特許第5761896号(P5761896)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 芝浦メカトロニクス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5761896-液滴塗布方法及び装置 図000002
  • 特許5761896-液滴塗布方法及び装置 図000003
  • 特許5761896-液滴塗布方法及び装置 図000004
  • 特許5761896-液滴塗布方法及び装置 図000005
  • 特許5761896-液滴塗布方法及び装置 図000006
  • 特許5761896-液滴塗布方法及び装置 図000007
  • 特許5761896-液滴塗布方法及び装置 図000008
  • 特許5761896-液滴塗布方法及び装置 図000009
  • 特許5761896-液滴塗布方法及び装置 図000010
  • 特許5761896-液滴塗布方法及び装置 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5761896
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】液滴塗布方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/26 20060101AFI20150723BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20150723BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20150723BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20150723BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
   B05D1/26 Z
   B05C5/00 101
   B05C11/00
   B05C11/10
   B05D3/00 D
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2009-34232(P2009-34232)
(22)【出願日】2009年2月17日
(65)【公開番号】特開2010-188263(P2010-188263A)
(43)【公開日】2010年9月2日
【審査請求日】2012年2月15日
【審判番号】不服2013-25095(P2013-25095/J1)
【審判請求日】2013年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平野 梓
(72)【発明者】
【氏名】林 正和
(72)【発明者】
【氏名】鶴岡 保次
(72)【発明者】
【氏名】重山 昭宏
(72)【発明者】
【氏名】飛内 昌之
【合議体】
【審判長】 千葉 成就
【審判官】 渡邊 豊英
【審判官】 熊倉 強
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−142654(JP,A)
【文献】 特開2008−102311(JP,A)
【文献】 特開2008−283130(JP,A)
【文献】 特開2007−58258(JP,A)
【文献】 特開2005−212181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/26,B05C 5/00,B05C 11/00,B05C 11/10,B05D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布ヘッドに設けた複数のノズルから塗布液を液滴として吐出させて基板に塗布する液滴塗布方法において、
各ノズルから吐出されて基板に着弾した各液滴の画像を取得する撮像工程と、
撮像工程で取得した各液滴の画像を外径形状が真円である正常パターンと比較し、マッチング率が閾値に達しない画像を異常画像とし、マッチング率が閾値に達した画像を正常画像として選択する画像処理工程と、
画像処理工程で正常画像として選択された画像に基づいて前記液滴の着弾面積を求め、当該着弾面積に基づいて当該液滴を吐出したノズルからの液滴の吐出量を制御する制御工程とを有することを特徴とする液滴塗布方法。
【請求項2】
前記画像処理工程で前記液滴の画像が異常画像と判定された場合、前記異常画像と判定された液滴を吐出した前記ノズルから前記塗布液を再吐出させ、当該ノズルから再吐出されて前記基板に着弾した液滴について前記撮像工程と前記画像処理工程を行ない、当該液滴の画像が正常画像か異常画像かを再度判定する再検査工程を有することを特徴とする請求項1に記載の液滴塗布方法。
【請求項3】
前記再検査工程を予め設定された回数繰り返して行なっても、当該液滴の画像が異常画像と判定されたときには、前記再検査工程を終了することを特徴とする請求項2に記載の液滴塗布方法。
【請求項4】
前記制御工程では、前記ノズルから塗布液を吐出させる圧電素子に印加する電圧を調整することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の液滴塗布方法。
【請求項5】
前記撮像工程で液滴が着弾される基板は、検査用基板とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の液滴塗布方法。
【請求項6】
塗布ヘッドに設けた複数のノズルから塗布液を液滴として吐出させて基板に塗布する液滴塗布装置において、
各ノズルから吐出されて基板に着弾した各液滴の画像を取得する撮像部と、
この撮像部で取得した各液滴の画像を外径形状が真円である正常パターンと比較し、マッチング率が閾値に達しない画像を異常画像とし、マッチング率が閾値に達した画像を正常画像として選択する画像処理部と、
各ノズルから吐出される液滴の吐出量の制御、及び前記撮像部並びに前記画像処理部の制御を行なう制御部と、を有し、
前記制御部は、前記画像処理部で正常画像として選択された画像に基づいて前記液滴の着弾面積を求め、当該着弾面積に基づいて当該液滴を吐出したノズルからの液滴の吐出量を制御することを特徴とする液滴塗布装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記画像処理部によって前記液滴の画像が異常画像と判定された場合、前記異常画像と判定された液滴を吐出した前記ノズルから前記塗布液を再吐出させ、当該ノズルから再吐出されて前記基板に着弾した液滴について、前記撮像部による前記液滴の画像の取得および前記画像処理部による前記液滴の画像が正常画像か異常画像かの判定を実行させることを特徴とする請求項6に記載の液滴塗布装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記再吐出を予め設定された回数繰り返して行なっても、前記画像処理部によって前記液滴の画像が異常画像と判定されたときには、その後の再吐出を行なわないようにすることを特徴とする請求項7に記載の液滴塗布装置。
【請求項9】
前記ノズルから前記塗布液を吐出させるための圧電素子を備え、
前記制御部は、前記圧電素子に印加する電圧を調整することで前記吐出量を調整することを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の液滴塗布装置。
【請求項10】
前記撮像部によって画像が取得される液滴が着弾される基板は、検査用基板であることを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の液滴塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液滴塗布方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インク等の液滴塗布装置として、特許文献1に記載の如く、基板に対して塗布液を液滴として吐出させて塗布する複数のノズルを備えた塗布ヘッドを有してなるものがある。塗布ヘッドは、各ノズルに対応する圧電素子を備え、各圧電素子に対する駆動電圧の印加に応じて各ノズルから塗布液を吐出する。このとき、配向膜やカラーフィルタ等の薄膜の形成に用いられる塗布ヘッドでは、均一な厚さの膜を形成するために、各ノズルからの塗布液の吐出量が均一に調整されていることが求められる。ところが、各ノズルの個体差、各圧電素子の個体差等により、各圧電素子に同一の駆動電圧を印加しても、各ノズルからの塗布液の吐出量は必ずしも同一にならない。
【0003】
そこで、従来技術では、各ノズルからの塗布液の吐出量を検出し、この検出結果に基づいて各圧電素子の印加電圧を調整することにより、各ノズルからの塗布液の吐出量が互いに同一になるように調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-136582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では、各ノズルからの塗布液の吐出量を、各ノズルから吐出されて検査用基板に着弾した液滴の着弾面積(投影面積)から測定している。
【0006】
しかしながら、各ノズルから吐出される液滴の着弾面積と吐出量は、液滴の着弾形状が真円パターンの如くの正常パターンであるときにだけ、比例関係にある。
【0007】
従って、各ノズルから吐出されて検査用基板に着弾した液滴の着弾形状が正常パターンであるか異常パターンであるかを判別せずに、その着弾面積から吐出量を測定している従来技術では、各ノズルの液滴吐出量を正確に求めることができない。
【0008】
本発明の課題は、各ノズルから吐出されて基板に着弾する液滴の着弾結果に基づいて、各ノズルの吐出量を正確に求めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、塗布ヘッドに設けた複数のノズルから塗布液を液滴として吐出させて基板に塗布する液滴塗布方法において、
各ノズルから吐出されて基板に着弾した各液滴の画像を取得する撮像工程と、
撮像工程で取得した各液滴の画像を外径形状が真円である正常パターンと比較し、マッチング率が閾値に達しない画像を異常画像とし、マッチング率が閾値に達した画像を正常画像として選択する画像処理工程と、
画像処理工程で正常画像として選択された画像に基づいて前記液滴の着弾面積を求め、当該着弾面積に基づいて当該液滴を吐出したノズルからの液滴の吐出量を制御する制御工程とを有するようにしたものである。
【0015】
また本発明は、塗布ヘッドに設けた複数のノズルから塗布液を液滴として吐出させて基板に塗布する液滴塗布装置において、
各ノズルから吐出されて基板に着弾した各液滴の画像を取得する撮像部と、
この撮像部で取得した各液滴の画像を外径形状が真円である正常パターンと比較し、マッチング率が閾値に達しない画像を異常画像とし、マッチング率が閾値に達した画像を正常画像として選択する画像処理部と、
各ノズルから吐出される液滴の吐出量の制御、及び前記撮像部並びに前記画像処理部の制御を行なう制御部と、を有し、
前記制御部は、前記画像処理部で正常画像として選択された画像に基づいて前記液滴の着弾面積を求め、当該着弾面積に基づいて当該液滴を吐出したノズルからの液滴の吐出量を制御するようにしたものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ノズルからの液滴の吐出量を精度良く調整することが可能となり、当該ノズルを用いて液滴を塗布した基板の品質の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は液滴塗布装置を示す模式図である。
図2図2は各ノズルの液滴吐出量の検査の一例を示す模式図である。
図3図3は液滴の正常パターンを示す模式図である。
図4図4は液滴の正常画像を示す模式図である。
図5図5は液滴のミスディレクションによる異常画像を示す模式図である。
図6図6は液滴の接触角不良による異常画像を示す模式図である。
図7図7は液滴のゴミ付着による異常画像を示す模式図である。
図8図8は液滴のサテライトによる異常画像を示す模式図である。
図9図9は液滴の無吐出による異常画像を示す模式図である。
図10図10は各ノズルの液滴吐出量の検査の他の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
液滴塗布装置1は、図1に示す如く、塗布対象物である基板K(検査用基板でも可)が水平状態(図1中、X軸方向とそれに直交するY軸方向に沿う状態)で載置される移動テーブル2と、その移動テーブル2を保持してY軸方向に移動させるY軸移動機構3と、そのY軸移動機構3を介して移動テーブル2をX軸方向に移動させるX軸移動機構4と、移動テーブル2上の基板Kに向けてインク等の塗布液を液滴Lとして吐出する複数の塗布ヘッド5と、基板K上の液滴Lを撮像してその画像を取得する撮像部6と、その撮像部6により撮像された液滴Lの画像を処理する画像処理部7と、撮像部6により撮像された液滴Lの画像を表示する表示部8と、それらのY軸移動機構3、X軸移動機構4、各塗布ヘッド5、撮像部6及び画像処理部7等を制御する制御部9を備えている。
【0024】
移動テーブル2は、Y軸移動機構3上に積層され、Y軸方向に移動可能に設けられている。この移動テーブル2はY軸移動機構3によりY軸方向に移動する。尚、移動テーブル2には、基板Kが自重により載置されるが、これに限るものではなく、例えば、その基板Kを保持するため、静電チャックや吸着チャック等の機構を設けるようにしても良い。このような移動テーブル2の端部には、各塗布ヘッド5の吐出を安定させるための吐出安定部2aが設けられている。この吐出安定部2aは、各塗布ヘッド5のダミー吐出用の受皿、及び各塗布ヘッド5の吐出面をワイプするワイプブレード等を有している。
【0025】
Y軸移動機構3は、移動テーブル2をY軸方向に案内して移動させる機構である。このY軸移動機構3は制御部9に電気的に接続されており、その駆動が制御部9により制御される。尚、Y軸移動機構3としては、例えば、リニアモータを駆動源とするリニアモータ移動機構やモータを駆動源とする送りネジ移動機構等を用いる。
【0026】
X軸移動機構4は、Y軸移動機構3をX軸方向に案内して移動させる機構である。このX軸移動機構4は制御部9に電気的に接続されており、その駆動が制御部9により制御される。尚、X軸移動機構4としては、例えば、リニアモータを駆動源とするリニアモータ移動機構やモータを駆動源とする送りネジ移動機構等を用いる。
【0027】
塗布ヘッド5は、インク等の塗布液を収容する液体タンク(図示せず)から供給される塗布液を複数のノズルN(例えば、N1〜N5)からそれぞれ液滴Lとして吐出するインクジェットヘッドである。この塗布ヘッド5は、液滴Lを吐出する複数のノズルNにそれぞれ対応する複数の圧電素子(図示せず)を内蔵している。各ノズルNは、所定のピッチ(間隔)で直線一列状に並べて吐出面に形成されている。例えば、ノズルNの数は数十個から数百個程度であり、ノズルNの直径は数μmから数十μm程度であり、更に、ノズルNのピッチは数十μmから数百μm程度である。
【0028】
この塗布ヘッド5は制御部9に電気的に接続されており、その駆動が制御部9により制御される。塗布ヘッド5は、各圧電素子に対する駆動電圧の印加に応じて各ノズルNから液滴(インク滴)Lを吐出する。ここで、塗布液は揮発性を有している。この塗布液は、基板K上に残留物として残留する溶質と、その溶質を溶解(分散)させる溶媒とにより構成されている。例えば、塗布液であるインクは、顔料、溶剤(インク溶剤)、分散剤及び添加剤等の各種の成分により構成されている。
【0029】
更に、塗布ヘッド5は、回転機構(図示せず)によりθ方向(図1中、XY平面に沿う回転方向)に回転可能に支持されている。この塗布ヘッド5は、回転機構により、相対移動する基板Kの相対移動方向に対して所定の傾斜角度だけ傾けられ、その状態で塗布を行なう。尚、Y軸方向に相対移動する基板Kに対して塗布を行なう場合には、塗布ヘッド5の傾斜角度を変更することによって、X軸方向の液滴Lの塗布ピッチを調整することができる。また、液滴Lの吐出周波数(吐出タイミング)を変更することによって、Y軸方向の塗布ピッチを調整することができる。
【0030】
撮像部6は、図9に示すように、基板K上に着弾した各液滴Lを撮像してその画像を取得する撮像カメラであり、各液滴Lの画像を検出する検出部として機能する。この撮像部6は画像処理部7及び制御部9に電気的に接続されており、その駆動は制御部9により制御され、撮像した各液滴Lの画像を画像処理部7に送信する。尚、撮像部6としては、例えばCCD(Charge Coupled Device)カメラ等を用いる。
【0031】
画像処理部7は、撮像部6から送信された各液滴Lの画像の濃淡値を2値化し、その着弾形状を認識する。画像処理部7としては、例えばコンピュータ等を用いる。
【0032】
表示部8は、撮像した各液滴Lの画像等の各種画像を表示する表示装置である。この表示部8は電気的に画像処理部7に接続されている。尚、表示部8としては、例えば、液晶ディスプレイやCRTディスプレイ等を用いる。
【0033】
制御部9は、各部を集中的に制御するマイクロコンピュータと、塗布に関する塗布情報や各種のプログラム等を記憶する記憶部と(いずれも図示せず)を備えている。塗布情報は、ドットパターン等の所定の塗布パターン、塗布ヘッド5の傾斜角度、塗布ヘッド5の吐出周波数及び基板Kの移動速度に関する情報等を含んでいる。この塗布情報としては、製造塗布用の塗布情報及び検査塗布用の塗布情報(検査用のパターン及び溶媒雰囲気形成用のパターンを含む)が記憶部に格納されている。
【0034】
しかるに、液滴塗布装置1の制御部9は、本発明の制御装置として機能し、各ノズルNや圧電素子の個体差に起因する各ノズルNからの塗布液の吐出量を正しく検査し、各ノズルNからの塗布液の吐出量を正しく調整し、各ノズルNからの塗布液の吐出量を互いに均一にするように制御するため、以下の如くに動作する。
【0035】
(1)撮像工程
図2に示す如く、塗布ヘッド5の各ノズルN1〜N5から吐出されて基板Kに着弾した各液滴L(L1〜L5)の画像(基板K面に直交する方向である真上からの画像)を撮像部6により取得する。本実施例では、基板Kに唯一列の液滴L1〜L5を着弾させる。
【0036】
(2)画像処理工程
画像処理部7において、上述(1)の撮像工程で撮像部6により取得された各液滴Lの画像を2値化し、その着弾形状を認識する。画像処理部7は、各液滴Lの2値化した画像(着弾形状)を、正常パターン(外形形状が真円であるパターン)と比較し、各液滴Lの2値化画像の中から正常パターンと一致する外形形状を有する画像を判別し、選択する。即ち、画像処理装置7には、正常パターンとのマッチング率に対する閾値が予め設定されている。そして、正常パターンとの比較の結果、マッチング率が閾値に達しない画像を異常画像と判定し、マッチング率が閾値以上となった画像を正常画像と判定し、正常画像を選択する。尚、ここでは、外形形状の判定のみ行なえば良く、大きさを判定する必要はない。
【0037】
各ノズルNから吐出される各液滴Lの画像の正常パターンは、各ノズルNの例えば出口に異物の付着等がない正常な吐出動作により得られるはずの液滴Lの2値化画像であり、通常2値化画像の外縁が真円をなす図3に示す如くの真円パターンである。ここで、真円とは、液滴の画像の重心を中心とする全ての方向における半径a〜hが同一距離rをなす完全な真円のみを指すのではなく、これらの値が予め定めた許容範囲内に含まれる円形を含むものとする。例えば、液滴の画像の重心を中心として等角度間隔(45°間隔等)で放射状に伸ばした直線(8つの直線)が液滴の画像の外縁と交差する位置までの距離ax〜hxをそれぞれ求め、求めたそれぞれの値(8つの値)について最大値と最小値との差が許容範囲内であれば真円であるとする。許容範囲は、例えば、8つの値の平均値の10%以内とする。
【0038】
従って、各距離ax〜hxの最大値と最小値との差が上述の許容範囲内にある、図4に示す液滴Lの画像は、真円パターンとのマッチング率が閾値以上の正常画像と判定する。
【0039】
他方、図5に示すミスディレクションに起因する液滴Lの画像、図6に示す基板の表面の接触角の局部的異常に起因する液滴Lの画像、図7に示すゴミ付着に起因する液滴Lの画像は、それぞれ、各距離ax〜hxの最大値と最小値との差が上述の許容範囲を超え、真円パターンとのマッチング率が閾値に達しない異常画像と判定する。
【0040】
また、図8に示す如くに大粒の液滴の周辺に小粒の液滴が散らばるサテライト状の液滴L、又は図9に示す如くに無画像となる液満L、つまり、不吐出の画像も、異常画像と判定する。即ち、図8のサテライト状の液滴Lの場合、撮像画像中に液滴画像の候補となる画像が複数存在するので、正常パターンとのマッチング率を比較する液滴Lの画像が特定できず、異常画像と判定する。図9の不吐出の画像の場合は、撮像画像中に液滴画像を認識することができず、異常画像と判定する。
【0041】
(3)制御工程
制御部9は、画像処理部7が上述(2)の画像処理工程で正常画像と判定した液滴Lを吐出したノズルN(例えばN1〜N4)について、当該ノズルNから吐出された液滴Lの当該正常画像に基づく着弾面積(投影面積)を求め、当該着弾面積に基づく当該液滴Lの吐出量を求め、当該ノズルNの液滴吐出量を制御する。着弾面積は、画像処理部7による2値化画像中において液滴Lの画像に対応する画素数に画素の単位面積を乗ずることによって算出される。液滴Lの吐出量は、液滴Lの着弾面積と吐出量との関係式から算出される。例えば、液滴Lの着弾面積と吐出量とは比例関係にある。その関係式は制御部9が備える記憶部に、予め実験等によって求められて格納されている。
【0042】
制御部9は、各ノズルNから吐出される液滴Lの着弾面積、ひいては吐出量が同一、換言すれば所定の目標範囲内に入るように制御する。制御部9は、各ノズルNの吐出量が所定の目標範囲内にあるか判断する。制御部9は、吐出量が目標範囲内にないノズルNについては、当該ノズルNの圧電素子に印加すべき電圧を以下の如くに調整し、当該ノズルNの吐出量を目標範囲内に納めるように制御する。
【0043】
即ち、制御部9には、塗布ヘッド5の各ノズルN1〜N5の圧電素子に印加する電圧と、当該電圧で各ノズルN1〜N5から基板Kに吐出された液滴Lの実際の着弾面積とに基づいて、各ノズルN1〜N5が単位の着弾面積を実現するに必要な電圧を表す各ノズルN1〜N5の電圧係数が予め求められ、記憶されている。そして、各ノズルNから吐出される液滴Lの吐出量を上述の所定の目標範囲に納めようとするときに、その目標吐出量に対応することとなる狙いの着弾面積が作業者によって入力されて設定されるので、制御部9は各ノズルNの狙いの着弾面積と実際の着弾面積の差の値に、各ノズルNの電圧係数を乗じて各ノズルNの圧電素子に印加すべき電圧を調整する。この例においては、制御部9は、正常画像と判定された液滴Lを吐出したノズルN1〜N4の圧電素子を印加電圧の調整対象とする。
【0044】
(4)再検査工程
制御部9は、画像処理部7が前述(2)の画像処理工程で異常画像と判定した液滴Lを吐出したノズルN(例えばN5)については、当該ノズルNから液滴Lを再吐出し、当該ノズルNから再吐出された液滴Lについての前述(1)の撮像工程、(2)の画像処理工程を行ない、当該ノズルNから吐出された液滴Lの画像の判別を再度実行する。この再度の判別においても、前述(2)の画像処理工程で異常画像と判別された場合には、この再検査工程を繰り返し行なう。
【0045】
この再検査工程において、正常画像が得られたならば、当該液滴Lの画像に基づいて前述(3)の制御工程を実行する。
【0046】
制御部9は、上述の再検査工程を一定回数(予め設定された繰り返し回数)繰り返しても、当該ノズルNから再吐出された液滴Lについて前述(2)の正常画像が得られないとき、再検査工程を終了する。塗布ヘッド5の当該ノズルN5を不良ノズルと判定する。ノズルN5を不良ノズルと判定した場合、制御部9は、その旨を作業者に報知して、当該ノズルN5を備える塗布ヘッド5の交換や修理などのメンテナンスを促す。例えば、表示部8に該当する塗布ヘッド5の識別番号等とノズル番号等を表示させる。
【0047】
図10は、塗布ヘッド5の各ノズルNの液滴吐出量について前述(1)〜(4)の工程を行なうに際し、塗布ヘッド5の各ノズルN1〜N5を2回続けて駆動し、基板Kに第1列の液滴L11〜L15と第2列のL21〜L25の2列の液滴Lを着弾させたものである。それら全2列の液滴L(L11〜L15、L21〜L25)について、前述(1)の撮像工程、(2)の画像処理工程を行なう。前述(2)の画像処理の結果、各ノズルNに対応する2列の液滴L(例えばL11とL21)がともに正常画像であれば、前述(3)の制御工程で、それら2列の液滴Lの着弾面積の平均値を求め、当該ノズルNのこの平均着弾面積に基づく吐出量を当該ノズルNの吐出量とし、この吐出量を目標範囲内に納めるように制御する。前述(2)の画像処理の結果、各ノズルNに対応する2列の液滴L(例えばL11とL21)のうち、一方、例えば、第1列の液滴L11の画像が正常画像、他方が異常画像であれば、前述(3)の制御工程で、正常画像を呈した液滴L(液滴L11)の着弾面積を求め、当該ノズルNのこの着弾面積に基づく吐出量を当該ノズルNの吐出量とし、この吐出量を目標範囲内に納めるように制御する。前述(2)の画像処理の結果、各ノズルNに対応する2列の液滴L(例えばL11とL21)がともに異常画像であれば、当該ノズルNから2列の液滴L(例えばL11とL21)を再吐出して前述(4)の再検査工程を行なう。各ノズルNについて3回以上液滴を吐出させて3列以上の液滴列としても良い。
【0048】
尚、前述(3)の制御工程において、予め求めて記憶させた電圧係数を用いたが、この電圧係数を求める際にも、本発明を適用すると良い。
【0049】
即ち、電圧係数を求めるには、ノズルNの圧電素子に大きさの異なる2種の電圧を印加し、それぞれの印加電圧によってノズルNから液滴を基板K上に滴下させる。そして、基板K上に滴下された各液滴の着弾面積に基づいて各印加電圧によるノズルNからの吐出量を求める。これによって、得られた吐出量とその吐出量が得られた印加電圧とから比例計算によって電圧係数を求めている。
【0050】
この電圧係数を求める手順において、基板K上に滴下された液滴の着弾面積を求める前段階で、前述(2)の画像処理工程を行ない、基板K上に滴下された液滴Lの画像が正常パターンと一致するか否かを判別する。そして、正常パターンと一致する正常画像が得られた液滴Lの画像を用いて着弾面積を求めるようにする。従って、正常画像が得られるまで、同じ大きさの印加電圧でノズルNからの液滴Lの吐出と液滴Lの画像の判定を繰り返し行なうこととなる。このような電圧係数を求める工程を、前述(3)の制御工程の予備工程として前述(1)の撮像工程の前段階で、制御部9による制御のもとにおいて行なうようにしても良い。
【0051】
本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)各ノズルNの液滴吐出量の検査に際し、基板に着弾した各液滴の画像が正常パターン(基準パターン)と一致する正常画像であるか否かを判別し、正常画像を呈した液滴Lを吐出したノズルNについてのみ、そのノズルNから吐出された液滴の着弾面積を求めるようにした。正常画像を呈する液滴Lは、その着弾形状を正常パターンとするものである。従って、この液滴Lの着弾面積は当該液滴Lを吐出したノズルNの吐出量と正しく比例関係をなすものになる。即ち、撮像画像が真円状の液滴Lは自身の表面張力によって半球状となるので、半球状の液滴を想定して定めた液滴Lの着弾面積と当該液滴Lの体積との関係式に精度良く合致することとなる。よって、当該液滴Lの着弾面積に基づく当該ノズルNの液滴吐出量(実際の吐出量)の算出を正確に行なうことができる。
【0052】
(b)上述のようにして、正確に求めた液滴吐出量に基づいて各ノズルNから吐出される液滴Lの着弾面積を互いに同一にするようにノズルからの液滴吐出量を制御することにより、各ノズルNの液滴吐出量を精度良く均一に調整することができ、それらの液滴Lにより均一な厚さの膜を形成できる。よって、生産用の基板上に形成される配向膜等の機能性薄膜の品質を安定した良質のものとすることができる。
【0053】
(c)各ノズルNの圧電素子に印加する電圧と、当該電圧で各ノズルNから吐出された液滴Lの実際の着弾面積とに基づいて、各ノズルNが単位の着弾面積を実現するに必要な電圧を表わす各ノズルNの電圧係数を求めるにあたっても、基板K上に滴下された液滴Lの画像が正常パターンと一致する正常画像であるか否かの判別を行なう。そして、正常画像を呈したときのみ液滴Lの着弾面積を求めることとした。そのため、この着弾面積から算出された吐出量は、適正な着弾形状の液滴から求められた誤差の小さな正確なものとなる。従って、このような電圧係数を用いた吐出量の調整は正確なものとなり、各ノズルNからの吐出量を当該ノズルNの狙いの着弾面積が実現するように容易かつ正確に制御することができる。
【0054】
(d)各ノズルNの液滴吐出量の当初の検査において、異常画像を呈した液滴Lを吐出したノズルNについては、当該ノズルNの液滴吐出量を再検査することにより、前述(a)と同様にして当該ノズルNの液滴吐出量を正確に求めることができる。
【0055】
(e)上述(d)において、異常画像を呈した液滴Lを吐出したノズルNについての再検査を一定回数だけ行なっても、当該ノズルNから再吐出された液滴Lについて正常画像が得られないとき、再検査を終了することにより、検査の無駄を回避するとともに、塗布ヘッドの異常を早期に検知し、異常への対応を迅速に行なうことができ、ひいては生産性を向上できる。
【0056】
(f)各ノズルNから吐出される各液滴Lの画像の正常パターンを、真円パターンとする。これにより、真円パターンとのマッチング率が閾値以上となった画像を呈する液滴Lについて得られた着弾面積は、当該ノズルNの吐出量と正しく比例関係をなすものになり、当該着弾面積に基づいて当該ノズルNの液滴吐出量を正確に求めることができる。
【0057】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、液滴Lの画像が正常パターンであるか否かの判定を、真円パターンとのマッチング率、即ち、液滴の画像の重心を中心として等角度間隔で放射状に伸ばした8つの直線が液滴の画像の外縁と交差する位置までの距離ax〜hxの最大値と最小値との差が許容範囲内であるか否かによって行っていたが、これに限られるものではなく、他の手段によるものであっても良い。例えば、公知のエッジ抽出法を用いて液滴Lの画像の輪郭形状を求め、求めた輪郭形状と真円パターンとのマッチング率によって判定するようにしても良い。真円パターンとしては、求めた輪郭画像上に任意に定めた3点を通る円を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、各ノズルから吐出されて基板に着弾する液滴の着弾結果に基づいて、各ノズルの吐出量を正確に求めることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 液滴塗布装置
5 塗布ヘッド
6 撮像部
7 画像処理部
9 制御部
L、L1〜L5 液滴
N、N1〜N5 ノズル
K 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10