特許第5761982号(P5761982)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社小糸製作所の特許一覧

<>
  • 特許5761982-車両用灯具の制御装置 図000002
  • 特許5761982-車両用灯具の制御装置 図000003
  • 特許5761982-車両用灯具の制御装置 図000004
  • 特許5761982-車両用灯具の制御装置 図000005
  • 特許5761982-車両用灯具の制御装置 図000006
  • 特許5761982-車両用灯具の制御装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5761982
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】車両用灯具の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/115 20060101AFI20150723BHJP
【FI】
   B60Q1/115
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2010-278894(P2010-278894)
(22)【出願日】2010年12月15日
(65)【公開番号】特開2012-126232(P2012-126232A)
(43)【公開日】2012年7月5日
【審査請求日】2013年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】笠羽 祐介
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 真嗣
(72)【発明者】
【氏名】戸田 敦之
【審査官】 栗山 卓也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−143506(JP,A)
【文献】 特開2005−010108(JP,A)
【文献】 特開2005−081867(JP,A)
【文献】 特開平10−059061(JP,A)
【文献】 特開2004−182194(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/115
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両にかかる重力加速度と車両の移動により生じる運動加速度とが合成された加速度についての、車両前後方向に対応するセンサ軸と車両上下方向に対応するセンサ軸の各軸成分の値である、加速度センサの出力値を受信するための受信部と、
加速度センサの出力値をもとに車両の傾斜角度の変化を導出して、車両用灯具の光軸調節を指示する制御信号を生成するための制御部と、
前記制御信号を車両用灯具の光軸調節部に送信するための送信部と、を備え、
前記制御部は、車両前後方向の加速度を第1軸に設定し車両上下方向の加速度を第2軸に設定した座標に、車両の加速時および減速時の少なくとも一方における加速度センサの出力値を経時的にプロットして少なくとも2点から直線を導出し、
導出した直線の傾きに基づいて前記車両の傾斜角度を導出して、前記制御信号を生成し、
記傾斜角度について所定の基準状態にある車両を加減速させて得られる予め定められた基準直線の第2軸切片に対する、導出した直線の第2軸切片の変化量が、車両が通常取り得る傾斜角度の範囲での前記傾斜角度の変化によって取り得る第2軸切片の変化量の範囲を超える場合に、加速度センサに生じる出力値の誤差の発生を検知して車両用灯具の光軸位置を補正することを特徴とする車両用灯具の制御装置。
【請求項2】
前記誤差は、加速度センサの温度ドリフトに基づくものであり、
前記制御部は、前記第2軸切片の変化量が、車両が通常取り得る傾斜角度の範囲での前記傾斜角度の変化によって取り得る範囲を超える、前記温度ドリフトによって取り得る範囲に含まれる場合に、車両用灯具の光軸位置を初期設定位置に近づける請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記誤差は、加速度センサの位置ずれに基づくものであり、
前記制御部は、前記第2軸切片の変化量が、加速度センサの温度ドリフトによって取り得る範囲を超える前記位置ずれによって取り得る範囲に含まれる場合に、車両用灯具の光軸位置を初期設定位置に近づけるとともに前記制御信号の生成を中止する請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記直線を繰り返し導出し、前記直線の傾きの変化に基づく前記第2軸切片の変化分を差し引いた前記第2軸切片の変化をもとに、前記誤差の発生を検知する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
車両にかかる重力加速度と車両の移動により生じる運動加速度とが合成された加速度についての、車両前後方向に対応するセンサ軸と車両上下方向に対応するセンサ軸の各軸成分の値である、加速度センサの出力値を受信するための受信部と、
加速度センサの出力値をもとに車両の傾斜角度の変化を導出して、車両用灯具の光軸調節を指示する制御信号を生成するための制御部と、
前記制御信号を車両用灯具の光軸調節部に送信するための送信部と、を備え、
前記制御部は、車両前後方向の加速度を第1軸に設定し車両上下方向の加速度を第2軸に設定した座標に、車両の加速時および減速時の少なくとも一方における加速度センサの出力値を経時的にプロットして少なくとも2点から直線を導出し、
導出した直線の傾きに基づいて前記車両の傾斜角度を導出して、前記制御信号を生成し、
導出した直線の第2軸切片の値が、車両が通常取り得る傾斜角度の範囲での前記傾斜角度の変化によって取り得る第2軸切片の範囲から外れる場合に、加速度センサに生じる出力値の誤差の発生を検知して車両用灯具の光軸位置を補正することを特徴とする車両用灯具の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具の制御装置に関し、特に自動車などに用いられる車両用灯具の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のピッチ方向の傾斜角度に応じて車両用前照灯の光軸位置を自動的に調節して照射方向を変化させるオートレベリング制御が知られている。一般にオートレベリング制御では、車両の傾斜検出装置として車高センサが用いられ、車高センサにより検出される車両のピッチ角度に基づいて前照灯の光軸位置が調節される。これに対し、特許文献1には、傾斜検出装置として重力センサを用いた構成が開示されている。また、特許文献2には、傾斜検出装置として水平面に対する傾斜角度を検出する三次元ジャイロセンサを用いた構成が開示されている。また、特許文献3には、傾斜検出装置として車両の重力方向に対する傾斜角を検出する傾斜計を用いた構成が開示されている。また、特許文献4には、傾斜検出装置として重力加速度を検出する加速度センサを用いた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−085459号公報
【特許文献2】特開2004−314856号公報
【特許文献3】特開2001−341578号公報
【特許文献4】特開2009−126268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の傾斜検出装置として重力センサや三次元ジャイロセンサなどを含む加速度センサを用いた場合、車高センサを用いた場合に比べてオートレベリングシステムをより安価にすることができ、また軽量化を図ることもできる。一方で、加速度センサを用いた場合であっても、オートレベリング制御の性能を高めたいという要求は常に存在している。オートレベリング制御の性能の1つには、オートレベリング制御の安全性がある。すなわち、オートレベリング制御には、オートレベリング制御によって光軸位置が誤って調節された場合でも、運転者の視認性の著しい低下を回避できることが求められる。
【0005】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、加速度センサを用いた車両用灯具のオートレベリング制御において、より高性能なオートレベリング制御を実施することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は車両用灯具の制御装置であり、当該制御装置は、加速度センサの出力値を受信するための受信部と、加速度センサの出力値をもとに車両の傾斜角度の変化を導出して、車両用灯具の光軸調節を指示する制御信号を生成するための制御部と、制御信号を車両用灯具の光軸調節部に送信するための送信部と、を備え、制御部は、加速度センサの出力値をもとに加速度センサに生じる出力値の誤差要因を検知して車両用灯具の光軸位置を補正することを特徴とする。
【0007】
この態様によれば、加速度センサを用いた車両用灯具のオートレベリング制御において、より高性能なオートレベリング制御を実施することができる。
【0008】
上記態様において、受信部は、加速度センサから車両前後方向および車両上下方向の加速度を受信し、制御部は、車両前後方向の加速度を第1軸に設定し車両上下方向の加速度を第2軸に設定した座標に、車両の加速時および減速時の少なくとも一方における加速度センサの出力値を経時的にプロットして少なくとも2点から直線を導出し、直線の第2軸切片の変化をもとに誤差要因を検知してもよい。この態様によっても、より高性能なオートレベリング制御を実施することができる。
【0009】
また、上記態様において、誤差要因は、加速度センサの温度ドリフトであり、制御部は、第2軸切片の変化量が、車両の傾斜角度の変化によって取り得る範囲を超える温度ドリフトによって取り得る範囲に含まれる場合に、車両用灯具の光軸位置を初期設定位置に近づけてもよい。この態様によれば、温度ドリフトが発生した場合に運転者の視認性を確保するフェールセーフ機能を実現することができる。また、上記態様において、誤差要因は、加速度センサの位置ずれであり、制御部は、第2軸切片の変化量が、加速度センサの温度ドリフトによって取り得る範囲を超える位置ずれによって取り得る範囲に含まれる場合に、車両用灯具の光軸位置を初期設定位置に近づけるとともに制御信号の生成を中止してもよい。この態様によれば、この態様によれば、位置ずれが発生した場合に運転者の視認性を確保するフェールセーフ機能を実現することができる。
【0010】
また、上記態様において、制御部は、直線の傾きの変化に基づく第2軸切片の変化分を差し引いた第2軸切片の変化をもとに、誤差要因を検知してもよい。この態様によれば、誤差要因をより高精度に検知することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、加速度センサを用いた車両用灯具のオートレベリング制御において、より高性能なオートレベリング制御を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態1に係る車両用灯具の制御装置の制御対象である灯具ユニットを含む前照灯ユニットの概略鉛直断面図である。
図2】前照灯ユニット、車両制御ECU、およびレベリングECUのオートレベリング制御における動作連携を説明する機能ブロック図である。
図3図3(A)および図3(B)は、車両の運動加速度ベクトルの方向と車両姿勢角度との関係を説明するための模式図である。
図4】車両前後方向の加速度と車両上下方向の加速度の関係を示す直線の傾きの変化を説明するための図である。
図5】車両前後方向の加速度と車両上下方向の加速度の関係を示す直線の切片の変化を説明するための図である。
図6】実施形態1に係るレベリングECUによるオートレベリング制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0014】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る車両用灯具の制御装置の制御対象である灯具ユニットを含む前照灯ユニットの概略鉛直断面図である。この前照灯ユニット210は、左右対称に形成された一対の前照灯ユニットが車両の車幅方向の左右に1つずつ配置された構造である。左右に配置された前照灯ユニットは左右対称の構造を有する点以外は実質的に同一の構成であるため、以下では、右側の前照灯ユニット210Rの構造を説明し、左側の前照灯ユニットLの説明は適宜省略する。
【0015】
前照灯ユニット210Rは、車両前方側に開口部を有するランプボディ212と、この開口部を覆う透光カバー214とを有する。ランプボディ212は、その車両後方側にバルブ14の交換時等に取り外すことができる着脱カバー212aを有する。ランプボディ212と透光カバー214とによって灯室216が形成されている。灯室216には、光を車両前方に照射する灯具ユニット10(車両用灯具)が収納されている。
【0016】
灯具ユニット10の一部には、当該灯具ユニット10の上下左右方向の揺動中心となるピボット機構218aを有するランプブラケット218が形成されている。ランプブラケット218は、ランプボディ212の壁面に回転自在に支持されたエイミング調整ネジ220と螺合している。したがって、灯具ユニット10は、エイミング調整ネジ220の調整状態で定められた灯室216内の所定位置に固定されるとともに、その位置を基準にピボット機構218aを中心として、前傾姿勢または後傾姿勢等に姿勢変化可能である。また、灯具ユニット10の下面には、スイブルアクチュエータ222の回転軸222aが固定されている。スイブルアクチュエータ222は、ユニットブラケット224に固定されている。
【0017】
ユニットブラケット224には、ランプボディ212の外部に配置されたレベリングアクチュエータ226(光軸調節部)が接続されている。レベリングアクチュエータ226は、例えばロッド226aを矢印M,N方向に伸縮させるモータなどで構成されている。ロッド226aが矢印M方向に伸長した場合、灯具ユニット10は、ピボット機構218aを中心として後傾姿勢になるように揺動する。逆にロッド226aが矢印N方向に短縮した場合、灯具ユニット10は、ピボット機構218aを中心として前傾姿勢になるように揺動する。灯具ユニット10が後傾姿勢になると、光軸Oのピッチ角度、すなわち、光軸Oの上下方向の角度を上方に向けるレベリング調整ができる。また、灯具ユニット10が前傾姿勢になると、光軸Oのピッチ角度を下方に向けるレベリング調整ができる。
【0018】
灯具ユニット10は、エイミング調整機構を備えることができる。例えば、レベリングアクチュエータ226のロッド226aとユニットブラケット224の接続部分に、エイミング調整時の揺動中心となるエイミングピボット機構(図示せず)を配置する。また、ランプブラケット218には前述したエイミング調整ネジ220が車幅方向に間隔を空けて配置される。そして、2本のエイミング調整ネジ220を回転させることで、灯具ユニット10をエイミングピボット機構を中心に上下左右に旋回させ、光軸Oを上下左右に調整することができる。
【0019】
灯具ユニット10は、回転シェード12を含むシェード機構18、光源としてのバルブ14、リフレクタ16を内壁に支持する灯具ハウジング17、および投影レンズ20を備える。バルブ14は、例えば、白熱球やハロゲンランプ、放電球、LEDなどが使用可能である。本実施形態では、バルブ14をハロゲンランプで構成する例を示す。リフレクタ16は、バルブ14から放射された光を反射する。バルブ14からの光およびリフレクタ16で反射した光は、その一部が回転シェード12を経て投影レンズ20へと導かれる。回転シェード12は、回転軸12aを中心に回転可能な円筒形状の部材であり、軸方向に一部が切り欠かれた切欠部と、複数のシェードプレート(図示せず)とを備える。切欠部またはシェードプレートのいずれかが光軸O上に移動されて、所定の配光パターンが形成される。リフレクタ16は、その少なくとも一部が楕円球面状であり、この楕円球面は、灯具ユニット10の光軸Oを含む断面形状が楕円形状の少なくとも一部となるように設定されている。リフレクタ16の楕円球面状部分は、バルブ14の略中央に第1焦点を有し、投影レンズ20の後方焦点面上に第2焦点を有する。
【0020】
投影レンズ20は、車両前後方向に延びる光軸O上に配置される。バルブ14は、投影レンズ20の後方焦点を含む焦点面である後方焦点面よりも後方側に配置される。投影レンズ20は、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズからなり、後方焦点面上に形成される光源像を、反転像として車両用灯具システム200前方の仮想鉛直スクリーン上に投影する。なお、灯具ユニット10の構成は特にこれに限定されず、投影レンズ20を持たない反射型の灯具ユニットなどであってもよい。
【0021】
図2は、前照灯ユニット、車両制御ECU、およびレベリングECUのオートレベリング制御における動作連携を説明する機能ブロック図である。なお、上述のように右側の前照灯ユニット210Rおよび左側の前照灯ユニット210Lの構成は基本的に同一であるため、図2では前照灯ユニット210Rおよび前照灯ユニット210Lをまとめて前照灯ユニット210としている。また、レベリングECU100は、ハードウェア的にはコンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や回路で実現され、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、図2ではそれらの連携によって実現される機能ブロックとして描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0022】
レベリングECU100(車両用灯具の制御装置)は、受信部102、制御部104、送信部106、メモリ108、および加速度センサ110を備える。レベリングECU100は、例えば車両300のダッシュボード付近に設置される。なお、レベリングECU100の設置位置は特に限定されず、例えば前照灯ユニット210内に設けられてもよい。レベリングECU100には、車両300に搭載された車両制御ECU302や、ライトスイッチ304が接続されている。車両制御ECU302やライトスイッチ304から出力される信号は、受信部102によって受信される。また、受信部102は、加速度センサ110の出力値を受信する。
【0023】
車両制御ECU302には、ステアリングセンサ310、車速センサ312、ナビゲーションシステム314等が接続されており、これらのセンサ等から各種情報を取得して、レベリングECU100等に送信する。例えば、車両制御ECU302は、車速センサ312の出力値をレベリングECU100に送信する。これにより、レベリングECU100は、車両300が加減速していることを検知することができる。また、ライトスイッチ304は、運転者の操作内容に応じて、前照灯ユニット210の点消灯を指示する信号や、前照灯ユニット210によって形成すべき配光パターンを指示する信号、オートレベリング制御の実行を指示する信号等を、電源306や、車両制御ECU302、レベリングECU100等に送信する。例えば、ライトスイッチ304は、オートレベリング制御の実施を指示する信号をレベリングECU100に送信する。これにより、レベリングECU100はオートレベリング制御を開始する。
【0024】
受信部102が受信した信号は、制御部104に送信される。制御部104は、受信部102から送られてきた加速度センサ110の出力値と必要に応じてメモリ108に保持している情報をもとに車両300の傾斜角度の変化を導出して、灯具ユニット10の光軸調節を指示する制御信号を生成する。制御部104で生成された制御信号は、送信部106からレベリングアクチュエータ226に送信される。レベリングアクチュエータ226は、受信した制御信号をもとに駆動されて、灯具ユニット10の光軸Oが車両上下方向(ピッチ角度方向)について調整される。また、制御部104は、後述するオートレベリング制御停止情報を生成してメモリ108に記録するとともに、インジケータ(図示せず)の点灯を指示する信号を生成する。インジケータの点灯を指示する信号は、送信部106から車両制御ECU302に送信される。
【0025】
車両300には、レベリングECU100、車両制御ECU302、および前照灯ユニット210に電力を供給する電源306が搭載されている。ライトスイッチ304の操作により前照灯ユニット210の点灯が指示されると、電源306から電源回路230を介してバルブ14に電力が供給される。
【0026】
続いて、上述の構成を備えたレベリングECU100によるオートレベリング制御について詳細に説明する。図3(A)および図3(B)は、車両の運動加速度ベクトルの方向と車両姿勢角度との関係を説明するための模式図である。図3(A)は、後述する車両姿勢角度θvが変化していない状態を示し、図3(B)は、車両姿勢角度θvが変化している状態を示している。また、図3(A)および図3(B)において、車両300が前進したときに生じる運動加速度ベクトルαおよび合成加速度ベクトルβを実線矢印で示し、車両300が後進したときに生じる運動加速度ベクトルαおよび合成加速度ベクトルβを破線矢印で示している。図4は、車両前後方向の加速度と車両上下方向の加速度の関係を示す直線の傾きの変化を説明するための図である。図5は、車両前後方向の加速度と車両上下方向の加速度の関係を示す直線の切片の変化を説明するための図である。
【0027】
たとえば、車両後部の荷室に荷物を載せたり後部座席に乗員がいる場合、車両姿勢は後傾姿勢となり、荷物が下ろされたり後部座席の乗員が下車した場合、車両姿勢は後傾姿勢の状態から前傾する。灯具ユニット10の照射方向も車両300の姿勢状態に対応して上下に変動して、前方照射距離が長くなったり短くなったりする。そこで、レベリングECU100は、加速度センサ110の出力値から車両のピッチ方向の傾斜角度の変化を導出して、レベリングアクチュエータ226を制御して光軸Oのピッチ角度を車両姿勢に応じた角度とする。このように、車両姿勢に基づき灯具ユニット10のレベリング調整をリアルタイムで行うオートレベリング制御を実施することで車両の使用状況に応じて車両姿勢が変化しても前方照射の到達距離を最適に調節することができる。
【0028】
また、加速度センサ110には実際の使用環境下で出力値の誤差要因が生じることがある。このような誤差要因としては、例えば、使用環境の温度変化によって加速度センサ110の出力値が変化する温度ドリフトを挙げることができる。また、他の誤差要因としては、車両300の走行により加速度センサ110に加わる衝撃等の経時的要因や、車両300の整備時等に起こり得る整備者と加速度センサ110の接触等の人為的要因などに起因した加速度センサの110の位置ずれを挙げることができる。加速度センサ110にこのような誤差要因が発生した場合、正確なオートレベリング制御の実行が困難となり得る。そこで、制御部104は、加速度センサ110の出力値をもとに加速度センサ110に生じる出力値の誤差要因を検知して、灯具ユニット10の光軸位置を補正する。この補正は、制御部104が光軸位置の補正信号を生成してレベリングアクチュエータ226に送信することで実行される。あるいは、この補正は、加速度センサ110の出力値が補正され、補正された出力値をもとに光軸位置を調節する制御信号を生成することで実行されてもよい。また、この補正は、第2軸切片の変化量に応じた補正係数が設定され、この補正係数を用いて加速度センサ110の出力値から光軸位置を調節する制御信号を生成することで実行されてもよい。これにより、加速度センサ110に誤差要因が発生したことで他車両にグレアを与えてしまう可能性を低減することができる。したがって、より高性能なオートレベリング制御を実現することができる。
【0029】
ここで、加速度センサ110は、例えば互いに直交するX軸、Y軸、Z軸を有する3軸加速度センサである。加速度センサ110は、センサのX軸が車両300の前後軸と、センサのY軸が車両300の左右軸と、センサのZ軸が車両300の上下軸と沿うように車両300に取り付けられている。加速度センサ110は、車両300の停止中、重力加速度ベクトルGに対する車両300の傾きを検出し、3軸方向における重力加速度ベクトルGの各軸成分の数値を出力する。したがって、加速度センサ110の出力値からは、水平面に対する路面の傾斜角度である路面角度θrと、路面に対する車両の傾斜角度である車両姿勢角度θvとが含まれる、水平面に対する車両の傾斜角度である合計角度θをベクトルとして得ることができる。また、加速度センサ110は、車両300の走行中、重力加速度ベクトルGと車両300の移動により生じる運動加速度ベクトルαとが合成された合成加速度ベクトルβを検出し、3軸方向における合成加速度ベクトルβの各軸成分の数値を出力する。なお、路面角度θr、車両姿勢角度θv、および合計角度θは、それぞれX軸の上下方向の角度、言い換えれば車両300のピッチ方向の角度である。また、以下の説明では加速度センサ110のY軸方向の成分、すなわち車両300のロール方向の角度は考慮しない。
【0030】
オートレベリング制御は、車両のピッチ方向の傾斜角度の変化にともなう車両用灯具の前方照射距離の変化を吸収して、照射光の前方到達距離を最適に保つことを目的とするものである。したがって、オートレベリング制御に必要とされる車両の傾斜角度は、車両姿勢角度θvである。すなわち、車両姿勢角度θvが変化した場合に灯具ユニット10の光軸位置を調節し、路面角度θrが変化した場合に灯具ユニット10の光軸位置を維持するように制御することが望まれる。これを実現するためには、加速度センサ110から得られる合計角度θから、車両姿勢角度θvについての情報を抽出する必要がある。
【0031】
ここで、車両300は路面に対して平行に移動する。よって、運動加速度ベクトルαは、車両姿勢角度θvによらず路面に対して平行なベクトルとなる。また、図3(A)に示すように、車両300の車両姿勢角度θvが0°であった場合、理論上は加速度センサ110のX軸は路面に対して平行となるため、運動加速度ベクトルαは、加速度センサ110のX軸に平行なベクトルとなる。よって、車両300の加減速によって運動加速度ベクトルαの大きさが変化した際に加速度センサ110によって検出される合成加速度ベクトルβの先端の軌跡は、X軸に対して平行な直線となる。一方、図3(B)に示すように、車両姿勢角度θvが0°でない場合、加速度センサ110のX軸は路面に対して斜めにずれるため、運動加速度ベクトルαは、加速度センサ110のX軸に対して斜めに延びるベクトルとなる。よって、車両の加減速によって運動加速度ベクトルαの大きさが変化した際の合成加速度ベクトルβの先端の軌跡は、X軸に対して傾いた直線となる。
【0032】
そこで、制御部104は、受信部102によって加速度センサ110から車両前後方向および車両上下方向の加速度を受信する。そして、制御部104は、図4に示すように車両前後方向の加速度を第1軸(x軸)に設定し車両上下方向の加速度を第2軸(z軸)に設定した座標に、車両の加速時および減速時の少なくとも一方における加速度センサ110の出力値を経時的にプロットする。点tA1〜tAnは、図3(A)に示す状態での時間t〜tにおける加速度センサ110の出力値である。点tB1〜tBnは、図3(B)に示す状態での時間t〜tにおける加速度センサ110の出力値である。そして、少なくとも2点から直線を導出して、当該直線の傾きを算出する。本実施形態において制御部104は、プロットされた複数点tA1〜tAn,tB1〜tBnに対して最小二乗法などを用いて近似直線(直線近似式)A,Bを求め、当該近似直線A,Bの傾きを算出する。
【0033】
車両姿勢角度θvが0°の場合、加速度センサ110の出力値から、x軸に平行な近似直線Aが得られる。すなわち、近似直線Aの傾きは0となる。これに対し、車両姿勢角度θvが0°でない場合、加速度センサ110の出力値から、車両姿勢角度θvに応じた傾きを有する近似直線Bが得られる。したがって、車両300の加減速時における前述した直線の傾きの変化を計測することで、車両姿勢角度θvの変化を導出することができる。そして、制御部104は、得られた車両姿勢角度θvの変化をもとに光軸位置を調節するための制御信号を生成する。
【0034】
また、加速度センサ110に上述した出力値の誤差要因が発生した場合、直線の第2軸切片(z軸切片)が誤差要因に応じた変化を見せる。そこで、制御部104は、上述した、加速度センサ110の出力値に基づく誤差要因の検知として、近似直線の第2軸切片の変化をもとに誤差要因を検知して、灯具ユニット10の光軸補正を実施する。例えば、図5に示すように、近似直線Aの第2軸切片は、加速度センサ110に発生した温度ドリフトによって変化する場合、水平面に対する車両300の傾斜角度の変化によって取り得る範囲aよりも広い範囲b内で変化する。また、第2軸切片は、加速度センサ110に発生した位置ずれによって変化する場合、温度ドリフトによって取り得る範囲bよりも広い範囲c内で変化する。水平面に対する車両300の傾斜角度の変化によって取り得る範囲aは、例えば角度換算で±30°の範囲であり、温度ドリフトによって取り得る範囲bは、例えば角度換算で±35°の範囲である。また、位置ずれによって取り得る範囲cは、例えば角度換算で±35°を上回る範囲である。
【0035】
したがって、範囲a内は、加速度センサ110が正常であると推定されるが、温度ドリフトあるいは位置ずれが発生している可能性がある領域である。また、範囲b内かつ範囲a外は、加速度センサ110に温度ドリフトあるいは位置ずれが発生している領域である。また、範囲c内かつ範囲b外は、加速度センサ110に位置ずれが発生している領域である。
【0036】
そこで、本実施形態では、第2軸切片が範囲a内にある場合(図5における近似直線A)、加速度センサ110に誤差要因が発生していないと推定することとした。また、第2軸切片が範囲b内でかつ範囲a外にある場合(図5における近似直線A’)、加速度センサ110に誤差要因として温度ドリフトが発生していると推定することとした。また、第2軸切片が範囲c内でかつ範囲b外にある場合(図5における近似直線A’’)、加速度センサ110に誤差要因として位置ずれが発生していると推定することとした。
【0037】
制御部104は、第2軸切片の変化量が車両300の傾斜角度の変化によって取り得る範囲を超える温度ドリフトによって取り得る範囲に含まれる場合(すなわち、変化後の第2軸切片が範囲b内かつ範囲a外に位置することになる変化量である場合)に、灯具ユニット10の光軸位置を初期設定位置に近づけるように補正する。これにより、温度ドリフトの発生により灯具ユニット10の光軸位置を精度良く調節できなくなった場合でも、光軸位置を初期設定位置に近づけて運転者の視認性を確保するフェールセーフ機能を実現することができる。
【0038】
また、制御部104は、第2軸切片の変化量が加速度センサ110の温度ドリフトによって取り得る範囲を超える位置ずれによって取り得る範囲に含まれる場合(すなわち、変化後の第2軸切片が範囲c内かつ範囲b外に位置することになる変換量である場合)に、灯具ユニット10の光軸位置を初期設定位置に近づけるように補正する。また、位置ずれの場合、加速度センサ110が自動的に適正位置に戻る可能性は低いため、制御部104は、光軸位置の補正とともにその後の光軸位置の調節を指示する制御信号の生成を中止する。これにより、位置ずれの発生により灯具ユニット10の光軸位置を精度良く調節できなくなった場合でも、光軸位置を初期設定位置に近づけて運転者の視認性を確保するフェールセーフ機能を実現することができる。また、精度が低下したオートレベリング制御が継続されることを回避することができる。
【0039】
なお、上述の制御では、加速度センサ110に誤差要因が発生していることの推定を、所定の基準値に対する第2軸切片の変化量に基づいて実施している。すなわち、当該変化量が、変化後の第2軸切片が範囲aに含まれることになる量である場合に誤差要因が発生していないと推定し、変化後の第2軸切片が範囲b内かつ範囲a外の範囲に含まれることになる量である場合に温度ドリフトが発生していると推定し、変化後の第2軸切片が範囲c内かつ範囲b外の範囲に含まれることになる量である場合に位置ずれが発生していると推定している。前記「所定の基準値」は、例えば車両300が後述する基準状態にあるときの近似直線の第2軸切片の値である。しかしながら、誤差要因の推定方法は特にこれに限定されず、変化後の近似直線の第2軸切片の値に基づいて誤差要因を推定してもよい。また、第2軸切片の変化量の積分から温度ドリフト量を算出してもよい。
【0040】
また、車両姿勢角度θvの変化に応じて近似直線の傾きが変化した場合も、第2軸切片の位置が変化する。そこで、制御部104は、直線の傾きの変化に基づく第2軸切片の変化分を差し引いた第2軸切片の変化をもとに、誤差要因を検知してもよい。これにより、誤差要因をより高精度に検知することができる。
【0041】
なお、前記「初期設定位置に近づける」は、光軸位置を初期設定位置に一致させることと、所定量だけ初期設定位置に向けて変位させることとを含む。また、前記「車両300の傾斜角度の変化によって取り得る範囲」、「温度ドリフトによって取り得る範囲」、および「位置ずれによって取り得る範囲」は、それぞれ車両300の傾斜角度の変化によって取るものとして想定される範囲、温度ドリフトによって取るものとして想定される範囲、位置ずれによって取るものとして想定される範囲を意味する。これらの範囲は、設計者による実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能である。また、上述の制御では、近似直線の第2軸切片の変化をもとに誤差要因を検知しているが、近似直線は傾きと任意の一点、例えば第1軸切片とが決まれば位置が定まるため、傾きと任意の一点から第2軸切片を求めることができる。したがって、近似直線の傾きと任意の一点の変化をもとに誤差要因を検知する場合は、実質的には近似直線の第2軸切片の変化をもとに誤差要因を検知していることになる。よって、本実施形態における第2軸切片の変化に基づく誤差要因の検知には、このような傾きと任意の一点の変化に基づく誤差要因の検知も含まれる。あるいは、本実施形態における第2軸切片の変化に基づく誤差要因の検知には、近似直線から車両前後方向の加速度が0のときの車両上下方向の加速度の残留値(残留加速度)を導出し、導出された残留値の変化をもとに誤差要因を検知することが含まれる。
【0042】
本実施形態に係る加速度センサ110は、上述した近似直線の傾きおよび切片の変化をもとに、例えば次のようなオートレベリング制御を実行する。すなわち、まず、例えば車両メーカの製造工場やディーラの整備工場などで、車両300が水平面に置かれて基準状態とされる。基準状態は、例えば車両300の運転席に1名乗車している状態である。また基準状態では、加速度センサ110の周辺温度は基準温度(例えば25℃)に維持される。そして、工場の初期化処理装置のスイッチ操作またはCAN(Controller Area Network)システムの通信等により、レベリングECU100に初期化信号が送信される。制御部104は、受信部102を介して初期化信号を受けると初期エイミング調整を開始し、灯具ユニット10の光軸Oを初期設定位置に合わせる。また、基準状態にある車両300が加速または減速させられる。制御部104は、車両300の加減速中に、加速度センサ110から車両前後方向および車両上下方向の加速度を受信し、車両上下方向の加速度を第1軸とし車両上下方向の加速度を第2軸とした座標上に加速度センサ110の出力値をプロットする。そして、制御部104は、プロットされた複数点から基準近似直線を求め、基準近似直線の傾きおよび第2軸切片を算出する。制御部104は、得られた傾きおよび第2軸切片を基準値としてメモリ108に記録する。
【0043】
車両300が実際に使用されている状況において、制御部104は、車両300の加速時および減速時の少なくとも一方における所定時間、加速度センサ110の出力値を座標上にプロットして近似直線を求め、当該近似直線の傾きおよび第2軸切片を算出する。そして、制御部104は、予め記録された第2軸切片の基準値に対する現在の車両における第2軸切片の変化量が車両300の傾斜角度の変化によって取り得る範囲を超える温度ドリフトによって取り得る範囲に含まれる場合、光軸位置を初期設定位置に近づけるように補正する。
【0044】
また、制御部104は、第2軸切片の変化量が温度ドリフトによって取り得る範囲を超える位置ずれによって取り得る範囲に含まれる場合、光軸位置を初期設定位置に近づけるように補正するとともに制御信号の生成を中止する。具体的には、制御部104は、位置ずれを検知すると光軸位置を初期設定位置に近づけるように補正する。また、制御部104は、インジケータの点灯を指示する信号を生成する。この信号は、送信部106により車両制御部302に送信され、車両制御ECU302によってインジケータが点灯されて、オートレベリング制御の異常が使用者に報知される。また、制御部104は、オートレベリング制御停止情報を生成してメモリ108に記録する。以後、制御部104は、ライトスイッチ304の操作等によりオートレベリング制御の実行指示がなされても、メモリ108からオートレベリング制御停止情報が読み出されると、オートレベリング制御の実行を回避する。制御部104は、ディーラの整備工場などでスイッチ操作、またはCANシステムの通信等によりリセット信号を受信すると、オートレベリング制御停止情報を消去または無効化しインジケータの消灯を指示する信号を車両制御ECU302に送信して、オートレベリング制御を実行可能な状態に回復させる。
【0045】
また、制御部104は、第2軸切片の変化量が水平面に対する車両300の傾斜角度の変化によって取り得る範囲に含まれる場合、予め記録された傾きの基準値と現在の車両300における近似直線の傾きとから車両姿勢角度θvを導出する。そして、導出した車両姿勢角度θvを用いて光軸調節を実施する。ここで、基準近似直線と実際の使用状況下で算出された近似直線とがなす角度(図4におけるθAB)が車両姿勢角度θvに対応する。
【0046】
図6は、実施形態1に係るレベリングECUによるオートレベリング制御のフローチャートである。図6のフローチャートではステップを意味するS(Stepの頭文字)と数字との組み合わせによって各部の処理手順を表示する。また、Sと数字との組み合わせによって表示した処理で何らかの判断処理が実行され、その判断結果が肯定的であった場合は、Y(Yesの頭文字)を付加して、例えば(S101のY)と表示し、逆にその判断結果が否定的であった場合は、N(Noの頭文字)を付加して、例えば(S101のN)と表示する。このフローは、たとえばライトスイッチ304によってオートレベリング制御の実行指示がなされている状態において、イグニッションがオンにされた場合にレベリングECU100の制御部104により所定のタイミングで繰り返し実行され、イグニッションがオフにされた場合に終了する。
【0047】
まず、制御部104は、オートレベリング制御停止情報がメモリ108に記録されているか判断する(S101)。オートレベリング制御停止情報がある場合(S101のY)、制御部104は、リセット信号を受信したか判断する(S102)。リセット信号を受信した場合(S102のY)、制御部104は、オートレベリング制御停止情報を消去し、インジケータを消灯させる(S103)。リセット信号を受信しない場合(S102のN)、制御部104は本ルーチンを終了する。
【0048】
オートレベリング制御停止情報がない場合(S101のN)、またはオートレベリング制御停止情報が消去され、インジケータが消灯された場合(S103)、制御部104は、車両300が走行中であるか判断する(S104)。車両300が走行中でない場合(S104のN)、制御部104は本ルーチンを終了する。車両300が走行中である場合(S104のY)、制御部104は、加速度センサ110の出力値から近似直線を導出し(S105)、予め記録されている基準近似直線の第2軸切片に対する導出された近似直線の第2軸切片の変化量を算出する(S106)。
【0049】
制御部104は、算出された第2軸切片の変化量が車両300の傾斜角度の変化によって取り得る範囲に含まれるか判断する(S107)。第2軸切片の変化量が当該範囲に含まれる場合(S107のY)、制御部104は、基準近似直線の傾きに対する導出された近似直線の傾きの変化から車両姿勢角度θvを導出して(S108)、導出した車両姿勢角度θvをもとに光軸を調節して(S109)、本ルーチンを終了する。第2軸切片の変化量が当該範囲に含まれない場合(S107のN)、制御部104は、第2軸切片の変化量が温度ドリフトによって取り得る範囲に含まれるか判断する(S110)。第2軸切片の変化量が当該範囲に含まれる場合(S110のY)、制御部104は、レベリングアクチュエータ226を制御して光軸位置を補正し(S111)、本ルーチンを終了する。第2軸切片の変化量が当該範囲に含まれない場合(S110のN)、制御部104は、レベリングアクチュエータ226を制御して光軸位置を補正し、オートレベリング制御停止情報を生成してメモリ108に記録し、インジケータを点灯させて(S112)、本ルーチンを終了する。
【0050】
以上説明したように、本実施形態に係る車両用灯具の制御装置としてのレベリングECU100は、加速度センサ110の出力値をもとに加速度センサ110に生じる出力値の誤差要因を検知して、灯具ユニット10の光軸位置を補正している。これにより、オートレベリング制御の安全性を高めることができるため、より高性能なオートレベリング制御を実施することができる。また、温度ドリフト対策としては、温度ドリフトによる出力値の誤差を補正するための温度補正機能を有する加速度センサを採用する方法もあるが、このような加速度センサは比較的高価であって種類も少ない。そのため、この方法ではコスト増大と設計自由度の低下を招き得る。これに対し、本実施形態では加速度センサ110の出力値をもとに温度ドリフトを検知しているため、このようなコスト増大や設計自由度の低下を回避することができる。
【0051】
また、レベリングECU100は、車両前後方向の加速度を第1軸に設定し車両上下方向の加速度を第2軸に設定した座標に、車両300の加速時および減速時の少なくとも一方における加速度センサ110の出力値を経時的にプロットして少なくとも2点から直線を導出し、直線の第2軸切片の変化をもとに誤差要因を検知している。このように、本実施形態では、加速度センサ110の生データを用いて誤差要因を検知しているため、加速度センサ110の出力値を換算して得られる合計角度θをもとに誤差要因を検知する場合に比べて、誤差要因を高感度に検知することができる。
【0052】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更などの変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれる。上述の実施形態と以下の変形例との組合せによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【0053】
上述した実施形態1では、制御部104は、近似直線の傾きの変化から車両姿勢角度θvの変化を導出して光軸調節を実行しているが、例えば次のようにして光軸調節を実行してもよい。すなわち、車両走行中は、積載荷量や乗車人数が増減して車両姿勢角度θvが変化することは稀であるため、走行中の合計角度θの変化を路面角度θrの変化と推定することができる。一方、車両停止中は、車両300が移動して路面角度θrが変化することは稀であるため、車両停止中の合計角度θの変化を車両姿勢角度θvの変化と推定することができる。そこで、制御部104は、車両走行中に合計角度θが変化した場合に光軸を維持し、車両停止中に合計角度θが変化した場合に光軸調節を実行してもよい。
【0054】
具体的には、制御部104は、車両300が基準状態にあるときの加速度センサ110の出力値を、路面角度θrの基準値(θr=0°)、車両姿勢角度θvの基準値(θv=0°)としてメモリ108に記録する。そして、制御部104は、車両走行中に合計角度θが変化した場合、光軸調節を指示する制御信号の生成を回避する。あるいは、制御部104は、車両走行中の合計角度θの変化に対して光軸位置の維持を指示する制御信号を生成する。そして車両停止時に、制御部104は、現在の合計角度θから車両姿勢角度θvの基準値を減算して車両停止時の路面角度θrを計算し、この路面角度θrを新たな路面角度θrの基準値としてメモリ108に記録する。また、制御部104は、車両停止中に合計角度θが変化した場合、現在の合計角度θから路面角度θrの基準値を減算して車両姿勢角度θvを取得し、この車両姿勢角度θvを用いて光軸調節を実行する。取得した車両姿勢角度θvは、新たな基準値としてメモリ108に記録される。
【0055】
上述の実施形態において、車両300に加速度センサ110の温度を検知するための温度センサが設けられていてもよい。この場合、レベリングECU100は、加速度センサ110の出力値と温度センサの出力値とから加速度センサ110の温度ドリフトを検知してもよい。これにより、温度ドリフトの発生をより高精度に検知することができる。なお、加速度センサ110は、温度センサの出力値のみから温度ドリフトを検知してもよい。また、車両300に加速度センサ110の位置ずれを検知するための位置ずれセンサが設けられてもよい。この場合、レベリングECU100は、加速度センサ110の出力値と位置ずれセンサの出力値とから、あるいは位置ずれセンサの出力値のみから位置ずれを検知してもよい。
【0056】
上述の実施形態において、加速度センサ110はレベリングECU100の内部に設けられているが、加速度センサ110はレベリングECU100の外に設けられていてもよい。また、誤差要因として温度ドリフトまたは位置ずれのみを検知するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0057】
O 光軸、 10 灯具ユニット、 100 レベリングECU、 102 受信部、 104 制御部、 106 送信部、 110 加速度センサ、 226 レベリングアクチュエータ、 300 車両。
図1
図2
図3
図4
図5
図6