特許第5761804号(P5761804)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5761804-自動車用燃料タンク 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5761804
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】自動車用燃料タンク
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/03 20060101AFI20150723BHJP
【FI】
   B60K15/03 A
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-285472(P2011-285472)
(22)【出願日】2011年12月27日
(65)【公開番号】特開2013-133038(P2013-133038A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】308039414
【氏名又は名称】株式会社FTS
(74)【代理人】
【識別番号】100097076
【弁理士】
【氏名又は名称】糟谷 敬彦
(72)【発明者】
【氏名】青江 竜太
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】内藤 和明
(72)【発明者】
【氏名】加藤 久満
(72)【発明者】
【氏名】岩井 久幸
(72)【発明者】
【氏名】梅本 芳朗
(72)【発明者】
【氏名】梶川 勝弘
【審査官】 川上 佳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−161615(JP,A)
【文献】 特開平5−5049(JP,A)
【文献】 特開2008−114819(JP,A)
【文献】 特開2009−6858(JP,A)
【文献】 特開2009−155492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層構成からなる合成樹脂層で本体が形成された外壁を有する自動車用燃料タンクにおいて、
上記外壁は、少なくとも外側から順に、外部本体層、外部接着剤層、バリヤ層、内部接着剤層及び内部本体層から形成され、
上記外部本体層及び上記内部本体層は、高密度ポリエチレン(HDPE)を主材として形成され、該高密度ポリエチレン(HDPE)は、
(1)23℃における弾性率が1100〜1400MPa、
(2)65℃における弾性率が340〜430MPa、
(3)FuelDに65℃で200時間浸漬後の23℃における弾性率が400〜510MPa、
(4)−40℃におけるシャルピー衝撃強度が7〜14kJ/m
(5)80℃におけるフルノッチクリープテスト(FNCT)が50〜300hr、
(6)190℃、21.6kg荷重におけるメルトフローレート(MRF)が4〜6(g/10分)、
(7)210℃で溶融した試料を直径2.095mm、長さ8mmのノズルから押出速度15mm/分で押出し、引出速度7.5m/分で引き取った時の張力としてのメルトテンションが18〜25g、であり、
上記外部接着剤層と内部接着剤層は、高密度ポリエチレン(HDPE)とバリヤ層の両方に接着性を有する合成樹脂で形成され、
上記バリヤ層は、燃料油が透過しにくい合成樹脂で形成されたことを特徴とする自動車用燃料タンク。
【請求項2】
上記外壁は、上記外部本体層の外側に、上記高密度ポリエチレン(HDPE)で形成された表皮層を有する請求項1に記載の自動車用燃料タンク。
【請求項3】
上記燃料タンクの上記外壁の全体の肉厚は、3.0〜5.0mmであるの肉厚を有する請求項1又は請求項2に記載の自動車用燃料タンク。
【請求項4】
上記バリヤ層は、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)で形成された請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の自動車用燃料タンク。
【請求項5】
上記外部本体層に、変性ポリエチレン又は軟質ポリエチレンを含有させた請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の自動車用燃料タンク。
【請求項6】
上記燃料タンクの本体は、ブロー成形で形成された請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の自動車用燃料タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性合成樹脂製の燃料タンクに関するものであり、特に、多層構成からなる合成樹脂層の合成樹脂部材をブロー成形することにより本体が形成される燃料タンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用等の燃料タンクの構造としては、金属製のものが用いられていたが、近年、車両の軽量化や、錆が発生しないこと、所望の形状に成形しやすいことなどによって熱可塑性合成樹脂製のものが用いられるようになってきた。
合成樹脂製の自動車用燃料タンクの製造は、中空体を成形することの容易性からブロー成形方法が多く用いられてきた。ブロー成形方法では、溶融した熱可塑性合成樹脂部材のパリソンを円筒状にして上から押出して、そのパリソンを金型で挟みパリソン中に空気を吹き込み、自動車用燃料タンクを製造していた。
【0003】
このブロー成形において、燃料タンクの強度を確保して、燃料油の透過性を防止するために、パリソンは多層構成を有している。即ち、この多層構成は、少なくとも、燃料タンクの強度を確保する耐衝撃性の樹脂からなる層と、燃料油の浸透を防止するバリヤ性の樹脂からなる層を個々に有し、そしてこの2種類の層を接着する層を有している(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
この場合は、燃料タンクの本体の外部本体層と内部本体層を燃料タンクとして必要な強度を保持して、燃料にも強い高密度ポリエチレン(HDPE)で構成し、その間に燃料の浸透を防止するバリヤ層としての中間層から構成される熱可塑性合成樹脂部材で形成している(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
また、近年、環境保護のため自動車の燃費向上のため、車両の軽量化が図られている。
合成樹脂性の自動車用燃料タンクにおいても、タンクの軽量化をする必要がある。この場合には、合成樹脂性の自動車用燃料タンクにおいても、燃料を収納する容積を確保した上で、燃料タンクの外壁の肉厚を薄くする必要がある。しかし、外壁の肉厚を薄くするだけでは、燃料タンクの内圧が高くなった場合に燃料タンクの変形量が増大したり、耐熱性が低下したりする恐れがある。
【0006】
また、燃料タンクの外壁の肉厚を薄く作るためには、ブロー成形時のパリソンを薄く作る必要があるが、薄いパリソンは、パリソンの内部に空気を吹き込んで膨らませるブローアップ時に、パリソンが破れる恐れがあり、パリソンが破れないようにブローアップするときのブロー成形条件の制御が非常に厳しくなり、成形し難くなる。
そのため、高剛性で耐久性の優れた各種のポリエチレンが提案されている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、ブロー成形性、燃料タンクの変形抑制性等の条件を満足することについては不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−6858号公報
【特許文献2】特開平7−101433号公報
【特許文献3】特開2008−24729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そのため、本発明は、ブロー成形性に優れた、燃料タンクの変形抑制性と耐熱性の高い燃料タンクを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための請求項1の本発明は、多層構成からなる合成樹脂層で本体が形成された外壁を有する自動車用燃料タンクにおいて、
外壁は、少なくとも外側から順に、外部本体層、外部接着剤層、バリヤ層、内部接着剤層及び内部本体層から形成され、
外部本体層及び内部本体層は、高密度ポリエチレン(HDPE)を主材として形成され、高密度ポリエチレン(HDPE)は、
(1)23℃における弾性率が1100〜1400MPa、
(2)65℃における弾性率が340〜430MPa、
(3)FuelDに65℃で200時間浸漬後の23℃における弾性率が400〜510MPa、
(4)−40℃におけるシャルピー衝撃強度が7〜14kJ/m
(5)80℃におけるフルノッチクリープテスト(FNCT)が50〜430hr、
(6)190℃、21.6kg荷重におけるメルトフローレート(MRF)が4〜6(g/10分)、
(7)210℃で溶融した試料を直径2.095mm、長さ8mmのノズルから押出速度15mm/分で押出し、引出速度7.5m/分で引き取った時の張力としてのメルトテンションが18〜25g、
であり、
外部接着剤層と内部接着剤層は、高密度ポリエチレン(HDPE)とバリヤ層の両方に接着性を有する合成樹脂で形成され、
バリヤ層は、燃料油が透過しにくい合成樹脂で形成された自動車用燃料タンクである。
【0010】
請求項1の本発明では、外壁は、少なくとも外側から順に、外部本体層、外部接着剤層、バリヤ層、内部接着剤層及び内部本体層から形成される。このため、各層を積層して燃料タンクの燃料透過防止性、剛性と耐衝撃性の各性能を満足させるとともに、各層間の接着を強固にして、全体の肉厚を薄くして燃料タンクの容量を確保し、重量増加を防止することができる。
【0011】
外部本体層及び内部本体層は、高密度ポリエチレン(HDPE)を主材として形成され、高密度ポリエチレン(HDPE)は、
(1)23℃における弾性率が1100〜1400MPa、
(2)65℃における弾性率が340〜430MPa、
(3)FuelDに65℃で200時間浸漬後の23℃における弾性率が400〜510MPa、
(4)−40℃におけるシャルピー衝撃強度が7〜14kJ/m
(5)80℃におけるフルノッチクリープテスト(FNCT)が50〜300hr、
(6)190℃、21.6kg荷重におけるメルトフローレート(MRF)が4〜6(g/10分)、
(7)210℃で溶融した試料を直径2.095mm、長さ8mmのノズルから押出速度15mm/分で押出し、引出速度7.5m/分で引き取った時の張力としてのメルトテンションが18〜25g、である。
【0012】
外部本体層及び内部本体層は、高密度ポリエチレン(HDPE)を主材として形成され、高密度ポリエチレン(HDPE)は、上記(1)〜(3)に記載した弾性率を有する。このため、燃料タンクが常温においても、高温においても、所定の弾性率を有するため、剛性と耐衝撃性の各性能を満足させるとともに、内圧が大きくなっても燃料タンクの変形量が少ない。また、燃料が内部本体層に浸透しても、燃料タンクの剛性を確保することができる。
【0013】
高密度ポリエチレン(HDPE)は、−40℃におけるシャルピー衝撃強度が7〜14kJ/mの値を有する。このため、燃料タンクが低温にさらされても、燃料タンクの耐衝撃性を確保することができる。
【0014】
高密度ポリエチレン(HDPE)は、80℃におけるフルノッチクリープテスト(FNCT)が50〜300hrの値を有する。このため、燃料タンクが内圧の繰り返し変化にさらされても、走行時の路面振動にさらされても、燃料タンクの疲労耐久性を確保することができる。
【0015】
高密度ポリエチレン(HDPE)は、190℃、21.6kg荷重におけるメルトフローレート(MRF)が4〜6(g/10分)の値を有する。このため、ブロー成形時にパリソンの押出をスムースにすることができ、燃料タンクの耐衝撃性がよい。外壁が万一高温にさらされても、溶融時の粘度が大きいため、外壁が変形し難いとともに外壁に孔が開き難く、耐火性に優れている。
【0016】
高密度ポリエチレン(HDPE)は、210℃で溶融した試料を直径2.095mm、長さ8mmのノズルから押出速度15mm/分で押出し、引出速度7.5m/分で引き取った時の張力としてのメルトテンションが18〜25gである。このため、高密度ポリエチレン(HDPE)の分子の絡み合いが大きくなり、ブロー成形時にパリソンとして押出された高密度ポリエチレン(HDPE)は、変形し難く、ブローアップ時に、パリソンが破れ難くなり、ブローアップするときのブロー成形条件の制御が容易となり、ブロー成形しやすくなる。
【0017】
外部接着剤層と内部接着剤層は、高密度ポリエチレン(HDPE)とバリヤ層の両方に接着性を有する合成樹脂で形成される。このため、外部接着剤層と内部接着剤層は、バリヤ層と、外部本体層及び内部本体層とをそれぞれ強固に接着して、燃料タンクの各層間を強固に接着し、一体化させて、燃料タンクの燃料透過防止性と、強度を確保することができる。
バリヤ層は、燃料油が透過しにくい合成樹脂で形成されたため、内部本体層を浸透した燃料の透過が、外部本体層まで浸透し、車外に蒸発することを防止することができる。
【0018】
請求項2の本発明は、外壁は、外部本体層の外側に、上記(1)〜(7)に記載した物性を有する高密度ポリエチレン(HDPE)で形成された表皮層を有する自動車用燃料タンクである。
【0019】
請求項2の本発明では、外壁は、外部本体層の外側に、上記(1)〜(7)に記載した物性を有する高密度ポリエチレン(HDPE)で形成された表皮層を有するため、外部本体層に再生材が混入されていても、表面を円滑にすることができる。表皮層と外部本体層はともに高密度ポリエチレン(HDPE)を有するために、両者の接着性は優れているので、燃料タンクの強度を向上させることができる。
【0020】
請求項3の本発明は、燃料タンクの外壁の全体の肉厚は、3.0〜5.0mmである自動車用燃料タンクである。
【0021】
請求項3の本発明では、燃料タンクの外壁の全体の肉厚は、3.0〜5.0mmであるため、従来の燃料タンクと比べて、全体の重量を減少させることができるとともに、請求項1で規定する高密度ポリエチレン(HDPE)を使用するため、充分な剛性を有して、耐衝撃性、疲労耐久性を確保することができる。
【0022】
請求項4の本発明は、バリヤ層は、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)で形成された自動車用燃料タンクである。
【0023】
請求項4の本発明では、バリヤ層は、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)であるためガソリンの透過防止性に優れるとともに、溶融成形が可能で加工性にも優れている。また、高湿度下において、あるいはアルコールを含有するガソリンに対しても優れた透過防止性を有する。
【0024】
請求項5の本発明は、外部本体層に、変性ポリエチレン又は軟質ポリエチレンを含有させた自動車用燃料タンクである。
【0025】
請求項5の本発明では、外部本体層に、変性ポリエチレン又は軟質ポリエチレンを含有させたため、燃料タンク本体の再生材を外部本体層に含ませた場合においても、バリヤ層の構成材料であるエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)等と、高密度ポリエチレン(HDPE)との相溶性が向上し、外部本体層の耐衝撃性が向上する。
【0026】
請求項6の本発明は、燃料タンクの本体は、ブロー成形で形成された自動車用燃料タンクである。
【0027】
請求項6の本発明では、燃料タンクの本体は、ブロー成形で形成されたため、多層構造を有する合成樹脂層の中空状の燃料タンクを1回の成形で成形でき、自由に形状を選択することができる。
【発明の効果】
【0028】
表皮層、外部本体層及び内部本体層は、上記(1)〜(7)に記載した物性を有する高密度ポリエチレン(HDPE)を主材として形成され、高密度ポリエチレン(HDPE)は、所定の弾性率を有するため、燃料タンクが常温においても、高温においても、燃料が外壁に浸透しても所定の剛性を有するため、内圧が大きくなっても燃料タンクの変形量が少ない。
高密度ポリエチレン(HDPE)は、所定のシャルピー衝撃強度の値を有するため、燃料タンクの低温における耐衝撃性に優れている。
高密度ポリエチレン(HDPE)は、所定のフルノッチクリープテスト(FNCT)の値を有するため、燃料タンクの疲労耐久性に優れている。
【0029】
高密度ポリエチレン(HDPE)は、所定のメルトフローレート(MRF)の値を有するため、溶融時の粘度が大きいため、外壁が変形し難いとともに外壁に孔が開き難く、耐火性に優れている。
高密度ポリエチレン(HDPE)は、所定のメルトテンションを有しているため、高密度ポリエチレン(HDPE)の分子の絡み合いが大きくなり、ブロー成形時にパリソンとして押出された高密度ポリエチレン(HDPE)は、変形し難く、ブローアップ時に、パリソンが破れ難くなり、ブローアップするときのブロー成形条件の制御が容易となり、成形しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施の形態である燃料タンク斜視図である。
図2】本発明の燃料タンクの外壁の構造を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施の形態である自動車用の燃料タンク1について、図1図2に基づき説明する。図1は、本発明の実施の形態の燃料タンク1の斜視図であり、図2は、合成樹脂製の燃料タンク1の外壁10の一部断面図であり、外壁10の多層構造の構成を示すものである。
【0032】
本発明の実施の形態では、燃料タンク1は、図1に示すように、その燃料タンク1に燃料ポンプ(図示せず)等を出し入れするためにポンプユニット取付孔4が上面に形成されている。また、燃料タンク1の側面又は上面には、インレットパイプ(図示せず)から燃料を注入する燃料注入孔5が形成されている。
【0033】
また、燃料タンク1の周囲には外周リブ2が全周に亘り形成されており、外周リブ2のコーナー部等の所定箇所には、数箇所に亘り取付用孔3が形成され、取付用孔3と車体をボルト締めすることにより、燃料タンク1を車体に取付けている。
さらに、燃料タンク1の上面には、内部の燃料蒸気を回収するホース等を接続する各所の取付孔6が形成されている。
【0034】
本実施の形態において、燃料タンク1は、ブロー成形で形成され、その外壁10は、図2に示すように、外側から順に表皮層11、外部本体層12、外部接着剤層13、バリヤ層14、内部接着剤層15及び内部本体層16から形成されている。ブロー成形においては、上記の6層から構成されるパリソンが使用される。6層以上の層構成を有するパリソンを使用することもできる。
【0035】
表皮層11は使用しない場合もあるが、表皮層11を使用する場合には、表皮層11は、耐衝撃性が大きく、燃料油に対しても剛性が維持される熱可塑性合成樹脂から形成され、高密度ポリエチレン(HDPE)から形成される。外部本体層12が再生材を含有する場合には、外部本体層12の表面を覆うため、表面に再生材が出ることがなく、表面を円滑にすることができる。
【0036】
表皮層11、外部本体層12及び内部本体層16に使用する高密度ポリエチレン(HDPE)は、下記の(1)〜(7)の物性を有するポリエチレンを使用することができる。
高密度ポリエチレン(HDPE)は、
(1)23℃における弾性率が1100〜1400MPa。
(2)65℃における弾性率が340〜430MPa。
(3)FuelDに65℃で200時間浸漬後の23℃における弾性率が400〜510MPa。
(4)−40℃におけるシャルピー衝撃強度が7〜14kJ/m
(5)80℃におけるフルノッチクリープテスト(FNCT)が50〜300hr、
(6)190℃、21.6kg荷重におけるメルトフローレート(MRF)が4〜6(g/10分)。
(7)210℃で溶融した試料を直径2.095mm、長さ8mmのノズルから押出速度15mm/分で押出し、引出速度7.5m/分で引き取った時の張力としてのメルトテンションが18〜25g。
である。
【0037】
ここで、(1)23℃における弾性率が1100〜1400MPaであるとは、JISK7171に基づく曲げ弾性率をいい、23℃の雰囲気中で測定した値である。
また、(2)65℃における弾性率が340〜430MPaであるとは、JISK7171に基づく曲げ弾性率をいい、65℃の雰囲気中で測定した値である。
【0038】
本発明に使用する高密度ポリエチレン(HDPE)は、上記の弾性率を有するため、常温でも、弾性率が1100〜1400MPaであり、高い弾性率で、燃料タンク1の外壁10の肉厚を薄くしても、充分な剛性を有することができ、燃料タンク1の内圧が上昇しても、燃料タンク1の変形量を小さくすることができる。高密度ポリエチレン(HDPE)が、1400MPaを超える場合には、耐衝撃性が低下し、1100MPa未満の場合には、燃料タンク1の剛性が低下する。
【0039】
また、高密度ポリエチレン(HDPE)が、65℃における弾性率が340〜430MPaであるため、燃料タンク1が高温になった状態でも、充分な剛性を有することができ、燃料タンク1の変形量を小さくすることができる。高密度ポリエチレン(HDPE)の65℃における弾性率が430MPaを超える場合には、高温時の耐衝撃性が低下し、340MPa未満の場合には、高温時の燃料タンク1の剛性が低下する。
【0040】
さらに、高密度ポリエチレン(HDPE)は、(3)FuelDに65℃で200時間浸漬後の23℃における弾性率が400〜510MPaであるとは、FuelD(銅イオン0.1PPM、パーオキサイド価200mg/kg) にテストピースを浸漬して65°で200時間放置して、JISK7171に基づく曲げ弾性率を23℃の雰囲気中で測定した値である。なお、FuelDとは、全体を100と知るとイソオクタン40、トルエン60の比率で配合したものである。
このため、いわゆるサワーガソリン(劣化ガソリン)中においても、充分な剛性を有することができる。高密度ポリエチレン(HDPE)が、510MPaを超える場合には、膨潤時の耐衝撃性が低下し、400MPa未満の場合には、膨潤時の燃料タンク1の剛性が低下する。
【0041】
高密度ポリエチレン(HDPE)は、(4)−40℃におけるシャルピー衝撃強度が7〜14kJ/mであるとは、JIS−K7111−2(2006)に基づくシャルピー衝撃強度をいい、−40℃の雰囲気中で測定した値である。このため燃料タンク1の外壁10の肉厚を薄くしても、低温にさらされても充分な耐衝撃性を有することができる。高密度ポリエチレン(HDPE)が、7kJ/m未満の場合には、低温における燃料タンク1の耐衝撃性が低下し、14kJ/mを超える場合には、別の物性としてMFR(メルトフローレート)が小さくなりすぎるため、燃料タンク1の成形が困難になり好ましくない。
【0042】
高密度ポリエチレン(HDPE)は、(5)80℃におけるフルノッチクリープテスト(FNCT)が50〜300hrであるとは、JIS−K6774(2005)付属書4に基づくフルノッチクリープテスト(FNCT)をいい、80℃の雰囲気中で測定した値である。このため燃料タンク1の外壁10の肉厚を薄くしても、燃料タンクが内圧の繰り返し変化にさらされても、走行時の路面振動にさらされても、燃料タンクの疲労耐久性を確保することができる。高密度ポリエチレン(HDPE)が、50hr未満の場合には、燃料タンク1の疲労耐久性が低下し、300hrを超える場合には、別の物性として曲げ弾性率が小さくなりすぎるため、燃料タンク1に必要な剛性が確保しにくくなる。
【0043】
高密度ポリエチレン(HDPE)は、(6)190℃、21.6kg荷重におけるメルトフローレート(MRF)が4〜6(g/10分)であるとは、JIS−K7210(1999)に準拠して測定されたものである。この測定は、190℃の高密度ポリエチレン(HDPE)を荷重21.6kgで円筒状の押出しした押出し式プラストメータに入れて、10分間に押出しされた樹脂量をいうものである。
【0044】
メルトフローレート(MRF)が4未満の場合には、高密度ポリエチレン(HDPE)の流動性が不足して、ブロー成形時にパリソンの押出し量が不足する。高密度ポリエチレン(HDPE)のメルトフローレート(MRF)が6を超える場合には粘度が低く、ブロー成形時にパリソンが、ドローダウンしてしまうこととなる。
【0045】
高密度ポリエチレン(HDPE)を、(7)210℃で溶融した試料を直径2.095mm、長さ8mmのノズルから押出速度15mm/分で押出し、引出速度7.5m/分で引き取った時の張力としてのメルトテンションが18〜25gであるとは、ノズル径が2.095mmで長さが8mmのオリフィスから210℃に溶融した樹脂をピストン速度が15mm/分の速度で押出し、7.5m/分の速度で引き取った時の張力を測定したものである。
【0046】
高密度ポリエチレン(HDPE)のメルトテンションが18g未満の場合には、ブロー成形時にパリソンの張力が不足してパリソンが、ドローダウンしてしまうこととなる。また、高密度ポリエチレン(HDPE)のメルトテンションが25gを超える場合には、パリソンの張力が強く、パリソンを押出し難くなるとともに、パリソンを金型に押圧して成形し難くなる。
【0047】
本発明の実施の形態では、燃料タンク1の外壁10の平均肉厚は、4.8mmである。外壁10は、4.8mm以外の肉厚でも形成することができるが、従来は、外壁10の平均肉厚は、5.2mm程度である場合が多く、本発明の高密度ポリエチレン(HDPE)使用することにより、肉厚を減少させることができる。
【0048】
表皮層11、外部本体層12、外部接着剤層13、バリヤ層14、内部接着剤層15及び内部本体層16のそれぞれの厚さは次のとおりである。
表皮層11は、燃料タンク1の外壁10の全体の厚さの10〜14%の厚さを有する。従って、0.30〜0.70mm程度である。これにより、表皮層11は、確実に外壁10の表面を覆い、表皮層11と外部本体層12はともに高密度ポリエチレン(HDPE)が主材であるため、容易に密着することができる。
【0049】
外部本体層12は、燃料タンク1の外壁10の全体の厚さの40〜50%の厚さを有する。従って、1.20〜2.50mm程度である。これにより、燃料タンク1の外壁10肉厚を減少させても、上記(1)〜(7)の物性を有する高密度ポリエチレン(HDPE)を使用するため、外壁10の弾性率を向上させて、燃料タンク1の変形を防止して、剛性を高めて、燃料タンク1の強度を向上させることができる。
【0050】
外部本体層12は、高密度ポリエチレン(HDPE)を主に含有する再生材を主材として形成することができる。高密度ポリエチレン(HDPE)を主に含有する再生材は、例えば、本願発明のように、燃料タンク1の製造工程中で発生する切れ端や不良品を粉砕してリサイクルして使用する場合がある。燃料タンク1は、主として高密度ポリエチレン(HDPE)から構成されているため、燃料タンク1を粉砕した再生材は、上記(1)〜(7)の物性を有する高密度ポリエチレン(HDPE)を主として有している。
これ等の再生材を100%使用する場合と、再生材に新材の高密度ポリエチレン(HDPE)を混合して使用する場合がある。
【0051】
外部本体層12に、相溶化剤として、例えば、変性ポリエチレン又は軟質ポリエチレンを含有させることができる。製造工程中の端材等をリサイクルした材料は、再生材に含まれるバリヤ層の構成材料であるエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)等を含んでいる。この再生材を使用すると、高密度ポリエチレン(HDPE)の中にエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)が分散して存在する。変性ポリエチレン又は軟質ポリエチレンを含有させると、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)が微細化して高密度ポリエチレン(HDPE)の中に分散し、相溶性が向上し、充分に混ざり合うことができる。そのため耐衝撃性を向上させることができる。
【0052】
外部接着剤層13は、燃料タンク1の外壁10の全体の厚さの0.7〜1.7%の厚さを有する。従って、0.02〜0.09mm程度である。バリヤ層14は、燃料タンク1の外壁10の全体の厚さの0.7〜1.7%の厚さを有する。従って、0.02〜0.09mm程度である。内部接着剤層15は、燃料タンク1の外壁10の全体の厚さの0.7〜1.7%の厚さを有する。従って、0.02〜0.09mm程度である。
【0053】
これにより、バリヤ層14が燃料タンク1の燃料透過を防止して、外部接着剤層13がバリヤ層14と外部本体層12との接着力を向上させ、内部接着剤層15がバリヤ層14と内部本体層16との接着力を向上させることができる。
【0054】
バリヤ層14は、燃料油の透過が極めて少ない熱可塑性合成樹脂から形成されている。バリヤ層14を構成する熱可塑性合成樹脂は、例えば、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、半芳香族ナイロン(PPA)を使用することができるが、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)が好ましい。
バリヤ層14を有するため、後述する内部本体層16を浸透してきたガソリン等の燃料油を、バリヤ層14で透過を防ぐことができ、大気中に燃料油が蒸発することを防止できる。
【0055】
バリヤ層14として、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)を使用する場合は、ガソリンの透過防止性に優れるとともに、溶融成形が可能で加工性にも優れている。また、高湿度下においても、ガソリンの透過防止性に優れている。さらに、アルコールを含有するガソリンに対しても優れた透過防止性を有することができる。
【0056】
外部接着剤層13は、外部本体層12とバリヤ層14の間に設けられて、この2層を接着し、内部接着剤層15は、内部本体層16とバリヤ層14の間に設けられて、この2層を接着する。外部接着剤層13と内部接着剤層15は、同じ材料で形成され、高密度ポリエチレン(HDPE)とバリヤ層14の両方に接着性を有する合成樹脂で形成される。このため、外部接着剤層13と内部接着剤層15は、バリヤ層14と、外部本体層12及び内部本体層16とをそれぞれ強固に接着して、それぞれの層が一体的に密着して、燃料タンク1の燃料透過防止性と、強度を確保することができる。
【0057】
外部接着剤層13と内部接着剤層15に使用される接着性の合成樹脂としては、例えば、変性ポリオレフィン樹脂を使用することができ、特に不飽和カルボン酸変性ポリエチレン樹脂が好ましい。これは、ポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸を共重合又はグラフト重合させることにより製造することができる。
【0058】
内部本体層16は、表皮層11と外部本体層12で述べたように、表皮層11と外部本体層12の使用するものと同じ材料である高密度ポリエチレン(HDPE)を使用する。
内部本体層16は、燃料タンク1の外壁10の全体の厚さの31.5〜45.5%の厚さを有する。従って、0.945〜2.28mm程度である。
これにより、燃料タンク1の外壁10は、内部本体層16が充分な肉厚を有するため、燃料で膨潤しても剛性を保ち、耐衝撃性を確保することができる。
【0059】
燃料タンク1に本発明の高密度ポリエチレン(HDPE)を使用した実施例1と、他の高密度ポリエチレン(HDPE)を使用した比較例1〜4の場合の比較を表1に示す。
【表1】
【0060】
燃料タンク1の最大加圧変形量は、燃料タンク1に試験燃料を封入し、所定アングルに宙づりし、65℃で放置し、燃料タンク1の数箇所の点について基準点からの距離を測定し、その距離をゼロ点とする。さらに、この状態で内圧をかけて5分間放置し、基準点からの距離を測定しゼロ点との差を変形量とした。
【0061】
比較例3の値を100として、それぞれの実施例1と比較例1〜4値を表1に記載した。本発明の高密度ポリエチレン(HDPE)を使用した実施例1と弾性率、メルトフローレート及びメルトテンションの値の異なる高密度ポリエチレン(HDPE)を使用した比較例1〜4と比べると、最大加圧変形量は、実施例1が96となり、比較例1〜4の変形量(100〜116)よりも少ない。
【0062】
比較例1においては、弾性率は23℃、65℃及び膨潤後のいずれにおいても大きいが、最大加圧変形量は大きい。これはメルトテンションが小さいことにより燃料タンク1の肉厚均一性が損なわれるためである。また、比較例2〜4においては、弾性率は23℃、65℃及び膨潤後のいずれにおいても小さいため平均加圧変形量は大きい。このため、上記の(1)〜(3)の物性を有する本発明の高密度ポリエチレン(HDPE)を含有する燃料タンク1は変形量が少なく、好ましい。
【0063】
燃料タンク1の耐衝撃性は、側突試験進入量として測定し、燃料タンク1を定盤に固定し、先端部に円筒を取付けた所定重量の台車を衝突させ、燃料タンク1への円筒部の侵入量を測定することにより行った。
比較例3の値を100として、それぞれの実施例と比較例1〜4の値を表1に記載した。
【0064】
側突試験の側突試験進入量においては、本発明の高密度ポリエチレン(HDPE)を使用した実施例1と弾性率、メルトフローレート及びメルトテンションの値の異なる高密度ポリエチレン(HDPE)を使用した比較例2〜5と比べると、側突試験進入量は、実施例1が98となり、比較例1〜4の変形量(100〜121)よりも少ない。
【0065】
比較例1においては、弾性率は23℃、65℃及び膨潤後のいずれにおいても大きいが、側突試験進入量も大きく、これはメルトテンションが小さいことにより燃料タンク1の肉厚均一性が損なわれるためである。また、比較例2〜4においては、弾性率は23℃、65℃及び膨潤後のいずれにおいても小さいが側突試験進入量は大きい。このため、上記の(1)〜(3)の物性を有する本発明の高密度ポリエチレン(HDPE)を含有する燃料タンク1は側突試験進入量が少なく、好ましい。
【0066】
ボトル耐火試験は、実施例1及び比較例1〜4の各高密度ポリエチレン(HDPE)で肉厚2mmの500ccボトルを作成し、水を満量まで注入し、ガスバーナーで約20mmの900℃の炎が接触するように加熱し、穴が開くまでの時間を測定した。
本発明の高密度ポリエチレン(HDPE)を使用した実施例1と弾性率、メルトフローレート及びメルトテンションの値の異なる高密度ポリエチレン(HDPE)を使用した比較例1〜4と比べると、穴開き時間は、実施例1が110秒であり、比較例1、3、4の穴開き時間(89、100、94)よりも長い。
【0067】
比較例2の穴開き時間は、113秒であり、実施例1と略同じであるが、最大加圧変形量及び側突試験進入量においては、実施例1よりも劣っており、総合的に見て、実施例1が比較例1〜4よりも優れた性能を有している。
【符号の説明】
【0068】
1 燃料タンク
10 外壁
11 表皮層
12 外部本体層
13 外部接着剤層
14 バリヤ層
15 内部接着剤層
16 内部本体層
図1
図2