特許第5761879号(P5761879)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5761879ポリウレタン樹脂組成物、それを用いてなる成型体および電気電子部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5761879
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】ポリウレタン樹脂組成物、それを用いてなる成型体および電気電子部品
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/10 20060101AFI20150723BHJP
【FI】
   C08G18/10
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-109655(P2014-109655)
(22)【出願日】2014年5月28日
【審査請求日】2014年12月9日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003506
【氏名又は名称】第一工業製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】北川 貴士
(72)【発明者】
【氏名】藤本 泰範
(72)【発明者】
【氏名】正司 武嗣
(72)【発明者】
【氏名】野田 敏樹
【審査官】 山村 周平
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/132490(WO,A1)
【文献】 特開2009−167255(JP,A)
【文献】 特開2001−352156(JP,A)
【文献】 特開2008−056779(JP,A)
【文献】 特開平07−062051(JP,A)
【文献】 特開2011−016993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00−18/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基含有化合物(A)、イソシアネート化合物(B)、および水(C)を含有するポリウレタン樹脂組成物(X)であって、
前記イソシアネート化合物(B)が、MDI(b1)と、ヒマシ油(b2)とを反応させて得られたイソシアネート基末端プレポリマー(B1)を含有し、
前記水(C)の含有量が、ポリウレタン樹脂組成物(X)100質量部に対して、0.2質量部〜1.2質量部であるポリウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(B1)が、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(B1)100質量部に対して、ヒマシ油(b2)2〜40質量部を、MDI(b1)と反応させて得られたものである請求項1記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記水酸基含有化合物(A)が、ポリエーテルポリオール、ポリマーポリオール、および低分子量グリコールからなる群より選ばれる一種以上である請求項1または2に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
電気電子部品用であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか一項に記載のポリウレタン樹脂組成物からなることを特徴とする成型体。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか一項に記載のポリウレタン樹脂組成物からなる成型体で被覆された電気電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン樹脂組成物、それを用いてなる成型体および電気電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
電気電子部品は、振動や衝撃からの保護、絶縁、環境中からの水分や粉塵等による影響を防止するため、ポリウレタン樹脂で被覆することが行われている。近年、軽量化、コストダウン等の観点からポリウレタン樹脂の低密度化が検討されている。電気電子部品の保護皮膜として好適なマイクロバルーンを使用した独立気泡タイプのポリウレタン樹脂が開示されている(特許文献1参照)。
【0003】
一方、ヒマシ油が植物由来原料であることから、バイオマス度の高いポリウレタン樹脂として、ヒマシ油ポリオールとMDIとの反応生成物であるイソシアネート末端プレポリマーを使用した低燃焼性軟質ポリウレタン発泡体、発泡ポリウレタン樹脂が開示されている(特許文献2および3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−352156号公報
【特許文献2】特開2009−167255号公報
【特許文献3】国際公開第WO2011/132490号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年さらなる低密度化、低コスト化が求められているが、マイクロバルーンを使用する特許文献1の方法では、さらなる低密度化を図ることが難しく、マイクロバルーンのコストの高さも課題である。また、発泡剤として低密度化、低コスト化が可能な水を使用した場合、低密度化に伴い樹脂硬度が低下し、独立気泡率が高いままであると、製造後経時的にポリウレタン樹脂が収縮する。一方、独立気泡率を低下させると透水性が高くなるという課題が判明した。水の使用量が多い、特許文献2および3記載の方法では、透水性が高く、十分な電気絶縁性を有しない。本発明は、上記に鑑みて為されたものであり、低密度でありながら成形性、衝撃吸収性、電気絶縁性に優れ、かつ透水性が低いポリウレタン樹脂成型体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、ポリウレタン樹脂組成物として特定の構造のイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを用い、水の含有量を所定量とすることにより、低い独立気泡率と、低い透水性及び十分な電気絶縁性を両立させ、上記の課題を解決できることを見出した。すなわち本発明は、水酸基含有化合物(A)、イソシアネート化合物(B)、および水(C)を含有するポリウレタン樹脂組成物(X)であって、前記イソシアネート化合物(B)が、MDI(b1)と、ヒマシ油(b2)とを反応させて得られたイソシアネート基末端プレポリマー(B1)を含有し、前記水(C)の含有量が、ポリウレタン樹脂組成物(X)100質量部に対して、0.2質量部〜1.2質量部であるポリウレタン樹脂組成物に関する。
【0007】
好ましい実施形態においては、前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(B1)が、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(B1)100質量部に対して、ヒマシ油(b2)2〜40質量部を、MDI(b1)と反応させて得られたものである。
【0008】
好ましい実施形態においては、前記水酸基含有化合物(A)が、ポリエーテルポリオール、ポリマーポリオール、および低分子量グリコールからなる群より選ばれる一種以上である請求項1または2に記載のポリウレタン樹脂組成物である。
好ましい実施形態においては、前記ポリウレタン樹脂組成物は電気電子部品用である。
【0009】
また、前記ポリウレタン樹脂組成物からなる成型体に関する。
【0010】
さらに、前記ポリウレタン樹脂組成物からなる成型体で被覆された電気電子部品に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリウレタン樹脂組成物を用いることにより、低密度でありながら成形性、衝撃吸収性、電気絶縁性に優れ、かつ透水性が低い成型体を得ることかできる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、本発明のポリウレタン樹脂組成物(X)について説明する。
【0013】
本発明において、ポリウレタン樹脂組成物(X)は、水酸基含有化合物(A)、イソシアネート化合物(B)、および水(C)を含有する。
【0014】
本発明に用いる水酸基含有化合物(A)は、特に限定されないが、例えば、ポリウレタン樹脂原料として一般的に用いられるポリエーテルポリオール、ポリマーポリオール、低分子量グリコール、ポリエステルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、ポリブタジエンポリオールの水素化物およびポリイソプレンポリオールの水素化物などを、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのうち、成形性の制御および衝撃吸収性の観点からポリエーテルポリオール、ポリマーポリオール、低分子量グリコールが好ましい。
【0015】
ポリエーテルポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、水、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、トリエタノールアミン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、メチルグルコジット、芳香族ジアミン、ソルビトール、ショ糖、リン酸等を開始剤として、アルキレンオキシド(以下、「AO」と記載することがある。)の開環重合により得られたものなどを、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。開始剤としては、水、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールを出発物質としたものが好ましく、AOとしてはエチレンオキシド(以下、「EO」と記載することがある。)、プロピレンオキシド(以下、「PO」と記載することがある。)およびブチレンオキシド(以下、「BO」と記載することがある。)が好ましい。透水性および電気絶縁性の観点から、EOは末端にブロック付加されていることが好ましく、付加の比率は0〜25質量%が好ましく、より好ましくは5〜20質量%がより好ましい。
【0016】
ポリマーポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、前記ポリエーテルポリオールとエチレン性不飽和単量体(例えば、ブタジエン、アクリロニトリル、スチレン等。)をラジカル重合触媒の存在下に反応させた重合体ポリオールなどを、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明において、ポリマーポリオールを使用することは、成型体の成形性および透水性の観点から好ましく、ポリマーポリオールと、MDI(b1)とヒマシ油(b2)を反応させて得られたイソシアネート基末端プレポリマー(B1)、とを併用することは、より好ましい。成型体の成形性の観点からポリマーポリオールを水酸基含有化合物(A)100質量部に対して1〜50質量%使用することが好ましい。
【0017】
低分子量グリコールとしては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール等の脂肪族ジオール類;1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂環族ジオール類;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3官能以上の水酸基含有化合物などを、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、成型体の成形性の観点から、エチレングリコール、ジエチレングリコールが好ましい。本発明において、低分子量グリコールを使用することは、成型体の成形性の観点から好ましく、低分子量グリコールと、MDI(b1)とヒマシ油(b2)を反応させて得られたイソシアネート基末端プレポリマー(B1)、とを併用することは、より好ましい。成型体の成形性の観点から低分子量グリコールを水酸基含有化合物(A)100質量部に対して1〜20質量%使用することが好ましく、1〜15質量%使用することがより好ましい。
【0018】
ポリエステルポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、多価水酸基含有化合物とポリカルボン酸(芳香族ポリカルボン酸及び脂肪族ポリカルボン酸)又は無水物及びこの低級アルキル(アルキル基の炭素数が1〜4)エステル等のエステル形成性誘導体(無水フタル酸及びテレフタル酸ジメチル等)との縮合反応生成物;ポリラクトンポリオール;ポリカーボネートポリオール;並びにヒマシ油誘導体[ヒマシ油脂肪酸と多価アルコールやポリオキシアルキレンポリオールとのポリエステルポリオール(ヒマシ油脂肪酸のモノ−またはジグリセライド、ヒマシ油脂肪酸とトリメチロールプロパンとのモノ−、ジ−またはトリエステル、ヒマシ油脂肪酸とポリオキシプロピレングリコールとのモノ−またはジエステルなど);ヒマシ油にアルキレンオキサイド(炭素数2〜4)を付加したもの;ヒマシ油とジフェニルメタンジイソシアネートとから誘導された水酸基末端プレポリマーなど]などを、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0019】
ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、ポリブタジエンポリオールの水素化物およびポリイソプレンポリオールの水素化物としては、特に限定されないが、ポリウレタン樹脂に通常用いられるものを使用することができる。
【0020】
本発明に用いる水酸基含有化合物(A)100質量部に対して、好ましくは50〜100質量部、より好ましくは65〜100質量部は、平均水酸基数が1.8〜3.5であり、平均水酸基価が20〜100mgKOH/gであることが好ましい。このような範囲とすることで、衝撃吸収性を良好とすることができる。なお、本発明において平均水酸基数は開始剤の水酸基の数、平均分子量は前記平均水酸基数および平均水酸基価から算出することができる。
【0021】
水酸基含有化合物(A)の含有量は、成型体の成形性の観点から、ポリウレタン樹脂組成物(X)100質量部に対して15〜80質量部であることが好ましく、20〜70質量部であることがより好ましい。
【0022】
本発明に用いるイソシアネート化合物(B)は、MDI(b1)と、ヒマシ油(b2)とを反応させて得られたイソシアネート基末端プレポリマー(B1)を含有する。ヒマシ油(b2)をMDI(b1)と予め反応させたイソシアネート基末端プレポリマー(B1)を用いることにより、ワンショットで反応させる場合と比較して、成型体中の未反応のヒマシ油(b2)を減らすことができ、衝撃吸収性、成型体の成形性、電気絶縁性の観点から好ましい。
【0023】
本発明に用いるMDI(b1)は、特に限定されないが、例えば、2、2′−、2,4′−または、4、4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(ピュアMDI)、これらのポリメリック体(ポリメリックMDI)、これらのウレタン変性体、ウレア変性体、アロファネート変性体、ビウレット変性体、カルボジイミド変性体、ウレトンイミン変性体、ウレトジオン変性体、イソシアヌレート変性体などを、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのうち、透水性の観点からピュアMDI、ポリメリックMDIおよびカルボジイミド変性体が好ましい。
【0024】
本発明に用いるヒマシ油(b2)は、トウダイグサ科のヒマ(トウゴマ)の種子から抽出された天然植物油のことを示す。電気絶縁性の観点から工業原料用として精製されていることが好ましく、水分は0.1%以下、酸価は1.0以下であることがより好ましい。
【0025】
本発明に用いるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(B1)は、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(B1)100質量部に対して、ヒマシ油(b2)を好ましくは2〜40質量部、より好ましくは5〜39質量部、さらに好ましくは8〜38質量部を、MDI(b1)と反応させて得られたものである。電気絶縁性および透水性の観点から前記イソシアネート基末端プレポリマー(B1)には前記ヒマシ油誘導体と比較してヒマシ油使用することが好ましい。
【0026】
本発明に用いるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(B1)を得る際の反応温度は、特に限定されないが、例えば20〜120℃が好ましく、40〜100℃がより好ましい。また、特に限定されないが、反応時には、必要に応じ、例えば、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート等の有機金属化合物や、トリエチレンジアミンやトリエチルアミン等の有機アミンやその塩等の公知の触媒を用いることができる。
【0027】
本発明のポリウレタン樹脂組成物においては、必要に応じて上記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(B1)以外のポリイソシアネートを併用してもよい。特に限定されないが、例えば、トリレンジイソシアネート(以後TDIと略称する)、キシレンジイソシアネート、ニトロジフェニルジイソシアネート、ジフェニルプロパンジイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ジメトキシジフェニルジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチルペンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加TDI、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加MDI、テトラメチルキシレンジイソシアネート、これらのポリメリック体、これらのウレア変性体、これらのアロファネート変性体、これらのビウレット変性体、これらのカルボジイミド変性体、これらのウレトンイミン変性体、これらのウレトジオン変性体、これらのイソシアヌレート変性体、これらとヒマシ油(b2)とを反応させて得られたイソシアネート基末端プレポリマー、これらまたは前記MDI(b1)と前記ヒマシ油誘導体とを反応させて得られたイソシアネート基末端プレポリマー、などを、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
イソシアネート化合物(B)の含有量は、成型体の成形性の観点から、ポリウレタン樹脂組成物(X)100質量部に対して20〜85質量部であることが好ましく、25〜80質量部であることがより好ましい。
【0029】
本発明に用いる水(C)の含有量は、ポリウレタン樹脂組成物(X)100質量部に対して0.2〜1.2質量部である。好ましくは0.25〜1.2質量部、より好ましくは0.3〜1.2質量部である。水(C)の含有量をこのような範囲とすることで、透水性、電気絶縁性、衝撃吸収性、成型体の成形性を両立することができる。
【0030】
前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(B1)および水(C)の質量比は(B1):(C)=25〜350:1が好ましく、35〜300:1がより好ましく、40〜250:1がさらに好ましい。このような範囲とすることで、透水性、電気絶縁性、衝撃吸収性、成型体の成形性を両立することができる。
【0031】
本発明に用いられるポリウレタン樹脂は、イソシアネート基と水酸基とのモル比(NCO/OH)が、0.6〜1.5であることが好ましく、0.7〜1.3であることがより好ましい。イソシアネート基と水酸基のモル比をこのような範囲とすることで、透水性、電気絶縁性、衝撃吸収性、成型体の成形性を両立することができる。
【0032】
本発明に用いられるポリウレタン樹脂は、特に限定されないが、例えば、触媒、(D)、整泡剤(例えば、ポリアルキルシロキサン−ポリオキシアルキレンブロックコポリマーなどのシリコーン製泡剤など)、充填剤、界面活性剤、酸化防止剤、難燃剤、抗カビ剤、消臭剤、分散剤、変色防止剤、可塑剤、香料など公知の添加剤を本発明の目的を阻害しない範囲で使用することができる。
【0033】
本発明に用いる触媒(D)は、特に限定されないが、例えば、3級アミン、有機金属化合物などを使用することができる。3級アミンとしては、特に限定されないが、例えば、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、N−メチルモルホリン、ジメチルエタノールアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、1,2−ジメチルイミダゾールなどを使用することができる。有機金属化合物としては、特に限定されないが、例えば、亜鉛、錫、鉛、ジルコニウム、ビスマス、コバルト、マンガン、鉄などの金属とオクテン酸、ナフテン酸などの有機酸との金属塩、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、チタンアセチルアセトナート、アセチルアセトンアルミニウム、アセチルアセトンコバルト、アセチルアセトン鉄、アセチルアセトン銅、アセチルアセトン亜鉛などの金属キレート化合物などを使用することができる。これらの触媒は、いずれも、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。ポリウレタン樹脂組成物(X)100質量部に対して0.01〜5.0質量部であることが好ましく、0.1〜3.0質量部であることがより好ましい。触媒(D)の含有量をこのような範囲とすることで、反応性および成形性を好適なものにすることができる。
【0034】
本発明のポリウレタン樹脂組成物からなる成型体は、特に限定されないが、例えば、下記の方法で製造することができる。まず、水酸基含有化合物(A)および水(C)、必要により触媒(D)、整泡剤などの助剤を所定量混合する。続いて、ホモディスパーなどの攪拌機、または、低圧もしくは高圧発泡機を用いて、前記混合物と、イソシアネート化合物(B)を所定量混合し、得られた混合液を開放式または密閉式モールドに注入し、所定時間養生して硬化させた後、脱型することにより成型体が得られる。
【0035】
本発明のポリウレタン樹脂組成物からなる成型体の密度は、70〜700kg/mが好ましく、80〜675kg/mがより好ましい。これらの範囲であると透水性および成型体の成形性の点で良好である。なお、密度は実施例に記載の方法で測定される。
【0036】
本発明のポリウレタン樹脂組成物からなる成型体の硬度(shoreC)は、1〜85が好ましく、3〜80がより好ましい。これらの範囲であると衝撃吸収性および成型体の成形性の点で良好である。なお、硬度(shoreC)は実施例に記載の方法で測定される。
【0037】
本発明のポリウレタン樹脂組成物からなる成型体の反発弾性率は、1〜50%が好ましく、3〜40%がより好ましい。これらの範囲であると衝撃吸収性の点で良好である。なお、反発弾性率は実施例に記載の方法で測定される。
【0038】
本発明のポリウレタン樹脂組成物からなる成型体の独立気泡率は、0〜60%が好ましく、3〜50%がより好ましい。これらの範囲であると透水性および成型体の成形性の点で良好である。なお、独立気泡率は実施例に記載の方法で測定される。
【0039】
本発明のポリウレタン樹脂組成物からなる成型体の吸水率は、5〜60%が好ましく、5〜55%がより好ましい。これらの範囲であると透水性および電気絶縁性の点で良好である。なお、吸水率は実施例に記載の方法で測定される。
【0040】
本発明のポリウレタン樹脂組成物からなる成型体の24時間没水後の体積固有抵抗は、1.0×106〜1.0×1012(Ω・cm)が好ましく、1.0×107〜1.0×1012(Ω・cm)がより好ましい。これらの範囲であると電気絶縁性の点で良好である。なお、24時間没水後の体積固有抵抗は実施例に記載の方法で測定される。
【0041】
次に、本発明の電気電子部品について以下に説明する。本発明の電気電子部品は、特に限定されないが、例えば、前記ポリウレタン樹脂組成物を用いて被覆処理されたものである。かかる電気電子部品は、金型にコンデンサー、トランス、実装回路基板等の被覆処理前の電気電子部品をセットした後にポリウレタン樹脂組成物を注入し一体成型する方法、被覆処理前の電気電子部品に接着層を塗付し、ポリウレタン樹脂組成物からなる成型体を接着させる方法等によって得ることができる。なお、硬化反応温度は15〜120℃が好ましい。
【実施例】
【0042】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明のポリウレタン樹脂組成物およびポリウレタン樹脂組成物からなる成型体について詳細に説明する。なお、本明細書中に於ける「部」、「%」は、特に明示した場合を除き、「質量部」、「質量%」をそれぞれ表している。
【0043】
実施例及び比較例において使用する原料を以下に示す。
【0044】
(水酸基含有化合物(A))
A1:グリセリンのPO・EOブロック付加物。水酸基価=34.0mgKOH/g、末端EO単位の含有量=15質量%
A2:プロピレングリコールのPO・EOブロック付加物。水酸基価=37.0mgKOH/g、末端EO単位の含有量=15質量%
A3:アクリロニトリルタイプのポリマーポリオール、水酸基価=27.2mgKOH/g。(商品名:ハイフレックス(登録商標)ND825C、第一工業製薬社製)
A4:エチレングリコール(商品名:エチレングリコールB、三菱化学社製)
(イソシアネート化合物(B))
下記の方法により調製した
B1−1:窒素導入管、冷却用コンデンサー、温度計、攪拌機を備えた1リットル4ッ口丸底フラスコに予め仕込んだ、MDI(b1)としてカルボジイミド変性MDI(商品名:ルプラネート(登録商標)MM−103、BASF INOACポリウレタン社製)1700部中に、ヒマシ油(b2)としてヒマシ油(商品名:ヒマシ油D、伊藤製油社製)を分割で300部仕込んだ。窒素気流下60℃で8時間反応を行い、フリーNCO23.3(質量%)、ウレタンプレポリマー100質量部に対するヒマシ油の割合15質量%、のイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(B1−1)を得た。
B1−2:MDI(b1)としてカルボジイミド変性MDI(商品名:ルプラネート(登録商標)MM−103、BASF INOACポリウレタン社製)1400部中、ヒマシ油(b2)としてヒマシ油(商品名:ヒマシ油D、伊藤製油社製)600部使用した以外はB1−1と同様の方法で調製し、フリーNCO17.0(質量%)、ウレタンプレポリマー100質量部に対するヒマシ油の割合30質量%、のイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(B1−2)を得た。
B1−3:MDI(b1)としてピュアMDI(商品名:ルプラネート(登録商標)MI、BASF INOACポリウレタン社製)1300部中、ヒマシ油(b2)としてヒマシ油(商品名:ヒマシ油D、伊藤製油社製)700部使用した以外はB1−1と同様の方法で調製し、フリーNCO16.6(質量%)、ウレタンプレポリマー100質量部に対するヒマシ油の割合35質量%、のイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(B1−3)を得た。
B1−4:MDI(b1)としてポリメリックMDI(商品名:ミリオネート(登録商標)MR−200、日本ポリウレタン社製)1700部中、ヒマシ油(b2)としてヒマシ油(商品名:ヒマシ油D、伊藤製油社製)300部使用した以外はB1−1と同様の方法で調製し、フリーNCO24.5(質量%)、ウレタンプレポリマー100質量部に対するヒマシ油の割合15質量%、のイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(B1−4)を得た。
B2−1:カルボジイミド変性MDI(商品名:ルプラネート(登録商標)MM−103、BASF INOACポリウレタン社製)
B2−2: ピュアMDI(商品名:ルプラネート(登録商標)MI、BASF INOACポリウレタン社製)
B2−3:ポリメリックMDI(商品名:ミリオネート(登録商標)MR200、日本ポリウレタン社製)
(水(C))

(触媒(D))
D1:トリエチレンジアミン/ジプロピレングリコール=33/67(質量比)溶液(東ソー社製、製品名:TEDA−L33)
D2:ビス(ジメチルアミノエチル)エーテルの70%ジプロピレングリコール溶液(東ソー社製、製品名:TOYOCAT ET)
<実施例1〜12及び比較例1〜5>
表1および表2に示す処方により、各実施例及び各比較例のポリウレタン樹脂組成物からなる成型体を調製した。具体的には、水酸基含有化合物(A)および水(C)、必要により触媒(D)、整泡剤などの助剤を所定量混合した。続いて、回転数3000rpmの高速ミキサーを用いて、前記混合物と、イソシアネート化合物(B)を所定量で7秒間混合し、得られた混合液を1Lの開放式モールドに注入し、所定時間養生して硬化させた後、脱型することにより成型体を得た。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
<評価方法>
(フォーム外観)
フォーム調製翌日の外観を目視により観察し、収縮がないものを○、収縮があるものを×と評価した。
(密度)
JIS K−7222に準拠してコア部を4cm×4cm×4cmで切り出した試料を用いて測定した。なお、密度、硬度(shoreC)、反発弾性率、独立気泡率、吸水率、体積固有抵抗はいずれも、成型体作成後、温度23℃±2℃、湿度50%±5%の環境で24時間静置したものを使用して評価した。
(硬度(shoreC))
JIS K−7312に準拠して、コア部を4cm×4cm×4cmで切り出した試料を、高分子計器社製、アスカーC型硬度計を用いて測定した。
(反発弾性率)
JIS K−6400に準拠してコア部を4cm×4cm×4cmで切り出した試料を用いて測定した。
(独立気泡率)
ASTMD2856−70に準拠して、コア部を2cm×3cm×4cmで切り出した試料を、東芝ベックマン空気比較比重計モデル930を用いて測定した。
(吸水率)
コア部を4cm×4cm×1.5cmで切り出した試料を使用した。50℃で24時間乾燥を行い、乾燥剤の入った容器内で放冷した後、サンプルの質量を精密天秤にて測定した。次にこのサンプルを蒸留水中に浸漬し、20℃にて24時間完全に浸漬した後、サンプルを取り出し、表面の水分をふき取り、サンプルの質量を精密天秤にて測定した。これらの質量の値を用い、以下の式にて吸水率を算出した。
吸水率(%)=(浸漬後の質量−浸漬前の質量)×100/浸漬前の質量
(体積固有抵抗)
コア部を4cm×4cm×1.5cmで切り出した試料を使用した。前記吸水率と同様の方法で乾燥した試料を、蒸留水中に20℃にて24時間完全に浸漬した後、サンプルを取り出し、表面の水分をふき取った。当該試料をADVANTEST社製、TR8601を使用して測定した。測定開始から5分後の値を体積固有抵抗値とした。
【0048】
<評価結果>
実施例1〜10から分かるように、本発明のポリウレタン樹脂組成物からなる成型体は、低密度でありながら成形性、衝撃吸収性、電気絶縁性に優れ、かつ透水性が低いポリウレタン樹脂成型体であることが分かる。
【0049】
一方、比較例1〜3のようにイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(B1)を含有しない系では吸水率が高く体積固有抵抗が低い。比較例4のように水(C)を含有しない系では硬度が高く衝撃吸収性が劣る。比較例5のように水(C)が過剰な系では、収縮が起こり、物性を評価することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のポリウレタン樹脂組成物からなることを特徴とする成型体およびポリウレタン樹脂組成物からなる成型体で被覆された電気電子部品は、低密度でありながら成形性、衝撃吸収性、電気絶縁性に優れ、かつ透水性が低いという特性を有していることから、トランスコイル、チョークコイルおよびリアクトルコイルなどの変圧器や機器制御基板などの電気電子部品として好適に使用することができる。本発明のポリウレタン樹脂を使用した電気電子部品は、電気洗濯機、便座、湯沸し器、浄水器、風呂、食器洗浄機、太陽光パネル、電動工具、電車・自動車・バイクなど移動装置、に使用できる。
【要約】
【課題】
低密度でありながら成形性、衝撃吸収性、電気絶縁性に優れ、かつ透水性が低いポリウレタン樹脂成型体を提供することである。
【解決手段】
水酸基含有化合物(A)、イソシアネート化合物(B)、および水(C)を含有するポリウレタン樹脂組成物(X)であって、前記イソシアネート化合物(B)が、MDI(b1)と、ヒマシ油(b2)とを反応させて得られたイソシアネート基末端プレポリマー(B1)を含有し、前記水(C)の含有量が、ポリウレタン樹脂組成物(X)100質量部に対して、0.2質量部〜1.2質量部であるポリウレタン樹脂組成物に関するものである。
【選択図】なし