(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の収容室のうち任意の一の収容室内の液量が所定量変化したときの前記合成圧力の変化量と、任意の他の収容室内の液量が前記所定量変化したときの前記合成圧力の変化量と、が等しくなるように、前記複数の液相ダイヤフラム部のそれぞれが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の差圧測定ユニット。
前記気相部の圧力が所定量変化したときの前記第1圧力の変化量と、前記気相部の圧力が前記所定量変化したときの前記合成圧力の変化量と、が等しくなるように、前記気相ダイヤフラム部及び前記複数の液相ダイヤフラム部のそれぞれが形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の差圧測定ユニット。
前記気相ダイヤフラム部のダイヤフラムの厚みと前記複数の液相ダイヤフラム部のそれぞれのダイヤフラムの厚みとが同一で、且つ、前記気相ダイヤフラム部のダイヤフラムの面積と、前記複数の液相ダイヤフラム部のそれぞれのダイヤフラムの合計面積とが、等しくなるように、前記気相ダイヤフラム部及び前記複数の液相ダイヤフラム部が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の差圧測定ユニット。
請求項1〜5のいずれか一項に記載の差圧測定ユニットと、前記差圧測定ユニットの出力する差圧信号に基づいて液体タンク内の液量を推定する液量推定手段と、を有する液量推定装置と、
前記液量推定装置が設けられ、互いに気相部が連通された複数の収容室に区画された液体タンクと、を有することを特徴とする液量推定システム。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載される液量推定装置としての燃料残量検出装置は、液体タンクとしての燃料タンク内の燃料の液位(即ち、液面高さ)を検出する液位検出手段を有する。この液位検出手段として、例えば、特許文献1に開示されている圧力式液位計測装置が用いられていた。
【0003】
図3に示すように、特許文献1に示された圧力式液位計測装置801は、可動隔壁812で仕切られた可動容積室X、Yを内部に有する背圧箱810と、タンク底の液相部に設けられた差圧センサAと、タンク内上部空間の気相部に設けられた差圧センサBと、を有している。
【0004】
差圧センサAは、一方の受圧部にタンク底の液相圧力P1が導かれ、他方の受圧部である背圧部に導圧管823が接続されている。差圧センサBは、一方の受圧部にタンク内の気相圧力P2が導かれ、他方の受圧部である背圧部に導圧管824が接続されている。導圧管823と導圧管824とは連通されて、背圧箱810の可動容積室Xに接続されている。また、タンクの気相部は導圧管825により可動容積室Yに接続されている。
【0005】
液相部の液量に応じた液圧Pは、液相圧力P1から気相圧力P2を差し引くことにより得られる。そして、差圧センサAは、液相圧力P1と可動容積室Xの圧力P3との差圧を測定し、差圧センサBは、気相圧力P2と可動容積室Xの圧力P3との差圧を測定して、差圧センサAにより測定された差圧から差圧センサBにより測定された差圧を差し引くことにより上記圧力P3が相殺されて、液圧Pを得ることができた。そして、図示しない制御部がこの液圧Pに基づいてタンク内の液位を検出していた。
【0006】
しかしながら、上述した圧力式液位計測装置801は、可動隔壁812で内部が仕切られた背圧箱810や複数の差圧センサA、Bを備えるなど構造が複雑で製造コストが高いという問題があった。そして、このような問題を解決するものとして、次に示す液量推定装置がある。
【0007】
図4に示すように、液量推定装置920は、差圧センサ930、気相ダイヤフラム部940及び液相ダイヤフラム部950で構成された差圧測定ユニット925と、図示しない制御部と、を有している。
【0008】
差圧センサ930は、箱形のセンサケース931と、センサケース931の内部を第1受圧室931aと第2受圧室931bとに仕切る差圧検知ダイヤフラム932と、差圧検知ダイヤフラム932の第1受圧室931a側の面932aが受けた圧力と第2受圧室931b側の面932bが受けた圧力との差に応じた差圧信号を制御部に出力する図示しない差圧信号出力部と、を有している。
【0009】
気相ダイヤフラム部940は、開口941aが設けられたケース941と、開口941aを塞ぐように設けられた薄膜状のダイヤフラム942と、を有している。ケース941は、導圧管945を介して上記第1受圧室931aと接続されている。ケース941、導圧管945及び第1受圧室931aには、シリコンオイルなどの圧力伝達溶液が封入されている。気相ダイヤフラム部940は、液体タンク910の上壁910a内面にダイヤフラム942を底壁910b側に向けて配設されている。ダイヤフラム942が圧力を受けると、当該圧力に応じた第1圧力P1が圧力伝達溶液を介して第1受圧室931aに伝達される。
【0010】
液相ダイヤフラム部950は、上記気相ダイヤフラム部940と同一に構成されており、ケース951とダイヤフラム952とを有している。ダイヤフラム952の面積は、上記ダイヤフラム942と同一面積に形成されている。ケース951は、導圧管955を介して上記第2受圧室931bと接続されている。ケース951、導圧管955、及び、第2受圧室931bには、シリコンオイルなどの圧力伝達溶液が封入されている。液相ダイヤフラム部950は、液体タンク910の底壁910b内面にダイヤフラム952を上壁910a側に向けて配設されている。ダイヤフラム952が圧力を受けると、当該圧力に応じた第2圧力P2が圧力伝達溶液を介して第2受圧室931bに伝達される。
【0011】
気相ダイヤフラム部940は、液体タンク910の上壁910aに配設されているので、ダイヤフラム942が気相部TAの圧力Paを受けて、この圧力Pa及びダイヤフラム942の面積に応じた第1圧力P1が第1受圧室931aに伝達される。液相ダイヤフラム部950は、液体タンク910の底壁910bに配設されているので、ダイヤフラム952が気相部TAの圧力Paと液体タンク910に収容された液体の液圧Pbとの合計圧力Pcを受けて、この合計圧力Pc及びダイヤフラム952の面積に応じた第2圧力P2が第2受圧室931bに伝達される。
【0012】
液体タンク910内に収容された液体の高さ(深さ)が高いほど、つまり、液量が多いほど上記液圧Pbは高くなり、つまり、液圧Pbは液量に応じた圧力となる。そして、第2圧力P2には、気相部TAの圧力Pa及びダイヤフラム952の面積に応じた気相圧力成分P2aと、液圧Pb及びダイヤフラム952の面積に応じた液圧成分P2bと、が含まれているので、第1圧力P1と第2圧力P2との差を求めると、第1圧力P1と第2圧力P2に含まれる上記気相圧力成分P2aとが相殺されて、液圧成分P2bが差圧信号として出力される。そして、図示しない制御部によって、この差圧信号に基づいて液体タンク910内の液量を推定していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、例えば、液体タンクに収容される液体が液化石油ガス(LPG)などの高圧の液化ガスの場合に当該液体タンクの耐圧を向上させるために、または、車両内スペースの効率化が求められる車両などにおいて隙間を利用して液体タンク(燃料タンク)を搭載するために、
図5に示すように液体タンク910内を複数の収容室911(1)〜(3)に区画する場合があるところ、このような場合には、収容室毎に上記差圧測定ユニット925(1)〜(3)を設けて収容室毎に液位(液量)を推定する必要があるので、液量推定装置920には、収容室の数だけ複数の差圧測定ユニット925が必要となり、製造コストが増加してしまうという問題があった。
【0015】
本発明は、上記課題に係る問題を解決することを目的としている。即ち、本発明は、複数の収容室に区画された液体タンク内の液量の推定が当該収容室数より少数のユニットで可能となる差圧測定ユニット、及び、この差圧測定ユニットを有する液量推定システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1に記載された発明は、上記目的を達成するために、互いに気相部が連通された複数の収容室に区画された液体タンク内の液量の推定に用いられる差圧測定ユニットであって、第1受圧部、第2受圧部、及び、前記第1受圧部が受けた圧力と前記第2受圧部が受けた圧力との差に応じた差圧信号を出力する差圧信号出力部、を有する差圧センサと、前記気相部に設けられ、前記気相部の圧力に応じた第1圧力を出力するとともに前記第1圧力が伝達されるように前記第1受圧部に接続された気相ダイヤフラム部と、前記複数の収容室のそれぞれの底壁又はその近傍に設けられ、前記底壁に加わる圧力に応じた第2圧力をそれぞれ出力するとともに複数の前記第2圧力の合成圧力が伝達されるように前記第2受圧部にそれぞれ接続された複数の液相ダイヤフラム部と、を有していることを特徴とする差圧測定ユニットである。
【0017】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記複数の収容室のうち任意の一の収容室内の液量が所定量変化したときの前記合成圧力の変化量と、任意の他の収容室内の液量が前記所定量変化したときの前記合成圧力の変化量と、が等しくなるように、前記複数の液相ダイヤフラム部のそれぞれが形成されていることを特徴とするものである。
【0018】
請求項3に記載された発明は、請求項2に記載された発明において、前記液体タンクの複数の収容室のそれぞれが、縦筒状に形成され、前記複数の液相ダイヤフラム部のそれぞれのダイヤフラムの厚みが同一で且つ面積比がそれらが設けられた前記収容室の底壁の面積比と等しくなるように形成されていることを特徴とするものである。
【0019】
請求項4に記載された発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載された発明において、前記気相部の圧力が所定量変化したときの前記第1圧力の変化量と、前記気相部の圧力が前記所定量変化したときの前記合成圧力の変化量と、が等しくなるように、前記気相ダイヤフラム部及び前記複数の液相ダイヤフラム部のそれぞれが形成されていることを特徴とするものである。
【0020】
請求項5に記載された発明は、請求項4に記載された発明において、前記気相ダイヤフラム部のダイヤフラムの厚みと前記複数の液相ダイヤフラム部のそれぞれのダイヤフラムの厚みとが同一で、且つ、前記気相ダイヤフラム部のダイヤフラムの面積と、前記複数の液相ダイヤフラム部のそれぞれのダイヤフラムの合計面積とが、等しくなるように、前記気相ダイヤフラム部及び前記複数の液相ダイヤフラム部が形成されていることを特徴とするものである。
【0021】
請求項6に記載された発明は、上記目的を達成するために、請求項1〜5のいずれか一項に記載の差圧測定ユニットと、前記差圧測定ユニットの出力する差圧信号に基づいて液体タンク内の液量を推定する液量推定手段と、を有する液量推定装置と、前記液量推定装置が設けられ、互いに気相部が連通された複数の収容室に区画された液体タンクと、を有することを特徴とする液量推定システムである。
【0022】
請求項1、6に記載された発明によれば、気相部の圧力に応じた第1圧力を出力する気相ダイヤフラム部と、液体タンク内の複数の収容室のそれぞれの底壁に加わる圧力に応じた第2圧力をそれぞれ出力する複数の液相ダイヤフラム部と、これら気相ダイヤフラム部及び液相ダイヤフラム部が接続された差圧センサと、を有している。気相ダイヤフラム部が出力した第1圧力は、差圧センサの第1受圧部に伝達され、複数の液相ダイヤフラム部のそれぞれが出力した複数の第2圧力は、互いに合成されて合成圧力となり差圧センサの第2受圧部に伝達される。この合成圧力には、気相部の圧力に応じた気相圧力成分と、各収容室に収容された液体の液量の合計値(即ち、液体タンク内の液体全体)の液圧に応じた液圧成分と、が含まれている。そのため、差圧センサによって出力される第1圧力と合成圧力との差に応じた差圧信号から、液体タンク内の液体全体の液圧を得ることができる。そして、この液圧は、液体タンク内の液体全体の液量と関係を有し、この液圧に基づいて液体タンク内の液量を推定することができる。
【0023】
請求項2に記載された発明によれば、複数の収容室のうち任意の一の収容室内の液量が所定量変化したときの合成圧力の変化量と、任意の他の収容室内の液量が前記所定量変化したときの合成圧力の変化量と、が等しくなるように、複数の液相ダイヤフラム部のそれぞれが形成されているので、いずれの収容室内の液量が変化しようとも液量の変化量が同じであれば合成圧力(即ち、上記液圧成分)の変化量も同一となり、そのため、液体タンク内の液量の変化に応じて合成圧力が変化する。
【0024】
請求項3に記載された発明によれば、液体タンクの複数の収容室のそれぞれが、縦筒状に形成され、複数の液相ダイヤフラム部のそれぞれのダイヤフラムの厚みが同一で且つ面積比が、それらが設けられた収容室の底壁の面積比と等しくなるように形成されているので、複数の収容室のうち任意の一の収容室内の液量が所定量変化したときの合成圧力の変化量と、任意の他の収容室内の液量が前記所定量変化したときの合成圧力の変化量と、が等しくなる複数の液相ダイヤフラム部を、ダイヤフラムの面積を調整することにより容易に形成できる。
【0025】
請求項4に記載された発明によれば、気相部の圧力が所定量変化したときの第1圧力の変化量と、気相部の圧力が前記所定量変化したときの合成圧力の変化量と、が等しくなるように、気相ダイヤフラム部及び複数の液相ダイヤフラム部のそれぞれが形成されているので、気相部の圧力変化に応じて、第1圧力と合成圧力(即ち、上記気相圧力成分)とが等しく変化する。
【0026】
請求項5に記載された発明によれば、気相ダイヤフラム部のダイヤフラムの厚みと複数の液相ダイヤフラム部のそれぞれのダイヤフラムの厚みとが同一で、且つ、気相ダイヤフラム部のダイヤフラムの面積と、複数の液相ダイヤフラム部のそれぞれのダイヤフラムの合計面積とが、等しくなるように、気相ダイヤフラム部及び複数の液相ダイヤフラム部が形成されているので、気相部の圧力が所定量変化したときの第1圧力の変化量と、気相部の圧力が前記所定量変化したときの合成圧力の変化量と、が等しくなる気相ダイヤフラム部及び複数の液相ダイヤフラム部のそれぞれを、ダイヤフラムの面積を調整することにより容易に形成できる。
【発明の効果】
【0027】
以上より、請求項1、6に記載された発明によれば、差圧センサによって出力される、気相ダイヤフラム部からの第1圧力と複数の液相ダイヤフラム部からの合成圧力との差圧に応じた差圧信号から、液体タンク内の液体全体の液圧を得ることができるので、複数の収容室に区画された液体タンクの液量の推定において、収容室と同一数の複数の差圧測定ユニットを設けることなく1ユニットのみ又は収容室数より少数のユニットを用いて液体タンク内の液体全体の液圧を得ることができ、そのため、この液圧に基づいて安価に当該液体タンクの液量の推定ができる。
【0028】
請求項2に記載された発明によれば、液体タンクのいずれの収容室内の液量が変化しようとも液量の変化量が同じであれば合成圧力(即ち、上記液圧成分)の変化量も同一となり、液体タンク内の液量の変化に応じて合成圧力が変化するので、差圧センサが出力する差圧信号から得られる液体タンク内の液体全体の液圧も、液体タンク内の液量に応じて変化し、そのため、この液圧に基づいて容易且つ正確に当該液体タンクの液量の推定ができる。
【0029】
請求項3に記載された発明によれば、複数の収容室のうち任意の一の収容室内の液量が所定量変化したときの合成圧力の変化量と、任意の他の収容室内の液量が前記所定量変化したときの合成圧力の変化量と、が等しくなる複数の液相ダイヤフラム部を、ダイヤフラムの面積を調整することにより容易に形成できるので、製造コストを低減できる。
【0030】
請求項4に記載された発明によれば、気相部の圧力変化に応じて、第1圧力と合成圧力(即ち、気相圧力成分)とが等しく変化するので、差圧センサによって出力される第1圧力と合成圧力との差圧信号において、気相部の圧力の変化による第1圧力の変化分と合成圧力に含まれる気相圧力成分の変化分とが相殺され、そのため、液体タンクの周囲温度の変化などに起因する気相部の圧力変化が、差圧センサの出力に影響を及ぼすことを防止でき、測定精度を向上させることができる。
【0031】
請求項5に記載された発明によれば、気相部の圧力が所定量変化したときの第1圧力の変化量と、気相部の圧力が前記所定量変化したときの合成圧力の変化量と、が等しくなる気相ダイヤフラム部及び複数の液相ダイヤフラム部のそれぞれを、容易に形成できるので、製造コストを低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の液量推定システムの一実施形態である車両燃料システムを、
図1〜
図2を参照して説明する。
【0034】
以下に説明する車両燃料システムは、車両に搭載されて、液化石油ガス(LPG)を当該車両の燃料Fとして収容する、互いに気相部が連通された複数の収容室に区画された燃料タンクを備えるとともに、当該燃料タンク内の燃料Fの液量を推定するシステムである。この車両燃料システムでは、燃料タンクの気相部の圧力と複数の収容室の液相部の圧力とに基づいて、燃料Fの液量を推定する。
【0035】
LPGなどの液化ガスを燃料Fとして収容した燃料タンク内では、燃料タンク内が高圧(0.1MPa〜3MPa程度)になるのでこのような高圧に耐えるために、また、車両の傾きなどによって燃料Fが偏らないようにするために、燃料タンク内を、複数の収容室に区画して構成することがある。そして、上述した従来の液量推定装置では、このような複数の収容室に区画された燃料タンク内の液量の推定のために上述した従来の差圧測定ユニットが複数個必要となる。差圧測定ユニットに用いられる差圧センサは高価であり、差圧測定ユニットの数が増えるとその分コストが高くなり、従来の液量測定装置及び差圧測定ユニットは、上記燃料タンクの液量の推定に用いるには不適当であった。そして、以下に説明する車両燃料システム、液量推定装置及び差圧センサユニットは、複数の収容室に区画された燃料タンク内の液量の推定に適したものである。
【0036】
車両燃料システム1は、
図1に示すように、燃料Fを収容する液体タンクとしての燃料タンク10と、燃料タンク10に収容された燃料Fの液量(即ち、LPG残量)を推定する液量推定装置20と、を有している。
【0037】
燃料タンク10は、例えば、車両の床下などに配置されて、当該車両の燃料Fを収容する周知の車両部品である。燃料タンク10は、燃料供給スタンドなどから燃料Fが供給される車両の燃料充填口に、図示しない流入管を通じて接続されている。また、燃料タンク10は、車両の内燃機関に燃料Fを供給するためのインジェクション装置等に、図示しない流出管を通じて接続されている。
【0038】
本実施形態では、燃料タンク10は、全体が直方体の箱形状に形成されており、底壁10b内面から燃料タンク10の半分程度の高さまで垂直に立設された複数の区画壁10c、10dが、幅方向(
図1の左右方向)に間隔をあけて設けられている。燃料タンク10は、この区画壁10c、10dによって、
図1に点線で示すように第1収容室11(1)、第2収容室11(2)、及び、第3収容室11(3)の複数の収容室に区画されている。本実施形態においては、第1収容室11(1)、第2収容室11(2)、第3収容室11(3)の順に容積が小さくなるように、各収容室11(1)〜(3)が設けられており、また、各収容室11(1)〜(3)は、上壁10aから底壁10bにわたって幅方向断面積が同一となる筒状(即ち、軸方向が鉛直方向(
図1の上下方向)に平行となる縦筒状)に形成されている。つまり、各収容室11(1)〜(3)の容積比が、各収容室11(1)〜(3)のそれぞれの底壁10b(1)〜(3)の面積比と等しくなるように、各収容室11(1)〜(3)が形成されている。
【0039】
第1収容室11(1)、第2収容室11(2)、及び、第3収容室11(3)のそれぞれには、気化した燃料F等が収容される気相部TAと、液体状の燃料Fが収容される液相部TLと、が存在する。そして、第1収容室11(1)、第2収容室11(2)、及び、第3収容室11(3)は、区画壁10c、10dが燃料タンク10の半分程度の高さとされておりそれぞれの上部が連通されているので、各収容室11(1)〜(3)の気相部TAはそれぞれ連通されている。燃料タンク10内には、燃料Fが空の場合は気相部TAのみ存在し、また、燃料Fが満量の場合でも若干の空間が設けられ、即ち、気相部TAが存在する。
【0040】
液量推定装置20は、差圧センサ30、気相ダイヤフラム部40及び複数の液相ダイヤフラム部50、で構成された差圧測定ユニット25と、制御部60と、を有している。
【0041】
差圧センサ30は、箱形に形成されたセンサケース31と、センサケース31内を第1受圧室31a及び第2受圧室31bとに仕切る差圧検知ダイヤフラム32と、差圧検知ダイヤフラム32に設けられ、当該差圧検知ダイヤフラム32の変形量に応じた信号(即ち、差圧信号)を出力する図示しない歪みゲージと、を有している。差圧検知ダイヤフラム32は、一方の受圧面32aが第1受圧室31aに面し、他方の受圧面32bが第2受圧室31bに面しており、第1受圧室31a内の圧力及び第2受圧室31bの圧力のバランス(即ち、互いの差)に応じて変形する。そして、この差圧検知ダイヤフラム32の変形量に応じて、歪みゲージが差圧信号を出力する。差圧センサ30は、燃料タンク10の上壁10a外面に設けられており、その歪みゲージが、後述する制御部60に接続されている。なお、一方の受圧面32aが、請求項中の第1受圧部に相当し、他方の受圧面32bが、請求項中の第2受圧部に相当し、歪みゲージが、請求項中の差圧信号出力部に相当する。
【0042】
気相ダイヤフラム部40は、ケース41と、ダイヤフラム42と、を有している。ケース41は、例えば、ステンレスなどの金属材料を用いて、燃料タンク10内の圧力で変形しない剛性を有する平たい箱形に形成されており、一の平面部に開口41aが設けられている。ダイヤフラム42は、例えば、ステンレスなどの金属材料を用いて薄膜状に形成されており、ケース41内が密閉空間となるように、ケース41の開口41aを塞ぐように配設されている。このように設けられたダイヤフラム42は、その外面に圧力が加えられると、当該圧力に応じた第1圧力P1が後述する圧力伝達溶液を介してケース41に接続された導圧管45に出力される。この第1圧力P1は、ダイヤフラム42の外面に加えられる圧力及びダイヤフラム42の面積に比例した大きさとなる。
【0043】
気相ダイヤフラム部40は、ケース41の開口41a(即ち、ダイヤフラム42)を燃料タンク10の底壁10bに向けるようにして、燃料タンク10の上壁10a内面に重ねて配設されている。気相ダイヤフラム部40のケース41は、導圧管45を介して差圧センサ30の第1受圧室31aに接続されている。つまり、気相ダイヤフラム部40、導圧管45及び第1受圧室31aは互いに連通されている。
【0044】
複数の液相ダイヤフラム部50は、上記気相ダイヤフラム部40と同様に構成されており、ケース51と、ダイヤフラム52と、を有している。ケース51は、例えば、ステンレスなどの金属材料を用いて、燃料タンク10内の圧力で変形しない剛性を有する平たい箱形に形成されており、一の平面部に開口51aが設けられている。ダイヤフラム52は、例えば、ステンレスなどの金属材料を用いて上記気相ダイヤフラム部40のダイヤフラム42と同一の厚みの薄膜状に形成されており、ケース51内が密閉空間となるように、ケース51の開口51aを塞ぐように配設されている。このように設けられたダイヤフラム52は、その外面に圧力が加えられると、当該圧力に応じた第2圧力P2が後述する圧力伝達溶液を介してケース51に接続された導圧管55に出力される。この第2圧力P2は、ダイヤフラム52の外面に加えられる圧力及びダイヤフラム52の面積に比例した大きさとなる。
【0045】
複数の液相ダイヤフラム部50のそれぞれは、開口51a(即ち、ダイヤフラム52)を燃料タンク10の上壁10aに向けるようにして、各収容室11(1)〜(3)の底壁10b(1)〜(3)内面に重ねて配設されている。勿論、これに限定されるものではなく、複数の液相ダイヤフラム部50のそれぞれは、例えば、ダイヤフラム52と底壁10bとの間に若干の隙間をあけて、開口51aを底壁10bに向けるようにして配設されていても良く、底壁10bに加わる圧力(本発明の目的に反しない程度に当該圧力と同等の圧力を含む、即ち、後述する合計圧力Pc)がダイヤフラム52に加わるように、底壁10b又はその近傍に設けられていればよい。特に、ダイヤフラム52を底壁10bに向けることで、液面がダイヤフラム52より下方になったときにダイヤフラム52上に液体が残存することを防止できるとともに液体の振動の影響を防止でき、測定誤差の発生を防止できる。つまり、液相ダイヤフラム部50は、ダイヤフラム52が上下どちら向きに配設されていても良いが、走行時の振動などが生じる自動車用途としては下向きに配設されることが望ましい。
【0046】
以下、各収容室11(1)〜(3)のそれぞれに設けられた複数の液相ダイヤフラム部50及びその構成部材等を区別するときは、各収容室11(1)〜(3)に対応して、符号末尾に(1)〜(3)を付して示す。各液相ダイヤフラム部50(1)〜(3)のケース51(1)〜(3)のそれぞれは、導圧管55を介して差圧センサ30の第2受圧室31bに接続されている。つまり、複数のダイヤフラム部50(1)〜(3)、導圧管55及び第2受圧室31bは、互いに連通されている。
【0047】
各液相ダイヤフラム部50(1)〜(3)のダイヤフラム52(1)〜(3)は、それぞれの面積比が、各液相ダイヤフラム部50(1)〜(3)が設けられた各収容室11(1)〜(3)の底壁10b(1)〜(3)の面積比と等しくなるように形成されている。即ち、ダイヤフラム52(1)〜(3)のそれぞれの面積を順にS(1)、S(2)、S(3)とし、底壁10b(1)〜(3)のそれぞれの面積を順にT(1)、T(2)、T(3)としたとき、次の(i)式が成立するように、各ダイヤフラム52(1)〜(3)が形成されている。
S(1):S(2):S(3)=T(1):T(2):T(3)・・・(i)
【0048】
また、気相ダイヤフラム部40と各液相ダイヤフラム部50(1)〜(3)とのそれぞれは、気相ダイヤフラム部40のダイヤフラム42の面積と、各液相ダイヤフラム部50(1)〜(3)のダイヤフラム52(1)〜(3)の合計面積と、が等しくなるように形成されている。即ち、ダイヤフラム42の面積をS(0)とし、ダイヤフラム52(1)〜(3)のそれぞれの面積を順にS(1)、S(2)、S(3)としたとき、次の(ii)式が成立するように、気相ダイヤフラム部40と各液相ダイヤフラム部50(1)〜(3)とのそれぞれが形成されている。
S(0)=S(1)+S(2)+S(3)・・・(ii)
【0049】
気相ダイヤフラム部40、導圧管45及び第1受圧室31aには、例えば、シリコンオイルなどの圧力伝達溶液が封入されている。気相ダイヤフラム部40は、ダイヤフラム42が圧力を受けると、当該圧力及びダイヤフラム42の面積S(0)に比例した第1圧力P1を出力する。当該第1圧力P1は、圧力伝達溶液を介して第1受圧室31aに伝達される。また、各液相ダイヤフラム部50(1)〜(3)、導圧管55及び第2受圧室31bには、上記と同一の圧力伝達溶液が封入されている。各液相ダイヤフラム部50(1)〜(3)は、各ダイヤフラム52(1)〜(3)が圧力を受けると、当該圧力及びダイヤフラム52の面積S(1)〜(3)に比例した第2圧力P2(1)〜(3)をそれぞれ出力する。当該第2圧力P2(1)〜(3)は、互いに合成されて合成圧力P2gとなり、この合成圧力P2gは圧力伝達溶液を介して第2受圧室31bに伝達される。
【0050】
気相ダイヤフラム部40は、燃料タンク10の上壁10a内面に設けられているので、そのダイヤフラム42には、気相部TAの圧力Paが加わる。そのため、気相ダイヤフラム部40が出力する第1圧力P1は、気相部TAの圧力Pa及びダイヤフラム42の面積S(0)に比例する。この関係を、(iii)式に示す。
P1=Pa×S(0)×α0・・・(iii)
(但し、α0は定数)
【0051】
また、液相ダイヤフラム部50(1)は、底壁10b(1)内面に設けられているので、そのダイヤフラム52(1)には、底壁10b(1)に加わる圧力が加わる。この圧力は、気相部TAの圧力Paと収容室11(1)内の燃料Fの自重による液圧Pb(1)との合計圧力Pc(1)となる。そのため、液相ダイヤフラム部50(1)が出力する第2圧力P2(1)は、圧力Paと液圧Pb(1)との合計圧力Pc(1)及びダイヤフラム52の面積S(1)に比例する。この関係を、(iv)式に示す。
P2(1)=(Pa+Pb(1))×S(1)×α1・・・(iv)
(但し、α1は定数)
【0052】
また、液相ダイヤフラム部50(2)が出力する第2圧力P2(2)は、上記と同様に、気相部TAの圧力Paと収容室11(2)内の燃料Fの自重による液圧Pb(2)との合計圧力Pc(2)及びダイヤフラム52の面積S(2)に比例し、液相ダイヤフラム部50(3)が出力する第2圧力P2(3)は、上記と同様に、気相部TAの圧力Paと収容室11(3)内の燃料Fの自重による液圧Pb(3)との合計圧力Pc(3)及びダイヤフラム52の面積S(3)に比例する。これら関係を、(v)、(vi)式に示す。
P2(2)=(Pa+Pb(2))×S(2)×α2・・・(v)
P2(3)=(Pa+Pb(3))×S(3)×α3・・・(vi)
(但し、α2、α3は定数)
【0053】
上記(iii)〜(vi)式に含まれる定数α0〜α3は、各ダイヤフラムの厚み(剛性)や導圧管の太さなどの構成に応じて決定される。本実施形態においては、これら定数α0〜α3がそれぞれ等しく同一の定数αとなるように各ダイヤフラム部、導圧管及び差圧センサが構成されている。
【0054】
そして、第2圧力P2(1)〜(3)を合成した合成圧力P2gは、上記P2(1)〜(3)を合計するとともに上記(ii)式を考慮して導き出された次の(vii)式で示される。
P2g=P2(1)+P2(2)+P2(3)
=(S(1)+S(2)+S(3))×Pa×α
+(Pb(1)×S(1)+Pb(2)×S(2)+Pb(3)×S(3))×α
=S(0)×Pa×α
+(Pb(1)×S(1)+Pb(2)×S(2)+Pb(3)×S(3))×α
・・・(vii)
【0055】
ここで、液圧Pb(1)は、燃料F(液体)の深さh(1)と当該燃料Fの比重ρと重力加速度gとを乗じることで求めることができる。
Pb(1)=h(1)×ρ×g ・・・(viii)
また、収容室11(1)は縦筒状に形成されているので、収容室11(1)内の液量V(1)は、液体の深さh(1)と底壁10b(1)の面積S(1)とを乗じることで求めることができる。
V(1)=h(1)×S(1) ・・・(ix)
【0056】
これら(viii)、(ix)式より、収容室11(1)内の液量V(1)は、
Pb(1)=(V(1)/S(1))×ρ×g
V(1)=(Pb(1)×S(1))/(ρ×g)・・・(x)
となり、同様に、収容室11(2)内の液量V(2)、収容室11(3)内の液量V(3)は、
V(2)=(Pb(2)×S(2))/(ρ×g)・・・(xi)
V(3)=(Pb(3)×S(3))/(ρ×g)・・・(xii)
となる。
【0057】
そして、定数α’=(ρ×g)×αとして、上記(vii)、(x)〜(xii)式から、次の(xiii)式が導かれる。
P2g=(S(0)×Pa×α)+((V(1)+V(2)+V(3))×α’)
・・・(xiii)
上記(xiii)式において、右辺第1項が、気相部TAの圧力Paに応じた気相圧力成分P2aを示し、右辺第2項が、燃料タンク10内の燃料F全体の液圧に応じた液圧成分P2bを示す。液量V(1)〜(3)の合計値は、燃料タンク10に収容された燃料F全体の液量を示す。
【0058】
差圧センサ30の差圧検知ダイヤフラム32の一方の受圧面32aには、上記第1圧力P1が加わり、他方の受圧面32bには、上記合成圧力P2gが加わる。そして、差圧検知ダイヤフラム32は、第1圧力P1及び合成圧力P2gに応じて変形し、これら第1圧力P1と合成圧力P2gとの差ΔPに応じた差圧信号を出力する。この第1圧力P1と合成圧力P2gとの差ΔPは、上記(iii)、(xiii)式から、
ΔP=P2g−P1
=(S(0)×Pa×α)+((V(1)+V(2)+V(3))×α’)
−(S(0)×Pa×α)
=(V(1)+V(2)+V(3))×α’・・・(xiv)
となり、この差ΔPは、燃料タンク10内の燃料F全体の液圧に応じた液圧成分P2bであり、即ち、燃料タンク10内に収容された燃料F全体の液量を示す値である。
【0059】
この式(xiv)より、気相部TAの圧力Paが変化すると第1圧力P1及び合成圧力P2gがともに変化するが、差ΔPを求める時点でこれら第1圧力P1及び合成圧力P2gの気相圧力成分P2aは相殺されることになり、つまり、気相部TAの圧力Paが所定量変化したときの第1圧力Paの変化量と、気相部TAの圧力Paが前記所定量変化したときの合成圧力P2gの変化量と、が等しくなる。
【0060】
また、各液相ダイヤフラム部50(1)〜(3)は、それぞれのダイヤフラム52(1)〜(3)の面積に比例した第2圧力P2(1)〜(3)を出力する。そして、上記(i)式より、各ダイヤフラム52(1)〜(3)の面積S(1)〜(3)の面積比は、各収容室11(1)〜(3)の底壁10b(1)〜(3)の面積T(1)〜(3)の面積比と等しく、そして、各収容室11(1)〜(3)が縦筒状に形成されているのでそれぞれの容積比も面積T(1)〜(3)の面積比と等しくなる。そのため、各収容室11(1)〜(3)内の液量V(1)〜(3)が同一であるとき、各液相ダイヤフラム部50(1)〜(3)が出力する第2圧力P2(1)〜(3)は同一となる。つまり、複数の収容室11(1)〜(3)のうち任意の一の収容室11内の液量が所定量変化したときの合成圧力P2gの変化量と、任意の他の収容室11内の液量が前記所定量変化したときの合成圧力P2gの変化量と、が等しくなる。
【0061】
制御部60は、例えば、周知のマイクロコンピュータなどで構成されており、液量推定装置20全体の制御を司る。制御部60のマイクロコンピュータは、中央演算処理装置(CPU)、ROM、RAM、データメモリ、外部インタフェースなどを備えている。
【0062】
CPUは、車両燃料システム1における各種制御を司り、ROMに記憶されている各種制御プログラムにしたがって本実施形態に係る制御を含む各種の処理を実行する。ROMは、前記制御プログラムやこの制御プログラムに参照されるパラメータなどの各種情報を記憶している。特に、ROMは、CPUを、液量推定手段などの各種手段として機能させるための制御プログラムを記憶している。そして、CPUは、この制御プログラムを実行することで前述した各種手段として機能する。RAMは、CPUが各種の処理を実行する上において必要なデータ、プログラム等が適宜記憶される。データメモリは、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)やフラッシュメモリなどの電源断となってもデータを保持できる不揮発性のメモリで構成されている。このデータメモリには、液量推定処理で用いられる数式やパラメータ等の各種情報が記憶されている。特に、このデータメモリには、差圧信号と燃料タンク10内に収容された燃料F全体の液量との関係を示すデータテーブルが記憶されている。外部インタフェースは、上述した差圧センサ30を接続されており、差圧センサ30からの差圧信号が外部インタフェースを通じてCPUに入力される。また、外部インタフェースは、他の電子機器(ECU)と通信可能なように図示しない車両ネットワークに接続されている。
【0063】
CPUは、差圧センサ30からの差圧信号が入力されると、データメモリに記憶されている上記データテーブルを参照して、差圧信号に対応する液量を取得し、この液量に応じた表示信号を生成して、当該表示信号を図示しないコンビネーションメータ(メータECU)に向けて車両ネットワークを通じて送信する。コンビネーションメータは、この表示信号を受信すると、それが有する燃料計に当該表示信号が示す液量を表示する。なお、差圧測定値への圧力伝達溶液の自重の影響を回避するために、CPUにおいて差圧信号の補正を行うか、又は、予め上記影響を考慮してデータテーブルを作成することが好ましい。CPU(制御部60)は、請求項中の液量推定手段に相当する。
【0064】
本実施形態によれば、車両燃料システム1の液量推定装置7は、気相部TAの圧力Pa及びダイヤフラム42の面積S(0)に比例した第1圧力P1を出力する気相ダイヤフラム部40と、燃料タンク10内の収容室11(1)の底壁10b(1)に加わる圧力(合計圧力Pc(1))及びダイヤフラム52(1)の面積S(1)に比例した第2圧力P2(1)を出力する液相ダイヤフラム部50(1)と、燃料タンク10内の収容室11(2)の底壁10b(2)に加わる圧力(合計圧力Pc(2))及びダイヤフラム52(2)の面積S(2)に比例した第2圧力P2(2)を出力する液相ダイヤフラム部50(2)と、燃料タンク10内の収容室11(3)の底壁10b(3)に加わる圧力(合計圧力Pc(3))及びダイヤフラム52(3)の面積S(3)に比例した第2圧力P2(3)を出力する液相ダイヤフラム部50(3)と、これら気相ダイヤフラム部40及び複数の液相ダイヤフラム部50(1)〜(3)が接続された差圧センサ30と、を有している。
【0065】
気相ダイヤフラム部40が出力した第1圧力P1は、差圧センサ30の一方の受圧面32aに伝達される。複数の液相ダイヤフラム部50(1)〜(3)のそれぞれが出力した複数の第2圧力P2(1)〜(3)は、互いに合成されて合成圧力P2gとなり差圧センサ30の他方の受圧面32bに伝達される。この合成圧力P2gには、気相部TAの圧力Pa及びダイヤフラム52(1)〜(3)の合計面積に比例した気相圧力成分P2aと、燃料タンク10内の燃料F全体の液圧に比例した液圧成分P2bと、が含まれている。そのため、差圧センサ30によって出力される第1圧力P1と合成圧力P2gとの差ΔPに応じた差圧信号から、燃料タンク10内の燃料F全体の液圧(液圧成分P2b)を得ることができる。そして、この液圧は、燃料タンク10内の液量と関係を有し、この液圧に基づいて燃料タンク10内の液量を推定することができる。したがって、複数の収容室11(1)〜(3)に区画された燃料タンク10の液量の推定において、複数の差圧測定ユニット(即ち、差圧センサ)を設けることなく1つの差圧測定ユニット25のみ用いて燃料タンク10内の液体全体の液圧を得ることができ、そのため、この液圧に基づいて安価に当該燃料タンク10の液量の推定ができる。
【0066】
また、複数の収容室11(1)〜(3)のうち任意の一の収容室11内の液量が所定量変化したときの合成圧力P2gの変化量と、任意の他の収容室11内の液量が前記所定量変化したときの合成圧力P2gの変化量と、が等しくなるように、複数の液相ダイヤフラム部50(1)〜(3)のそれぞれが形成されているので、いずれの収容室11(1)〜(3)内の液量が変化しようとも液量の変化量が同じであれば合成圧力P2g(即ち、上記液圧成分P2b)の変化量も同一となり、そのため、燃料タンク10内の液量の変化に比例して合成圧力P2gが変化する。したがって、差圧センサ30が出力する差圧信号から得られる燃料タンク10内の燃料F全体の液圧も、燃料タンク10内の液量に比例して変化し、そのため、この液圧に基づいて容易且つ正確に当該燃料タンク10の液量の推定ができる。
【0067】
また、燃料タンク10の複数の収容室11(1)〜(3)のそれぞれが、縦筒状に形成され、複数の液相ダイヤフラム部50(1)〜(3)のそれぞれのダイヤフラム52(1)〜(3)の面積比が、それらが設けられた収容室11の底壁10b(1)〜(3)の面積比と等しくなるように形成されているので、複数の収容室11(1)〜(3)のうち任意の一の収容室11内の液量が所定量変化したときの合成圧力P2gの変化量と、任意の他の収容室11内の液量が前記所定量変化したときの合成圧力P2gの変化量と、が等しくなる複数の液相ダイヤフラム部50(1)〜(3)を、ダイヤフラム52(1)〜(3)の面積S(1)〜(3)を調整することにより容易に形成できる。したがって、製造コストを低減できる。
【0068】
また、気相部TAの圧力Paが所定量変化したときの第1圧力P1の変化量と、気相部TAの圧力Paが前記所定量変化したときの合成圧力P2gの変化量と、が等しくなるように、気相ダイヤフラム部40及び複数の液相ダイヤフラム部50(1)〜(3)のそれぞれが形成されているので、気相部TAの圧力変化に応じて、第1圧力P1と合成圧力P2g(即ち、上記気相圧力成分P2a)とが等しく変化する。したがって、差圧センサ30によって出力される第1圧力P1と合成圧力P2gとの差圧信号において、気相部TAの圧力Paの変化による第1圧力P1の変化分と合成圧力P2gに含まれる気相圧力成分P2aの変化分とが相殺され、そのため、燃料タンク10の周囲温度の変化などに起因する気相部TAの圧力Paの変化が、差圧センサ30の出力に影響を及ぼすことを防止でき、測定精度を向上させることができる。
【0069】
また、気相ダイヤフラム部40のダイヤフラム42の厚みと複数の液相ダイヤフラム部50(1)〜(3)のそれぞれのダイヤフラム52(1)〜(3)の厚みとが同一で、且つ、ダイヤフラム42の面積S(0)と、ダイヤフラム52(1)〜(3)の合計面積S(1)+S(2)+S(3)とが、等しくなるように、気相ダイヤフラム部40及び複数の液相ダイヤフラム部50(1)〜(3)が形成されているので、気相部TAの圧力Paが所定量変化したときの第1圧力P1の変化量と、気相部TAの圧力Paが前記所定量変化したときの合成圧力P2gの変化量と、が等しくなる気相ダイヤフラム部40及び複数の液相ダイヤフラム部50(1)〜(3)のそれぞれを、ダイヤフラム42、52(1)〜(3)の面積S(0)〜(3)を調整することにより容易に形成できる。したがって、製造コストを低減できる。
【0070】
また、気相ダイヤフラム部40と複数の液相ダイヤフラム部50(1)〜(3)とのそれぞれが、圧力伝達溶液としてのシリコンオイルを封入して構成されているので、例えば、厚みが同一で面積が異なる複数のダイヤフラムにおいてはダイヤフラム面積が小さいほど剛性が高くなる傾向にあり、そのため、各ダイヤフラム部40、50(1)〜(3)においてダイヤフラム面積が小さいほど、加えられた圧力に対する出力圧力が小さくなることがあるが、圧力伝達溶液を封入すると、圧力伝達媒体として気体が封入されている場合に比べてダイヤフラムが変形しにくくなり、そのため、ダイヤフラム42、52(1)〜(3)の剛性(変形量)の差異が各ダイヤフラム部40、50(1)〜(3)の出力する第1圧力P1、第2圧力P2(1)〜(3)に及ぼす影響が小さくなる。したがって、差ΔPの測定精度を向上させることができるとともに、燃料タンク10内の液量の推定精度を向上させることができる。
【0071】
本実施形態では、差圧測定ユニット25において、気相ダイヤフラム部40は、ダイヤフラム42が受ける気相部TAの圧力Pa及びダイヤフラム42の面積S(0)に比例した第1圧力P1を出力し、液相ダイヤフラム部50(1)〜(3)は、ダイヤフラム52(1)〜(3)が受ける合計圧力Pc(1)〜(3)及びダイヤフラム52の面積S(1)〜(3)に比例した第2圧力P2(1)〜(3)を出力するものであったが、これに限定されるものではない。
【0072】
例えば、各ダイヤフラム42、52(1)〜(3)の面積を同一にするとともにそれぞれ厚み(剛性)を面積T(0)〜(3)に応じて調整して、気相ダイヤフラム部40は、ダイヤフラム42が受ける気相部TAの圧力Pa及び上壁10aの面積T(0)に比例した第1圧力P1を出力し、液相ダイヤフラム部50(1)〜(3)は、ダイヤフラム52(1)〜(3)が受ける合計圧力Pc(1)〜(3)及び底壁10bの面積T(1)〜(3)(即ち、各収容室11(1)〜(3)の容積)に比例した第2圧力P2(1)〜(3)を出力するようにしてもよい。なお、燃料タンク10が直方体であるので、上壁10aの面積T(0)は、底壁10bの面積T(1)〜(3)の合計面積に等しい。即ち、各ダイヤフラム42、52(1)〜(3)の厚みを調整することで、複数の収容室11(1)〜(3)のうち任意の一の収容室内の液量が所定量変化したときの合成圧力P2gの変化量と、任意の他の収容室内の液量が前記所定量変化したときの合成圧力P2gの変化量と、が等しくなるように、複数の液相ダイヤフラム部50(1)〜(3)のそれぞれが形成され、さらに、気相部TAの圧力が所定量変化したときの第1圧力P1の変化量と、気相部TAの圧力が前記所定量変化したときの合成圧力P2gの変化量と、が等しくなるように、気相ダイヤフラム部40及び複数の液相ダイヤフラム部50(1)〜(3)のそれぞれが形成されている。
【0073】
または、各ダイヤフラム42、52(1)〜(3)の面積又は厚みなどを特に考慮しない構成(例えば、面積又は厚みなどを同一になるように調整しない構成など)においても、気相ダイヤフラム部40が出力する第1圧力P1は、少なくとも気相部TAの圧力Paに応じた値となり、また、液相ダイヤフラム部50(1)〜(3)が出力する第2圧力P2(1)〜(3)の合成圧力P2gは、少なくとも気相部TAの圧力Paに応じた値となる気相圧力成分P2aを含んでいるので、例えば、差圧センサ30の初期化処理などにおいて、第1圧力P1と合成圧力P2gの気相圧力成分P2aとが相殺されるようにゼロ点調整などをおこなうことで、燃料タンク10内の液量の推定が可能となる。
【0074】
つまり、差圧測定ユニット25は、少なくとも、差圧センサ30と、気相部TAに設けられ、気相部TAの圧力Paに応じた第1圧力P1を出力するとともに第1圧力P1が伝達されるように差圧センサ30の一方の受圧面32aに接続された気相ダイヤフラム部40と、複数の収容室11(1)〜(3)のそれぞれの底壁10b(1)〜(3)に設けられ、底壁10b(1)〜(3)に加わる合計圧力Pc(1)〜(3)に応じた第2圧力P2(1)〜(3)をそれぞれ出力するとともに複数の前記第2圧力P2(1)〜(3)の合成圧力P2gが伝達されるように差圧センサ30の他方の受圧面32bにそれぞれ接続された複数の液相ダイヤフラム部50(1)〜(3)と、を有していれば、例えば、上記(i)、(ii)式を満たさなくてもよく、上述した本実施形態の構成に限定されず、本発明の目的に反しない限り、差圧測定ユニット25の構成は任意である。
【0075】
また、本実施形態では、気相ダイヤフラム部40、導圧管45及び第1受圧室31aには、シリコンオイルなどの圧力伝達溶液が封入されており、同様に、各液相ダイヤフラム部50(1)〜(3)、導圧管55及び第2受圧室31bには、上記と同一の圧力伝達溶液が封入されているものであったが、これに限定されるものではなく、上記圧力伝達溶液に代えて、圧力伝達媒体として気体が封入されているものであってもよい。このように、圧力伝達媒体として気体を用いることにより、差圧測定値への圧力伝達媒体の自重の影響を小さくでき、差圧測定精度を向上でき、特に、燃料タンクが深く、導圧管が深さ方向に長くなる場合にその効果が顕著となる。
【0076】
また、本実施形態では、燃料タンク10が直方体の箱形状に形成されたものであったが、これに限定されるものではなく、例えば、
図2に示すように、高さや幅、奥行きが異なる複数の収容室11が組み合わされて構成された燃料タンク10などでもよい。また、収容室についても縦筒状に限定されるものではない。即ち、燃料タンク10の形状は、本発明の目的に反しない限り、任意である。
【0077】
上述した実施形態は、車両に搭載され、液化ガスを収容するとともにその液量を推定する車両燃料システムを説明するものであったが、これに限定されるものではない。例えば、工場や家庭などに設置され、各種液体燃料や各種薬液などを収容するとともにその液量を推定する液量推定システムなどであってもよく、本発明の目的に反しない限り、本発明を適用する装置及びシステムは任意である。また、液量の推定対象となる液体についても、液化石油ガスに限らず、例えば、窒素、酸素、アンモニアのなどの工業用途の液化ガス、又は、常温常圧で液状となる燃料(灯油、ガソリン等)、各種薬液等、本発明の目的に反しない限り、その種類は任意である。
【0078】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。