(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
哺乳動物の炎症性腸疾患(IBD)を検出する方法であって、(a)前記哺乳動物から採取した組織又は細胞の試験試料中及び、(b)コントロール試料中における、LY6ポリペプチドをコードする遺伝子の発現レベルを検出することを含み、このとき試験試料中におけるLY6核酸又はポリペプチドの発現レベルがコントロール試料と比較して高い場合に、試験試料を採取した哺乳動物にIBDの存在が示される方法。
コントロール試料が、同じ組織起源又は種類の、正常な非IBD組織又は細胞の試料であるか、その発現レベルが平均化されている同じ組織起源又は種類の非IBD組織又は細胞の複数の試料であるか、或いは同じ種の健常な正常組織の複数の試料における遺伝子発現を呈するユニバーサルコントロールである、請求項1に記載の方法。
ポリヌクレオチドが、配列番号8、9、1、3、4、又は6の核酸配列、又は配列番号8、9、1、3、4又は6の少なくとも15の近接するヌクレオチドを含むその断片を含んでなる、請求項7に記載の方法。
コントロール試料が、同じ組織起源又は種類の正常な非IBD組織又は細胞の試料であるか、その発現レベルが平均化されている同じ組織起源又は種類の非IBD組織又は細胞の複数の試料であるか、或いは同じ種の健常な正常組織の複数の試料における遺伝子発現を呈するユニバーサルコントロールである、請求項10に記載の方法。
LY6ポリペプチドが、配列番号10、2、5又は7、又は配列番号10、2、5又は7の少なくとも10の近接するアミノ酸を含むその断片を含んでなる、請求項19に記載の方法。
哺乳動物の組織又は細胞が治療剤と接触されており、このときLY6の発現レベルによって、哺乳動物の組織又は細胞における治療剤への応答の有無が示される、請求項1、7又は19に記載の方法。
哺乳動物の組織又は細胞が治療剤と接触されており、このとき検出が二回目又はそれ以降の検出であり、LY6発現のレベルによって、哺乳動物の組織又は細胞における治療剤への応答の有無が示される、請求項1、7又は19に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な説明
I.定義
本明細書では、「炎症性腸疾患」と「IBD」は互換可能に使用され、炎症及び/又は潰瘍を生じる腸の疾患を指し、限定するものではないが、クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む。
「クローン病(CD)」及び「潰瘍性か胃腸炎(UC)」は、原因不明の慢性炎症性腸疾患である。クローン病は、潰瘍性大腸炎とは異なり、腸のあらゆる部位に発症しうる。クローン病の最も顕著な特徴は、腸壁のざらざらした赤紫色の浮腫状の肥大である。炎症が進行すると、多くの場合これらのざらざらした肉芽腫を取り囲む境界が無くなって周囲の組織と一体化する。下痢及び腸閉塞が主な臨床的特徴である。潰瘍性大腸炎と同様に、クローン病の経過は、連続性又は再発性であり、軽症又は重症であるが、潰瘍性大腸炎とは対照的に、クローン病は腸の関連部位の切除によっては治癒しない。大部分のクローン病患者は何らかの時点で手術を要するが、一般に再発し、通常は治療が続けられる。
クローン病は、口から肛門までの消化管のあらゆる部分に発症しうるが、典型的には回結腸、小腸又は大腸−肛門直腸領域に生じる。組織病理学的に、この疾病は不連続な肉芽腫、陰窩膿瘍、亀裂及びアフタ性潰瘍により現れる。リンパ球(T細胞及びB細胞)、形質細胞、マクロファージ及び好中球からなる炎症性浸潤物が混合している。IgM−及びIgG−を分泌する形質細胞、マクロファージ及び好中球が不均衡に増加する。
抗炎症剤であるスルファサラジン及び5−アミノサリチル酸(5−ASA)は、軽度のクローン病の治療に有用であり、疾病の寛解を維持するために一般的に処方される。メトロニダゾール及びシプロフロキサンはスルファサラジンと同様の効果を有し、肛門周囲の疾病の治療に特に効果を示す。更に重症の症例では、副腎皮質ステロイドが活動性の増悪の治療に有用であり、寛解を維持することもできる。アザチオプリン及び6−メルカプトプリンも副腎皮質ステロイドの慢性投与を必要とする患者において成功を示している。また、これらの薬剤を長期予防にも役立てることが可能である。残念ながら、一部の患者において効き目が現れるまでに非常に長時間(最大6ヶ月)を要す場合がある。
止痢薬も一部の患者において症状を和らげることができる。栄養療法又は成分栄養は、患者の栄養状態を向上させ、急性疾患を症状的に改善することができるが、長期的臨床的寛解をもたらすわけではない。二次的な小腸の細菌過剰の治療及び化膿性合併症の治療に抗生物質が使用される。
【0014】
「潰瘍性大腸炎(UC)」は大腸に発症する。この疾患の経過は連続性又は再発性であり、軽症又は重症である。初期の病巣は、リーベルキューンの陰窩に膿瘍形成を有する炎症性の浸潤である。膨張し且つ破裂したこれらの陰窩の癒合は、その上の粘膜をその血液供給から分離する傾向があり、潰瘍に繋がる。この疾病の症状には、筋痙攣、下腹部の痛み、直腸の出欠、及び主に血液と、便性粒子に乏しい粘液からなる頻発性軟便排出が含まれる。急性の、重症又は軽症の、絶え間ない潰瘍性大腸炎には、完全な結腸切除が必要となりうる。
UCの臨床的特徴は様々に変化し、その発症は潜行性又は急激であり、下痢、しぶり腹、及び再発性の直腸の出血を含みうる。大腸全体の劇症性の合併症により、生命を脅かす緊急事態である中毒性巨大結腸症が起こりうる。腸外の徴候には、関節炎、壊疽性膿皮症、ぶどう膜炎、及び結節性紅斑が含まれる。
UCの治療には、軽症用としてスルファサラジン及び関連するサリチル酸含有剤が、重症用として副腎皮質ステロイド剤が含まれる。サリチル酸又は副腎皮質ステロイドの局所投与は、特に疾病が末端腸に限定されているとき、及び全身に使用する場合と比較して関連する副作用が小さいときに、効果的である場合がある。鉄及び止痢剤の投与などの支持的手段が指示されることもある。不溶性の副腎皮質ステロイド依存症への使用に、アザチオプリン、6−メルカトプリン及びメトトレキサートが処方されることもある。
【0015】
本明細書では、「LY6遺伝子のファミリーメンバー」と「LY6遺伝子のスーパーファミリーメンバー」は互換可能に使用され、LY6遺伝子ファミリーのメンバーと相同性の遺伝子を指す。LY6遺伝子のファミリーメンバーの大多数は、造血性の起源を有する細胞に広く分布し、非造血性細胞における発現が比較的限定されている、GPIに固着した(アンカー)細胞表面糖タンパク質である。この遺伝子ファミリーのメンバーは、免疫細胞の分化のマーカーとして使用される(Sunderkotter, C.等、J. Immunol. 172:4410-4417 (2004))。LY6ファミリーの遺伝子は試験済みであり(Shevach, E.M. and P.E. Korty, Immunol. Today 10:195-200 (1989))、機能にはT細胞活性化(Zhang, Z.X.等、Eur. J. Immunol. 32:1584-1592 (2002) and Henderson, S.C.等、J. Immunol. 168:118-126 (2002))、嗅覚(Chou, J.H.等、Genetics 157:211-224 (2001)及び細胞接着(Jaakkola, I.等、J. Immunol. 170:1283-1290 (2003))が含まれている。LY6遺伝子ファミリーのメンバーには、限定されないが、哺乳類のLY6遺伝子ファミリー、例えばマウス又はヒトのLY6ファミリーの遺伝子が含まれる。本明細書において使用される「LY6遺伝子」という用語は、LY6遺伝子のファミリーメンバーを意味し、「LY6ポリペプチド」という用語は、一のLY6遺伝子によってコードされるポリペプチドを意味する。マウスLY6遺伝子のファミリーメンバーには、限定されるものではないが、LY6A(NM_010738、ポリペプチド配列番号26をコードする核酸配列番号25)、LY6C(NM_010741、ポリペプチド配列番号28をコードする核酸配列番号27)、LY6D(NM_003695、ポリペプチド配列番号30をコードする核酸配列番号29)、LY6E(NM_002346、ポリペプチド配列番号32をコードする核酸配列番号31)、LY6F(NM_008530、ポリペプチド配列番号34をコードする核酸配列番号33)、LY6I(NM_020498、ポリペプチド配列番号36をコードする核酸配列番号35)、及びLY6K(NM_017527、ポリペプチド配列番号38をコードする核酸配列番号37)が含まれる。ヒトLY6遺伝子のファミリーメンバーには、限定されるものではないが、LY6H(NM_002347、ポリペプチド配列番号2をコードする核酸配列番号1、LYPD1(NM_144586、ポリペプチド配列番号5をコードする核酸配列番号3又は4)、LYPD3(NM_014400、ポリペプチド配列番号7をコードする核酸配列番号6)、LYPD5(NM_182573、ポリペプチド配列番号10をコードする核酸配列番号8又は9)、LY6D(NM_003695、ポリペプチド配列番号12をコードする核酸配列番号11)、LY6E(NMNM_002346、ポリペプチド配列番号14をコードする核酸配列番号13)、LYPD2(NM_205545、ポリペプチド配列番号16をコードする核酸配列番号15)が含まれる。複数の実施形態では、ここに開示される各LY6遺伝子のファミリーメンバーのポリペプチドは、少なくとも15、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも250、少なくとも500、少なくとも750、少なくとも1000、少なくとも1250、少なくとも1500、少なくとも1750、少なくとも2000、又は少なくとも2040の、配列番号1、3、4、6、8、9、11、13、15、25、27、29、31、33、35、37、45、47、49、51、53、55、又は57の近接するヌクレオチドを含むか、又はLY6遺伝子のファミリーメンバーポリヌクレオチドは、配列番号1、3、4、6、8、9、11、13、15、25、27、29、31、33、35、37、45、47、49、51、53、55、又は57を含む。一実施形態では、LY6遺伝子のファミリーメンバーポリヌクレオチド(配列番号1、3、4、6、8、9、11、13、15、25、27、29、31、33、35、37、45、47、49、51、53、55、又は57)、又はその断片に結合する一ポリヌクレオチドは、LY6ポリペプチド又はその断片と、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99% 又は100%の配列同一性を有する。一実施形態では、LY6遺伝子のファミリーメンバーポリペプチドは、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも125、少なくとも150、少なくとも175、少なくとも200、少なくとも225、少なくとも250、少なくとも275、少なくとも300、又は少なくとも325の、少なくとも配列番号2、5、7、10、12、14、26、28、30、32、34、36、38、46、48、50、52、54、56、又は58の近接するアミノ酸を有するか、或いは、LY6遺伝子のファミリーポリペプチドは、配列番号2、5、7、10、12、14、26、28、30、32、34、36、38、46、48、50、52、54、56、又は58を有する。
【0016】
LY6遺伝子のファミリーメンバーのいずれかの「天然配列ポリペプチド」には、天然由来の対応するLY6遺伝子のファミリーメンバーポリペプチドと同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドが含まれる。このような天然配列LY6ポリペプチドは、自然から単離することもできるし、組換え又は合成手段により生成することもできる。「天然配列LY6ポリペプチド」という用語には、特に、特定のLY6ポリペプチドの自然に生じる切断又は分泌形態(例えば、細胞外ドメイン配列)、自然に生じる変異形態(例えば、選択的にスプライシングされた形態)及びそのポリペプチドの自然に生じる対立遺伝子変異体が含まれる。特定の一態様では、ここに開示される天然配列LY6ポリペプチドは、
図1−7及び配列番号2、5、7、10、12、14、26、28、30、32、34、36、38、46、48、50、52、54、56、又は58の配列に対応する成熟又は完全長天然配列ポリペプチドである。
【0017】
本明細書で使用する「LY6ポリペプチド変異体」とは、LY6ポリペプチド、好ましくは、ここに開示するような完全長天然配列LY6ポリペプチド、及びシグナルペプチドを欠くその変異型、本明細書に示されるような完全長天然配列LY6ポリペプチドの細胞外ドメイン又は任意の他の断片と少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有する、ここで定義するような、その生物学的な活性型を意味する。このような変異体ポリペプチドには、例えば、完全長天然アミノ酸配列のN末端又はC末端において一又は複数のアミノ酸残基が付加、もしくは欠失されたポリペプチドが含まれる。特定の態様では、このような変異体ポリペプチドは、ここに開示する完全長天然配列LY6ポリペプチド配列ポリペプチド、及びシグナルペプチドを欠くその変異型、ここに開示するような完全長天然配列LY6ポリペプチドの細胞外ドメイン、又は他の任意の断片に対して、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%のアミノ酸配列同一性を有している。
【0018】
ここで同定したLY6ポリペプチド配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」とは、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入し、如何なる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとした後の、特定のLY6ポリペプチド配列のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を測定する目的のためのアラインメントは、当業者の技量の範囲にある種々の方法、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウエアのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアを使用することにより達成可能である。当業者であれば、比較される配列の完全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。しかし、ここでの目的のためには、%アミノ酸配列同一性値は、ALIGN-2プログラム用の完全なソースコードが下記の表1に提供されている配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用することによって得られる。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムはジェネンテック社によって作成され、下記の表1に示したソースコードは米国著作権庁, ワシントンD.C., 20559に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087で登録されている。ALIGN-2プログラムはジェネンテック社、サウス サン フランシスコ, カリフォルニアから公的に入手可能であり、下記の表1に提供されたソースコードからコンパイルしてもよい。ALIGN-2プログラムは、UNIX(登録商標)オペレーティングシステム、好ましくはデジタルUNIX(登録商標)V4.0Dでの使用のためにコンパイルされる。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定され変動しない。
【0019】
本明細書で使用する「LY6変異体ポリヌクレオチド」又は「LY6変異体核酸配列」、或いは「LY6遺伝子」とは、ここで定義されるように、LY6遺伝子のファミリーメンバーポリペプチド、好ましくはその生物学的な活性型をコードし、ここに同定される完全長天然配列LY6ポリペプチド配列、又はここに同定される各完全長LY6ポリペプチド配列の他の任意の断片をコードする核酸配列(完全長LY6ポリペプチドの完全なコード化配列の一部分のみを表す核酸によってコードされた)と、少なくとも約80%の核酸配列同一性を有する核酸分子を意味する。通常、このような変異体ポリヌクレオチドは、ここに開示する各完全長天然配列LY6ポリペプチド配列、又はここに同定される各完全長LY6ポリペプチド配列の任意の他の断片をコードする核酸配列と、少なくとも約80%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の核酸配列同一性を有している。このような変異体ポリヌクレオチドは、天然ヌクレオチド配列を含まない。
通常、このような変異体ポリヌクレオチドは、天然配列ポリペプチドとは、少なくとも約50ヌクレオチド長が異なり、あるいはその変異は少なくとも約50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、又は1000ヌクレオチド長に亘り、この文脈の「約」という用語は、表示ヌクレオチド配列長にその表示長の10%を加えるか又は減じたものを意味する。
【0020】
ここで同定されるLY6遺伝子ポリペプチドコード化核酸配列に対する「パーセント(%)核酸配列同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入し、対象のLY6遺伝子核酸配列のヌクレオチドと同一である候補配列中のヌクレオチドのパーセントとして定義される。パーセント核酸配列同一性を測定する目的のためのアラインメントは、当業者の知る範囲にある種々の方法、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウエアのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアを使用することにより達成可能である。ここでの目的のためには、%核酸配列同一性値は、ALIGN-2プログラム用の完全なソースコードが下記の表1に提供されている配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用することによって得られる。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムはジェネンテック社によって作成され、下記の表1に示したソースコードは米国著作権庁,ワシントン D.C.,20559に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087の下で登録されている。ALIGN-2プログラムはジェネンテック社、サウスサンフランシスコ, カリフォルニアから公的に入手可能であり、下記の表1に提供されたソースコードからコンパイルしてもよい。ALIGN-2プログラムは、UNIX(登録商標)オペレーティングシステム、好ましくはデジタルUNIX(登録商標)V4.0Dでの使用のためにコンパイルされる。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定され変動しない。
核酸配列比較にALIGN-2が用いられる状況では、与えられた核酸配列Cの、与えられた核酸配列Dとの、又はそれに対する%核酸配列同一性(あるいは、与えられた核酸配列Dと、又はそれに対して或る程度の%核酸配列同一性を持つ又は含む与えられた核酸配列Cと言うこともできる)は次のように計算される:
分率W/Zの100倍
ここで、Wは配列アラインメントプログラムALIGN-2のC及びDのアラインメントによって同一であると一致したスコアのヌクレオチドの数であり、ZはDの全ヌクレオチド数である。核酸配列Cの長さが核酸配列Dの長さと異なる場合、CのDに対する%核酸配列同一性は、DのCに対する%核酸配列同一性とは異なることは理解されるであろう。%核酸配列同一性の計算の例として、表4及び5に「比較DNA」と称される核酸配列の「REF-DNA」と称される核酸配列に対する%核酸配列同一性の計算方法を示し、このとき「REF-DNA」が対象となる仮説的LY6遺伝子コード化核酸配列を表し、「比較DNA」が対象となる「REF-DNA」核酸分子が比較されている核酸分子のヌクレオチド配列を表し、そして「N」、「L」及び「V」の各々が異なった仮想ヌクレオチドを表す。特に断らない限りは、ここでの全ての%核酸配列同一性値は、直ぐ上のパラグラフに示したようにALIGN-2コンピュータプログラムを用いて得られる。
他の実施態様では、LY6遺伝子変異体ポリヌクレオチドとは、それぞれ、LY6ポリペプチドをコードする核酸分子であり、好ましくはストリンジェントなハイブリダイゼーション及び洗浄条件下で、それぞれ、ここに記載の完全長LY6ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列とハイブリダイゼーションすることができる。このような変異体ポリペプチドは、このような変異体ポリヌクレオチドによってコードされているものであり得る。
【0021】
ここに開示される種々のLY6ポリペプチドを記載するために使用される「単離」とは、自然環境の成分から同定され及び分離及び/又は回収されたポリペプチドを意味する。その自然環境の汚染成分とは、そのポリペプチドの診断又は治療への使用を典型的には妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様では、このようなポリペプチドは、(1)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15残基のN末端あるいは内部アミノ酸配列を得るのに充分なほど、あるいは、(2)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でSDS-PAGEにより均一になるまで精製される。このような単離されたポリペプチドには、LY6ポリペプチドの自然環境由来の少なくとも一つの成分が存在しないため、組換え細胞内のインサイツのポリペプチドが含まれる。しかしながら、通常は、このような単離されたポリペプチドは少なくとも一つの精製工程により調製される。
「単離された」LY6ポリペプチドをコードする核酸は、同定され、ポリペプチドをコードする核酸の天然源に通常付随している少なくとも一つの汚染核酸分子から分離された核酸分子である。上述のような単離された核酸分子のいずれもが、天然に見出される形態あるいは設定以外のものである。故に、そのような核酸分子のいずれもが、天然の細胞中に存在する特異的なポリペプチドコード化核酸分子とは区別される。
【0022】
「コントロール配列」という用語は、特定の宿主生物において作用可能に結合したコード配列を発現するために必要なDNA配列を指す。例えば原核生物に好適なコントロール配列は、プロモーター、場合によってはオペレータ配列と、リボソーム結合部位を含む。真核生物の細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーを利用することが知られている。
核酸は、他の核酸配列と機能的な関係にあるときに「作用可能に結合し」ている。例えば、プレ配列あるいは分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に参画するプレタンパク質として発現されているなら、そのポリペプチドのDNAに作用可能に結合している;プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼすならば、コード配列に作用可能に結合している;又はリボソーム結合部位は、もしそれが翻訳を容易にするような位置にあるなら、コード配列と作用可能に結合している。一般的に、「作用可能に結合している」とは、結合したDNA配列が近接しており、分泌リーダーの場合には近接していて読みフェーズにあることを意味する。しかし、エンハンサーは必ずしも近接している必要はない。結合は簡便な制限部位でのライゲーションにより達成される。そのような部位が存在しない場合は、従来の手法に従って、合成オリゴヌクレオチドアダプターあるいはリンカーが使用される。
遺伝子発現について本明細書で用いられる「発現」という用語は、mRNAを生成するタンパク質をコードする遺伝子の転写、及び遺伝子によりコードされるタンパク質を生成するmRNAの翻訳を意味する。よって、発現の増大又は低減は、遺伝子の転写の増大又は低減、及び/又は転写によるmRNAの翻訳の増大又は低減を意味する。
【0023】
ハイブリダイゼーション反応の「ストリンジェンシー」は、当業者によって容易に決定され、一般的にプローブ長、洗浄温度、及び塩濃度に依存する経験的な計算である。一般に、プローブが長くなると適切なアニーリングに必要な温度が高くなり、プローブが短くなるとそれに必要な温度は低くなる。ハイブリダイゼーションは、一般的に、相補鎖がその融点より低い環境に存在する場合に、変性DNAの再アニールする能力に依存する。プローブとハイブリダイゼーション配列の間で所望される相同性の程度が高くなればなるほど、用いることができる相対温度が高くなる。その結果、より高い相対温度は、反応条件をよりストリンジェントにすることになり、低い温度はストリンジェントを低下させることになる。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーの更なる詳細及び説明については、Ausubel等, Current Protocols in Molecular Biology(Wiley Interscience Publishers, 1995)を参照のこと。
ここで定義される「ストリンジェント条件」又は「高度のストリンジェンシー条件」は、(1)洗浄に低イオン強度及び高温度を用いる、例えば、50℃で、0.015Mの塩化ナトリウム/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のドデシル硫酸ナトリウム;(2)ハイブリダイゼーション中にホルムアミド等の変性剤を用いる、例えば、42℃で、50%(v/v)ホルムアミドと0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%のポリビニルピロリドン/50mMのpH6.5のリン酸ナトリウムバッファー、及び750mMの塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウム;又は(3)42℃で、50%ホルムアミド、5×SSC(0.75MのNaCl、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%のピロリン酸ナトリウム、5×デンハード液、超音波処理サケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、及び10%の硫酸デキストラン溶液中で終夜ハイブリダイゼーション、42℃で、0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中にて10分間の洗浄、ついで55℃で、EDTAを含む0.1×SSCからなる10分間の高ストリンジェンシー洗浄を用いるものによって同定される。
「中程度のストリンジェント条件」は、Sambrook等, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (New York: Cold Spring Harbor Press, 1989)に記載されているように同定され、上記のストリンジェントより低い洗浄溶液及びハイブリダイゼーション条件(例えば、温度、イオン強度及び%SDS)の使用を含む。中程度のストリンジェント条件は、20%ホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハード液、10%硫酸デキストラン、及び20mg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中にて37℃での終夜インキュベーション、次いで1×SSC中にて約37−50℃でのフィルターの洗浄といった条件である。当業者であれば、プローブ長などの因子に適合させる必要に応じて、どのようにして温度、イオン強度等を調節するかを認識する。
【0024】
「エピトープタグ」なる用語は、ここで用いられるときは、「タグポリペプチド」と融合したLY6ポリペプチド又はLY6ポリペプチド結合剤を含んでなるキメラポリペプチドを意味する。タグポリペプチドは、その抗体が産生され得るエピトープを提供するのに十分な残基を有し、その長さは融合するポリペプチドの活性を阻害しないよう充分に短い。また、タグポリペプチドは、好ましくはそのような抗体が他のエピトープと実質的に交差反応をしないように十分に独特である。適切なタグポリペプチドは、一般に、少なくとも6のアミノ酸残基、通常は約8〜50のアミノ酸残基(好ましくは、約10〜20の残基)を有する。
ここでの目的に対する「活性な」又は「活性」とは、天然又は天然に生じるポリペプチドの生物学的及び/又は免疫学的活性を保持するポリペプチドの形態を意味し、その中で、「生物学的」活性とは、天然又は天然発生ポリペプチドが保持する抗原性エピトープに対する抗体の生成を誘発する能力以外の、天然又は天然発生ポリペプチドによって引き起こされる生物機能(阻害又は刺激)を意味し、「免疫学的」活性とは、天然又は天然発生ポリペプチドが保持する抗原性エピトープに対する抗体の生成を誘発する能力を意味する。本明細書において使用される、活性なポリペプチドとは、IBDに罹患していない同様の組織上での発現と比較した場合、定性的又は定量的観点からIBD組織に異なって発現する抗原のことである。
【0025】
「アンタゴニスト」なる用語は最も広い意味で用いられ、そしてここに開示した天然ポリペプチドの生物学的活性を部分的又は完全にブロック、阻害、又は中和する任意の分子が含まれる。適切なアンタゴニスト分子には、特にアゴニスト又はアンタゴニスト抗体又は抗体断片、断片、又は天然ポリペプチドのアミノ酸配列変異体、ペプチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、小有機分子等が含まれる。アンタゴニストを同定する方法は、それを発現する細胞を含む当該ポリペプチドと候補アゴニスト又はアンタゴニスト分子を接触させ、そして通常は当該ポリペプチドに関連している一又は複数の生物学的活性の検出可能な変化を測定することが含まれ得る。
「治療する」又は「治療」又は「緩和」とは、治療上の処置及び予防的療法又は防護的療法の双方を称し、その目的は、疾病の進行を防ぐか又は衰え(小さく)させることである。治療はIBDの進行の改善も意味する。
「診断する」とは、IBD、UC及び/又はクローン病を含むがこれらに限定されない疾病を区別する特徴を同定する又は決定する過程を指す。診断の過程は、重症度又は疾病の進行、並びに部位(例えば、消化管内において、又は消化管に沿って、炎症及び/又は遺伝子発現の変化が見つかった位置)に基づく段階又は腫瘍分類として表現されることがある。
【0026】
診断を必要とする患者には、既に異常なLY6発現を有している患者、並びにLY6を異常発現しやすい患者又はLY6の異常発現の予防が必要な患者が含まれる。従って、本発明の一態様は、IBDの治療のための治療薬を用いて治療した哺乳動物における治療薬応答の検出であり、本方法は、コントロールと比較した場合の試験哺乳動物の胃腸組織におけるLY6発現を決定することと、LY6発現レベルが正常なコントロールの発現レベルと有意に異なっていないことを決定することを含む。一実施態様では、治療薬を用いて治療した哺乳動物のLY6の発現のレベルが異なるとき(発現が正常なコントロールに近い、つまり、LY6の発現レベルが、治療前のLY6発現レベルより低いとき)に、治療的応答を決定する。
疾患における成功裏の治療及び改善を評価することに関する上記のパラメータは、医師にとってよく知られている日常的手法によって容易に測定が可能である。IBDの治療では、有効性は、例えば、病気の進行までの時間(TTP)の算定及び/又は反応速度(RR)を確かめることによって測定できる。生検を採取して、遺伝子発現を評価し、患者由来の胃腸組織の病理組織学を観察することができる。予後予測、及び/又は診断の過程に関して本明細書に開示される本発明は、LY6発現の上方制御の測定及び評価に関する。
【0027】
IBDの治療、症状の緩和又は診断のための「哺乳動物」又は「哺乳類の患者」とは、哺乳動物に分類される任意の動物を意味し、ヒト、家畜用及び農場用動物、動物園、スポーツ、又はペット動物、例えばイヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギ、フェレットなどを含む。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
一又は複数の更なる治療薬と「組み合わせた」投与とは、同時(同時期)及び任意の順序での連続した投与を含む。
ここで用いられる「担体」は、製薬的に許容されうる担体、賦形剤、又は安定化剤を含み、用いられる服用量及び濃度でそれらに曝露される細胞又は哺乳動物に対して非毒性である。生理学的に許容されうる担体は、水性pH緩衝溶液であることが多い。生理学的に許容されうる担体の例は、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸塩のバッファー;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン;疎水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジン;グルコース、マンノース又はデキストランを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;マンニトール又はソルビトール等の糖アルコール;ナトリウム等の塩形成対イオン;及び/又は非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN(登録商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICS(登録商標)を含む。
【0028】
「固相」又は「固体支持体」とは、ポリペプチド、核酸、抗体又はLY6結合剤が接着又は付着できる非水性マトリクスを意味する。ここに包含される固相の例は、部分的又は全体的にガラス(例えば、径の調整されたガラス)、ポリサッカリド(例えばアガロース)、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコール及びシリコーンで形成されたものを含む。或る実施態様では、前後関係に応じて、固相はアッセイ用プレートのウェル;その他では精製用カラム(例えばアフィニティークロマトグラフィーカラム)を含むことができる。また、この用語は、米国特許第4275149号に記載されたような別々の粒子の不連続な固相も含む。
「リポソーム」は、哺乳動物への薬物輸送に有用な、脂質、リン脂質及び/又は界面活性剤を含む種々のタイプの小胞体である。リポソームの成分は、通常は細胞膜の脂質配向に類似した2層構造に配列される。
ここで定義されている「小」分子又は「小」有機分子とは、約500ダルトン未満の分子量である。
【0029】
アンタゴニスト剤の「有効量」とは、限定するものではないが、遺伝子又はそれにコードされるタンパク質の機能を完全に又は部分的に阻害するなどの生理的効果をもたらすために十分な量のことである。「有効量」は、この目的に関連して、経験的及び常套的に決定することができる。
「治療的有効量」という用語は、患者又は哺乳動物の疾患又は疾病を「治療」するのに効果的なアンタゴニスト又は他の薬剤を指す。IBDの場合、治療的有効量の薬はLY6の異常発現を生理的に正常なレベルに回復させる、胃腸の炎症を減じる、胃腸の病変の数を減じる、及び/又はIBD、UC及び/又はCDに関連する一又は複数の症状をある程度まで緩和する。「治療する」のここでの定義を参照せよ。
アンタゴニストの「増殖阻害量」は、細胞、特に腫瘍、例えば癌細胞の増殖をインビトロ又はインビボで阻害できる量である。腫瘍性細胞増殖を阻害するために、そのような量は経験的及び常套的な形で決定することができる。
アンタゴニストの「細胞障害性量」は、細胞、特に増殖性細胞、例えば癌細胞をインビトロ又はインビボで破壊できる量である。腫瘍性細胞増殖の阻害の目的のため、経験的及び常套的な形で決定することができる。
【0030】
「抗体」という用語は最も広い意味において使用され、例えば、抗LY6モノクローナル抗体(アンタゴニスト及び中和抗体)、多エピトープ特異性を有する抗LY6抗体成分、ポリクローナル抗体、一本鎖抗LY6抗体、多特異性抗体(例えば、二重特異性)及び所望する生物学的又は免疫学的活性を示す限りは上に列挙した抗体の全ての抗原結合断片(下記参照)を含む。「免疫グロブリン」(Ig)という用語は、ここでの抗体と相互に置き換え可能に用いられる。
「単離された抗体」とは、その自然環境の成分から同定され分離され及び/又は回収されたものを意味する。その自然環境の汚染成分とは、抗体の診断又は治療への使用を妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様では、抗体は、(1)ローリー(Lowry)法によって定量して95重量%以上の、最も好ましくは99重量%以上の抗体まで、(2)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15のN末端あるいは内部アミノ酸配列の残基を得るのに充分な程度まで、あるいは(3)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた還元又は非還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性まで精製される。単離された抗体には、組換え体細胞内のインサイツの抗体が含まれるが、これは抗体の自然環境の少なくとも一つの成分が存在しないからである。しかしながら、通常は、単離された抗体は少なくとも一つの精製工程により調製される。
【0031】
基本的な4-鎖抗体ユニットは2つの同一の軽(L)鎖と2つの同一の重(H)鎖から構成されるヘテロ四量体の糖タンパクである(IgM抗体は、基本的なヘテロ四量体ユニットとそれに付随するJ鎖と称される付加的なポリペプチドの5つからなり、よって10の抗原結合部位を有するが、分泌されたIgA抗体は重合して、基本的4-鎖ユニットとそれ付随するJ鎖のうち2-5つを含む多価集合を形成可能である)。IgGの場合、4-鎖ユニットは一般的に約150000ダルトンである。それぞれのL鎖は1つの共有ジスルフィド結合によってH鎖に結合するが、2つのH鎖はH鎖のアイソタイプに応じて一又は複数のジスルフィド結合により互いに結合している。それぞれのH及びL鎖はまた規則的な間隔を持った鎖内ジスルフィド結合を持つ。それぞれのH鎖は、α及びγ鎖の各々に対しては3つの定常ドメイン(C
H)が、μ及びεアイソタイプに対しては4つのC
Hドメインが続く可変ドメイン(V
H)をN末端に有する。それぞれのL鎖は、その他端に定常ドメイン(C
L)が続く可変ドメイン(V
L)をN末端に有する。V
LはV
Hと整列し、C
Lは重鎖の第一定常ドメイン(C
H1)と整列している。特定のアミノ酸残基が、軽鎖及び重鎖可変ドメイン間の界面を形成すると考えられている。V
LとV
Hは共同して対になって、単一の抗原結合部位を形成する。異なるクラスの抗体の構造及び特性は、例えばBasic and Clinical Immunology, 8版, Daniel P. Stites, Abba I. Terr and Tristram G. Parslow(編), Appleton & Lange, Norwalk, CT, 1994, 71頁及び6章を参照のこと。
任意の脊椎動物種からのL鎖には、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ及びラムダと呼ばれる2つの明確に区別される型の一つを割り当てることができる。また、その重鎖の定常ドメイン(C
H)のアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンには異なったクラス又はアイソタイプを割り当てることができる。IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMという免疫グロブリンの5つの主要なクラスがあり、それぞれα、δ、ε、γ及びμと呼ばれる重鎖を有する。さらにγ及びαのクラスは、C
H配列及び機能等の比較的小さな差異に基づいてサブクラスに分割され、例えば、ヒトにおいては次のサブクラス:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2が発現する。
【0032】
「可変」という用語は、可変ドメインのある部分が抗体の間で配列が広範囲に異なることを意味する。Vドメインは抗原結合性を媒介し、その特定の抗原に対する特定の抗体の特異性を定める。しかし、可変性は可変ドメインの概ね110-アミノ酸スパンを通して均等には分布されていない。代わりに、V領域は、それぞれ9−12アミノ酸長である「高頻度可変領域」と称される極度の可変性を有するより短い領域によって分離された15−30アミノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれる比較的不変の伸展からなる。天然重鎖及び軽鎖の可変ドメイン各々は、大きなβ-シート配置をとり、3つの高頻度可変領域により接続された4つのFR領域を含み、それはループ状の接続を形成し、β-シート構造の一部を形成することもある。各鎖の高頻度可変領域はFRにより他の鎖からの高頻度可変領域とともに極近傍に保持され、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ED. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))。定常ドメインは抗体の抗原への結合に直接は関係ないが、種々のエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞障害(ADCC)における抗体の寄与を示す。
ここで使用されるところの「高頻度可変領域」なる用語は、抗原結合に寄与する抗体のアミノ酸残基を意味する。高頻度可変領域は一般には「相補性決定領域」又は「CDR」からのアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメインのKabat残基24−34(L1)、50−56(L2)及び89−97(L3)周辺、及び重鎖可変ドメインのKabat残基31−35B(H1)、50−65(H2)及び95−102(H3)周辺;Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest,5版, Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD.(1991))及び/又は「高頻度可変ループ」からの残基(例えば、軽鎖可変ドメインのChothia残基26−32(L1)、50−52(L2)及び91−96(L3)周辺及び重鎖可変ドメインの残基26−32(H1)、52A−55(H2)及び96−101(H3);Chothia及びLesk J.Mol.Biol. 196:901-917 (1987))を含む。
【0033】
ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味する、すなわち、集団に含まれる個々の抗体が、一般に少量で存在する突然変異等の、モノクローナル抗体の産生の間に生じる可能性のある突然変異を除いて、同一である及び/又は同じエピトープ(一又は複数)に結合する。このようなモノクローナル抗体は、一般に、標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体を包含しており、この場合の標的に結合するポリペプチドは、複数のポリペプチド配列から単一の標的結合ポリペプチド配列を選択することを含むプロセスによって得られたものである。例えば、このような選択プロセスは、複数のクローン、例えばハイブリドーマクローン、ファージクローン又は組換えDNAクローンのプールからの、独特のクローンの選択であり得る。選択された標的結合配列を更に変化させることにより、例えば標的に対する親和性を向上させる、標的結合配列をヒト化する、細胞培養液中でのその産生を向上させる、インビボでのその免疫原性を低減する、多特異性抗体を作製する等が可能であること、並びに、変化させた標的結合配列を含む抗体も本発明のモノクローナル抗体であることを理解されたい。一般に異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物と比べて、モノクローナル抗体調製物の内の各モノクローナル抗体は、1の抗原上の単一の決定基に対するものである。その特異性に加えて、モノクローナル抗体調製物は、通常他の免疫グロブリンによって汚染されない点で有利である。「モノクローナル」との修飾詞は、ほぼ均一な抗体の集団から得られるという抗体の特徴を示し、抗体を何か特定の方法で生成しなければならないことを意味するものではない。例えば、本発明において使用されるモノクローナル抗体は様々な技術によって作ることができ、それらの技術には例えばハイブリドーマ法(例えば、Kohler等, Nature, 256:495 (1975);Harlow等, Antibodies: A loboratory Manual, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 第2版 1988);Hammerling等: Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563-681, (Elsevier, N.Y., 1981))、組換えDNA法(例えば、米国特許第4816567号参照)、ファージディスプレイ法(例えば、Clarkson等, Nature, 352:624-628 (1991);Marks等, J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991);Sidhu等, J. Mol. Biol. 338(2):299-310 (2004);Lee等, J. Mol. Biol. 340(5):1073-1093 (2004);Fellouse, Proc. Nat. Acad. Sci. USA 101(34):12467-12472 (2004);及びLee等, J. Immunol. Methods 284(1-2):119-132 (2004)参照)、及びヒト免疫グロブリン座位又はヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子の一部又は全部を有する動物においてヒト又はヒト様抗体を産生する技術(例えば、国際公開第1998/24893号;国際公開第1996/34096号;国際公開第1996/33735号;国際公開第1991/10741号;Jackobovits等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:2551 (1993);Jakobovits等, Nature, 362:255-258 (1993);Bruggemann等, Year in Immuno., 7:33 (1993);米国特許第5545806号;同第5569825号;同第5591669号(全てGenPharm);同第5545807号;国際公開第1997/17852号;米国特許第5545807号;同第5545806号;同第5569825号;同第5625126号;同第5633425号;及び同第5661016号;Marks等, Bio/Technology, 10:779-783 (1992); Longerg等, Nature, 368:856-859 (1994); Morrison, Nature, 368:812-813 (1994); Fishwild等, Nature Biotechnology, 14:845-851 (1996); Neuberger, Nature Biotechnology, 14:826 (1996); 及びLongerg及びHuszar, Intern. Rev. Immunol., 13:65-93 (1995))が含まれる。
【0034】
「キメラ」抗体(免疫グロブリン)は、特定の種由来の抗体、あるいは特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか又は相同である重鎖及び/又は軽鎖の一部を有し、鎖の残りの部分が他の種由来の抗体、あるいは他の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか又は相同であり、並びにそれが所望の生物的活性を有する限りこのような抗体の断片を特に含む(米国特許第4816567号;及びMorrison等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855(1984))。ここで使用されるヒト化抗体は、キメラ抗体の1サブセットである。
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」形とは、非ヒト免疫グロブリンから得られた最小配列を含むキメラ抗体である。大部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域の残基が、マウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類のような所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)の高頻度可変領域の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント又はアクセプター抗体)である。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は、結合親和性等の抗体の特性をさらに洗練するために行われる。一般的に、ヒト化抗体は、全て又はほとんど全ての高頻度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに一致し、全て又はほとんど全てのFR領域がヒト免疫グロブリン配列のものであるが、FR領域が結合親和性を向上させる1以上のアミノ酸の置換を含み得る、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。FRにおけるアミノ酸の置換の数は、一般に重鎖において6以内であり、軽鎖において3以内である。ヒト化抗体は、状況に応じて免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含む。さらなる詳細は、Jones等, Nature 321, 522-525(1986);Riechmann等, Nature 332, 323-329(1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2, 593-596(1992)を参照のこと。
【0035】
「抗体断片」は、無傷の抗体の一部、好ましくは無傷の抗体の抗原結合又は可変領域を含む。抗体断片の例は、Fab、Fab’、F(ab')
2、及びFv断片;ダイアボディ(diabodies);直鎖状抗体(米国特許第5641870号、実施例2;Zapata等, Protein Eng. 8(10): 1057-1062 [1995]);単鎖抗体分子;及び抗体断片から形成された多重特異性抗体を含む。
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗体結合断片と、容易に結晶化する能力を反映して命名された残留「Fc」断片を産生する。Fab断片は全長L鎖とH鎖の可変領域ドメイン(V
H)、及び一つの重鎖の第一定常ドメイン(C
H1)からなる。各Fab断片は抗原結合性に関して一価である、すなわち単一の抗原-結合部位を有する。抗体のペプシン処理により、単一の大きなF(ab')
2断片が生じ、これは2価の抗原結合部位を持つ2つのジスルフィド結合されたFab断片にほぼ対応し、抗原を交差結合させることができるものである。Fab'断片は、抗体ヒンジ領域からの一又は複数のシステインを含むC
H1ドメインのカルボキシ末端に幾つかの残基が付加されていることによりFab断片と相違する。Fab'-SHは、ここでは定常ドメインのシステイン残基(類)が遊離のチオール基を持つFab'を表す。F(ab')
2抗体断片は、通常はFab'断片の対として生成され、それらの間にヒンジシステインを有する。抗体断片の他の化学的結合も知られている。
Fc断片はジスルフィドにより一緒に保持されている双方のH鎖のカルボキシ末端部位を含む。抗体のエフェクター機能は、Fc領域の配列により決定され、その領域は、所定の型の細胞に見出されるFcレセプター(FcR)によって認識される部位である。
【0036】
「Fv」は、完全な抗原-認識及び-結合部位を含む最小の抗体断片である。この断片は、密接に非共有結合した1本の重鎖と1本の軽鎖の可変領域の二量体からなる。これら2つのドメインの折り畳みから、抗原結合のためのアミノ酸残基に寄与し、抗体に対する抗原結合特異性を付与する6つの高頻度可変ループ(H及びL鎖から、それぞれ3つのループ)が生じる。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的な3つのCDRのみを含んでなるFvの半分)でさえ、結合部位全体よりは低い親和性であるが、抗原を認識し結合する能力を持つ。
「sFv」又は「scFv」とも略称される「単鎖Fv」は、単一のポリペプチド鎖内に結合したV
H及びV
L抗体ドメインを含む抗体断片である。好ましくは、sFvポリペプチドはV
H及びV
Lドメイン間にポリペプチドリンカーをさらに含み、それはsFVが抗原結合に望まれる構造を形成するのを可能にする。sFvの概説については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg及びMoore編, Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994);Borrebaeck 1995, 以下を参照のこと。
【0037】
ここで使用される「LY6結合ポリペプチド」は、LY6ポリペプチド、リガンド又はシグナル伝達成分のそれぞれ、又はLY6結合タンパク質又はその断片に、好ましくは特異的に結合するオリゴペプチドである。このようなオリゴペプチドは、既知のオリゴペプチド合成方法を使用して化学的に合成することができるか、又は組換え技術を用いて調製及び精製することができる。このようなオリゴペプチドは、通常、少なくとも約5アミノ酸長であるか、或いは少なくとも約6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、又は100アミノ酸長であるか、又はそれ以上である。このうなオリゴペプチドは、既知の技術を用いることにより、過度に実験を行うことなく同定することができる。これに関し、ポリペプチド標的に対する特異的結合能を有するオリゴペプチドについてオリゴペプチドのライブラリをスクリーニングする技術は当技術分野において既知である(例えば、米国特許第5556762号、同第5750373号、同第4708871号、同第4833092号、同第5223409号、同第5403484号、同第5571689号、同第5663143号、国際公開第84/03506号、同第84/03564号、Geysen等、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 81:3998-4002 (1984); Geysen等、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 82:178-182 (1985); Geysen等、in Synthetic Peptides as Antigens, 130-149 (1986); Geysen等、J. Immunol. Meth., 102:259-274 (1987); Schoofs等、J. Immunol., 140:611-616 (1988), Cwirla, S. E.等、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:6378 (1990); Lowman, H.B. 等、Biochemistry, 30:10832 (1991); Clackson, T. 等、Nature, 352: 624 (1991); Marks, J. D.ら、 J. Mol. Biol., 222:581 (1991); Kang, A.S. 等、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:8363 (1991), 及びSmith, G. P., Current Opin. Biotechnol., 2:668 (1991)を参照)。
【0038】
対象の標的抗原、例えばLY6に「結合する」LY6アンタゴニスト(例えば、抗体、ポリペプチド、オリゴペプチド又は小分子)は、標的に対する結合の親和性が十分であることにより、抗原を発現する細胞又は組織の標的化において、有用な診断、予後予測及び/又は治療薬となり、且つ他のタンパク質と交差反応しないものである。望ましくないマーカーポリペプチドへの結合範囲は、特定の所望の標的に対する結合の約10%未満であり、これは蛍光標識細胞分取(FACS)分析又は放射性免疫沈降法(RIA)などの一般的な技術により測定可能である。
更に、特定のLY6ポリペプチド又は特定のLY6ポリペプチド標的上のエピトープ「(に対する)特異的結合」、「に特異的に結合する」又は「に特異的である」という表現は、非特異的相互作用とは測定可能に異なる結合を意味する。特定の結合は、例えば、コントロール分子と比較したある分子の結合を決定することにより測定することができ、この場合コントロール分子は結合活性を有さない同じ構造の分子である。例えば、特異的結合は、標的と類似のコントロール分子との競合、例えば、標識しない標的の過多により定量することができる。この場合、標識した標的のプローブに対する結合が、標識していない標的の過多により競合的に阻害されると、特異的結合が示唆される。一実施形態では、このような表現は、1の分子が、特定のポリペプチド又は特定のポリペプチド上のエピトープに対し、他のポリペプチド又はポリペプチドのエピトープに殆ど結合することなく結合するような結合を意味する。或いは、このような表現は、少なくとも約10
−4M、10
−5M、10
−6M、10
−7M、10
−8M、10
−9M、10
−10M、10
−11M、10
−12M以上の標的に対してKdを有する分子によって表わすことができる。
【0039】
胃腸細胞又は組織は、同じ組織型の正常な胃腸細胞又は組織と比較して、当該細胞又は組織が細胞中のLY6をコードする核酸の増加を示した場合、或いは当該細胞又は組織がLY6タンパク質を過剰生成及び分泌した場合、LY6ポリペプチドを「過剰発現する」。このような過剰発現は、遺伝子増幅により、又は転写又は翻訳を増加させることにより引き起こされてもよい。細胞表面におけるレベルを増大又は低下させるか、又は分泌されたタンパク質のレベルを増大又は低下させる発現レベルの変化を測定する様々な診断アッセイ又は予後予測アッセイが既知であり、それには抗LY6抗体を用いた免疫組織化学アッセイ、FACS分析等が含まれる。あるいは、細胞におけるLY6ポリペプチドコード化核酸又はmRNAのレベルを、例えばLY6コード化核酸又はその補体に対応する核酸に基づくプローブを用いた蛍光インサイツハイブリダイゼーション(FISH;1998年10月公開のWO98/45479参照)、サザンブロット法、ノーザンブロット法、又はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法、例えばリアルタイム定量PCR(RT−PCR)により測定してもよい。あるいは、LY6ポリペプチドの過剰発現は、血清のような生体液中の脱落抗原を測定することにより測定される(例えば、1990年6月12日公開の米国特許第4,933,294号;1991年4月18日公開のWO91/05264;1995年3月28日公開の米国特許第5,401,638号;及びSias等, J. Immunol. Methods 132: 73-80(1990)参照)。前記アッセイのみならず、技術熟練者であれば様々なインビボアッセイを利用できる。例えば、検知できるラベル、例えば放射性同位体で任意に標識された抗体に患者の体内の細胞を曝露してもよく、患者の細胞への抗体の結合は、例えば放射活性の外側スキャンニングにより、又は抗体に曝露された後で患者から得られたバイオプシーを分析することにより評価される。
【0040】
ここで用いられているように、「イムノアドヘシン」という用語は、免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能を持つ異種タンパク質(「アドヘシン」)の結合特異性を付与した抗体様分子を指す。構造的には、イムノアドヘシンは抗体の抗原認識及び結合部位以外の所望の結合特異性を持つアミノ酸配列(即ち「異種」)と免疫グロブリン定常ドメイン配列との融合物である。イムノアドヘシン分子のアドへシン部分は、典型的には少なくともレセプター又はリガンドの結合部位を含む近接アミノ酸配列を含む。イムノアドヘシンの免疫グロブリン定常ドメイン配列は、IgG-1、IgG-2、IgG-3、又はIgG-4サブタイプ、IgA(IgA-1及びIgA-2を含む)、IgE、IgD又はIgMなどの任意の免疫グロブリンから得ることができる。
「標識」という語は、ここで用いられる場合、「標識化」抗体、オリゴペプチド又は他の有機分子を作製するために、抗体、オリゴペプチド又は他の有機分子に直接的又は間接的に結合させる検出可能な化合物又は組成物を意味する。標識はそれ自身によって検出可能でもよく(例えば、放射性同位体標識又は蛍光標識)、あるいは、酵素標識の場合には、検出可能な基質化合物又は組成物の化学的変換を触媒してもよい。
【0041】
ここで用いられる「細胞障害性剤」という用語は、細胞の機能を阻害又は阻止し及び/又は細胞破壊を生ずる物質を指す。この用語は、放射性同位体(例えば、At
211、I
131、I
125、Y
90、Re
186、Re
188、Sm
153、Bi
212、P
32及びLuの放射性同位体)、化学治療薬、酵素及びその断片、例えば核溶解性酵素、抗生物質、及び毒素、例えばその断片及び/又は変異体を含む小分子毒素又は細菌、糸状菌、植物又は動物起源の酵素的に活性な毒素、そして下記に開示する種々の抗腫瘍又は抗癌剤を含むように意図されている。他の細胞障害性剤が下記に記載されている。殺腫瘍性剤は、腫瘍細胞の破壊を引き起こす。
【0042】
「化学療法剤」又は「治療薬」は、疾病又は疾患の治療に有用な化学的化合物である。IBDの治療のための化学療法剤又は治療薬の例には、限定されるものではないが、抗炎症剤であるスフファサラジン及び5−アミノサリチル酸(5−ASA)が含まれる。メトロイダゾール(metroidazole)及びシプロフロキサンはスルファサラジンと同様の効果を有し、肛門周囲の疾病の治療に特に有用であるように思われる。重症度のさらに高い症例では、活性な増悪の治療に副腎皮質ステロイドが効果的であり、これは寛解を維持することもできる。アザチオプリン、6−メルカプトプリン、及びメトトレキサートも、副腎皮質ステロイドの慢性投与を必要とする患者に効果を示した。止痢薬も一部の患者において症状を緩和することができる。栄養療法又は成分栄養は患者の栄養状態を改善することができ、急性疾患の症状に改善を導くことができる。二次的な小腸の細菌の異常増殖の治療及び化膿性の合併症の治療に抗生物質が使用される。IBDの化学療法剤はさらに、次のような生物学的製剤及びその他薬剤、即ち抗β7抗体(例えば、国際公開第2006026759号参照)、抗α4抗体(例えばANTEGEN(登録商標))、抗TNF抗体(REMICADE(登録商標))又は限定されないが5−ASA化合物であるASACOL(登録商標)、PENTASA
TM.、ROWASA
TM、COLAZAL
TM、及びPurinetholのようなその他化合物及びプレドニゾンのようなステロイドを含む非タンパク質化合物を含む。癌の治療のための化学療法剤の例には、ヒドロキシウレアタキサン(例えばパクリタキセル及びドセタキセル)及び/又はアントラサイクリン抗生物質;チオテパ及びシクロスホスファミド(CYTOXAN(登録商標))のようなアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンのようなスルホン酸アルキル類;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa)のようなアジリジン類;アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethiylenethiophosphoramide)及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類及びメチラメラミン類;アセトゲニン(acetogenins)(特にブラタシン(bullatacin)及びブラタシノン(bullatacinone));δ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));β-ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトセシン(合成類似体トポテカン(topotecan)(HYCAMTIN(登録商標))、CPT-11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン(acetylcamptothecin)、スコポレクチン(scopolectin)、及び9-アミノカンプトテシン(9-aminocamptothecin)を含む);ブリオスタチン;カリスタチン(callystatin);CC-1065(そのアドゼレシン(adozelesin)、カルゼレシン(carzelesin)及びバイゼレシン(bizelesin)合成類似体を含む);ポドフィリン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(cryptophycin)(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン(dolastatin);デュオカルマイシン(duocarmycin )(合成類似体、KW-2189及びCB1-TM1を含む);エレトロビン(eleutherobin);パンクラチスタチン(pancratistatin);サルコディクチン(sarcodictyin);スポンジスタチン(spongistatin);クロランブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、チョロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタード等のナイトロジェンマスタード;ニトロスレアス(nitrosureas)、例えばカルムスチン(carmustine)、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン(lomustine)、ニムスチン、ラニムスチン;エネジイン(enediyne) 抗生物質等の抗生物質(例えば、カリケアマイシン(calicheamicin)、特にカリケアマイシンガンマ1I及びカリケアマイシンオメガI1、例えば、Agnew Chem Intl. Ed. Engl., 33:183-186(1994)を参照のこと;ダイネミシンA(dynemicinA)を含むダイネミシン(dynemicin);エスペラマイシン(esperamicin);同様にネオカルチノスタチン発光団及び関連色素蛋白エネジイン(enediyne) 抗生物質発光団)、アクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン(bleomycins)、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン(carminomycin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン (モルフォリノ−ドキソルビシン、シアノモルフォリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシンCなどのマイトマイシン(mitomycins)、マイコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin);メトトレキセート及び5-フルオロウラシル(5-FU)などの抗-代謝産物;デノプテリン(denopterin)、メトトレキセート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate)のような葉酸類似体;フルダラビン(fludarabine)、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンのようなプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6-アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、フロキシウリジン(floxuridine)のようなピリミジン類似体;カルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン(testolactone)のようなアンドロゲン類;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンのような抗副腎剤;フロリン酸(frolinic acid)のような葉酸リプレニッシャー(replenisher);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル(eniluracil);アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate);エポチロン(epothilone);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン(lonidainine);メイタンシン(maytansine)及びアンサマイトシン(ansamitocin)のようなメイタンシノイド(maytansinoid);ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダンモール(mopidanmol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン(losoxantrone);2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖類複合体(JHS Natural Products, Eugene, OR);ラゾキサン(razoxane);リゾキシン(rhizoxin);シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テニュアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジコン(triaziquone);2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(trichothecenes)(特に、T-2トキシン、ベラキュリンA(verracurin A)、ロリデンA(roridin A)及びアングイデン(anguidine));ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール;ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);チオテパ;タキソイド、例えばタキソール(登録商標)パクリタキセル、(Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, NJ)、ABRAXANE
TM クレモフォール(Cremophor)を含まない、アルブミン設計のナノ粒子形状のパクリタキセル(American Pharmaceutical Partners, Schaumberg, Illinois)及びタキソテア(登録商標)ドキセタキセル、(Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロランブシル;GEMZAR(登録商標)ゲンシタビン(gemcitabine);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;シスプラチン及びカルボプラチンのようなプラチナ類似体;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標));プラチナ;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標));オキサリプラチン;ロイコボリン;NAVELBINE(登録商標)ビノレルビン;ノバントロン(novantrone);エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロナート(ibandronate);トポイソメラーゼインヒビターRFS2000;ジフルオロメチロールニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド類;カペシタビン(capecitabine)(XELODA(登録商標));上述したものの製薬的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体;並びに、上記のうちの2以上の組合せ、例えば、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン及びプレドニソロンの併用治療の略記号であるCHOP、及び5-FUとロイコボリン(leucovovin)と組み合わされるオキサリプラチン(ELOXATINTM)による治療投薬計画の略記号であるFOLFOXが含まれる。
【0043】
「サイトカイン」なる用語は、一つの細胞集団から放出され、他の細胞に細胞間メディエータとして作用するタンパク質の一般用語である。このようなサイトカインの例は、リンホカイン、モノカイン、及び伝統的なポリペプチドホルモンである。サイトカインに含まれるのは、成長ホルモン、例えばヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン、及びウシ成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インシュリン;プロインシュリン;レラキシン;プロレラキシン;糖タンパク質ホルモン、例えば濾胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、及び黄体化ホルモン(LH);肝臓成長因子;線維芽成長因子;プロラクチン;胎盤ラクトゲン;腫瘍壊死因子-α及び-β;ミューラー阻害因子;マウス生殖腺刺激ホルモン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);NGF-β等の神経成長因子;血小板成長因子;TGF-α及びTGF-β等のトランスフォーミング成長因子(TGFs);インシュリン様成長因子-I及びII;エリスロポエチン(EPO);骨誘発因子;インターフェロン-α、-β、及び-γ等のインターフェロン;コロニー刺激因子(CSFs)、例えばマクロファージ-CSF(M-CSF);顆粒球-マクロファージ-CSF(GM-CSF);及び顆粒球-CSF(G-CSF);インターロイキン(ILs)、例えばIL-1、IL-1a、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-11、IL-12;腫瘍壊死因子、例えばTNF-α及びTNF-β;及びLIF及びキットリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子である。ここで用いられる際、用語サイトカインには、天然供給源から、又は組換え細胞培養からのタンパク質、及び天然配列サイトカインの生物学的に活性な等価物が含まれる。
【0044】
「パッケージ挿入物」という用語は、効能、用途、服用量、投与、配合禁忌及び/又はその治療薬の用途に関する警告についての情報を含む、治療薬の商業的包装を慣習的に含めた指示書を指す。
「上皮」及び「上皮性」とは、内側及び外側の体表面の細胞の被覆(皮膚、粘膜、漿液)を意味し、これには、それらに由来する腺及びその他の構造、例えば角膜、食道、上皮、及び毛包上皮の細胞が含まれる。他の例示的な上皮組織には、嗅上皮−鼻腔の嗅覚領域に並ぶ、嗅覚のレセプターを含む偽重層上皮;腺性上皮−分泌細胞の扁平上皮からなる上皮;扁平上皮−一又は複数の細胞層からなり、その最上層が平坦な鱗状又は皿状の細胞からなる上皮が含まれる。上皮は、収縮及び膨張による大きな機械的変化を受ける中空の器官に並んで見られることを特徴とするような移行上皮も意味することができ、それは例えば、重層化した扁平上皮と円柱状上皮の間の移行を示す組織である。
細胞の「増殖状態」とは、細胞の増殖の速度及び/又は細胞の分化の状態を指す。「変化した増殖状態」とは、異常な速度での増殖を特徴とする増殖状態であり、例えば正常細胞と比較して増殖の増大又は低減を示す細胞である。
【0045】
「LY6」又は「LY6ポリペプチド」という用語は、ここでは、哺乳類のLY6遺伝子ファミリーの哺乳類の相同体を総称的に意味する。「LY6」という用語は、タンパク質又は核酸を表わすために使用することができる。
ここで使用される「過剰発現」という用語は、ある組織における、同組織の正常な発現レベルより高い細胞遺伝子の発現レベルを意味する。ここで使用される「低発現」という用語は、ある組織における、同組織の正常な発現レベルより低い細胞遺伝子の発現レベルを意味する。いずれの場合も、過剰発現又は低発現は、本研究の制御された条件下において、正常な発現とは有意に異なる。
「コントロール」は、IBDに罹患していない哺乳動物における基礎又は正常発現或いは活性の測定に使用するために採取される試料を含む。従って、コントロール試料は、多数の手段により、炎症及び/又はIBD、UC或いはCD(標準的な技術により決定される)を発症していない組織又は細胞から;例えばIBDに罹患していない被験者由来の非IBD細胞又は組織;IBD、クローン病、又は潰瘍性大腸炎の疾病に罹患していない被験者から;IBD、CD又はUCの危険が無いと思われる被験者から;或いはそのような被験者から得られた細胞又は細胞株から採取することができる。コントロールは既に確立されている基準も含む。マイクロアレイアッセイを含むmRNAアッセイのようなアッセイのために、コントロールはユニバーサルコントロールとしてもよい。このようなユニバーサルコントロールは、健常組織の混合物、又は限定しないがここに開示されるユニバーサル基準RNAなどの様々な組織から得られる細胞株の混合物から単離された特定のLY6遺伝子のRNA発現情報に関するものである。従って、本発明に従って行われるあらゆる試験又はアッセイは、確立された基準と比較することができ、その都度比較用のコントロール試料を採取する必要はない。
【0048】
本発明の診断方法
さらに、患部組織及び/又は細胞がコントロールと比較してLY6発現の増大を示す疾患を特異的な標的として、IBDの治療薬を使用することができると考えられる。従って、LY6発現の増大の検出を用いて、哺乳動物の胃腸組織におけるCD又はUCなどのIBDを検出すること、及び/又はヒト患者におけるIBD、UC及び/又はCDの改善に有用な化学療法剤を含むIBD治療薬を用いた治療が特に有効な、組織及び疾患を同定することができる。
好ましい実施形態では、遺伝子転写物の直接的な検出により、又は活性のタンパク質レベルの検出により、LY6の発現レベルが検出される。転写物は、LY6 mRNA転写物、それらから合成されたcDNA、又はLY6遺伝子の増殖が存在するDNAへのハイブリダイゼーション又はプローブに主に応じた幅広い技術のいずれかを用いて検出することができる。周知の技術には、ノーザンブロット法、逆転写PCR及び転写物レベルのマイクロアレイ分析が含まれる。LY6タンパク質レベルの検出方法には、ウェスタンブロット法、免疫沈降法、二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動(2D SDS−PAGE−好ましくはLY6タンパク質の位置が決定済みである基準と比較される)、及び質量分析が含まれる。質量分析を一連の精製ステップと連結することにより、特定の試料中における多数の異なるタンパク質レベルのハイスループット同定が可能になる。質量分析及び2D SDS−PAGEは、タンパク質分解現象、ユビキチン化、リン酸化、脂質の変性などを含むタンパク質の転写後変性の同定にも使用することができる。LY6の活性は、基質のDNAに対する結合又は標的プロモーターのインビトロでの転写活性を分析することによっても評価することができる。ゲルシフトアッセイ、DNAフットプリンティングアッセイ及びDNA−タンパク質架橋アッセイはすべて、DNA上のGli結合部位に対する結合能を有するタンパク質の存在を評価するために使用可能な方法である。J Mol. Med 77(6):459-68 (1999); Cell 100(4): 423-34 (2000); Development 127(19): 4923-4301 (2000)。
特定の実施形態では、LY6転写物のレベルを測定し、IBD治療化合物を用いて、コントロールに対するLY6レベルの有意な上昇を示す疾病又は疾患の組織を治療する。従って、LY6の発現レベルは、患者がIBDを発症しているかどうか、及び患者にIBD治療薬を投与するべきかを決定するための有力な診断手段である。
【0049】
本発明の方法に使用される抗体組成物
A.抗LY6抗体
一実施形態では、本発明は抗LY6抗体の用途を提供し、このLY6抗体は、本発明において、UCのような炎症性腸疾患の存在、重症度、及び同疾患の経過の予後予測の決定に使用される治療薬、診断薬及び/又は予後予測薬としての用途を見出しうる。そのような目的に使用可能な抗体の例には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体、及びヘテロコンジュゲート抗体が含まれる。「抗体」という用語はときに、抗原結合断片も含む。抗LY6抗体は、例えば、R&D Systems(ミネソタ州ミネアポリス)から市販されている。抗原としてのLY6に特異的に結合する抗体は、購入可能であるか、又は本発明の方法に使用される抗体及びタンパク質化学の分野において既知の標準的な方法によって調製することができる。LYPD1に対する抗体は、例えば米国特許第7144990号に開示されており、ここに参照したことによりこの特許文献の内容全体をここに包含する。
【0050】
1.ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体は、好ましくは、関連する抗原とアジュバントを一又は複数回皮下(sc)又は腹腔内(ip)注射することにより、動物に産生させる。それは、免疫化されるべき種において免疫原性であるタンパク質に関連する抗原をコンジュゲートさせるために有用である(特に合成ペプチドが使用されるとき)。例えば、抗原は、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、又は大豆トリプシンインヒビターへ、二重官能性又は誘導体形成剤、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介する抱合)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基を介する抱合)、グルタルアルデヒド、及び無水コハク酸、SOCl
2、又はR及びR
1が異なるアルキル基であるR
1N=C=NRを用いてコンジュゲートさせることができる。
動物を、例えばタンパク質又はコンジュゲート100μg又は5μg(それぞれウサギ又はマウスの場合)を完全フロイントアジュバント3容量と併せ、この溶液を複数部位に皮内注射することによって、抗原、免疫原性コンジュゲート、又は誘導体に対して免疫する。1ヶ月後、該動物を、完全フロイントアジュバントに入れた初回量の1/5ないし1/10のペプチド又はコンジュゲートを用いて複数部位に皮下注射することにより、追加免疫する。7ないし14日後に動物を採血し、抗体価について血清を検定する。動物は、力価がプラトーに達するまで追加免疫する。コンジュゲートはまた、タンパク融合として組換え細胞培養中で調製することができる。また、ミョウバンのような凝集化剤が、免疫反応の増強のために好適に使用される。
【0051】
2.モノクローナル抗体
本明細書中に記載の抗原に対するモノクローナル抗体は、Kohler等, Nature, 256:495 (1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法、又は組換えDNA法(米国特許第4816567号)によって作成することができる。
ハイブリドーマ法においては、マウス又はその他の適当な宿主動物、例えばハムスターを上記のように免疫し、免疫化に用いられたタンパク質と特異的に結合する抗体を産生する、又は産生することのできるリンパ球を導き出す。別法として、リンパ球をインビトロで免疫することもできる。免疫化の後、リンパ球を単離し、次いでポリエチレングリコールのような適当な融合剤を用いて骨髄腫細胞株と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成させる(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, 59-103頁(Academic Press, 1986))。
このようにして調製されたハイブリドーマ細胞を、融合していない親の骨髄腫細胞(融合パートナーとも呼ばれる)の増殖又は生存を阻害する一又は複数の物質を好ましくは含む適当な培地に蒔き、増殖させる。例えば、親の骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠失するならば、ハイブリドーマのための選択的培地は、典型的には、HGPRT−欠失細胞の増殖を妨げる物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジンを含有するであろう(HAT培地)。
好ましい融合パートナーの骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベルの発現を支援し、融合していない親細胞に対して選択を行う選択的培地に対して感受性である細胞である。これらの中でも、好ましい骨髄腫株化細胞は、マウス骨髄腫ライン、例えば、ソーク・インスティテュート・セル・ディストリビューション・センター(米国カリフォルニア州サンディエゴ)より入手し得るMOPC-21及びMPC-11マウス腫瘍、及び、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(米国バージニア州マナッサス)より入手し得るSP-2及び誘導体、例えばX63-Ag8-653細胞から誘導されるものである。ヒト骨髄腫及びマウス−ヒトヘテロ骨髄腫株化細胞もまたヒトモノクローナル抗体の産生のために開示されている(Kozbor, J.Immunol., 133:3001 (1984);Brodeur等, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, 51-63頁、(Marcel Dekker, Inc., New York, 1987))。
【0052】
ハイブリドーマ細胞が生育している培地を、抗原に対するモノクローナル抗体の産生について検定する。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降又はインビトロ結合検定、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着検定(ELISA)によって測定する。
例えば、モノクローナル抗体の結合親和性は、Munsonら、Anal. Biochem., 107:220(1980)に記載のスキャッチャード分析によって測定することができる。
所望の特異性、親和性、及び/又は活性な抗体を産生するハイブリドーマ細胞が同定されたら、そのクローンを限界希釈法によりサブクローニングし、標準的な方法により増殖させることができる(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, 59-103頁(Academic Press, 1986))。この目的に対して好適な培地は、例えば、D-MEM又はRPMI-1640培地を包含する。また、このハイブリドーマ細胞は、動物の腹水症腫瘍として、例えばマウスへの細胞の腹腔内注入により、インビボで増殖させることができる。
サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、例えばアフィニティークロマトグラフィー(例えばプロテインA又はプロテインG-セファロースを使用するもの)、又はイオン交換クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析などのような常套的な抗体精製法によって、培地、腹水、又は血清から上手く分離される。
【0053】
モノクローナル抗体をコードするDNAは、常法を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)即座に分離されて、配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源となる。ひとたび分離されたならば、DNAを発現ベクター中に入れ、ついでこれを、この状況以外では抗体タンパク質を産生しない大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は骨髄腫細胞のような宿主細胞中に形質移入し、組換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成を獲得することができる。抗体をコードするDNAの細菌中の組換え発現に関する参考文献には、Skerraら、Curr. Opinion in Immunol. 5:256-262 (1993)及びPluckthun, Immunol. Revs. 130:151-188 (1992)が含まれる。
さらなる実施態様では、モノクローナル抗体又は抗体断片は、McCafferty等, Nature, 348:552-554 (1990)に記載された技術を使用して産生される抗体ファージライブラリから分離することができる。Clackson等, Nature, 352:624-628 (1991)及び Marks等, J.Mol.Biol., 222:581-597 (1991)は、ファージライブラリを使用したマウス及びヒト抗体の分離を記述している。続く刊行物は、鎖シャフリングによる高親和性(nM範囲)のヒト抗体の生成(Marks等, Bio/Technology, 10:779-783[1992])、並びに非常に大きなファージライブラリを構築するための方策としてコンビナトリアル感染とインビボ組換え(Waterhouse等, Nuc.Acids.Res., 21:2265-2266[1993])を記述している。従って、これらの技術はモノクローナル抗体の分離に対する伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ法に対する実行可能な別法である。
例えば、ヒト重鎖及び軽鎖定常ドメイン(C
H及びC
L)配列を、相同的マウス配列に代えて置換することによって(米国特許第4816567号;及びMorrison等, Proc.Nat.Acad.Sci., USA, 81:6851(1984))、又は免疫グロブリンコード配列を非免疫グロブリンポリペプチド(異種ポリペプチド)のコード配列の全部又は一部と融合させることによって、抗体をコードするDNAを修飾し、キメラ又は融合抗体ポリペプチドを生成することができる。前記の非免疫グロブリンポリペプチド配列は、抗体の定常ドメインと置き代わることができるか、又は抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインが置換されて、抗原に対する特異性を有する1つの抗原結合部位と異なる抗原に対する特異性を有するもう一つの抗原結合部位とを含むキメラ二価抗体を作り出す。
【0054】
3.ヒト及びヒト化抗体
本発明の実施に有用な抗LY6抗体は、さらにヒト化抗体又はヒト抗体を含みうる。非ヒト(例えばマウス)抗体のヒト化形態は、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖又はその断片(例えばFv、Fab、Fab’、F(ab’)
2又は非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含む、抗体のその他抗原結合サブシーケンス)である。ヒト化抗体には、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有するマウス、ラット、又はウサギといった非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基によって置換されているヒト免疫グロブリンが含まれる。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が、対応する非ヒト残基によって置換される。ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも移入されたCDR又はフレームワーク配列にも見られない残基も含みうる。一般に、ヒト化抗体は、すべて又はほぼすべてのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンに対応しており、且つすべて又はほぼすべてのFR領域がヒト免疫グロブリンの共通配列である、少なくとも一及び典型的には二の可変ドメインのほぼすべてを含む。最適には、ヒト化抗体は、免疫グロブリンの定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域(Fc)、の少なくとも一部も含む[Jones等、Nature, 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature, 332:323-327 (1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol., 2:593-596 (1992)]。
非ヒト抗体をヒト化する方法は、従来技術に周知である。一般に、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源から導入される一又は複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基はしばしば「移入」残基と呼ばれ、通常は一の「移入」可変ドメインから取得される。ヒト化は基本的にWinter及び共同研究者による方法に従って、齧歯類CDR又はCDR配列をヒト抗体の対応する配列に置換することにより実行される(Jones等、Nature, 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature, 332:323-327 (1988);Verhoeyen等、Science, 239:1534-1536 (1988))。よって、このような「ヒト化」抗体は、無傷のヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の対応する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4816567号)である。実際には、ヒト化抗体は典型的には幾つかのCDR残基及び場合によっては幾つかのFR残基が齧歯類抗体の類似する部位由来の残基によって置換されたヒト抗体である。
【0055】
抗体がヒトの治療用に用いられる場合、抗原性及びHAMA応答(ヒト抗マウス抗体)を低減するには、ヒト化抗体を生成する際に使用するヒトの軽重両方のヒト可変ドメインの選択が非常に重要である。いわゆる「ベストフィット法」では、齧歯動物抗体の可変ドメインの配列を、既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリ全体に対してスクリーニングする。次に齧歯動物のものと最も近いヒトVドメイン配列を同定し、その中のヒトフレームワーク(FR)をヒト化抗体に受け入れる(Sims等, J. Immunol., 151:2296 (1993);Chothia等, J. Mol. Biol., 196:901(1987))。他の方法では、軽又は重鎖の特定のサブグループのヒト抗体全てのコンセンサス配列から誘導される特定のフレームワーク領域を使用する。同じフレームワークをいくつかの異なるヒト化抗体に使用できる(Carter等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992);Presta等, J. Immunol., 151:2623(1993))。
更に、抗体を、抗原に対する高い結合親和性や他の好ましい生物学的性質を保持してヒト化することが重要である。この目標を達成するために、好ましい方法では、親及びヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析工程を経てヒト化抗体を調製する。三次元免疫グロブリンモデルは一般的に入手可能であり、当業者にはよく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推測三次元立体配座構造を図解し、表示するコンピュータプログラムは購入可能である。これら表示を見ることで、候補免疫グロブリン配列の機能における残基のありそうな役割の分析、すなわち候補免疫グログリンの抗原との結合能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、例えば標的抗原に対する親和性が高まるといった、望ましい抗体特性が達成されるように、FR残基をレシピエント及び移入配列から選択し、組み合わせることができる。一般的に、高頻度可変領域残基は、直接かつ最も実質的に抗原結合性に影響を及ぼしている。
【0056】
ヒト化抗LY6抗体の様々な形態を考える。例えば、ヒト化抗体は、Fabなどの、任意で一又は複数の細胞障害性剤とコンジュゲートしてイムノコンジュゲートを生成する抗体断片とすることができる。或いは、ヒト化抗体は、インタクトIgG1抗体などのインタクト抗体でもよい。
ヒト化の代わりに、ヒト抗体を生成することができる。例えば、現在では、免疫化することで、内因性免疫グロブリンの産生無しで、ヒト抗体の全レパートリーを産生することのできるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を作ることが可能である。例えば、キメラ及び生殖細胞系突然変異体マウスにおける抗体重鎖結合領域(J
H)遺伝子のホモ接合体欠失によって、結果として内因性抗体産生の完全な阻害が起こることが説明されてきた。ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子配列の、このような生殖細胞系突然変異体マウスへの転移によって、結果として抗原投与時にヒト抗体の産生がおこる。Jakobovits等, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 90:2551 (1993);Jakobovits等, Nature 362:255-258 (1993); Bruggeman等, Year in Immuno., 7:33 (1993);米国特許第5545806号、同5569825号、同5591669号(すべてGenPharm);米国特許第5545807号;及び国際公開第97/17852号を参照されたい。
また、ファージディスプレイ技術(McCafferty等、Nature 348:552-553 (1990))を用いて、未免疫のドナー由来の免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーからインビトロでヒト抗体及び抗体断片を産生することができる。この技術によれば、抗体Vドメイン遺伝子を、フレーム単位で、繊維状バクテリオファージ、例えばM13又はfdの大きい又は小さいコートタンパク質遺伝子でクローンし、ファージ粒子の表面で機能的抗体断片として表示させる。繊維状粒子がファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含むので、抗体の機能特性に基づいた選択も、結果としてこれらの特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択が成される。よって、このファージはB細胞の特性の幾つかを模倣している。ファージディスプレイは多様な形式で行うことができる;例えばJohnson, Kevin S. 及びChiswell, David J., Current Opinion in Structural Biology 3:564-571(1993)を参照。V-遺伝子セグメントの複数の供給源を、ファージディスプレイのために使用できる。Clackson等, Nature, 352:624-628(1991)は、免疫化したマウスの脾臓由来のV遺伝子の小さいランダムなコンビナトリアルライブラリから、多様な抗-オキサゾロン抗体を単離した。非免疫化ヒトドナーのV遺伝子のレパートリーが構成可能であり、多様な抗原(自己抗原を含む)に対する抗体は、基本的にMarks等, J. Mol. Biol. 222:581-597(1991)、又はGriffith等, EMBO J. 12:725-734(1993)に記載の技術に従って単離することができる。また、米国特許第5565332号及び同5573905号を参照のこと。
上述のように、ヒト抗体はインビトロで活性化したB細胞により産生することもできる(米国特許第5567610号及び同5229275号)。
【0057】
4.抗体断片
特定の実施態様では、抗体全体より抗体断片を使用する方が有利である。小さな断片は迅速なクリアランスを可能にしながら対応する完全長分子と同様の抗原結合特異性を保持し、固形腫瘍へのアクセスを向上させる。
抗体断片を産生するために様々な技術が開発されている。伝統的には、これらの断片は、無傷の抗体のタンパク分解性消化によって誘導された(例えば、Morimoto等, Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117 (1992)及びBrennan等, Science, 229:81(1985)を参照されたい)。しかし、これらの断片は、現在は組換え宿主細胞により直接産生することができる。Fab、Fv及びscFv抗体断片はすべて大腸菌に発現され、且つ大腸菌から分泌されるので、これら断片を容易に大量生成することができる。抗体断片は、上で論じた抗体ファージライブラリから単離することができる。別法として、Fab'-SH断片は大腸菌から直接回収することができ、化学的に結合させてF(ab')
2断片を形成することができる(Carter等, Bio/Technology 10:163-167(1992))。他のアプローチ法では、F(ab')
2断片を組換え宿主細胞培養から直接分離することができる。サルベージレセプター結合エピトープ残基を含むインビボでの半減期が増大したFab及びF(ab’)
2断片は、米国特許第5869046号に記載されている。抗体断片を生成するのための他の方法は、当業者には明らかであろう。他の実施態様では、選択する抗体は単鎖Fv断片(scFv)である。国際公開93/16185号;米国特許第5571894号;及び米国特許第5587458号を参照のこと。Fv及びsFvは、定常領域を欠く無傷の連結部位を有する唯一の種である;従って、インビボで使用している間の減少した非特異的結合に適している。sFv融合タンパク質は、sFvのアミノ又はカルボキシ末端のどちらかで、エフェクタータンパク質の融合体が生成されるように構成されてもよい。上掲のAntibody Engineering, Borrebaeck編を参照のこと。また、抗体断片は、例えば米国特許第5641870号に記載されているような「直鎖状抗体」であってもよい。そのような直鎖状抗体断片は単一特異性又は二重特異性であってもよい。
【0058】
5.二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも二つの異なるエピトープに対する結合特異性を有する抗体である。二重特異性抗体は、ここに記載される特定のLY6ポリペプチドの二つの異なるエピトープに結合するか、又は別個の抗原に結合することができる。他の同様の抗体は、別のタンパク質に対する結合部位を有する上記LY6結合部位を兼ね備えることができる。二重特異性が本発明の診断方法に有用である場合、第二の抗体のアームは検出可能なポリペプチドに結合できる。二重特異性抗体は、完全長抗体又は抗体断片(例えば、F(ab’)
2二重特異性抗体)として調製することができる。
二重特異性抗体を作成する方法は当該分野において既知である。完全長二重特異性抗体の伝統的な産生は二つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の同時発現に基づき、ここで二つの鎖は異なる特異性を持っている(Millstein等, Nature, 305:537-539(1983))。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖が無作為に取り揃えられているため、これらのハイブリドーマ(四部雑種)は10個の異なる抗体分子の可能性ある混合物を産生し、そのうちただ一つが正しい二重特異性構造を有する。通常、アフィニティークロマトグラフィー工程により行われる正しい分子の精製は、かなり煩わしく、生成物収率は低い。同様の方法が国際公開第93/08829号及びTraunecker等, EMBO J. 10:3655-3659(1991)に開示されている。
【0059】
異なったアプローチ法では、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗原-抗体結合部位)を免疫グロブリン定常ドメイン配列と融合させる。好ましくは、該融合は少なくともヒンジの一部、CH2及びCH3領域を含むIg重鎖定常ドメインである。軽鎖の結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)を、融合の少なくとも一つに存在させることが望ましい。免疫グロブリン重鎖の融合、望まれるならば免疫グロブリン軽鎖をコードしているDNAを、別個の発現ベクター中に挿入し、適当な宿主細胞に同時トランスフェクトする。これにより、組立に使用される3つのポリペプチド鎖の等しくない比率が所望の二重特異性抗体の最適な収率をもたらす態様において、3つのポリペプチド断片の相互の割合の調節における柔軟性が増大する。しかし、少なくとも2つのポリペプチド鎖の等しい比率での発現が高収率をもたらすとき、又はその比率が所望の差の組み合わせの収率に有意な影響を及ぼさないときは、2又は3個全てのポリペプチド鎖のためのコード化配列を単一の発現ベクターに挿入することが可能である。
この手法の好ましい一実施態様では、二重特異性抗体は、第一の結合特異性を有する一方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖と他方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖対(第二の結合特異性を提供する)とからなる。二重特異性分子の半分にしか免疫グロブリン軽鎖がないと容易な分離法が提供されるため、この非対称的構造は、所望の二重特異性化合物を不要な免疫グロブリン鎖の組み合わせから分離することを容易にすることが分かった。このアプローチ法は、国際公開第94/04690号に開示されている。二重特異性抗体を産生する更なる詳細については、例えばSuresh等, Methods in Enzymology, 121:210 (1986)を参照されたい。
【0060】
米国特許第5731168号に記載された他の手法によれば、一対の抗体分子間の界面を操作して組換え細胞培養から回収されるヘテロダイマーのパーセントを最大にすることができる。好適な界面はC
H3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第1抗体分子の界面からの一又は複数の小さいアミノ酸側鎖がより大きな側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)と置き換えられる。大きな側鎖と同じ又は類似のサイズの相補的「キャビティ」を、大きなアミノ酸側鎖を小さいもの(例えばアラニン又はスレオニン)と置き換えることにより第2の抗体分子の界面に作り出す。これにより、ホモダイマーのような不要の他の最終産物に対してヘテロダイマーの収量を増大させるメカニズムが提供される。
二重特異性抗体は、架橋した抗体又は「ヘテロコンジュゲート」抗体を含む。例えば、ヘテロコンジュゲートの抗体の一方はアビジンに、他方はビオチンに結合することができる。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を望ましくない細胞に向けるため(米国特許第4676980号)、及びHIV感染の治療のために(国際公開第91/00360号、同第92/200373号、及び欧州特許第03089号)提案されている。ヘテロコンジュゲート抗体も、各抗体に検出可能な複数のマーカーを付与することによってアッセイ検出を向上させることにより、本発明の方法に使用することができる。ヘテロコンジュゲート抗体は、便利な架橋方法のいずれかを使用して作製することができる。適切な架橋剤は当技術分野において周知であり、多数の架橋技術と共に米国特許第4676980号に開示されている。
【0061】
抗体断片から二重特異性抗体を産生する技術もまた文献に記載されている。例えば、化学結合を使用して二重特異性抗体を調製することができる。Brennan等, Science, 229:81 (1985) は無傷の抗体をタンパク分解性に切断してF(ab')
2断片を産生する手順を記述している。これらの断片は、ジチオール錯体形成剤、亜砒酸ナトリウムの存在下で還元して近接ジチオールを安定化させ、分子間ジスルフィド形成を防止する。産生されたFab'断片はついでチオニトロベンゾアート(TNB)誘導体に変換される。Fab'-TNB誘導体の一つをついでメルカプトエチルアミンでの還元によりFab'-チオールに再変換し、他のFab'-TNB誘導体の等モル量と混合して二重特異性抗体を形成する。作られた二重特異性抗体は酵素の選択的固定化用の薬剤として使用することができる。
最近の進歩により、大腸菌からのFab'-SH断片の直接の回収が容易になり、これは化学的に結合して二重特異性抗体を形成することができる。Shalaby等,J.Exp.Med., 175:217-225 (1992)は完全にヒト化された二重特異性抗体F(ab')
2分子の製造を記述している。各Fab'断片は大腸菌から別個に分泌され、インビトロで定方向化学共役を受けて二重特異性抗体を形成する。このようにして形成された二重特異性抗体は、正常なヒトT細胞、及びErbB2レセプターを過剰発現する細胞に結合可能で、ヒト乳房腫瘍標的に対するヒト細胞障害性リンパ球の細胞溶解活性の誘因となる。
組換え細胞培養から直接的に二重特異性抗体断片を作成し分離する様々な技術もまた記述されている。例えば、二重特異性抗体はロイシンジッパーを使用して生成されている。Kostelny等, J.Immunol. 148(5):1547-1553 (1992)。Fos及びJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドを遺伝子融合により二つの異なった抗体のFab'部分に結合させる。抗体ホモダイマーをヒンジ領域で還元してモノマーを形成し、ついで再酸化して抗体ヘテロダイマーを形成する。この方法はまた抗体ホモダイマーの生成に対して使用することができる。Hollinger等, Proc.Natl.Acad.Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)により記述された「ダイアボディ」技術は二重特異性抗体断片を作成する別のメカニズムを提供した。断片は、同一鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするには十分に短いリンカーによりV
LにV
Hを結合してなる。従って、一つの断片のV
H及びV
Lドメインは他の断片の相補的V
L及びV
Hドメインと強制的に対形成させられ、よって2つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)ダイマーの使用により二重特異性抗体断片を製造する他の方策もまた報告されている。Gruber等, J.Immunol. 152:5368 (1994)を参照されたい。
二価より多い抗体も考えられる。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。Tutt等 J.Immunol. 147:60(1991)。
【0062】
6.多価抗体
多価抗体は、抗体が結合する抗原を発現する細胞により、二価抗体よりも早くインターナリゼーション(及び/又は異化)されうる。本発明の抗体は、3又はそれ以上の結合部位を有する多価抗体(IgMクラス以外のもの)であり得(例えば四価抗体)、抗体のポリペプチド鎖をコードする核酸の組換え発現により容易に生成することができる。多価抗体は二量化ドメインと3又はそれ以上の抗原結合部位を有する。好ましい二量化ドメインはFc領域又はヒンジ領域を有する(又はそれらからなる)。このシナリオにおいて、抗体はFc領域と、Fc領域のアミノ末端に3又はそれ以上の抗原結合部位を有しているであろう。ここで、好ましい多価抗体は3ないし8、好ましくは4の抗原結合部位を有する(又はそれらからなる)。多価抗体は少なくとも1つのポリペプチド鎖(好ましくは2つのポリペプチド鎖)を有し、ポリペプチド鎖(類)は2又はそれ以上の可変ドメインを有する。例えば、ポリペプチド鎖(類)はVD1-(X1)
n-VD2-(X2)
n-Fcを有し、ここでVD1は第1の可変ドメインであり、VD2は第2の可変ドメインであり、FcはFc領域のポリペプチド鎖の一つであり、X1及びX2はアミノ酸又はポリペプチドを表し、nは0又は1である。例えば、ポリペプチド鎖(類)は:VH-CH1-柔軟なリンカー-VH-CH1-Fc領域鎖;又はVH-CH1-VH-CH1-Fc領域鎖を有し得る。ここで多価抗体は、好ましくは少なくとも2つ(好ましくは4つ)の軽鎖可変ドメインポリペプチドをさらに有する。ここで多価抗体は、例えば約2〜約8の軽鎖可変ドメインポリペプチドを有する。ここで考察される軽鎖可変ドメインポリペプチドは軽鎖可変ドメインを有し、場合によってはCLドメインを更に有する。
【0063】
7.エフェクター機能の加工
本発明の抗体をエフェクター機能について改変し、例えば抗体の抗原依存性細胞媒介性細胞障害性(ADCC)及び/又は補体依存性細胞障害性(CDC)を向上させることが望ましい。これは、抗体のFc領域に一又は複数のアミノ酸置換を導入することにより達成することができる。別法として又は付加的に、システイン残基をFc領域に導入し、それにより、この領域に鎖間ジスルフィド結合を形成するようにしてもよい。そのようにして生成された同種二量体抗体は、向上したインターナリゼーション能力及び/又は増加した補体媒介細胞殺傷及び抗体−依存細胞性細胞障害性(ADCC)を有する可能性がある。Caron等, J. Exp. Med. 176: 1191-1195 (1992)及びShopes, B. J. Immunol. 148: 2918-2922 (1992)参照。また、向上した抗腫瘍活性を持つ同種二量体抗体は、Wolff等, Cancer Research 53: 2560-2565 (1993)に記載されている異種二官能性架橋を用いて調製することができる。あるいは、抗体は、2つのFc領域を有するように加工して、それにより補体溶解及びADCC能力を向上させることもできる。Stevenson等, Anti-Cancer Drug Design 3: 219-230 (1989)参照。抗体の血清半減期を増大させるために、例えば米国特許第5739277号に記載のように、抗体(特に抗体断片)へサルベージレセプター結合エピトープを導入してもよい。ここで使用される場合の「サルベージレセプター結合エピトープ」なる用語は、IgG分子のインビボ血清半減期を増加させる原因であるIgG分子(例えば、IgG
1、IgG
2、IgG
3又はIgG
4)のFc領域のエピトープを意味する。
【0064】
8.イムノコンジュゲート(免疫抱合体)
また、本発明は、化学療法剤、増殖阻害剤、毒素(例えば、細菌、糸状菌、植物又は動物由来の酵素活性性毒素、又はその断片)、又は放射性同位体(すなわち放射性コンジュゲート)などの細胞毒性剤にコンジュゲートした抗体を含む、イムノコンジュゲートに関する。
a.化学療法剤
こういったイムノコンジュゲートの生成に有用な化学治療薬を上記に記載した。用いることのできる酵素活性毒素及びその断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、(緑膿菌からの)外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシン(modeccin)A鎖、アルファ-サルシン、アレウリテス・フォーディ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、フィトラカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、モモルディカ・チャランチア(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン(crotin)、サパオナリア・オフィシナリス(sapaonaria officinalis)インヒビター、ゲロニン(gelonin)、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)及びトリコテセン(tricothecene)が含まれる。放射性コンジュゲート抗体の生成には、様々な放射性ヌクレオチドが利用可能である。例としては、
212Bi、
131I、
131In、
90Y及び
186Reが含まれる。抗体及び細胞障害性薬のコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えば、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオナート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(ジメチルアジピミデートHCl等)、活性エステル(ジスクシンイミジルスベレート等)、アルデヒド(グルタルアルデヒド等)、ビス-アジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン等)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン等)、ジイソシアネート(トリエン2,6-ジイソシアネート等)、及びビス-活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン等)を用いて作成できる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta等, Science 238:1098 (1987)に記載されているように調製することができる。炭素-14-標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体への抱合(コンジュゲート)のためのキレート剤の例である。国際公開公報第1994/11026参照。
抗体のコンジュゲートと一又は複数の小分子毒素、例えばカリケアマイシン、メイタンシノイド、トリコテセン、及びCC1065、及び毒性活性を有するこれらの毒素の誘導体もまた、ここで考察される。
【0065】
B.LY6結合オリゴペプチド
本発明のLY6結合オリゴペプチドはここで記載される様なLY6ポリペプチドに、好ましくは特異的に、結合するオリゴペプチドである。LY6結合オリゴペプチドは、既知のオリゴペプチド合成法を用いて化学的に合成することができ、あるいは組換え技術を用いて調製及び生成することができる。LY6結合オリゴペプチドは通常、少なくとも約5のアミノ酸長であり、或いは少なくとも約6、7、8、9、10、11、1−73、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99又は100のアミノ酸長以上であり、このようなオリゴペプチドはここに記載される様なLY6ポリペプチドに対して好ましくは特異的に結合する能力がある。LY6結合オリゴペプチドは、よく知られた技術を用いて過度の実験をすることなしに同定することができる。この点において、ポリペプチド標的に特異的に結合する能力のあるオリゴペプチドのオリゴペプチドライブラリを検索する技術は当分野でよく知られていることを注記する(例えば、米国特許第5556762号、同第5750373号、同第4708871号、同第4833092号、同第5223409号、同第5403484号、同第5571689号、同第5663143号;PCT公開第WO84/03506号、及びWO84/03564号;Geysen等, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 81:3998-4002 (1984);Geysen等, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 82:178-182 (1985);Geysen等, in Synthetic Peptides as Antigens, 130-149 (1986);Geysen等, J. Immunol. Meth., 102:259-274 (1987);Schoofs等, J. Immunol., 140:611-616 (1988), Cwirla,S.E.等(1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:6378;Lowman,H.B.等 (1991) Biochemistry, 30:10832;Clackson,T.等 (1991) Nature, 352:624;Marks,J.D.等 (1991) J. Mol. Biol., 222:581;Kang,A.S.等 (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:8363、及びSmith, G.P. (1991) Current Opin. Biotechnol., 2:668参照)。
この点において、バクテリオファージ(ファージ)ディスプレイは、大きなオリゴペプチドライブラリを検索して、ポリペプチド標的に特異的に結合する能力のあるこれらライブラリのメンバーを同定することを可能にするよく知られた技術の一つである。ファージディスプレイは、様々なポリペプチドがバクテリオファージ粒子の表面上のコートタンパク質に融合タンパク質として表示されることによる技術である(Scott,J.K.及びSmith G. P. (1990) Science 249:386)。ファージディスプレイの有用性は、選択的にランダム化されたタンパク質変異体(又はランダムクローンcDNA)の大きなライブラリを標的分子に高い親和性で結合するこれらの配列について素早く効果的に分類することができる点にある。ファージでのペプチド(Cwirla,S.E.等 (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:6378)又はタンパク質(Lowman,H.B.ら (1991) Biochemistry, 30:10832; Clackson,T.ら (1991) Nature, 352: 624; Marks,J.D.等 (1991), J. Mol. Biol., 222:581; Kang,A.S.等 (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:8363)ライブラーリのディスプレイは、特異的に結合する特性を有するものについて無数のポリペプチド又はオリゴペプチドをスクリーニングするために使用されている(Smith, G.P. (1991) Current Opin. Biotechnol., 2:668)。ランダム突然変異体のファージライブラリの分類は、多数の変異体を構築して増殖させる方法、標的レセプターを用いた親和性精製の方法、及び結合増強の結果を評価する手段を必要とする。米国特許第5223409号、同第5403484号、同第5571689号、及び同第5663143号。
【0066】
ほとんどのファージディスプレイ法は繊維状ファージを使用していたが、λファージディスプレイシステム(国際公開第95/34683号;米国特許第5627024号)、T4ファージディスプレイシステム(Ren等、Gene, 215:439 (1998); Zhu等、Cancer Research, 58(15):3209-3214 (1998); Jiang等、Infection & Immunity, 65(11): 4770-4777 (1997); Ren等、Gene, 195(2):303-311 (1997); Ren, Protein Sci., 5:1833 (1996); Efimov等、Virus Genes, 10:173 (1995))及びT7ファージディスプレイシステム(Smith及びScott, Methods in Enzymology, 217, 228-257 (1993); 米国特許第5766905号)も知られている。
現在、基礎的なファージディスプレイ構想の多くの他の改良及び変形が開発されている。これらの改良は、選択された標的分子への結合についてペプチドライブラリをスクリーニングするための、及びこれらのタンパク質が所望の特性をスクリーニングする潜在能力で機能性タンパク質をディスプレイするためのディスプレイシステムの能力を増強する。ファージディスプレイ反応のための組み換え反応手段について記載があり(WO98/14277)及びファージディスプレイライブラリは二分子相互作用(WO98/20169;WO98/20159)及び拘束性へリックスペプチドの特性(WO98/20036)を分析及び制御するために使用されている。WO97/35196は、リガンドが標的分子に結合しうる第一の溶液、及び親和性リガンドが標的分子に結合しない第二の溶液とファージディスプレイライブラリを接触させて結合リガンドを選択的に単離する、親和性リガンドの単離方法を記載する。WO97/46251は、親和性精製抗体でランダムファージディスプレイライブラリをバイオパニングし、次いで結合ファージを単離し、続いてマイクロプレートのウェルでマイクロパニングして高親和性結合ファージを単離する方法を記載する。黄色ブドウ球菌(Staphlylococcus aureus)タンパク質Aの親和性タグとしての使用も報告されている(Li等, (1998) Mol Biotech., 9:187)。WO97/47314は、ファージディスプレイライブラリでもよいコンビナトリアルライブラリを用いて酵素特異性を識別するための基質サブトラクションライブラリの使用を記載している。ファージディスプレイに用いる洗浄剤における使用に適した酵素を選択する方法はWO97/09446に記載される。特異的に結合するタンパク質を選択する更なる方法は、米国特許第5498538号、同第5432018号、及びWO98/15833に記載されている。
ペプチドライブラリの作製及びこれらのライブラリのスクリーニングの方法は、米国特許第5723286号、同第5432018号、同第5580717号、同第5427908号、同第5498530号、同第5770434号、同第5734018号、同第5698426号、同第5763192号、及び同第5723323号に記載される。
【0067】
一態様では、本発明はLYPD5ポリペプチドのリガンドに関する。
図32は、これが、形質移入されていないCOS細胞(A)及びGLG−1で形質移入されてLYPD5−Fcタンパク質で染色されているCOS細胞を示すことを実証するものである。一実施態様では、LYPD5のリガンドは、配列番号17、19、21又は23に示される核酸によってそれぞれコードされた、配列番号18、20、22又は24に示されるゴルジ複合体局在糖タンパク質1(GLG−1)又はEセレクチン(ESL−1)ポリペプチドである。別の実施態様では、GLG−1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドには、少なくとも15、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも250、少なくとも500、少なくとも750、少なくとも1000、少なくとも1250、少なくとも1500、少なくとも1750、少なくとも2000、少なくとも2040、少なくとも2090、少なくとも2150、少なくとも2200、少なくとも2300、少なくとも2400、少なくとも2500、少なくとも2600、少なくとも2700、少なくとも2800、少なくとも2900、少なくとも3000、少なくとも3100、少なくとも3200、少なくとも3300、少なくとも3400、少なくとも3500、少なくとも3600、少なくとも3700、又は少なくとも3720の、配列番号17、19、21、又は23の近接するヌクレオチドが含まれ、或いは、GLG−1をコードするポリヌクレオチドには配列番号17、19、21、又は23が含まれる。一実施態様では、GLG−1(配列番号17、19、21、又は23)をコードするポリヌクレオチド、又はその断片に結合するポリヌクレオチドは、GLG−1ポリペプチド又はその断片に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%の配列同一性を有する。一実施態様では、GLG−1ポリペプチドは、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも125、少なくとも150、少なくとも175、少なくとも200、少なくとも225、少なくとも250、少なくとも275、少なくとも300、少なくとも325、少なくとも350、少なくとも400、少なくとも450、少なくとも500、少なくとも550、少なくとも600、少なくとも650、少なくとも700、少なくとも750、少なくとも800、少なくとも850、少なくとも900、少なくとも950、少なくとも1000、少なくとも1050、少なくとも1100、少なくとも1150、又は少なくとも1200の、配列番号18、20、22、又は24の近接するアミノ酸を含むか、或いはGLG−1ポリペプチドは配列番号18、20、22、又は24を含む。GLG−1又はESL−1は好中球に発現され、好中球の組織中への血管外遊走に関与していると考えられており、炎症に重要な役割を果たすと考えられる(ここにその内容全体を包含するHidalgo等、(2007) Immunity, 26(4): 477-489を参照されたい)。GLG−1又はESL−1は14のシステインリッチGLG1ドメインを有する。細胞外ドメイン(ECD)は冗長で、後述するように、GLG−1 ECDの変異体又は断片はLYPD5に対する結合能を有することが判明した。
【0068】
別の実施態様では、LYPD5リガンドは、ここに開示されるGLG−1又はESL−1分子の変異体又は断片である。
図33A−Bに示すように、GLG−1又はESL−1は、実施例11に示すフラグメント1、2、3、及び4として見ることができ、4つの断片のいずれか一つはLYPD5結合に十分である。
別の実施態様では、LYPD5リガンドは、単一のGlG−1ドメインであるGLG−1又はESL−1の変異体又は断片である。
図34A−Bに示すように、GLG−1は複数のGLG−1ドメインからなり、実施例11に説明するように、単一のGLG−1ドメインはLYPD5結合に十分である。
別の実施形態では、LYPD5リガンドは、LYPD5に特異的なGLG−1又はESL−1の変異体又は断片である。
図35A−Bに示すように、GLG−1は、ドメイン26−114、ドメイン115、及びドメイン150を含み、実施例11に説明するように、ドメイン115はLYPD5に結合するが、ドメイン26−114はLYPD5に結合しない。
本発明では、LY6ファミリーメンバーの変異体を考慮するのと同様にGLG−1の変異体も考慮する。
【0069】
C.ポリペプチド変異体
ここに記載したポリペプチド、抗体及びLY6結合ポリペプチドに加えて、そのような分子の変異体も本発明で使用するために調製できると考えられる。そのような変異体は、コード化DNAに適当なヌクレオチド変化を導入することによって、及び/又は所望の抗体又はポリペプチドを合成することによって調製できる。当業者は、アミノ酸変化がグリコシル化部位の数又は位置の変化あるいは膜固着特性の変化などのこれら分子の翻訳後プロセスを変え得るのを理解するであろう。
アミノ酸配列の変異は、例えば、米国特許第5364934号に示す保存的及び非保存的変異に関する技術及び指針のいずれかを用いて作成することができる。変異は、結果として天然配列と比較してアミノ酸配列の変化を生じる、アミノ酸配列をコードする一又は複数のコドンの置換、欠失又は挿入であってもよい。場合によっては、変異は、対象のアミノ酸配列の一つ又は複数のドメインにおける、少なくとも一つのアミノ酸の他の任意のアミノ酸との置換による。どのアミノ酸残基が所望の活性に悪影響を与えることなく挿入、置換又は欠失され得るかを確かめる指針は、対象のアミノ酸配列を既知の相同タンパク質分子の配列と比較し、相同性の高い領域内で生じたアミノ酸配列変化の数を最小にすることによって見出される。アミノ酸置換は、一のアミノ酸を類似した構造及び/又は化学特性を持つ他のアミノ酸で置換すること、例えばロイシンのセリンでの置換、即ち保存的アミノ酸置換の結果であるとすることができる。挿入及び欠失は、場合によっては1から5のアミノ酸の範囲内であり得る。許容され得る変異は、配列にアミノ酸の挿入、欠失又は置換を系統的に作成し、生じた変異体を、完全長又は成熟した天然配列によって示される活性に関して試験することによって確かめられる。
【0070】
様々なポリペプチドの断片がここに提供される。そのような断片は、例えば完全長天然抗体又はタンパク質と比較した時に、N末端又はC末端で切断しているか、又は内部残基を欠いている可能性がある。LY6ポリペプチドの所望される生物学的活性にとって必修ではないアミノ酸残基を欠くそのような断片も、開示される方法に有用である。
上記ポリペプチド断片は、多くの従来技術のいずれかによって調製してもよい。所望のペプチド断片は化学合成してもよい。代替的方法には、酵素的消化、例えば特定のアミノ酸残基で確定した部位でタンパク質を切断することが知られた酵素によってタンパク質を処理することで、又は適当な制限酵素でDNAを消化して所望の断片を単離することによってそのような断片を生成することが含まれる。さらにその他の好適な技術には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、所望の断片をコードするDNA断片を単離し増幅することが含まれる。DNA断片の所望の末端を確定するオリゴヌクレオチドは、PCRの5’及び3’プライマーで用いられる。好ましくは、そのような断片は、対応する完全長分子とと少なくとも1つの生物学的及び/又は免疫学的活性を共有する。
特定の実施形態では、対象とする保存的置換を、好ましい置換の項目で表6に示す。このような置換が生物学的活性の変化をもたらす場合、表6に例示的置換と名前を付けた又は以下にアミノ酸分類でさらに記載するように、より実質的な変化が導入され、所望の変異体を同定するために生成物がスクリーニングされる。
【0072】
LY6ポリペプチドの機能又は免疫学的同一性の実質的修飾は、(a)置換領域のポリペプチド骨格の構造、例えばシート又は螺旋配置、(b)標的部位の電荷又は分子疎水性、又は(c)側鎖の嵩を維持しながら、それらの効果において有意に異なる置換基を選択することにより達成される。共通の側鎖特性に基づいて天然に発生する残基をグループ分けすることができる:
(1)疎水性: ノルロイシン、Met, Ala, Val, Leu, Ile;
(2)中性親水性: Cys, Ser, Thr, Asn, Gln
(3)酸性: Asp, Glu;
(4)塩基性: His, Lys, Arg;
(5)鎖の方向に影響する残基: Gly, Pro;
(6)芳香性: Trp, Tyr, Phe
非保存的置換は、これらの分類の1つのメンバーを他の分類に交換することを必要とするであろう。また、そのように置換された残基は、保存的置換部位、又はより好ましくは、残された(非保存)部位に導入されうる。
【0073】
変異は、オリゴヌクレオチド媒介(部位特異的)突然変異誘発、アラニンスキャンニング、及びPCR突然変異誘発等のこの分野で知られた方法を用いてなすことができる。部位特異的突然変異誘発[Carter等, Nucl. Acids Res., 13: 4331 (1986); Zoller等, Nucl. Acids Res., 10: 6487 (1987)]、カセット突然変異誘発[Wells等, Gene, 34: 315 (1985)]、制限的選択突然変異誘発[Wells等, Philos. Trans. R. Soc. London SerA, 317: 415 (1986)]又は他の知られた技術をクローニングしたDNAに実施して、抗LY6分子を作成することもできる。
また、隣接配列に沿って一又は複数のアミノ酸を同定するのにスキャンニングアミノ酸分析を用いることができる。好ましいスキャンニングアミノ酸は比較的小さく、中性のアミノ酸である。そのようなアミノ酸は、アラニン、グリシン、セリン、及びシステインを含む。アラニンは、ベータ炭素を越える側鎖を排除し変異体の主鎖構造を変化させにくいので、この群の中で典型的に好ましいスキャンニングアミノ酸である[Cunningham及びWells, Science, 244: 1081-1085 (1989)]。また、アラニンは最もありふれたアミノ酸であるため典型的には好ましい。さらに、それは埋もれた及び露出した位置の両方に見られることが多い[Creighton, The Proteins, (W.H. Freeman & Co., N.Y.); Chothia, J. Mol. Biol., 150: 1 (1976)]。アラニン置換が十分な量の変異体を生じない場合は、アイソテリック(isoteric)アミノ酸を用いることができる。
LY6ポリペプチドの適切なコンフォメーションを維持することに関与していない任意のシステイン残基も、分子の酸化的安定性を向上させ、異常な架橋を防ぐために、概してセリンと置換され得る。逆に、そのような分子にシステイン結合(複数でも)を加えて、その安定性を向上させてもよい(特に抗体がFv断片のような抗体断片である場合)。
【0074】
特に好ましい種類の置換変異体は、親抗体の一又は複数の高頻度可変領域残基(例えば、ヒト化又はヒト抗体)の置換を含む。一般に、さらなる開発のために選択される結果として得られる変異体の生物学的特性は、それらが生成された親抗体の同特性より改善されている。そのような置換変異体を生成するための便利な方法には、ファージディスプレイを用いた親和性成熟化が含まれる。簡単には、複数の高頻度可変領域部位(例えば、6〜7部位)を成熟させて、各部位に全ての可能なアミノ置換基を生成する。このように生成された抗体変異体は、各粒子内にパッケージされたM13の遺伝子3生成物への融合物として、繊維状ファージ粒子由来の一価様式で表示される。次に、ファージディスプレイされた変異体を、ここに開示されるようにそれらの生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングする。修飾のための候補高頻度可変領域部位を同定するために、アラニンスキャニング変異誘発を実行し、抗原結合に有意に寄与している高頻度可変領域残基を同定することができる。別法として、又は付加的に、抗原−抗体複合体の結晶構造を分析することにより、抗体と標的ポリペプチドとの接点を同定することが有利な場合がある。そのような接触残基及び隣接残基は、本明細書で考慮される技術による置換の候補である。そのような変異体が生成されたら、ここに記載のように変異体のパネルをスクリーニングし、一又は複数の関連アッセイにおいて優れた特性を有していた抗体を更なる開発用に選択することができる。
LY6ポリペプチドのアミノ酸配列変異体をコードする核酸分子は、本技術分野で既知の様々な方法によって調製することができる。これらの方法には、限定されないが、天然源からの単離(天然発生アミノ酸配列変異体の場合)又はオリゴヌクレオチド媒介(又は部位特異的)変異誘発、PCR変異誘発、及び天然配列又は早期に調製された変異体のカセット変異導入が含まれる。
【0075】
D.ポリペプチドの修飾
共有結合的に修飾されたポリペプチド及び/又は抗体も、本発明の範囲に含まれる使用に適切であり得る。共有結合的修飾の一型には、標的とするそのような抗体及びポリペプチドのアミノ酸残基を、そのような抗体及びポリペプチドの選択された側鎖又はN又はC末端残基と反応できる有機誘導体化試薬と反応させることが含まれる。二官能性試薬による誘導体化は、例えば前述の分子を、精製に用いる水不溶性支持体マトリクス又は表面と架橋させるために有用であり、その逆も同じである。通常用いられる架橋剤には、例えば、1,1-ビス(ジアゾアセチル)-2-フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、例えば4-アジドサリチル酸を有するエステル、3,3'-ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)等のジスクシンイミジルエステルを含むホモ二官能性イミドエステル、ビス-N-マレイミド-1,8-オクタン等の二官能性マレイミド、及びメチル-3-[(p-アジドフェニル)-ジチオ]プロピオイミダート等の試薬が含まれる。
他の修飾には、グルタミニル及びアスパラギニル残基の各々対応するグルタミル及びアスパルチル残基への脱アミノ化、プロリン及びリシンのヒドロキシル化、セリル又はトレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リシン、アルギニン、及びヒスチジン側鎖のα-アミノ基のメチル化[T.E. Creighton, Proteins: Structure and Molecular Properties, W.H. Freeman & Co., San Francisco, pp.79-86 (1983)]、N末端アミンのアセチル化、及び任意のC末端カルボキシル基のアミド化を含む。
本ポリペプチド又は抗体の共有結合的修飾の他の型は、抗体又はポリペプチドの天然グリコシル化パターンの変更を含む。ここで意図される「天然グリコシル化パターンの変更」とは、天然配列に見られる一又は複数の炭水化物部分を欠失させること(内在するグリコシル化部位を取り除くことによって、又は化学及び/又は酵素的手法でグリコシル化を欠失させることのいずれか)、及び/又は対応する天然配列に存在しない一又は複数のグリコシル化部位の付加を意味する。更には、この語句には、存在する種々の炭水化物部分の性質及び特性の変化を含む、天然タンパク質のグリコシル化における定性的な変化が含まれる。
【0076】
抗体及び他のポリペプチドのグリコシル化とは、典型的にはN-結合又はO-結合のいずれかである。N-結合とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の付与を指す。トリペプチドは、Xがプロリンを除く任意のアミノ酸である、アスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-スレオニンの配列であり、アスパラギン側鎖への炭水化物部分が酵素的に付与される認識部位である。従って、ポリペプチドのこれらトリペプチド配列のいずれかの存在によって、潜在的なグリコシル化部位が作り出される。O-結合グリコシル化とは、5-ヒドロキシプロリン又は5-ヒドロキシリジンも用いられるが、殆どの場合にはセリン又はスレオニンへN-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、又はキシロースのうちの一つの糖をヒドロキシアミノ酸へ付与することを指す。
グリコシル化部位の付加は、アミノ酸配列を改変して、それが上記に記載のトリペプチド配列(N-結合グリコシル化部位について)の一つ又は複数を含むようにすることによって簡便に完遂できる。この改変は、また、最初のそのような抗体又はポリペプチドの配列へ一つ又は複数のセリン又はスレオニン残基を付加、又は置換することによって生成される(O-結合グリコシル化部位について)。そのような抗体又はポリペプチド配列は、DNAレベルでの変化を通して、特に、コドンが所望するアミノ酸へ翻訳される、あらかじめ選択した塩基での前述のアミノ酸配列をコードするDNAを変異させることによって、場合によっては改変され得る。
【0077】
炭水化物部分の数を増加させる他の手段は、グリコシドのポリペプチドへの化学的又は酵素的結合による。そのような方法は、この技術分野において、例えば、1987年9月11日に発行された国際公開87/05330、及びAplin及びWriston, CRC Crit. Rev. Biochem., pp. 259-306 (1981)に記載されている。
炭水化物部分の除去は、化学的又は酵素的に、あるいはグルコシル化の標的として提示されたアミノ酸残基をコードするコドンの変異的置換によってなすことができる。化学的脱グリコシル化技術は、この分野で知られており、例えば、Hakimuddin等, Arch. Biochem. Biophys., 259:52 (1987)によって、そしてEdge等, Anal. Biochem., 118: 131 (1981)によって記載されている。ポリペプチド上の炭水化物部分の酵素的切断は、Thotakura等, Meth. Enzymol. 138:350 (1987)に記載されているように、種々のエンド及びエキソグリコシダーゼを用いることにより達成される。
共有結合的修飾の他の型は、種々の非タンパク質様ポリマーの1つ、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、又はポリオキシアルキレンへ、米国特許第4640835号;第4496689号;第4301144号;第4670417号;第4791192号又は第4179337号に記載された方法で結合させることをを含む。また、LY6ポリペプチドは、例えばコアセルベーション法によって又は界面重合によって調製されたマイクロカプセル(例えば、それぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセル)に、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフィア、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロエマルションで捕捉することができる。このような技術はRemington's Pharmaceutical Sciences, 16版, A. Oslo編(1980)に開示されている。
一のポリペプチドの、他の異種ポリペプチド又はアミノ酸配列との融合に起因するキメラ分子を形成する修飾の、本発明への使用を考慮する。
【0078】
一実施態様では、このようなキメラ分子は、一のポリペプチドの、抗タグ抗体が選択的に結合できるエピトープを提供するタグポリペプチドとの融合を含む。エピトープタグは、一般的にはそのような抗体又はポリペプチドのアミノ又はカルボキシル末端に位置する。このような抗体又はポリペプチドのエピトープタグ形態の存在は、タグポリペプチドに対する抗体を用いて検出することができる。また、エピトープタグの提供は、抗タグ抗体又はエピトープタグに結合する他の型の親和性マトリクスを用いたアフィニティ精製によってそのような抗体又はポリペプチドを容易に精製できるようにする。種々のタグポリペプチド及びそれら各々の抗体はこの分野で良く知られている。例としては、ポリ−ヒスチジン(ポリ-His)又はポリ−ヒスチジン−グリシン(poly-his-gly)タグ;flu HAタグポリペプチド及びその抗体12CA5[Field等, Mol. Cell. Biol., 8:2159-2165 (1988)];c-mycタグ及びそれに対する8F9、3C7、6E10、G4、B7及び9E10抗体[Evan等, Molecular and Cellular Biology, 5:3610-3616 (1985)];及び単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)タグ及びその抗体[Paborsky等, Protein Engineering, 3(6):547-553 (1990)]を含む。他のタグポリペプチドは、フラッグペプチド[Hopp等, BioTechnology, 6:1204-1210 (1988)];KT3エピトープペプチド[Martin等, Science, 255:192-194 (1992)];α-チューブリンエピトープペプチド[Skinner等, J. Biol. Chem., 266:15163-15166 (1991)];及びT7遺伝子10タンパク質ペプチドタグ[Lutz-Freyermuth等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:6393-6397 (1990)]を含む。
それに換わる実施態様では、キメラ分子はポリペプチドの免疫グロブリン又は免疫グロブリンの特定領域との融合体を含んでもよい。キメラ分子の二価形態(「イムノアドヘシン」とも呼ばれる)については、そのような融合体はIgG分子のFc領域であり得る。Ig融合体は、好ましくはIg分子内の少なくとも1つの可変領域に換えて前述の抗体又はポリペプチドの可溶化(膜貫通ドメイン欠失又は不活性化)形態を含む。特に好ましい実施態様では、免疫グロブリン融合体は、IgG分子のヒンジ、CH
2及びCH
3、又はヒンジ、CH
1、CH
2及びCH
3領域を含む。免疫グロブリン融合体の製造については、1995年6月27日発行の米国特許第5428130号を参照のこと。
【0079】
E.ポリペプチドの調製
以下の説明は、主として、抗体、ポリペプチド及びオリゴヌクレオチドなどの核酸を含むベクターで形質転換又は形質移入された細胞を培養することによりポリペプチドを産生させる方法に関する。勿論、当該分野においてよく知られている他の方法を用いてLY6ポリペプチドを調製することができると考えられている。例えば、適切なアミノ酸配列、又はその一部分を、固相技術を用いた直接ペプチド合成によって生成してもよい[例えば、Stewart等, Solid-Phase Peptide Synthesis, W.H. Freeman Co., サン フランシスコ, カリフォルニア(1969);Merrifield, J. Am. Chem. Soc., 85:2149-2154 (1963)参照]。手動技術又は自動を使用することによってインビトロタンパク質合成を行ってもよい。自動合成は、例えば、アプライド・バイオシステムズ・ペプチド合成機(フォスターシティー, カリフォルニア)を用いて、製造者の指示によって実施してもよい。そのような抗体、ポリペプチド又はオリゴペプチドの種々の部分を別々に化学的に合成し、化学的又は酵素的方法を用いて結合させて所望する生成物を生成させてもよい。
【0080】
1.ポリペプチドをコードするDNAの単離
ポリペプチドをコードするDNAは、そのような抗体、ポリペプチド又はオリゴペプチドのmRNAを保有していてそれを検出可能なレベルで発現すると考えられる組織から調製されたcDNAライブラリから得ることができる。従って、そのようなポリペプチドをコードするDNAは、ヒトの組織から調製されたcDNAライブラリ、ゲノムライブラリから又は公知の合成方法(例えば、自動核酸合成)により簡便に得ることができる。
ライブラリは、対象となる遺伝子あるいはその遺伝子によりコードされるタンパク質を同定するために設計されたプローブ(少なくとも約20-80塩基のオリゴヌクレオチド等)によってスクリーニングできる。選択されたプローブによるcDNA又はゲノムライブラリのスクリーニングは、例えばSambrook等, Molecular Cloning: A Laboratory Manual(New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)に記載されている標準的な手順を使用して実施することができる。或いは、PCR法も使用できる。[Sambrook等,上掲;Dieffenbach等, PCR Primer:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1995)]。
cDNAライブラリをスクリーニングするための技術は、当該分野で良く知られている。プローブとして選択されたオリゴヌクレオチド配列は、疑陽性が最小化されるよう十分な長さであり、十分に明瞭でなければならない。オリゴヌクレオチドは、スクリーニングされるライブラリ内のDNAとのハイブリダイゼーション時に検出可能であるように標識されていることが好ましい。標識化の方法は当該分野において良く知られており、
32P標識ATPのような放射線標識、ビオチン化あるいは酵素標識の使用を含む。中程度のストリンジェンシー及び高度のストリンジェンシーを含むハイブリダイゼーション条件は、上掲のSambrookら,に示されている。
このようなライブラリスクリーニング法において同定された配列は、GenBankらの公共データベース又は他の個人の配列データベースに寄託され利用可能となっている他の周知の配列と比較及びアラインメントすることができる。分子の決定された領域内の又は完全長配列に渡っての(アミノ酸又はヌクレオチドレベルのいずれかでの)配列同一性は、当該分野で知られた、及びここに記載した方法を用いて決定することができる。
タンパク質コード化配列を有する核酸は、初めてここで開示された推定アミノ酸配列を使用し、また必要ならば、cDNAに逆転写されていないmRNAの生成中間体及び先駆物質を検出する上掲のSambrook等に記述されているような従来のプライマー伸展法を使用して、選択されたcDNA又はゲノムライブラリをスクリーニングすることによって得られる。
【0081】
2.宿主細胞の選択及び形質転換
宿主細胞を、ここに記載したLY6ポリペプチド生成のための発現又はクローニングベクターで形質移入又は形質転換し、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適当に変性された常套的栄養培地で培養する。培養条件、例えば培地、温度、pH等々は、過度の実験をすることなく当業者が選ぶことができる。一般に、細胞培養の生産性を最大にするための原理、プロトコール、及び実用技術は、Mammalian Cell Biotechnology: a Practical Approach, M.Butler編 (IRL Press, 1991)及び上掲のSambrook等に見出すことができる。
真核生物細胞形質移入及び原核生物細胞形質転換の方法、例えば、CaCl
2、CaPO
4、リポソーム媒介及びエレクトロポレーションは当業者に知られている。用いられる宿主細胞に応じて、その細胞に対して適した標準的な方法を用いて形質転換はなされる。前掲のSambrook等に記載された塩化カルシウムを用いるカルシウム処理又はエレクトロポレーションが、一般的に原核生物に対して用いられる。アグロバクテリウム・トゥメファシエンスによる感染が、Shaw等, Gene, 23:315(1983)及び1989年6月29日公開の国際公開89/05859に記載されているように、或る種の植物細胞の形質転換に用いられる。このような細胞壁のない哺乳動物の細胞に対しては、Graham及びvan der Eb, Virology, 52:456-457 (1978)のリン酸カルシウム沈降法が用いられる。哺乳動物細胞の宿主系形質転換の一般的な態様は米国特許第4399216号に記載されている。酵母菌中への形質転換は、典型的には、Van Solingen等, J. Bact., 130:946 (1977)及びHsiao等, Proc. Natl. Acad. Sci. (USA), 76:3829 (1979)の方法に従って実施される。しかしながら、DNAを細胞中に導入する他の方法、例えば、核マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、無傷の細胞、又はポリカチオン、例えばポリブレン、ポリオルニチン等を用いる細菌プロトプラスト融合もまた用いることもできる。哺乳動物細胞を形質転換するための種々の技術については、Keown等, Methods in Enzymology, 185:527-537 (1990)及び Mansour等, Nature, 336:348-352 (1988)を参照のこと。
【0082】
ここに記載のベクターにDNAをクローニングあるいは発現するために適切な宿主細胞は、原核生物、酵母菌、又は高等真核生物細胞である。適切な原核生物には、限定するものではないが、真正細菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性微生物、例えば大腸菌のような腸内細菌科が含まれる。種々の大腸菌株が公に利用可能であり、例えば、大腸菌K12株MM294(ATCC31446);大腸菌X1776(ATCC31537);大腸菌株W3110(ATCC27325)及びK5772(ATCC53635)である。他の好ましい原核動物宿主細胞は、大腸菌属、例えば大腸菌(E. coli)、エンテロバクター、エルビニア(Erwinia)、クレブシエラ(Klebsiella)、プロテウス(Proteus)、サルモネラ、例えばネズミチフス菌(Salmonella Typhimurium)、セラチア、例えばセラチア・マルセサンス(Serratia marcescans) 、及び赤痢菌、並びに桿菌、例えばバチルス・スブチルス(B. subtilis)及びバチルス・リチェニフォルミス(B. licheniformis)(例えば、1989年4月12日発行のDD266710に記載されたバチルス・リチェニフォルミス41P)、シュードモナス、例えば緑膿菌及びストレプトマイセスなどの腸内細菌科を含む。これらの例は限定ではなく例示である。株W3110は、組換えDNA生成物発酵のための共通の宿主株であるので一つの特に好ましい宿主又は親宿主である。好ましくは、宿主細胞は最小量のタンパク質分解酵素を分泌する。例えば、株W3110を、宿主にとって内因性のタンパク質をコードする遺伝子の遺伝子変異をもたらすように修飾してもよく、そのような宿主の例としては、完全な遺伝子型tonAを有する大腸菌W3110株1A2;完全な遺伝子型tonA ptr3を有する大腸菌W3110株9E4;完全な遺伝子型tonA ptr3 phoA E15 (argF−lac)169 degP ompT kan
rを有する大腸菌W3110株27C7(ATCC 55,244);完全な遺伝子型tonA ptr3 phoA E15 (argF-lac)169 degP ompT rbs7 ilvG kan
rを有する大腸菌W3110株37D6;非カナマイシン耐性degP欠失変異を持つ37D6株である大腸菌W3110株40B4;及び1990年8月7日発行の米国特許第4946783号に開示された変異周辺質プロテアーゼを有する大腸菌株を含む。あるいは、クローニングのインビトロ法、例えばPCR又は他の核酸ポリメラーゼ反応が好ましい。
【0083】
完全長抗体、抗体断片、及び抗体融合タンパク質は、特にグリコシル化及びFcエフェクター機能が不要であるとき、例えば治療的抗体が細胞障害性剤(例えば毒素)にコンジュゲートしており、イムノコンジュゲート自体が腫瘍細胞の破壊に効果を示すときは、細菌中で生成することができる。完全長抗体は循環においてさらに長い半減期を有する。大腸菌中の生成は、短時間で行うことができ、費用効率が高い。細菌中における抗体断片及びポリペプチドの発現については、例えば、米国特許第4648237号(Carter等)、同第5789199号(Joly等)、及び発現と分泌を最適化するための翻訳開始領域(TIR)シグナル配列について記載した同第5840523号(Simmons等)を参照されたい。これらの特許文献はここで参照することにより本発明に包含される。発現の後、抗体は、可溶性の画分中の大腸菌細胞のペーストから単離され、例えばアイソタイプに応じたプロテインA又はGカラムにより精製することができる。最終的な精製は、適切な細胞(例えば、CHO細胞)に発現された抗体を精製するプロセスと同様に実行することができる。
【0084】
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母菌のような真核微生物は、所望のポリペプチドをコードするベクターのための適切なクローニング又は発現宿主である。サッカロミセス・セレヴィシアは、通常用いられる下等真核生物宿主微生物である。他に、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)(Beach及びNurse, Nature, 290: 140 [1981]; 1985年5月2日公開の欧州特許第139383号);クリュイベロミセス宿主(Kluyveromyces hosts)(米国特許第4943529号; Fleer等, Bio/Technology, 9: 968-975 (1991))、例えばクリュイベロミセスラクチス(K. lactis)(MW98-8C, CBS683, CBS4574; Louvencourt等, J. Bacteriol., 154(2): 737-742 [1983])、クリュイベロミセス・フラギリス(K. fragilis)(ATCC12424)、クリュイベロミセス・ブルガリクス(K. bulgaricus)(ATCC16045)、クリュイベロミセス・ウィケラミイ(K. wickeramii)(ATCC24178)、クリュイベロミセス・ワルチイ(K. waltii)(ATCC56500)、クリュイベロミセス・ドロソフィラルム(K. drosophilarum)(ATCC36906; Van den Berg等, Bio/Technology, 8: 135 (1990))、クリュイベロミセス・テモトレランス(K. thermotolerans)及びクリュイベロミセス・マルキシアナス(K. marxianus);ヤロウィア(yarrowia)(欧州特許第402226号);ピシア・パストリス(Pichia pastoris)(欧州特許第183070号; Sreekrishna等, J. Basic Microbiol, 28: 265-278 [1988]);カンジダ;トリコデルマ・レーシア(Trichoderma reesia)(欧州特許第244234号);アカパンカビ(Case等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76: 5259-5263 [1979]);シュワニオマイセス(Schwanniomyces)、例えばシュワニオマイセス・オクシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)(1990年10月31日公開の欧州特許第394538号);及び糸状真菌、例えば、ニューロスポラ、ペニシリウム、トリポクラジウム(Tolypocladium)(1991年1月10日公開の国際公開91/00357);及びアスペルギルス宿主、例えばアスペルギルス・ニダランス(Ballance等, Biochem. Biophys. Res. Commun., 112: 284-289 [1983]; Tilburn等, Gene, 26: 205-221 [1983]; Yelton等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81: 1470-1474 [1984])及びアスペルギルス・ニガー(Kelly及びHynes, EMBO J., 4: 475-479 [1985])が含まれる。ここで好ましいメチロトロピック(C1化合物資化性、Methylotropic)酵母は、これらに限られないが、ハンセヌラ(Hansenula)、カンジダ、クロエケラ(Kloeckera)、ピシア(Pichia)、サッカロミセス、トルロプシス(Torulopsis)、及びロドトルラ(Rhodotorula)からなる属から選択されたメタノールで成長可能な酵母を含む。この酵母の分類の例示である特定の種のリストは、C. Anthony, The Biochemistry of Methylotrophs, 269 (1982)に記載されている。
【0085】
グリコシル化ポリペプチド生成の発現に適した宿主細胞は、多細胞生物から由来のものである。非脊椎動物細胞の例には、植物細胞、例えば綿、トウモロコシ、ジャガイモ、大豆、ペチュニア、トマト及びタバコの細胞培養と同様に、ショウジョウバエS2及びヨトウ(spodoptera)Sf9等の昆虫細胞が含まれる。多くのバキュロウイルス株及び変異体、及びヨトウガ(Spodoptera frugiperda)(幼虫(caterpillar))、ネッタイシマカ(蚊)、ヒトスジシマカ(蚊)、キイロショウジョウバエ(ショウジョウバエ)、及びカイコ等の宿主に対応する許容性昆虫宿主細胞が同定されている。種々のトランスフェクション用のウイルス株、例えばオートグラファ・カルフォルニカ(Autographa californica)NPVのL−1変異株、カイコNPVのBm-5株が公に入手でき、このようなウイルスは、本発明に係るウイルスとして、特に、ヨトウガ細胞のトランスフェクションのために使用してもよい。
しかし、最大の関心は脊椎動物細胞に向けられ、培養(組織培養)した脊椎動物細胞の増殖がルーチン作業となった。有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、SV40(COS−7,ATCC CRL1651)で形質転換させたサル腎CV1細胞株;ヒト胚芽腎細胞株(293又は懸濁培養で成長するようにサブクローン化された293細胞,Graham等,J.Gen Virol.,36:59 (1977));ベビーハムスター腎細胞(BHK,ATCC CCL10);チヤイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO,Urlaub等, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216 (1980));マウスセルトリ細胞(TM4,Mather,Biol.Reprod.,23:243-251 (1980));サル腎細胞(CV1 ATCC CCL70);アフリカミドリザル腎細胞(VERO−76,ATCC CRL-1587);ヒト頚管腫瘍細胞(HELA,ATCC CCL2);イヌ腎細胞(MDCK,ATCC CCL34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A,ATCC CRL1442);ヒト肺細胞(W138,ATCC CCL75);ヒト肝細胞(Hep G2,HB 8065);マウス乳房腫瘍細胞(MMT 060562,ATCC CCL51);TRI細胞(Mather等,Annals N.Y.Acad.Sci.,383:44-68 (1982));MRC5細胞;FS4細胞;及びヒト肝臓癌細胞(HepG2)である。
宿主細胞は、所望のポリペプチドの生成のために上述の発現又はクローニングベクターで形質転換され、プロモーターを誘発し、形質転換体を選出し、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適切に修正した通常の栄養培地で培養される。
【0086】
3.複製可能なベクターの選択及び使用
対応するLY6ポリペプチドをコードする核酸(例えば、cDNA又はゲノムDNA)は、クローニング(DNAの増幅)又は発現のために複製可能なベクター内に挿入される。様々なベクターが公的に入手可能である。ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス粒子、又はファージの形態とすることができる。適切な核酸配列が、種々の手法によってベクターに挿入される。一般に、DNAはこの分野で周知の技術を用いて適当な制限エンドヌクレアーゼ部位に挿入される。ベクター成分としては、一般に、これらに制限されるものではないが、一又は複数のシグナル配列、複製開始点、一又は複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列を含む。これらの成分の一又は複数を含む適当なベクターの作成には、当業者に知られた標準的なライゲーション技術を用いる。
所望のポリペプチドは直接的に組換え手法によって生成されるだけではなく、シグナル配列あるいは成熟タンパク質あるいはポリペプチドのN-末端に特異的切断部位を有する他のポリペプチドである異種性ポリペプチドとの融合ペプチドとしても生成される。一般に、シグナル配列はベクターの成分であるか、ベクターに挿入される成熟配列をコードするDNAの一部である。シグナル配列は、例えばアルカリフォスファターゼ、ペニシリナーゼ、lppあるいは熱安定性エンテロトキシンIIリーダーの群から選択される原核生物シグナル配列であってよい。酵母の分泌に関しては、シグナル配列は、酵母インベルターゼリーダー、アルファ因子リーダー(酵母菌属(Saccharomyces)及びクリュイベロミセス(Kluyveromyces)α因子リーダーを含み、後者は米国特許第5,010,182号に記載されている)、又は酸ホスフォターゼリーダー、カンジダ・アルビカンス(C.albicans)グルコアミラーゼリーダー(1990年4月4日発行の欧州特許第362179号)、又は1990年11月15日に公開された国際公開90/13646に記載されているシグナルであり得る。哺乳動物細胞の発現においては、哺乳動物シグナル配列は、同一あるいは関連種の分泌ポリペプチド由来のシグナル配列並びにウイルス分泌リーダーのようなタンパク質の直接分泌に使用してもよい。
【0087】
発現及びクローニングベクターは共に一又は複数の選択された宿主細胞においてベクターの複製を可能にする核酸配列を含む。そのような配列は多くの細菌、酵母及びウイルスについてよく知られている。プラスミドpBR322に由来する複製開始点は大部分のグラム陰性細菌に好適であり、2μプラスミド開始点は酵母に適しており、様々なウイルス開始点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSV又はBPV)は哺乳動物細胞におけるクローニングベクターに有用である。
発現及びクローニングベクターは、典型的には、選べるマーカーとも称される選択遺伝子を含む。典型的な選択遺伝子は、(a)アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートあるいはテトラサイクリンのような抗生物質あるいは他の毒素に耐性を与え、(b)栄養要求性欠陥を補い、又は(c)複合培地から得られない重要な栄養素を供給するタンパク質をコードしており、例えばバシリのD-アラニンラセマーゼをコードする遺伝子がある。
哺乳動物細胞に適切な選べるマーカーの例は、DHFRあるいはチミジンキナーゼのように、所望のタンパク質をコードする核酸を取り込むことのできる細胞成分を同定することのできるものである。野生型DHFRを用いた場合の好適な宿主細胞は、Urlaub等により, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980)に記載されているようにして調製され増殖されたDHFR活性に欠陥のあるCHO株化細胞である。酵母菌中での使用に好適な選択遺伝子は酵母プラスミドYRp7に存在するtrp1遺伝子である[Stinchcomb等, Nature, 282:39(1979);Kingsman等, Gene, 7:141(1979);Tschemper等, Gene, 10:157(1980)]。trp1遺伝子は、例えば、ATCC番号44076あるいはPEP4-1のようなトリプトファンで成長する能力を欠く酵母菌の突然変異株に対する選択マーカーを提供する[Jones, Genetics, 85:12 (1977)]。
【0088】
発現及びクローニングベクターは、通常、所望のアミノ酸配列をコードする核酸配列に作用可能に結合し、mRNA合成を方向付けるプロモーターを含む。種々の有能な宿主細胞により認識されるプロモーターが知られている。原核生物宿主との使用に適したプロモーターはβ-ラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系[Chang等, Nature, 275:615 (1978); Goeddel等, Nature, 281:544 (1979)]、アルカリフォスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系[Goeddel, Nucleic Acids Res., 8:4057 (1980); 欧州特許第36,776号]、及びハイブリッドプロモーター、例えばtacプロモーター[deBoer等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80:21-25 (1983)]を含む。細菌系で使用するプロモーターもまた、所望のタンパク質配列をコードするDNAと作用可能に結合したシャイン・ダルガーノ(S.D.)配列を有する。
酵母宿主との使用に適したプロモーター配列の例としては、3-ホスホグリセラートキナーゼ[Hitzeman 等, J. Biol. Chem., 255:2073 (1980)]又は他の糖分解酵素[Hess 等, J. Adv. Enzyme Reg., 7:149 (1968);Holland, Biochemistry, 17:4900(1978)]、例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセレートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオセリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、及びグルコキナーゼが含まれる。
他の酵母プロモーターとしては、成長条件によって転写が制御される付加的効果を有する誘発的プロモーターであり、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロムC、酸フォスファターゼ、窒素代謝と関連する分解性酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、及びマルトース及びガラクトースの利用を支配する酵素のプロモーター領域がある。酵母菌での発現に好適に用いられるベクターとプロモーターは欧州特許第73657号に更に記載されている。
【0089】
哺乳動物の宿主細胞におけるDNA転写は、例えば、ポリオーマウイルス、伝染性上皮腫ウイルス(1989年7月5日公開の英国特許第2211504号)、アデノウイルス(例えばアデノウイルス2)、ウシ乳頭腫ウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス及びサルウイルス40(SV40)のようなウイルスのゲノムから得られるプロモーター、異種性哺乳動物プロモーター、例えばアクチンプロモーター又は免疫グロブリンプロモーター、及び熱衝撃プロモーターから得られるプロモーターによって、このようなプロモーターが宿主細胞系に適合し得る限り制御される。
所望のポリペプチドをコードするDNAの転写は、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することによって増強され得る。エンハンサーは、通常は約10から300塩基対で、プロモーターに作用してその転写を増強するDNAのシス作動要素である。哺乳動物遺伝子由来の多くのエンハンサー配列が現在知られている(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン及びインスリン)。しかしながら、典型的には、真核細胞ウイルス由来のエンハンサーが用いられるであろう。例としては、複製開始点の後期側のSV40エンハンサー(100−270塩基対)、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製開始点の後期側のポリオーマエンハンサー及びアデノウイルスエンハンサーが含まれる。エンハンサーは、前記アミノ酸配列のコード化配列の5’又は3’位でベクター中にスプライシングされ得るが、好ましくはプロモーターから5’位に位置している。
また真核生物宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、又は他の多細胞生物由来の有核細胞)に用いられる発現ベクターは、転写の終結及びmRNAの安定化に必要な配列も含む。このような配列は、真核生物又はウイルスのDNA又はcDNAの通常は5’、時には3’の非翻訳領域から取得できる。これらの領域は、このセクションに記載した対応する抗体、ポリペプチド又はオリゴペプチドをコードするmRNAの非翻訳部分にポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含む。
組換え脊椎動物細胞培養での対応する抗体、ポリペプチド、又はオリゴペプチドの合成に適応化するのに適切な他の方法、ベクター及び宿主細胞は、Gething等, Nature, 293:620-625 (1981); Mantei等, Nature, 281:40-46 (1979); 欧州特許第117060号;及び欧州特許第117058号に記載されている。
【0090】
4.宿主細胞の培養
LY6ポリペプチドを生成するために用いられる宿主細胞は種々の培地において培養することができる。市販培地の例としては、ハム(Ham)のF10(シグマ)、最小必須培地((MEM),シグマ)、RPMI-1640(シグマ)及びダルベッコの改良イーグル培地((DMEM),シグマ)が宿主細胞の培養に好適である。また、Ham等, Meth. Enz. 58:44 (1979), Barnes等, Anal. Biochem. 102:255 (1980), 米国特許第4767704号;同4657866号;同4927762号;同4560655号;又は同5122469号;国際公開第90/03430号;国際公開第87/00195号;又は米国特許再発行第30985号に記載された任意の培地も宿主細胞に対する培養培地として使用できる。これらの培地はいずれも、ホルモン及び/又は他の成長因子(例えばインスリン、トランスフェリン、又は表皮成長因子)、塩類(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びリン酸塩)、バッファー(例えばHEPES)、ヌクレオシド(例えばアデノシン及びチミジン)、抗生物質(例えば、ゲンタマイシン(商品名)薬)、微量元素(マイクロモル範囲の最終濃度で通常は存在する無機化合物として定義される)及びグルコース又は同等のエネルギー源を必要に応じて補充することができる。任意の他の必要な補充物質もまた当業者に知られている適当な濃度で含まれてもよい。培養条件、例えば温度、pH等々は、発現のために選ばれた宿主細胞について以前から用いられているものであり、当業者には明らかであろう。
【0091】
5.遺伝子増幅/発現の検出
遺伝子の増幅及び/又は発現は、ここで提供された配列に基づき、適切に標識されたプローブを用い、例えば、従来よりのサザンブロット法、mRNAの転写を定量化するノーザンブロット法[Thomas, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:5201-5205 (1980)]、ドットブロット法(DNA分析)、又はインサイツハイブリダイゼーションによって、直接的に試料中で測定することができる。或いは、DNA二本鎖、RNA二本鎖、及びDNA−RNAハイブリッド二本鎖又はDNA−タンパク質二本鎖を含む特定の二本鎖を認識することができる抗体を用いてもよい。抗体を順に標識することができ、二本鎖が表面に結合される場合はアッセイを行って、表面上に二本鎖が形成されたら、二本鎖に二本鎖に結合された抗体の存在を検出することができる。
あるいは、遺伝子の発現は、遺伝子産物の発現を直接的に定量化する免疫学的な方法、例えば細胞又は組織切片の免疫組織化学的染色及び細胞培養又は体液のアッセイによって、測定することもできる。試料液の免疫組織化学的染色及び/又はアッセイに有用な抗体は、モノクローナルでもポリクローナルでもよく、任意の哺乳動物で調製することができる。簡便には、本方法に適した抗体は、天然配列ポリペプチド又はオリゴペプチドに対して、又はDNAに融合し、そのようなポリペプチド又はオリゴペプチドの特異的抗体エピトープをコードする外因性配列に対して調製され得る。
【0092】
6.ポリペプチドの精製
ポリペプチドは、培養液又は宿主細胞の可溶化液から回収される。膜に結合している場合、ポリペプチドは、適切な洗剤溶液(例えばトリトンX100)を用いて又は酵素の切断により、膜から解放することができる。前記ポリペプチドの発現に用いられる細胞は、凍結融解サイクル、超音波処理、機械的破壊、又は細胞溶解剤などの種々の化学的又は物理的手段によって破壊することができる。
前記ポリペプチドを、組換え細胞タンパク又はポリペプチドから精製することが望ましい場合がある。適切な精製手順の例である次の手順により精製される:すなわち、イオン交換カラムでの分画;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカ又はカチオン交換樹脂、例えばDEAEによるクロマトグラフィー;クロマトフォーカシング;SDS-PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;例えばセファデックスG-75を用いるゲル濾過;IgGのような汚染物を除くプロテインAセファロースカラム;及び所望の分子のエピトープタグ形態を結合させる金属キレート化カラムである。この分野で知られ、例えば、Deutscher, Methods in Enzymology, 182 (1990);Scopes, Protein Purification: Principles and Practice, Springer-Verlag, New York (1982)に記載された多くのタンパク質精製方法を用いることができる。選ばれる精製過程は、例えば、用いられる生成方法及び特に本発明の方法のために生成される特定の抗体、ポリペプチド又はオリゴペプチドの性質に依存する。
組換え技術を使用する場合、LY6ポリペプチドは細胞内、細胞膜周辺腔内に生成されるか、又は培地に直接分泌され得る。このような分子が細胞内に生成される場合、第1工程として、粒状屑、宿主細胞又は溶菌断片を、例えば遠心分離又は超遠心分離にかけて取り除く。Carter等, Bio/Technology 10:163-167(1992)は、大腸菌の細胞膜周辺腔に分泌される抗体を単離するための手順について記載している。簡単に述べると、細胞ペーストを酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、及びフェニルメチルスルホニルフロリド(PMSF)の存在下で、30分以上かけて解凍する。細胞屑は遠心分離により除去することができる。抗体が培地へ分泌されている場合、そのような発現系からの上清は、一般的には、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えばAmicon又はMillipore Pelliconの限外濾過ユニットを用いて最初に濃縮する。PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤を上記の任意の工程に含めてタンパク質分解を阻害してもよく、抗生物質を含めて外来性の汚染物の成長を防止してもよい。
【0093】
精製は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、及びアフィニティークロマトグラフィーを用いて行うことができ、アフィニティークロマトグラフィーが好ましい精製技術である。アフィニティリガンドとしてのプロテインAの適合性は抗体に存在する免疫グロブリンFc領域の種及びアイソタイプに依存する。プロテインAは、ヒトγ1、γ2、又はγ4重鎖に基づく抗体の精製に用いることができる(Lindmark等, J. Immunol. Meth. 62: 1-13 [1983])。プロテインGは、全てのマウスアイソタイプ及びヒトγ3に推奨されている(Guss等, EMBO J. 5: 15671575 [1986])。アフィニティリガンドが結合されるマトリクスはアガロースであることが最も多いが、他の材料も使用可能である。孔制御ガラスやポリ(スチレンジビニル)ベンゼン等の機械的に安定なマトリクスは、アガロースで達成できるものより早い流速及び短い処理時間を可能にする。抗体がC
H3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J.T. Baker, Phillipsburg, NJ)が精製に有用である。イオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上のクロマトグラフィー、アニオン又はカチオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラム)上でのヘパリンSEPHAROSE(商品名)クロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、及び硫酸アンモニウム沈殿などの他のタンパク質精製技術も、回収される抗体に応じて利用可能である。
任意の予備精製工程に続いて、対象とする抗体と汚染物とを含む混合物に、約2.5−4.5のpHでの溶離バッファーを用いて、低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーを施してもよく、好ましくは低い塩濃度(例えば、約0−0.25M塩)で実施される。
【0094】
H.製薬製剤
本発明により使用される治療的製剤(「治療剤」)は、所望される程度の純度を持つ治療剤を、凍結乾燥製剤又は水性溶液の形態で、最適な製薬上許容される担体、賦形剤又は安定化剤と混合することにより調製され保存される(Remington: The Science of Practice of Pharmaccy, 20
th edition, Gennaro, A.等編、Philadelphia College of Pharmacy and Science (2000))。許容される担体、賦形剤、又は安定化剤は、用いられる用量及び濃度で受容者に非毒性であり、酢酸、Tris、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド;ヘキサメトニウムクロライド;ベンズアルコニウムクロライド、ベンズエトニウムクロライド;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリジン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;トレハロース及び塩化ナトリウムなどのトニシファイヤー;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトールなどの糖;ポリソルベート等の界面活性剤;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);及び/又はトゥイーン(TWEEN)(登録商標)、プルロニクス(PLURONICS)(登録商標)、又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。好ましくは、抗体は、5−200mg/mlの濃度、好ましくは10−100mg/mlの濃度の抗体からなる。
【0095】
ここでの製剤は、また、治療すべき特定の徴候の必要に応じて一以上の活性化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を持つものも含んでよい。例えば、前記治療剤に加えて、1つの製剤に、例えば、第二のそのような治療剤、又は神経膠腫の成長に影響を与える成長因子のような何らかの他の標的に対する抗体のような、追加の抗体を含めることが望ましい。あるいは、又はさらに、この組成物は、更に化学療法剤、細胞障害性剤、サイトカイン、増殖阻害剤、抗-ホルモン剤、及び/又は心臓保護剤を含んでもよい。このような分子は、意図する目的にとって有効な量の組み合わせで適切に存在する。
また、活性成分は、例えばコアセルベーション技術により又は界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えば、各々ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセル中、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミン小球、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)中、又はマイクロエマルション中に包括されていてもよい。これらの技術は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 上掲に開示されている。
徐放性製剤を調製してもよい。徐放性製剤の好適な例は、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスを含み、このマトリクスは成形された物品、例えばフィルム、又はマイクロカプセルの形状である。徐放性マトリクスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリアクチド(米国特許第3773919号)、L-グルタミン酸及びγエチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(登録商標)(乳酸-グリコール酸コポリマーと酢酸リュープロリドの注射可能な小球)などの分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、ポリ-(D)-(-)-3-ヒドロキシブチル酸が含まれる。
インビボ投与に使用される製剤は無菌でなければならない。これは、滅菌濾過膜を通した濾過により容易に達成される。
【0096】
炎症性腸疾患の診断及び/又は治療の方法
IBDに罹患している哺乳動物などの、哺乳動物の胃腸組織及び細胞におけるLY6発現を定量するために、種々の診断アッセイが利用可能である。一実施形態では、LY6ポリペプチドの過剰発現は、RT−PCR、インサイツハイブリダイゼーション、マイクロアレイ分析、及び免疫組織化学(IHC)によって分析される。哺乳動物(例えば、限定しないが、ヒト)から採取した胃腸生検からの、新鮮、凍結又はパラフィン包埋組織切片(例えば、大腸又は具体的にはS状結腸)に対し、RT−PCR、インサイツハイブリダイゼーション、マイクロアレイ分析及び/又はIHCアッセイを行うことができる。
或いは、又は付加的に、FISHアッセイ、例えばINFORM(登録商標)(Ventana, Arizonaから販売)又はPATHVISION(登録商標)(Vysis, Illinois)を、ホルマリン固定、パラフィン包埋された組織で実施して、組織試料又は生検におけるLY6発現及び/又は上方制御(生じている場合)の範囲を測定してもよい。
LY6発現は、インビボ診断アッセイを使用して評価することができ、例えば検出される分子に結合し、検出可能な標識(例えば、放射性同位体又は蛍光標識)が付けられた分子(例えば抗体、オリゴペプチド又は小分子)を投与し、標識の局在化について患者を外部スキャニングする。
現在、IBDの段階に応じて、治療には、次の治療:患部腸組織の外科手術による除去、それに限定しないが化学療法剤を含む治療剤の投与、食事療法及び生活習慣の管理の一つ、又はそれらを組合せたものが含まれる。IBDの治療に有用な治療剤又は化学療法剤は当技術分野において既知であり、各治療剤及び化学療法剤は本明細書に開示する。
特に、パリクタキセル及び改変誘導体との組合せ治療が考えられる(例えば、欧州特許第0600517号を参照のこと)。前述の抗体、ポリペプチド、オリゴペプチド又は有機分子は治療的有効量の化学療法剤と共に投与されるであろう。他の実施態様では、そのような抗体、ポリペプチド、オリゴペプチド又は有機分子は化学療法剤、例えばパクリタキセルの活性及び効力を高めるための化学治療と組合せて投与される。医師用卓上参考書(PDR)には、種々の癌治療に使用されるこれらの薬剤の用量が開示されている。治療的に有効な上述の化学療法剤の投薬計画及び用量は、治療される特定の癌、疾患の程度、及び当該技術分野の医師によく知られている他の因子に依存し、医師が決定することができる。
【0097】
治療剤又は化学療法剤は、例えばボーラスとしての静脈内投与といった既知の方法に従って、或いは一定の時間に亘る連続注入により、頭蓋内、脳脊髄内、関節内、くも膜下腔内、静脈内、動脈内、皮下、経口、局所的、又は吸入経路により、ヒト患者に投与される。
本発明は、診断ステップ及び治療的処置ステップを含む方法を提供する。一実施態様では、本発明は、哺乳動物の対象に炎症性腸疾患(IBD)を検出する方法を提供し、本方法は、(1)(a)対象から採取した組織又は細胞の試験試料と、(b)コントロール試料とにおけるLY6ポリペプチドをコードする核酸又は遺伝子の発現レベルを検出し、コントロール試料と比較して、試験試料中のLY6核酸又は遺伝子の発現レベルが高い場合、試験試料を採取した対象者にIBDの存在が示されるステップと、(2)対象に対し、有効量のIBD治療剤を投与するステップとを含む。一実施態様では、IBD治療剤は別のIBD関連分子のアンタゴニストである。本発明は、IBDに異なって発現される様々なIBD関連分子を考慮する。一実施態様では、IBD関連分子はIBDに異なって発現される分子である。別の実施態様では、IBD関連分子はIBDに過剰発現される。また別の実施態様では、過剰発現されたIBD関連分子はインテグリンである。他の一実施態様では、IBD関連分子はインテグリン、β7(ITGB2)(参照によりその内容をここに包含する国際公開第2006/026759号参照)である。ここで使用される「IBD治療剤」という用語は、IBD関連分子のアンタゴニストを意味する。一実施態様では、IBD治療剤はインテグリンのアンタゴニストである。別の実施態様では、IBD治療剤はITGB7のアンタゴニストである。また別の実施態様では、IBD治療剤は、配列番号68として示される核酸配列によってコードされる配列番号69に示されるポリペプチドのアンタゴニストである。
【0098】
J.製造品及びキット
診断に使用するために、本製造品は、容器と、哺乳動物の胃腸組織におけるLY6(例えば、限定するものではないが、LY6、LYPD1、LYPD3、及び/又はLYPD5)の検出及び発現に使用できることを示す、容器に付与又は添付されるラベル又はパッケージ挿入物を含んでなる。一実施態様では、哺乳動物はヒトである。一実施態様では、組織又は細胞は胃腸組織又は細胞である。一実施態様では、検出は、コントロール試料に対する定量化を含む。一実施態様では、容器、ラベル又はパッケージ挿入物は、胃腸組織又は細胞が哺乳動物の大腸由来のものであることを示す。一実施態様では、容器、ラベル又はパッケージ挿入物は、コントロール試料と比較してLY6の発現が強い場合、哺乳動物に、限定するものではないがCD及び/又はUCを含むIBDが示唆されることを示す。適切な容器は、例えば、瓶、バイアル、シリンジ等を含む。容器は、ガラス又はプラスチックなどの多様な材料から形成されてよい。加えて、製造品はさらに、検出を行うのに有用なバッファー又はその他の試薬(検出可能な標識)を含む第2の容器を具備してもよい。さらに、他のバッファー、希釈剤、フィルター、及び色素を含む商業的及び使用者の見地から望ましい他の材料を含んでもよい。
LY6ポリペプチドの単離及び精製において、キットは、ビーズ(例えばセファロースビーズ)に結合した対応するLY6結合試薬を含むことが可能である。インビトロにおけるLY6ポリペプチドの検出及び定量化、例えばELISA又はウェスタンブロットのためのそのような分子を含むキットを提供することもできる。製造品と同様、キットも容器と容器に付与又は添付されるラベル又は能書を含んでなる。容器には、本発明に使用できる少なくとも1つのそのようなLY6結合抗体、オリゴペプチド又は有機分子を含有する組成物が収容されている。希釈液及びバッファー、コントロール抗体等を収容する付加的な容器を具備していてもよい。ラベル又は能書は、組成物についての記載、並びに意図するインビトロ又は診断での使用に関する注意書きを提供するものである。
【0099】
K.センス及びアンチセンスLY6コード化核酸
LY6遺伝子をコードする核酸に結合することが予測される分子には、センス及びアンチセンスオリゴヌクレオチドが含まれ、これには標的LY6 mRNA又はDNA配列に結合できる一本鎖核酸配列(RNA又はDNAのいずれか)が含まれる。本発明によると、アンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドは、LY6 DNA又はその相補鎖のコード化領域の断片を含む。与えられたタンパク質をコードするcDNA配列に基づいて、アンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドを得る能力は、例えば、Stein及びCohen(Cancer Res. 48:2659, 1988)及び van der Krol等(BioTechniques 6:958, 1988)に記載されている。
YL6遺伝子にハイブリダイズできるセンス及び/又はアンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、本発明により哺乳動物の組織又は細胞試料胃腸組織又は細胞中におけるLY6 DNA又はmRNAの存在を検出するのに有用である。本発明に従って使用されるセンス及び/又はアンチセンス化合物は、固相合成のよく知られた技術によって簡便かつ常套的に製造することができる。そのような合成のための装置は、例えばApplied Biosystems (Foster City, Calif.)を含む幾つかのメーカーによって販売されている。当該分野で知られているそのような合成のための任意の他の手段を付加的に又は別に使用してもよい。オリゴヌクレオチド、例えばホスホロチオネート及びアルキル化誘導体を調製するために類似の技術を使用することはよく知られている。本発明の化合物は、また、取り込み、分散及び/又は吸収を補助するための他の分子、分子構造又は化合物混合物、例えばリポソーム、レセプター標的分子、経口、直腸、局所適用又は他の製剤と、混合、カプセル化、コンジュゲート又はその他、組み合わされてもよい。取り込み、分散及び/又は吸収を補助する製剤の調製を教示する代表的な米国特許には、限定されるものではないが、米国特許第5108921;5354844;5416016;5459127;5521291;5543158;5547932;5583020;5591721;4426330;4534899;5013556;5108921;5213804;5227170;5264221;5356633;5395619;5416016;5417978;5462854;5469854;5512295;5527528;5534259;5543152;5556948;5580575;及び5595756が含まれ、これらのそれぞれが出典明示によりここに取り込まれる。
【0100】
センス及びアンチセンスオリゴヌクレオチドの例には、限定されるものではないが、PCR、RT−PCR、ハイブリダイゼーション法、インサイツハイブリダイゼーションなどに有用なプライマー及びプローブが含まれる。
センス又はアンチセンスオリゴヌクレオチドの他の例は、国際公開90/10048に記載されているもののような、有機部分、及びオリゴヌクレオチドの標的核酸配列への親和性を向上させる他の部分、例えばポリ-(L-リジン)に共有結合したオリゴヌクレオチドを含む。さらにまた、エリプチシン等の挿入剤及びアルキル化剤又は金属錯体をセンス又はアンチセンスオリゴヌクレオチドに結合させ、アンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドの標的ヌクレオチド配列への結合特異性を改変してもよい。
アンチセンス又はセンスRNA又はDNA分子は、通常は少なくとも約5ヌクレオチド長、あるいは少なくとも約6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、又は1000ヌクレオチド長であり、この文脈の「約」という用語は、参照ヌクレオチド配列長が、その参照長の±10%であることを意味する。
【実施例】
【0101】
以下の非限定的な実施例は、説明のために提供されているのであって、本発明の範囲を制限するものではない。実施例で言及されている市販試薬は、特に示さない限りは製造者の使用説明に従い使用した。ATCC受託番号により以下の実施例及び明細書全体の中で特定されている細胞の供給源はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、マナッサス、バージニアである。
【0102】
実施例1:材料および方法
試薬、細胞およびマウス: IFNγ、TNFαおよびIL1βは、Peprotech
TM(Rocky Hill, NJ)から入手した。IFNαは、Hycult Biotechnology
TM(The Netherlands)から入手した。架橋実験のために、抗-KLHコントロール抗体、抗-LY6A(クローンE13-161.7又はD7)は、Pharmingen
TM(San Diego, CA)から入手した。抗-LY6C(クローンHK1.4)は、Southern Biotech
TM(Birmingham, AL)から入手した。
Balb/cバックグラウンドのSCIDマウスに、既に記述されているように(Powrie, F. et al., (1994) Immunity 1:553-562)、慢性CD45RB
high転移大腸炎を誘導した。自然発生大腸炎を発症する、129バックグラウンドのIL10−/−マウス(Kuhn, R. et al., (1993) Cell 75:263-274)を、11週目と13週間目の間で屠殺した。大腸は、記載した実験に用いるまでOCTにて即座に凍結させた。近位の大腸、中央大腸、遠位性大腸および直腸を、0−5(0=正常な腸、5=重症疾患)のスケールを用いてスコアを付けた。スコアを合計して、各々の動物についての総大腸炎重症度スコアとした。
若年成体マウス大腸細胞(YAMC)細胞株(Robert Whitehead, Vanderbilt University Medical Center, Nahville, TNより市販)は、既に記載されているように(Whitehead, R.H. et al, (1993) Proc Natl Acad Sci U S A 90:587-591)、インターフェロン-γ依存性プロモータの制御下に温度感受性T抗原(tsTag)を含むトランスジェニック動物であるImmortomouse
TMから入手した。YAMC細胞は、5単位/mlのIFN-γ(Peprotech
TM, New Jersey)の存在下で、32℃の許容条件下で増殖するが、IFN-γを取り除いた37℃(非許容条件)ではもはや増殖しない。
YAMC細胞は、5%FBS、2mM L-グルタミン、ペニシリン/ストレプトマイシン、5U/mlのIFNγおよびN−2サプリメントを含むRPMI(Invitrogen
TM, Carlsbad, CA)中で培養した。細胞は、実験前の24時間、及び実験の継続期間の間、非許容条件下で培養した。
CMT93細胞は、10%FBS、2mM L-グルタミンおよびペニシリン/ストレプトマイシンを含むDMEMで培養したATCC(ATCC番号(登録商標) CCL-223
TM、ATCC、Manassas, VA)から入手した。
【0103】
レーザーキャプチャ電子顕微鏡法およびRNA精製: 10−12μmの切片をLCMメンブランスライドに用いた(Molecular Machines
TM, Glattbrugg, Switzerland)。スライドを簡略H&E染色(およそ5分の総時間)を行い、陰窩上皮細胞を組織学的に識別し、MMI Cellcut
TM顕微鏡(Molecular Machines, Glattbrugg, Switzerland)を用いて解剖した。RNAは、Arcturus
TMPicopure
TMRNA精製キットと製造業者のプロトコール(Arcturus
TM, Sunnyvale, CA)を用いて切開した細胞から精製し、NanoDrop ND-1000
TM分光光度計(NanoDrop Technologies
TM, Wilmington, DE)を用いて定量化した。
マイクロアレイハイブリダイゼーションおよびデータ分析: 入力された総RNA試料の量と質は、ND-1000分光光度計(NanoDrop
TM Technologies, Montchanin, DE)とBioanalyzer 2100
TM(Agilent
TM Technologies, Palo Alto, CA)をそれぞれ用いて決定した。Cy-色素標識cRNAの調製とアレイハイブリダイゼーションのための方法はAgilent
TM Technologies (Palo Alto, CA)によって提供された。簡単にいうと、総RNA試料を、Input Fluorescent Linear Amplification
TMキット(Agilent
TM, Product# 5184-3523)を用いて、二本鎖のcDNAに、その後標識したcRNAに変換した。標識したcRNAを、RNeasy
TMミニキット(QiagenTM, San Diego, CA)を用いて精製し、次いで、ND-1000
TM分光光度計(Nanodrop
TM Technologies)を用いて定量化した。Cy-色素の取込みは、Novex
TMTBE-尿素ゲル(Invitrogen
TM, Carlsbad, CA)に標識したcRNAをラニングさせた後に、Typhoon
TMスキャナ(GE Healthcare
TM, Piscataway, NJ)上のゲルスキャニングを行って決定した。Cy-色素蛍光計数の量を決定するために、ゲル画像を、ImageQuant
TMソフトウェア(GE Healthcare
TM)を用いて分析した。およそ500000カウントのCy-色素標識したcRNAを断片化し、Agilentのインサイツハイブリダイゼーションキットプラス(Agilent
TM, Product# 5184-3568)に記載のようにAgilentの全マウスゲノムアレイにハイブリダイズした。LCM試料をCy5色素にて標識し、Cy3色素標識したユニバーサルマウス基準(Stratagene
TM, La Jolla, CA)に対してハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーション後、アレイを洗浄し、アセトニトリルにて乾燥して、Agilent
TMDNAマイクロアレイスキャナにスキャンした。アレイ画像ファイルをAgilent
TMのFeature Extraction
TMソフトウェア7.5を用いて分析し、Resolver
TM(Merck
TM, Seattle, WA)を用いて更なるデータ分析を行った。
Rosetta Resolver
TMソフトウェア(Rosetta Biosoftware
TM, Seattle, WA)を用いてデータを分析した。簡単にいうと、健康及び大腸炎の試料を別々に分類し、両側分散分析(p<0.05)を通過したプローブを選択した。これらのプローブは、健康な試料に対して大腸炎試料の2倍以上の大きな変化を示したプローブについて更に分析した。
【0104】
リアルタイム定量的RT−PCR: Taqman
TMGold
TMRT−PCRキットおよび試薬(Applied Biosystems
TM, Foster City, CA)を用いて抽出したRNAに対してRT−PCRを行った。すべての試料は、5'-FAM及び3'-TAMRA標識内部プローブを用いて遺伝子特異的プライマーにて実行した。記載されているように(Livak, K.J., and T.D. Schmittgen (2001) Methods 25:402-408)、2
−ΔΔCt法によってハウスキーピング遺伝子、SPF31、特異的プライマーと比較して分析を行った。プライマーおよびプローブは、Primer3
TMソフトウェア(Rozen, S., and H. Skaletsky (2000) Methods Mol Biol 132:365-386)を用いて設定するか、又は商業的に(Applied Biosystems
TM)入手した。これらのアッセイに使用するプライマーおよびプローブは以下の通りである。5'−3の方向で示す。
LY6A:
センス:CTT ACC CAT CTG CCC TCC TA (配列番号:39)
アンチセンス:CCT CCA TTG GGA ACT GCT AC (配列番号:40)
プローブ:TCC TGT TGC CAG GAA GAC CTC TGC (配列番号:41)
LY6C:
センス:ACT TCC TGC CCA GCA GTT AC (配列番号:42)
アンチセンス:GGC ACT GAC GGG TCT TTA GT (配列番号:43)
プローブ:CTG CCG CGC CTC TGA TGG AT (配列番号:44)
【0105】
免疫蛍光染色: 凍結組織を5μm切片に切断し、2.5ng/mlの抗-SCA−1(R&D Systems
TM, Minneapolis, MN)又は、ビオチン化した抗LY6C(Southern Biotech
TM, Birmingham, AL)にて染色した。スライドを洗浄して、Alexa Fluor
TM488コンジュゲートストレプトアビジンにて標識し、DAPI(Invitrogen
TM, Carlsbad, CA)を有するProlong Gold
TMを用いてマウントし、共焦点電子顕微鏡法にて視覚化した。
LY6分子の架橋: ケモカイン産生を生じる架橋したLY6ポリペプチドの能力は、プレートに結合した抗LY6C又は抗-KLH(コントロール)抗体とともにYAMC細胞をインキュベートし、ケモカインCXCL2、CXCL5およびCCL7の産生を測定することによって試験した。細胞膜の脂質ラフト形成が架橋に必要であるので、ケモカイン産生は通常のラフト形成(非コレステロール欠乏)の条件下と、コレステロール欠乏の条件下で試験した。
プレートに結合した抗体を用いた架橋のために、100μl中5μg/ml濃度の抗LY6C又は抗-KLH(コントロール)抗体を96ウェルプレートに加えるか、又は、2mlを60mm
2ディッシュに加えて、4℃で15時間かけてプレートに結合させた。コレステロール欠乏又は非コレステロール欠乏条件下で生育させたYAMC細胞(本明細書中、実施例5に示す)を、コレステロール非欠乏条件下で32℃で15時間、プレート結合抗体とともにインキュベートした。RNAを回収し、CXCL2、CXCL5、及びCCL7の発現レベルを決定した。アッセイを更に記載し、本明細書中の実施例5に結果を示す。
【0106】
siRNA阻害: マウスLY6Cに対する個々のsiRNAは、Dharmacon (Lafayette, CO)から入手した。SiRNAを、リポフェクタミン2000(Invitrogen)と標準的なプロトコールを用いてYAMC細胞に形質移入した。形質移入の72時間後に、細胞を回収して、ノックダウン効率を決定した。優れたノックダウン効率(定量的RT−PCRによる95%の阻害)に基づいて架橋実験のためにあるsiRNAを選別した。
CXCL5分泌: 刺激した細胞から示した時間点に上清を回収し、サイトカインCXCL5濃度をR&D Systems
TMから市販のキットと製造業者のプロトコールを用いてELISAにて決定した。検出のレベルは15pg/mlのCXCL5であった。
コレステロール欠乏:YAMC細胞は、4μM ロバスタチン及び250μM メバロネート(Sigma)の存在下にて37℃の無血清培地中で72時間培養した。細胞をプレートに播き、実験の間ロバスタチンとメバロネートにて維持した。
統計学: 群間の比較にはスチューデントt検定を用いた(*は、p<0.05を示す)。
【0107】
実施例2:IECの遺伝子発現パターンは大腸炎の間変化する
研究から、IECの遺伝子発現パターンが大腸炎のマウスモデル並びにヒトIBDにおいて有意に変化することが示された(Fahlgren, A., et al. (2004) Clin Exp Immunol 137:379-385;Brand, S. et al. (2006) Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol 290: G827-838;Ruiz, P.A. et al. (2005) J Immunol 174:2990-2999)。この実施例では、健康及び大腸炎のマウスのIECにおいて評価した遺伝子発現パターンを調べて、IBDにおいて変化した経路及び新規な遺伝子を明らかにした。
IBDの免疫病理に関与する遺伝子の同定は、CD45RB
Hi T細胞転移大腸炎マウスモデル並びにIL10
−/−マウスモデルの腸管上皮細胞(IEC)を評価することによって行った。これらマウスモデルはTh1調節不全に起因しており、ヒトのクローン病の多くの特徴を有している(Elson, C.O. et al. (2005) Immunol Rev 206:260-276;Bouma, G., and W. Strober (2003) Nat Rev Immunol 3:521-533)。レーザーキャプチャ顕微解剖(LCM)を用いて、マウスIBDの2つのモデルの健康及び大腸炎のマウスの大腸から陰窩IECを単離した。本明細書中の実施例1に記述されるように、RNAをこれら試料から抽出し、マイクロアレイ技術にて分析した。転移大腸炎モデルの大腸炎マウスのIECの遺伝子発現プロファイルにより1770のプローブが同定され、これらはコントロールマウスと比較して2倍よりも大きな発現変化を有していたのに対して、IL10−/−モデルは1140のプローブを同定した。両モデルにおいて重なり、2倍よりも大きな発現の変化を有するものが540プローブあり、これはおよそ400の異なる遺伝子に相当した(データは示さない)。
【0108】
実施例3:大腸炎の間IECにおいて影響を受ける経路および遺伝子
両モデルにおいて影響を受けるおよそ400の遺伝子のうち、抗原提示、TLRシグナル伝達および細胞遊走に関与する遺伝子は過剰提示された(表7)。表7では、数は、示すように、大腸炎のIL10
−/−モデル又は大腸炎のCD45RB
Hiモデルにおける、健康なマウスに対する大腸炎マウスのユニバーサル基準RNAと比較したときの倍数変化の標準偏差と平均を表す。結果は、いくつかのIEC発現遺伝子がIBDのマウスモデルの発現変化パターンの変化を示したことを示す。TLR2、CCL7、CXCL5およびICAM-1を含むこれら遺伝子の多くは、大腸炎の間に上皮発現が増加することが既に記載されており(Breider, M.A. et al. (1997) Vet Pathol 34:598-604;Uguccioni, M. et al. (1999) Am J Pathol 155:331-336;Z'Graggen, K. et al. (1997) Gastroenterology 113:808-816;Singh, J.C. et al. (2005) Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol 288: G514-524)、このことから、これらマイクロアレイにおいて得られた遺伝子発現パターンが大腸炎のIECの生物学を正確に反映していることを示唆する。
【0109】
表7
【0110】
IECは非専門APCとして機能してもよく(Snoeck, V. et al., (2005) Microbes Infect 7:997-1004;及びShao, L et al., (2005) Immunol Rev 206:160-176)、そして、これらマイクロアレイで得られた遺伝子発現パターンは、LMP7およびTAP1等の抗原プロセシングに関与する遺伝子、並びにIECの表面上での抗原の提示を促しうるMHCクラスI及びII遺伝子の上方制御にによって大腸炎の間、これら機能が亢進されることを示唆する。
マイクロアレイデータは、大腸炎のIECがケモカインの発現を変化させることによって免疫細胞を大腸に引きつけ、抗原提示に関与する遺伝子の発現を上方制御することによって浸潤性T細胞に抗原を提示しうるという概念を裏付けるものである。
【0111】
実施例4:LY6ファミリメンバーの発現は大腸炎のIECの表面上で強く上方制御される
分子のマウスLY6ファミリのメンバーは、転移大腸炎マウスモデル及びIL10−/−マウスモデルの両方において上方制御の程度だけでなく数も過剰提示されていた(
図23Aおよび23B)。これらの結果は、転移大腸炎モデルにおいてプールされ増幅されたIEC RNAのリアルタイム定量的RT−PCRにより確認された(データは示さない)。LY6ファミリメンバーの発現は疾患状態に特有であるので、これらLY6ファミリメンバーのいずれかをかなりのレベルで発現する健康なマウスはなかった。
造血性起源の細胞の表面でのマウスLY6分子の発現が知られているが、IECでの発現はまだ述べられていない(Bamezai, A. (2004) Arch Immunol Ther Exp (Warsz) 52:255-266;及びRock, K.L. et al. (1989) Immunol Rev 111:195-224)。マウスのLY6AおよびLY6Cの発現は、大腸内に存在する多くの非上皮性細胞、例えばT細胞および顆粒球上で検出可能である。健康及び大腸炎の大腸上のマウスのLY6AおよびLY6Cについて免疫蛍光染色を行った。マウスのLY6AおよびLY6Cのレベルは、健康なIECの表面上では極わずかであるか、欠如していた(それぞれ
図24Aおよび24C)。マウスのLY6AおよびLY6Cの発現は、大腸炎マウスの大腸全体にわたるIECの表面上で検出可能であった(それぞれ
図24Bおよび24D)。LY6A又はLY6Cの極性化の所見がなく、染色は尖端および基底側の膜に存在しており、LY6分子をいずれかの表面上のリガンドへ潜在的にアクセスできるようにする。これらの結果から、マウス大腸炎モデルにおいてマウスのLY6A及びLY6Cの上方制御を示すマイクロアレイ分析結果は混入している免疫細胞の流入によるものではないことが示唆される。
【0112】
実施例4:LY6遺伝子の転写は炎症性サイトカインによって刺激される
T細胞上のLY6発現は誘導され、I型およびII型IFNによって亢進される(Khodadoust, M.M., K.D. Khan, and A.L. Bothwell. 1999. Complex regulation of Ly-6E gene transcription in T cells by IFNs. J Immunol 163:811-819)。さらに、多くのサイトカインの発現は、活動中の大腸炎の間に大腸において上昇される(Niessner, M., and B.A. Volk. 1995. Altered Th1/Th2 cytokine profiles in the intestinal mucosa of patients with inflammatory bowel disease as assessed by quantitative reversed transcribed polymerase chain reaction (RT-PCR). Clin Exp Immunol 101:428-435)。
大腸炎の間に存在するサイトカインがIECのLY6ファミリメンバーの転写に作用するか否かを決定するために、我々は、YAMC細胞、条件的に不死化されたマウスIEC株をIL−1β、IFNα、TNFα、IFNγ又はTNFαおよびIFNγの組合せにて処理し、リアルタイム定量的RT−PCRによって同定されたすべてのマウスLY6遺伝子の転写を分析した(表8)。簡単にいうと、IECの示されたLY6ファミリメンバーのmRNAレベルを、示されたサイトカインにて15時間処理した後、リアルタイム定量的RT−PCRによって測定した。数は、未処理の培地コントロールに対する倍数変化(2−ΔΔCt法によって決定)を表す。*、P<0.05対培地コントロール。†、p<0.05対IFNγ処理細胞。以下のLY6ファミリメンバーを試験したところ、処理に関係なく、試料中に検出されなかった。LY6K、Lypd3、Lypd4、Lypd5、LY6g5b、Ly6g6d、Ly6g6e、Slurp1。結果から、IECは炎症性サイトカインに応答してLY6ファミリメンバーを上方制御することが示唆された。
【0113】
表8
【0114】
LY6ファミリメンバーの多くは炎症性サイトカインの有無にかかわらず検出されなかったのに対して、発明者等は試験した大部分のサイトカインに応答してマウスのLY6A、LY6CおよびLY6Fの転写の強い上方制御、並びに試験したいくつかのサイトカインに応答してマウスのLY6E、LY6HおよびLYPD1の中程度の上方制御を検出した。しかしながら、IFNγは、LY6上方制御の誘導において最も強力なサイトカインであった。さらに、TNFαは、LY6A、LY6F、LY6EおよびLYPD1の発現に対するIFNγの効果を上げた。他のマウスのIEC株であるCMT93においてもLY6ファミリメンバーの同様な上方制御が観察された(データは示さない)。
サイトカインに応答したLY6ファミリメンバーの表面発現を調べるために、本明細書中の実施例1に記載されるように、YAMC細胞を上記のサイトカインにさらし、マウスのLY6AおよびLY6C(市販の抗体が利用できる)の発現についてフローサイトメトリによって分析した。添加したサイトカインがない場合であってもYAMC細胞上にマウスLY6Aが高いレベルで発現していた(
図25B、培地)。マウスLY6Cの発現はLY6Aの発現より有意に低かった(
図25A、培地)。
RNA発現と一致して、IL−1βおよびTNFαは、マウスのLY6AおよびLY6Cの表面発現のわずかな増加を誘導した(
図25Aおよび25B)。IFNαが細胞に加えられると発現の比較的中程度な増加が見られたのに対して、IFNγはLY6AおよびLY6Cの表面発現の目覚ましい増加を引き起こした(
図25Aおよび25B)。表面タンパク質発現はRNA発現を非常に反映していた。Th2サイトカイン、例えばIL4、IL10又はIL13は、LY6A又はLY6Cの表面発現に影響を及ぼさなかった(データは示さない)。
IFNγによるLY6A(
図25D)およびLY6C(
図25C)の誘導は用量依存性であった。6.25単位/mlのIFNγと同じくらいの低い用量でも、フローサイトメトリによって検出可能な程度に両LY6分子が増加した。さらに、LY6A(
図25F)およびLY6C(
図25E)の表面発現の増加は、IFNγ処理の後2時間と4時間の間で顕著になり、IFNγ処置の少なくとも24時間後には確実に増加した。このデータから、相対的に低い濃度のIFNγでも数時間以内にLY6分子の表面発現を増やすには十分であることが示唆される。
【0115】
活性化T細胞から主に分泌されるIL−22が、IEC上に存在するIL−22R複合体を介してサイトカイン産生および炎症性表現型を促すように機能することが証明されている(Brand, S.F. et al. Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol 290: G827-838 (2006))。さらに、IL-22はクローン病の免疫病原性に関与している。IL−22がマウスIEC上のLY6分子発現に作用するか否かを調べるために、YAMC細胞をIL−22の存在下で培養し、LY6C(
図25G)およびLY6A(
図25H)の発現について分析した。両LY6分子は、IL−22の存在下において、IFNγによる処理の後に見られる誘導と同レベルにまで、実質的に増加した。
LY6分子の上方制御がYAMC細胞株に特異的なものでないことを確認するために、マウス大腸上皮腫瘍細胞株CMT93におけるマウスのLY6AおよびLY6CのRNAレベルを調べた。マウスLY6AおよびマウスLY6Cのレベルは、IFNγによる処理により上方制御された(
図25I)。LY6分子の上方制御のレベルがCMT93細胞において比較的穏やかであったが、フローサイトメトリ分析から、未処理の細胞でさえも非常にレベルが高いことが示唆され(データは示さない)、これはおそらくCMT93細胞の腫瘍表現型の結果と思われる。
このデータは、炎症性サイトカインに応答してIECがLY6ファミリメンバーを上方制御することを確認したリアルタイム定量的RT−PCRによって得られたデータを裏付けるものである。
【0116】
実施例5:IECのLY6刺激は脂質ラフト形成と関係している
GPIを固定したタンパク質であるLY6ファミリメンバーは、従来のアウトサイドインのシグナル伝達に関与している固有の細胞内ドメインを有していない。むしろ、それらは脂質ラフト微小ドメイン内に存在する(Bohuslav, J. et al. Eur J Immunol 23:825-831(1993))。しかしながら、細胞の表面上のLY6ファミリメンバーの架橋により、他の細胞表面分子の再分布並びに脂質ラフト構造の再編成が生じることが示されており、このことから、LY6分子によってシグナル伝達および下流の細胞性機能に作用しうるメカニズムが示唆される(Simons, K. et al., Nat Rev Mol Cell Biol 1:31-39 (2000))。
LY6タンパク質のリガンドは現在までほとんど同定されておらず、LY6A又はLY6Cのリガンドは現在のところ知られていない(Paret, C. et al., (2005) Int J Cancer 115:724-733;Apostolopoulos, J. et al., (2000) Immunity 12:223-232;及びClasson, B.J. (2001) Trends Immunol. 22:126-127)。コレステロールは脂質ラフト統合性を維持するために必要である。(Simons, K., et al. J Clin Invest 110:597-603 (2002))、そして、コレステロール欠乏を用いてインビトロの脂質ラフト生合成を阻害することが多い(von Tresckow, B. et al. J Immunol 172:4324-4331 (2004))。
LY6架橋に応答して脂質ラフト再編成がIECで起こるか否かを分析するために、YAMC細胞を、コレステロール欠乏条件下(脂質ラフトが細胞から欠乏している条件)とコレステロール非欠乏条件下(脂質ラフト形成が許容される条件)で生育させた。コレステロール欠乏条件では、YAMC細胞は、無血清および、4μM ロバスタチンおよび0.25mM メバロネート(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)の存在下で、37℃で72時間生育させた。コレステロール非欠乏条件下のYAMC細胞にも同じ増殖条件を用いたが、ロバスタチン及びメバロネートは細胞増殖培養液に加えなかった。次いで細胞を採取し、LY6Cは実施例1で先に述べた通りに架橋させた。RNAを回収し、CXCL2、CXCL5およびCCL7の発現レベルを決定した。
【0117】
これらの研究の結果は、脂質ラフト欠乏によりLY6Cが媒介するケモカイン産生が阻害されることを示唆した。
図26A-26Cは、コレステロール欠乏(黒棒)YAMC細胞は、コレステロールを欠乏しなかった細胞(白棒)よりケモカインの産生が少なかったことを示す。コレステロール欠乏は、LY6C刺激に関わりなく、コントロール抗−KLH刺激群におけるケモカイン産生に影響したが、その応答は極わずかであり一致した方向性でなかった。コレステロール欠乏が包括的に細胞生存率に作用したか否かを調べるために、我々は7AAD排除による細胞死を測定し、コレステロール欠乏がYAMC細胞の生存率にあまり影響していなかったことを決定した(コレステロール欠乏細胞の86%に対して92%の生存率、データは示さない)。LY6A(
図26D)およびLY6C(
図26E)の表面発現はコレステロール欠乏YAMC細胞においていずれも有意に低く、これは、細胞膜コレステロールレベルと脂質ラフト統合性が細胞の表面上のLY6発現のレベルに作用することを示唆している。このデータは、コレステロール生合成に影響を受ける脂質ラフト統合性により表面上でのLY6分子の発現が可能となり、ケモカインのLY6C媒介性の誘導に潜在的に関与することを示唆する。ゆえに、細胞膜でのLY6Cポリペプチドの相互作用によって媒介されるケモカイン産生の促進には、細胞表面上の脂質ラフトの存在が必要である。
【0118】
実施例6:LY6Cの架橋によりLY6分子の表面発現が増加する
T細胞の表面上のLY6Cを架橋することによりLY6Cの分断が生じることが報告されている(Jaakkola, I. et al. (2003) J Immunol 170:1283-1290)。しかしながら、T細胞とは異なり、マウスLY6CはIECの表面上で架橋されても、LY6A又はLY6Cの分断は生じなかった(それぞれ
図27Aおよび27B)。それとは反対に、IFNγの非存在下では、LY6AおよびLY6Cの表面発現レベルは、LY6Cを架橋したIEC上では増加したが、LY6Aを架橋したIEC上では増加しなかった。IECをIFNγとともにプレインキュベートすると、この作用はほとんど起こらなくなるが(
図27C)、LY6Aの上方制御がわずかに検出された(
図27D)。
これらのデータは、IEC上のLY6Cを介した刺激によりLY6分子の表面発現が増加する陽性のフィードバックループを示唆する。
【0119】
実施例7:LY6Aの刺激によりケモカインの分泌が増加する
LY6分子の機能は十分に解明されていない。大腸炎の免疫病理におけるLY6分子の役割を調べるために、LY6分子の刺激を、IECからのケモカインの転写および分泌に対する作用について調べた。
マウスのLY6分子の架橋に応答したIECからのケモカインの産生を分析するために、IFNγにより前処理した場合と未処理の場合のYAMC細胞を、抗−KLHコントロール抗体、抗LY6A又は抗LY6Cのいずれかでコートしたプレート上で培養した。24時間後に、これら細胞からmRNAを得て、CCL2、CCL4、CCL5、CCL7、CCL8、CCL25、CXCL1、CXCL2、CXCL5、CXCL10、CXCL12およびCX3CL1の発現についての定量的RT−PCRによって分析した。これらは大腸炎に関連しているケモカインである(表9)(Papadakis, K.A. (2004) Curr Allergy Asthma Rep 4:83-89;Banks, C. et al., (2003) J Pathol 199:28-35;及びPapadakis, K.A., and S.R. Targan (2000) Inflamm Bowel Dis 6:303-313)。非許容増殖条件下(IFNγの非存在下で37℃)でアッセイを行い、IFNγ刺激に応答したIECの増殖の増加の可能性を除外した。
【0120】
表9
【0121】
IFNγにて前処理した細胞は、これらケモカイン遺伝子の多くの上方制御を示した(表9の培地、抗−KLH群対IFNγ、抗−KLH群を参照)。しかしながら、CCL8の上方制御とCXCL1の下方制御を除いては、抗LY6A刺激YAMC細胞は抗−KLH刺激YAMC細胞と同様の遺伝子発現パターンを示した。しかしながら、抗LY6Cにて刺激したYAMC細胞は、基本的に変化しなかったCCL25とLY6C刺激に応答して下方制御したCXCL12を除いて、分析したすべてのケモカインの発現増加を示した。LY6C架橋によって誘導されるケモカインの遺伝子発現の増加はIFNγに依存しなかったのに対して、IFNγにて前処理した細胞は、IFNγにて前処理しなかった細胞と比べてケモカインの発現増加を示した。
マウスLY6C刺激によって誘導されるケモカイン誘導の動態を分析するために、96ウェルのプレートを、抗−KLH抗体又は、抗LY6Aないしは抗LY6Cモノクローナル抗体にてコートした。IFNγにて前処理したか又はしなかったYAMC細胞を加えて24、48又は72時間置いた。示された時点で、定量的RT−PCR分析のためにRNAを回収して、上清をELISAのために集めた。
24時間以内に、LY6AでなくLY6Cを架橋した細胞でのCXCL5およびCCL7の転写のスパイクを検出した(
図28A)。CXCL5およびCCL7の発現増加は時間とともに減少したが、72時間後でも依然として培養物中で検出可能であった。IFNγはケモカイン転写を上げるために必要ではなかったが、IFNγは早い時点でのCXCL5およびCCL7の転写の誘導においてLY6C刺激と相乗的に作用した。
遺伝子発現と同時に、LY6AでなくLY6C架橋細胞の上清は、48時間の時にCXCL5を有意に高い濃度で含んでいた(
図28B)。その効果は用量依存的であり、わずか1μg/mlのコート抗−LY6Cにて検出可能であった。転写と同様に、細胞がIFNγにて前処理されるとCXCL5の分泌が上がったが、IFNγはその効果に必要ではなかった。CXCL5の分泌の増加は、24および72時間の時点でも同様に顕著であった。
LY6Cがケモカインの観察された上方制御に関与したことを確認するために、我々はsiRNAを用いてLY6Cをノックダウンした。LY6C転写産物は、リアルタイム定量的RT−PCRによって、IFNγの非存在下では95%、IFNγの存在下ではおよそ90%まで阻害された。これはYAMC細胞の表面上のLY6Cの有意に低いレベルに相当した(データは示さない)。表面上のLY6Cのレベルが減少している細胞は、ケモカインの転写に関するLY6C架橋に対する応答の減少を示した(
図28C)。CXCL5の分泌は、LY6Cを同様にノックダウンすることによって顕著に阻害された(データは示さない)。
これらの結果は、IECの表面上のLY6AでなくLY6Cの架橋によりケモカインの分泌の増加が生じることを示唆する。
【0122】
実施例8:インビボのIECはLY6C刺激細胞と同程度のケモカイン遺伝子発現を示す
上記のデータは、マウスLY6Cを介して刺激されたIECによってケモカイン遺伝子の発現が上方制御されるモデルを達成している。
大腸炎のマウスモデルのレーザーキャプチャの顕微切断したIECからのマイクロアレイデータを分析し、大腸炎の2つのマウスモデルの健康及び大腸炎のマウスにおける同じ12のケモカイン遺伝子の発現を調べて、インビトロでのLY6C架橋により刺激されたケモカインがインビボでのIECによって分泌されるケモカインと相関するか否かを決定した(
図29Aおよび29B)。発現パターンはLY6C刺激の結果として生じるケモカインの上方制御と同じではないが、インビトロ実験において最も高く上方制御されたケモカイン遺伝子であるCXCL5の発現もまた、大腸炎のマウスモデルにおいて最も高く上方制御されたケモカインであった。我々は、大腸炎の両モデルにおけるCXCL1、CXCL10、CCL5およびCCL7の発現の有意な上方制御を観察した。さらに、我々は、転移大腸炎モデル又はIL10−/−モデルそれぞれにおいてCCL4及びCCL8の上方制御を観察した。
興味深いことに、インビトロのマウスLY6C刺激の結果として下方制御された唯一のケモカインである、CXCL12は、また、これらケモカインの中でインビボで下方制御された唯一のものであった。
【0123】
実施例9:大腸細胞におけるヒトLY6遺伝子の発現
ヒト大腸細胞株であるColo205細胞(ヒト大腸カルチノーマ由来の細胞株、ATCCTM寄託番号CCL−222
TM)におけるヒトのLY6H、LYPD1、LYPD3およびLYPD5の発現を調べた。ヒトColo205細胞を、サイトカインIFN-r、LPS、TNFα、IFN-r+TNFα、IFN-r+LPS又はLPS+TNFα(LPSが1ug/mlであることを除いてすべて100ng/ml)にて18時間(LYPD3)又は24時間(LY6H又はLYPD5)処理した。RNAを回収し、精製して、Applied BiosystemsTMの試薬を製造業者の指示に従って用いて定量的RT−PCRによって示したLY6ファミリメンバーの発現を決定した。RT−PCR分析のために使用するプライマーおよびプローブは以下の通りである。
LYPD1:
センス:CAT GAT CCT CCG AAT CTG GT (配列番号:59)
アンチセンス:AGC ACA GAA CAG AGG GGC TA (配列番号:60)
プローブ:ATA CGG CCA ATG TCA CAA CA (配列番号:61)
LYPD3:
センス:ACT TCC TGT TCC CAC CAC TG (配列番号:62)
アンチセンス:AGA GGA CAA GCG GAG AGA CA (配列番号:63)
プローブ:TTC TGG CAG GGG TGT TCT AG (配列番号:64)
LY6H:
センス:AGC AGC AGC AGG AAG GAT (配列番号:65)
アンチセンス:AAA AGT GCC GCT TAA CGA AG (配列番号:66)
プローブ:CAA GAT GTG TGC TTC CTC CTG CGA (配列番号:67)
LYPD5プライマーおよびプローブはApplied Biosysems
TMから購入した。(カタログ番号HS00289062_m1)。
図30A−30Cにプロットした結果は、ヒトのB−アクチンコントロールと比較したときのこれらヒトLY6遺伝子の発現の倍数的な増加を示す。示したサイトカインによる処理の後に、ヒトのLY6H、LYPD3およびLYPD5の発現の有意な増加が観察された。
【0124】
実施例10:大腸生検組織におけるヒトLY6遺伝子の発現
CD及びUCを有する患者の大腸におけるLYPD1およびLYPD5の発現増加の原因を更に調査するために、UC、CDおよびコントロールの患者の生検のコホートにおいて行った。大腸生検から抽出したRNAを用いたLYPD1発現についてのマイクロアレイ分析は、CD患者の炎症を起こした大腸組織において統計学的に増加した発現を示した(
図31A)。大腸から採取したUCおよびCD生検では、炎症を起こしたUCおよびCD患者において統計学的に増加したLYPD5発現が観察された(
図31B)。これは炎症を起こしていないコントロール生検では観察されなかった。
炎症を起こしたIBD組織の末端回腸生検におけるヒトLY6Hの発現を、RT−PCR(Taqman
TM)分析を用いてコントロール(非IBD)末端回腸生検と比較して分析した。ヒトLY6H発現は、炎症を起こしたIBD生検ではコントロールの少なくとも1.5倍であった。
炎症を起こしたUC大腸生検におけるヒトLYPD3発現は上方制御されており、炎症を起こしたIBD生検ではコントロールの2倍未満であった。
これらの実施例の結果は、IECの表面上のLY6分子の発現を示しており、発現が炎症に関してIECに特有であることを更に示した。さらに、LY6AおよびLY6Cの表面発現レベルは、大腸炎マウスのIEC上で高く、大腸全体にわたってほとんど普遍的であった。両分子は罹患状態に特異的であり、疾患の間に偏在して発現されるので、ヒトLY6遺伝子又はポリペプチド発現、特にヒトのLY6H、LYPD1、LYPD3及びLYPD5の検出はヒトにおけるUCおよび/またはCDを含むIBDの検出に有用な方法である。さらに、ヒトLY6発現の検出方法は、ヒトにおけるIBD、UCおよび/またはCDの診断及び、IBD治療薬への応答のモニタリングに有用である。
【0125】
本明細書において開示される実施例において、IECにおけるLY6発現の機能的重要性が示された。YAMC細胞は、LY6Aについて非常にポジティブであり、LY6Cの発現は比較的低い。しかしながら、大腸炎の間に大腸内に存在する多くのサイトカイン、例えばIL−1β、TNFα、IFNα、特にIL−22およびIFNγによる刺激によって、両LY6分子の発現レベルが大きく亢進された。LY6分子の発現を上方制御するためにIFNγにて前処理したYAMC細胞は、LY6発現の機能的重要性を分析するために有用なインビトロモデルであった。
YAMC細胞の条件的に不死化した性質はSV40ラージT抗原のMHC IIプロモーター作動性発現によるものであり、低レベル(2.5−5U/ml)のIFNγはこれら細胞の増殖を誘導するために用いられる(Whitehead, R.H. et al. (1993) Proc Natl Acad Sci U S A 90:587-591;Whitehead, R.H., and J.L. Joseph. (1994) Epithelial Cell Biol 3:119-125)。YAMC細胞はマウスIECのサイトカイン処置のためのインビトロモデルとして用いられることが多い(Mei, J.M. et al. (2000) Faseb J 14:1188-1201;Yan, F., and D.B. Polk (2002) J Biol Chem 277:50959-50965)。これらの細胞が包含しているSV40ラージT抗原は、温度感受性であり、37℃で機能しない。本明細書において実行されるすべての実験は、これら非許容条件下でIFNγ処理を行った。さらに、YAMC細胞は、実験前の24時間、37℃で血清飢餓(としてIFNγ飢餓)状態にした。このような条件下で、細胞の増殖などの残留するT抗原発現を示す効果は観察されなかった。結果として、IFNγ処理の結果は、T抗原の作動発現から生じる効果というよりはむしろIFNγ処理の特有の効果によるものであった。さらに、LY6ファミリメンバーの上方制御は、第二のマウス細胞株であるCMT93において検出されたことから、この効果が概してIECにあてはまることを裏付けるものである。
【0126】
さらに、LY6発現の適度な上方制御がTNFα、IL−1β及びIL−22による処理の後に観察されたので、IFNγはサイトカインの中で、LY6分子を誘導するための優れたものではなかった。クローン病におけるIL−22の潜在的な役割を示す近年のデータを考慮すると、IL−22に応答した場合のIEC上のLY6分子の上方制御は興味深い(Wolk, K., et al. J Immunol 178:5973-5981 (2007))。マウスとヒトとのLY6分子の相同性が複雑であることが多いが、LY6分子の上方制御がマウスに限定したものでないことを示唆する根拠がある。ラットでの以前の研究は大腸炎モデルの小腸におけるLY6分子の上方制御を示しており、このような発現が炎症、細胞/細胞相互作用並びにラットIEC内のシグナル伝達に関与していることを示唆している(Baksheev, L. et al. J Gastroenterol 41:1041-1052 (2006))。
上記のデータは、脂質ラフト統合性がIECにおけるLY6Cが媒介するシグナル伝達に関与するという可能性があることを示す。これは、LY6C発現を下方制御すること及び、LY6Cシグナル伝達の構造成分を破壊することによってLY6C刺激の下方制御効果を減じるように働きうることを意味する。近年では、スタチンによるIECのコレステロール欠乏がNF−κB調節を介して炎症促進性遺伝子発現を阻害することが決定されている(Lee, J. et al., Int Immunopharmacol 7:241-248 (2007))。さらに、スタチンは、大腸炎のマウスのモデルの有効な治療法であった(Naito, Y., et al. Int J Mol Med 17:997-1004 (2006))。脂質ラフト運動性とNF−κB遮断とを結ぶメカニズムが明らかにされていないが、我々のデータは、LY6Cを介した活性化が作用機構を説明する一つの仮説となりうることを示唆する。
この研究において、我々は、LY6分子をケモカイン遺伝子の発現の上流のスイッチとなりうるものとして同定する。モノクローナル抗体とLY6Cレセプターとの架橋により、CXCL5を含む分析したほとんどすべてのケモカインが顕著に上方制御された。我々はさらに、CXCL5分泌がLY6C架橋IECにおいて非常に亢進されることを確認した。たとえLY6AおよびLY6CがGPI分子によって細胞表面に固定されていても、そして、IECの表面上でLY6CよりLY6Aが高いレベルで発現されていても、ケモカイン分泌に対する下流の効果は、LY6C架橋がある場合に観察され、LY6A架橋がある場合には観察されないことがあることは興味深い。
【0127】
実施例11:LYPD5のリガンドの同定
この研究では、当分野の通常の技術者に周知の技術により、すなわちCOS細胞へのCMVプロモーター下におよそ14,000のヒト遺伝子を発現クローニングすることによって、LYPD5のリガンドの検索を行った。100の遺伝子のプールを、12ウェルプレートの140ウェル中で生育させたCOS細胞に形質移入した。形質移入後、細胞をLYPD5−Fcタンパク質にて染色した(
図32を参照)。ポジティブ染色を示すウェルを同定し、個々のクローンをCOS細胞に形質移入した。単一のタンパク質、GLG−1(ESL−1)を発現する単一ウェルを、LYPD5のリガンドとした。GLG−1は、長い細胞外ドメイン(ECD)、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインに特徴がある。GLG−1 ECDの様々な領域のLYPD5結合能を評価するために、当分野の通常の技術者に公知の技術を用いて一連の免疫共沈降実験を行った。GLG−1 ECDの変異体又は断片(
図33−35を参照)がLYPD5のリガンドとして作用することができたことが明らかとなった。
図33Bは、
図33Aに示すフラグメント1、2、3又は4を用いた免疫共沈降実験の結果を示し、これら断片のいずれか一つはLYPD5結合に十分であることを示す。
【0128】
さらに、GLG−1 ECDドメイン自体は、LYPD5結合に十分であることが明らかとなった。
図33に示すように、GLG−1は複数のGLG−1ドメインから成り立っており、単一のGLG−1ドメインはLYPD5を結合しうる。
図34Bは、フラグメント1、2、3及び4並びに単一のGLG−1ドメイン115、150、215、538、609、670、729および858(
図34Aに示す)がLYPD5を結合することが可能であったことを示す免疫共沈降の結果を示す。
他の免疫共沈降実験により、LYPD5の断片に応じて結合が特異的であったことが示された(
図35A参照)。ここでは、LYPD5はBAPネガティブコントロールを結合しないことが明らかとなり、FN14ネガティブコントロールはGLG−1フラグメント2を結合することが明らかとならず、ヒトGLG−1ドメイン115はLYPD5を結合し、ドメイン115は検出可能なレベルで必ず発現されるわけではないが依然としてLYPD5を破壊し、そしてドメイン115(残基26−114)を欠いているヒトGLG−1フラグメント1の分画はLYPD5を結合しない(
図35B)。
図34Aおよび35Aの「*」はフコシル化となりうる部位を示す。
前述の発明は、理解が明確になるように図と例を挙げていくらか詳細に記載しているが、これら記載と実施例は本発明の範囲を限定するものと解釈されてはならない。本明細書において引用されるすべての特許及び科学文献の開示内容は、出典明記によってその全体が特別に援用される。