(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5761870
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】腐食防止層を有する蒸気発生器チューブシート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F22B 1/16 20060101AFI20150723BHJP
F22B 37/04 20060101ALI20150723BHJP
G21D 1/00 20060101ALI20150723BHJP
C21D 9/00 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
F22B1/16 C
F22B37/04
G21D1/00 S
C21D9/00 Z
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-78791(P2013-78791)
(22)【出願日】2013年4月4日
(65)【公開番号】特開2014-37957(P2014-37957A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2013年4月4日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0090793
(32)【優先日】2012年8月20日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】502043352
【氏名又は名称】コリア ハイドロ アンド ニュークリア パワー カンパニー リミティッド
(73)【特許権者】
【識別番号】500002490
【氏名又は名称】コリア アトミック エナジー リサーチ インスティチュート
(74)【代理人】
【識別番号】100089196
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 良之
(74)【代理人】
【識別番号】100104226
【弁理士】
【氏名又は名称】須原 誠
(72)【発明者】
【氏名】ファ ドハン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ ミュンシク
(72)【発明者】
【氏名】イ テクヒュン
(72)【発明者】
【氏名】キム キュンモ
(72)【発明者】
【氏名】ハン チュンホ
【審査官】
木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭63−213639(JP,A)
【文献】
特開2002−257492(JP,A)
【文献】
特開2003−073736(JP,A)
【文献】
特表2008−545114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 1/16
C21D 9/00
F22B 37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気発生器の伝熱管200を支持するように設置される蒸気発生器チューブシート100と、1次側チューブシート表面11及び2次側チューブシート表面12をクラッドする耐腐食性金属20と、を含み、
前記耐腐食性金属20の厚さ(D)が伝熱管の拡管部の隙間深さ(H)以上であることを特徴とする腐食防止層を有する蒸気発生器チューブシート。
【請求項2】
前記耐腐食性金属20は、前記蒸気発生器チューブシート100よりも腐食速度の低い金属または合金であることを特徴とする請求項1に記載の腐食防止層を有する蒸気発生器チューブシート。
【請求項3】
前記耐腐食性金属20は、ステンレススチール(STS)、Alloy600、Alloy690のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の腐食防止層を有する蒸気発生器チューブシート。
【請求項4】
蒸気発生器の伝熱管200を支持するように設置され、腐食防止層を有する蒸気発生器チューブシート100の製造方法であって、
1次側チューブシート表面11及び2次側チューブシート表面12を耐腐食性金属20でクラッド(cladding)するクラッド段階と、
前記クラッド段階の後、前記耐腐食性金属でクラッドされた蒸気発生器チューブシート100を熱処理する熱処理段階と、
前記熱処理段階の後、前記耐腐食性金属でクラッドされた2次側チューブシート表面12を研磨する研磨段階と、
前記研磨段階の後、前記蒸気発生器チューブシート100に形成すべき伝熱管装着穴30の全てを一度に穴あけする穴あけ段階と、
を含むことを特徴とする腐食防止層を有する蒸気発生器チューブシートの製造方法。
【請求項5】
前記穴あけ段階の後に、前記伝熱管装着穴30が形成された2次側チューブシート表面12を研磨する研磨段階をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の腐食防止層を有する蒸気発生器チューブシートの製造方法。
【請求項6】
前記耐腐食性金属20は、前記蒸気発生器チューブシート100よりも腐食速度の低い金属または合金であることを特徴とする請求項4に記載の腐食防止層を有する蒸気発生器チューブシートの製造方法
【請求項7】
前記耐腐食性金属20は、ステンレススチール(STS)、Alloy600、Alloy690のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項4に記載の腐食防止層を有する蒸気発生器チューブシートの製造方法
【請求項8】
前記クラッド段階で、前記耐腐食性金属20の厚さ(D)は、伝熱管の拡管部の隙間深さ(H)以上であることを特徴とする請求項4に記載の腐食防止層を有する蒸気発生器チューブシートの製造方法。
【請求項9】
前記熱処理段階において、前記耐腐食性金属20でクラッドされた前記2次側チューブシート表面12を600℃〜820℃の温度で10分〜60分間熱処理することを特徴とする請求項4に記載の腐食防止層を有する蒸気発生器チューブシートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所の蒸気発生器チューブシートの腐食及び伝熱管のデンティングを防止するための腐食防止層を有する蒸気発生器チューブシート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電は、原子炉の圧力容器において、核燃料の核分裂反応による熱を用いる。核分裂反応で発生した熱は、燃料集合体と蒸気発生器との間で循環する第1次側に伝達される。1次側の熱くなった水は、蒸気発生器で第2次側に熱を伝達し、その結果で生成された蒸気がタービン発電機を動かす。タービンを通過した2次側は凝縮器で温度が低下し、蒸気発生器に戻るようになる。
【0003】
この際、1次側に流れる冷却水、すなわち、原子炉と蒸気発生器との間を循環する水を1次側冷却水、2次側を流れる冷却水を2次側冷却水という。
【0004】
原子力発電所で稼動している蒸気発生器に設けられるチューブシート(tube sheet)100は、伝熱管200(tube)を拡管して固定する支持板であって、その材質は低合金鋼で構成される。
【0005】
前記伝熱管200の内部には1次側冷却水が流れ、伝熱管200の外部には2次側冷却水が流れる。
1次側冷却水は冷却水と接触する材料表面から溶出されたコバルト、ニッケル、鉄などの金属イオン及び金属酸化物を含むが、これらが原子炉の内部で放射化されて放射能を帯びるようになる。
【0006】
図1を参照すると、2次側冷却水が接触する2次側チューブシート表面は、腐食反応によりマグネタイトに酸化されて体積が膨張する。その過程で隣接している伝熱管200の外面は内径方向に押さえられて形状変化が発生する。このような現象をデンティング(denting)という。デンティングが発生すると、伝熱管200に応力が付加されるため、伝熱管200の応力腐食割れが発生しやすい。
【0007】
伝熱管200に割れが生じる場合、伝熱管200の内部に流れる1次側冷却水が伝熱管200の外部に漏洩される問題が発生する
。したがって、放射能を帯びる1次側冷却水が伝熱管200の外部に漏洩され、2次側冷却水に沿って蒸気発生器の外部に放出される深刻な問題が発生する。
【0008】
従来、デンティングを抑制するための方法として2次側冷却水質を中性に維持する水化学的な方案と、チューブシートの上部に蓄積されるスラッジ40を除去するランシング及び化学洗浄方法が適用されてきたが、デンティング現象は持続的に発生されている。
【0009】
また、特許文献
1に蒸気発生器チューブシート100の腐食防止方法として、耐腐食性に優れた材料のストリップを用いてチューブシート100に被せ溶接を行う構成が開示されている。ただし、前記被せ溶接は、伝熱管装着穴30を形成してから被せ溶接が行われ、クラッド溶接の後に伝熱管装着穴30を再形成する。また、前記被せ溶接はチューブシート100の内部まで行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】韓国特許公開公報第2005−0007950号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、原子力発電所の蒸気発生器チューブシートの1次側チューブシート表面及び2次側チューブシート表面を耐腐食性金属でクラッド(被覆)して腐食による伝熱管のデンティングを防止することができる蒸気発生器チューブシート及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、チューブシート表面をクラッドした後、適当な温度で熱処理することにより、溶接による残留応力を除去してクラッド層の健全性を向上させることができる蒸気発生器チューブシート及びその製造方法を提供することを他の目的とする。
【0013】
また、本発明は、伝熱管装着穴を穴あけする段階の後または前に、2次側チューブシート表面を研磨してスラッジの付着を最小化することができる蒸気発生器チューブシート及びその製造方法を提供することをまた他の目的とする。
【0014】
また、本発明は、1次側チューブシート表面及び2次側チューブシート表面に耐腐食性金属でクラッドした後に、伝熱管装着穴を一度に形成することにより、装着穴の直進度及び加工寸法の精密度を向上させ、製作時間及び製作経費を低減することができる蒸気発生器チューブシート及びその製造方法を提供することをまた他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明の腐食防止層を有する蒸気発生器チューブシートは、蒸気発生器の伝熱管を支持するように設置される蒸気発生器チューブシートと、1次側チューブシート表面及び2次側チューブシート表面
をクラッド
する耐腐食性金属と、を含
み、前記耐腐食性金属20の厚さ(D)が伝熱管の拡管部の隙間深さ(H)以上であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の腐食防止層を有する蒸気発生器チューブシートの製造方法は、蒸気発生器の伝熱管を支持するように設置される蒸気発生器チューブシートの製造方法であって、1次側チューブシート表面及び2次側チューブシート表面を耐腐食性金属でクラッド(cladding)する
クラッド段階と、
前記クラッド段階の後、前記
耐腐食性金属でクラッドされ
た蒸気発生器チューブシートを熱処理する
熱処理段階と、
前記熱処理段階の後、前記耐腐食性金属でクラッドされた2次側チューブシート表面を研磨する研磨段階と、前記研磨段階の後、前記
蒸気発生器チューブシートに
形成すべき伝熱管装着穴
の全てを
一度に穴あけする
穴あけ段階と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、1次側チューブシートだけでなく2次側チューブシート表面を耐腐食性金属でクラッドして2次側チューブシート表面の腐食抑制及び伝熱管の応力腐食割れを防止して蒸気発生器の健全性が大きく向上する効果がある。
【0018】
また、本発明による蒸気発生器チューブシートの製造方法によると、クラッド段階の後にチューブシートを熱処理する段階をさらに含むため、クラッド加工による加工変形を最小化できる効果が得られる。
【0019】
また、本発明によれば、穴あけ段階の前または後にチューブシートを研磨する段階をさらに含むため、スラッジの付着を最小化できる効果が得られる。
【0020】
また、本発明によれば、クラッド段階の後に1回の穴あけ工程で伝熱管装着穴を形成するため、伝熱管装着穴の直進度が向上すると共に伝熱管装着穴の加工寸法の許容誤差を減らし、製作時間及び経費を画期的に低減できる効果がある。
【0021】
また、本発明によれば、チューブシートの内部ではなく、1次側チューブシート表面及び2次側チューブシート表面を耐腐食性金属でクラッドして製造時間が減少し、製造工程が容易になる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】従来技術により製造された蒸気発生器チューブシートに伝熱管が装着されることを示す断面図である。
【
図2】本発明の蒸気発生器チューブシートの製造方法の概念図である。
【
図3】本発明の蒸気発生器チューブシートの製造方法により製造された蒸気発生器チューブシートの平面図である。
【
図4】
図2のA−A’線に沿って切った蒸気発生器チューブシートに伝熱管が装着されることを示す断面図である。
【
図5】試験溶液のpHが2である場合にAlloy690とSA508Cl.3の電気化学的腐食速度を比較したグラフである。
【
図6】試験溶液のpHが7である場合にAlloy690とSA508Cl.3の電気化学的腐食速度を比較したグラフである。
【
図7】試験溶液のpHが12である場合にAlloy690とSA508Cl.3の電気化学的腐食速度を比較したグラフである。
【
図8】315℃、2MのNaOH溶液でAlloy690とSA508の電気化学的腐食速度を示すグラフである。
【
図9】300℃、0.1MのNiCl
2溶液でAlloy690とSA508の電気化学的腐食速度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の構成及び作用について図面を参照して詳細に説明すると、次の通りである。本発明は、腐食防止層を有する蒸気発生器チューブシート100であって、蒸気発生器の伝熱管200を支持するように設置される蒸気発生器チューブシート100と、1次側チューブシート表面11及び2次側チューブシート表面12をクラッドする耐腐食性金属20と、を含む。前記耐腐食性金属20は、前記蒸気発生器チューブシート100の材質よりも腐食速度の低い金属または合金であり、好ましくはステンレススチール(STS)、Alloy600(600合金)、Alloy690(690合金)のうち少なくとも1つを含む。
【0024】
蒸気発生器の伝熱管200を支持するように設置される蒸気発生器チューブシートの製造方法について
図2を参照すると次の通りである。本発明の腐食防止層を有する蒸気発生器チューブシートの製造方法は、一定厚さの蒸気発生器チューブシート100を提供する段階と、1次側チューブシート表面11及び2次側チューブシート表面12を耐腐食性金属20でクラッド(cladding)する段階と、前記耐腐食性金属20でクラッドされる蒸気発生器チューブシート100を熱処理する段階と、前記熱処理された蒸気発生器チューブシート100に伝熱管装着穴30を穴あけする段階と、からなる。
【0025】
本発明の腐食防止層を有する蒸気発生器チューブシートの製造方法は、一定厚さの蒸気発生器チューブシート100を用意する段階と、前記蒸気発生器チューブシート100の1次側チューブシート表面11と2次側チューブシート表面12に一定厚さを有する耐腐食性金属20でクラッドする段階と、を含む。蒸気発生器チューブシート100は、1次側冷却水及び2次側冷却水と合流する部位が酸化されて容易に腐食され、デンティングが発生する問題がある。それによって、伝熱管が破裂されて放射能を帯びる1次側冷却水が伝熱管200の外部に流れ、2次側冷却水に沿って蒸気発生器の外部に放出される深刻な問題が発生する虞がある。したがって、1次側冷却水及び2次側冷却水が合流する蒸気発生器チューブシート100の表面を耐腐食性金属20でクラッドして蒸気発生器チューブシート100の腐食を防止することができる。
【0026】
従来技術(特許文献
1)は、チューブシートの内部まで被せ溶接を行う構成が開示されている。それに対して、本発明は1次側チューブシート表面11及び2次側チューブシート表面12だけ耐腐食性金属でクラッドする構成であるので、従来技術に比べて製造時間が短縮され、製造工程が容易であるという長所がある。
【0027】
前記耐腐食性金属20は、蒸気発生器チューブシート材質よりも腐食速度の低い金属または合金で構成され、好ましくは、ステンレススチール(STS)、Alloy600、Alloy690のうち少なくとも何れか1つを含むことができる。
【0028】
しかし、前記クラッド過程で応力によるクラッド層またはクラッド層とチューブシートとの界面に内部割れが発生してチューブシート100の寿命低下の原因となるため、本発明の蒸気発生器チューブシートの製造方法は、耐腐食性金属20でクラッドされる蒸気発生器チューブシート100を熱処理する段階をさらに含むことにより、チューブシートの靭性(toughness)及び耐腐食性を向上させることができる。この際、熱処理作業は、火炎、電気抵抗熱処理、高周波熱処理、レーザー熱処理が可能である。
【0029】
好ましくは、前記熱処理する段階は600℃〜820℃の温度で10分〜60分間行われる。前記熱処理温度が600℃未満の場合はクラッド部位の残留応力の除去が不充分であり、820℃を超える場合は引張強度及び硬度が減少し、不適切な析出物が形成される問題がある。
【0030】
前記熱処理段階では、蒸気発生器チューブシート100を全体的に熱処理してもよいが、応力集中部位である耐腐食性金属20でクラッドされた1次側チューブシート表面11及び2次側チューブシート表面12または2次側チューブシート表面12だけ局部的に熱処理して製作費用を低減してもよい。耐腐食性金属20でクラッドされた蒸気発生器チューブシート100を熱処理することにより、クラッド工程による残留応力が除去される。それによって、応力が集中された1次側チューブシート表面11及び2次側チューブシート表面12の靭性及び耐腐食性が向上されて耐久寿命が向上されたチューブシート100を製作することができる。
【0031】
蒸気発生器チューブシート100に熱処理段階が完了すると、クラッド段階及び熱処理段階を経た蒸気発生器チューブシート100に伝熱管装着穴30を穴あけする段階を行う。
図2と
図4を参照すると、前記穴あけ段階は、伝熱管200の内部に1次側冷却水が流れるようにチューブシート100を通孔する。前記穴あけ段階は
手動で行ってもよい。しかし、好ましくは、前記穴あけ段階は、伝熱管装着穴30の直径及び間隔などを所定のプログラムに入力してから、設定された入力値に応じて不図示の穴あけマシーンを作動させることで行われることができる。
【0032】
前記穴あけ段階は、クラッド段階及び熱処理段階の後に行われ、2回の穴あけ段階の代わりに1回の穴あけ段階を行うため、従来技術(特許文献
1)に比べて伝熱管装着穴30の直進度が向上され、穴の寸法の許容誤差が低下する。さらに、製作時間及び経費が画期的に低減される。
【0033】
図4に示すように、伝熱管装着穴30は、伝熱管200の直径よりも大きく形成されて伝熱管200が伝熱管装着穴30に容易に挿入されるようにする。伝熱管200が伝熱管装着穴30に挿入された後、伝熱管200の下部に圧力を注入して伝熱管200の下部が拡管されてチューブシート100に装着されるようにする。この際、2次側チューブシート表面をクラッドする耐腐食性金属は、伝熱管の拡管部の隙間深さ(H)と同一であるか、より大きい深さ(D)を持つように形成して伝熱管の拡管部の隙間内部で不純物の濃縮による腐食加速現象を防止することができる。通常、伝熱管の拡管部の隙間深さは6.35mmであるので、2次側チューブシート表面をクラッドする耐腐食性金属は、7mm〜20mmの厚さ(D)を有するように形成することが好ましい。
【0034】
また、本発明による蒸気発生器チューブシートの製造方法は、前記穴あけ段階の後に、伝熱管装着穴30が形成された2次側チューブシート表面12を研磨して2次側チューブシート表面12を平坦化させる段階をさらに含む。前記穴あけ段階の後に前記研磨工程を行うことにより、2次側チューブシート表面12を均一に整理し、粗度(roughness)を高めることにより、伝熱管200の損傷の可能性を防止し、2次側チューブシート表面12へのスラッジ40の付着を防止するという長所がある。
【0035】
さらに好ましくは、本発明による蒸気発生器チューブシートの製造方法は、前記熱処理段階と前記穴あけ段階との間に前記伝熱管装着穴30が形成される2次側チューブシート表面12を研磨する段階をさらに含むことができる。前記穴あけ段階の前に2次側チューブシート表面12を研磨することにより、2次側チューブシート表面12の粗度(roughness)が向上し、スラッジ40の付着を最小化すると共にクリーニングしやすいという長所がある。
【0036】
<実施例>
図5から
図7は、クラッドに用いられる耐腐食性金属20の一種であるAlloy690と従来のチューブシート100の材料であるSA508Cl.3を対象としてpH変化による電気化学的腐食速度を比較した試験結果である。
図5は、試験溶液のpHが2である場合にAlloy690とSA508Cl.3の電気化学的腐食速度を比較したグラフであり、
図6は、試験溶液のpHが7である場合にAlloy690とSA508Cl.3の電気化学的腐食速度を比較したグラフであり、
図7は、試験溶液のpHが12である場合にAlloy690とSA508Cl.3の電気化学的腐食速度を比較したグラフである。
【0037】
図5を参照すると、試験溶液のpHが2である場合にAlloy690の電気化学的腐食速度は従来のチューブシート100の材料であるSA508Cl.3に比べて1/145に減少した。
図6を参照すると、試験溶液のpHが7である場合にAlloy690の電気化学的腐食速度は従来のチューブシート100の材料であるSA508Cl.3に比べて1/18に減少し、
図7を参照すると、試験溶液のpHが14である場合にAlloy690の電気化学的腐食速度は従来の蒸気発生器チューブシート100の材料であるSA508Cl.3に比べて1/16に減少した。
【0038】
また、酸性、中性、塩基性の全範囲でAlloy690材料の腐食電位が高く、陰極分極曲線がSA508Cl.3の陽極分極曲線と交差して示されている。それによって、従来のチューブシート100の材料が伝熱管の拡管部で伝熱管200の材料であるAlloy690と接触してガルバニック効果による腐食加速が生じることが分かる。
【0039】
図8に示すように、従来のSA508チューブシート材料は溶液とマグネタイトの接触条件で両方とも重さが減少し、Alloy690クラッド材料は少し重さが増加した。溶液にだけ露出したSA508の腐食速度は0.00701mg/cm
2hであったが、Alloy690クラッド材料の腐食速度は0.00024mg/cm
2hの低い値を示した。マグネタイトの内部に位置した条件ではSA508の腐食速度が0.01914mg/cm
2hであったが、Alloy690クラッド材料は0.00033mg/cm
2hの非常に低い値に減少した。したがって、Alloy690クラッドによりチューブシートの腐食抵抗性が約30〜60倍向上した。
【0040】
図9に示すように、2種類の試験材料は、両方とも溶液とマグネタイト接触条件で重さが減少した。溶液にだけ露出した従来のチューブシート母材SA508の腐食速度は0.87330mg/cm
2hであったが、Alloy690クラッド材料の腐食速度は0.00163mg/cm
2hの低い値を示した。マグネタイトの内部に位置した条件ではSA508の腐食速度が2.06200mg/cm
2hであったが、Alloy690クラッド材料は0.00303mg/cm
2hの値に急激に減少した。すなわち、Alloy690クラッドによりチューブシートの腐食抵抗性が約540〜680倍に向上した。
【0041】
それによって、本発明によるチューブシートがマグネタイトで覆われている300〜315℃の苛酷な塩基性環境及び酸性環境でもデンティングを非常に効果的に防止できることが裏付けられている。
【0042】
本発明は、上述した特定の好ましい実施例と変形例に限定されることはなく、請求範囲で請求する本発明の要旨から逸脱することなく、当該発明が属する技術分野で通常の知識を有する者であれば、誰でも多様な設計変更的実施が可能であることは勿論、そのような変更は請求範囲内に記載されている。
【符号の説明】
【0043】
100 蒸気発生器チューブシート
11 1次側チューブシート表面
12 2次側チューブシート表面
20 耐腐食性金属
30 伝熱管装着穴
40 スラッジ
200 伝熱管
D 2次側チューブシート表面をクラッドする耐腐食性金属の厚さ
H 伝熱管の拡管部の隙間深さ