層から構成することができる。
【0031】
電解質3としては、固体状、および液体状のものを用いることができる。具体的には、ヨウ素系電解質、臭素系電解質、セレン系電解質、硫黄系電解質、キノン/ヒドロキノン系電解質、およびコバルト錯体系電解質を用いることができる。これらに限定されないが、I、LiI、ジメチルプロピルイミダゾリウムヨージド、t−ブチルピリジン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイド等を、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、3−メトキシプロピオニル、炭酸プロピレン等の電気的に不活性な有機溶剤に溶かした溶液等が好適に用いられる。
【0032】
また、電解質組成物中の成分の揮発を低減する目的で、上述した電解質組成物にゲル化剤またはポリマー架橋モノマーを溶解させ、ゲル状電解質として使用してもよい。さらに上記電解質と可塑剤とを用いてポリマーに溶解させ、可塑剤を揮発除去することで全固体型の色素増感太陽電池を形成してもよい。
【0033】
対電極4は、例えば、チタン、Al、SUS等の金属基板、ガラス基板またはプラスチック基板の上に形成される白金、カーボン、ニッケル、クロム、ステンレス、フッ素ドープ酸化スズおよびITOなどの導電層から構成される。また、対電極4は白金あるいはカーボンなどの触媒層(図示せず)を含んでもよく、さらに白金は硫黄材料で処理されていてもよい(例えば、特許文献9参照)。
【実施例】
【0034】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0035】
(化合物A(M=Zn)の合成)
化合物1の合成
【0036】
【化6】
【0037】
窒素雰囲気下、4,5−ジクロロフタロニトリル(19.0g、96.4mmol)、2,6−ジメチルフェノール(35.3g、289mmol)、炭酸カリウム(46.6g、337mmol)をDMF(190mL)に加え、100℃で16時間攪拌した。冷却後、水に分散し、析出した固体を濾取、減圧乾燥し粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。ついで酢酸エチルを用いて再結晶を行い、化合物1(20.6g、55.4mmol、収率58%、白色固体)を得た。
【0038】
化合物2の合成
【0039】
【化7】
【0040】
窒素雰囲気下、4−ヨードフタロニトリル(11.1g、43.7mmol)、4−(メトキシカルボニル)フェニルボロン酸(15.7g、87.2mmol)、炭酸ナトリウム(18.5g、175mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(4.96g、4.3mmol)をDMF(480mL)と水(155mL)の混合溶液に加え、90℃で2時間攪拌した。冷却後、酢酸エチルおよび水を加え、有機層を抽出した。抽出した有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物2(7.58g、28.9mmol、収率66%、白色固体)を得た。
【0041】
化合物A(M=Zn)の合成
【0042】
【化8】
【0043】
窒素雰囲気下、化合物1(34.15g、92.7mmol)、化合物2(8.11g、30.9mol)、塩化亜鉛(8.42g、61.8mmol)を2−ジメチルアミノエタノール1Lに加え、140℃で4時間攪拌した。冷却後、減圧濃縮し、残渣にメタノールを加えた。析出した固体を濾取、減圧乾燥し、粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、メチルエステル中間体を得た。
【0044】
該中間体をTHF600mL、エタノール100mLおよび1M水酸化ナトリウム水溶液100mLの混合溶液に溶解し、1時間加熱還流した。冷却後、塩酸で中和し、有機溶媒を減圧留去後、残渣をクロロホルムで抽出した。抽出した有機層を水洗し、硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。ついで酢酸エチルを用いて再結晶を行い、化合物A(M=Zn)(4.66g、3.28mmol、収率11%、緑色固体、TOF−MS m/z1417[M+H])を得た。
【0045】
(化合物B(M=Zn)の合成)
4−ブロモ−2−フルオロ安息香酸メチルの合成
【0046】
【化9】
【0047】
窒素雰囲気下、4-ブロモ-2-フルオロ安息香酸(5.00g、22.8mmol)を脱水メタノール50mLに溶解した。これに濃硫酸2mLを加えて4時間加熱還流した。冷却後、反応液を酢酸エチル及び冷水に希釈後、分液した。有機層を水洗し、減圧濃縮し、4−ブロモ−2−フルオロ安息香酸メチル(5.12g、22.0mmol、収率96%、白色固体)を得た。
【0048】
化合物3の合成
【0049】
【化10】
【0050】
窒素雰囲気下、4−ブロモフタロニトリル(30g、144.9mmol)、ビス(ピナコラート)ジボロン(40.5g、159.4mmol)、酢酸カリウム(42.7g、434.7mmol)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン付加物(4.70g、5.76mmol)を脱水DMF300mLに加え、80℃で7時間撹拌した。冷却後、反応液を酢酸エチル及び冷水に希釈後、分液した。有機層を水洗し、減圧濃縮し、粗生成物を得た。これを酢酸エチルに溶解し、ヘキサンを加えて析出した不溶物をろ別後、ろ液を減圧留去して化合物3(19.5g,76.7mmol、収率53%、黄褐色固体)を得た。
【0051】
化合物2bの合成
【0052】
【化11】
【0053】
窒素雰囲気下、4−ブロモ−2−フルオロ安息香酸メチル(0.33g、1.29mmoll)、化合物3(0.30g、1.29mmoll)、酢酸カリウム(0.38g、3.87mmol)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン付加物(42mg、0.052mmol)を脱水DMF10mLに加え、80℃で3時間撹拌した。冷却後、水に分散し、析出した固体を濾取、減圧乾燥し粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物2b(0.13g、0.46mmol、収率36%、白色固体)を得た。
【0054】
化合物B(M=Zn)の合成
【0055】
【化12】
【0056】
窒素雰囲気下、化合物2b(0.13g、0.46mmol)、化合物1(0.51g、1.38mmol)、塩化亜鉛(0.13g、0.92mmol)を2−ジメチルアミノエタノール10mLに加え、140℃で2時間撹拌した。冷却後、減圧濃縮し、残渣にメタノールを加えた。析出した固体を濾取、減圧乾燥し、粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、メチルエステル中間体を得た。
【0057】
該中間体をTHF10mL、エタノール2mL、1M水酸化ナトリウム水溶液0.5mLの混合溶液に溶解し、1時間加熱還流した。冷却後、塩酸で中和し、有機溶媒を減圧留去後、残渣をクロロホルムで抽出した。抽出した有機層を水洗し、硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物B(M=Zn)(70mg、0.048mmol、収率10%、緑色固体、TOF−MS m/z1434[M])を得た。
【0058】
(化合物C(M=Zn)の合成)
4−ブロモ−2−クロロ安息香酸メチルの合成
【0059】
【化13】
【0060】
窒素雰囲気下、4−ブロモ−2−クロロ安息香酸(5.00g、21.2mmol)を脱水メタノール50mL、に溶解した。これに濃硫酸2mLを加えて4−ブロモ−2−フルオロ安息香酸メチルの合成と同様の反応を行い、4−ブロモ−2−クロロ安息香酸メチル(4.84g、19.4mmol、収率92%、赤橙色透明オイル)を得た。
【0061】
化合物2cの合成
【0062】
【化14】
【0063】
窒素雰囲気下、4−ブロモ−2−クロロ安息香酸メチル(1.00g、4.01mmol)、化合物3(1.02g、4.01mmol)、酢酸カリウム(1.18g、12.0mmol)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン付加物(0.13g、0.16mmol)を脱水DMF30mLに加え、化合物2bの合成と同様の反応を行い、化合物2c(0.77g、2.60mmol、収率65%、白色固体)を得た。
【0064】
化合物C(M=Zn)の合成
【0065】
【化15】
【0066】
窒素雰囲気下、化合物2c(0.20g、0.674mmol)、化合物1(0.75g、2.02mmol)、塩化亜鉛(0.18g、1.35mmol)を2−メチルアミノエタノール10mLに加え、化合物Bの合成と同様の反応を行い、化合物C(84mg、0.058mmol、収率8.6%、緑色固体、TOF−MS m/z1452[M])を得た。
【0067】
(化合物D(M=Zn、R=H)の合成)
化合物2dの合成
【0068】
【化16】
【0069】
窒素雰囲気下、4−ブロモ−2−メトキシ安息香酸メチル(1.00g、4.08mmol)、化合物3(1.25g、4.90mmol)、酢酸カリウム(1.20g、12.2mmol)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン付加物(0.13g、0.16mmol)を脱水DMF17mLに加え、化合物2bの合成と同様の反応を行い、化合物2d(0.43g、1.47mmol、収率36%、白色固体)を得た。
【0070】
化合物D(M=Zn、R=H)の合成
【0071】
【化17】
【0072】
窒素雰囲気下、化合物2d(0.20g、0.684mmol)、化合物1(0.76g、2.05mmol)、塩化亜鉛(0.19g、1.36mmol)を2−ジメチルアミノエタノール10mLに加え、化合物Bの合成と同様の反応を行い、メチルエーテルおよびメチルエステルを同時に切断し、o−ヒドロキシル体の化合物D(M=Zn、R=H)(40mg、0.028mmol、収率4.0%、緑色固体、TOF−MS m/z1435[M])を得た。
【0073】
(化合物E(M=Zn)の合成)
4-ブロモ-3-フルオロ安息香酸メチルの合成
【0074】
【化18】
【0075】
窒素雰囲気下、4-ブロモ-3-フルオロ安息香酸(5.00g、22.8mmol)を脱水メタノール50mLに溶解した。これに濃硫酸2mLを加えて4−ブロモ−2−フルオロ安息香酸メチルの合成と同様の反応を行い、4-ブロモ-3-フルオロ安息香酸メチル5.10g、22.0mmol、収率96%、白色固体)を得た。
【0076】
化合物2eの合成
【0077】
【化19】
【0078】
窒素雰囲気下、4-ブロモ-3-フルオロ安息香酸メチル4.90g、21.0mmol)、化合物1(5.34g、21.0mmol)、酢酸カリウム(6.20g、63.1mmol)、1,1’−-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン付加物(700mg、0.857mmol)を脱水DMF200mLに加え、化合物2bの合成と同様の反応を行い、化合物2eの粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物2e(1.35g、4.82mmol、収率33%、白色固体)を得た。
【0079】
化合物E(M=Zn)の合成
【0080】
【化20】
【0081】
窒素雰囲気下、化合物2e(0.20g、0.71mmol)、化合物1(0.79g、2.14mmol)、塩化亜鉛(0.19g、1.43mmol)を2-ジメチルアミノエタノール10mLに加え、化合物Bの合成と同様の反応を行い、化合物E(82mg、0.057mmol、収率8.0%、緑色固体、TOF−MS m/z1437[M])を得た。
【0082】
(比較例の合成)
比較例として、以下の化合物を合成した。
【0083】
【化21】

【0084】
(比較例1の合成)
5,10,15‐トリメシチル‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリンの合成
【0085】
【化22】
【0086】
反応容器に、ピロール(2.45g)、2,4,6-トリメチルベンズアルデヒド(4.06g)、テレフタルアルデヒド酸メチル(1.50g)、クロロホルム(540ml)とエタノール(7ml)を加え、約10℃に冷却した。そこへ、三フッ化ホウ素(1.43g)を滴下し、そのまま2時間撹拌した。この溶液に、2,3‐ジクロロ‐5,6‐ジシアノ‐1,4‐ベンゾキノン(6.22g)を加え、さらに1時間撹拌した。反応液をセライトとシリカゲルに通し、ろ液を濃縮して粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム/ヘキサン=3/2)により展開分離し、生成物(5,10,15‐トリメシチル‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン、1.13g)を得た。
【0087】
5,10,15‐トリメシチル‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体の合成
【0088】
【化23】
【0089】
5,10,15‐トリメシチル‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン(0.60g)をクロロホルム(70ml)に溶解させた。そこへ、メタノール(20ml)に溶解させた酢酸亜鉛二水和物(1.98g)を滴下した。反応終了をTLCで確認後、水を加えて分液した。有機層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去し、粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム)で展開分離し、紫色生成物(5,10,15‐トリメシチル‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体、0.60g)を得た。
【0090】
5,10,15‐トリメシチル‐20‐(4‐カルボキシルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体の合成
【0091】
【化24】
【0092】
5,10,15‐トリメシチル‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体(0.60g)をTHF(60ml)と水(20ml)に溶解させた。そこへ48%水酸化ナトリウム(2.0g)を加え、原料が無くなるまで約68℃で加熱した。反応終了後、THFを留去した。残渣に3%ギ酸水を加え、弱酸性にした。沈殿物を回収し、シリカゲルカラム(クロロホルム→クロロホルム/THF=5/1)で展開分離して、紫色生成物(5,10,15‐トリメシチル‐20‐(4‐カルボキシルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体、0.45g)を得た。
H‐NMR(δ/ppm,CDCl,400MHz)1.85(s,18H),2.64(s,9H),7.29(s,6H),8.37(s,2H),8.51(s,2H),8.78‐8.83(m,8H)
【0093】
(比較例2の合成)
2‐ホルミル‐5‐ヘキシルチオフェンの合成
【0094】
【化25】
【0095】
2‐ヘキシルチオフェン(20.0g)と脱水THF(100ml)を入れた反応容器を、−10℃まで冷却し、そこへn‐ブチルリチウム(90ml)を滴下した。2時間後、DMF(18ml)をゆっくり滴下した。この溶液を、10℃で1時間撹拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液を滴下し、ヘキサンで抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去して得られた油状物を、シリカゲルカラム(クロロホルム/ヘプタン=1/1)により展開分離し、生成物(2‐ホルミル‐5‐ヘキシルチオフェン、22.8g)を得た。
【0096】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリンの合成
【0097】
【化26】
【0098】
反応容器に、ピロール(2.73g)、2‐ホルミル‐5‐ヘキシルチオフェン(6.0g)、テレフタルアルデヒド酸メチル(1.67g)、クロロホルム(1500ml)とエタノール(6ml)を加え、約10℃に冷却した。そこへ、三フッ化ホウ素(1.45g)を滴下し、そのまま2時間撹拌した。この溶液に、2,3‐ジクロロ‐5,6‐ジシアノ‐1,4‐ベンゾキノン(6.94g)を加え、さらに1時間撹拌した。反応液をセライトとシリカゲルに通し、ろ液を濃縮して粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム/ヘキサン=3/1)により展開分離し、生成物(5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン、1.43g)を得た。
【0099】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体の合成
【0100】
【化27】
【0101】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン(1.35g)をクロロホルム(160ml)に溶解させた。そこへ、メタノール(38ml)に溶解させた酢酸亜鉛二水和物(3.77g)を滴下した。反応終了をTLCで確認後、水を加えて分液した。有機層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去し、粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム)で展開分離し、紫色生成物(5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体、1.53g)を得た。
【0102】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐カルボキシルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体の合成
【0103】
【化28】
【0104】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体(1.40g)をTHF(210ml)と水(70ml)に溶解させた。そこへ48%水酸化ナトリウム(7.0g)を加え、原料が無くなるまで約68℃で加熱した。反応終了後、THFを留去した。残渣に3%ギ酸水を加え、弱酸性にした。沈殿物を回収し、シリカゲルカラム(クロロホルム→クロロホルム/THF=5/1)で展開分離して、紫色生成物(5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐カルボキシルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体、1.27g)を得た。
H‐NMR(δ/ppm,CDCl,400MHz)0.98(t,9H),1.45(m,12H),1.61(quin,6H),1.96(quin,6H),3.14(t,6H),7.17(d,3H),7.71(d,3H),8.35(d,2H),8.53(d,2H),8.89(d,2H),9.23(d,2H),9.24(s,4H)
【0105】
(比較例3の合成)
化合物2sの合成
【0106】
【化29】
【0107】
窒素雰囲気下、4-ブロモフタロニトリル(0.28g、1.36mmol)、2-ニトロ-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)安息香酸メチル(0.50g、1.63mmol)、酢酸カリウム(0.40g、4.08mmol)、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン付加物(41mg、0.05mmol)を脱水DMF15mLに加え、化合物2bの合成と同様の反応を行い、化合物2s(0.36g、1.17mmol、収率86%、白色固体)を得た。
【0108】
比較例3の合成
【0109】
【化30】
【0110】
窒素雰囲気下、化合物1(0.54g、1.47mmol)、化合物2s(0.15g、0.49mmol)、塩化亜鉛(0.13g、0.98mmol)を2-ジメチルアミノエタノール10mLに加え、化合物Bの合成と同様の反応を行い、比較例3(19mg、0.013mol、収率3%、緑色固体、TOF−MS m/Z1462[M+H])を得た。
【0111】
(比較例4の合成)
4-ブロモ-2,6-ジフルオロ安息香酸メチルの合成
【0112】
【化31】
【0113】
窒素雰囲気下、4-ブロモ-2,6-ジフルオロ安息香酸(1.00g、4.22mmol)を脱水メタノール20mLに溶解した。これに濃硫酸0.5mLを加えて4−ブロモ−2−フルオロ安息香酸メチルの合成と同様の反応を行い、4-ブロモ-2,6-ジフルオロ安息香酸メチル(0.64g、2.55mmol、収率60%、淡黄色固体)を得た。
【0114】
化合物2tの合成
【0115】
【化32】
【0116】
窒素雰囲気下、4-ブロモ-2,6-ジフルオロ安息香酸メチル(0.64g、2.55mmol)、化合物3(0.78g、3.06mmol)、酢酸カリウム(0.75g、7.65mmol)、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン付加物(82mg、0.10mmol)を脱水DMF10mLに加え、化合物2bの合成と同様の反応を行い、化合物2t(0.42g、1.41mmol、収率55%、白色固体)を得た。
【0117】
比較例4の合成
【0118】
【化33】
【0119】
窒素雰囲気下、化合物1(0.74g、2.01mmol)、化合物2t(0.20g、0.67mmol)、塩化亜鉛(0.18g、1.34mmol)を2-ジメチルアミノエタノール15mLに加え、化合物Bの合成と同様の反応を行い、比較例4(79mg、0.054mmol、収率8%、緑色固体、TOF−MS m/Z1455[M])を得た。
【0120】
(紫外吸収スペクトルの測定)
上記合成例により調製した化合物Aについて、DMF溶媒を用いて濃度0.003mMの溶液を調製し、分光光度計(日本分光株式会社製 JASCO V−670)を用いて吸収スペクトルを測定した。結果を図2に示す。
【0121】
比較例1および2についても、それぞれDMF溶媒を用いて濃度0.015mMの溶液を調製し、分光光度計(SHIMADZU UVmini1240)を用いて吸収スペクトルを測定した。結果を図2に示す。
【0122】
上記化合物Aと同様に、化合物B〜Eならびに比較例3および4について、DMF溶媒を用いて濃度0.003mMの溶液を調製し、吸収スペクトルを測定した。結果を図3に示す。
【0123】
(色素増感太陽電池の作製)
(1)以下の手順により、上記合成例により調製した各種化合物A〜Eおよび比較例1〜4を用いた色素増感太陽電池を作製した。
【0124】
i. 基板(フッ素ドープ酸化スズ膜付ガラス板、35mm×33mm)上の1辺1cmの正方形面積部分にスクリーン印刷により酸化チタンペースト[触媒化成製PST−21NR]を膜厚8μmにスクリーン印刷し、乾燥後、その上にさらに酸化チタンペースト[触媒化成製PST−400C]を膜厚4μmにスクリーン印刷した。これを500℃で焼成することで、発電層を形成した。
【0125】
ii. 前記発電層を形成した電極を色素溶液[濃度:0.1mM、溶媒:エタノール]に室温で一晩浸漬することで、色素を前記発電層の酸化チタン上に担持させアノード電極を得た。
【0126】
iii. 上記アノード電極の発電層の周囲に接着剤を施し、このアノード電極と、別途用意した電解液注入孔を有するチオアセトアミドで処理した白金被覆チタン板(カソード電極)とを、該接着剤により接着し、両電極が50μm程度の一定間隔を置いて平行に配置されるようにした。
【0127】
iv. 次いで、電解液注入口より電解液を注入した。ここで、用いた電解液は、ヨウ素0.1M、ヨウ化リチウム0.1M、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウムヨウ化物0.8M、N−メチルベンゾイミダゾール0.5M、3−メトキシプロピオニトリルを溶媒とする溶液を用いた。
【0128】
v. 接着剤を用いて電解液注入孔を封止し、アノード電極上に端子取り出しのためのハンダを塗布して実験用セルを完成させた。
【0129】
(分光感度の測定)
作製した太陽電池セルの分光感度を分光感度測定装置(分光計器株式会社製CEP−2000)で測定した。結果を図4および5に示す。また、これらの太陽電池セルの外観を図6に示す。
【0130】
(性能試験)
上記のようにして得られた色素増感太陽電池につきその性能を評価した。
【0131】
作成した各セルを、AM1.5,1SUN(100mW/cm)の照射条件下でセルの変換効率を測定した。結果を表1に示す。
【0132】
【表1】
【0133】
なお光電変換効率は下記式により計算した。
光電変換効率(%)=
100×[(短絡電流密度×開放電圧×曲線因子)/(照射太陽光エネルギー)]
上記表1のとおり、本発明の光増感色素を用いて作製した色素増感太陽電池は、高い光電変換効率を示し、かつ鮮やかな緑色のセルを提供することができた。
【符号の説明】
【0134】
1 透明電極
2 金属酸化物半導体電極
3 電解質
4 対電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6