(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のヌメリ取り用錠剤は、断続的又は連続的な流水中で使用されるヌメリ取り用錠剤であって、上面の中央部及び/又は底面の中央部に凹部を、あるいは、上面の中央部から底面の中央部にかけて貫通孔を有し、初期の殺菌成分の溶出濃度が高く、長期間にわたって殺菌成分の溶出濃度が一定濃度以上である。
【0010】
(錠剤が凹部を有する場合)
本発明の錠剤の一形態は、一般的な錠剤の上面の中央及び/又は底面の中央部に凹部が設けられている。一般的な錠剤とは、ピル状形状、円柱型形状、四角柱型形状、円板形状、角落し四角形状、楕円形状、偏平球形、球状等の形状を示す錠剤である。また、凹部とは錠剤の表面における凹んだ部分を指し、凹部の形状は、本発明の課題を解決することができる形状である限り特に限定されるものではないが、逆円錐形であることが好ましい。凹部の深さは、目視にて凹んだものであれば特に限定されるものではないが、好ましくは一番深い所で錠剤の厚みの5〜30%であるか、または、錠剤の直径の3〜20%である。
錠剤の上面とは、錠剤の平面部分であり、さらに錠剤の他の平面部分より広い面積を有している面を下にして錠剤を置いた時の上部を示し、全て曲面で構成された錠剤である場合は錠剤を安定して静置できた時の錠剤の上部を示す。安定して静置できる置き方が複数ある場合は、一番安定して静置できた時の錠剤の上部を示し、一番安定して静置できた時とは、錠剤の重心が一番低い位置の場合を示す。また、安定して静置出来ない場合は、射影した面積が一番広い面を上面とする。錠剤の上面又は底面の中央とは、概ね中央であること、すなわち、縁辺部を除いた部分であることを示し、厳密に中心を示してはいない。また、錠剤の角は面どりをしていても良い。錠剤の凹部は上面の中央及び/又は底面の中央部に少なくとも1ヶ所あれば良く、側面に凹部を有することもできる。
(錠剤が貫通孔を有する場合)
本発明の錠剤の他の形態は、一般的な錠剤の上面の中央部から底面の中央部に貫通孔が設けられている。また、貫通孔とは錠剤の表面から底面に向かった空洞を指し、貫通孔の形状は本発明の課題を解決することができる形状である限り特に限定されるものではないが、直線的な貫通孔であることが好ましい。貫通孔の直径は、特に限定されるものではないが、好ましくは錠剤の直径の10〜40%である。
錠剤の貫通孔は上面の中央から底面の中央部を繋いだものが少なくとも1ヶ所あれば良く、側面に貫通孔を有することもできる。
(錠剤が凹部と貫通孔を共に有する場合)
本発明の錠剤は、前記凹部と前記貫通孔を同時に満たす場合も含まれる。具体的には、凹部にさらに貫通孔があり、反対側に貫通している場合や、凹部を有している面とは異なる面と面とを貫通している場合である。この場合は、流水が、より複雑な乱流となる。
【0011】
(錠剤の大きさ)
錠剤の大きさは、各種排水管や台所のゴミ受け容器等狭い容器内に設置可能なように、最長部分で60mm以下、好ましくは30mm以下、特に好ましくは15mm以下である。
【0012】
(錠剤の使用方法)
本発明の錠剤の使用方法は、本発明の課題を解決することができる限り特に限定されるものではないが、水が流れている状態(流水中)にて使用される。流水は連続的な流水であっても、断続的な流水であってもよい。流水中に錠剤を固定する方法はどのような方法でも、どのような器具を用いてもよいが、専用のヌメリ取り器に錠剤が収納されていることが好ましい。また、ヌメリ取り器の内部は、一定方向に水が流れる構造であることが好ましい。
一定方向に流れるとは、常に一定の方向で流れていることを示すのではなく、例えば、台所で水を使用し、容器内に水が流入する時と水の使用を中断し、容器から水が流出する時に逆向きの流れとなる場合も含まれる。
一般的に錠剤表面に例えば凹部や貫通孔を有した場合、溶解速度が増すことが知られている。しかしながら、ヌメリ取りは長時間に渡り、ヌメリを防止する効果が必要であるため、速やかに溶解することは好ましくはない。錠剤の組成を適正化する等により、錠剤の全重量の50%以下になる時間を1時間以上にすることが好ましく、好ましくは1日以上にすることであり、さらに好ましくは10日以上にする。
【0013】
本発明のヌメリ防除剤は通常小型であるため、溶解によりさらに小型化した際のヌメリ防除剤の流出を防止するために、通水性の容器に収納した形態で使用することができる。通水性の容器としては、各種公知の通水性を有する材質で形成された容器や、非通水性の材質で形成された容器であっても小型化した錠剤の流出を防止可能で適当な通水性を有する開口部の設置された容器であれば使用可能である。小型化した錠剤の流出が防止可能で、適当な通水性を有する開口部の材料としては、不織布や細孔を有する樹脂フィルム等が好ましく使用される。
【0014】
前記通水性の容器は、排水管内や台所のゴミ受け容器等のヌメリ防除を目的とする箇所に容器を設置するために、糸や紐、金属線、樹脂製止め具、粘着材等の各種公知の係止具、好ましくは粘着テープ部等の係止具を備えたものが好ましい。また、2つの錠剤収納部の間に、錠剤が存在しない載置部を設けた通水性の容器とし、かかる載置部を台所のゴミ受け容器(通称三角コーナー)の周縁上端に載置することによりヌメリを防除することができる形態とすることもできる。
【0015】
(ヌメリ取りに用いられる薬剤)
本発明のヌメリ取りに用いられる薬剤は特に限定されるものではないが、錠剤が溶解するとともにヌメリを除去、ヌメリを発生させる菌等の除菌、ヌメリを発生させる菌等の殺菌、及びヌメリを発生させる菌等に対する抗菌等の効力を有する成分を含有したものが好ましい。また、前記効力を有する薬剤は塩素系殺菌剤、非さらし粉系抗菌剤、抗菌性無機金属又はその化合物、抗生物質、ヌメリを除去できる菌等を例示することができ、好ましくは非さらし粉系抗菌剤である。
【0016】
(塩素系殺菌剤)
本発明に使用できる塩素系殺菌剤としては亜塩素酸ナトリウム、さらし粉、高度さらし粉、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸水等を例示することができる。
【0017】
(非さらし粉系抗菌剤)
本発明に使用できる非さらし粉系抗菌剤としては、その使用時に酸性物質等と反応して塩素ガスを発生しないものであればどのようなものでも使用することができ、例えば、一般的な防黴剤又は抗細菌剤として知られている化合物及び抗菌作用を有することが知られている天然精油類等を例示することができる。
【0018】
本発明に使用できる防黴剤又は抗細菌剤としては、例えば、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−3−n−オクチル−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−メトキシカルボニルベンズイミダゾール、2,3,5,6−テトラクロロ−4−メタンスルホニルピリジン、2−チオシアノメチルチオベンゾチアゾール、2,2−ジチオ−ビス−(ピリジン−1−オキサイド)、3,3,4,4−テトラハイドロチオフェン−1,1−ジオキサイド、4,5−ジクロロ−1,2−ジチオラン−3−オン、5−クロロ−4−フェニル−1,2−ジチオラン−3−オン、N−メチルピロリドン、フェニル−(2−シアノ−2−クロロビニル)スルホン、メチレンビスチオシアネート、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジブロモ−2−エタノール、2−ブロモ−4′−ヒドロキシアセトフェノン、ジブロモニトリルプロピオンアミド、2−ブロモ−2−ブロモメチルグルタルニトリル、過炭酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過ほう酸ナトリウム、オルトフェニルフェノール、ジフェニル、2−イソプロピル−5−メチルフェノール、パラクロロメタキシレノール、パラヒドロキシ安息香酸n−ブチル、パラヒドロキシ安息香酸エチル、パラヒドロキシ安息香酸メチル、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸クロロへキシジン、グルコン酸クロロヘキシジン、2−ピリジンチオール−1−オキサイド、2−ピリジンチオール−1−オキシド亜鉛塩、2−ピリジンチオール−1−オキシドナトリウム、N,N′−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムブロマイド)、4,4′−(テトラメチレンジアミノ)ビス(1−デシルピリジニウムブロマイド)等を具体的に挙げることができる。
【0019】
また、本発明に使用できる天然精油類としては、例えば、シネオール、ヒノキチオール、メントール、テルピネオール、ボルネオール、ノポール、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、ゲラニオール、リナロール、ジメチルオクタノール、チモール等を例示することができる。
さらに、本発明に使用できる非さらし粉系抗菌剤として、ヨード系抗菌剤も例示することができ、その中でも特に固体のものが望ましい。ヨード系抗菌剤としては、例えば、2,3,3−トリヨードアリルアルコール類、2,3,3−トリヨードアリルエーテル類、2,3,3−トリヨードアリルアゾール類、3−ヨード−2−プロパルギルブチルカルバミン酸、4−クロロフェニル(3−ヨードプロパルギル)ホルマール、ヨードプロパルギルアゾール類、ジヨードメチルパラトリルスルホン、ポビドンヨード、ベンジルヨード酢酸エステル及びパラニトロベンジルヨード酢酸エステルを挙げることができる。
【0020】
これら非さらし粉系抗菌剤は、単独又は2種以上混合して使用することができる。
【0021】
(包接化合物タイプの抗菌剤)
これら非さらし粉系抗菌剤は、多分子系ホスト化合物のゲスト化合物とすることができ、例えば、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン等をゲスト化合物として包接化合物を形成させ、これらを非さらし粉系抗菌剤として使用することができる。
【0022】
本発明において多分子系ホスト化合物とは、ゲストとなる抗菌剤と水素結合等の分子間力により相互作用を持ち、規則的配列を有する、結晶性錯体(包接化合物)を形成する化合物をいい、上記の性質を有する化合物であれば特に制限されないが、例えば以下の化合物を例示することができる。
(1)テトラキスフェノ−ル類
(2)1,1,6,6−テトラフェニル−2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオール
(3)1,6−ビス(2−クロロフェニル)−1,6−ジフェニルヘキサン−2,4−ジイン−1,6−ジオール
(4)1,1,4,4−テトラフェニル−2−ブチン−1,4−ジオール
(5)2,5−ビス(2,4,ジメチルフェニル)ハイドロキノン
(6)1,1−ビス(2,4,ジメチルフェニル)−2−プロピン−1−オール
(7)1,1,2,2−テトラフェニルエタン−1,2−ジオール
(8)1,1′−ビ−2−ナフトール
(9)9,10−ジフェニル−9,10−ジヒドロキシアントラセン
(10)1,1,6,6−テトラ(2,4−ジメチルフェニル)−2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオール
(11)9,10−ビス(4−メチルフェニル)−9,10−ジヒドロキシアントラセン
(12)1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン
(13)N,N,N′,N′−テトラキス(シクロヘキシル)−(1,1′−ビフェニル)−2−2’−ジカルボキシアミド
(14)4,4′−スルホニルビスフェノール
(15)4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)
(16)2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)
(17)4,4′−チオビス(4−クロロフェノール)
(18)2,2′−メチレンビス(4−クロロフェノール)
(19)デオキシコール酸
(20)コール酸
(21)α,α,α′,α′−テトラフェニル−1,1′−ビフェニル−2,2′−ジメタノール
(22)t−ブチルヒドロキノン
(23)2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン
(24)顆粒状コーンスターチ
(25)1,4−ジアザビシクロ−(2,2,2)−オクタン
【0023】
前記多分子系ホスト化合物におけるテトラキスフェノ−ル類としては、例えば、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,3,3−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,4,4−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,5,5−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1,5,5−テトラキス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1,5,5−テトラキス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1,5,5−テトラキス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1,5,5−テトラキス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1,5,5−テトラキス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン等テトラキス(ヒドロキシフェニル)アルカン類を具体的に例示することができる。
【0024】
本発明に使用できる包接化合物は、通常、ゲストとなる非さらし粉系抗菌剤とホスト化合物とを、場合によっては水あるいは有機溶媒存在下に、常温〜100℃で数分間〜数時間攪拌して反応させることにより容易に得られる。
【0025】
(抗菌性無機金属又はその化合物)
本発明のヌメリ防除剤には抗菌性無機金属又はその化合物を添加することができる。抗菌性を有する無機金属を含有する成分であれば特に限定されないが、好ましくは固体状であり、抗菌性無機金属そのもの又はその酸化物、塩化物、硝酸塩、硫酸塩を担体に担持した粒子状のもの等が好ましく選ばれる。
ここで、担体の具体例としては、リン酸塩類(リン酸ジルコニウム、リン酸カルシウム等)、金属酸化物(酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化ジルコニウム等)、無機化合物(ゼオライト、粘土鉱物、シリカゲル等)等が挙げられる。これらの担体は、単独または2種以上を用いてもよい。
なかでも、金属酸化物の担体に抗菌性無機金属酸化物を担持したものが、担持強度の点から、より好ましく選ばれる。
【0026】
抗菌性無機金属又はその化合物中の抗菌性無機金属としては、抗菌性を有する金属であれば特に限定されないが、銀、亜鉛、銅等が好ましく選ばれる。さらに好ましいものとして、抗菌性の効果の点から、銀が選ばれる。これら抗菌性無機金属は、単独または2種以上を用いてもよい。
また、抗菌性無機金属又はその化合物の実際の商品としては、商業的に入手可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ATOMYBALL−S、ATOMYBALL−L、ATOMYBALL−UA(登録商標、触媒化成工業(株))の商品名で販売されているナノ粒子銀系無機抗菌剤などを使用することができる。
抗菌性無機金属含有成分は、一種または二種以上を混合して用いることができる。
【0027】
抗菌性無機金属又はその化合物の配合量としては、例えば銀を含む成分の場合、銀元素濃度に換算して、0.0002重量%以上が好ましい。より好ましくは、0.0002〜0.005重量%である。0.0002重量%以上で抗菌能が向上し、また、0.005重量%以下であっても、抗菌能は充分であり、経済的にも許容される上限量である。
抗菌性無機金属又はその化合物が粒子状である場合の組成物中における分散粒子の平均粒子径は、1〜500nmであることが好ましく、さらには、1〜100nmであることが好ましい。
ここで、平均粒子径とは、数平均粒子径であり、光散乱法により測定されるものである。500nm以下であれば粒子の分散状態は安定になり、100nm以下であれば粒子の分散状態はより安定なものとなる。また、粒子径が小さいほど、菌との接触の観点から有利に作用する。
(ヌメリを除去できる菌)
ヌメリを除去できる菌とは、具体的には枯草菌(バチルス属)等であり、枯草菌としては納豆菌等を例示することができる。
【0028】
(その他の成分)
本発明の錠剤は、単独で製剤できる場合を除いて、通常、製剤化に必要なその他の成分が添加される。その他の成分としては、賦形剤、結合剤、溶解調整剤、滑沢剤、界面活性剤、腐食防止剤、ゲル化物、帯電防止剤、その他の機能成分等である。
【0029】
(賦形剤、結合剤、溶解調整剤)
賦形剤、結合剤、溶解調整剤としては、フマル酸、安息香酸、アジピン酸、コハク酸、スルファミン酸、dl−リンゴ酸、クエン酸、アスコルビン酸、マロン酸、グリコール酸、C
10−24飽和脂肪酸等の有機酸類;ほう酸等の無機酸類;乳糖;ブドウ糖;コーンスターチ等のデンプン類;結晶セルロース、粉末セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース等の各種セルロース類;塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カリウム、燐酸水素カルシウム、合成珪酸アルミニウム、三珪酸マグネシウム等の無機塩類;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム(粉末)等の高分子化合物類;ショ糖脂肪酸エステル等を挙げることができるが、その中でも特に乳糖;ブドウ糖;コーンスターチ等のデンプン類;結晶セルロース、粉末セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類;アラビアゴム(粉末)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デキストリン等は加圧成形性を向上することができ、また、各種洗剤等が混入しても反応して有毒ガス等が発生することが無いので好ましく、これら賦形剤や結合剤、溶解調整剤は全固形物重量に対して1〜99重量%の割合で添加することができる。
【0030】
硫酸カルシウムを用いる場合、成形性や溶解性を容易にコントロールすることができる点からして硫酸カルシウム0.5水和物が好ましく、硫酸カルシウム0.5水和物の中でも、常圧焼成により製造されるβ型のものが、加圧焼成することにより製造されるα型のものよりも、吸水による成形体の型崩れを起こしにくい点で好ましく、このβ型の硫酸カルシウム0.5水和物を用いる場合は、乳糖と併用することが成形性や溶解性のコントロールの点でより好ましい。
【0031】
C
10−24飽和脂肪酸としては、ステアリン酸、ラウリン酸などが挙げられる。
これら飽和脂肪酸は、成形時の滑沢性を付与するのと同時に剤の水中での安定性(膨潤、崩壊防止性)を向上させる目的で使用され、ヌメリ防除剤の全固形物重量に対して1〜10重量%の割合で用いられる。
【0032】
ヒドロキシプロピルセルロースとは、セルロースの水酸基の一部又は全部が2−(CH
2CH(CH
3)−O)
mH(式中、mは1以上の整数)で置換されたものであり、重合度、置換度などについては特に限定されない。ヒドロキシプロピルセルロースとしては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース HPC−SL、HPC−L(以上商品名、日本曹達(株)社製)等が挙げられる。本発明において使用するヒドロキシプロピルセルロースの量は、ヌメリ防除剤全固形物重量に対して、好ましくは5重量%より少なく、より好ましくは、1〜4重量%である。
【0033】
(滑沢剤)
滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、オルトほう酸、シリカ、タルク、ワックス類等を例示することができ、これら滑沢剤は全固形物重量に対して0.01〜1重量%の割合で使用することができる。
【0034】
タルクとは、マグネシウムの含水ケイ酸塩鉱物であり、Mg
3Si
4O
10(OH)
2の組成を有する。本発明においては、界面活性剤の代わりに用いたり、界面活性剤と併用して用いられる。タルクの含有量としては、ヌメリ防除剤全重量に対して、0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜3重量%である。
【0035】
(界面活性剤)
本発明において使用される界面活性剤は抗菌剤成分と反応せず、融点が50℃以上のものであれば特に制限はない。融点が50℃以下の界面活性剤を用いると、台所や風呂場で使用した場合に温水などにより錠剤が溶解しやすくなり、また、夏場においては気温の上昇により錠剤から界面活性剤がブリードしやすくなるなどの問題がある。融点が50℃以上の界面活性剤としては、例えば、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ラウリン酸モノイソプロパノールアミドなどの脂肪酸アルカノールアミド類;ソルビタンステアレート、ソルビタンパルミテートなどのソルビタン脂肪酸エステル類;アルキルアルカノールアミド類、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーなどが挙げられる。その中でも、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミドとソルビタンステアレートを好ましい界面活性剤として挙げることができる。
これらのうち、市販されているものとしては、以下のものが挙げられる。ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミドとしては、トーホールN−120(東邦化学工業株式会社製)、アミゾールCME(登録商標、川研ファインケミカル株式会社製)など、ラウリン酸モノイソプロパノールアミドとしてはアミゾールPLME(登録商標、川研ファインケミカル株式会社製)、ソルビタンステアレートとしてはレオドールSP−S10V、S20V、S30V(登録商標、花王株式会社製)、ソルボンS−60(東邦化学工業株式会社製)など、ソルビタンパルミテートとしてはソルボンS−40(東邦化学工業株式会社製)など、ポリオキシエチレンステアリルエーテルとしてはエマルゲン350(登録商標、花王株式会社製)など、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーとしてはニューポールPE−68(登録商標、三洋化成工業株式会社製)などがある。
【0036】
これらは、単独で使用することも、あるいは2種以上混合して使用することもできるが、加圧成形した時の打錠性、水に対する溶解性、崩壊性、抗菌剤の安定性への影響を考慮して決定することが望ましい。
【0037】
界面活性剤の含有量としては、ヌメリ防除剤全重量に対して、0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜3重量%である。
【0038】
加熱溶融混合の場合や混練り押し出し成形する場合の配合物としては、融点が40〜100℃で固体であるものが好ましく、ポリオキシエチレン等の各種の水溶性高分子類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類等の界面活性剤を例示することができる。
【0039】
(腐食防止剤)
前記腐食防止剤としては、アルキルチオ尿素系やトリアゾール系化合物を例示することができ、これらを使用すると配管などの金属部分の腐食を抑制することができる。
【0040】
(ゲル状物)
前記ゲル状物として用いる場合のゲル化剤としては、寒天、ゼラチン、ローカストビーンガム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、アラビアガム、ゼランガム、アミノ酸、カルボキシメチルセルロース及びその金属塩、カラギーナン等を例示することができる。
【0041】
(帯電防止剤)
前記帯電防止剤としては、ケイソウ土、硫酸白土などを加えることにより、成形の際、帯電防止効果を付与することもできる。
(その他の機能成分)
その他の機能成分を有する化合物を添加することができる。その他の機能成分としては、乳幼児の誤食の防止等を目的とした苦味付与成分、台所生ゴミや排水口の悪臭の防止等を目的とした消臭成分、芳香成分、デザイン性向上等を目的とした着色成分を例示することによりもできる。
【0042】
(ヌメリ取りに用いられる薬剤の溶出濃度)
本発明におけるヌメリ取りに用いられる薬剤の溶出濃度は、初期においては殺菌成分の濃度が高いほうがよく、また長期間にわたって一定濃度以上であることが好ましい。この場合、初期とは使用開始から1日間であり、長期間とは使用開始から少なくとも5日間、好ましくは少なくとも10日間、さらに好ましくは、少なくとも15日間である。また、薬剤の溶出濃度は、ヌメリ取りに用いられる薬剤の種類によってその有効濃度が異なるので適時決めるものであるが、最小発育阻止濃度以上であることが好ましい。
殺菌成分の溶出濃度の測定は、例えば、以下の様にして行うことができる。本発明のヌメリ取り用錠剤を市販の台所用ヌメリトリ剤のカセット本体(
図1、「キッチンハイター(登録商標)除菌ヌメリとり プラスチックタイプ」花王社製)に充填し、台所排水口用蓋(
図2)に設置した後、排水口にセットし、その後、1日あたり、水温37〜42℃の水を5L/分の速度で5分間流し、55分間流水を停止するという処理を18時間行った後、6時間放置する。この処理を毎日繰り返し行う。毎日、洗浄水を流し終わった10秒後に蓋とカセット本体を静かに取り出し、2Lのポリカップに斜めに入れて1分間付着している水を採取する。この採取した水の殺菌成分の溶出濃度を測定する。殺菌成分により、測定装置は異なるが、例えば、ヌメリ取りに用いられる薬剤が5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(CMI)の場合は、液体クロマトグラフィーにより測定することができる。
CMIの場合は、初期において溶出される殺菌成分の濃度は、殺菌成分及びその配合量が同じ場合、表面に凹部や貫通孔を有さない従来の錠剤に比して約1.2倍以上にすることができ、一定濃度以上が持続する期間は、従来の凹部や貫通孔を有さない錠剤に比して3日以上長く、または1.4倍以上長くすることができる。つまり、従来の錠剤では一定濃度未満の期間が長く存在するのに対して、本発明の錠剤では、その分の殺菌成分を速やかに溶出させ一定濃度以上にすることにより、結果として一定濃度以上の期間を長くすることができる。
【0043】
(錠剤の製造及び配合割合)
本発明の錠剤の製造方法は特に限定されるものではないが、ヌメリ取りに用いられる薬剤とそれ以外の成分とを加熱溶融混合、混練り押し出し成形、加圧成形等により行われる。加圧成形法は、機種により同時に凹部や貫通孔を形成することができるため好ましい。具体的な製造方法は以下の通りであるが、この方法に限定される必要はない。
まず、各原料をナウターミキサーに投入し、室温(20〜30℃)にて30〜60分間混合を行う。混合された原料は圧延ローラーを通して板状造粒を行う。それを一旦荒く砕き、原末を製造する。原末を打錠機のホッパーから投入し、打錠を行う。打錠機に設置した型の形状により凹部や貫通孔を有した錠剤が形成される。また、凹部や貫通孔を形成できる加圧打錠機としては、たとえば、株式会社菊水製作所製型式HER2ロータリー打錠機等が挙げられる。
【0044】
本発明においてヌメリ取りに用いられる薬剤とそれ以外の成分との混合割合は、使用状況が様々であることからヌメリ取りに用いられる薬剤1〜99重量部、それ以外の成分99〜1重量部の間で任意に混合比率を変化させることができるが、好ましくはヌメリ取りに用いられる薬剤5〜20重量部、それ以外の成分95〜80重量部である。また、ヌメリ取りに用いられる薬剤として包接化合物を用いる場合、該包接化合物2〜30重量部、それ以外の成分98〜70重量部の混合割合が好ましい。
【実施例】
【0045】
以下に、本発明を実施例及び比較例により、さらに具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に何ら限定されるものではない。
(試料の調製)
第1表に示される配合割合の各混合物から加圧成形により直径10mmの錠剤からなる試料を調製した。混合は株式会社マゼラー製型式PT−60の混合機により、造粒はターボ工業株式会社製型式WP−160造粒機により、打錠は株式会社菊水製作所製型式HER2ロータリー打錠機により行った。第1表中、「トップビット」(登録商標)は、抗菌剤として2モルの5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(CMI)と、多分子系ホスト化合物として1モルの1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタンとの反応により得られた包接化合物を示し、「HPC」はヒドロキシプロピルセルロースを示す。
【0046】
(溶解試験条件1)
第1表記載の組成で打錠した錠剤24錠(0.7g/錠)を
図1に示す市販の台所用ヌメリトリ剤のカセット本体(「キッチンハイター(登録商標)除菌ヌメリとり プラスチックタイプ」花王社製)に充填し、
図2に示す台所排水口用蓋の裏側に設置した後、排水口にセットし、その後、水温37〜42℃の水を5L/分の速度で5分間流し、55分間流水を停止した。この1時間分の処理を1日18時間行い、6時間は行なわなかった。この1日分の処理を第2表に記載の日数分実施し、適時、洗浄水を流し終わった10秒後に蓋とカセット本体を静かに取り出し、2Lのポリカップに斜めに入れて1分間付着している水を採取した。この採取した水の殺菌成分の溶出濃度を測定した。測定した濃度は、水5gに換算した濃度(補正後の濃度=測定した濃度×(採取した水の重量(g)÷5(g)))にし、測定値とした。測定は、液体クロマトグラフィー(カラム:Finepack SIL C18S 4.6φ×150mm、測定波長:275nm、移動相:アセトニトリル/水=4/6、流量:1.0ml/min、内標:フタル酸ジメチル)により分析し、殺菌成分濃度を記録した。
(溶解試験条件2)
溶解試験条件1の「1時間分の処理を1日18時間行い、6時間は行なわなかった」に代えて、「1時間分の処理を1日24時間行った」に代えた以外は、溶解試験条件1の条件で試験をした。
【0047】
(実施例1〜8、比較例1)
溶解試験条件1の条件にて実施例1〜7、比較例を試験し、溶解試験条件2の条件で実施例8を試験した。第1表記載の組成で打錠した錠剤の強度を第3表に示し、溶出した殺菌剤成分の濃度を第2表に示し、実験終了後の錠剤の形状を第4表に示す。また、試験前の錠剤の重量が50%以下になる日数を第5表に示す。
【0048】
(凹部)
凹部が浅い錠剤とは、直径10mmの場合、厚みは6.2mmであり、凹部の深さは
図3の通り、0.42mmである。
凹部が深いとは、直径10mmの場合、厚みは6.2mmであり、凹部の深さは
図4の通り、1.6mmである。
また、凹部が非対称とは、直径10mm、厚みは6.0mmの場合、一方の凹部の深さは2.6mm、反対側の凹部の深さは1.0mmであり、凹部は
図6の通りである。
(貫通孔)
貫通孔が狭い錠剤とは、直径10mm、厚み6.2mmの場合、貫通孔の直径は2mmである(
図5)。
貫通孔が広い錠剤とは、直径10mm、厚み6.2mmの場合、貫通孔の直径は3mmである。
(フィードシュー)
攪拌とは攪拌フィードシュー、オープンとはオープンフィードシューのことを示す。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】
【0053】
【表5】
【0054】
第2表より、比較例1と比較して実施例の初期濃度が高いことがわかった。また、比較例は濃度が2ppm以下になるのは7日目に対し、実施例1〜5は13日以上、実施例6〜7は8日目以上であり、比較例の濃度が1ppm以下になるのは12日目に対し、実施例1〜5は17日目よりあとであり、実施例6は15日目よりあとであり、長期間殺菌成分濃度が維持されたことがわかった。また、実施例7では2ppm以上から1ppm以下になる日数が短期間であった。
溶解試験条件2は溶解試験条件1よりも1日当たり1.5倍の水の量を使用した試験のため、溶解が早く行われることになる。しかし、1日当りの水量が1.5倍であるから日数を1.5で割ると溶解試験条件1と比較でき、その結果から実施例8は溶解し易いことが判明した。
第3表より、錠剤強度が低下していないことがわかった。
第4表より、実験終了時の錠剤の形状は比較例が小さくなっていることは確認できたが錠剤として維持していたのに対し、実施例は初期の形状とは異なり、穴が開いていたり、砕けて小さくなっていて、一目で錠剤の薬効がなくなったことがわかった。
第5表より、凹部や貫通孔を有していても、比較例1と同等の溶解速度で実験を行なったことを確認した。