(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記2端子サイリスタがオン状態となると、当該2端子サイリスタの両端のうち前記発光ダイオードのアノード側の電圧が、当該2端子サイリスタの両端のうち当該発光ダイオードのカソード側の電圧と比べて、前記第1電圧より低い第2電圧だけ高くなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のLED点灯装置。
【背景技術】
【0002】
従来より、直列に接続された複数の発光ダイオードを点灯させるLED点灯装置が提案されている。LED点灯装置は、直列に接続された複数の発光ダイオードに順に電流を流すことで、これら複数の発光ダイオードを点灯させる。
【0003】
ところが、これら複数の発光ダイオードのうち少なくとも1つにオープン故障が発生すると、オープン故障が発生した発光ダイオードだけでなく、他の発光ダイオードにも電流が流れなくなってしまい、これら複数の発光ダイオードの全てを点灯させることができなくなってしまう。そこで、複数の発光ダイオードのうち少なくとも1つにオープン故障が発生しても、他の発光ダイオードを点灯させることのできるLED点灯装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
[LED点灯装置100の構成]
図7は、従来例に係るLED点灯装置100の回路図である。LED点灯装置100は、定電流電源Iccと、キャパシタCと、発光ダイオードLED1〜LEDn(nは、n≧3を満たす任意の整数)と、バイパス部A1〜Anと、を備える。
【0005】
発光ダイオードLED1〜LEDnは、直列に接続される。発光ダイオードLED1のアノードには、定電流電源Iccの一端と、キャパシタCの一方の電極と、が接続される。発光ダイオードLEDnのカソードには、定電流電源Iccの他端と、キャパシタCの他方の電極と、が接続される。
【0006】
バイパス部A1〜Anは、それぞれ、発光ダイオードLED1〜LEDnと対に設けられる。このバイパス部A1〜Anのそれぞれは、ツェナーダイオードZDaと、PNP型トランジスタで構成されるスイッチ素子Q1と、NPN型トランジスタで構成されるスイッチ素子Q2と、抵抗Ra、Rb、Rcと、を備える。
【0007】
ここで、例えば、バイパス部Ap(pは、1≦p≦nを満たす任意の整数)の構成について、以下に説明する。ツェナーダイオードZDaのカソードには、発光ダイオードLEDpのアノードが接続され、ツェナーダイオードZDaのアノードには、抵抗Raを介してスイッチ素子Q2のベースが接続される。スイッチ素子Q1のエミッタには、発光ダイオードLEDpのアノードが接続されるとともに、抵抗Rcを介してスイッチ素子Q1のベースおよびスイッチ素子Q2のコレクタが接続される。スイッチ素子Q2のベースには、スイッチ素子Q1のコレクタが接続されるとともに、抵抗Rbを介して発光ダイオードLEDpのカソードが接続される。スイッチ素子Q2のエミッタには、発光ダイオードLEDpのカソードが接続される。
【0008】
図8は、
図7に示したLED点灯装置100の等価回路図である。
図7に示したバイパス部A1〜Anのそれぞれは、
図8のように表すことができる。
【0009】
図8では、バイパス部A1〜Anのそれぞれは、ツェナーダイオードZDaと、サイリスタTHYと、を備える。
【0010】
ここで、例えば、バイパス部Apの構成について、以下に説明する。ツェナーダイオードZDaのカソードには、発光ダイオードLEDpのアノードが接続され、ツェナーダイオードZDaのアノードには、サイリスタTHYのゲートが接続される。サイリスタTHYのアノードには、発光ダイオードLEDpのアノードが接続され、サイリスタTHYのカソードには、発光ダイオードLEDpのカソードが接続される。
【0011】
なお、ツェナーダイオードZDaのツェナー電圧は、発光ダイオードLED1〜LEDnのそれぞれの立上がり電圧より高いものとする。
【0012】
[LED点灯装置100の動作]
以上の構成を備えるLED点灯装置100では、定電流電源Iccの一端から出力された電流がキャパシタCで平滑化された後、発光ダイオードLED1のアノードと、バイパス部A1に設けられたツェナーダイオードZDaのカソードと、バイパス部A1に設けられたサイリスタTHYのアノードと、に供給される。
【0013】
発光ダイオードLED1〜LEDnの全てに故障が発生していない場合には、発光ダイオードLED1〜LEDnのそれぞれに電流が流れ、発光ダイオードLED1〜LEDnのそれぞれが点灯する。ここで、点灯している発光ダイオードLEDpの両端の電位差は、発光ダイオードLEDpの立上がり電圧に略等しいため、発光ダイオードLEDpと対に設けられたツェナーダイオードZDaのカソードには、発光ダイオードLEDpの立上がり電圧が印加される。そして、ツェナーダイオードZDaのツェナー電圧は、上述のように発光ダイオードLED1〜LEDnのそれぞれの立上がり電圧より高いため、全てのツェナーダイオードZDaはオフ状態となる。
【0014】
一方、発光ダイオードLED1〜LEDnのうち1つの発光ダイオードLEDx(xは、1≦x≦nを満たす任意の整数)にオープン故障が発生した場合には、発光ダイオードLEDxに電流が流れなくなる。このため、発光ダイオードLED1〜LEDnのうち発光ダイオードLEDxを除くものにも電流が流れなくなり、発光ダイオードLED1〜LEDnの全てが消灯する。すると、定電流電源Iccの一端の電圧が上昇し、これに伴って、発光ダイオードLEDxの両端の電位差が、時間が経過するに従って上昇する。そして、発光ダイオードLEDxの両端の電位差が、ツェナーダイオードZDaのツェナー電圧を超えると、発光ダイオードLEDxと対に設けられたツェナーダイオードZDaに電流が流れ始め、発光ダイオードLEDxと対に設けられたサイリスタTHYがオン状態となる。これによれば、発光ダイオードLEDxのアノードに供給された電流は、発光ダイオードLEDxを流れることなく、バイパス部Axでバイパスされて、発光ダイオードLEDxのカソードに供給される。したがって、発光ダイオードLEDxにオープン故障が発生して、発光ダイオードLEDxに電流が流れない場合であっても、発光ダイオードLEDxのアノードに供給された電流がバイパス部Axにより発光ダイオードLEDxの後段にバイパスされる。よって、発光ダイオードLED1〜LEDnのうち発光ダイオードLEDxを除くものには電流が流れ、発光ダイオードLED1〜LEDnのうち発光ダイオードLEDxを除くものは、点灯する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
発光ダイオードLED1〜LEDnのうちオープン故障の発生したものの数が増加するに従って、発光ダイオードLED1〜LEDnのうちオープン故障の発生した発光ダイオードを除くもの(以降では、「発光ダイオードLED1〜LEDnのうち正常動作するもの」と呼ぶ)を点灯させる際における、定電流電源Iccの一端の電圧が高くなる。
【0017】
具体的には、例えば、
図7、8に示したLED点灯装置100において、発光ダイオードLED1〜LEDnのうち、m個(mは、2≦m≦nを満たす任意の整数)の発光ダイオードにオープン故障が発生したものとし、ツェナーダイオードZDaのツェナー電圧をVzと表すものとする。この場合、定電流電源Iccの一端の電圧が、オープン故障の発生した発光ダイオードの数mとツェナー電圧Vzとの積(m×Vz)以上になると、オープン故障の発生したm個の発光ダイオードと対に設けられたm個のツェナーダイオードZDaに電流が流れ始め、これらm個のツェナーダイオードZDaと対に設けられたサイリスタTHYがオン状態となる。そして、キャパシタCから出力される電流が、発光ダイオードLED1〜LEDnのうち正常動作するものと、上述のオン状態となったm個のサイリスタTHYと、に流れ、発光ダイオードLED1〜LEDnのうち正常動作するものが点灯することとなる。
【0018】
以上より、オープン故障の発生した発光ダイオードの数が増加するに従って、発光ダイオードLED1〜LEDnのうち正常動作するものを点灯させる際における、定電流電源Iccの一端の電圧が高くなる。ここで、キャパシタCは、定電流電源Iccと並列接続されているため、オープン故障の発生した発光ダイオードの数が増加するに従って、発光ダイオードLED1〜LEDnのうち正常動作するものを点灯させる際における、キャパシタCの端子間電圧が高くなる。
【0019】
ここで、キャパシタCから出力される電流は、キャパシタCの端子間電圧が高くなるに従って、増加する。このため、オープン故障の発生した発光ダイオードの数が増加するに従って、キャパシタCから出力される電流が増加し、その結果、発光ダイオードLED1〜LEDnのうち正常動作するものに流れる電流が増加する。
【0020】
また、発光ダイオードには、自身に流れる電流が増加するに従って、自身に電流が流れることによって降下する電圧が急激に高くなるという特性がある。このため、オープン故障の発生した発光ダイオードの数が増加するに従って、正常動作する発光ダイオードのそれぞれの両端の電位差が大きくなる。そして、正常動作する発光ダイオードのそれぞれの両端の電位差がツェナー電圧Vz以上になると、正常動作する発光ダイオードと対に設けられたサイリスタTHYもオン状態となる。これによれば、キャパシタCから出力される電流は、バイパス部A1〜Anのそれぞれに設けられたサイリスタTHYの全てに流れ、発光ダイオードLED1〜LEDnには流れなくなってしまうため、発光ダイオードLED1〜LEDnのうち、オープン故障の発生したものだけでなく、正常動作するものも、点灯することができなくなってしまう。
【0021】
以上のように、
図7、8に示したような従来のLED点灯装置の中には、オープン故障の発生した発光ダイオードの数が少なければ、他の発光ダイオードを点灯させることができるものがあった。ところが、従来のLED点灯装置では、オープン故障の発生した発光ダイオードの数が増加すると、オープン故障の発生した発光ダイオードだけでなく、全ての発光ダイオードを点灯させることができなくなっていた。
【0022】
上述の課題を鑑み、本発明は、直列に接続された複数の発光ダイオードのうちオープン故障の発生したものの数が増加しても、オープン故障の発生した発光ダイオードを除くものを点灯させることができるLED点灯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、上述の課題を解決するために、以下の事項を提案している。
(1)本発明は、直列に接続された複数の発光ダイオードを点灯させるLED点灯装置であって、前記複数の発光ダイオードに電流を供給する電流源と、前記電流源と並列に接続されたキャパシタと、前記複数の発光ダイオードと対に設けられた複数の導通素子と、前記複数の発光ダイオードと直列に接続され、自身に流れる電流を抑制する過電流抑制手段と、を備え、前記複数の導通素子は、それぞれ、前記複数の発光ダイオードのうち対応するものと並列に接続され、前記導通素子は、当該導通素子の両端のうち前記発光ダイオードのアノード側の電圧が、当該導通素子の両端のうち当該発光ダイオードのカソード側の電圧と比べて、当該発光ダイオードの立上がり電圧より高い第1電圧以上高くなると、オン状態となることを特徴とするLED点灯装置を提案している。
【0024】
この発明によれば、直列に接続された複数の発光ダイオードを点灯させるLED点灯装置に、複数の発光ダイオードに電流を供給する電流源と、電流源と並列に接続されたキャパシタと、複数の発光ダイオードと対に設けられた複数の導通素子と、複数の発光ダイオードと直列に接続されて自身に流れる電流を抑制する過電流抑制手段と、を設け、複数の導通素子を、それぞれ、複数の発光ダイオードのうち対応するものと並列に接続した。そして、導通素子は、両端のうち発光ダイオードのアノード側の電圧が、両端のうち発光ダイオードのカソード側の電圧と比べて、発光ダイオードの立上がり電圧より高い第1電圧以上高くなると、オン状態となるものとした。
【0025】
このため、直列に接続された複数の発光ダイオードのうち少なくとも1つにオープン故障が発生すると、オープン故障の発生した発光ダイオードと並列に接続された導通素子において、両端のうち発光ダイオードのアノード側の電圧が上昇する。そして、導通素子の両端のうち発光ダイオードのアノード側の電圧が、導通素子の両端のうち発光ダイオードのカソード側の電圧と比べて、発光ダイオードの立上がり電圧より高い第1電圧以上になると、導通素子がオン状態となる。このため、スイッチ素子をオン状態にすることで、オン状態となった導通素子に電流が流れる。
【0026】
以上によれば、スイッチ素子をオン状態にすることで、オープン故障の発生した発光ダイオードに供給される電流は、オープン故障の発生した発光ダイオードと並列に接続された導通素子により、オープン故障の発生した発光ダイオードの後段にバイパスされる。このため、スイッチ素子をオン状態にすることで、直列に接続された複数の発光ダイオードのうちオープン故障の発生した発光ダイオードを除くものには電流が流れるので、これら複数の発光ダイオードのうちオープン故障の発生した発光ダイオードを除くものを点灯させることができる。
【0027】
また、過電流抑制手段により、自身に流れる電流を抑制することで、複数の発光ダイオードのうちオープン故障の発生した発光ダイオードを除くものに流れる電流を抑制できる。このため、複数の発光ダイオードのうちオープン故障の発生した発光ダイオードを除くものに流れる電流を減少させることで、これら発光ダイオードと並列に接続された導通素子が誤ってオン状態となってしまうのを防止できる。これによれば、直列に接続された複数の発光ダイオードのうちオープン故障の発生したものの数が増加しても、オープン故障の発生した発光ダイオードを除くものを点灯させることができる。
【0028】
また、上述のように、複数の発光ダイオードのうちオープン故障の発生した発光ダイオードを除くものに流れる電流を減少させることができるため、過電流が流れることによる発光ダイオードの故障を防止できる。
【0029】
(2)本発明は、(1)のLED点灯装置について、前記過電流抑制手段は、前記複数の発光ダイオードと直列に接続されたスイッチ素子と、一端が前記スイッチ素子に接続された、インピーダンスを有する第1インピーダンス素子と、一端が前記スイッチ素子の制御端子に接続され、他端が前記第1インピーダンス素子の他端に接続された整流素子と、を備えることを特徴とするLED点灯装置を提案している。
【0030】
この発明によれば、過電流抑制手段を、複数の発光ダイオードと直列に接続されたスイッチ素子と、インピーダンスを有する第1インピーダンス素子と、整流素子と、を含んで構成した。そして、第1インピーダンス素子の一端を、スイッチ素子に接続した。また、整流素子の一端を、スイッチ素子の制御端子に接続し、整流素子の他端を、第1インピーダンス素子の他端に接続した。これによれば、過電流抑制手段により、スイッチ素子に流れる電流を抑制することができるので、上述した効果と同様の効果を奏することができる。
【0031】
(3)本発明は、(1)のLED点灯装置について、前記過電流抑制手段は、インピーダンスを有する第2インピーダンス素子、または、インダクタンスを有するインダクタンス素子で構成されることを特徴とするLED点灯装置を提案している。
【0032】
この発明によれば、過電流抑制手段を、インピーダンスを有する第2インピーダンス素子、または、インダクタンスを有するインダクタンス素子で構成した。これによれば、第2インピーダンス素子やインダクタンス素子により、複数の発光ダイオードのうちオープン故障の発生した発光ダイオードを除くものに流れる電流を抑制できるので、上述した効果と同様の効果を奏することができる。
【0033】
(4)本発明は、(1)〜(3)のいずれかのLED点灯装置について、前記導通素子がオン状態となると、当該導通素子の両端のうち前記発光ダイオードのアノード側の電圧が、当該導通素子の両端のうち当該発光ダイオードのカソード側の電圧と比べて、前記第1電圧より低い第2電圧だけ高くなることを特徴とするLED点灯装置を提案している。
【0034】
この発明によれば、導通素子がオン状態となると、導通素子の両端のうち発光ダイオードのアノード側の電圧が、導通素子の両端のうち発光ダイオードのカソード側の電圧と比べて、第1電圧より低い第2電圧だけ高くなることとした。このため、導通素子がオン状態になると、導通素子の両端の電位差が小さくなるので、導通素子における消費電力が低くなる。したがって、直列に接続された複数の発光ダイオードのうち少なくとも1つにオープン故障が発生した場合におけるLED点灯装置の消費電力を低減できる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、直列に接続された複数の発光ダイオードのうちオープン故障の発生したものの数が増加しても、オープン故障の発生した発光ダイオードを除くものを点灯させることができる。また、過電流が流れることによる発光ダイオードの故障を防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素などとの置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、以下の実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0038】
<第1実施形態>
[LED点灯装置1の構成]
図1は、本発明の第1実施形態に係るLED点灯装置1の回路図である。LED点灯装置1は、
図7、8に示した従来例に係るLED点灯装置100とは、バイパス部A1〜Anの代わりに、導通素子としてのサイダック(登録商標)S1〜Snと、過電流抑制手段としての過電流抑制部11と、を備える点が異なる。なお、LED点灯装置1において、LED点灯装置100と同一構成要件については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0039】
サイダックS1〜Snは、それぞれ、発光ダイオードLED1〜LEDnと対に設けられる。サイダックSq(qは、1≦q≦nを満たす任意の整数)の一端には、発光ダイオードLEDqのアノードが接続され、サイダックSqの他端には、発光ダイオードLEDqのカソードが接続される。
【0040】
過電流抑制部11は、抵抗R1と、第1インピーダンス素子としての抵抗R2と、ツェナーダイオードZDと、NチャネルMOSFETで構成されるスイッチ素子Qと、を備え、いわゆる過電流抑制回路を構成する。具体的には、抵抗R1の一端には、定電流電源Iccの一端と、キャパシタCの一方の電極と、が接続され、抵抗R1の他端には、スイッチ素子Qのゲートと、ツェナーダイオードZDのカソードと、が接続される。スイッチ素子Qのドレインには、発光ダイオードLEDnのカソードと、サイダックSnの他端と、が接続され、スイッチ素子Qのソースには、抵抗R2の一端が接続される。ツェナーダイオードZDのアノードと、抵抗R2の他端とには、定電流電源Iccの他端と、キャパシタCの他方の電極と、が接続される。
【0041】
なお、サイダックSqのブレークオーバ電圧は、発光ダイオードLEDqの立上がり電圧より高いものとする。また、ツェナーダイオードZDのツェナー電圧は、抵抗R1の他端の電圧と比べて十分に高く、ツェナーダイオードZDは絶縁状態であるものとする。
【0042】
[LED点灯装置1の動作]
以上の構成を備えるLED点灯装置1では、電流源としての定電流電源Iccの一端から出力された電流がキャパシタCで平滑化された後、発光ダイオードLED1のアノードと、サイダックS1の一端と、に供給される。また、上述のように、ツェナーダイオードZDは絶縁状態である。このため、スイッチ素子Qのゲートには、定電流電源Iccの一端の電圧が抵抗R1を介して印加され、スイッチ素子Qがオン状態となる。
【0043】
発光ダイオードLED1〜LEDnの全てに故障が発生していない場合には、発光ダイオードLED1〜LEDnのそれぞれに電流が流れ、発光ダイオードLED1〜LEDnのそれぞれが点灯する。ここで、点灯している発光ダイオードLEDqの両端の電位差は、発光ダイオードLEDqの立上がり電圧に略等しいため、発光ダイオードLEDqと対に設けられたサイダックSqの両端の電位差も、発光ダイオードLEDqの立上がり電圧に略等しくなる。そして、サイダックSqのブレークオーバ電圧は、上述のように発光ダイオードLEDqの立上がり電圧より高いため、サイダックSqはオフ状態となる。
【0044】
一方、発光ダイオードLED1〜LEDnのうち1つの発光ダイオードLEDy(yは、1≦y≦nを満たす任意の整数)にオープン故障が発生した場合には、発光ダイオードLEDyに電流が流れなくなる。このため、発光ダイオードLED1〜LEDnのうち発光ダイオードLEDyを除くものにも電流が流れなくなり、発光ダイオードLED1〜LEDnの全てが消灯する。すると、定電流電源Iccの一端の電圧が上昇し、これに伴って、発光ダイオードLEDyの両端の電位差が、時間が経過するに従って上昇する。そして、発光ダイオードLEDyの両端の電位差が、サイダックSyのブレークオーバ電圧に等しくなると、サイダックSyがオン状態となる。これによれば、発光ダイオードLEDyのアノードに供給された電流は、発光ダイオードLEDyを流れることなく、サイダックSyでバイパスされて、発光ダイオードLEDyのカソードに供給される。したがって、発光ダイオードLEDyにオープン故障が発生して、発光ダイオードLEDyに電流が流れない場合であっても、発光ダイオードLEDyのアノードに供給された電流がサイダックSyにより発光ダイオードLEDyの後段にバイパスされる。よって、発光ダイオードLED1〜LEDnのうち発光ダイオードLEDyを除くものには電流が流れ、発光ダイオードLED1〜LEDnのうち発光ダイオードLEDyを除くものは、点灯する。
【0045】
また、発光ダイオードLED1〜LEDnのうち、m個の発光ダイオードにオープン故障が発生した場合には、発光ダイオードLED1〜LEDnのうち1つの発光ダイオードLEDyにオープン故障が発生した場合と同様に、発光ダイオードLED1〜LEDnの全てが消灯する。ここで、サイダックS1〜Snのそれぞれのブレークオーバ電圧をV
BOと表すものとする。すると、定電流電源Iccの一端の電圧が、時間が経過するに従って上昇し、オープン故障の発生した発光ダイオードの数mとブレークオーバ電圧V
BOとの積(m×V
BO)以上になると、オープン故障の発生したm個の発光ダイオードと対に設けられたm個のサイダックがオン状態となる。これによれば、m個の発光ダイオードにオープン故障が発生して、これらm個の発光ダイオードに電流が流れない場合であっても、これらm個の発光ダイオードのそれぞれにおいて、アノードに供給された電流が、対応するサイダックにより後段の発光ダイオードにバイパスされる。したがって、発光ダイオードLED1〜LEDnのうちオープン故障の発生したm個の発光ダイオードを除くものには電流が流れ、発光ダイオードLED1〜LEDnのうちオープン故障の発生したm個の発光ダイオードを除くものは、点灯する。
【0046】
なお、発光ダイオードLED1〜LEDnのうちオープン故障の発生した発光ダイオードを除くものに流れた電流は、オン状態のスイッチ素子Qおよび抵抗R2を介して、定電流電源Iccの他端に流れる。
【0047】
図2は、サイダックSqの電圧−電流波形と、発光ダイオードLEDqの電圧−電流波形と、を示す図である。
図2において、縦軸は、電流を対数表示にて示し、横軸は、電圧を示している。
【0048】
図2に示すように、発光ダイオードLEDqの両端の電位差は、サイダックSqの両端の電位差と比べて、自身に流れる電流が大きくなるに従って、急激に大きくなる。
【0049】
ここで、まず、上述のLED点灯装置1に過電流抑制部11が設けられていない場合について検討する。この場合、発光ダイオードLED1〜LEDnのうちオープン故障の発生していないものに流れる電流I
LEDは、上述のオン状態となったm個のサイダックに流れる電流に等しくなる。
【0050】
次に、上述のLED点灯装置1について検討する。この場合、発光ダイオードLED1〜LEDnのうちオープン故障の発生していないものに流れる電流I
LEDは、過電流抑制部11を流れることで後述のように抑制される。このため、電流I
LEDのピーク値は、
図3に示すように、上述のLED点灯装置1に過電流抑制部11が設けられていない場合と比べて小さくなる。
【0051】
図3は、発光ダイオードLED1〜LEDnのうちオープン故障の発生していないものに流れる電流I
LEDと、発光ダイオードLED1〜LEDnのうちオープン故障の発生するもののそれぞれに印加される電圧V
LEDと、のタイミングチャートである。
【0052】
時刻t1より以前の期間では、発光ダイオードLED1〜LEDnのうち全てが点灯しているものとする。この期間では、電流I
LEDは、I1となり、電圧V
LEDは、V1となっている。
【0053】
時刻t1において、発光ダイオードLED1〜LEDnのうち、m個の発光ダイオードにオープン故障が発生したものとする。すると、電流I
LEDは、「0」となる。一方、電圧V
LEDは、時間が経過するに従って上昇し、時刻t2において、サイダックS1〜Snのそれぞれのブレークオーバ電圧に等しいV2となる。
【0054】
時刻t2において、上述のm個の発光ダイオードと対に設けられたm個のサイダックがオン状態となる。すると、電圧V
LEDは、V1より低いV3となる。
【0055】
また、上述のLED点灯装置1に過電流抑制部11が設けられていない場合には、電流I
LEDは、I3まで増加し、発光ダイオードLED1〜LEDnのうちオープン故障の発生していないものが点灯する。
【0056】
一方、上述のLED点灯装置1の場合には、上述のLED点灯装置1に過電流抑制部11が設けられていない場合と同様に、電流I
LEDがI3まで増加しようとするが、過電流抑制部11により、電流I
LEDの増加が後述のように抑制され、I3より低いI2までしか増加しない。このことについて、以下に説明する。
【0057】
ツェナーダイオードZDのツェナー電圧と、オン状態のスイッチ素子Qのゲート−ソース間電圧とは、略一定である。また、オン状態のスイッチ素子Qのゲート−ソース間電圧と、抵抗R2に印加される電圧と、の和は、ツェナーダイオードZDのツェナー電圧以下である。このため、抵抗R2に印加される電圧は、予め定められた電圧以下に抑制されるので、抵抗R2に流れる電流も、予め定められた電流以下に抑制される。抵抗R2に流れる電流は、電流I
LEDに等しいため、電流I
LEDも、予め定められた電流(本実施形態では、I2)以下に抑制される。
【0058】
時刻t2より以降の期間では、電流I
LEDは、時間が経過するに従って減少し、時刻t3ではI1に戻る。
【0059】
以上のLED点灯装置1によれば、以下の効果を奏することができる。
【0060】
発光ダイオードLED1〜LEDnのうち少なくとも1つにオープン故障が発生すると、オープン故障の発生した発光ダイオードと対に設けられたサイダックの両端のうち発光ダイオードのアノード側の電圧が上昇する。そして、サイダックの両端のうち発光ダイオードのアノード側の電圧が、サイダックの両端のうち発光ダイオードのカソード側の電圧と比べて、発光ダイオードの立上がり電圧より高くなると、サイダックがオン状態となって、オン状態となったサイダックに電流が流れる。
【0061】
このため、オープン故障の発生した発光ダイオードに供給される電流は、オープン故障の発生した発光ダイオードと対に設けられたサイダックにより、オープン故障の発生した発光ダイオードの後段にバイパスされる。したがって、発光ダイオードLED1〜LEDnのうちオープン故障の発生した発光ダイオードを除くものには電流が流れるので、これら発光ダイオードLED1〜LEDnのうちオープン故障の発生した発光ダイオードを除くものを点灯させることができる。
【0062】
また、発光ダイオードLED1〜LEDnのうちオープン故障の発生した発光ダイオードを除くものに流れる電流は、過電流抑制部11により抑制されるため、過電流抑制部11が設けられていない場合と比べて小さくなる。このため、発光ダイオードLED1〜LEDnのうちオープン故障の発生した発光ダイオードを除くものに流れる電流を抑制して、これら発光ダイオードと対に設けられたサイダックが誤ってオン状態となってしまうのを防止できる。これによれば、発光ダイオードLED1〜LEDnのうちオープン故障の発生したものの数が増加しても、オープン故障の発生した発光ダイオードを除くものを点灯させることができる。
【0063】
また、上述のように、発光ダイオードLED1〜LEDnのうちオープン故障の発生した発光ダイオードを除くものに流れる電流が抑制されるため、過電流が流れることによる発光ダイオードLED1〜LEDnの故障を防止できる。
【0064】
また、サイダックがオン状態となると、サイダックの両端の電位差が小さくなるので、サイダックにおける消費電力が低くなる。したがって、発光ダイオードLED1〜LEDnのうち少なくとも1つにオープン故障が発生した場合におけるLED点灯装置1の消費電力を低減できる。
【0065】
また、ツェナーダイオードZDのツェナー電圧や、抵抗R2の抵抗値を調整することで、定電流電源Iccの一端の電圧や、発光ダイオードLED1〜LEDnの数に関係なく、上述の予め定められた電流、すなわち電流I
LEDのピーク値を調整できる。
【0066】
なお、LED点灯装置1では、過電流抑制部11を設けたが、発光ダイオードLED1〜LEDnのそれぞれと抵抗をそれぞれ直列に接続しても、発光ダイオードLED1〜LEDnのうちオープン故障の発生した発光ダイオードを除くものに流れる電流を抑制することはできる。ここで、LED点灯装置1では、発光ダイオードLED1〜LEDnのうち少なくとも1つにオープン故障が発生した場合に、過電流抑制部11に設けられた抵抗R2にのみ、電流が流れる。これに対して、上述の発光ダイオードLED1〜LEDnのそれぞれと抵抗をそれぞれ直列に接続したLED点灯装置では、常に、オープン故障の発生した発光ダイオードを除くものに対応する抵抗の全てに、電流が流れる。以上によれば、LED点灯装置1は、上述の発光ダイオードLED1〜LEDnのそれぞれと抵抗をそれぞれ直列に接続したLED点灯装置と比べて、消費電力を低減できる。
【0067】
また、
図4に示すLED点灯装置200と比べると、発光ダイオードLED1〜LEDnの少なくとも1つにオープン故障が発生した場合における電力損失を低減できる。このLED点灯装置200と比べてLED点灯装置1が電力損失を低減できることについて、以下に説明する。
【0068】
[LED点灯装置200の構成]
図4は、比較例に係るLED点灯装置200の回路図である。LED点灯装置200は、
図1に示した本発明の第1実施形態に係るLED点灯装置1とは、サイダックS1〜Snおよび過電流抑制部11の代わりに、ツェナーダイオードZD1〜ZDnを備える点が異なる。なお、LED点灯装置200において、LED点灯装置1と同一構成要件については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0069】
ツェナーダイオードZD1〜ZDnは、それぞれ、発光ダイオードLED1〜LEDnと対に設けられている。ツェナーダイオードZDr(rは、1≦r≦nを満たす任意の整数)のカソードには、発光ダイオードLEDrのアノードが接続され、ツェナーダイオードZDrのアノードには、発光ダイオードLEDrのカソードが接続される。
【0070】
なお、ツェナーダイオードZDrのツェナー電圧は、発光ダイオードLEDrの立上がり電圧より高いものとする。
【0071】
[LED点灯装置200の動作]
以上の構成を備えるLED点灯装置200では、定電流電源Iccの一端から出力された電流がキャパシタCで平滑化された後、発光ダイオードLED1のアノードと、ツェナーダイオードZD1のカソードと、に供給される。
【0072】
発光ダイオードLED1〜LEDnの全てに故障が発生していない場合には、LED点灯装置1と同様に、発光ダイオードLED1〜LEDnのそれぞれに電流が流れ、発光ダイオードLED1〜LEDnのそれぞれが点灯するとともに、ツェナーダイオードZDrはオフ状態となる。
【0073】
一方、発光ダイオードLED1〜LEDnのうち1つの発光ダイオードLEDyにオープン故障が発生した場合には、LED点灯装置1と同様に、発光ダイオードLEDyのアノードに供給された電流がツェナーダイオードZDyにより発光ダイオードLEDyの後段にバイパスされる。よって、発光ダイオードLED1〜LEDnのうち発光ダイオードLEDyを除くものには電流が流れ、発光ダイオードLED1〜LEDnのうち発光ダイオードLEDyを除くものは、点灯する。
【0074】
ここで、LED点灯装置200において、ツェナーダイオードZDyに印加される電圧がツェナー電圧を超えると、ツェナーダイオードZDyに電流が流れ始める。そして、ツェナーダイオードZDyに電流が流れている期間では、ツェナーダイオードZDyの両端の電位差は、略ツェナー電圧に等しい。
【0075】
これに対して、LED点灯装置1では、サイダックSyがオン状態となると、サイダックSyの両端の電位差が小さくなる。そして、オン状態であるサイダックSyの両端の電位差は、ツェナーダイオードZDyのツェナー電圧と比べて小さい。このため、LED点灯装置1は、
図4に示すLED点灯装置200と比べると、発光ダイオードLED1〜LEDnの少なくとも1つにオープン故障が発生した場合における電力損失を低減できる。
【0076】
<第2実施形態>
[LED点灯装置1Aの構成]
図5は、本発明の第2実施形態に係るLED点灯装置1Aの回路図である。LED点灯装置1Aは、
図1に示した本発明の第1実施形態に係るLED点灯装置1とは、抵抗R2の代わりにインダクタL1を備える点が異なる。なお、LED点灯装置1Aにおいて、LED点灯装置1と同一構成要件については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0077】
LED点灯装置1Aによれば、LED点灯装置1と同様の効果を奏することができる。
【0078】
<第3実施形態>
[LED点灯装置1Bの構成]
図6は、本発明の第3実施形態に係るLED点灯装置1Bの回路図である。LED点灯装置1Bは、
図1に示した本発明の第1実施形態に係るLED点灯装置1とは、過電流抑制部11の代わりにインダクタンス素子としてのインダクタL2を備える点が異なる。なお、LED点灯装置1Bにおいて、LED点灯装置1と同一構成要件については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0079】
LED点灯装置1Bによれば、LED点灯装置1と同様の効果を奏することができる。
【0080】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0081】
例えば、上述の各実施形態では、nを、n≧3を満たす任意の整数とし、LED点灯装置1、1A、1Bを、直列に接続された3つ以上の発光ダイオードに対して適用したが、これに限らず、LED点灯装置1、1A、1Bを、直列に接続された2つ以上の発光ダイオードに対して適用できる。
【0082】
また、上述の各実施形態では、サイダックS1〜Snを設けたが、これに限らず、例えば、サイリスタを設けてもよい。
【0083】
また、上述の各実施形態において、発光ダイオードLED1〜LEDnのそれぞれと並列に、発光ダイオードLED1〜LEDnのそれぞれにおける静電気破壊を防止するための静電気破壊対策用キャパシタを設けてもよい。これによれば、発光ダイオードLED1〜LEDnのそれぞれにおける静電気破壊を防止できる。