特許第5761882号(P5761882)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5761882
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】鋼球免震支承装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/02 20060101AFI20150723BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20150723BHJP
   F16F 15/04 20060101ALN20150723BHJP
【FI】
   F16F15/02 L
   E04H9/02 331D
   !F16F15/04 E
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-12882(P2015-12882)
(22)【出願日】2015年1月27日
【審査請求日】2015年1月27日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000253466
【氏名又は名称】萬谷 淳致
(72)【発明者】
【氏名】萬谷 淳致
【審査官】 村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−106311(JP,A)
【文献】 特開平09−292092(JP,A)
【文献】 実開平01−121743(JP,U)
【文献】 特開2000−055099(JP,A)
【文献】 特開平01−226953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/02
E04H 9/02
F16F 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下転動板(1)と、前記下転動板(1)の上面に対向した荷重負荷転動面(20)を下面側とする上転動円盤台(2)とを配設し、前記上転動円盤台(2)の外周縁から幅を確保して円筒状の球離脱防止壁板体(33)を立設し、前記上転動円盤台(2)の外周縁と前記球離脱防止壁板体(33)との間に球非支持空間天井板(35)を配設することで、前記球非支持空間天井板(35)の下面と前記下転動板(1)の上面との間に球無負荷停留兼移動空間(36)を形成するとともに、複数の鋼球(34)を前記下転動板(1)の上面と前記荷重負荷転動面(20)とに当接させ、球進路変更円柱(37)を、前記荷重負荷転動面(20)の外周縁の内側に沿わせて等間隔で複数配設し、更に前記球非支持空間天井板(35)に、閉止栓付の球投入孔を開孔してなることを特長とする、鋼球免震支承装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小は、壊れやすい美術品、及び物品台、機器、室内床面下等、大は、重構造物に用いられる免震支承装置に関し、詳細には、磁性、非磁性を問わず適宜な剛材料でなる剛球が用いられ、被免震物の荷重許容量が大きく、更に鋼球無負荷停留兼移動空間内の剛球が何時でも停滞なく移動でき、尚更に外部磁気を拒絶する機器等にも用いられる、鋼球免震支承装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術に、鋼球免震支承装置Gが知られている。鋼材料でなる取付板17の下面側中心点に合わせて、非磁性体でなる上転動円盤台2を配設し、上転動円盤台2の上面側と取付板17の下面側間に鋼材料でなる外側円環状継鉄30aと内側円環状継鉄30b及び継鉄30cを配設して磁石配置室31を形成させて永久磁石11bを挿入し、上転動円盤台2の外径全周囲間に鋼球無負荷停留兼移動空間22を形成させるよう鋼材料でなる鋼球離脱防止矩形状壁板体28を配設し、鋼球無負荷停留兼移動空間22内の天井となる取付板17下面に磁石挿入穴32を開穴して永久磁石11bを挿入し、上転動円盤台2を除くそれぞれが、一体的に固着され、荷重負荷転動面20と下転動板1間に、更に鋼球無負荷停留兼移動空間22内に鋼球1を配設して下転動板1上に載置してなる概略の構成である。
【0003】
取付板17、外側円環状継鉄30aと内側円環状継鉄30b及び継鉄30c、鋼球離脱防止矩形状壁板体28と鋼球1のそれぞれが磁性体の鋼材料で形成されることにより、永久磁石11bが非磁性体でなる上転動円盤台2を間に挟んで鋼球1を磁着することができる。
【0004】
鋼球1が磁着することにより、鋼球1は鋼球免震支承装置G外に過転流失することを防止され、該支承装置Gの取扱いが甚だ容易となる上に、多数球の鋼球1が1段の平面状に荷重負荷転動面20と鋼球無負荷停留兼移動空間22内間を移動して転動免震するため、平板状で座高が低い、変位許容量の大きな鋼球免震支承装置Gが得られる特長を有している。(特許文献1ご参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許5649259号。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、(1)用いる免震球の材質が磁性体の鋼材に限定されるため、鋼球1は錆に弱く、屋外や海水、真水を使用する個所での鋼球免震支承装置Gの利用には制約があり、ステンレス球等の非磁性体でなる免震球も用いられるが磁着されない難点を有している。(2)磁着力の低下防止の関点から非磁性体でなる上転動円盤台2の厚みは薄い程望ましく、重荷重被免震物を支持するには厚みの大きい上転動円盤台2用いる必要があり、ある程度以上の重荷重被免震物を支持するには制約がある難点を有している。(3)鋼球無負荷停留兼移動空間22内の天井となる取付板17下面下に磁石配置室31の高さと同高の比較的に広くて高い鋼球無負荷停留兼移動空間22が形成されるため、鋼球は、上転動円盤台2上から転入してくる後続の鋼球に押込められる形で、鋼球無負荷停留兼移動空間22内に六方充填的に停留しようとし、停留量が多いと荷重負荷転動面20内への鋼球の移動量が減少し転動鋼球が不足しやすく、停留分を追加しても、直線的な大変位量時の停滞は完全には解消されない難点を有している。(4)該支承装置Gの構成材料としての鋼材料が永久磁石11bの磁力線の外部への漏洩の過半を磁気シールドできるが、完全な磁気シールドは困難であり、外部磁気を拒絶する機器等に用いるには制約がある難点を有している。
【0007】
本発明は、上述の従来技術の特許文献1の鋼球免震支承装置Gの有する(1)から(4)の難点に鑑みなされたものであり、磁性、非磁性を問わず適宜な剛材料でなる剛球が用いられ、被免震物の荷重許容量が大きく、更に鋼球無負荷停留兼移動空間内を免震球が何時でも容易に停滞なく移動でき、尚更に外部磁気を拒絶する機器等にも用いられる、鋼球免震支承装置を安価に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的を達成するための第一の解決手段は、 鋼球免震支承装置において、下転動板の上面側に対向させて適宜な剛材料でなる、所定の直径の荷重負荷転動面を下面側とする同直径の、所定の厚さの上転動円盤台を配設する。
【0009】
上転動円盤台の全外周縁から所定の空間幅を確保して、上転動円盤台と同剛材料でなる、円筒状の球離脱防止壁板体を立設する。
【0010】
適宜数の鋼球を下転動板上に載置し、更に上転動円盤台の荷重負荷転動面を剛球上に当接させ、球離脱防止壁板体の下端高を、下転動板上面から所定の間隔を用いた高さとする。
【0011】
荷重負荷転動面線より上側となる上転動円盤台の厚みの、上方向への全外周縁の所定の高さ位置に、球非支持空間天井板の下面線を合わせて、所定の空間幅と同幅で、上転動円盤台と同剛材料の円環状の球非支持空間天井板を、球離脱防止壁板体の内壁面に当接するよう水平状に配設して、球非支持空間天井板下面と下転動板の上面間に球無負荷停留兼移動空間を形成させる。
【0012】
上転動円盤台の上面高に球非支持空間天井板と球離脱防止壁板体との上面高を揃え、球離脱防止壁板体の上端全外縁側に適宜な形状の取付板を配設する。
【0013】
荷重負荷転動面の全外周縁の内側縁に沿わせて、上転動円盤台と同剛材料でなる球進路変更円柱を適宜数、球進路変更円柱下端高を、球離脱防止壁板体の下端高と同高として均等間隔で配設する。
【0014】
更に球非支持空間天井板の適宜な位置に、上下面間を貫通させて適宜数の、閉止栓付の球投入孔を開孔し、球無負荷停留兼移動空間内に適宜数の鋼球を挿入する。
【0015】
上転動円盤台と球非支持空間天井板と球離脱防止壁板体と更に取付板と球進路変更円柱とを、それぞれ間を適宜に固着して一体化させてなる鋼球免震支承装置の構成である。
【0016】
上転動円盤台の適宜な剛材料としては、磁性、非磁性を問わず鋼材、鋳鉄、ステンレス材、アルミ材、合成樹脂材等々が用いられ、他に多数個の鋼球が被免震物荷重を支持して転動免震するに抵抗できる剛材料であれば何れの剛材料も用いることができる。
【0017】
荷重負荷転動面の所定の直径は、被免震物荷重を複数台の鋼球免震支承装置が分担支持して転動免震できる最低限以上の適宜数の鋼球が、1段の平面状に存在して転動免震可能な直径である。また、所定の厚さとは、負担する被免震物荷重を分担支持することが出来る厚さである。
【0018】
上転動円盤台の全外周縁と円筒状の球離脱防止壁板体間に確保する所定の空間幅は、球離脱防止壁板体の内壁面と上転動円盤台の全外周縁間を、用いる適宜数の鋼球が容易に往復や移動の動作が行える空間幅である。
【0019】
鋼球は上転動円盤台と同じ剛材料で用いることができ鋼球の直径は適宜に用いられるが、負担する被免震物の荷重量を基にして選定する。
【0020】
球離脱防止壁板体の下端高を、下転動板上面から所定の間隔を用いた高さとする、所定の間隔は、用いる鋼球が、平常時及び転動免震中に球離脱防止壁板体の外側に過転流失できない間隔である。
【0021】
荷重負荷転動面線より上側となる上転動円盤台の厚みの、上方向への全外周縁の所定の高さ位置とは、荷重負荷転動面下の下転動板上から球無負荷停留兼移動空間内に転動入して来た鋼球が、球無負荷停留兼移動空間内の下転動板上から六方充填的に停留できない適宜な高さであり、具体的には球無負荷停留兼移動空間内には鋼球が1段の平面状にしか存在できない高さである。更に、積み重さなることなく、多数の鋼球が1段の平面状に容易に移動することができる余裕の高さを有する高さである。
【0022】
なお、球非支持空間天井板の下面線を、球離脱防止壁板体の内壁面に当接するよう水平状に配設しての、水平状の範囲には、正水平と、球離脱防止壁板体又は上転動円盤台の全外周縁方向への、僅かな傾斜角も含まれており、球非支持空間天井板の下面線に適宜な僅かな傾斜角を用いることができる。
【0023】
上転動円盤台と球非支持空間天井板と球離脱防止壁板体と取付板と更に球進路変更円柱とを、それぞれ間を適宜に固着する手段としては、溶接や螺子着や、或いは鋳造や成形型等を用いて成形することができる。一体的に強固に固着できるなら何れの手段も用いることができる。
【0024】
本発明の目的を達成するための第二の解決手段は、球離脱防止壁板体の外壁面側に、所定の高さの適宜な球転流失防止機構を自在状に、下転動板上に載置して配設し、球離脱防止壁板体の上端高に、所定の上端高を用いる。
【0025】
上転動円盤台と球非支持空間天井板との上面側の適宜位置に適宜形状の複数の上転動円盤台と同剛材料でなる、被免震物荷重支持柱を、上端高を球離脱防止壁板体の上端高に揃えて配設する。
【0026】
球離脱防止壁板体の上端全外縁側に適宜な形状の所定の幅を備えた取付板を配設する。
【0027】
被免震物荷重支持柱の下端を上転動円盤台上面に、取付板の内端側を球離脱防止壁板体の上端外縁側に、それぞれ間を適宜に固着して一体化させてなる第一の解決手段の鋼球免震支承装置の構成である。
【0028】
球転流失防止機構の所定の高さは、地震動により鋼球免震支承装置が下転動板上より浮き上った状態時に、下転動板上に載置してある球転流失防止機構が、鋼球が球離脱防止壁板体の下端から、外側に過転流失することを防止することができる高さである。
【0029】
球離脱防止壁板体の高さの下端値に、用いる鋼球の直径値を最少限として加算した値を球転流失防止機構の高さとすることにより、鋼球免震支承装置が下転動板上より浮き上った状態時に、球転流失防止機構が最少限、鋼球球離脱防止壁板体外へ過転流失することを防止できる。
【0030】
球離脱防止壁板体の所定の上端高は、鋼球球離脱防止壁板体外へ過転流失し、転動免震が不能となり球離脱防止壁板体球進路変更円柱とが滑り支承化するとき、用いる鋼球の直径値を最少限として加算された球転流失防止機構が取付板下面と下転動板間に容易納まることができる高さである。
【0031】
取付板の所定の幅は、球離脱防止壁板体の外壁面側に備える球転流失防止機構の横幅が納まることができる幅である。
【0032】
球離脱防止壁板体が浮き上ったとき、球転流失防止機構は下転動板上にあって、鋼球が下端外に過転流失することを防止することができるなら、適宜な材料及び構成の球転流失防止機構を用いることが出来る。
【0033】
本発明の目的を達成するための第三の解決手段は、適宜な球転流失防止機構が、球離脱防止壁板体の外壁面の全円周縁を取り囲み、自在状に下転動板上に載置した、適宜な剛材料でなる適宜な厚みの円筒環状の板状材でなる、第二の解決手段の鋼球免震支承装置の構成である。
【発明の効果】
【0034】
第一から三の解決手段の鋼球免震支承装置は、比較的に小球径の多数の鋼球が荷重負荷転動面下を1段の平面状に転動免震する構成であるため座高の低いコンパクトな装置となり、軽量で取扱が容易で、設置作業が簡単に行える。
【0035】
多数の鋼球が荷重負荷転動面下を1段の平面状に転動免震する構成であるため、被免震物を多点支持し、下転動板は多点に分散した荷重を支持すため局点支持とはならず、剛強な専用の下転動板を必要とせず、通常の剛滑面でなる平坦なコンクリート床面、人造石床面等を下転動板として用いることができ、更に軽荷重被免震物を支持する場合では、構造用合板等でなる床面や、その他の平坦な木材床面を下転動板として利用することができる。
【0036】
被免震物の基礎盤の面積が、一盤の鋼球免震支承装置の取付板の面積内に納まる小型の被免震物であれば、一盤の鋼球免震支承装置のみを用いて転動免震することが可能な一盤完成型の鋼球免震支承装置であり、大面積の被免震物では、必要とする適宜な荷重支持個所に必要とする個数だけ一盤ずつ挿入して用いることができる、
【0037】
球非支持空間天井板下面線高を、球無負荷停留兼移動空間内に移動入する鋼球が、六方充填的に停留できない以下の適宜な高さとすることにより、球無負荷停留兼移動空間内を鋼球が積み重なることなく、多数の鋼球が停滞することなく1段の平面状に容易に移動することができ、剛球が荷重負荷転動面下にスムースに移動入するため、小中大の混合した変位量の地震動時はもとより、直線的な大変位量時においても鋼球は支障なく転動免震することができ、より大変位量を許容することがでる。
【0038】
球進路変更円柱は、滑り支承として機能すると共に球進路変更の機能も兼ね備えており、転動免震時において、多数の鋼球が下転動板の変位方向に従い揃って、直線的に球無負荷停留兼移動空間内に移動入するため停滞がおこりやすく、球進路変更円柱により、一部の鋼球は直進行を乱流させられることにより、進路が変更され、停滞を予防することができる。
【0039】
球離脱防止壁板体と下端高を同高とする球進路変更円柱を荷重負荷転動面下に適宜数を均等間隔で配設することにより、地震動により万一に鋼球球離脱防止壁板体外に過転流失して転動免震が不能となつた場合でも、球離脱防止壁板体球進路変更円柱との双方の下端側が下転動板1上面を滑り、滑り支承機能を発揮し、最低限の免震機能を保持することができる。
【0040】
球非支持空間天井板の適宜な位置に、上下面間を貫通させて適宜数の、閉止栓付の球投入孔を開孔することにより鋼球の磁着機能を備えない鋼球免震支承装置内の球無負荷停留兼移動空間内への鋼球の挿入を容易とすることができる。
【0041】
鋼球は剛球として、ステンレス球、合成樹脂球等を用いられることにより、屋外や海水、真水を使用する個所での利用が可能となり、該装置の利用範囲が広くなる経済性が得られる。
【0042】
球離脱防止壁板体の外壁面側に、適宜な球転流失防止機構を備えることにより、鋼球の磁着機能を備えない鋼球免震支承装置の鋼球を、球離脱防止壁板体の外側に過転流失することを防止することができ、永久磁石とステンレス材の上転動円盤台を必要とせず、更に磁石室を必要とせず、装置が小型化する経済性が得られる。
【0043】
永久磁石を用いないため、外部磁気の進入を拒絶する機器等に用いることができき、装置の利用範囲が広くなる経済的効果が得られる。
【0044】
上転動円盤台は、剛材料であれば用いる材質は制約なく用いられ、更に厚みも制約なく用いられるため、より重荷重の被免震物荷重を支持することができる、小型の鋼球免震支承装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1図1(a)は、鋼球免震支承装置Hの下面平面図。 (b)は、球非支持空間天井板35に球投入孔39を開孔し、閉止栓38で閉止した状態を示す図1(a)のA-A部の水平切断面図。 (c)は、球非支持空間天井板35に球投入孔39を開孔し、閉止栓38を抜き、鋼球34を投入する状態を示す図1(a)のA-A部の水平切断面図。
図2図2(a)は、鋼球免震支承装置Kの下面平面図。(b)は、図2(a)のB-B部の水平切断面図。
図3図3(a)は、鋼球免震支承装置Kの下面から鋼球を一時除去した状態時の下面平面図。(b)は、鋼球免震支承装置Kの上面平面図。
図4図4(a)は、鋼球免震支承装置Kの、適宜な球転流失防止機構40が、円筒環状の板状材40aでなる構成を示す図2のB-B部の水平切断面図。(b)は、図4(a)の鋼球免震支承装置Kが下転動板上より浮き上った状態時の、下転動板上に載置してある円筒環状の板状材40aの状態を示す図2のB-B部の水平切断面図。(c)は、図4(a)の鋼球免震支承装置K外に鋼球34が過転流失し、球離脱防止壁板体33と進路変更円柱37との双方の下端側が下転動板1上面を滑る、滑り支承化した状態を説明する図2のB-B部の水平切断面図。
図5図5(a)は、鋼球免震支承装置Kの、適宜な球転流失機構40が、円筒環状の圧縮コイルばね40bでなる構成を示す一部球離脱防止壁板体33を切欠いた図2のB-B部の水平切断面図。(b)は、図5(a)の鋼球免震支承装置Kが下転動板上より浮き上った状態時の、下転動板上に載置してある円筒環状の圧縮コイルばね40bの状態を示す一部球離脱防止壁板体33を切欠いた図2のB-B部の水平切断面図。(c)は、図5(a)の鋼球免震支承装置K外に鋼球34が過転流失し、球離脱防止壁板体33と進路変更兼円柱37との双方の下端側が下転動板1上面を滑る、滑り支承化した状態を説明する図2のB-B部の水平切断面図。図中の多数の小円群は鋼球34を示し、小円内の矢印は移動方向を示し、白抜き矢印は下転板 1の変位方向を示し、黒色小円は球進路変更円柱37を示し、X印入り中円は閉止栓38付の球 投入孔39を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、図1(a)から (c)を用いて本発明の第一実施形態の鋼球免震支承装置Hを説明する。
【0047】
下転動板1の上面側に対向させて適宜な剛材料でなる、所定の直径の荷重負荷転動面20を下面側とする同直径の、所定の厚さの上転動円盤台2を配設する。
【0048】
上転動円盤台2の全外周縁から所定の空間幅29を確保して、上転動円盤台2と同剛材料でなる、円筒状の球離脱防止壁板体33を立設する。球離脱防止壁板体33の厚さは、被免震物の荷重を考慮に入れて選定する。
【0049】
適宜数の鋼球34を下転動板1上に載置し、更に上転動円盤台2の荷重負荷転動面20を鋼球34上に当接させ、球離脱防止壁板体33の下端高を、下転動板1上面から所定の間隔を用いた高さとする。
【0050】
荷重負荷転動面20線より上側となる上転動円盤台2の厚みの、上方向への全外周縁の所定の高さ位置に、球非支持空間天井板35の下面線を合わせて、所定の空間幅29と同幅で、上転動円盤台2と同剛材料の円環状の球非支持空間天井板35を、球離脱防止壁板体33の内壁面に当接するよう水平状に配設して、球非支持空間天井板35下面と下転動板1の上面間に球無負荷停留兼移動空間36を形成させる。
【0051】
荷重負荷転動面20線より上側となる上転動円盤台2の厚みの、上方向への全外周縁の所定の高さ位置とは、荷重負荷転動面20下の下転動板1上から球無負荷停留兼移動空間36内に転動入して来た鋼球34が、球無負荷停留兼移動空間36内の下転動板1上から六方充填的に停留できない適宜な高さであり、具体的には球無負荷停留兼移動空間36内には鋼球34が1段の平面状にしか存在できない高さである。更に、積み重さなることなく、多数の鋼球34が1段の平面状に容易に移動することができる余裕の高さを有する高さである。
【0052】
なお、球非支持空間天井板35の下面線を、球離脱防止壁板体33の内壁面に当接させるよう水平状に配設しての、水平状の範囲には、正水平と、球離脱防止壁板体33又は上転動円盤台2の全外周縁方向への、僅かな傾斜角も含まれており、球非支持空間天井板35の下面線に適宜な僅かな傾斜角を用いることができる。
【0053】
上転動円盤台2の上面高に球非支持空間天井板35と球離脱防止壁板体33との上面高を揃え、球離脱防止壁板体33の上端全外縁側に適宜な形状の取付板17を配設する。なお、必要により、取付板17を球離脱防止壁板体33の上端全外縁側に配設することなく、又は重複して上転動円盤台2の上面又は球非支持空間天井板35の上面側に適宜な形状を用いて配設することができる。
【0054】
荷重負荷転動面20の全外周縁の内側縁に沿わせて、上転動円盤台2と同剛材料でなる球進路変更円柱37を適宜数、球進路変更円柱37下端高を、球離脱防止壁板体33の下端高と同高として均等間隔で配設する。球進路変更円柱37の直径は被免震物の荷重を考慮に入れて選定する。なお、球進路変更円柱37は、荷重負荷転動面20内の適宜な位置に更に配設して用いることができ、被免震物荷重をより安定して支持することができるため、必要により適宜に配設して用いる。
【0055】
球非支持空間天井板35の適宜な位置に、上下面間を貫通させて適宜数の、閉止栓38付の球投入孔39を開孔し、球無負荷停留兼移動空間36内に適宜数の鋼球34を挿入する。球投入孔39を開孔することにより、多数個の鋼球34を容易に挿入することができる。
【0056】
上転動円盤台2と球非支持空間天井板35と球離脱防止壁板体33と更に取付板17と球進路変更円柱37とを、それぞれ間を適宜に固着して一体化させてなる構成である。
【0057】
上転動円盤台2の適宜な剛材料としては、磁性、非磁性を問わず鋼材、鋳鉄、ステンレス材、アルミ材、合成樹脂材等々が用いられ、他に多数個の鋼球34が被免震物荷重を支持して転動免震するに抵抗できる剛材料であれば何れの剛材料も用いることができる。
【0058】
荷重負荷転動面20の所定の直径は、被免震物荷重を複数台の鋼球免震支承装置Hが分担支持して転動免震できる最低限以上の適宜数の鋼球34が、1段の平面状に存在して転動可能な直径である。また、所定の厚さとは、負担する被免震物荷重を分担支持することが出来る厚さである。
【0059】
上転動円盤台2の全外周縁と円筒状の球離脱防止壁板体33間に確保する所定の空間幅29は、球離脱防止壁板体33の内壁面と上転動円盤台2の全外周縁間を、用いる適宜数の鋼球34が容易に往復や移動の動作が行える空間幅である。
【0060】
鋼球34は上転動円盤台2と同じ剛材料が用いることができ鋼球34の直径は適宜に用いられるが、負担する被免震物の荷重量を基にして選定する。
【0061】
鋼球34の球径を小径として用い、球数を多く用いたり、球径を大径として用い、球数を少なくして用いたり、更に荷重負荷転動面20の面積を考慮し、負担する被免震物の荷重量を基にして選定する。
【0062】
球離脱防止壁板体33の下端高を、下転動板1上面から所定の間隔を用いた高さとする、所定の間隔は、用いる鋼球34が、平常時及び転動免震中に球離脱防止壁板体33の外側に過転流失できない間隔である。
【0063】
上転動円盤台2と球非支持空間天井板35と球離脱防止壁板体33と更に取付板17と球進路変更円柱37とを、それぞれ間を適宜に固着する手段としては、溶接や螺子着や、或いは鋳造や成形型等を用いて成形することができる。一体的に強固に固着できるなら何れの手段も用いることができる。
【0064】
以下、図2(a)から図4(c)を用いて本発明の第二実施形態の鋼球免震支承装置Kを説明す
る。なお、適宜な球転流失防止機構40が、円筒環状の板状材40aでなる場合を用いて説明する。
【0065】
球離脱防止壁板体33の外壁面側に、所定の高さの円筒環状の板状材40aを自在状に下転動板1上に載置して配設する。球離脱防止壁板体33の上端高を、所定の上端高を用いる。
【0066】
上転動円盤台2と球非支持空間天井板35との上面側の適宜位置に適宜形状の複数の上転動円盤台2と同剛材料でなる、被免震物荷重支持柱41を、上端高を球離脱防止壁板体33の上端高に揃えて配設する。
【0067】
球離脱防止壁板体33の上端全外縁側に適宜な形状の所定の幅を備えた取付板17を配設する。
【0068】
被免震物荷重支持柱41の下端を上転動円盤台2上面に、取付板17の内端側を球離脱防止壁板体33の上端外縁側に、それぞれ間を適宜に固着して一体化させてなる構成である。
【0069】
円筒環状の板状材40aの所定の高さは、地震動により鋼球免震支承装置Kが下転動板1上より浮き上った状態時に、下転動板1上に載置してある円筒環状の板材40aが、鋼球34が球離脱防止壁板体33の下端から、外側に過転流失することを防止することができる高さである。
【0070】
球離脱防止壁板体33の高さの下端値に、用いる鋼球34の直径値を加算した値以上の適宜な値を円筒環状の板状材40aの高さとすることにより、鋼球免震支承装置Kが下転動板1上より浮き上った状態時に、円筒環状の板状材40aが最少限、鋼球34が球離脱防止壁板体33外へ過転流失することを防止できる。
【0071】
球離脱防止壁板体33の所定の上端高は、鋼球34が球離脱防止壁板体33外へ過転流失し、転動免震が不能となり、球離脱防止壁板体33と球進路変更円柱37とが滑り支承化するとき、用いる鋼球34の直径値を加算した値以上の適宜な値の高さの円筒環状の板状材40aが、取付板17下面と下転動板1間に容易に納まることができる高さである。
【0072】
取付板17の所定の幅は、球離脱防止壁板体33の外壁面側に備える円筒環状の板状材40aの横幅が納まることができる幅である。
【0073】
円筒環状の板状材40aは、剛材でなる適宜な各種の金属板、合成樹脂板等が用いるに適する。板は1枚の適宜な厚さの厚板を用いたり、薄板を重ね巻きして用いることができる。
【0074】
円筒環状の板状材40aは、地震動時には、球離脱防止壁板体33の外周縁に押される状態で下転動板1上を自在状に移動するが、必要があれば、離脱防止壁板体33の外周縁側に、自在状となるよう螺子緩着することもできる。
【0075】
球転流失防止機構40は、円筒環状の板状材40aに限られず、球離脱防止壁板体33が浮き上ったとき、下転動板1上にあって、鋼球34が下端外に過転流失することを防止できるなら、適宜な形状、材質でなる球転流失防止機構40を用いることが出来る。
【0076】
以下、他の実施形態として、 適宜な球転流失防止機構40としての、円筒環状の圧縮コイルばね40bを用いた場合を、図5(a)から(c)を用いて説明する。
【0077】
円筒環状の圧縮コイルばね40bは、丸線、角線、薄板等に、鋼材、合成樹脂材、ステンレス材等の、圧縮コイルばねに加工できる材料を用いて形成させて用いる。
【0078】
球離脱防止壁板体33の外壁面側に、圧縮コイルばね40bを自在状に下転動板1に載置して配
設する。
【0079】
圧縮コイルばね材40bの圧縮力は、鋼球免震支承装置Kが下転動板上より浮き上った状態
時に、鋼球34が鋼球免震支承装置K外に過転流失しないよう伸長して防止できる圧縮力を備
えることができる、線の太さを必要とする。
【0080】
なお、圧縮コイルばね40bのコイルに、圧縮力を付加せず、コイルの高さを円筒環状の板状材4
0aと同様の高として同様に用いることが出来る。
【0081】
本発明は上記に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内であれば、他の構成を用いることが出来る。
【符号の説明】
【0082】
鋼球免震支承装置
鋼球免震支承装置
1 下転動板。
2 上転動円盤台。
20 荷重負荷転動面。
17 取付板。
29 空間幅。
33 球離脱防止壁板体
34 鋼球
35 球非支持空間天井板。
36 球無負荷停留兼移動空間。
37 球進路変更円柱
38 閉止栓。
39 球投入孔。
40 球転流失防止機構。
40a円筒環状の板状材。
40b円筒環状の圧縮コイルばね。
41 被免震物荷重支持柱。
【要約】

【課題】
総ての環境下で用いられ、被免震物荷重許容量が大きく、球無負荷停留兼移動空間内を鋼球が停滞することなく容易に移動できて地震動の直線的な大変位を許容することができ、外部磁気を拒絶する機器等に用いられる、座高の低い鋼球免震支承装置を安価に提供する。
【解決手段】
適宜な剛材料で上転動円盤台2を形成させ、球非支持空間天井板35下面下に、多数の鋼球34が下転動板1上から六方充填的に積み重さならない、1段の平面状に容易に移動できる高さの球無負荷停留兼移動空間36を設け、荷重負荷転動面20の全外周縁の内側縁に球進路変更円柱37を適宜数を均等間隔に設ける。また、球離脱防止壁板体33の外壁面側に、球転流失防止機構40を自在状に下転動板1上に載置して配設する。

【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5