特許第5761855号(P5761855)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5761855
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】クラッチ操作装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 48/02 20060101AFI20150723BHJP
   F16D 25/12 20060101ALI20150723BHJP
   B60K 23/02 20060101ALN20150723BHJP
【FI】
   F16D25/14 640V
   F16D25/12 E
   F16D25/14 620
   !B60K23/02 L
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-187694(P2011-187694)
(22)【出願日】2011年8月30日
(65)【公開番号】特開2013-50146(P2013-50146A)
(43)【公開日】2013年3月14日
【審査請求日】2014年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121234
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 利明
(72)【発明者】
【氏名】石田 茂樹
【審査官】 稲垣 彰彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−287624(JP,A)
【文献】 特開平11−63016(JP,A)
【文献】 特開昭61−119819(JP,A)
【文献】 特開昭61−102343(JP,A)
【文献】 米国特許第4109771(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 23/02
F16D 25/06−25/12
48/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮エア源(34)から空圧導入室(16a)に圧縮エアが供給されることによりクラッチ(11)を切断し前記空圧導入室(16a)から圧縮エアが排出されることにより前記クラッチ(11)を接続するクラッチアクチュエータ(13)と、空圧導入室(16a)と圧縮エア源(34)との間に設けられ制御信号が入力されることにより前記圧縮エア源(34)から前記空圧導入室(16a)に圧縮エアを供給し又は前記空圧導入室(16a)から圧縮エアを排出する主制御バルブ(43)とを備えたクラッチ操作装置において、
前記主制御バルブ(43)と並列に前記空圧導入室(16a)と前記圧縮エア源(34)との間に前記空圧導入室(16a)に圧縮エアを供給し又は前記空圧導入室(16a)から圧縮エアを排出する副制御バルブ(51)が設けられ
前記副制御バルブ(51)は、
制御信号の入力により前記圧縮エア源(34)の圧縮エアを前記空圧導入室(16a)に供給する第一副電磁弁(53)と、
前記第一副電磁弁(53)の下流側に設けられ制御信号の入力により前記第一副電磁弁(53)を通過した圧縮エアを前記空圧導入室(16a)に供給し又は前記空圧導入室(16a)の圧縮エアを排出する第二副電磁弁(54)と、
前記第二副電磁弁(54)の下流側に設けられ制御信号の入力により前記第二副電磁弁(54)と前記空圧導入室(16a)を連通させ又は前記第二副電磁弁(54)と前記空圧導入室(16a)の間を遮断する第三副電磁弁(55)と
を備える
ことを特徴とするクラッチ操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空圧導入室に圧縮エアが供給されることによりクラッチを切断するクラッチアクチュエータを備えたクラッチ操作装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、バスやトラック等の大型車両では手動変速機が主に採用されていた。手動変速機では、コントロールロッド等のリンク機構で運転席のチェンジレバーと変速機を機械的に連結している。このため、頻繁にシフト操作を要求される場合には、シフト操作が運転者にとって大きな負担になる。そこで、変速機に電気信号によって動作するギヤセットアクチュエータを設け、このギヤセットアクチュエータをコントローラにより制御する車両用自動変速装置が開発されている(例えば、特許文献1参照。)。この車両用自動変速装置では、単にチェンジレバーを操作するだけの小さな力で、変速機におけるシフト操作を行えるようになり、シフト操作に関する運転者の負担が軽減されるようになっている。
【0003】
ここで、この車両用自動変速装置におけるシフト操作に際してはクラッチ操作装置によりクラッチを切断状態において行う必要がある。引用文献1に開示されたクラッチ操作装置は、圧縮エア源から圧縮エアが空圧導入室に供給されることによりプッシュロッドを突出させてクラッチを切断するクラッチアクチュエータと、空圧導入室と圧縮エア源との間に設けられた制御バルブを備える。この制御バルブは、コントローラから制御信号が入力されることにより、圧縮エア源から空圧導入室に圧縮エアを供給し、又はその空圧導入室から圧縮エアを排出するように構成される。即ち、このクラッチ操作装置では、制御バルブを介して圧縮エアがクラッチアクチュエータに供給されるとクラッチが切断されるようになっている。そして、この引用文献1における車両用自動変速装置では、コントローラが故障して、クラッチ操作装置における制御バルブの制御が不能になった場合に、その制御バルブを手動で操作し得る非常スイッチを設けるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平5−37089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来のクラッチ操作装置では、制御バルブ自体が故障すると、非常スイッチの操作の有無にかかわらず、クラッチアクチュエータに圧縮エアを供給することができずに、クラッチの切断が不能になる不具合がある。特に、コントローラはCPU,ROM,RAM等を有するマイクロコンピュータで構成されており、可動部を有しないのに対して、制御バルブは、圧縮エア源とクラッチアクチュエータを繋ぐエア流路を遮断するような可動部を有することから、コントローラと比較してその故障率は高いと言える。このため、クラッチアクチュエータに圧縮エアを供給する制御バルブが作動不良に陥った場合の対策が求められていた。
【0006】
本発明の目的は、クラッチアクチュエータに圧縮エアを供給する制御バルブが作動不良に陥っても、クラッチの接断を可能とし得るクラッチ操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、圧縮エア源から空圧導入室に圧縮エアが供給されることによりクラッチを切断し空圧導入室から圧縮エアが排出されることによりクラッチを接続するクラッチアクチュエータと、空圧導入室と圧縮エア源との間に設けられ制御信号が入力されることにより圧縮エア源から空圧導入室に圧縮エアを供給し又は空圧導入室から圧縮エアを排出する主制御バルブとを備えたクラッチ操作装置の改良である。
【0008】
その特徴ある構成は、主制御バルブと並列に空圧導入室と圧縮エア源との間に空圧導入室に圧縮エアを供給し又は空圧導入室から圧縮エアを排出する副制御バルブが設けられたところにある。
【0009】
副制御バルブは、制御信号の入力により圧縮エア源の圧縮エアを空圧導入室に供給する第一副電磁弁と、第一副電磁弁の下流側に設けられ制御信号の入力により第一副電磁弁を通過した圧縮エアを空圧導入室に供給し又は空圧導入室の圧縮エアを排出する第二副電磁弁と、第二副電磁弁の下流側に設けられ制御信号の入力により第二副電磁弁と空圧導入室を連通させ又は第二副電磁弁と空圧導入室の間を遮断する第三副電磁弁とを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のクラッチ操作装置では、主制御バルブが故障すると、副制御バルブによりクラッチアクチュエータに圧縮エアを供給することができる。このため、クラッチアクチュエータに圧縮エアを供給する主制御バルブが作動不良に陥った場合であっても、クラッチの接断を可能とすることができる。
【0011】
また、副制御バルブを複数の副電磁弁から構成すれば、従来のエア流路に並列に形成されたエア流路にこれら複数の電磁弁を設けるだけで、容易に本発明のクラッチ操作装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明実施形態のクラッチ操作装置を示す構成図である。
図2】副制御バルブによりクラッチを切断させた状態を示す図1に対応する構成図である。
図3】副制御バルブによりクラッチを接続させた状態を示す図1に対応する構成図である。
図4】副制御バルブによりクラッチを半分接続させた半クラッチ状態を示す図1に対応する構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1に示すように、バスやトラック等の大型車両には、シフト操作に際してクラッチ11を切断するクラッチ操作装置10が設けられる。クラッチ11には、傾動することによりクラッチ11を接続し又は切断するリリースレバー15が設けられ、クラッチ操作装置10には、このリリースレバー15を傾動させるクラッチアクチュエータ13が設けられる。
【0015】
クラッチアクチュエータ13は、そのボディ14に接続されたシリンダシェル16を有し、このシリンダシェル16内にピストンプレート17が、クラッチ11によりリリースレバー15を介して空圧導入側(図中左側)に付勢されて設けられている。そのピストンプレート17には、ボディ14に挿通されたピストンロッド21が設けられる。シリンダシェル16内はピストンプレート17により2分され、ピストンロッド21の存在しない空圧導入室16aと、その空圧導入室16aと反対側であってピストンロッド21が存在する大気室16bとに分けられる。
【0016】
シリンダシェル16の空圧導入室16aが存在する一端には導入側ニップル19が取付けられる。一方、ボディ14には外部から大気室16bに連通する連通孔14aが形成され、この連通孔14aには大気側ニップル18が取付けられる。シリンダシェル16に取付けられた導入側ニップル19は、クラッチアクチュエータ13における空圧導入口を形成し、シリンダシェル16とピストンプレート17により囲まれる空圧導入室16aにその空圧導入口から圧縮エアが供給されると、ピストンプレート17が図の右側に押され、そのピストンプレート17はピストンロッド21、ハイドロリックピストン22、更にはプッシュロッド23を介してリリースレバー15の下端を図の右方向に押し、リリースレバー15が傾動することによりクラッチ11を切断するように構成される(図2)。
【0017】
このクラッチ操作装置10には、一端がエアタンク34に接続され、他端が導入側ニップル19に接続された主エア配管42が備えられる。この主エア配管42には、図示しない車両用自動変速装置とともにこのクラッチ操作装置10を制御する操作コントローラ41からの指令に基づいてこの主エア配管42を連通させ又は遮断する主制御バルブ43が設けられる。ここで、図示しない車両用自動変速装置は、図示しない変速機におけるシフト操作を行うものである。そして、この実施の形態における主制御バルブ43は、操作コントローラ41からの制御信号により動作する4つの主電磁弁44〜47を有する。
【0018】
具体的に、この実施の形態における主制御バルブ43は、4ポート2位置切り換え式の電磁弁44,45が2個備えられる。これらは同一構造であって、それらの第一ポート44a,45aは主エア配管42を介してエアタンク34に接続され、それらの第二ポート44b,45bは下流側の主エア配管42及び導入側ニップル19を介してクラッチアクチュエータ13における空圧導入室16aに接続される。また、それらの第三ポート44c,45cは大気側ニップル18を介してクラッチアクチュエータ13における大気室16bに接続され、それらの第四ポート44d,45dは大気に開放される。ここで、一方の電磁弁44の第二ポート44bと導入側ニップル19との間の主エア配管42には、その主エア配管42におけるエア流量を制限し得るオリフィス48が設けられる。
【0019】
これらの電磁弁44,45は、操作コントローラ41からの制御信号が制御端子44e,45eに出力されていない通常状態で第一〜第四ポート44a〜44d,45a〜45dの全てを遮断するように構成される。逆に、その制御端子44e,45eに操作コントローラ41からの制御信号が発せられると、第一ポート44a,45aと第二ポート44b,45bを連通させてエアタンク34の圧縮エアをクラッチアクチュエータ13における空圧導入室16aに供給するとともに、第三ポート44c,45cと第四ポート44d,45dを連通させてクラッチアクチュエータ13における大気室16bを大気に解放するように構成される。
【0020】
このため、これらの制御端子44e,45eに操作コントローラ41からの制御信号が発せられると、エアタンク34の圧縮エアはクラッチアクチュエータ13における空圧導入室16aに供給され、ピストンプレート17を右側に押してリリースレバー15を図の右側に操作し、それによりクラッチ11を切断させることになる。けれども、オリフィス48が設けられた一方の電磁弁44を介して供給された圧縮エアは、そのオリフィス48によりその流量が制限された圧縮エアが供給されるので、オリフィス48が設けられていない他方の電磁弁45を介して圧縮エアを供給した場合に比較して、緩やかにクラッチ11を切断するように構成される。
【0021】
また、この実施の形態における主制御バルブ43は、2ポート2位置切り換え式の電磁弁46,47を更に2個備える。それらの第一ポート46a,47aは、第一及び第二主電磁弁44,45より下流側の主エア配管42に接続され、その下流側の主エア配管42及び導入側ニップル19を介してクラッチアクチュエータ13における空圧導入室16aに接続される。ここで、一方の電磁弁46における第一ポート46aはオリフィス48と先の第一主電磁弁44との間の主エア配管42に接続される。また、それらの第二ポート46b,47bは、大気側ニップル18を介してクラッチアクチュエータ13における大気室16bに接続される。
【0022】
これらの電磁弁46,47は、操作コントローラ41からの制御信号が制御端子46c,47cに出力されていない通常状態で第一及び第二ポート46a,46b,47a,47bをそれぞれ遮断し、その制御端子46c,47cに操作コントローラ41からの制御信号が発せられると、第一ポート46a,47aと第二ポート46b,47bを連通させてクラッチアクチュエータ13における空圧導入室16aと大気室16bを連通させるように構成される。
【0023】
このため、これらの電磁弁46,47は、これらの制御端子46c,47cに操作コントローラ41からの制御信号が発せられると、空圧導入室16aに保持されていた空圧は、それぞれの電磁弁46,47における第一ポート46a,47aから第二ポート46b,47bを通じ空圧導入室16aと反対側の大気室16bに導入され、ピストンプレート17はクラッチ11の付勢力により反対側の左側に押され、リリースレバー15が図の左側に操作されてクラッチが接続されることになる。けれども、一方の電磁弁46を介して空圧導入室16aの圧縮エアを反対側の大気室16bに導入するエアは、オリフィス48によりその流量が制限された状態で流通するので、オリフィス48が設けられていない他方の電磁弁47を介して空圧導入室16aの圧縮エアを反対側の大気室16bに導入する場合に比較して、緩やかにクラッチを接続11するように構成される。
【0024】
本発明の特徴ある構成は、このような主制御バルブ43と並列に、空圧導入室16aと圧縮エア源であるエアタンク34との間にその空圧導入室16aに圧縮エアを供給し又はその空圧導入室16aから圧縮エアを排出する副制御バルブ51を設けたところにある。この実施の形態における副制御バルブ51は、空圧導入室16aとエアタンク34を接続する副エア配管52に直列的に設けられた3つの電磁弁53〜55を有する。
【0025】
副エア配管52にエアタンク34側に設けられた第一副電磁弁53は、2ポート2位置切り換え式の電磁弁であって、制御信号が制御端子53cに出力されていない通常状態で第一及び第二ポート53a,53bをそれぞれ遮断して、副エア配管52を遮断するように構成される。逆に、その制御端子53cに制御信号が発せられると、第一ポート53aと第二ポート53bを連通させて、副エア配管52を介してエアタンク34の圧縮エアをクラッチアクチュエータ13における空圧導入室16aに供給するように構成される。
【0026】
その第一副電磁弁53の下流側に設けられた第二副電磁弁54は、4ポート2位置切り換え式の電磁弁であって、第一ポート54aが第一副電磁弁53に接続され、第二ポート54bが空圧導入室16aに接続される。また、第三ポート54cは大気側ニップル18を介してクラッチアクチュエータ13における大気室16bに接続され、その第四ポート54dは大気に開放される。この第二副電磁弁54は、制御信号が制御端子54eに出力されていない通常状態で第一及び第四ポート54a,54dを遮断するとともに、第二ポート54bと第三ポート54cを連通させてクラッチアクチュエータ13における空圧導入室16aをその大気室16bに連通させるように構成される。逆に、その制御端子54eに制御信号が発せられると、第一ポート54aと第二ポート54bを連通させてエアタンク34の圧縮エアをクラッチアクチュエータ13における空圧導入室16aに供給するとともに、第三ポート54aと第四ポート54bを連通させてクラッチアクチュエータ13における大気室16bを大気に解放するように構成される。このため、この第二副電磁弁54は、制御端子54eに制御信号が発せられると、第一副電磁弁53を通過した圧縮エアをクラッチアクチュエータ13における空圧導入室16aに供給し、制御信号の遮断により空圧導入室16aの圧縮エアをそこから大気室16aに排出するように構成される。
【0027】
このような第二副電磁弁54の下流側に更に設けられた第三副電磁弁55は、2ポート2位置切り換え式の電磁弁であって、制御信号が制御端子55cに出力されていない通常状態で第一及び第二ポート55a,55bをそれぞれ遮断し、第二副電磁弁54より下流側の副エア配管52を遮断するように構成される。逆に、その制御端子55cに制御信号が発せられると、第一ポート55aと第二ポート55bを連通させて、第二副電磁弁54より下流側の副エア配管52をエアが流通可能に構成され、第二副電磁弁54の制御端子54eに制御信号が発せられていれば、副エア配管52を介してエアタンク34の圧縮エアをクラッチアクチュエータ13における空圧導入室16aに供給し、第二副電磁弁54の制御端子54eに制御信号が発せられていなければ、副エア配管52を介して空圧導入室16aの圧縮エアをそこから大気室16aに排出するように構成される。
【0028】
また、このような第一〜第三副電磁弁53〜55におけるそれぞれの制御端子53d,54e,55cには、非常用スイッチ56aがオン動作されることにより駆動する副コントローラ56の制御出力がそれぞれ接続され、この副コントローラ56は、非常用スイッチ56aがオン動作されることにより、図示しない車両用自動変速装置における操作コントローラ41とともに、副制御バルブ51を制御するように構成される。そして、図における符号47は、クラッチ11の接断状態を検出するクラッチセンサ57を示す。
【0029】
このように構成されたクラッチ操作装置10では、運転者が図示しないチェンジレバーを操作し、変速機におけるシフト操作が必要になった場合に、クラッチ11の切断動作が行われる。通常は、操作コントローラ41からの制御信号を主制御バルブ43における第一又は第二主電磁弁44,45の制御端子44e,45eに入力し、圧縮エア源であるエアタンク34からクラッチアクチュエータ13の空圧導入室16aに圧縮エアを供給し、クラッチ11を切断する。そして、図示しない変速機における必要な変速操作が行われた後に、第一又は第二主電磁弁44,45への制御信号を遮断すると共に、新たに操作コントローラ41からの制御信号を主制御バルブ43における第三又は第四主電磁弁46,47の制御端子46c,47cに入力する。そして、空圧導入室16aの圧縮エアをそこから排出してクラッチ11を接続し、クラッチ11が接続されたことを、クラッチセンサ57の検出出力により検出した操作コントローラ41は、第三又は第四主電磁弁46,47への制御信号を遮断して、主エア配管42を完全に切断する。このようにして、運転者がチェンジレバーを操作したことによる変速操作を完了させる。なお、この主制御バルブ43における動作は、従来のものであるので、この動作に関して図示することは省略する。
【0030】
一方、操作コントローラ41が正常であっても、主制御バルブ43が故障すると、この主制御バルブ43を介してのクラッチアクチュエータ13の制御が不能になる。このように、主制御バルブ43を介してのクラッチアクチュエータ13の制御が不能であることを認識した運転者は、非常用スイッチ56aをオン動作させる。すると、操作コントローラ41とともに副制御バルブ51を制御する副コントローラ56が稼働し、その副制御バルブ51によりクラッチアクチュエータ13が制御される。
【0031】
非常用スイッチ56aがオン動作された後における副制御バルブ51によるクラッチアクチュエータ13の制御を説明すると、運転者が図示しないチェンジレバーを操作し、変速機におけるシフト操作が必要になった場合に、図2に示すように、副コントローラ56は第一〜第三副電磁弁53〜55の全てに制御信号を出力する。制御端子53c,55cに制御信号が発せられた第一及び第三副電磁弁53,55では、第一ポート53a,55aと第二ポート53b,55bを連通させて、副エア配管52を連通させてエアタンク34の圧縮エアを下流側にそれぞれ流出させる。また、制御端子54eに副コントローラ56からの制御信号が発せられた第二副電磁弁54では、第一ポート54aと第二ポート54bを連通させて、第一副電磁弁53を介して供給されるエアタンク34の圧縮エアを、第三副電磁弁55を介してクラッチアクチュエータ13における空圧導入室16aに供給する。それとともに、第三ポート54cと第四ポート54dを連通させてクラッチアクチュエータ13における大気室16bを大気に解放する。このように、空圧導入室16aに圧縮エアを供給しつつ大気室16bのエアを大気に解放して、ピストンプレート17を右側に押し、そのピストンプレート17はピストンロッド21、ハイドロリックピストン22、更にはプッシュロッド23を介してリリースレバー15の下端を図の右方向に押し、リリースレバー15が傾動することによりクラッチ11を切断する。
【0032】
そして、図示しない変速機における必要な変速操作が行われた後に、クラッチ11を再び接続させる。この場合に、図3に示すように、副コントローラ56から第二副電磁弁54に発せられていた制御信号を遮断する。すると、その第二副電磁弁54は、第一及び第四ポート54a,54dを遮断して、エアタンク34からの圧縮エアの供給を停止するとともに、第二ポート54bと第三ポート54cを連通させてクラッチアクチュエータ13における空圧導入室16aをその大気室16bに連通させる。これにより、空圧導入室16aの圧縮エアは大気室16bに流れ込み、ピストンプレート17はクラッチ11からの付勢力により左側に押し戻され、リリースレバー15の下端が図の左側に移動するようにリリースレバー15が傾動してクラッチ11を接続させる。
【0033】
また、自動変速が完了してクラッチ11を接続させる際に、エンジン回転とクラッチ回転の差が大きい場合に、クラッチ11が半分接続されたいわゆる半クラッチ状態に維持する場合がある。この場合、クラッチセンサ57の検出出力によりクラッチ11が半クラッチ状態であることを検出したときに、図4に示すように、副コントローラ56から第三副電磁弁55への制御信号を遮断する。すると、第三副電磁弁55における第一及び第二ポート55a,55bはそれぞれ遮断され、これにより空圧導入室16aへの圧縮エアの供給又は空圧導入室16aからの圧縮エアの排出が停止される。すると、ピストンプレート17は移動しないので、リリースレバー15の傾動は禁止され、これによりいわゆる半クラッチ状態を維持することができる。
【0034】
よって、本発明のクラッチ操作装置では、主制御バルブ43と並列にクラッチアクチュエータ13の空圧導入室16aと圧縮エア源であるエアタンク34との間に、空圧導入室16aに圧縮エアを供給し又はその空圧導入室16aから圧縮エアを排出する副制御バルブ51を設けたので、その副制御バルブ51によりクラッチアクチュエータ13に圧縮エアを供給することができる。このため、その主制御バルブ43が作動不良に陥った場合であっても、副制御バルブ51によりクラッチ11の接断を可能とすることができる。また、副制御バルブ51が複数の第一〜第三副電磁弁53〜55から構成すれば、従来の主エア配管42に並列に形成された副エア配管52にこれら複数の電磁弁53〜55を設けるだけで、容易に本発明のクラッチ操作装置10とすることができる。
【0035】
なお、上述した実施の形態では、3つの電磁弁53〜55から成る副制御バルブ51を用いて説明したが、空圧導入室16aに圧縮エアを供給し又はその空圧導入室16aから圧縮エアを排出可能である限り、副制御バルブ51はこれに限られずに、図示しないが、一つ又は二つの電磁弁を備えるようなものであっても良く、四つ又は五つの電磁弁を備えるようなものであっても良い。
【0036】
また、上述した実施の形態では、非常用スイッチ56aがオン動作されることにより駆動する副コントローラ56により副制御バルブ51が制御される場合を説明したが、この副制御バルブ51の制御は、操作コントローラ41が行うようにしても良く、手動により行うようにしても良い。
【符号の説明】
【0037】
10 クラッチ操作装置
11 クラッチ
13 クラッチアクチュエータ
16a 空圧導入室
34 エアタンク(圧縮エア源)
43 主制御バルブ
51 副制御バルブ
53 第一副電磁弁
54 第二副電磁弁
55 第三副電磁弁

図1
図2
図3
図4