特許第5761815号(P5761815)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フェデラル−モーグル コーポレイションの特許一覧

特許5761815難燃性組成物およびそれから連続的な材料を形成する方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5761815
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】難燃性組成物およびそれから連続的な材料を形成する方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/02 20060101AFI20150723BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20150723BHJP
   C08K 5/51 20060101ALI20150723BHJP
   B29C 47/40 20060101ALI20150723BHJP
   B29K 67/00 20060101ALN20150723BHJP
【FI】
   C08L67/02
   C08K5/3492
   C08K5/51
   B29C47/40 Z
   B29K67:00
【請求項の数】20
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-257442(P2012-257442)
(22)【出願日】2012年11月26日
(62)【分割の表示】特願2009-529425(P2009-529425)の分割
【原出願日】2007年9月24日
(65)【公開番号】特開2013-57078(P2013-57078A)
(43)【公開日】2013年3月28日
【審査請求日】2012年12月20日
(31)【優先権主張番号】60/826,798
(32)【優先日】2006年9月25日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】11/859,428
(32)【優先日】2007年9月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599058372
【氏名又は名称】フェデラル−モーグル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100064746
【弁理士】
【氏名又は名称】深見 久郎
(74)【代理人】
【識別番号】100085132
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100083703
【弁理士】
【氏名又は名称】仲村 義平
(74)【代理人】
【識別番号】100096781
【弁理士】
【氏名又は名称】堀井 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100098316
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 久登
(74)【代理人】
【識別番号】100111246
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 伸夫
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ミン−ミン
【審査官】 藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】 特表2000−509738(JP,A)
【文献】 特開2000−178459(JP,A)
【文献】 特開2003−226819(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/000973(WO,A1)
【文献】 特表2004−517994(JP,A)
【文献】 特開2005−240035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 67/00 − 67/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲンフリー難燃性連続材料を形成する方法であって、
下記組成物の5〜12重量%の、第1の粒径を有するポリリン酸メラミンを供給するステップと、
下記組成物の5〜12重量%の、前記ポリリン酸メラミンの第1の粒径より小さな第2の粒径を有するシアヌル酸メラミンを供給するステップと、
下記組成物の76〜90重量%の間の、100μm未満の粉末の形態であるポリ(エチレンテレフタレート)を供給するステップと、
前記シアヌル酸メラミン、前記ポリリン酸メラミンおよび前記ポリ(エチレンテレフタレート)の組成物を形成するステップと、
前記組成物を押出成形するステップとを備え
前記連続材料が、薄膜もしくはシートまたはフィラメントもしくは糸である、方法。
【請求項2】
前記組成物を形成するために、前記シアヌル酸メラミン、前記ポリリン酸メラミンおよび前記ポリ(エチレンテレフタレート)を二軸押出機に導入するステップをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記導入ステップ中、前記シアヌル酸メラミン、前記ポリリン酸メラミンおよび前記ポリ(エチレンテレフタレート)の水分含有量を100ppm以下に維持する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記導入ステップ中、前記シアヌル酸メラミン、前記ポリリン酸メラミンおよび前記ポリ(エチレンテレフタレート)の水分含有量を50ppm以下に維持する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物の0〜0.5重量%を構成する安定剤を前記組成物に添加するステップをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
連続的なフィラメントとして前記組成物を押出成形する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
粒径が5μmの微粉末として前記ポリリン酸メラミンを供給する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
粒径が2μmの微粉末として前記シアヌル酸メラミンを供給する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
粒径が100μm未満の粉末として前記ポリ(エチレンテレフタレート)を供給する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
粒径が40μm未満の粉末として前記ポリ(エチレンテレフタレート)を供給する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記押出機に導入する前に、前記シアヌル酸メラミンおよび前記ポリリン酸メラミンおよび前記ポリ(エチレンテレフタレート)を予混合するステップをさらに備える、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ハロゲンフリー難燃性組成物であって、
前記組成物の5〜12重量%の、第1の粒径を有するポリリン酸メラミンと、
前記組成物の5〜12重量%の、前記第1の粒径より小さな第2の粒径を有するシアヌル酸メラミンと、
前記組成物の76〜90重量%の間の、100μm未満の粉末の形態であるポリ(エチレンテレフタレート)とを含む、組成物。
【請求項13】
安定剤をさらに含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記安定剤は、前記組成物の0.01〜0.5重量%を構成する、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記シアヌル酸メラミン、前記ポリリン酸メラミンおよび前記ポリ(エチレンテレフタレート)は、100ppm以下の合算水分含有量を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
前記シアヌル酸メラミン、前記ポリリン酸メラミンおよび前記ポリ(エチレンテレフタレート)は、50ppm以下の合算水分含有量を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項17】
前記ポリリン酸メラミンは、粒径が5μmの微粉末である、請求項12に記載の組成物。
【請求項18】
前記シアヌル酸メラミンは、粒径が2μm以下の微粉末である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記ポリ(エチレンテレフタレート)は、粒径が100μm未満の粉末である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記ポリ(エチレンテレフタレート)は、粒径が40μm未満の粉末である、請求項19に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、概して難燃性材料に関し、より特定的には、押出成形された難燃性組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
難燃性糸から織物を製造することは公知であり、その織物を用いて、品物を火炎に晒されることから保護できる。たとえば、スリーブ内に含まれるワイヤなどの細長い品物を保護するために、編組スリーブ、織りスリーブまたは編みスリーブを難燃性糸から作ることが公知である。望ましい難燃特性を有する1つの公知の組成物原料は、シアヌル酸メラミン(melamine cyanurate)(MC)である。
【0003】
本明細書における譲受人は米国特許第6,828,365号の譲受人でもあり、米国特許第6,828,365号では、MCは、難燃性ポリホスホン酸充填剤、ならびにポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(エチレンナフタレート)からなる群から選択されるポリマーと混合され、次いで押出成形されて、難燃性モノフィラメントを形成する。ポリホスホン酸塩は、同様に難燃性であるため、結果として生じるモノフィラメントにさらなる難燃特性を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6,828,365号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在市販されているハロゲンフリー難燃性ポリ(エチレンテレフタレート)(flame-retardant poly(ethylene terephthalate))(FR−PET)は、全文が引用によって本明細書に援用される米国特許第4,086,208号におけるようなPET重合プロセスの重縮合段階において有機リン化合物を添加することによって作られる。残念ながら、このリン含有PET(P−FR−PET)の難燃特性は、最も厳しい炎色試験要件を満たさない。特に、燃焼時間および火炎広がり距離が長すぎて、火炎ドリップ(flaming drips)を放出する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ハロゲンフリー難燃性組成物は、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ならびに難燃性原料シアヌル酸メラミン(MC)およびポリリン酸メラミン(melamine polyphosphate)(MPP)を含む。さらなる安定剤および処理剤を、それぞれ、約0.5重量%まで、および化合されたMCおよびMPPの重量部の1/3まで組成物に組入れることが意図される。組成物は、モノフィラメントおよびマルチフィラメントを含む薄膜またはシートとして、およびフィラメントまたは糸としても押出成形されることができる。
【0007】
この発明の別の局面は、押出成形プロセスで用いられるハロゲンフリー難燃性組成物を形成する方法を含む。この方法は、MC、MPPおよびPETを含む原料を供給するステップと、概して均一な原料の組成物を形成するために原料を二軸押出機に導入するステップとを備える。組成物は次いで、モノフィラメントおよびマルチフィラメントを含む難燃性薄膜もしくはシートまたは糸フィラメントを押出成形するために、後のまたは下流の押出成形プロセスで用いられることができる。MC、MPPおよびPETの3つの原料に加えて、安定剤および処理剤を含む添加剤を混合段階中に組入れることが意図される。
【0008】
この発明のさらに別の局面に従って、押出成形プロセスで用いられるハロゲンフリー難燃性組成物を形成する方法は、MC、MPPおよびPET原料を微粉末の形態で供給するステップと、二軸押出機に導入する前に原料を予混合するステップとを含み得ることが意図される。
【0009】
この発明のさらに別の局面に従って、MC、MPPおよびPETは、100ppm以下の合算水分含有量を含むことが意図される。
【0010】
この発明のさらに別の局面に従って、MC、MPPおよびPETは、50ppm以下の合算水分含有量を含むことが意図される。
【発明の効果】
【0011】
したがって、この発明に従うハロゲンフリー難燃性組成物は、優れた難燃特性を有し、製造の際に経済的であり、防護服、家具、室内装飾材料、マットレスおよび寝具類、電子機器、電気通信および運送を含むがそれらに限定されないさまざまな業界で用いられる薄膜、シートおよび糸を形成する際に有用であり、フィラメント糸は、たとえば溶融堆積物モデリングプロセスでも用いられて部品を構築することができ、使用寿命が長い。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明の現時点で好ましい1つの実施の形態に従うハロゲンフリー難燃性組成物は、PETならびに難燃性(FR)原料MCおよびMPPを含む。MCは組成物の約5〜12重量%を構成することができ、MPPは組成物の約5〜12重量%を構成することができ、PETは通常、組成物の残余を構成する。さらなる安定剤/酸化防止剤は組成物の多くとも約0.5重量%までを構成することができ、さらに、組成物は、化合されたMCおよびMPPの重量部の多くとも約1/3までの処理剤/鎖延長剤を含むことができることが意図される。組成物は、モノフィラメントまたはマルチフィラメントを含む薄膜またはシートとして、および連続的なフィラメントまたは糸としても、混合プロセスから後のまたは下流の押出成形プロセスにおいて押出成形されることができる。
【0013】
現時点で好ましい1つの製造プロセスでは、混合段階においてMCおよびMPP原料を導入する形態が制御される。粒径が約2μmのMCが供給され、粒径が約5μmのMPPが供給される。MCおよびMPP粒子の大きさはある程度変化し得るが、粒径が小さければ小さいほど、得られる結果がよくなると考えられている。
【0014】
MCおよびMPP微粉末の拡散を容易にするため、および起こり得る凝集を低減または排除するため、MCおよびMPP微粉末はPET粉末と予混合されることができ、PET粉末は、化合されたMCおよびMPP微粉末の量の約2倍以上の割合で供給される。PET粉末の粒径は、好ましくは100μm未満であり、より好ましくは40μm未満である。PETを粉末の形態で供給することによって、MCおよびMPPが付着するためのキャリア表面積が増大すると考えられており、キャリア表面積は、この場合、PET粉末の露出表面積によってもたらされる。
【0015】
さらに、混合段階において導入されるときの原料の水分含有量が好ましくは制御される。MC、MPPおよびPETの合計または合算水分含有量は通常、約100ppm未満になるように、より好ましくは約50ppm未満になるように制御される。別々の原料の各々をそれぞれの合計水分含有量レベル以下に維持することがさらに好ましい。
【0016】
この発明の別の局面に従って、押出成形プロセスで用いられるハロゲンフリー難燃性組成物を形成する方法を提供する。この方法は、MC、MPPおよびPETの原料を供給するステップと、次いで、原料を概して均一な組成物に混合するために原料を二軸押出機に導入するステップとを含む。原料は予混合され、次いで二軸押出機の前端におけるホッパーに導入され得ることが意図される。これにより、PET全体にわたるMCおよびMPPの拡散が向上し、それによって、凝集を低減または排除する。MC、MPPおよびPETの予混合物を供給することによって、押出機のスクリュを、原料上の最小限のせん断量を与える形状とし得るとも考えられる。PETの導入は二軸押出機の前端におけるホッパーによって混合の初期段階で行なわれることができ、一方、MCおよびMPPはサイドフィーダによって下流に導入できることも意図される。さらに、これらにかかわらず、原料は所望の如く混合段階の任意の段階で導入できることが意図される。
【0017】
混合中、原料の温度を約250〜260℃の間に維持することが好ましいと考えられている。さらに、ポリマー鎖上の最小限のせん断量を与える一方で依然としてすべての原料を完全に混ぜ合わせて均一な組成物を提供できるスクリュ構成を利用することが有益であると考えられている。原料を混合すると、組成物は次いで、たとえば後の押出成形プロセスのためにペレットにされることができる。
【0018】
次いで、組成物ペレットは、難燃性薄膜もしくはシートまたは連続的な糸フィラメントを押出成形するために、後のまたは下流の押出成形プロセスで用いられることができる。糸フィラメントはモノフィラメントまたはマルチフィラメントのいずれかとして形成されることができ、フィラメントは最終的には、たとえば防護難燃性スリーブまたは他の難燃性製品用としての織物を所望の如く形成するためなど、さまざまな編成、製織または編組プロセスでの使用に好適である。フィラメント糸は、たとえば溶融堆積物モデリングプロセスでも用いられて部品を構築することができる。
【0019】
明らかに、上記の教示に鑑みて、この発明の多くの修正および変更が可能である。したがって、添付の特許請求の範囲内で、およびこの出願に関連する許可されたその他の特許請求の範囲内で、具体的に記載されるものとは別の態様でこの発明を実施してもよいことが理解されるべきである。