(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5762012
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】電気モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 5/20 20060101AFI20150723BHJP
【FI】
H02K5/20
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-11376(P2011-11376)
(22)【出願日】2011年1月4日
(65)【公開番号】特開2011-139631(P2011-139631A)
(43)【公開日】2011年7月14日
【審査請求日】2013年11月27日
(31)【優先権主張番号】200910238809.7
(32)【優先日】2009年12月29日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】201010110588.8
(32)【優先日】2010年1月27日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】502458039
【氏名又は名称】ジョンソン エレクトリック ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ チン シック ラウ
(72)【発明者】
【氏名】シャオ ジュン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】チュン ケイ ユー
【審査官】
今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−130696(JP,A)
【文献】
特開2009−171717(JP,A)
【文献】
特開平03−139152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子と;
固定子に回転可能に装着され且つシャフトを有する回転子と;
シャフトに装着され、入口及び出口を有するファンと;
ファンに隣接して固定子の一端に配置された軸方向延長部をもつ空気ガイド構造体と; 軸方向延長部とファンとの間に形成されたギャップであって、ファンの出口から該ギャップを通してファンの入口へと流れる空気を制限するに充分なほど巾の狭いギャップと;を備え、
前記固定子は、更に、固定子コアと、該固定子コアの周りに巻かれた巻線と、該巻線からコアを絶縁する端部プロテクタとを備え、該端部プロテクタは、前記空気ガイド構造体の軸方向延長部と一体的に形成される、電気モータ。
【請求項2】
前記ギャップの巾は、0.05mmより大きく且つ2.0mmより小さい、請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記固定子は、更に、固定子コアと、該固定子コアの周りに巻かれた巻線と、該巻線からコアを絶縁する端部プロテクタとを備え、更に、該端部プロテクタは、その端部が半径方向に延びて、前記固定子コアの歯の軸方向端を少なくとも部分的にカバーする、請求項1又は2に記載のモータ。
【請求項4】
前記固定子は、その軸方向端に配置された2つのエンドキャップを備え、これら2つのエンドキャップの一方の外側付近にファンが配置される、請求項1から3のいずれかに記載のモータ。
【請求項5】
前記固定子は、更に、固定子コアと、該固定子コアに2つのエンドキャップを固定するために該固定子コアの内部を通して延びる複数のロック部材とを備えた、請求項4に記載のモータ。
【請求項6】
前記固定子は、その軸方向端に配置された2つのエンドキャップを備え、これら2つのエンドキャップの一方の内側付近にファンが配置される、請求項1から3のいずれかに記載のモータ。
【請求項7】
前記ファンは、前記空気ガイド構造体の軸方向延長部の端に配置された遠心ファンであり、そして前記ギャップは、前記モータの軸方向において軸方向延長部とファンとの間に形成される、請求項1から6のいずれかに記載のモータ。
【請求項8】
前記ファンに隣接した軸方向延長部の端は、トランペット形状である、請求項7に記載のモータ。
【請求項9】
前記ファンは、複数の羽根を有し、そして前記空気ガイド構造体の軸方向延長部に隣接する前記羽根の一端に面取り部が形成される、請求項7又は8に記載のモータ。
【請求項10】
前記ファンは、前記空気ガイド構造体の軸方向延長部の内側付近に配置された軸方向ファンであり、そして前記ギャップは、前記モータの半径方向において軸方向延長部とファンとの間に形成される、請求項1から6のいずれかに記載のモータ。
【請求項11】
前記ファンは、前記空気ガイド構造体の軸方向延長部の端の外側に配置された軸方向ファンであり、そして前記ファンの外半径は、前記空気ガイド構造体の軸方向延長部の外半径より大きい、請求項1から6のいずれかに記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気モータに係り、特に、冷却ファンを伴う小型電気モータに係る。
【背景技術】
【0002】
一般的に、PMDCモータ及び電子整流DCモータのような小型電気モータは、固定子と、固定子に設置された回転子とを備えている。固定子の軸方向端には、2つのエンドキャップが配置される。2つのエンドキャップは、シャフトをジャーナル軸受するベアリングを有する。モータから熱を除去するため、一方のエンドキャップの内側において固定子コアとエンドキャップとの間でシャフトにファンが固定される。
【0003】
しかしながら、モータの物理的サイズを減少しながらモータの電力を増加するために、放熱の問題が顕著なものとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、冷却を改善した電気モータが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、本発明は、その1つの態様において、固定子と;固定子に回転可能に装着され且つシャフトを有する回転子と;シャフトに装着され、入口及び出口を有するファンと;ファンに隣接して固定子の一端に配置された軸方向延長部をもつ空気ガイド構造体と;その軸方向延長部とファンとの間に形成されたギャップであって、ファンの出口から該ギャップを通してファンの入口へと流れる空気を制限するに充分なほど巾の狭いギャップと;を備えた電気モータを提供する。
【0006】
好ましくは、ギャップの巾は、0.05mmより大きく且つ2.0mmより小さい。
【0007】
好ましくは、固定子は、更に、固定子コアと、固定子コアの周りに巻かれた巻線と、巻線からコアを絶縁する端部プロテクタとを備え、端部プロテクタは、空気ガイド構造体の軸方向延長部と一体的に形成される。
【0008】
好ましくは、固定子は、更に、固定子コアと、固定子コアの周りに巻かれた巻線と、巻線からコアを絶縁する端部プロテクタとを備え、更に、端部プロテクタは、その端部が半径方向に延びて、固定子コアの歯の軸方向端を少なくとも部分的にカバーする。
【0009】
好ましくは、固定子は、その軸方向端に配置された2つのエンドキャップを備え、これら2つのエンドキャップの一方の外側付近にファンが配置される。
【0010】
好ましくは、固定子は、更に、固定子コアと、固定子コアに2つのエンドキャップを固定するために固定子コアの内部を通して延びる複数のロック部材とを備えている。
【0011】
好ましくは、固定子は、その軸方向端に配置された2つのエンドキャップを備え、これら2つのエンドキャップの一方の内側付近にファンが配置される。
【0012】
好ましくは、ファンは、空気ガイド構造体の軸方向延長部の端に配置された遠心ファンであり、そしてギャップは、モータの軸方向において軸方向延長部とファンとの間に形成される。
【0013】
好ましくは、ファンに隣接した軸方向延長部の端は、トランペット形状である。
【0014】
好ましくは、ファンは、複数の羽根を有し、そして空気ガイド構造体の軸方向延長部に隣接する羽根の一端に面取り部が形成される。
【0015】
好ましくは、ファンは、空気ガイド構造体の軸方向延長部の内側付近に配置された軸方向ファンであり、そしてギャップは、モータの半径方向において軸方向延長部とファンとの間に形成される。
【0016】
好ましくは、ファンは、空気ガイド構造体の軸方向延長部の端の外側に配置された軸方向ファンであり、そしてファンの外半径は、空気ガイド構造体の軸方向延長部の外半径より大きい。
【0017】
以下、添付図面を参照し、本発明の好ましい実施形態を一例として説明する。2つ以上の図に現れる同じ構造物、要素又は部品は、一般的に、それらが現れる全ての図において同じ参照番号で示す。図示されたコンポーネント及び特徴部の寸法は、一般的に、表現の便宜上及び明瞭化のために選択されたものであって、必ずしも一定の縮尺率で描かれていない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の好ましい実施形態によるモータの斜視図である。
【
図3】
図1のモータの一部分である空気ガイド構造体の斜視図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態による空気ガイド構造体の軸方向延長部の軸方向断面図である。
【
図5】本発明の別の実施形態による空気ガイド構造体の軸方向延長部の軸方向断面図である。
【
図6】異なる実施形態におけるファンの概略軸方向断面図である。
【
図7】異なる実施形態におけるファンの概略軸方向断面図である。
【
図8】異なる実施形態におけるファンの概略軸方向断面図である。
【
図9】異なる実施形態における遠心型ファンと空気ガイド構造体との間の相対的位置を示す図である。
【
図10】異なる実施形態における遠心型ファンと空気ガイド構造体との間の相対的位置を示す図である。
【
図11】異なる実施形態における軸方向型ファンと空気ガイド構造体との間の相対的位置を示す図である。
【
図12】異なる実施形態における軸方向型ファンと空気ガイド構造体との間の相対的位置を示す図である。
【
図13】別の実施形態によるモータの軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1、2及び3は、本発明の好ましい実施形態によるモータを示す。モータは、固定子10と、該固定子に対して回転可能な回転子40とを備えている。回転子40は、シャフト42を含む。シャフト42の一端にファン44が装着される。ファン44は、エンドキャップ22の軸方向外側に配置される。
【0020】
固定子10は、鉄のような透磁性材料で作られた固定子コア12と、巻線14とを備えている。固定子コア12は、ヨーク16と、ヨークから内方に延びる複数の歯とを含む。巻線14は、歯の周りに巻かれる。ヨーク16の放熱面積を増加するためにヨーク16の外面には複数のスロット(図示せず)が軸方向に形成される。
【0021】
固定子10は、更に、2つのエンドキャップ20、22と、これらエンドキャップ20、22を固定するための複数のロック部材24とを備えている。ロック部材24は、固定子の内部を通して延びる。好ましくは、ロック部材24は、ヨーク16の内側で隣接歯間に形成された各スロットを通して延びる。固定子10は、更に、固定子コアの鋭い縁から巻線を保護すると共に巻線14から固定子コア12を絶縁するために固定子コア12の軸方向端に各々配置された2つの端部プロテクタ26、27も備えている。
【0022】
各エンドキャップ20、22は、回転子40のシャフト42を支持するための端部202、222と、これら端部202、222から軸方向に延びる軸方向延長部204、224とを含む。固定子コアの歯の2つの軸方向端の内部は、歯の他部分に対してくぼんでいて、段19が形成される。エンドキャップ20、22の軸方向延長部204、224の端が19に当接して、軸方向延長部204、224を軸方向及び半径方向に位置付けする。任意であるが、端部プロテクタ26、27の内部円筒面が充分な精度を有する場合には、軸方向延長部204、224の端を、端部プロテクタ26、27の内部円筒面により半径方向に位置付けると共に、エンドキャップ20、22の軸方向延長部204、224の端により軸方向に位置付けることができる。
【0023】
ファン44に隣接する端部プロテクタ27は、空気ガイド構造体28と一体的に形成される。端部プロテクタは、端部282と、該端部282の外周から軸方向に延びる軸方向延長部284とを有する。端部282は、固定子コアの歯に対応する多数の半径方向延長部を含む。半径方向延長部は、固定子コアの歯の軸方向端にぴったり取り付けられ、巻線14をコアから絶縁する。空気ガイド構造体28を形成する軸方向延長部284は、チューブ状であり、エンドキャップ22の外周を取り巻く。空気ガイド構造体のチューブ状部分は、正円形断面であるのが好ましいが、固定子コアの形状に一般的に一致するように、楕円、方形、長方形、等の他の断面形状も考えられる。例えば、固定子が方形である場合には、軸方向延長部284が、方形断面のチューブ状でよい。端部282から離れた軸方向延長部284の端は、フレア状又はトランペット形状の端が形成されるように半径方向外方に延びる。
【0024】
ファン44は、半径方向外方に延びる多数の羽根46を含む遠心ファンである。羽根46は、空気ガイド構造体28を向いている。羽根46の端と、空気ガイド構造体28の軸方向延長部284の端との間には、細い軸方向ギャップが形成される。ギャップの巾は、0.05mmより大きく且つ2.0mmより小さいのが好ましい。モータが動作されるときには、ファン44により発生される空気流が、固定子の隣接歯間に形成されるスロット及び固定子と回転子との間のスペースへと流れ込み、次いで、ファン44の羽根46間に形成された空気流路を通してファンに隣接するモータの端から流れ出し、回転子コア、磁石(図示せず)及び固定子巻線14を冷却する。或いは又、空気は、逆方向にも流れる。羽根46の端と空気ガイド構造体28の軸方向延長部284の端との間に形成された細い軸方向ギャップは、ファン44の出口側の高圧領域からファン44の入口側の低圧領域へ空気が流れるのを防止することができる。空気ガイドに接触せずにファンを回転できるようにするためにファンと空気ガイドとの間にギャップがなければならない。しかしながら、通常、ファンの出口からファンの入口へ空気の著しい循環又は交差流があり、モータを通して流れる空気の量を減少させる。空気のこの交差流を制限することにより、より多くの空気がモータを通して引き出される。従って、ファン44の冷却効率が高められ、モータの性能が改善される。
【0025】
任意であるが、空気ガイド構造体28は、端部プロテクタ27とは別に形成することができ、半径方向に延びる軸方向端部と、この軸方向端部の周囲から軸方向に延びる軸方向延長部とを含む。軸方向端部は、端部プロテクタに取り付けられる。
【0026】
又、空気ガイド構造体28のトランペット形状の端は、空気ガイド構造体28の軸方向延長部284の端の内面を、
図4及び5に示す凸状、凹状又は直線状表面である面取り形状へとカットすることにより形成することができる。空気ガイド構造体28に形成されるトランペット形状の端は、空気の渦の発生を減少する上で助けとなる。
【0027】
又、空気ガイド構造体28の軸方向延長部284に隣接するファン44の羽根46の端も、
図6ないし8に示す直線状、凸状又は凹状表面である面取り形状へとカットすることができる。
【0028】
ファン44及び空気ガイド構造体28は、種々の装着位置を有することができる。例えば、ファン44は、
図9に示すように、空気ガイド構造体28の軸方向延長部284から完全に外に配置されてもよい。又、ファン44は、
図10に示すように、空気ガイド構造体28の軸方向延長部284内に部分的に配置されてもよい。
【0029】
任意であるが、ファン44は、軸方向ファンである。ファン全体が空気ガイド構造体28の軸方向延長部284から完全に外に配置されてもよい。ファン44の軸方向端と、軸方向延長部284の軸方向端面との間に軸方向ギャップが形成される。ファン44の外半径は、
図11に示すように、固定子コアの外半径より大きい。従って、ファン44により発生される空気流のうち、ある空気が固定子の隣接歯間のギャップを通して流れ、又、ある空気が固定子コア12の外側に流れて、固定子コアを冷却する。ファン44が軸方向ファンであるときには、空気ガイド構造体28の軸方向延長部284内に完全に配置され、
図12に示すように、ファン44の外周と軸方向延長部284の内面との間に半径方向ギャップが形成される。
【0030】
任意であるが、ファン44及び空気ガイド構造体28は、
図13に示すように、エンドキャップ22の内側に配置されてもよい。
【0031】
任意であるが、軸方向及び半径方向の両ギャップが空気ガイド構造体28の軸方向延長部284とファンとの間に形成されてもよい。
【0032】
空気ガイド構造体28の軸方向延長部284は、モータの軸方向に延びることだけに限定されないことに注意されたい。モータの軸に対して傾斜した方向に延びてもよい。
【0033】
本発明の説明及び特許請求の範囲において、動詞「備える(comprise)」、「含む(include)」、「収容する(contain)」及び「有する(have)」並びにその変化は、各々、ここに述べたアイテムの存在を特定するために包括的な意味で使用され、付加的なアイテムの存在を除外するものではない。
【0034】
本発明は、1つ以上の好ましい実施形態を参照して説明したが、当業者であれば、種々の変更がなされ得ることが明らかであろう。それ故、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって決定されるものとする。
【0035】
例えば、本発明は、電子整流モータに限定されないことを理解されたい。又、本発明は、他の形式のモータ、例えば、ユニバーサルモータ、PMDCモータ、等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
10:固定子
12:固定子コア
14:巻線
18:ヨーク
19:段
20、22:エンドキャップ
24:ロック部材
26、27:端部プロテクタ
28:空気ガイド構造体
40:回転子
42:シャフト
44:ファン
46:羽根
202、222:端部
204、224:軸方向延長部
282:端部
284:軸方向延長部