(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5761803
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】自己洗浄槽保有型膜ろ過装置
(51)【国際特許分類】
B01D 65/02 20060101AFI20150723BHJP
C02F 1/44 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
B01D65/02
C02F1/44 A
B01D65/02 520
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-272104(P2011-272104)
(22)【出願日】2011年12月13日
(65)【公開番号】特開2013-123652(P2013-123652A)
(43)【公開日】2013年6月24日
【審査請求日】2013年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126963
【弁理士】
【氏名又は名称】来代 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100131864
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 正憲
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 正伸
【審査官】
池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3123456(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3123473(JP,U)
【文献】
特開2010−125348(JP,A)
【文献】
特開2010−227884(JP,A)
【文献】
特開2000−126557(JP,A)
【文献】
特開平11−156165(JP,A)
【文献】
特開平07−051547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00−71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置中央部に、返送・排水槽、洗浄水槽及び逆洗計量槽とが一体的に形成され、
装置下部には、原水が供給される原水供給ブロックが配置され、
装置上部には、膜モジュールによってろ過された膜ろ過水を集める膜ろ過水集水ブロックが配置され、
前記原水供給ブロックの外方側端部と前記膜ろ過水集水ブロック外方側端部との間には、複数個の膜モジュールが介在されており、これら膜モジュールは装置の中心部を中心とした円周上に立設されていることを特徴とする自己洗浄槽保有型膜ろ過装置。
【請求項2】
前記原水供給ブロックは、中心部から放射線状に延び、中心部に流入された原水を各膜モジュールの下部に供給する原水供給流路を有し、
前記膜ろ過水集水ブロックは、各膜モジュールの上部に連通すると共に洗浄水槽に向けて延び、各膜モジュールでろ過された膜ろ過水を洗浄水槽に集水する膜ろ過水集水流路を有し、
前記各膜モジュールと前記返送・排水槽との間には、ろ過時には循環水を膜モジュールから返送・排水槽に導き、逆洗浄時には洗浄水槽内の膜ろ過水を膜ろ過水集水流路から膜モジュールを経て返送・排水槽に導く連通管が設けられている請求項1記載の自己洗浄槽保有型膜ろ過装置。
【請求項3】
物理洗浄時に逆洗計量槽液面に圧力を供給する圧力供給手段を備えている請求項1記載の自己洗浄槽保有型膜ろ過装置。
【請求項4】
前記膜ろ過水集水ブロックに装着する膜モジュールの延長上に保守用の膜モジュール点検口が装備されている請求項1記載の自己洗浄槽保有型膜ろ過装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜モジュールを備えた膜ろ過装置であって、より詳しくは装置内に物理洗浄に使用する洗浄水槽を一体に設け、効率良く膜ろ過処理を継続できる自己洗浄槽保有型膜ろ過装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の膜ろ過装置のうち加圧型膜モジュールを採用する膜ろ過装置では、膜モジュールの出入口に直線の配管を配備し複数の膜モジュールを装着する直列配置方式が採用されている(以下の特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−136273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の従来例では、加圧型膜モジュールを直列配置しろ過を行うとき、装置に供給される原水入口から一本の配管で接続される。同様にろ過水を回収し洗浄水を供給する浄水管、返送水を回収し洗浄排水を排出する返送排水管も各々1本の配管で接続される。
【0005】
この時、原水供給管では、原水供給元から各膜モジュールに向けて原水を送水したとき、直近の膜モジュールには充分な供給圧力が確保されても、遠方に行くに従い供給圧力は低減し原水供給量も低下していくこととなる。また、ろ過された浄水管においても、装置流出側に近くなるほど圧力負荷が高くなり、膜モジュール間における流量バランスが崩れる原因となる。このように接続される各膜モジュール間でそれぞれ処理バランスが異なるため、それぞれの集合管を大口径の配管とするヘッダー管方式とし、あるいは、各膜モジュールの出入口にオリフィス等を設置し圧力、水量のバランスを整えてきた。
【0006】
しかしながら、ヘッダー管方式では、ヘッダー管の大口径化により装置本体が大型化するという問題がある。また、オリフィス等を設置する方式では、オリフィス等による圧力損失の増大により動力負荷の増大が生じるという問題がある。
【0007】
また、加圧型膜モジュールを採用する膜ろ過装置の他の問題は、膜モジュールの膜破断が確認された場合の修繕に際して、装置から膜モジュールを取り外す必要があったことである。以下に詳述する。即ち、膜モジュールの膜破断が確認された場合、その修繕方法としては、膜モジュールの膜ろ過水流出端において破断した膜チューブを専用の補修ピンで塞ぐことで修理を行っていた(1モジュールに束ねられている総本数は数千本の単位で、数本程度の膜チューブを塞いでも、その性能には殆ど影響はない。)。ところで、従来、膜モジュールを膜ろ過装置に装着するためのコネクタは、膜モジュールメーカーが専用のコネクタを提供しているケースが多い。その多くは、配管との接続をスムーズに行うために膜モジュール本体の径から流量特性に見合った配管径に絞り込むものが殆どであり、この形状のコネクタでは、前記の修繕を行うために運転を一旦停止して装置から膜モジュールを取り外す必要があり、そのため、膜ろ過装置の稼動率の低下を招来していた。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みて考え出されたものであり、その目的は、装置本体を大型化することなく、動力負荷の増大が生じることもなく、各膜モジュール間に生じていた不均一なファウリングを確実に解消することができる自己洗浄槽保有型膜ろ過装置を提供することである。
また、本発明の他の目的は、膜モジュールの膜破断が確認された場合の修繕に際して、装置から膜モジュールを取り外す必要がなく、膜ろ過装置の稼動率を向上することができる自己洗浄槽保有型膜ろ過装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明のうちの請求項1記載の発明は、自己洗浄槽保有型膜ろ過装置であって、装置中央部に、返送・排水槽、洗浄水槽及び逆洗計量槽とが一体的に形成され、装置下部には、原水が供給される原水供給ブロックが配置され、装置上部には、膜モジュールによってろ過された膜ろ過水を集める膜ろ過水集水ブロックが配置され、前記原水供給ブロックの外方側端部と前記膜ろ過水集水ブロック外方側端部との間には、複数個の膜モジュールが介在されており、これら膜モジュールは装置の中心部を中心とした円周上に立設されていることを特徴とする。
上記構成によれば、各膜モジュールに対して均一な原水の供給、膜ろ過水および循環水の流出、逆洗水の供給を行うことができる。この結果、従来の直管配置方式に比べると、膜モジュール間に生じていた不均一なファウリングを解消することができ、低動力で稼動することが可能となる。
【0010】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の自己洗浄槽保有型膜ろ過装置であって、前記原水供給ブロックは、中心部から放射線状に延び、中心部に流入された原水を各膜モジュールの下部に供給する原水供給流路を有し、前記膜ろ過水集水ブロックは、各膜モジュールの上部に連通すると共に洗浄水槽に向けて延び、各膜モジュールでろ過された膜ろ過水を洗浄水槽に集水する膜ろ過水集水流路を有し、前記各膜モジュールと前記返送・排水槽との間には、ろ過時には循環水を膜モジュールから返送・排水槽に導き、逆洗浄時には洗浄水槽内の膜ろ過水を膜ろ過水集水流路から膜モジュールを経て返送・排水槽に導く連通管が設けられていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項3記載の発明は、請求項1記載の自己洗浄槽保有型膜ろ過装置であって、物理的洗浄時に逆洗計量槽液面に圧力を供給する圧力供給手段を備えていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項4記載の発明は、請求項1記載の自己洗浄槽保有型膜ろ過装置であって、前記膜ろ過水集水ブロックに装着する膜モジュールの延長上に保守用の膜モジュール点検口が装備されていることを特徴とする。
このような構成であれば、膜モジュールの膜破断時の処理においても膜モジュールを装置から取り外すことなく、修理することが可能となり、膜ろ過装置の稼動率を向上することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、各膜モジュールに対して均一な原水の供給、膜ろ過水および循環水の流出、逆洗水の供給を行うことができる。この結果、従来の直管配置方式に比べると、膜モジュール間に生じていた不均一なファウリングを解消することができ、低動力で稼動することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る自己洗浄槽保有型膜ろ過装置の全体構成の概念図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施の形態に基づいて詳述する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0016】
(実施の形態)
図1は本発明に係る自己洗浄槽保有型膜ろ過装置の全体構成の概念図、
図2は膜モジュールの取付状態を示す斜視図、
図3は自己洗浄槽保有型膜ろ過装置の平面図、
図4は
図3のa−a線矢視断面図、
図5は
図3のb−b線矢視断面図である。尚、
図1は本発明に係る自己洗浄槽保有型膜ろ過装置の概念構成を示すものであり、該膜ろ過装置を構成する各構成部品や配管系統等の具体的な構成は
図2〜
図5に示されている。
膜ろ過装置1は、装置中央部に配置された返送・排水槽2、洗浄水槽3、及び逆洗計量槽4を有する。これら返送・排水槽2、洗浄水槽3、及び逆洗計量槽4は、下方から上方向に向けてこの順序で一体的に形成されている。尚、逆洗計量槽4の底部は、開口部4aを有しており、洗浄水槽3と逆洗計量槽4とは底部で連通している。従って、洗浄水槽3内に流入した膜ろ過水は逆洗計量槽4の底部から逆洗計量槽4内に流入するようになっている。
【0017】
膜ろ過装置1の下部には円盤状の原水供給ブロック5が配置され、膜ろ過装置1の上部には円盤状の膜ろ過水集水ブロック6が配置され、原水供給ブロック5の外方側端部と膜ろ過水集水ブロック6の外方側端部との間には複数個(本実施の形態では10個)の膜モジュール7が介在されている。これら膜モジュール7は、
図2に示すように、膜ろ過装置1の中心部を中心とした円周上に立設されている。従って、各膜モジュール7と膜ろ過装置1の中心部との距離は、等しい。ここで、本発明で使用する膜モジュール7は、旭化成ケミカルズ(株)のケーシング収納型加圧型MF膜モジュールを選定しているが、メーカー、型式、膜種を限定するものではなく、加圧型MF膜モジュールであれば使用することができる互換性を有する構造としている。尚、
図1においては図面の簡略化を図るため、1つの膜モジュール7のみが描かれている。
【0018】
原水供給ブロック5は中央孔8を備えている。この中央孔8には、
図4及び
図5に示すように、排出管9及び排出管9の下端部付近を外装する外装管30が挿通している。排出管9の上端は返送・排水槽2の底部と連通している。また、外装管30は
図4及び
図5に示すように原水流入配管L10と接続されており、後述するように原水が外装管30を介して原水供給ブロック5の原水流入口5aから流入可能となっている。更に、外装管30は
図3及び
図4に示すように循環水配管L2と連通しており、後述するように循環水が外装管30を介して原水供給ブロック5の原水流入口5aから流入可能となっている。
原水供給ブロック5には、原水流入口5aと、原水流入口5aから放射線状に延び各膜モジュール7に至る原水供給流路11(
図4及び
図5参照)とが形成されている。原水流入口5aから原水供給ブロック5内に流入した原水は、各原水供給流路11を通って各膜モジュール7の下部に供給されるようになっている。
【0019】
膜ろ過水集水ブロック6は中央孔12を備えている。この中央孔12には逆洗計量槽4の上部が嵌り込み、逆洗計量槽4を収納する洗浄水槽3の上方開口を塞ぐようにして配置されている。膜ろ過水集水ブロック6は、各膜モジュール7の上部に連通し且つ洗浄水槽3に向けて延びる複数の膜ろ過水集水流路13(
図4及び
図5参照)が形成されている。このような構成により、各膜モジュール7でろ過された膜ろ過水は、各膜ろ過水集水流路13を通って洗浄水槽3に集水されることになる。
【0020】
また、各膜モジュール7と返送・排水槽2との間には連通管14が設けられている。この連通管14は、ろ過時には循環水を膜モジュール7から返送・排水槽2に導く働きをし、逆洗浄時には洗浄水槽3内の膜ろ過水を、膜ろ過水集水流路13から膜モジュール7を経て返送・排水槽2に導く働きをする。
【0021】
また、返送・排水槽2の下方には空気槽15が設けられており、この空気槽15にはコンプレッサ16が接続されている。空気槽15は配管L1を介して逆洗計量槽4の上部に接続されている。
【0022】
また、返送・排水槽2と原水供給ブロック5とは、排水管9、循環水配管L2及び外装管30を介して連通されている。この循環水配管L2には循環ポンプP1が設けられている。循環ポンプP1の駆動により、循環水は、返送・排水槽2→排水管9、循環水配管L2→外装管30→原水供給ブロック5→膜モジュール7→連通管14→返送・排水槽2の経路を経て循環されるようになっている。
また、膜モジュール7の上部には膜モジュール点検口20及び膜破断検出器21が備えられている。膜モジュール点検口20は膜モジュール7と同一径であり、従来例のような絞り込む形状のコネクタを用いていないので、膜モジュールの修繕の際に、装置から膜モジュールを取り外す必要がないという利点がある。尚、膜モジュールの修繕は、破断した膜チューブを専用の補修ピンで塞ぐことにより行われる。
また、膜ろ過水集水流路13には緊急遮断弁ASVが設けられている。後述するように、膜モジュール7の膜破断が膜破断検出器21によって検出されたときは、緊急遮断弁ASVは「閉」状態となり、膜モジュール点検口20から膜を修繕することができるようになっている。
【0023】
また、逆洗計量槽4の上部開口は天板22によって閉止されており、この天板22には、逆洗計量槽4内の液面レベルを計測する逆洗計量槽レベル計A1が設けられている。レベル計A1は、液面レベルがハイレベルからローレベルまでのレベルを計測可能となっている。また、天板22には膜ろ過水流出管41が接続されている。原水供給ブロック5内の各原水供給流路11には、膜モジュール供給元弁V20が設けられている。
【0024】
尚、
図1において、V1は原水流入弁、V2はろ過水流出弁、V3は循環水弁、V4はエア供給弁、V5は洗浄排水弁、V6は返送・排水槽エア抜弁、V7はエアスクラビング弁である。膜ろ過装置1は、必要に応じて、膜ろ過水サンプル弁、モジュールサンプル弁、原水流量調節弁、逆洗流量調節弁等の各種の弁が設けられ、必要に応じて、原水流入圧力計、膜モジュール入口圧力計、膜モジュール出口圧力計、膜ろ過水濁度計等の各種の計測器が設けられている。
【0025】
上記構成の膜ろ過装置では、原水供給ブロック5に供給された原水は各膜モジュール7に対して均一に分配供給され、また、各膜モジュール7からの膜ろ過水は膜ろ過水集水ブロック6を通って中心部に配置された洗浄水槽3に均一に集水され、更に、循環水は各膜モジュール7から各連通管14を介して中心部に配置された返送・排水槽2に均一に集水されることになる。このことは、各膜モジュール7に対して均一な原水の供給、膜ろ過水および循環水の流出、逆洗水の供給を行うことができることを意味する。従って、従来の直管配置方式に比べると、膜モジュール間に生じていた不均一なファウリングを解消することができ、低動力で稼動することが可能となる。
尚、本発明に係る膜ろ過装置ではストレーナ40を設け、膜モジュールでろ過する前段処理としてストレーナ40によって原水を予めろ過しておくことが好ましい。
【0026】
次いで、上記構成の膜ろ過装置の運転動作について説明する。
A.ろ過工程
原水流入弁V1及びろ過水流出弁V2を「開」状態とする。これにより、原水は、原水供給ブロック5の原水供給流路11を経て膜モジュール7の下部に供給される。そして、原水は膜モジュール7を通過する際に膜ろ過処理される。膜ろ過水は、膜モジュール7の上部から膜ろ過水集水ブロック6の膜ろ過水集水流路13を通って洗浄水槽3に流入する。また、ろ過処理時においては、循環ポンプP1を「運転」状態とし、循環水弁V3を「開」状態とする。これにより、返送・排水槽2に貯留されている循環水が、原水供給ブロック5の原水供給流路11に流入し、膜モジュール7の膜表面を通り、連通管14から返送・排水槽2に戻る循環経路を巡る。そして、循環水が膜モジュール7の膜表面を通過することにより、クロスフローによるファウリング防止が行われる。このようなろ過工程が所定時間行われた後、物理洗浄工程に移る。
【0027】
B.物理洗浄工程
物理洗浄工程はろ過継続時間30〜90分毎に1回当たり1〜2分間行われる。
原水流入弁V1、ろ過水流出弁V2及び循環水弁V3を「閉」状態とし、循環ポンプP1を「停止」する。また、エア供給弁V4及び洗浄排水弁V5を「開」状態とする。循環水弁V3を「閉」状態とし、循環ポンプP1を「停止」することにより、循環水の流れを停止する。また、エア供給弁V4を「開」状態とすることにより、逆洗計量槽4内のろ過水が洗浄水槽3上部から逆流して、膜ろ過水集水ブロック6の膜ろ過水集水流路13を通って膜モジュール7に供給され、膜モジュール7内が逆流洗浄されることになる。膜モジュール7からの流出水は、連通管14を通り返送・排水槽2に導かれ、洗浄排水弁V5を介して系外に排出される。この逆流洗浄処理と同時にエアスクラビング処理が実行される。即ち、エアスクラビング弁V7の「開」状態により、空気槽15内の圧縮空気が膜モジュール7の下部から流入し、膜モジュール7内の中空糸膜を振動させて膜面付着物を剥離・除去する。そして、所定時間経過後に、エアスクラビング弁V7を「閉」状態とし、エアスクラビング処理が終了する。このようにして、逆流洗浄処理及びエアスクラビング処理が終了した後は、フラッシング処理が実行される。
【0028】
フラッシング処理においては、原水流入弁V1を「開」状態とする。これにより、膜モジュール7に供給された原水はろ過膜を透過することなく膜表面をリンスし、返送・排水槽2に流入される。そして、フラッシング処理時間経過後は、洗浄排水弁V5を「閉」状態とする。
こうして、物理洗浄工程が行われた後は原則的にはろ過工程に戻り、ろ過工程と物理洗浄工程とが繰り返し行われる。但し、1日1回程度、物理洗浄の逆流洗浄及びエアスクラビング処理が終了した後に、膜破断検出工程が行われる。
【0029】
C.膜破断検出工程
全ての膜モジュール7について膜破断検出工程が行われる。以下、具体的に説明する。
上記したように、各膜モジュール7の鉛直上には各々膜破断検出器21が設置されており、この膜破断検出器21によって膜モジュールに膜破断が生じていないかの検出が行われる。膜破断検出工程は物理洗浄の逆流洗浄及びエアスクラビング処理が終了した後に引き続き行われる。即ち、エア供給弁V4を「開」とし逆流洗浄を停止し、エアスクラビング弁V7も「閉」とする。次に、返送・排水槽エア抜弁V6を一旦「開」とし装置内が大気圧となったのを確認し、洗浄排水弁V5および返送・排水槽エア抜弁V6を「閉」とする。次に、膜破断検出器21に装備された電磁弁を「開」とし、エアスクラビング弁V7を徐々に「開」とする。この時、膜モジュール原水供給側の圧力は100KPaで調整する。エアーによる加圧を行うと膜モジュール7内の水が膜破断検出器21から流出するが、膜破断我が有る場合は連続気泡が発生し、膜破断検出器21のフロートセンサーを押し下げ、異常検出する。異常検出した膜モジュール7は緊急遮断弁ASVが「閉」とされ、次工程から使用が禁止される(尚、他の膜モジュール7で運転は継続される)。一定時間(約1分間)の膜破断検査を行った後「開」の状態である弁を全て「閉」とし、引き続きフラッシング工程に移行する。このようにして膜破断検出工程が行われるので、従来のように運転を停止して膜モジュールの取替えを行う必要がなく、膜ろ過装置の稼動率を向上することができる。
【0030】
(その他の事項)
上記実施の形態では、物理洗浄時の圧力供給はコンプレッサで行なっていたが、空気圧シリンダ、油圧シリンダ、加圧給水ポンプ等を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、装置内に物理洗浄に使用する洗浄水槽を一体に設け、効率良く膜ろ過処理を継続できる自己洗浄槽保有型膜ろ過装置に適用される。
【符号の説明】
【0032】
1:膜ろ過装置
2:返送・排水槽
3:洗浄水槽
4:逆洗計量槽
5:原水供給ブロック
6:膜ろ過水集水ブロック
7:膜モジュール