【実施例】
【0034】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0035】
(化合物A(M=Zn)の合成)
化合物1の合成
【0036】
【化6】
【0037】
窒素雰囲気下、4,5−ジクロロフタロニトリル(19.0g、96.4mmol)、2,6−ジメチルフェノール(35.3g、289mmol)、炭酸カリウム(46.6g、337mmol)をDMF(190mL)に加え、100℃で16時間攪拌した。冷却後、水に分散し、析出した固体を濾取、減圧乾燥し粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。ついで酢酸エチルを用いて再結晶を行い、化合物1(20.6g、55.4mmol、収率58%、白色固体)を得た。
【0038】
化合物2の合成
【0039】
【化7】
【0040】
窒素雰囲気下、4−ヨードフタロニトリル(11.1g、43.7mmol)、4−(メトキシカルボニル)フェニルボロン酸(15.7g、87.2mmol)、炭酸ナトリウム(18.5g、175mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(4.96g、4.3mmol)をDMF(480mL)と水(155mL)の混合溶液に加え、90℃で2時間攪拌した。冷却後、酢酸エチルおよび水を加え、有機層を抽出した。抽出した有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物2(7.58g、28.9mmol、収率66%、白色固体)を得た。
【0041】
化合物A(M=Zn)の合成
【0042】
【化8】
【0043】
窒素雰囲気下、化合物1(34.15g、92.7mmol)、化合物2(8.11g、30.9mol)、塩化亜鉛(8.42g、61.8mmol)を2−ジメチルアミノエタノール1Lに加え、140℃で4時間攪拌した。冷却後、減圧濃縮し、残渣にメタノールを加えた。析出した固体を濾取、減圧乾燥し、粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、メチルエステル中間体を得た。
【0044】
該中間体をTHF600mL、エタノール100mLおよび1M水酸化ナトリウム水溶液100mLの混合溶液に溶解し、1時間加熱還流した。冷却後、塩酸で中和し、有機溶媒を減圧留去後、残渣をクロロホルムで抽出した。抽出した有機層を水洗し、硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。ついで酢酸エチルを用いて再結晶を行い、化合物A(M=Zn)(4.66g、3.28mmol、収率11%、緑色固体、TOF−MS m/z1417[M+H]
+)を得た。
【0045】
(化合物B(M=Zn)の合成)
4−ブロモ−2−フルオロ安息香酸メチルの合成
【0046】
【化9】
【0047】
窒素雰囲気下、4-ブロモ-2-フルオロ安息香酸(5.00g、22.8mmol)を脱水メタノール50mLに溶解した。これに濃硫酸2mLを加えて4時間加熱還流した。冷却後、反応液を酢酸エチル及び冷水に希釈後、分液した。有機層を水洗し、減圧濃縮し、4−ブロモ−2−フルオロ安息香酸メチル(5.12g、22.0mmol、収率96%、白色固体)を得た。
【0048】
化合物3の合成
【0049】
【化10】
【0050】
窒素雰囲気下、4−ブロモフタロニトリル(30g、144.9mmol)、ビス(ピナコラート)ジボロン(40.5g、159.4mmol)、酢酸カリウム(42.7g、434.7mmol)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン付加物(4.70g、5.76mmol)を脱水DMF300mLに加え、80℃で7時間撹拌した。冷却後、反応液を酢酸エチル及び冷水に希釈後、分液した。有機層を水洗し、減圧濃縮し、粗生成物を得た。これを酢酸エチルに溶解し、ヘキサンを加えて析出した不溶物をろ別後、ろ液を減圧留去して化合物3(19.5g,76.7mmol、収率53%、黄褐色固体)を得た。
【0051】
化合物2bの合成
【0052】
【化11】
【0053】
窒素雰囲気下、4−ブロモ−2−フルオロ安息香酸メチル(0.33g、1.29mmoll)、化合物3(0.30g、1.29mmoll)、酢酸カリウム(0.38g、3.87mmol)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン付加物(42mg、0.052mmol)を脱水DMF10mLに加え、80℃で3時間撹拌した。冷却後、水に分散し、析出した固体を濾取、減圧乾燥し粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物2b(0.13g、0.46mmol、収率36%、白色固体)を得た。
【0054】
化合物B(M=Zn)の合成
【0055】
【化12】
【0056】
窒素雰囲気下、化合物2b(0.13g、0.46mmol)、化合物1(0.51g、1.38mmol)、塩化亜鉛(0.13g、0.92mmol)を2−ジメチルアミノエタノール10mLに加え、140℃で2時間撹拌した。冷却後、減圧濃縮し、残渣にメタノールを加えた。析出した固体を濾取、減圧乾燥し、粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、メチルエステル中間体を得た。
【0057】
該中間体をTHF10mL、エタノール2mL、1M水酸化ナトリウム水溶液0.5mLの混合溶液に溶解し、1時間加熱還流した。冷却後、塩酸で中和し、有機溶媒を減圧留去後、残渣をクロロホルムで抽出した。抽出した有機層を水洗し、硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物B(M=Zn)(70mg、0.048mmol、収率10%、緑色固体、TOF−MS m/z1434[M]
+)を得た。
【0058】
(化合物C(M=Zn)の合成)
4−ブロモ−2−クロロ安息香酸メチルの合成
【0059】
【化13】
【0060】
窒素雰囲気下、4−ブロモ−2−クロロ安息香酸(5.00g、21.2mmol)を脱水メタノール50mL、に溶解した。これに濃硫酸2mLを加えて4−ブロモ−2−フルオロ安息香酸メチルの合成と同様の反応を行い、4−ブロモ−2−クロロ安息香酸メチル(4.84g、19.4mmol、収率92%、赤橙色透明オイル)を得た。
【0061】
化合物2cの合成
【0062】
【化14】
【0063】
窒素雰囲気下、4−ブロモ−2−クロロ安息香酸メチル(1.00g、4.01mmol)、化合物3(1.02g、4.01mmol)、酢酸カリウム(1.18g、12.0mmol)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン付加物(0.13g、0.16mmol)を脱水DMF30mLに加え、化合物2bの合成と同様の反応を行い、化合物2c(0.77g、2.60mmol、収率65%、白色固体)を得た。
【0064】
化合物C(M=Zn)の合成
【0065】
【化15】
【0066】
窒素雰囲気下、化合物2c(0.20g、0.674mmol)、化合物1(0.75g、2.02mmol)、塩化亜鉛(0.18g、1.35mmol)を2−メチルアミノエタノール10mLに加え、化合物Bの合成と同様の反応を行い、化合物C(84mg、0.058mmol、収率8.6%、緑色固体、TOF−MS m/z1452[M]
+)を得た。
【0067】
(化合物D(M=Zn、R=H)の合成)
化合物2dの合成
【0068】
【化16】
【0069】
窒素雰囲気下、4−ブロモ−2−メトキシ安息香酸メチル(1.00g、4.08mmol)、化合物3(1.25g、4.90mmol)、酢酸カリウム(1.20g、12.2mmol)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン付加物(0.13g、0.16mmol)を脱水DMF17mLに加え、化合物2bの合成と同様の反応を行い、化合物2d(0.43g、1.47mmol、収率36%、白色固体)を得た。
【0070】
化合物D(M=Zn、R=H)の合成
【0071】
【化17】
【0072】
窒素雰囲気下、化合物2d(0.20g、0.684mmol)、化合物1(0.76g、2.05mmol)、塩化亜鉛(0.19g、1.36mmol)を2−ジメチルアミノエタノール10mLに加え、化合物Bの合成と同様の反応を行い、メチルエーテルおよびメチルエステルを同時に切断し、o−ヒドロキシル体の化合物D(M=Zn、R=H)(40mg、0.028mmol、収率4.0%、緑色固体、TOF−MS m/z1435[M]
+)を得た。
【0073】
(化合物E(M=Zn)の合成)
4-ブロモ-3-フルオロ安息香酸メチルの合成
【0074】
【化18】
【0075】
窒素雰囲気下、4-ブロモ-3-フルオロ安息香酸(5.00g、22.8mmol)を脱水メタノール50mLに溶解した。これに濃硫酸2mLを加えて4−ブロモ−2−フルオロ安息香酸メチルの合成と同様の反応を行い、4-ブロモ-3-フルオロ安息香酸メチル5.10g、22.0mmol、収率96%、白色固体)を得た。
【0076】
化合物2eの合成
【0077】
【化19】
【0078】
窒素雰囲気下、4-ブロモ-3-フルオロ安息香酸メチル4.90g、21.0mmol)、化合物1(5.34g、21.0mmol)、酢酸カリウム(6.20g、63.1mmol)、1,1’−-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン付加物(700mg、0.857mmol)を脱水DMF200mLに加え、化合物2bの合成と同様の反応を行い、化合物2eの粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物2e(1.35g、4.82mmol、収率33%、白色固体)を得た。
【0079】
化合物E(M=Zn)の合成
【0080】
【化20】
【0081】
窒素雰囲気下、化合物2e(0.20g、0.71mmol)、化合物1(0.79g、2.14mmol)、塩化亜鉛(0.19g、1.43mmol)を2-ジメチルアミノエタノール10mLに加え、化合物Bの合成と同様の反応を行い、化合物E(82mg、0.057mmol、収率8.0%、緑色固体、TOF−MS m/z1437[M]
+)を得た。
【0082】
(比較例の合成)
比較例として、以下の化合物を合成した。
【0083】
【化21】
【0084】
(比較例1の合成)
5,10,15‐トリメシチル‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリンの合成
【0085】
【化22】
【0086】
反応容器に、ピロール(2.45g)、2,4,6-トリメチルベンズアルデヒド(4.06g)、テレフタルアルデヒド酸メチル(1.50g)、クロロホルム(540ml)とエタノール(7ml)を加え、約10℃に冷却した。そこへ、三フッ化ホウ素(1.43g)を滴下し、そのまま2時間撹拌した。この溶液に、2,3‐ジクロロ‐5,6‐ジシアノ‐1,4‐ベンゾキノン(6.22g)を加え、さらに1時間撹拌した。反応液をセライトとシリカゲルに通し、ろ液を濃縮して粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム/ヘキサン=3/2)により展開分離し、生成物(5,10,15‐トリメシチル‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン、1.13g)を得た。
【0087】
5,10,15‐トリメシチル‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体の合成
【0088】
【化23】
【0089】
5,10,15‐トリメシチル‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン(0.60g)をクロロホルム(70ml)に溶解させた。そこへ、メタノール(20ml)に溶解させた酢酸亜鉛二水和物(1.98g)を滴下した。反応終了をTLCで確認後、水を加えて分液した。有機層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去し、粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム)で展開分離し、紫色生成物(5,10,15‐トリメシチル‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体、0.60g)を得た。
【0090】
5,10,15‐トリメシチル‐20‐(4‐カルボキシルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体の合成
【0091】
【化24】
【0092】
5,10,15‐トリメシチル‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体(0.60g)をTHF(60ml)と水(20ml)に溶解させた。そこへ48%水酸化ナトリウム(2.0g)を加え、原料が無くなるまで約68℃で加熱した。反応終了後、THFを留去した。残渣に3%ギ酸水を加え、弱酸性にした。沈殿物を回収し、シリカゲルカラム(クロロホルム→クロロホルム/THF=5/1)で展開分離して、紫色生成物(5,10,15‐トリメシチル‐20‐(4‐カルボキシルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体、0.45g)を得た。
1H‐NMR(δ
H/ppm,CDCl
3,400MHz)1.85(s,18H),2.64(s,9H),7.29(s,6H),8.37(s,2H),8.51(s,2H),8.78‐8.83(m,8H)
【0093】
(比較例2の合成)
2‐ホルミル‐5‐ヘキシルチオフェンの合成
【0094】
【化25】
【0095】
2‐ヘキシルチオフェン(20.0g)と脱水THF(100ml)を入れた反応容器を、−10℃まで冷却し、そこへn‐ブチルリチウム(90ml)を滴下した。2時間後、DMF(18ml)をゆっくり滴下した。この溶液を、10℃で1時間撹拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液を滴下し、ヘキサンで抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去して得られた油状物を、シリカゲルカラム(クロロホルム/ヘプタン=1/1)により展開分離し、生成物(2‐ホルミル‐5‐ヘキシルチオフェン、22.8g)を得た。
【0096】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリンの合成
【0097】
【化26】
【0098】
反応容器に、ピロール(2.73g)、2‐ホルミル‐5‐ヘキシルチオフェン(6.0g)、テレフタルアルデヒド酸メチル(1.67g)、クロロホルム(1500ml)とエタノール(6ml)を加え、約10℃に冷却した。そこへ、三フッ化ホウ素(1.45g)を滴下し、そのまま2時間撹拌した。この溶液に、2,3‐ジクロロ‐5,6‐ジシアノ‐1,4‐ベンゾキノン(6.94g)を加え、さらに1時間撹拌した。反応液をセライトとシリカゲルに通し、ろ液を濃縮して粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム/ヘキサン=3/1)により展開分離し、生成物(5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン、1.43g)を得た。
【0099】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体の合成
【0100】
【化27】
【0101】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン(1.35g)をクロロホルム(160ml)に溶解させた。そこへ、メタノール(38ml)に溶解させた酢酸亜鉛二水和物(3.77g)を滴下した。反応終了をTLCで確認後、水を加えて分液した。有機層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去し、粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム)で展開分離し、紫色生成物(5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体、1.53g)を得た。
【0102】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐カルボキシルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体の合成
【0103】
【化28】
【0104】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体(1.40g)をTHF(210ml)と水(70ml)に溶解させた。そこへ48%水酸化ナトリウム(7.0g)を加え、原料が無くなるまで約68℃で加熱した。反応終了後、THFを留去した。残渣に3%ギ酸水を加え、弱酸性にした。沈殿物を回収し、シリカゲルカラム(クロロホルム→クロロホルム/THF=5/1)で展開分離して、紫色生成物(5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐カルボキシルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体、1.27g)を得た。
1H‐NMR(δ
H/ppm,CDCl
3,400MHz)0.98(t,9H),1.45(m,12H),1.61(quin,6H),1.96(quin,6H),3.14(t,6H),7.17(d,3H),7.71(d,3H),8.35(d,2H),8.53(d,2H),8.89(d,2H),9.23(d,2H),9.24(s,4H)
【0105】
(比較例3の合成)
化合物2sの合成
【0106】
【化29】
【0107】
窒素雰囲気下、4-ブロモフタロニトリル(0.28g、1.36mmol)、2-ニトロ-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)安息香酸メチル(0.50g、1.63mmol)、酢酸カリウム(0.40g、4.08mmol)、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン付加物(41mg、0.05mmol)を脱水DMF15mLに加え、化合物2bの合成と同様の反応を行い、化合物2s(0.36g、1.17mmol、収率86%、白色固体)を得た。
【0108】
比較例3の合成
【0109】
【化30】
【0110】
窒素雰囲気下、化合物1(0.54g、1.47mmol)、化合物2s(0.15g、0.49mmol)、塩化亜鉛(0.13g、0.98mmol)を2-ジメチルアミノエタノール10mLに加え、化合物Bの合成と同様の反応を行い、比較例3(19mg、0.013mol、収率3%、緑色固体、TOF−MS m/Z1462[M+H]
+)を得た。
【0111】
(比較例4の合成)
4-ブロモ-2,6-ジフルオロ安息香酸メチルの合成
【0112】
【化31】
【0113】
窒素雰囲気下、4-ブロモ-2,6-ジフルオロ安息香酸(1.00g、4.22mmol)を脱水メタノール20mLに溶解した。これに濃硫酸0.5mLを加えて4−ブロモ−2−フルオロ安息香酸メチルの合成と同様の反応を行い、4-ブロモ-2,6-ジフルオロ安息香酸メチル(0.64g、2.55mmol、収率60%、淡黄色固体)を得た。
【0114】
化合物2tの合成
【0115】
【化32】
【0116】
窒素雰囲気下、4-ブロモ-2,6-ジフルオロ安息香酸メチル(0.64g、2.55mmol)、化合物3(0.78g、3.06mmol)、酢酸カリウム(0.75g、7.65mmol)、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン付加物(82mg、0.10mmol)を脱水DMF10mLに加え、化合物2bの合成と同様の反応を行い、化合物2t(0.42g、1.41mmol、収率55%、白色固体)を得た。
【0117】
比較例4の合成
【0118】
【化33】
【0119】
窒素雰囲気下、化合物1(0.74g、2.01mmol)、化合物2t(0.20g、0.67mmol)、塩化亜鉛(0.18g、1.34mmol)を2-ジメチルアミノエタノール15mLに加え、化合物Bの合成と同様の反応を行い、比較例4(79mg、0.054mmol、収率8%、緑色固体、TOF−MS m/Z1455[M]
+)を得た。
【0120】
(紫外吸収スペクトルの測定)
上記合成例により調製した化合物Aについて、DMF溶媒を用いて濃度0.003mMの溶液を調製し、分光光度計(日本分光株式会社製 JASCO V−670)を用いて吸収スペクトルを測定した。結果を
図2に示す。
【0121】
比較例1および2についても、それぞれDMF溶媒を用いて濃度0.015mMの溶液を調製し、分光光度計(SHIMADZU UVmini1240)を用いて吸収スペクトルを測定した。結果を
図2に示す。
【0122】
上記化合物Aと同様に、化合物B〜Eならびに比較例3および4について、DMF溶媒を用いて濃度0.003mMの溶液を調製し、吸収スペクトルを測定した。結果を
図3に示す。
【0123】
(色素増感太陽電池の作製)
(1)以下の手順により、上記合成例により調製した各種化合物A〜Eおよび比較例1〜4を用いた色素増感太陽電池を作製した。
【0124】
i. 基板(フッ素ドープ酸化スズ膜付ガラス板、35mm×33mm)上の1辺1cmの正方形面積部分にスクリーン印刷により酸化チタンペースト[触媒化成製PST−21NR]を膜厚8μmにスクリーン印刷し、乾燥後、その上にさらに酸化チタンペースト[触媒化成製PST−400C]を膜厚4μmにスクリーン印刷した。これを500℃で焼成することで、発電層を形成した。
【0125】
ii. 前記発電層を形成した電極を色素溶液[濃度:0.1mM、溶媒:エタノール]に室温で一晩浸漬することで、色素を前記発電層の酸化チタン上に担持させアノード電極を得た。
【0126】
iii. 上記アノード電極の発電層の周囲に接着剤を施し、このアノード電極と、別途用意した電解液注入孔を有するチオアセトアミドで処理した白金被覆チタン板(カソード電極)とを、該接着剤により接着し、両電極が50μm程度の一定間隔を置いて平行に配置されるようにした。
【0127】
iv. 次いで、電解液注入口より電解液を注入した。ここで、用いた電解液は、ヨウ素0.1M、ヨウ化リチウム0.1M、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウムヨウ化物0.8M、N−メチルベンゾイミダゾール0.5M、3−メトキシプロピオニトリルを溶媒とする溶液を用いた。
【0128】
v. 接着剤を用いて電解液注入孔を封止し、アノード電極上に端子取り出しのためのハンダを塗布して実験用セルを完成させた。
【0129】
(分光感度の測定)
作製した太陽電池セルの分光感度を分光感度測定装置(分光計器株式会社製CEP−2000)で測定した。結果を
図4および5に示す。また、これらの太陽電池セルの外観を
図6に示す。
【0130】
(性能試験)
上記のようにして得られた色素増感太陽電池につきその性能を評価した。
【0131】
作成した各セルを、AM1.5,1SUN(100mW/cm
2)の照射条件下でセルの変換効率を測定した。結果を表1に示す。
【0132】
【表1】
【0133】
なお光電変換効率は下記式により計算した。
光電変換効率(%)=
100×[(短絡電流密度×開放電圧×曲線因子)/(照射太陽光エネルギー)]
上記表1のとおり、本発明の光増感色素を用いて作製した色素増感太陽電池は、高い光電変換効率を示し、かつ鮮やかな緑色のセルを提供することができた。