(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記防振機構及び上記免振支持機構は、周波数10Hzおいて、上記防振機構による振動の減衰量が上記免振支持機構による振動の減衰量よりも6dB以上大きくなるように構成されている請求項1記載の動画撮像用カメラ。
上記免振支持機構は、上記支持フレームに回動可能に取り付けられたアームと、このアームの回動に対して粘弾性力を作用させるばね及びダンパーと、上記撮像用光学系の光軸方向にスライド可能に上記アームに対して取り付けられ、上記アームと上記撮像ユニットとを連結するクランプ部材と、を有し、上記クランプ部材をスライドさせることにより振動減衰率を調整する請求項1乃至4の何れか1項に記載の動画撮像用カメラ。
さらに、上記支持フレームに対する上記撮像ユニットの変位量を指示する、上記免振支持機構調整用の指示部を有する請求項1乃至6の何れか1項に記載の動画撮像用カメラ。
上記ブロック状の粘弾性部材又は上記円筒状の粘弾性部材は、上記撮像ユニットが上記支持フレームに対して上記撮像用光学系の光軸に直交する方向に変位されたとき、剪断変形されるように上記撮像ユニットと上記支持フレームを連結する請求項9記載の動画撮像用カメラ。
上記免振支持機構は、上記撮像ユニットの重心を通り、かつ上記撮像用光学系の光軸に平行な軸線に対して回転対称な位置に配置されている請求項9又は10記載の動画撮像用カメラ。
上記免振支持機構は、上記撮像ユニットの重心を通り、上記撮像用光学系の光軸に直交する平面の両側に配置され、上記平面内の外力が上記撮像ユニットに加えられたとき、上記撮像用光学系の光軸がほぼ平行移動されるように構成されている請求項9乃至11の何れか1項に記載の動画撮像用カメラ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、構造物に固定して使用されるカメラにおいては、振れの周波数が高く、カメラに備えられた防振機構では十分に振れ補正ができないという問題がある。即ち、使用者がカメラを構えた場合の手振れは、低周波数成分が大部分であり、或る程度以上の周波数の振れは殆ど存在していない。このため、カメラの振れを検出し、これに基づいてアクチュエータにより防振レンズ又は撮像素子を駆動する防振機構により、十分に手振れを補正することが可能である。
【0006】
これに対し、構造物に固定して使用されるカメラでは、カメラに作用する振れの周波数が、使用者がカメラを構えた場合よりも非常に高い周波数に及ぶので、アクチュエータを駆動する防振機構では応答することができず、十分な振れ補正ができないという問題がある。例えば、建築物が鉄道の線路の近くに建てられているような場合、このような周波数の高い振動成分が特に多くなり、十分な振れ補正が困難になる。
【0007】
さらに、カメラに周波数の高い衝撃的な振動が加えられた場合、カメラに備えられた防振機構は、この振れを補正するように作用する。しかしながら、防振機構が応答できない高い周波数の振れが加えられた場合、防振機構は、衝撃的な振動が加えられた後、時間遅れを伴ってアクチュエータを作動させることになる。このため、カメラに加えられた振動が収束した後に、防振機構が防振レンズ又は撮像素子を駆動することになり、このような場合には、カメラに防振機構が備えられていることにより却って画像の振れが多くなってしまうという問題がある。
【0008】
従って、本発明は、周波数の高い振れが加えられた場合にも効果的に像振れを抑制することができる像振れ防止機能を備えた動画撮像用カメラを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明は、像振れ防止機能を備えた動画撮像用カメラであって、動画を撮像する撮像ユニットと、この撮像ユニットを支持する免振支持機構を備えた支持フレームと、を有し、撮像ユニットは、撮像用光学系と、この撮像用光学系によって合焦された光を受光する撮像素子と、撮像素子上に形成される画像を安定化する防振機構と、を有し、周波数fにおける防振機構による振動減衰率のdB表記をS
a(f)、周波数fにおける免振支持機構による振動減衰率のdB表記をS
p(f)、所定の目標減衰率のdB表記をS
0、撮像ユニットで撮像される動画のフレームレート周波数を2f
0とするとき、f
0以上の周波数において、S
a(f)+S
p(f)<S
0 が成り立つことを特徴としている。
【0010】
このように構成された本発明においては、動画を撮像する撮像ユニットが、免振支持機構を介して支持フレームによって支持される。撮像ユニットは、防振機構を備え、撮像用光学系によって撮像素子上に合焦される画像が安定化される。防振機構及び免振支持機構は、周波数fにおける防振機構による振動減衰率のdB表記をS
a(f)、周波数fにおける免振支持機構による振動減衰率のdB表記をS
p(f)、所定の目標減衰率のdB表記をS
0、撮像ユニットで撮像される動画のフレームレート周波数を2f
0とするとき、f
0以上の周波数において、S
a(f)+S
p(f)<S
0 が成り立つように構成されている。
【0011】
このように構成された本発明によれば、免振支持機構と防振機構の相乗効果により、動画撮像用カメラに、周波数の高い振れが加えられた場合にも効果的に像振れを抑制することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、防振機構及び免振支持機構は、所定のクロス周波数f
cよりも高い周波数においては、免振支持機構による振動の減衰量が防振機構による振動の減衰量よりも大きく、クロス周波数f
cよりも低い周波数においては、防振機構による振動の減衰量が免振支持機構による振動の減衰量よりも大きくなるように構成されている。
【0013】
このように構成された本発明によれば、クロス周波数f
cよりも高い周波数の振動は、主に免振支持機構により減衰されるので、撮像ユニットに備えられた防振機構に作用する高い周波数の振動が抑制され、防振機構に高周波振動が加えられることにより、画像の振れが却って大きくなるという弊害を回避することができる。また、クロス周波数f
cよりも低い周波数の振動は、主に防振機構により減衰されるので、免振支持機構による振動減衰効果を低周波数まで発揮させることにより、撮像ユニットの支持が不安定になるのを防止することができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、所定のクロス周波数f
cは20乃至40Hzである。
このように構成された本発明によれば、クロス周波数f
cが20乃至40Hzに設定されているので、防振機構及び免振支持機構を、容易に設計することができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、防振機構及び免振支持機構は、周波数10Hzにおいて、防振機構による振動の減衰量が免振支持機構による振動の減衰量よりも6dB以上大きくなるように構成されている。
このように構成された本発明によれば、低周波数における免振支持機構による振動の減衰量を十分に小さく設定することができるので、免振支持機構で支持することによる撮像ユニットのふらつきを、十分に抑制することができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、免振支持機構は、支持フレームに回動可能に取り付けられたアームと、このアームの回動に対して粘弾性力を作用させるばね及びダンパーと、撮像用光学系の光軸方向にスライド可能にアームに対して取り付けられ、アームと撮像ユニットとを連結するクランプ部材と、を有し、クランプ部材をスライドさせることにより振動減衰率を調整する。
【0017】
このように構成された本発明によれば、撮像ユニットの全部又は一部を交換可能に構成した動画撮像用カメラにおいて、免振支持機構の特性を、装着されている撮像ユニットにあわせて簡単に調整することができ、これにより、像振れ防止効果を適切に設定することができる。
【0018】
本発明において、好ましくは、免振支持機構は、撮像用光学系の光軸を含む平面の両側に配置されている。
このように構成された本発明によれば、撮像ユニットが免振支持機構によりバランス良く支持されるので、動画撮像用カメラに光軸方向の振動が加えられた場合に、光軸に直交する方向の振動が励起されるのを防止することができる。
【0019】
本発明において、好ましくは、さらに、支持フレームに対する撮像ユニットの変位量を指示する、免振支持機構調整用の指示部を有する。
このように構成された本発明によれば、免振支持機構調整用の指示部を参照することにより、免振支持機構を適切な特性に、容易に調整することができる。
【0020】
本発明において、好ましくは、支持フレームは、撮像ユニットの少なくとも一部を覆うケースである。
このように構成された本発明によれば、支持フレームが、撮像ユニットを覆うので、撮像ユニットを保護することができる。
【0021】
また、本発明は、像振れ防止機能を備えた動画撮像用カメラであって、動画を撮像する撮像ユニットと、この撮像ユニットを支持する免振支持機構を備えた支持フレームと、を有し、撮像ユニットは、撮像用光学系と、この撮像用光学系によって合焦された光を受光する撮像素子と、撮像素子上に形成される画像を安定化する防振機構と、を有し、免振支持機構は、撮像ユニットと支持フレームを連結するブロック状の粘弾性部材又は円筒状の粘弾性部材であ
り、周波数fにおける防振機構による振動減衰率のdB表記をSa(f)、周波数fにおける免振支持機構による振動減衰率のdB表記をSp(f)、所定の目標減衰率のdB表記をS0、撮像ユニットで撮像される動画のフレームレート周波数を2f0とするとき、f0以上の周波数において、Sa(f)+Sp(f)<S0が成り立つことを特徴としている。
【0022】
このように構成された本発明においては、動画を撮像する撮像ユニットが、免振支持機構を介して支持フレームによって支持される。撮像ユニットは、防振機構を備え、撮像用光学系によって撮像素子上に合焦される画像が安定化される。また、免振支持機構は、撮像ユニットと支持フレームを連結するブロック状の粘弾性部材又は円筒状の粘弾性部材である。
【0023】
このように構成された本発明によれば、粘弾性部材により簡単な構造で免振支持機構を構成することができると共に、免振支持機構と防振機構の相乗効果により、動画撮像用カメラに、周波数の高い振れが加えられた場合にも効果的に像振れを抑制することができる。
【0024】
本発明において、好ましくは、ブロック状の粘弾性部材又は円筒状の粘弾性部材は、撮像ユニットが支持フレームに対して撮像用光学系の光軸に直交する方向に変位されたとき、剪断変形されるように撮像ユニットと支持フレームを連結する。
【0025】
このように構成された本発明によれば、粘弾性部材が剪断変形されることにより、効果的に振動エネルギーを吸収し、撮像ユニットに伝達される振動を効果的に減衰させることができる。
【0026】
本発明において、好ましくは、免振支持機構は、撮像ユニットの重心を通り、かつ撮像用光学系の光軸に平行な軸線に対して回転対称な位置に配置されている。
このように構成された本発明によれば、免振支持機構が、撮像用光学系の光軸に平行な軸線に対して回転対称な位置に配置されているので、撮像ユニットをバランス良く支持することができ、光軸に直交する方向の振動が加えられることにより、撮像ユニットを光軸を中心に回転させる振動が励起されるのを抑制することができる。
【0027】
本発明において、好ましくは、免振支持機構は、撮像ユニットの重心を通り、撮像用光学系の光軸に直交する平面の両側に配置され、平面内の外力が撮像ユニットに加えられたとき、撮像用光学系の光軸がほぼ平行移動されるように構成されている。
【0028】
このように構成された本発明によれば、撮像ユニットをバランス良く支持することができ、光軸に直交する方向の振動が加えられることにより、撮像ユニットの光軸を傾斜させる振動が励起されるのを抑制することができる。
【0029】
本発明において、好ましくは、支持フレームを構造物に固定して使用する監視用カメラである。
このように構成された本発明によれば、支持フレームを固定した構造物が高い周波数で振動された場合においても、効果的に像の振れを抑制することができ、鮮明な監視画像を撮影することができる。
【0030】
本発明において、好ましくは、撮像素子が赤外光の画像を撮像するように構成されている。
このように構成された本発明によれば、暗い場所においても、画像を撮影することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の動画撮像用カメラによれば、周波数の高い振れが加えられた場合にも効果的に像振れを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
次に、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
まず、
図1乃至
図7を参照して、本発明の第1実施形態による監視用カメラを説明する。
図1は本実施形態による監視用カメラ1の斜視図である。
図2は撮像ユニットの支持機構をモデル化した図である。
図1に示すように、動画撮像用カメラである監視用カメラ1は、支持フレームであるカメラ外ケース12と、このカメラ外ケース12の内部に支持された撮像ユニット16と、を有する。
【0034】
カメラ外ケース12は、前方が開放した直方体形状のケースであり、内部に撮像ユニット16が収容されている。
図1に示すように、撮像ユニット16は、免振支持機構を構成する粘弾性部材18により、カメラ外ケース12の内部に免振支持されている。粘弾性部材18は、粘弾性材料で構成されたブロック状の部材であり、撮像ユニット16のカメラ側取付部16aとカメラ外ケース12のケース側取付部12aを連結している。撮像ユニット16を粘弾性部材18で支持することにより、撮像ユニット16に所定の周波数の振動が作用するのを防止している。
【0035】
また、
図1に示すように、本実施形態においては、粘弾性部材18は、撮像ユニット16の前端部の両側に2つ、後端部の両側に2つ取り付けられている。従って、本実施形態においては、粘弾性部材18は、撮像ユニット16の光軸Aを含む平面の両側に配置されている。また、粘弾性部材18は、光軸Aから等距離の位置に配置されている。従って、粘弾性部材18は、光軸Aに平行な軸線に対して回転対称な位置に配置されている。
【0036】
さらに、
図2に示すように、本実施形態においては、粘弾性部材18は、撮像ユニット16の重心Gを通り、撮像ユニット16の光軸Aに直交する方向の推力Fが加えられたとき、光軸Aが平行移動されるように構成され配置されている。即ち、各粘弾性部材18は、各々発生する弾性力が撮像ユニット16に及ぼす、撮像ユニット16の重心G回りの力のモーメントが釣り合うように構成されており、
図2に示す例では、軸線A1に位置していた光軸Aが推力Fを加えることにより軸線A2に平行移動されている。
【0037】
また、
図2に示すように、各粘弾性部材18は、撮像ユニット16が光軸Aに直交する方向に振動された際、剪断変形されるように、撮像ユニット16とカメラ外ケース12を連結している。
【0038】
さらに、撮像ユニット16には、その重心Gを通り、撮像ユニット16の光軸Aに直交する平面P内に位置するように、重心指標16cが設けられている。従って、重心指標16cに光軸Aに直交する方向の推力Fを加えることにより、推力Fの作用線が重心Gを通るようになる。この推力Fにより、光軸Aが平行移動されるように各粘弾性部材18を構成、配置することにより、カメラ外ケース12が光軸Aに直交する方向に並進振動された際、撮像ユニット16に回転振動が励起されることがない。
【0039】
また、
図2に示すように、撮像ユニット16のカメラ側取付部16a、カメラ外ケース12のケース側取付部12aには、夫々カメラ側指示部16b、ケース側指示部12bが取り付けられている。各カメラ側指示部16bとケース側指示部12bは、推力Fが加えられていないとき互いに合致するように取り付けられており、推力Fを加えることにより各カメラ側指示部16bが変位して、ケース側指示部12bからずれる。推力Fによる各カメラ側指示部16bの変位を測定することにより、撮像ユニット16の光軸Aが平行移動されているか否かを確認することができる。
【0040】
次に、
図3を参照して、粘弾性部材18による振動減衰効果を説明する。
図3は免振支持機構である粘弾性部材による振動減衰率の一例を示すグラフである。
図3は、粘弾性部材18で撮像ユニット16を支持することによる振動減衰率のdB表記を実線に、撮像ユニット16の振動の位相遅れを破線に示している。
図3に示すように、撮像ユニット16の振動は粘弾性部材18で支持することにより減衰し、1Hzにおける振動減衰率のdB表記は約0dB、10Hzにおいては約−4dB、30Hzにおいては約−12dB、60Hzにおいては約−20dBとなり、周波数が高くなるほど減衰量が大きくなっている。
【0041】
次に、
図4を参照して、本明細書における振動減衰率の定義を説明する。
図4は、カメラ外ケース12の振動変位と、撮像ユニット16の振動変位を模式的に示す図である。
図4に示すように、カメラ外ケース12を光軸Aに直交する方向に正弦波状に振動させると、カメラ外ケース12の内部に粘弾性部材18によって支持された撮像ユニット16も振動される。このとき、撮像ユニット16は、光軸Aに直交する方向に、ほぼ正弦波状に振動され、カメラ外ケース12の振動とは必ずしも位相は一致していないが、カメラ外ケース12と同一の周波数で振動される。ここで、カメラ外ケース12を加振する周波数をfHz、変位振幅をA
in(f)、撮像ユニット16が振動される変位振幅をA
out(f)とすると、粘弾性部材18による振動減衰率のdB表記S
p(f)は、
S
p(f)=20log
10(A
out(f)/A
in(f)) (1)
と計算される。
【0042】
次に、
図5を参照して、撮像ユニット16の構成を説明する。
図5は、撮像ユニット16の構成を模式的に示す斜視図である。
図5に示すように、撮像ユニット16には、撮像素子20と、この撮像素子20に画像を合焦させる撮像用光学系22と、この撮像用光学系22の中の像振れ防止用レンズ22aを駆動して、合焦される画像を安定化させる防振アクチュエータ24が内蔵されている。さらに、撮像ユニット16には、撮像ユニット16の回転角速度を検出するカメラ振動検出手段であるカメラジャイロセンサ26が内蔵されている。さらに、撮像ユニット16には、カメラジャイロセンサ26の検出信号に基づいて防振アクチュエータ24を制御する制御部30が内蔵されている。従って、防振アクチュエータ24は、防振機構として機能する。
【0043】
撮像素子20は、撮像素子20上に合焦された画像を電気信号に変換するように構成されている。また、本実施形態においては、撮像素子20は赤外光の画像を撮像するように構成されている。
撮像用光学系22は、撮像ユニット16に入射した光を撮像素子20上に合焦させるように構成されている。撮像用光学系22の中の一部のレンズは、像振れ防止用レンズ22aとして設けられており、この像振れ防止用レンズ22aを防振アクチュエータ24によって移動させることにより、撮像ユニット16が振動した場合においても、撮像素子20上に形成される画像の振れが抑制される。
【0044】
防振アクチュエータ24は、像振れ防止用レンズ22aを光軸Aに直交する平面内で移動させるように構成されている。防振アクチュエータ24は、像振れ防止用レンズ22aを光軸Aに直交する平面内で駆動する2つのリニアモータ(図示せず)と、像振れ防止用レンズ22aが移動された位置を検出する2つの位置センサ(図示せず)と、を有する。2つのリニアモータ(図示せず)は、光軸Aに直交する平面内で、像振れ防止用レンズ22aを互いに直交するX方向、Y方向に駆動するように夫々配置されている。これにより、像振れ防止用レンズ22aを光軸Aに直交する平面内で任意の位置に並進移動させることができる。位置センサ(図示せず)は、像振れ防止用レンズ22aのX方向、Y方向の移動を検出するように配置されている。
なお、防振アクチュエータは3つ以上のリニアモータを備えていても良く、また、X方向、Y方向の移動に加え、像振れ防止用レンズを回転させることができるように防振アクチュエータを構成することもできる。
【0045】
カメラジャイロセンサ26は、撮像ユニット16に取り付けられ、撮像ユニット16の回転角速度を検出するように構成されている。また、カメラジャイロセンサ26は、光軸Aに直交する平面内のX軸を中心とする回転角速度を検出するXセンサ部(図示せず)と、Y軸を中心とする回転角速度を検出するYセンサ部(図示せず)を内蔵しており、各方向の回転角速度を検出できるように構成されている。カメラジャイロセンサ26により検出された角速度信号は、制御部30に入力される。
【0046】
制御部30は、カメラジャイロセンサ26の検出信号に基づいて、防振アクチュエータ24を制御し、撮像素子20上に形成される画像の振れを抑制するように構成されている。制御部30は、カメラジャイロセンサ26から入力された信号に基づいて、像振れ防止用レンズ22aを移動させるべき位置を計算する。さらに、制御部30はリニアモータ(図示せず)に信号を出力して、像振れ防止用レンズ22aを計算された位置に向けて移動させる。移動された像振れ防止用レンズ22aの位置は、位置センサ(図示せず)によって検出され、制御部30にフィードバックされる。なお、制御部30は、各種演算回路、フィルター等のアナログ回路によって構成することができる。或いは、制御部30を、各検出信号をデジタルデータに変換するA/D変換器、各種演算を行うマイクロプロセッサ、デジタルデータをアナログ信号に変換して出力するD/A変換器等によって構成することもできる。
【0047】
次に、
図6を参照して、防振アクチュエータ24による振動減衰効果を説明する。
図6は防振機構である防振アクチュエータによる振動減衰率の一例を示すグラフである。
図6は、防振アクチュエータ24で像振れ防止用レンズ22aを駆動することにより、撮像素子20に形成される像の振動減衰率のdB表記を実線に、撮像素子20に形成される像の振動の位相遅れを破線に示すグラフである。
図6に示すように、撮像素子20に形成される像の振動は像振れ防止用レンズ22aを駆動することによりし、1Hzにおける振動減衰率のdB表記は約−28dB、10Hzにおいては約−21dB、30Hzにおいては約−13dB、60Hzにおいては約−6dBとなり、周波数が低くなるほど減衰量が大きくなっている。
【0048】
次に、撮像素子20に形成される像の振動減衰率について説明する。
まず、撮像ユニット16を光軸Aに直交する方向に正弦波状に振動させると、撮像素子20に形成される像も振れる。これに対して防止用レンズ22aが防振アクチュエータ24により駆動され、撮像素子20に形成される像の振れは抑制されるが、像には、撮像ユニット16の振動と同一の周波数のほぼ正弦波状の振れが残る。なお、
図6に示すように、像振れの位相は、撮像ユニット16の振動とは必ずしも位相は一致していない。ここで、撮像ユニット16が振動する周波数をfHz、撮像ユニット16の振動に対し防止用レンズ22aを駆動していない(防止用レンズ22aが固定されている)場合の撮像素子20に形成される像の振れの変位振幅をA
in(f)、防止用レンズ22aを駆動した場合において像が振れる変位振幅をA
out(f)とすると、防振アクチュエータ24による振動減衰率のdB表記S
a(f)は、
S
a(f)=20log
10(A
out(f)/A
in(f)) (2)
と計算される。
【0049】
次に、
図7を参照して、カメラ外ケース12が振動された場合における撮像素子20に形成される像の振れの減衰効果を説明する。
図7は監視用カメラ1の総合的な振動減衰率を示すグラフである。
図7においては、粘弾性部材18による振動減衰率S
p(f)を破線で、防振アクチュエータ24による振動減衰率S
a(f)を一点鎖線で、これらの振動減衰率の合成S(f)を実線で示している。
【0050】
図7に示すように、監視用カメラ1のカメラ外ケース12に加えられた振動は、粘弾性部材18により振動減衰率S
p(f)で示すように減衰され、残留した振動が撮像ユニット16に伝達される。撮像ユニット16に伝達された振動に起因する撮像素子20に形成される像の振れは、防振アクチュエータ24により振動減衰率S
a(f)で示すように減衰される。従って、カメラ外ケース12に加えられた振動に起因する撮像素子20に形成される像の振れは、粘弾性部材18による振動減衰率S
p(f)と防振アクチュエータ24による振動減衰率S
a(f)の和であるS(f)となる。
【0051】
本実施形態においては、粘弾性部材18及び防振アクチュエータ24は、これらの振動減衰率を合成したS(f)が、撮像する動画のフレームレートの1/2の周波数であるf
0Hz以上の周波数帯域において、目標減衰率のdB表記であるS
0=−25dBよりも小さくなる(負の側に値が大きくなる)ように設計されている。なお、本実施形態においては、フレームレート周波数は約30Hzであり、f
0=約15Hzとなる。
【0052】
また、本実施形態においては、粘弾性部材18による振動減衰率S
p(f)と防振アクチュエータ24による振動減衰率S
a(f)は、クロス周波数であるf
c(=約30Hz)で交差するように設計されている。即ち、クロス周波数f
cよりも低い周波数帯域においては防振アクチュエータ24による振動の減衰量が、粘弾性部材18による振動の減衰量よりも大きく(S
a(f)がS
p(f)よりもマイナス側に大きい)、クロス周波数f
cよりも高い周波数帯域においては粘弾性部材18による振動の減衰量が、防振アクチュエータ24による振動の減衰量よりも大きく(S
p(f)がS
a(f)よりもマイナス側に大きい)設計されている。また、クロス周波数f
cにおける振動減衰率S
a(f)及びS
p(f)は、目標減衰率S
0の約1/2である−13dBである。好ましくは、クロス周波数f
cは20乃至40Hzに設定する。
【0053】
さらに、本実施形態においては、1Hzにおける防振アクチュエータ24による振動の減衰量が、粘弾性部材18による振動の減衰量よりも約28dB大きく、15Hzにおいては防振アクチュエータ24の減衰量が、粘弾性部材18よりも約15dB大きくなるように設計されている。即ち、15Hz程度以下の周波数帯域においては、粘弾性部材18による振動の減衰量はごく僅かであり、減衰量の大部分が防振アクチュエータ24によるものとなるように設計されている。好ましくは、防振アクチュエータ24による振動の減衰量が十分大きくなる周波数、約10Hzにおいて、防振アクチュエータ24の減衰量が、粘弾性部材18よりも6dB以上大きく(防振効果が高く)なるように設計する。
【0054】
図7に示すように、受動的に振動を減衰させる粘弾性部材18は高い周波数の振動減衰に有効であり、能動的に振動を減衰させる防振アクチュエータ24は低い周波数の振動減衰に有効である。ここで、低い周波数の振動を粘弾性部材18により減衰させるには、弾性係数の小さい粘弾性部材を使用する必要がある。弾性係数の小さい部材を粘弾性部材18として使用すると、カメラ外ケース12が低い周波数で振動された場合における撮像ユニット16の振動振幅が大きくなる。防振アクチュエータ24は低い周波数の振動を効果的に減衰させることができるが、減衰させるべき振動の振幅が大きくなると、像振れ防止用レンズ22aが移動可能な可動限界を超えてしまうため十分な防振効果が得られなくなる。本実施形態においては、低い周波数における粘弾性部材18による減衰量を小さく抑えておくことにより、防振アクチュエータ24による十分な防振効果が得られるようになっている。
【0055】
本発明の第1実施形態の監視用カメラ1によれば、免振支持機構である粘弾性部材18と、防振機構である防振アクチュエータ24の相乗効果により、監視用カメラ1に、周波数の高い振れが加えられた場合にも効果的に像振れを抑制することができる。
【0056】
防振アクチュエータ24による振動減衰は応答遅れの影響により、周波数が高くなるにしたがって防振効果が低減する傾向を持っている。従って、低周波数の振動では十分な補正効果が得られるが、数十Hz程度になると防振効果は低下し、100Hzを超えた振動ではほとんど効果が得られない。
【0057】
一方、一般に動画撮像用のカメラは、そのフレームレートに応じて露光する最長の時間が制限される。即ち、1枚の画像を撮像するためにシャッターを開く時間はフレームレートが高いほど短い時間に制限され、フレームレートが高くなれば、カメラの振動が、動画を構成する1枚1枚の画像に与える像ぶれは少なくなる。
【0058】
これに対して、動画を構成する各フレーム間の揺れ、即ち、静止した被写体が、各フレームにおいて異なる位置に撮像されることによって発生する像の揺れは、動画カメラが往復振動される場合、周波数が高くなるにつれて大きくなり、フレームレートの1/2の周波数で最大になる。本実施形態の監視用カメラ1においては、フレームレートの1/2の周波数であるf
0Hz以上の周波数帯域において、目標減衰率であるS
0=−25dB以上の振動減衰量が大きくなるように構成されている。また、フレームレートの1/2の周波数で十分な振動減衰効果が得られる場合、それよりも遅い振動周波数においては、像ぶれは結果として小さくなる。
【0059】
更に、フレームレートの1/2よりも低い振動周波数においては、仮に動画の各フレーム間の揺れが大きくなったとしても、1枚1枚のフレームの画像のぶれは大きくならないので、監視用途のカメラとしては十分機能を発揮することができる。
【0060】
免振支持機構は能動的に制御されるものではないため、特に低周波数において免振支持機構による免振効果を大きくすると、撮像ユニット16の保持が不安定になり、撮像ユニット16の光軸を安定に維持することが難しくなる。したがって免振支持機構による免振効果は必要最小限にとどめることが望ましい。
【0061】
本発明の第1実施形態の監視用カメラ1によれば、フレームレートの1/2以上の周波数帯域において、粘弾性部材18と防振アクチュエータ24の複合的な効果によって必要十分な像振れ防止効果が得られるように構成されている。このため、粘弾性部材18による免振効果を必要最小限に設定することが可能になり、撮像ユニット16の光軸を安定に維持しながら、十分な像振れ防止効果を得ることができる。
【0062】
また、本発明の第1実施形態の監視用カメラ1によれば、クロス周波数f
cよりも高い周波数の振動は、主に粘弾性部材18により減衰されるので、撮像ユニット16に備えられた防振アクチュエータ24に作用する高い周波数の振動が抑制され、防振アクチュエータ24に高周波振動が加えられることにより、画像の振れが却って大きくなるという弊害を回避することができる。また、クロス周波数f
cよりも低い周波数の振動は、主に防振アクチュエータ24により減衰されるので、粘弾性部材18による振動減衰効果を低周波数まで発揮させることにより、撮像ユニットの支持が不安定になるのを防止することができる。
【0063】
さらに、本発明の第1実施形態の監視用カメラ1によれば、クロス周波数f
cが約30Hzに設定されているので、防振アクチュエータ24及び粘弾性部材18を、無理なく設計することができる。
【0064】
また、本発明の第1実施形態の監視用カメラ1によれば、防振アクチュエータ24及び粘弾性部材18は、防振アクチュエータ24による振動の減衰量が十分大きくなる周波数約10Hzにおいて、防振機構による振動の減衰量が免振支持機構による振動の減衰量よりも約15dB大きく(減衰効果が高く)なるように構成されている。このため、低周波数における粘弾性部材18による振動の減衰量を十分に小さく設定することができるので、粘弾性部材18で支持することによる撮像ユニット16のふらつきを、十分に抑制することができる。好ましくは、周波数約10Hzにおいて、防振機構による振動の減衰量が免振支持機構による振動の減衰量よりも約6dB以上大きく(減衰効果が高く)なるように構成する。
【0065】
さらに、本発明の第1実施形態の監視用カメラ1によれば、粘弾性部材18は、撮像用光学系の光軸を含む平面の両側に配置されている。このため、撮像ユニット16が粘弾性部材18によりバランス良く支持されるので、監視用カメラ1に光軸方向の振動が加えられた場合に、光軸に直交する方向の振動が励起されるのを防止することができる。
【0066】
また、本発明の第1実施形態の監視用カメラ1によれば、カメラ外ケース12に対する撮像ユニット16の変位量を指示する、免振支持機構調整用のケース側指示部12b、カメラ側指示部16bを有する。このため、ケース側指示部12b、カメラ側指示部16bが整合するように粘弾性部材18を選択することにより、免振支持機構を適切な特性に、容易に設定、調整することができる。
【0067】
さらに、本発明の第1実施形態の監視用カメラ1によれば、支持フレームが、撮像ユニットを覆うカメラ外ケース12として構成されているので、撮像ユニット16を保護することができる。
【0068】
また、本発明の第1実施形態の監視用カメラ1によれば、ブロック状の粘弾性部材18が、撮像ユニット16がカメラ外ケース12に対して撮像用光学系の光軸に直交する方向に変位されたとき、剪断変形されるように撮像ユニット16とカメラ外ケース12を連結している。このため、粘弾性部材18が剪断変形されることにより、効果的に振動エネルギーを吸収し、撮像ユニット16に伝達される振動を効果的に減衰させることができる。
【0069】
さらに、本発明の第1実施形態の監視用カメラ1によれば、粘弾性部材18が、撮像用光学系の光軸に対して回転対称な位置に配置されているので、撮像ユニット16をバランス良く支持することができ、光軸に直交する方向の振動が加えられることにより、撮像ユニット16を光軸を中心に回転させる振動が励起されるのを抑制することができる。
【0070】
また、本発明の第1実施形態の監視用カメラ1によれば、粘弾性部材18は、撮像ユニット16の重心を通り、撮像用光学系の光軸に直交する平面の両側に配置され、平面内の外力が撮像ユニット16に加えられたとき、撮像用光学系の光軸がほぼ平行移動されるように構成されている。このため、撮像ユニット16をバランス良く支持することができ、光軸に直交する方向の振動が加えられることにより、撮像ユニット16の光軸を傾斜させる振動が励起されるのを抑制することができる。
【0071】
さらに、本発明の第1実施形態の監視用カメラ1は、カメラ外ケース12を構造物に固定して使用することができ、構造物が高い周波数で振動された場合においても、効果的に像の振れを抑制し、鮮明な監視画像を撮影することができる。
また、本発明の第1実施形態の監視用カメラ1によれば、撮像素子20が赤外光の画像を撮像するように構成されているので、暗い場所においても、画像を撮影することができる。
【0072】
また、上述した第1実施形態においては、粘弾性部材18として粘弾性材料で構成されたブロック状の部材が使用されていたが、変形例として、複合材を粘弾性部材として使用することもできる。
図8に示すように、粘弾性部材として円筒状のものを使用することができる。
図8に示す粘弾性部材32は、スチール製のコイルスプリング34の外周に、粘弾性材料製のチューブ36が被せられたものである。この円筒状の粘弾性部材32は、その軸線が撮像ユニット16の光軸Aと概ね平行になるように向けられ、軸線方向の一方の端部32aをカメラ外ケース12に固定し、他方の端部32bを撮像ユニット16に固定して使用される。このように取り付けることにより、粘弾性部材32は、端部32aと端部32bが軸線に直交する方向にずれるように剪断変形される。
【0073】
次に、
図9及び
図10を参照して、本発明の第2実施形態の監視用カメラを説明する。本実施形態の監視用カメラは、撮像ユニットをカメラ外ケースに対して支持する免振支持機構が上述した第1実施形態とは異なる。従って、ここでは、本実施形態の第1実施形態とは異なる部分のみを説明し、同様の部分については説明を省略する。
【0074】
図9は、本発明の第2実施形態の監視用カメラの免振支持機構を模式的に表す断面図である。また、
図10は、
図9に示すクランプ部材の(a)拡大図及び(b)クランプ部材を光軸方向から見た図である。
【0075】
図9に示すように、本実施形態の監視用カメラにおいては、撮像ユニット16は、免振支持機構40a、40bによって、カメラ外ケース12に対して免振支持されている。なお、免振支持機構40a、40bは、
図9における上下方向に撮像ユニット16を支持するものであるが、監視用カメラには、
図9の紙面に直交する方向に撮像ユニット16を支持する免振支持機構(図示せず)も備えられている。
【0076】
図9に示すように、免振支持機構40aは、カメラ外ケース12に回動可能に取り付けられたアーム42aと、このアーム42aの回動に対して粘弾性力を作用させるばね44a及びダンパー46aと、撮像ユニット16に取り付けられたレール48aと、アーム42aとレール48aを連結するクランプ部材50aと、を有する。同様に、免振支持機構40bは、アーム42bと、ばね44b及びダンパー46bと、レール48bと、クランプ部材50bと、を有し、免振支持機構40aと実質的に同一に構成されている。従って、以下では、免振支持機構40aの構成のみを説明する。
【0077】
なお、
図9においては、アーム42a、42b、及びレール48a、48bは、夫々1本ずつ図示されているが、本実施形態においては、各アーム及びレールは、夫々平行に2本ずつ設けられている(
図10(b)参照)。従って、アーム42aの回動により撮像ユニット16の鉛直方向の変位が許容され、この変位方向は、撮像ユニット16の光軸を含む鉛直な平面と平行であり、免振支持機構40aは、この平面の両側に配置されている。また、免振支持機構40b、及び
図9の紙面に直交する方向に撮像ユニット16を支持する免振支持機構(図示せず)も同様に配置されている。
【0078】
アーム42aは棒状の部材であり、一端がカメラ外ケース12の内側に、回動可能に取り付けられ、他端がばね44a及びダンパー46aに接続され、撮像ユニット16の光軸Aとほぼ平行に延びるように配置されている。
【0079】
ばね44a及びダンパー46aは、並列に接続され、夫々、一端がカメラ外ケース12の内側に取り付けられ、他端がアーム42aの先端に取り付けられている。これにより、アーム42aが支点を中心に回動されると、ばね44a及びダンパー46aは伸縮され、ばね44aは、アーム42aの支点を中心とする回動に対して弾性力を作用させ、ダンパー46aは、アーム42aの支点を中心とする回動に対して粘性力を作用させる。
レール48aは、撮像ユニット16の外周に、光軸Aとほぼ平行に延びるように固定された棒状の部材である。
【0080】
図10に示すように、クランプ部材50aは、アーム42aとレール48aを連結する部材であり、アーム42a及びレール48aに沿ってスライド可能に取り付けられている。
【0081】
クランプ部材50aは、金属製の上ロッド51aと、中間ブロック54aと、下ロッド57aと、を有し、これらの部材には、ある程度、柔軟性を持った材料で構成されたパッド52a、53a、55a、56aが取り付けられている。また、金属製の上ロッド51a、中間ブロック54a、及び下ロッド57aは、これらを貫通するねじ58aにより一体化される。
【0082】
上ロッド51a及び下ロッド57aは、鋼鉄やアルミニウム、チタンなどの材料で形成した棒状の部材である。中間ブロック54aは、鋼鉄やアルミニウム、チタンなどの材料で形成したブロック状の部材である。
【0083】
図10に示すように、ねじ58aは、下ロッド57a及び中間ブロック54aに形成された貫通穴を通して、上ロッド51aに形成された雌ねじに螺合されている。このため、ねじ58aを締めることにより、下ロッド57aが上ロッド51aに引き付けられ、これらの間にアーム42a及びレール48aを挟み付けるようになっている。
パッド52a、53a、55a、56aは、ポリウレタンやポリエチレン、テフロン(登録商標)、などの材料で形成された部材である。
【0084】
上ロッド51aの下面にはパッド52aが取り付けられ、また、中間ブロック54aの上面にはパッド53aが取り付けられ、これらの間にレール48aが挟まれる。また、中間ブロック54aの下面にはパッド55aが取り付けられ、また、下ロッド57aの上面にはパッド56aが取り付けられ、これらの間にアーム42aが挟まれる。各パッドはある程度、柔軟性を持った材料で構成されているので、振動を受けた際に、アーム42aおよびレール48aと接する部分が傷ついたり、磨耗したりするのを防止することができる。
【0085】
上ロッド51a及び下ロッド57aは、中央のねじ58aを締めることにより圧接され、アーム42aおよびレール48aとクランプ部材50aが一体化される。
また、中央のねじ58aを緩めることにより、アーム42aおよびレール48aはクランプ部材50aから開放されて、
図9の矢印に示す方向にスライド可能となり、撮像ユニット16を支持する弾性特性を変えることができる。
【0086】
免振支持機構40aは上記のような構成を有するため、クランプ部材50aをスライドさせることにより撮像ユニット16に作用される粘弾性力が変化し、免振支持機構による振動減衰率S
p(f)を調整することができる。即ち、
図9において、クランプ部材50aを左方に移動させると、撮像ユニット16の上下方向の移動に対するばね44a及びダンパー46aの伸縮量が大きくなり、弾性力、粘性力が強くなる。逆に、クランプ部材50aを右方に移動させると、撮像ユニット16の上下方向の移動に対するばね44a及びダンパー46aの伸縮量が小さくなり、弾性力、粘性力が弱くなる。一方、免振支持機構40bにおいては、クランプ部材50bを
図9における右方に移動させると、弾性力、粘性力が強くなり、クランプ部材50bを左方に移動させると、弾性力、粘性力が弱くなる。
【0087】
本実施形態の監視用カメラにおいては、各免振支持機構のクランプ部材の位置をスライドさせることによって、免振支持機構により必要な振動減衰率S
p(f)が得られるように調整する。この際、カメラ外ケース12に設けられた各ケース側指示部12bと、撮像ユニット16に設けられた各カメラ側指示部16bが整合するように、各クランプ部材の位置を調整する。
【0088】
本実施形態においては、撮像ユニット16の撮像用光学系22は、望遠撮影、広角撮影等に適するように、レンズユニットとして交換可能に構成されている。免振支持機構を調整可能に構成することにより、レンズユニットを交換した場合における撮像ユニット16の重量の変化、及び重心位置の変化に容易に対応することができる。これにより、撮像ユニット16に種々のレンズユニットを装着した場合において、夫々最適な振動減衰率を設定することができる。
【0089】
本発明の第2実施形態の監視用カメラによれば、クランプ部材50a、50bをスライドさせることにより振動減衰率を調整することができる。このため、撮像ユニット16の全部又は撮像用光学系22を交換可能に構成した場合において、免振支持機構40a、40bの特性を、装着されている撮像ユニット16にあわせて簡単に調整することができ、これにより、像振れ防止効果を適切に設定することができる。
【0090】
なお、
図9に示した第2実施形態においては、
図9の上下方向の振動に対する免振支持機構は、撮像ユニット16の下側に2つ設けられていたが、変形例として、免振支持機構を
図11に示すように配置することもできる。即ち、
図11に示すように、
図11の上下方向の振動に対する免振支持機構60a、60bを、撮像ユニット16の上側及び下側に振り分けて配置することができる。
【0091】
光軸に平行な方向の振動成分が多い場合、
図9のように免振支持機構40a、40bを配置すると、光軸に平行な方向の振動を受けると、撮像ユニット16の光軸を傾ける振動が励起されやすくなる。
図11に示すように、光軸に対してバランスのとれた位置に免振支持機構60a、60bを配置することにより、このような影響を低減することができる。