(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記接続工程において、隣り合う2つの色素増感太陽電池のうち一方の色素増感太陽電池の前記接続部材と、他方の色素増感太陽電池の前記第1電極に設けられた前記端子とを抵抗溶接により直接接続する請求項1に記載の色素増感太陽電池モジュールの製造方法。
前記接続部材固定工程において、抵抗溶接を、前記金属基板の上に前記接続部材を接触させた状態で、2つの電極をそれぞれ、前記接続部材の表面、及び、前記金属基板の表面に当接させることによって行う、請求項1又は2に記載の色素増感太陽電池モジュールの製造方法。
前記接続部材と前記端子との間に、前記接続部材を構成する金属と前記端子を構成する金属との合金からなる合金部が設けられている、請求項7に記載の色素増感太陽電池モジュール。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載の方法は以下の課題を有していた。
【0006】
すなわち、上記特許文献1記載の方法では、チタン対極のうち作用極とは反対側の面であって封止部の外周より外側の領域に銅又はニッケルからなる接続端子が接合される。このため、チタン対極のうちのごく小さなスペースに端子を接合しなければならず、接続強度が必ずしも十分とは言えない。このため、この色素増感太陽電池を有する色素増感太陽電池モジュールは接続信頼性の点で改善の余地があった。
【0007】
接続信頼性を高めるためには、チタン対極における作用極と反対側の表面のうち、封止部の外周より内側の領域、すなわち酸化物半導体層の直上部に接続端子を設けることも考えられる。
【0008】
しかし、その場合には、接続端子の接合箇所が酸化物半導体層に近づくことになるため、酸化物半導体層に担持された光増感色素が劣化するおそれがある。
【0009】
そこで、光増感色素の劣化を抑制しながら、優れた接続信頼性を有する色素増感太陽電池の製造方法が求められている。
【0010】
本発明は上記事項に鑑みてなされたものであり、光増感色素の劣化を抑制しながら優れた接続信頼性を有する色素増感太陽電池、その製造方法、色素増感太陽電池モジュール及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、以下の発明により上記課題を解決し得ることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明は、複数の色素増感太陽電池を直列且つ電気的に接続してなる色素増感太陽電池モジュールの製造方法において、前記複数の色素増感太陽電池を直列且つ電気的に接続する接続工程を含み、前記色素増感太陽電池を、透明基板及び前記透明基板上に設けられる透明導電膜を有する第1電極、並びに、不動態膜を形成する金属からなる金属基板を含む第2電極を準備する準備工程と、前記第1電極又は第2電極に酸化物半導体層を形成する酸化物半導体層形成工程と、前記酸化物半導体層に光増感色素を担持する色素担持工程と、前記酸化物半導体層上に電解質を配置する電解質配置工程と、前記第1電極と前記第2電極とを対向させて封止部により前記電解質を封止する封止工程と、前記第2電極の前記金属基板上であって前記第1電極と反対側に前記金属基板よりも低い抵抗を有する金属からなる直線状の接続部材を、前記第2電極のうち前記封止部の内側領域
上を通り前記封止部
上を越えて前記金属基板から張り出
して固定する接続部材固定工程とを含む色素増感太陽電池の製造方法であって、前記接続部材固定工程において、前記接続部材を抵抗溶接により前記金属基板に接合することにより前記金属基板上に前記接続部材を固定する、色素増感太陽電池の製造方法によって製造し、前記接続工程において、隣り合う2つの色素増感太陽電池のうち一方の色素増感太陽電池の前記第2電極に設けられた前記接続部材を、前記金属基板から他方の色素増感太陽電池側に張り出した状態で、前記他方の色素増感太陽電池の前記第1電極に設けられた端子と接続する色素増感太陽電池モジュールの製造方法である。
【0013】
この製造方法によれば、色素増感太陽電池が上述した製造方法で製造されることで、光増感色素の劣化が十分に抑制され且つ優れた接続信頼性を有する色素増感太陽電池が得られる。このため、接続工程において、第2電極の金属基板と、隣の色素増感太陽電池の第1電極の端子とを接続すると、優れた光電変換特性及び接続信頼性を有する色素増感太陽電池モジュールを得ることができる。またこの製造方法によれば、接続部材固定工程において、金属基板よりも低い抵抗を有する接続部材を抵抗溶接によって金属基板に接合することにより金属基板上に接続部材を固定する。ここで、抵抗溶接は、2本の電極を接続部材及び金属基板又はそのいずれか一方に押し当てて、両者間に電流を流すことにより、接続部材と金属基板との接触部分で熱を発生させ、この熱により接続部材及び金属基板の両方を溶融させて両者を接続させる方法である。このとき、熱は金属基板と接続部材の接触部分のみにしか発生しない。また、抵抗溶接においては、電流を流す時間は短時間(数ミリ秒)であるため、熱が発生する時間も短い。このため、熱が加えられる場所を局所領域に抑えることができる。従って、封止工程の後、第2電極の金属基板上に接続部材を固定する場合でも、酸化物半導体層に担持された光増感色素の劣化を十分に抑制することができる。
【0014】
さらに接続部材固定工程により、金属基板と接続部材とを溶融させて接合させるため、両者の間に合金部が形成される。このため、金属基板と接続部材との接合強度が大きくなり、得られた複数の色素増感太陽電池を直列に接続させて色素増感太陽電池モジュールを製造する場合に、優れた接続信頼性を有する色素増感太陽電池モジュールを得ることができる。また第2電極と接続部材との間に合金部が設けられることで、第2電極と接続部材との間の接触抵抗も低下させることができる。また本発明の製造方法では、接続部材を抵抗溶接により金属基板に接合することで、熱が加えられる場所を局所領域に抑えることができるため、接続部材を封止部の内側領域に固定することも可能である。この場合、接続部材から電解質までの間で、接続部材よりも抵抗の大きい金属基板を通る距離を短縮させることが可能となり、接続部材と電解質との間の抵抗を小さくすることが可能となる。
【0015】
前記接続部材固定工程においては、抵抗溶接を、前記金属基板のうち前記第1電極とは反対側の表面に前記接続部材を接触させた状態で、2つの抵抗溶接用の電極をそれぞれ、前記接続部材、及び、前記金属基板の前記表面に当接させることによって行うことが好ましい。
【0016】
この場合、第2電極と接続部材とを抵抗溶接により接続する際に、2つの抵抗溶接用電極を第2電極の金属基板のうち第1電極側の表面に押し当てずに済む。このため、金属基板のうち第1電極側の表面における変形を十分に防止することができる。また第2電極の金属基板のうち第1電極側の表面に抵抗溶接用電極の溶着を防止できるという利点もある。
【0017】
前記接続部材固定工程において、抵抗溶接を3〜20m秒行うことが好ましい。
【0018】
この場合、合金部の厚さが適度になり、接続部材と金属基板との間で接合強度と抵抗の両方がより良好となる。
【0019】
前記接続部材の厚さは9〜200μmであることが好ましい。
【0020】
この場合、接続部材の厚さが9μm以上であると、9μm未満である場合に比べて強度が十分に向上し、抵抗溶接に際して変形しにくくなる。一方、接続部材の厚さが、200μm以下であると、200μmを超える場合に比べてより短時間で第2電極と接続部材とを接続できる。また第2電極のうち第1電極と反対側の表面の凹凸を少なくすることができ、平坦な面上に安定して設置できる。
【0021】
前記第2電極の厚さは9〜200μmであることが好ましい。第2電極の厚さが9μm以上であると、9μm未満である場合に比べて第2電極の強度がより大きいため、抵抗溶接に際して変形しにくくなる。一方、第2電極の厚さが、200μm以下であると、200μmを超える場合に比べてより短時間で第2電極と接続部材とを接続できる。また第2電極に可撓性を持たせることができる。
【0024】
上記接続工程において、隣り合う2つの色素増感太陽電池のうち一方の色素増感太陽電池の前記接続部材と、他方の色素増感太陽電池の前記第1電極に設けられた前記端子とを抵抗溶接により直接接続することが好ましい。
【0025】
この場合、隣り合う2つの色素増感太陽電池のうち一方の色素増感太陽電池の接続部材と、他方の色素増感太陽電池の第1電極の端子とを、はんだ等を用いる場合に比べて、簡便に接合させることができるとともに、接続強度を向上させることがき、接触抵抗も低下させることができる。また、抵抗溶接は、一方の色素増感太陽電池の接続部材と、他方の色素増感太陽電池の第1電極の端子とを接合する際、抵抗溶接用の電極を局所的に当てて行うため、熱が局所的にしか発生しない。このため、はんだ等を用いて接合を行う場合に比べて、酸化物半導体層に担持された色素や封止部の劣化がより十分に抑制される。
【0030】
また本発明は、複数の色素増感太陽電池を直列且つ電気的に接続してなる色素増感太陽電池モジュールであって、前記色素増感太陽電池が、透明基板及び前記透明基板上に設けられる透明導電膜を有する第1電極と、不動態膜を形成する金属からなる金属基板を含む第2電極と、前記第1電極又は第2電極に設けられる酸化物半導体層と、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられる電解質と、前記第1電極及び前記第2電極を接合させる封止部と、前記第2電極のうち前記第1電極と反対側の表面に設けられ、前記金属基板の金属よりも低い抵抗を有する金属からなる直線状の接続部材とを備えており、前記色素増感太陽電池において、前記第2電極と前記接続部材との間に、前記金属基板の金属と前記接続部材の金属との合金からなる合金部が設けられ、隣り合う2つの色素増感太陽電池のうち一方の色素増感太陽電池の前記第2電極に設けられた前記接続部材と、他方の色素増感太陽電池の前記第1電極に設けられた端子とが接続され、前記接続部材が、前記第2電極のうち前記封止部の内側領域
上を通り前記封止部
上を越えて前記金属基板から前記他方の色素増感太陽電池側まで張り出している色素増感太陽電池モジュールである。
【0031】
この色素増感太陽電池モジュールによれば、個々の色素増感太陽電池が色素の劣化が十分に抑制され且つ優れた接続信頼性を有する。このため、優れた光電変換特性及び接続信頼性を有する色素増感太陽電池モジュールが実現される。
またこの発明によれば、第2電極と接続部材との間に、第2電極の金属と接続部材の金属との合金からなる合金部が設けられているため、第2電極と接続部材との接続強度が大きくなり、優れた接続信頼性が得られる。また第2電極と接続部材との間に合金部が設けられることで、第2電極と接続部材との間の接触抵抗も低下させることができる。
【0032】
上記色素増感太陽電池モジュールにおい
て、前記接続部材と
前記端子との間に、前記接続部材を構成する金属と前記端子を構成する金属との合金からなる合金部が設けられていることが好ましい。
【0033】
この場合、端子と接続部材との接続強度が大きくなり、優れた接続信頼性が得られる。また端子と接続部材との間に合金部が設けられることで、端子と接続部材との間の接触抵抗も低下させることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、光増感色素の劣化が十分に抑制され、優れた接続信頼性を有する色素増感太陽電池、その製造方法、色素増感太陽電池モジュール及びその製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0037】
<第1実施形態> まず本発明の色素増感太陽電池モジュールの第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の色素増感太陽電池モジュールの一実施形態を示す部分断面図である。
【0038】
図1に示すように、色素増感太陽電池モジュール100は、複数(
図1では2つ)の色素増感太陽電池50を有し、複数の色素増感太陽電池50は直列且つ電気的に接続されている。以下、説明の便宜上、色素増感太陽電池モジュール100において隣り合う2つの色素増感太陽電池50を色素増感太陽電池50A,50Bと呼ぶことがある。
【0039】
まず色素増感太陽電池50Aについて説明する。
【0040】
色素増感太陽電池50Aは、作用極10と、作用極10に対向する対極20と、作用極10及び対極20を接合させる封止部30と、作用極10、対極20及び環状の封止部30によって形成されるセル空間に充填される電解質40とを備えている。
【0041】
作用極10は、透明基板11及び透明基板11の上に設けられる透明導電膜12からなる透明導電性基板15と、透明導電性基板15の透明導電膜12の上に設けられる酸化物半導体層13と、透明導電膜12の上において酸化物半導体層13の各々を包囲するように設けられる配線部17とを有している。配線部17は、透明導電膜12上に設けられる集電配線14と、集電配線14を覆う配線保護層16とを有している。酸化物半導体層13には光増感色素が担持されている。また、透明導電膜12上であって封止部30の外側には、集電配線14に接続される端子90が設けられ、端子90の上にははんだ70が設けられている。本実施形態では、透明導電性基板15によって第1電極が構成されている。
【0042】
色素増感太陽電池50Aの透明基板11は、色素増感太陽電池モジュール100における全色素増感太陽電池50A及び50Bにおいて共通の透明基板となっている。
【0043】
一方、対極20は、不動態を形成する金属基板21と金属基板21の作用極10側に設けられて触媒反応を促進する触媒層22とを備えている。また対極20の金属基板21には、作用極10とは反対側の表面に、金属基板21よりも低い抵抗を有する接続部材60が設けられている。本実施形態では、接続部材60は、金属基板21の一部にのみ設けられている。ここで、
図2に示すように、接続部材60と対極20の金属基板21との間には、金属基板21を構成する金属と接続部材60を構成する金属との合金からなる合金部65が設けられている。また
図1に示すように、接続部材60の上には、はんだ70が設けられている。本実施形態では、対極20によって第2電極が構成されている。
【0044】
色素増感太陽電池50Aの隣りの色素増感太陽電池50Bも、色素増感太陽電池50Aと同一の構成を有している。
【0045】
そして、色素増感太陽電池50Aと色素増感太陽電池50Bとは導電線80によって接続されている。具体的には、導電線80の一端は、色素増感太陽電池50Aの接続部材60にはんだ70によって接続され、導電線80の他端は、色素増感太陽電池50Bの端子90にはんだ70によって接続されている。
【0046】
色素増感太陽電池モジュール100によれば、対極20と接続部材60との間に、対極20の金属基板を構成する金属と接続部材60の金属との合金からなる合金部65が設けられている。このため、対極20と接続部材60との接続強度が大きくなり、優れた接続信頼性を有する。対極20と接続部材60との間に合金部65が設けられることで、対極20と接続部材60との間の接触抵抗も低下させることができる。
【0047】
以下、作用極10、光増感色素、対極20、封止部30、電解質40、接続部材60、はんだ70、導電線80および端子90について詳細に説明する。
【0048】
(作用極)
作用極10は、上述したように、透明基板11及び透明基板11上に設けられる透明導電膜12から成る透明導電性基板15と、透明導電性基板15の透明導電膜12上に設けられ、光増感色素が担持される多孔質酸化物半導体層13とを備える。
【0049】
透明基板11は、光透過性の材料からなる基板により構成される。このような材料としては、ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などが挙げられ、通常、光電変換素子の透明基材として用いられる材料であればいかなるものでも用いることができる。透明基板11は、これらの中から電解質40への耐性などを考慮して適宜選択される。また、透明基板11は、できる限り光透過性に優れる基材が好ましく、光透過率が90%以上の基材がより好ましい。
【0050】
透明導電膜12は、作用極10の透明性を著しく損なわない構造とするために、導電性金属酸化物からなる薄膜であることが好ましい。このような導電性金属酸化物としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、フッ素添加酸化スズ(FTO)、酸化スズ(SnO
2)などが挙げられる。また、透明導電膜12は、単層でも、異なる導電性金属酸化物で構成される複数の層の積層体で構成されてもよい。透明導電膜12が単層で構成される場合、透明導電膜12は、成膜が容易かつ製造コストが安価であるという観点から、ITO、FTOが好ましく、また、高い耐熱性及び耐薬品性を有する観点から、FTOで構成されることがより好ましい。
【0051】
また、透明導電膜12が複数の層で構成される積層体により構成されると、各層の特性を反映させることが可能となることから好ましい。中でも、ITOからなる膜にFTOからなる膜が積層されてなる積層膜であることが好ましい。この場合、高い導電性、耐熱性及び耐薬品性を持つ透明導電膜12が実現でき、可視域における光の吸収量が少なく、導電率が高い透明導電性基板を構成することができる。また、透明導電膜12の厚さは例えば0.01μm〜2μmの範囲にすればよい。
【0052】
多孔質酸化物半導体層13を形成する酸化物半導体としては、特に限定されず、通常、光電変換素子用の多孔質酸化物半導体層を形成するのに用いられるものであれば、いかなるものでも用いることができる。このような酸化物半導体としては、例えば、酸化チタン(TiO
2)、シリカ(SiO
2)、酸化スズ(SnO
2)、酸化タングステン(WO
3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニオブ(Nb
2O
5)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO
3)酸化インジウム(In
3O
3)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化タリウム(Ta
2O
5)、酸化ランタン(La
2O
3)、酸化イットリウム(Y
2O
3)、酸化ホルミウム(Ho
2O
3)、酸化ビスマス(Bi
2O
3)、酸化セリウム(CeO
2)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0053】
これら酸化物半導体の粒子の平均粒径は1〜1000nmであることが、色素で覆われた酸化物半導体の表面積が大きくなり、即ち光電変換を行う場が広くなり、より多くの電子を生成することができることから好ましい。また、多孔質酸化物半導体層13は、粒度分布の異なる酸化物半導体粒子を積層させて構成されることが好ましい。この場合、半導体層内で繰り返し光の反射を起こさせることが可能となり、多孔質酸化物半導体層13の外部へ逃がす入射光を少なくして、効率よく光を電子に変換することができる。多孔質酸化物半導体層13の厚さは、例えば0.5〜50μmとすればよい。なお、多孔質酸化物半導体層13は、異なる材料からなる複数の酸化物半導体の積層体で構成することもできる。
【0054】
光増感色素としては、ビピリジン構造、ターピリジン構造などを配位子に含むルテニウム錯体、ポリフィリン、フタロシアニンなどの含金属錯体、エオシン、ローダミン、メロシアニンなどの有機色素などが挙げられ、これらの中から、用途、使用半導体に適した挙動を示すものを特に限定なく選ぶことができる。具体的には、N3、N719、ブラックダイ(Black dye)などを使用することができる。
【0055】
(対極)
対極20は、不動態を形成する金属基板21と、還元反応を促進する触媒層22とで構成される。不動態を形成する金属基板21を構成する金属としては、例えばチタン、ニッケル、ニオブ、アルミニウム、タングステン、SUSなどの電解質40に耐久性を有するものを用いることができる。触媒層22は、白金や炭素などからなる。
【0056】
(封止部)
封止部30は、作用極10と対極20とを連結しており、作用極10と対極20との間の電解質40は、封止部30によって包囲されることで封止される。封止部30を構成する材料としては、例えばアイオノマー、エチレン−ビニル酢酸無水物共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、紫外線硬化樹脂、及び、ビニルアルコール重合体が挙げられる。なお、封止部30は樹脂のみで構成されてもよいし、樹脂と無機フィラーとで構成されていてもよい。
【0057】
(電解質)
電解質40は、多孔質酸化物半導体層13内に電解液を含浸させてなるものか、または、多孔質酸化物半導体層13内に電解液を含浸させた後に、この電解液を適当なゲル化剤を用いてゲル化(擬固体化)して、多孔質酸化物半導体層13と一体に形成されてなるもの、あるいは、イオン性液体、酸化物半導体粒子若しくは導電性粒子を含むゲル状の電解質を用いることができる。
【0058】
上記電解液としては、ヨウ素、ヨウ化物イオン、ターシャリ−ブチルピリジンなどの電解質成分が、エチレンカーボネートやメトキシアセトニトリルなどの有機溶媒に溶解されてなるものが用いられる。この電解液をゲル化する際に用いられるゲル化剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド誘導体、アミノ酸誘導体などが挙げられる。
【0059】
上記イオン性液体としては、特に限定されるものではないが、室温で液体であり、四級化された窒素原子を有する化合物をカチオンまたはアニオンとした常温溶融性塩が挙げられる。常温溶融性塩のカチオンとしては、四級化イミダゾリウム誘導体、四級化ピリジニウム誘導体、四級化アンモニウム誘導体などが挙げられる。常温溶融塩のアニオンとしては、BF
4−、PF
6−、F(HF)
n−、ビストリフルオロメチルスルホニルイミド[N(CF
3SO
2)
2−]、ヨウ化物イオンなどが挙げられる。イオン性液体の具体例としては、四級化イミダゾリウム系カチオンとヨウ化物イオンまたはビストリフルオロメチルスルホニルイミドイオンなどからなる塩類を挙げることができる。
【0060】
上記酸化物半導体粒子としては、物質の種類や粒子サイズなどは特に限定されないが、イオン性液体を主体とする電解液との混和性に優れ、この電解液をゲル化させるようなものが用いられる。また、酸化物半導体粒子は、電解質40の導電性を低下させることがなく、電解質40に含まれる他の共存成分に対する化学的安定性に優れることが必要である。特に、電解質40がヨウ素/ヨウ化物イオンや、臭素/臭化物イオンなどの酸化還元対を含む場合であっても、酸化物半導体粒子は、酸化反応による劣化を生じないものが好ましい。
【0061】
このような酸化物半導体粒子としては、TiO
2、SnO
2、WO
3、ZnO、Nb
2O
5、In
2O
3、ZrO
2、Ta
2O
5、La
2O
3、SrTiO
3、Y
2O
3、Ho
2O
3、Bi
2O
3、CeO
2、Al
2O
3からなる群から選択される1種または2種以上の混合物が好ましく、二酸化チタン微粒子(ナノ粒子)が特に好ましい。この二酸化チタンの平均粒径は2nm〜1000nm程度が好ましい。
【0062】
上記導電性粒子としては、導電体や半導体など、導電性を有する粒子が用いられる。この導電性粒子の比抵抗の範囲は、好ましくは1.0×10
−2Ω・cm以下であり、より好ましくは、1.0×10
−3Ω・cm以下である。また、導電性粒子の種類や粒子サイズなどは特に限定されないが、イオン性液体を主体とする電解液との混和性に優れ、この電解液をゲル化するようなものが用いられる。このような導電性粒子には、電解質40中において導電性が低下しにくく、電解質40に含まれる他の共存成分に対する化学的安定性に優れることが求められる。特に、電解質40がヨウ素/ヨウ化物イオンや、臭素/臭化物イオンなどの酸化還元対を含む場合でも、酸化反応などによる劣化を生じないものが好ましい。
【0063】
このような導電性粒子としては、カーボンを主体とする物質からなるものが挙げられ、具体例としては、カーボンナノチューブ、カーボンファイバ、カーボンブラックなどの粒子を例示できる。これらの物質の製造方法はいずれも公知であり、また、市販品を用いることもできる。
【0064】
(接続部材)
対極20における作用極10側とは反対側の表面、すなわち第1電極10の金属基板21の表面には、接続部材60が形成される。接続部材60は、2つの色素増感太陽電池50同士を接続するためのものである。接続部材60を構成する金属としては、対極20よりも低い抵抗を有する金属が用いられる。このような金属としては、銅、銀、ニッケルなどが挙げられるが、導電性及びはんだ濡れ性に優れることから、銅を用いることが好ましい。
【0065】
接続部材60は、対極20のうち電解質40に対向する部分に設けられていることが好ましい。この場合、接続部材60から電解質40までの間で、接続部材60よりも抵抗の大きい金属基板21を通る距離を短縮させることが可能となり、接続部材60と電解質40との間の抵抗を小さくすることが可能となる。
【0066】
(はんだ) はんだ70としては、例えば高融点はんだを用いることができる。高融点はんだは、融点が200℃以上(例えば210℃以上)であるものである。このような高融点はんだとしては、Sn−Cu系、Sn−Ag系、Sn−Ag−Cu系、Sn−Au系、Sn−Sb系、Sn−Pb系(Pb含有量は例えば85質量%超)などを挙げることができる。これらのうち1つを単独で使用してもよいし、2以上を併用してもよい。
【0067】
またはんだ70としては、高融点はんだより融点が低いはんだ(以下、低融点はんだということがある)を用いることも可能である。低融点はんだとしては、例えば融点が200℃未満であるものを用いるのが好適である。このようなはんだとしては、共晶タイプ(例えばSn−Pb等)や、鉛フリータイプ(例えばSn−Ag、Sn−Cu、Sn−Ag−Cu、Sn−Zn、Sn−Zn―B等)などが挙げられる。
【0068】
低融点はんだを使用することによって、導電線80と接続部材60とのはんだ付けの際に多孔質酸化物半導体層13に担持される光増感色素や、電解質40が高温になることが抑制でき、光増感色素や電解質40が劣化することが抑制できる。
【0069】
(導電線)
導電線80を構成する材料としては、例えば金、銀、銅、白金、アルミニウムなどの金属が挙げられる。
【0070】
次に、
図1に示す色素増感太陽電池モジュール100の製造方法について説明する。
【0071】
まず作用極10と対極20とを準備する(準備工程)。
【0072】
作用極10は、次の工程により得ることができる。最初に透明基板11の一方の面上に透明導電膜12を形成し、透明導電性基板15を得る。
【0073】
透明基板11上に透明導電膜12を形成する方法としては、例えば、スパッタリング法、CVD(化学気相成長)法、スプレー熱分解法(SPD法)、蒸着法などの薄膜形成法が挙げられる。なかでも、スプレー熱分解法が好ましい。透明導電膜12を、スプレー熱分解法により形成することで、容易にヘーズ率を制御することができる。また、スプレー熱分解法は、真空システムが不要なため、製造工程の簡素化低コスト化を図ることができるので好ましい。
【0074】
次に、対極20における透明導電膜12上に多孔質酸化物半導体層13を形成する(酸化物半導体層形成工程)。
【0075】
多孔質酸化物半導体層13を形成する方法としては、例えば、市販の酸化物半導体粒子を所望の分散媒に分散させた分散液、あるいは、ゾル−ゲル法により調製できるコロイド溶液を、必要に応じて所望の添加剤を添加した後、スクリーンプリント法、インクジェットプリント法、ロールコート法、ドクターブレード法、スプレー塗布法など公知の塗布方法により塗布した後、加熱処理などにて空隙を形成させ多孔質化する方法などを適用することができる。
【0076】
次に、作用極10上に形成される端子90は、例えば、銀ペーストを印刷等により塗布し、加熱・焼成させて形成される。
【0077】
次に、多孔質酸化物半導体層13に光増感色素を担持させる(色素担持工程)。
【0078】
多孔質酸化物半導体層13に光増感色素を担持させる方法としては、まず、色素担持用の色素溶液、例えば、アセトニトリルとt−ブタノールを容積比で1:1とした溶媒に対して極微量のN3色素粉末を加えて調整した溶液を予め準備しておく。
【0079】
次に、シャーレ状の容器内に入れた光増感色素を溶媒として含有する溶液中に、別途電気炉にて120〜150℃程度に加熱処理をし、多孔質酸化物半導体層13が形成された作用極10を浸した状態とし、暗所にて一昼夜(およそ20時間)浸漬する。その後、光増感色素を含有する溶液から多孔質酸化物半導体層13が形成された作用極10を取り出し、アセトニトリルとt−ブタノールからなる混合溶液を用い洗浄する。これによって、光増感色素を担持した多孔質酸化物半導体層13を有する作用極10を得る。
【0080】
一方、対極20を準備するには、まず、不動態を形成する金属基板21を準備する。そして、準備した金属基板21の表面上に白金などからなる触媒層22を形成する。触媒層22の形成は、スパッタリング法などにより形成する。これにより金属基板21と触媒層22とを有する対極20を得ることができる。
【0081】
次に、多孔質酸化物半導体層13の上に電解質40を塗布して電解質40を配置する(電解質配置工程)。
【0082】
次に、作用極10と対極20とを対向させて、封止部30により電解質40を封止する(封止工程)。
【0083】
このためにはまず、作用極10の上に、封止部30となるための樹脂またはその前駆体を形成する。このとき樹脂またはその前駆体は、作用極10の多孔質酸化物半導体層13を包囲する様に形成する。樹脂が熱可塑性樹脂である場合は、溶融させた樹脂を作用極10上に塗布した後に室温で自然冷却するか、フィルム状の樹脂を作用極10に接触させ、外部の熱源によって樹脂を加熱溶融させた後に室温で自然冷却することにより樹脂を得ることができる。熱可塑性の樹脂としては、例えばアイオノマーやエチレン−メタクリル酸共重合体が用いられる。樹脂が紫外線硬化樹脂である場合は、樹脂の前駆体である紫外線硬化性樹脂を作用極10上に塗布する。樹脂が水溶性樹脂である場合は、樹脂を含む水溶液を作用極10上に塗布する。水溶性の樹脂として、例えばビニルアルコール重合体が用いられる。
【0084】
次に、対極20の上に封止部30となるための樹脂またはその前駆体を形成する。対極20上の樹脂またはその前駆体は、作用極10と対極20とを対向させる際に、作用極10上の樹脂またはその前駆体と重なる位置に形成する。また、対極20上の樹脂またはその前駆体の形成は、作用極10の上に形成される樹脂またはその前駆体と同様にして行えば良い。
【0085】
次に、作用極10上の樹脂またはその前駆体で包囲された領域に電解質40を充填する。
【0086】
そして、作用極10と対極20とを対向させ、対極20上の樹脂と作用極11とを重ね合わせる。その後、減圧環境下において、樹脂が熱可塑性樹脂である場合は、樹脂を加熱溶融させ、作用極10と対極20とを接着させる。こうして封止部30が得られる。樹脂が紫外線硬化樹脂である場合は、対極20上の樹脂の紫外線硬化性樹脂と作用極10とを重ね合わせた後に紫外線により、紫外線硬化性樹脂を硬化させ、封止部30が得られる。樹脂が水溶性樹脂である場合は、積層体を形成した後に室温にて触指乾燥させた後、低湿環境下で乾燥させ、封止部30が得られる。
【0087】
次に、対極20における金属基板21のうち作用極10とは反対側の表面上に、金属基板21よりも低い抵抗を有する接続部材60を固定する(接続部材固定工程)。
【0088】
金属基板21に対する接続部材60の固定は以下のようにして行う。まず、対極20における作用極10とは反対側の表面上に、接続部材60を配置する。
【0089】
次に、抵抗溶接により、金属基板21と接続部材60とを接合する。ここで、
図3に示すように、抵抗溶接は、2本の抵抗溶接用電極110A,110Bを接続部材60及び金属基板21に押し当てるか、接続部材60及び金属基板21のいずれか一方に押し当て、両者間に電流を流すことにより、接続部材60と金属基板21との接触部分で熱を発生させ、この熱により接続部材60及び金属基板21の両方を溶融させて両者を接続させる方法である。このとき、熱は金属基板21と接続部材60の接触部分のみにしか発生しない。また、抵抗溶接においては、電流を流す時間は短時間(数ミリ秒)であるため、熱が発生する時間も短い。このため、熱が加えられる場所を局所領域に抑えることができる。従って、封止工程の後、対極20の金属基板21上に接続部材60を形成する場合でも、酸化物半導体層13に担持された光増感色素の劣化を十分に抑制することができる。
【0090】
またこのとき、金属基板21は不動態を形成しているため、金属基板21より低い抵抗を有する接続部材60を使用すると、抵抗溶接に際して、金属基板21と接続部材60との間での接触抵抗が大きくなる。このため、金属基板21と接続部材60とが互いに接触する部分が熱により溶融しやすくなる。そして、2本の電極110A,110Bの間に印加する電圧をオフにすると、溶融した部分が凝固して合金部65を形成する。従って、金属基板21と接続部材60との接合強度を十分に向上させることができる。このため、得られた複数の色素増感太陽電池50を直列に接続させて色素増感太陽電池モジュール100を製造する場合に、優れた接続信頼性を有する色素増感太陽電池モジュール100を得ることができる。また対極20の金属基板21と接続部材60との間に合金部65が設けられることで、対極20と接続部材60との間の接触抵抗も低下させることができる。また接続部材60を抵抗溶接により金属基板21に接合することで、熱が加えられる場所を局所領域に抑えることができるため、接続部材60を封止部30の内側領域に固定することも可能である。この場合、接続部材60から電解質40までの間で、接続部材60よりも抵抗の大きい金属基板21を通る距離を短縮させることが可能となり、接続部材60と電解質40との間の抵抗を小さくすることが可能となる。
【0091】
また
図3に示すように、接続部材60を対極20の金属基板21に固定する際には、抵抗溶接を、金属基板21のうち作用極10とは反対側の表面に接続部材60を接触させた状態で、2つの抵抗溶接用の電極110A,110Bをそれぞれ、接続部材60、及び、金属基板21の表面に当接させることによって行うことが好ましい。
【0092】
この場合、対極20と接続部材60とを抵抗溶接により接続する際に、2つの抵抗溶接用電極110A,100Bを対極20の金属基板21のうち作用極10側の表面に押し当てずに済む。このため、金属基板21のうち作用極10側の表面における変形を十分に防止することができる。また金属基板21のうち作用極10側の表面への抵抗溶接用電極110A,110Bの溶着を防止できるという利点もある。
【0093】
また抵抗溶接は3〜20m秒行うことが好ましく、5〜7m秒行うことがより好ましい。この場合、対極20と接続部材60との接続強度をより十分に向上させることができると共に、合金部65の厚さが適度になり、接続部材60と金属基板21との間の抵抗をより十分に低くすることができる。
【0094】
対極20の厚さは特に制限されるものではないが、9〜200μmであることが好ましく、20〜100μmであることがより好ましい。対極20の厚さが9μm以上であると、9μm未満である場合に比べて強度が十分に向上し、抵抗溶接に際して変形しにくくなる。一方、対極20の厚さが、200μm以下であると、200μmを超える場合に比べて、より短時間で対極20と接続部材60とを接続できる。また対極20に可撓性を持たせることができる。
【0095】
接続部材60の厚さも特に制限されるものではないが、9〜200μmであることが好ましく、20〜100μmであることがより好ましい。
【0096】
この場合、接続部材60の厚さが9μm以上であると、9μm未満である場合に比べて強度が十分に向上し、抵抗溶接に際して変形しにくくなる。一方、接続部材60の厚さが、200μm以下であると、200μmを超える場合に比べてより短時間で対極20と接続部材60とを接続できる。また対極20のうち作用極10と反対側の表面の凹凸を少なくすることができ、平坦な面上に安定して設置できる。
【0097】
2つの抵抗溶接用電極110A,110B間に印加する電流は、接続部材60と金属基板21との組合せにも依存するため一概には言えないが、通常は0.5〜5kAであり、1〜3kAであることが好ましい。
【0098】
また電流の印加時間も一概には言えないが、通常は3〜20ミリ秒であり、5〜10ミリ秒であることが好ましい。
【0099】
さらに抵抗溶接用電極間の間隔も一概には言えないが、通常は、0.5〜20mmであり、1〜10mm秒であることが好ましい。
【0100】
次に、はんだ70を接続部材60に接触させ、溶融させた後に冷却する。こうしてはんだ70を接続部材60に接合させる。また端子90の上にもはんだ70を接触させ、溶融させた後に冷却する。こうしてはんだ70を端子90に接合させる。
【0101】
こうして、
図1に示す色素増感太陽電池50Aを得る。
【0102】
そして、同様にして、色素増感太陽電池50Bを作製する。
【0103】
次に、リード線等の導電線80を用意し、導電線80によって色素増感太陽電池50A,50Bを接続する。具体的には、導電線80の一端を、はんだ70を溶融させながら接触させ、接続部材60にはんだ70によって固定する。次に、導電線80の他端を、はんだ70を溶融させながら接触させ、端子90にはんだ70によって固定する。
【0104】
こうして色素増感太陽電池モジュール100が得られる。
【0105】
上記色素増感太陽電池モジュール100の製造方法によれば、色素増感太陽電池50が上述した製造方法で製造されることで、光増感色素の劣化が十分に抑制され且つ優れた接続信頼性を有する色素増感太陽電池50が得られる。このため、接続工程において、対極20の金属基板21と、隣の色素増感太陽電池50の作用極10の端子90とを接続すると、優れた光電変換特性及び接続信頼性を有する色素増感太陽電池モジュール100を得ることができる。
【0106】
<第2実施形態>
次に、本発明の色素増感太陽電池モジュールの第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0107】
図4は、本発明の色素増感太陽電池モジュールの第2実施形態を示す断面図である。本実施形態の色素増感太陽電池モジュール200は、対極、及び、色素増感太陽電池50A,50B間の接続状態の点で第1実施形態の色素増感太陽電池モジュール100と相違する。
【0108】
すなわち、
図4に示すように、本実施形態の色素増感太陽電池モジュール200において、色素増感太陽電池50
Bは、対極20の金属基板21のうち作用極10と反対側の表面に固定される接続部材260を更に有している。本実施形態では、接続部材260は、金属基板21の一部に直線状に設けられている。接続部材260は金属からなる。そして、この接続部材260の縁部260aが封止部30を越えて隣の色素増感太陽電池50
A側に張出して、端子90に直接接合されている
。
【0109】
この場合、はんだ等を用いて接続部材260と端子90とを接合する場合に比べて、隣り合う色素増感太陽電池50間を十分に小さい抵抗で接続することが可能になるため、電圧降下がほとんど起こらない。また端子90から流れ込む電子を、金属基板21より抵抗の低い接続部材260を通して電解質40に近づけることが可能となるため、接続部材260から電解質40までの抵抗を小さくすることも可能となる。
【0110】
このとき、対極20の金属基板21への接続部材260の固定は、抵抗溶接により行うことができる。具体的には、金属基板21のうち作用極10と反対側の表面に、2つの抵抗溶接用電極の両方を押し当て、2つの抵抗溶接用電極間に電圧を印加すればよい。
【0111】
このように対極220の金属基板21に接続部材260を形成する場合でも、第1実施形態と同様、多孔質酸化物半導体層13に担持された光増感色素の劣化を十分に抑制することができる。さらに得られる色素増感太陽電池モジュール200の接続信頼性を向上させることができる。
【0112】
また接続部材260の縁部260aと端子90との接続も、抵抗溶接により行うことが好ましい。
【0113】
この場合、隣り合う2つの色素増感太陽電池50A,50Bのうち一方の色素増感太陽電池50の対極20に設けた接続部材260の縁部260aと、他方の色素増感太陽電池50Bの透明導電性基板15に設けた端子90とを、はんだ等を用いることなく、簡便に接合させることができるとともに、接続強度を向上させることがき、接触抵抗も低下させることができる。また、抵抗溶接は、一方の色素増感太陽電池50Aの接続部材260と、他方の色素増感太陽電池50Bの透明導電性基板15の端子90とを接合する際、抵抗溶接用の電極を局所的に当てて行うため、熱が局所的にしか発生しない。このため、はんだ等を用いて接合を行う場合に比べて、酸化物半導体層13に担持された色素や封止部の劣化がより十分に抑制される。なお、接続部材260の縁部260aと端子90との抵抗溶接も、上記と同様、2つの抵抗溶接用電極を接続部材260の表面に押し当てて、2つの抵抗溶接用電極間に電圧を印加すればよい。
【0114】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記第1及び第2実施形態では、酸化物半導体層13は、透明導電膜12の上に設けられているが、金属基板21の上に設けられてもよい。この場合、酸化物半導体層13と金属基板21とで作用極が構成され、透明基板11と透明導電膜12とで対極が構成される。
【実施例】
【0115】
以下、本発明の内容を、実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0116】
(実施例1)
まず表面の寸法が50mm×50mmで厚さ4mmのガラスからなる透明基板の表面上に、FTOからなる厚さ1μmの透明導電膜を形成してなる透明導電性基板を用意した。そして、透明導電膜に対しエッチングによりパターニングを行った。
【0117】
次に、透明導電膜上に、酸化物半導体層形成用ペースト(Solaronix社製、Ti Nanoxide-T)を、スクリーン印刷機で塗布及び乾燥を3回繰り返した後、電気炉にて500℃で1時間焼結して多孔質酸化物半導体層を形成した。
【0118】
次に、厚膜用の市販の銀ペーストを用い、上記多孔質酸化物半導体層を包囲するように透明導電膜上に塗布した後、乾燥させた。この塗布及び乾燥をスクリーン印刷機にて3回繰り返して行った。その後、電気炉にて500℃で1時間焼結した。次に、さらに、電解質が接触する領域に、配線を保護するガラスペーストを塗布した後、乾燥させた。この塗布及び乾燥を3回繰り返し、電気炉にて1時間焼結させた。こうして作用極を得た。
【0119】
そして、上記のようにして得られた作用極を、1:1(体積比)で混合したアセトニトリル及びtert−ブタノールの混合溶媒を含み、ルテニウム色素(N719)の濃度を0.3mMとした色素溶液の中に浸漬させ、その色素を多孔質半導体層に吸着させた後に上記混合溶媒で余分な色素を洗い流し、乾燥させることで、光増感色素を多孔質半導体層に吸着させた。
【0120】
一方、対極は、以下のようにして準備した。
【0121】
即ちはじめに厚さ200μmのTi板を用意し、このTi板に、三次元RFスパッタ装置を用いてPtを蒸着させ、対極を得た。
【0122】
次に、作用極の上に、エチレン−メタクリル酸共重合体(商品名:ニュクレル、三井・デュポンポリケミカル社製)からなる四角環状の樹脂シート(幅2mm、厚さ50μm)を配置し、この樹脂シートを150℃で加熱溶融することにより作用極の上に固定した。
【0123】
次に、作用極上であって封止部の内側に、メトキシアセトニトリルを溶媒とする揮発性電解質を注入した。
【0124】
そして、対極を、触媒膜を作用極に向けた状態で封止部と重ね合わせ、対極及び作用極の周縁部を熱圧着した。こうして、色素増感太陽電池を得た。
【0125】
次に、対極のうち作用極と反対側の表面上に、厚さ100μmで、20mm×50mmの寸法を有する銅からなる接続部材を配し、接続部材と対極のチタン箔とを抵抗溶接により接合させた。抵抗溶接は、2つの電極をそれぞれチタン箔、接続部材のそれぞれに押し当て、抵抗溶接用電極の間に1.0kAの電流を10ミリ秒間印加した。このとき、2つの抵抗溶接用電極間の間隔は5mmとした。
【0126】
次に、Sn-Ag-Cu系からなるはんだを接続部材に接触させ、溶融させた後に冷却した。こうしてはんだを接続部材に接合させた。同様に、端子の上にもはんだを接触させ、溶融させた後に冷却した。こうしてはんだを端子に接合させた。
【0127】
こうして、色素増感太陽電池を得た。
【0128】
上記と同様にして、他の3個の色素増感太陽電池も作製した。
【0129】
次に、リード線を用意し、リード線によって色素増感太陽電池を接続した。具体的には、リード線の一端を、はんだを溶融させながら接触させ、接続部材にはんだによって固定した。次に、リード線の他端を、はんだを溶融させながら接触させ、端子にはんだによって固定した。こうして色素増感太陽電池モジュールを得た。
【0130】
(比較例1)
接続部材を超音波振動を加えながらチタン箔に接合させたこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池モジュールを作製した。
【0131】
さらに実施例1及び比較例1で得られた色素増感太陽電池モジュールについて、接続信頼性を調べた。接続信頼性は、JIS C8938 A-1に定義された温度サイクル試験を200サイクル行った。なお、溶接部の剥離の有無を評価項目とし、剥離の無い物を合格とした。
【0132】
また実施例1及び比較例1で得られた色素増感太陽電池モジュールについて、色素の劣化について調べた。色素の劣化は、肉眼により、色素の色が接合前と接合後で変わったか否かで判断し、明らかに変色している場合には、劣化ありと判定した。
【表1】
【0133】
表1に示すように、実施例1で得られた色素増感太陽電池モジュールは、比較例1の色素増感太陽電池モジュールに比べて、接続強度が大きく、温度サイクル試験後においても剥離がないことが分かった。なお、比較例1については、剥離に伴い、抵抗が増加していることが分かった。また実施例1では色素の劣化が見られなかったのに対し、比較例1では色素の劣化が見られた。