【実施例】
【0062】
以下、本発明を更に詳しく説明するため実施例を挙げる。しかし、本発明はこれら実施例等になんら限定されるものではない。
【0063】
細胞培養
癌細胞株、FaDu、D-563 (下咽頭癌)、HeLa (子宮頸癌)、MCF、T47D、及びSKBr3 (乳癌)はAmerican Type Culture Collectionから購入した。TIG-108ヒト正常線維芽細胞はJapanese Collection of Research Bioresourcesより購入した。これらの細胞株は、10%ウシ胎児血清を含むダルベッコ改変イーグル(DMEM)培地又はRPMI 1640培地中で培養した。全ての細胞培養培地には、ペニシリン(50 units/ml)及びストレプトマイシン(50 mg/ml)を添加した。これらの細胞株は、5%CO
2を含む加湿チャンバー内で37℃で培養した。
【0064】
WST-8アッセイ
FaDu、D-562、MCF7、T47D、及びTIG-108細胞は96ウェルプレートで培養し、細胞生存率アッセイはCell Counting Kit-8 (同仁堂)を使用して行った。使用説明書に従って、WST-8試薬液を各ウェルに添加し、マクロプレートを試薬と共に37℃で3時間インキュベートした後、450 nmの吸光度(OD450)をマイクロプレートリーダーにて測定した。
【0065】
タンパク質抽出及びウェスタンブロット分析
各細胞株が発現したタンパク質はイムノブロッティングによって分析した。細胞を氷冷した溶解バッファー(40 mM HEPES、120 mM NaCl、1 mMエチレンジアミン四酢酸、10 nMリン酸、10 mMグリセロリン酸、50 mN NaF、0.5 mM Na
3VO
4、1% トリトンX-100、プロテアーゼインヒビターを含有)中で破砕した。20分間氷上で保持し、細胞溶解を促進させ、10分間15,000 rpmで遠心分離した(4℃)。上清をSDSサンプルバッファーと共に煮沸した。SDS-PAGEによって分離されたタンパク質は、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)フィルターに転写した。5%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むTBS-T (10 mM Tris-HCl (pH 7.6)、150 mM塩化ナトリウム、0.1% Tween 20)でフィルターをブロッキングした後、フィルターを2% BSAを含むTBS-T中で一次抗体と共に1時間インキュベートした(4℃)。フィルターをTBS-T中で洗浄し、2% BSAを含むTBS-Tで1:10,000に希釈されたホースラディッシュペルオキシダーゼ結合抗マウスIgG (GE Healthcare, Amersham Place, UK)中で30分間インキュベートした。TBS-Tで数回洗浄後、製造会社により推奨された手順に従って、ECL system (GE Healthcare, Amersham Place, UK)を使用して免疫反応を検出した。
【0066】
組織サンプルと病理学的データ
1997年から2008年まで京都府立医科大学において、52の原発性下咽頭癌と59の原発性乳癌の標本がそれぞれ生検と外科的切除により得られた。下咽頭癌は全て扁平上皮細胞癌であった。症例群の中央値は65歳(45-81歳)で、5人の女性と47人の男性から病理サンプルを得た。4症例がステージI、4症例がステージII、4症例がステージIII、及び40症例がステージIVであった。乳癌はすべて浸潤性乳管癌であった。乳癌症例群の中央値は76歳(27-86歳)で、全ての病理サンプルは女性から得られた。9症例がステージI、38症例がステージII、23症例がステージIII、1症例がステージIVであった。データは、患者の書面によるインフォームドコンセントを使用し、研究所の倫理委員会による承認を受けた後、臨床的、病理学的記録を基に解析された。
【0067】
抗体及び試薬
抗WRN (4H12又は8H3)抗体、抗RECQL1 (Q1N3)抗体については既に報告されており(非特許文献6、13)、ジーンケア研究所が提供した。抗αチューブリン(DM 1A)、抗cleaved caspase 3 (Ab-4)、抗ホスホ-ヒストン H2A.X (γ-H2A.X) (20E3)、抗MPM-2 (FOXM1,0.T.181)、及び抗Ki67 (MM-1)の各抗体は、それぞれSIGMA、Oncogene Research Products (La Jolla, CA)、Cell signaling Technology (Beverly, MA)、Abcam (Cambridge, UK)、及びLeica Microsystemsから購入した。CDDPは日本化薬によって提供され、N,N-ジメチルホルムアミドで溶解され、精製水で1:200に希釈された。CDDPの終濃度は50μg/mlであった。Lipofectamine RNAi MAX Reagentは、Invitrogen (Carlsbad, CA)から購入した。アテロコラーゲン(AteloGene Local Use)は高研から購入した。
【0068】
免疫組織化学的染色
外科的標本は10%緩衝化ホルマリンに移し、一晩固定化した。固定化されたサンプルはパラフィンに包埋され、連続的に4μmの切片に薄切された。脱パラフィン後に、切片を10 mMクエン酸ナトリウムバッファー(pH 6.0)中、120℃1分間、オートクレーブし、その後0.3% H
2O
2中に浸した。WRN (1:500希釈)、RECQL1 (1:500希釈)又はγ-H2A.X (1:200希釈)に対する一次抗体と共に一晩4℃でインキュベートした。切片を1×PBSでリンスし、二次抗体(Simple Stain MAX-PO;ニチレイ)と共に室温一時間インキュベートした。切片は3.3'-ジアミノベンジジンテトラヒドロクロライドで発色させ、ヘマトキシリンで対比染色した。染色は、全ての症例で2人の観察者による独立観察に基づき評価された。
【0069】
small interfering RNAとWST-8アッセイ
GL3-siRNA、WRN-siRNA、及びRECQL1-siRNAはジーンケア研究所が提供した。ホタルルシフェラーゼ遺伝子配列GL3は非サイレンシングsiRNAであり、ネガティブコントロールとして使用した(非特許文献12)。siRNA配列を以下に示す。GL3, (センス) 5’-CUUACGCUGAGUACUUCGATT-3’(配列番号16), (アンチセンス) 5’-UCGAAGUACUCAGCGUAAGTT-3’(配列番号17); WRN, (センス) 5’-GUUCUUGUCACGUCCUCUGTT-3’(配列番号14), (アンチセンス) 5’-CAGAGGACGUGACAAGAACTT-3’(配列番号15); RECQL1, (センス) 5’-GUUCAGACCACUUCAGCUUTT-3’(配列番号12), (アンチセンス) 5’-AAGCUGAAGUGGUCUGAACTT-3’(配列番号13)。Lipofectamine RNAi MAX reagentを使用して各RNAiの40μMを細胞導入することによってRECQL1とWRNを標的とするサイレンシング効果を評価した。前述したように、細胞を氷冷溶解バッファー中で破砕し、タンパク質を抽出した。各siRNAのサイレンシング効果を確認するために、タンパク質の発現をウェスタンブロッティングにより評価した。各siRNAによる腫瘍細胞増生の抑制効果を評価する為に、WST-8アッセイを行った。
【0070】
ヒト下咽頭癌のマウス異種移植モデル
FaDu又はD-562ヒト下咽頭癌を背部皮下へ移植した8〜10週齢のBALB/C nu/nuヌードマウス(CLEA Japan, Inc.)を実験に使用した。実験プロトコルにおける動物の使用は、滋賀医科大学動物生命科学研究センターの委員会によって審理され、承認された。各マウスの右背部皮下に各癌種の5.0×10
6細胞を皮下注射移植した。触知できる腫瘍が確立した後(約≧100 mm
3)、マウスの体重と皮下の腫瘍体積を2日毎に測定した。腫瘍体積は式A
2×B/2(AとBはそれぞれ最小直径と最大直径を表す)を使用して計算した。
【0071】
WRN若しくはRECQL1を標的としたsiRNA、又は当該siRNAとCDDPの併用で処置されたヒト下咽頭癌マウス異種移植モデルにおける腫瘍増生のインビボ評価
48匹のFaDuヒト下咽頭癌細胞を有するマウスを各々6匹、8群にランダムに分けた。CDDP及び/又はsiRNAを0、7及び14日にマウスに投与した。4.0 mg/kg (1,600μl)の量のCDDP、又は同様の量のPBSを各マウスの腹腔に注射した。AteloGeneとsiRNAは製造会社が推奨する手順に従って混合し、腫瘍の周囲に投与(皮下注射)した。投与されたsiRNA量は1.0 mg/kg/dayであった。8つの実験群は次の通りである。PBS + no siRNA (PBS+NC); PBS + GL3-siRNA (PBS+GL3); PBS + RECQL1-siRNA (PBS+RECQL1); PBS + WRN-siRNA (PBS+WRN); CDDP + no siRNA (CDDP+NC); CDDP + GL3-siRNA (CDDP+GL3); CDDP + RECQL1-siRNA (CDDP+RECQL1); and CDDP + WRN-siRNA (CDDP+WRN)。腫瘍の切片は治療18日目に切除し、パラフィン切片を前述の如く調製した。切片は免疫組織化学的に評価された。一次抗体は、Ki67(1:50希釈)、cleaved caspase 3 (1:1000希釈)、MPM-2 (1:500希釈)、及びγ-H2A.X (1:200希釈)に対するものを用いた。≧1,000の腫瘍細胞当たりの陽性染色された腫瘍細胞のパーセンテージを各抗体について計数、評価した。各siRNAの抗腫瘍効果はD-562ヒト下咽頭癌マウス異種移植モデルにおいても評価された。24匹のマウスを6匹のマウス毎に4つの群にランダムに分けた。4つの処置群は次の通りである:PBS+NC; PBS+GL3; PBS+RECQL1;PBS+WRN。
【0072】
TUNEL(TdT-mediated dUTP nick end-labeling)アッセイ
製造会社のプロトコルに従って、切除した腫瘍サンプルのアポトーシス細胞をIn situ Apoptosis Detection Kit (TaKaRa)を用いたTUNELアッセイによって検出した。プロテナーゼK、5分間20 mg/mlの濃度で薄切腫瘍切片を処理した。検出は3.3'-ジアミノベンジジンテトラヒドロクロライド(DAB)を使用して行い、メチルグリーンで対比染色した。アポトーシス係数(AI)は、高倍率視野当たりの陽性染色された腫瘍細胞のパーセンテージを≧1,000の腫瘍細胞当たりで評価した。
【0073】
統計分析
全てのデータはStat View 5.0 for Windows (登録商標)(Stat View Inc., NC)を使用して統計学的に分析した。WST-8アッセイのOD450、異種移植腫瘍体積、及び免疫組織化学的染色又はTUNELアッセイ陽性の細胞のパーセンテージ、これらはone-way factorial analysis of variance (ANOVA)及びフィッシャーの有意性検定を使って多重比較検定を行い、治療群間の差を統計学的に分析した。統計学的有意性は、P-value < 0.05として定義した。
【0074】
試験例1
下咽頭癌細胞株FaDu及びD-562は、乳癌細胞株MCF7及びT47D、更にヒト正常線維芽細胞TIB-108より急速な増殖を示した(
図1A)。WRN及びRECQL1タンパク質の発現レベルは、HeLaと比べて、FaDuとD-562で非常に高かった。一方で、MCF7、T47D、及びSKBr3における両タンパク質の発現レベルは、HeLaより低かった。HeLaはブロッティングのコントロールとして使用した(
図1B)。FaDu、D-562、T47D及びSKBr3においては変異型p53タンパク質の蓄積が見られた(データは示していない)。HeLaは通常の細胞株と比較してRECQL1を高レベルで発現している(非特許文献5)。それ故、下咽頭癌細胞は特に多量のRECQL1とWRNを発現していると考えられた。乳癌細胞は通常の細胞と同程度のレベルでそれらを発現していた。
【0075】
加えて、臨床標本でのWRNとRECQL1タンパク質の発現を確認した。両方のタンパク質は間質性線維芽細胞と比べて下咽頭癌細胞で特に強く染色された。一方、乳癌細胞では通常の間質性線維芽細胞と同程度、若しくは若干少ないレベルの染色性を示した(
図1C)。WRN陽性細胞の平均値は、下咽頭癌と乳癌でそれぞれ92.7%と59.8%であり、WRN陽性細胞率において、下咽頭癌は統計学的有意差を持って乳癌より高い発現レベルであると証明された(マン・ホイットニーのU検定、P < 0.0001)。一方で、RECQL1陽性細胞率は下咽頭癌、乳癌、両者の間で有意差は無かった:下咽頭癌と乳癌でそれぞれ87.7%と78.9%であり、ともに高いレベルを示した(マン・ホイットニーのU検定、P = 0.31)(
図1D)。
【0076】
下咽頭癌、乳癌に於ける両者の比較研究は、同等のTNMステージ間の比較によっても確認された(
図2A, B)。WRN陽性細胞は乳癌より下咽頭癌において有意に高いパーセンテージを示した(マン・ホイットニーのU検定;*、ステージI-II、P = 0.0033、;*、ステージIII-IV、P = 0.0045)。RECQL1陽性細胞率は乳癌と下咽頭癌間で差がなく、両癌ともに高いレベルにあった(マン・ホイットニーのU検定;ステージI-II、P = 0.0945、;ステージIII-IV、P = 0.2645)。下咽頭癌においては、WRN及びRECQL1タンパク質の両方が高く発現しており、WRNはRECQL1より特に有意に高い発現レベルを示した(ウィルコクソンの符号順位検定、P = 0.0009;
図2C)。乳癌では、RECQL1陽性細胞はWRN陽性細胞より有意に多かったが、各症例によりケースバイケースのばらつきが見られた (ウィルコクソンの符号順位検定、P = 0.0075;
図2D)。
【0077】
試験例2
試験例1で見られたように、RECQL1とWRNの両方の発現レベルは下咽頭癌細胞で非常に高く、これらタンパク質は癌細胞増殖に特に重要な役割を演じていると示唆された。そこで、インビトロでの下咽頭癌細胞増殖をRECQL1-siRNA、WRN-siRNA処置下で評価し、乳癌細胞と比較した。RECQL1とWRNサイレンシングはFaDuとD562で有意な増殖阻害をもたらした(One-way factorial ANOVA及びフィッシャーの優位性検定による多重比較検定、P < 0.05)。一方で、RECQL1又はWRNサイレンシングはMCF7及びT47Dの増殖を充分には阻害できなかった(
図3)。これらの結果は下咽頭癌ではRECQL1及びWRNタンパク質が癌細胞増殖において特に重要な役割を演じており、それ故、抗癌治療の理想的な標的分子となると考えられる。
【0078】
試験例3
RECQL1又はWRNをターゲットとしたsiRNAの抗腫瘍効果をFaDu下咽頭癌を有するヌードマウス実験系で評価した(
図4A)。RECQL1又はWRNを標的としたsiRNAでの処置(1 mg/kg、週一回;PBS+RECQL1又はPBS+WRN)は、コントロールの処置(PBS+NC又はPBS+GL3)と比較して7〜11日の期間、有意な腫瘍増生抑制効果を示した(One-way factorial ANOVA及びフィッシャーの優位性検定による多重比較検定、P < 0.05:
図4B)。更に、D-562下咽頭癌細胞を有するヌードマウス実験系でも、各siRNAの抗腫瘍効果が同様に確認された(
図5)。
【0079】
試験例4
腫瘍細胞死、腫瘍増生抑制効果を最大化することを目的として、RECQL1又はWRNを標的としたsiRNAとCDDPとの併用療法がsiRNA単独投与による抗腫瘍効果を増強するか否かをFaDuヒト下咽頭癌移植ヌードマウス実験系で評価した。本併用療法は、腫瘍増生を抑制することに特に強い効果を示した(
図4C)。コントロールの処置(PBS+NC及びPBS+GL3)やCDDPでの単剤治療(CDDP+NC及びCDDP+GL3)に比べ、統計学的な有意差を持って強い腫瘍増生抑制効果を示した。CDDPとRECQL1-siRNAとの併用療法は各単剤治療に比べ、強い抑制効果を示した。CDDPとWRN-siRNAとの併用療法は腫瘍抑制に最大の効果を示した(One-way factorial ANOVA及びフィッシャーの優位性検定を用いた多重比較検定、P < 0.05:
図4C)。CDDP+WRN治療群の6匹のマウスの内、2匹において腫瘍は完全に消失し、実験期間中を通して再発を起こさなかった。いずれの群も体重減少を代表とする副作用の所見はなかった。
【0080】
試験例5
インビボでの増殖、及び分裂期細胞死とアポトーシスによる細胞死を、各治療を行ったFaDuヒト下咽頭癌異種移植細胞において種々の免疫組織化学的染色とTUNELアッセイによって評価した。
【0081】
治療群すべてのKi67標識細胞率は71-79%であり、各治療群間で有意差を示さなかった(
図6A)。本研究の治療処置の何れも増殖においては有意な効果を示さなかった。
【0082】
TUNELはアポトーシス細胞死の評価のために行った。コントロール群(PBS+NCとPBS+GL3)及びCDDPの単剤治療群(CDDP+NCとCDDP+GL3)では、アポトーシス係数は1.0%未満であった。RECQL1-siRNA、又はWRN-siRNAの投与はそれぞれ1.56%、6.23%の細胞にアポトーシスを誘導した。RECQL1又はWRNを標的にしたsiRNAとCDDPの併用はそれぞれ5.38%と5.00%の細胞にアポトーシスを誘導した。それ故、RECQL1-siRNAとCDDPを併用すること(CDDP+RECQL1)は単剤治療のRECQL1-siRNA(PBS+RECQL1)と比べてアポトーシス細胞死を強く誘導すると考えられた(
図7A)。
【0083】
更に、カスパーゼ〜アポトーシス経路の活性を評価するためにcleaved caspase 3染色を行った。TUNELアッセイによる評価で得られたアポトーシス活性変化と同様の変化データを確認できた(
図6B)。
【0084】
分裂期細胞死が起こっているか否かの評価を行うために、MPM-2免疫組織化学染色を行った(
図7B)。RECQL1-siRNAやWRN-siRNAの投与は、MPM-2陽性細胞の割合を通常時の5%から15-20%まで増加させた。CDDPはMPM-2陽性細胞の著しい増加を誘導し、CDDP投与治療群の全てが60-70%の標識細胞率を示した。特に、CDDPとRECQL1-siRNAとの併用治療(CDDP+RECQL1)はMPM-2陽性細胞の割合を強く増加させ、82%の標識細胞率を示した。
【0085】
更に、CDDPとRECQファミリー遺伝子を標的としたsiRNAの併用療法が腫瘍細胞のDNA損傷を強く誘導することに関係すると報告されているので、抗γ-H2A.X抗体による免疫組織化学染色を行い、各治療群における腫瘍細胞のDNA損傷の程度を評価した(
図7C)。γ-H2A.X陽性細胞のパーセンテージは、コントロール群(PBS+NCとPBS+GL3)で最小であったが(≦3%)、siRNAやCDDP治療群の全てにおいて5%より高いパーセンテージに上昇した。CDDP+RECQL1-siRNA併用治療群では最大16%まで達していた。CDDP+RECQL1-siRNA併用治療群と他の治療群間で有意な差を示した(One-way factorial ANOVA及びフィッシャーの優位性検定を用いた多重比較検定、P < 0.05)。
【0086】
(考察)
上記の試験例の結果から頭頸部癌では、RECQL1とWRNタンパク質が特に高いレベルで発現していることを確認できた。また、siRNAを使用したRECQL1とWRNサイレンシングによって、インビトロで頭頸部癌細胞の増殖を有意に阻害でき、更にインビボでも有意に腫瘍増殖を抑制できることを確認できた。RECQL1とWRNを標的としたsiRNAとCDDPの併用療法によりCDDPの単剤治療と比較して有意な腫瘍抑制効果があったことも判明した。
【0087】
上記のように本発明の抗癌剤及び増強剤は、頭頸部癌に対して優れた抗腫瘍効果を有している。このようにRECQL1とWRN遺伝子の発現を抑制することが頭頸部癌に対して有効であることは、本発明により初めて分かったことであり、これまでには予想できなかったことである。本発明により、これまで治療が困難であった頭頸部癌に対して、特に有効な治療法を提供することができ、治療成績を大きく改善し得ると期待される。