【実施例】
【0017】
以下、本発明の実施例によるバックルとこのバックルを備えたヘルメットを
図1乃至
図8により説明する。
図1に示すように、本実施例によるヘルメット10は、例えば幼児や学童等が使用するものである。このヘルメット10は、略半球状または凸曲面形状をなす例えば合成樹脂製の帽体11と、帽体11の内面に対向して取り付けられた略三角形状をなす一対の耳ベルト12と、一方の耳ベルト12に三角カン(図示せず)を介して連結された顎ベルト13とを備えている。また、帽体11内には図示しないクッションパッドとサイズアジャスタ14とが取り付けられている。
そして、顎ベルト13と他方の耳ベルト12には、両者を着脱可能に締結するバックル16が備えられている。
【0018】
図2及び
図3に示すバックル16は、雌バックル17と雄バックル18とを備えている。
図2に示す雌バックル17は例えば耳ベルト12に装着されており、雄バックル18を嵌合させる嵌合凹部19と、略扇形のベルト係合部20とを備えている。ベルト係合部20は支持部21を挟んで前後に第一長孔22aと第二長孔22bを有している。
図4及び
図5に示すように、略V字状に折り曲げた耳ベルト12は支持部21で折り曲げて第一長孔22aと第二長孔22bにその両側のベルト部分を反対側からそれぞれ通すことでベルト係合部20を取り付けている。
【0019】
図3に示す雄バックル18は、一対の弾性爪部24aとその間に設けたガイド軸24bとを備えていて嵌合凹部19に嵌合可能な嵌合凸部24と、顎ベルト13を係止するための基部25とを有している。基部25は、略四角形の枠部25aを二つに区切る係止部26と、枠部25aの一部として嵌合凸部24と反対側端部に設けられた引掛け部27とを備えており、係止部26と嵌合凸部24の間に第一挿通孔28,係止部26と引掛け部27との間に第二挿通孔29がそれぞれ形成されている。
そして、
図6に示す雄バックル18の中央縦断面図では、引掛け部27は例えば略涙滴形状とされ、係止部26は略レモン形状とされている。また、雄バックル18の延在方向(長手方向)に対して直交する方向の両側にずれた位置に係止部26と引掛け部27が形成されている。
【0020】
次に、雄バックル18に形成した基部25へ顎ベルト13を取り付けた構成について
図5及び
図6により説明する。なお、顎ベルト13は、
図6に示す基部25に取り付けて引掛け部27に巻回された状態で、引掛け部27に対して端部側のベルト部分を自由端部13aとし、基端側のベルト部分を基端側部分13bとした。そして、顎ベルト13は、自由端部13aと基端側部分13bの境界をループ状に巻回して自由端部13aと基端側部分13bを二重に重ねるものである。
顎ベルト13の装着に際して、自由端部13aは基部25における嵌合凸部24側の第一挿通孔28を貫通して引掛け部27を外側から巻回して第二挿通孔29を貫通することで引掛け部27をループ状に囲む。そして、顎ベルト13の自由端部13aは基端側部分13bと積層状態に重ねられ、二層に重なった状態で係止部26を巻回して下方に延びるように装着されている。
【0021】
また、
図6に示すように、係合凸部24の第一挿通孔28を形成する端面24cには、例えばその厚み方向中央部に断面略J字状に湾曲した突出部30が突出している。この突出部30の先端は自由端部13aと基端側部分13bが二重に積層された顎ベルト13の基端側部分13bに当接するか僅かに離間する程度の位置にあるものとする。しかも、この突出部30は顎ベルト13を引掛け部27から係止部26方向に引っ張る方向に湾曲させられており、当該方向への顎ベルト13の移動を許容可能とすると共に、逆方向への移動に抵抗することになる。
そして、係止部26の突出部30に対向する領域は例えば平面部26aとされていてもよく、この平面部26aと突出部30との間隔は、顎ベルト13の積層された二枚の厚みdとほぼ同一に設定されている。
【0022】
本実施例によるバックル16は、顎ベルト13の長さを調整できる。例えば、雄バックル18の基部25に取り付けた顎ベルト13の自由端部13aを手で緩めて基端側部分13bを引っ張れば顎ベルト13の長さを長くできて、比較的大きな顔の装着者に適合させて顎ベルト13を締め込むことができる。また、これとは逆に基端側部分13bを係止部26及び引掛け部27から緩めて自由端部13aを引っ張れば比較的小さな顔の装着者に適合させて顎ベルト13を締め込むことができる。
なお、本実施例において、一例として、雌バックル17及び雄バックル18からなるバックル16の材質は例えばポリアセタールまたはナイロンであり、顎ベルト13及び耳ベルト12の材質は例えばポリプロピレン、ナイロンまたはポリエステルである。しかも、顎ベルト13の厚みは例えば1.2mm程度である。
【0023】
本実施例によるヘルメット10及びそのバックル16は上述の構成を備えているから、
図1に示すように、児童や幼児等の装着者がヘルメット20を被って、一方の耳ベルト12の略三角状の頂部に設けたバックル16の雌バックル17の嵌合凹部19に、他方の耳ベルト12に連結された顎ベルト13の端部に取り付けた雄バックル18の嵌合凸部24を嵌合させる。
この状態で、バックル16の雄バックル18に設けた顎ベルト13は、例えば
図6に示すように、基部25において、引掛け部27をループ状に囲う顎ベルト13の自由端部13aと基端側部分13bが重ねられた状態で第一挿通孔28を通って係止部26で折り曲げられて下方に延びているものとする。
【0024】
そして、ヘルメット10のバックル16に上方向(矢印E方向)へ荷重が加わると共に、装着者の顎を固定する顎ベルト13の基端側部分13bに下方向(矢印A方向)へ力が加わった場合、顎ベルト13の基端側部分13bを矢印A方向に引っ張る相対的な力が働く。すると、顎ベルト13の基端側部分13bは積層された自由端部13aを介して係止部26へ相対的に押圧され、突出部30の近傍で基端側部分13bに係止部26へ向けて押す押圧力Fが働き、摩擦力により顎ベルト13の基端側部分13bが係止部26に対して移動したり緩んだりすることを阻止する。
これに対し、基端側部分13bの下側に位置する顎ベルト13の自由端部13aに下方向(矢印B方向)に力が加わった場合、基端側部分13bに荷重が加わらなければ、押圧力Fは働かないか小さいため、自由端部13aは下方向(矢印B方向)に可動となり、顎ベルト13の基端側部分13bを装着者の顎に締め込むことができる。
【0025】
また、
図7に示すように、ヘルメット10のバックル16に上方向(矢印E方向)へ力が加わると共に、装着者の顎を固定する顎ベルト13の基端側部分13bに横方向(矢印A方向)へ力が加わった場合、基端側部分13bを矢印A方向に引っ張る相対的な力が働く。すると、顎ベルト13の基端側部分13bには積層された自由端部13aを介して係止部26を押圧する押圧力Fが働き、摩擦力により顎ベルト13が係止部26に対して移動したり緩んだりすることを阻止する。
そのため、顎ベルト13が、下方向だけでなく斜め下方向や横方向(水平方向)に引っ張られるようなことがあっても緩むことを防止できる。
これに対し、基端側部分13bの下側に位置する顎ベルト13の自由端部13aに下方向(矢印B方向)に荷重が加わった場合、基端側部分13bに荷重が加わらなければ、押圧力Fは働かないか小さいため、自由端部13aは基端側部分13bに対して下方向(矢印B方向)に可動となり、顎ベルト13を装着者の顎に締め込んだりすることができる。
【0026】
また、
図8に示すように、装着者の顎を固定する顎ベルト13の基端側部分13bに斜め上方向(矢印A方向)へ力が加わった場合、顎ベルト13の基端側部分13bは積層された自由端部13aや係止部26を押圧することなく、押圧力Fが基端側部分13bに働かないから、顎ベルト13の基端側部分13bが自由端部13aや突出部30に対して矢印A方向に移動可能であり、顎ベルト13を緩めたりすることができる。
これに対し、基端側部分13bの下側に位置する顎ベルト13の自由端部13aに下方向(矢印B方向)に力が加わった場合、同様に押圧力Fは働かないため、自由端部13aは基端側部分13bに対して下方向(矢印B方向)に可動となり、顎ベルト13を装着者の顎に締め込んだりすることができる。
【0027】
上述のように本実施例によるバックル16及びヘルメット10によれば、ヘルメット10の側部に設けた顎ベルト13のバックル16について、下方向だけでなく斜め下方向や横方向(水平方向)に顎ベルト13の基端側部分13bを引っ張った場合でも顎ベルト13は移動したり緩んだりしない。また、突出部30を設けたことで、係止部26で折り曲げられた二重の顎ベルト13が緩むことを防止できる。しかも、バックル16の雌バックル17に押圧片等の顎ベルト13を押圧する部材を設けなくても顎ベルト13の移動や弛みを防止できる。
また、本実施例によるバックル16によれば、突出部30を雄バックル18で一体成形できるから、部品点数が増加しない上に製造が容易である。
【0028】
なお、本発明は上述の実施例によるバックル16に限定されることはなく、本発明の要旨を変更しない限り種々の変更を行うことができる。次に本発明の実施例の変形例について説明する。
上述の実施例によるバックル16では、雄バックル18の基部25における嵌合凸部24側の第一挿通孔28を形成する端面24cに略板状の突出部30を突出して形成したが、突出部30は必ずしも断面J字状に湾曲して形成されていなくてもよく、直線状等でもよく、逆方向に湾曲していてもよく、先端部にR状の面取りが施されていても良い。
また、突出部30は板状である必要はなく、ドット状や凸曲面など適宜形状の突出部を採用できる。また、端面24cに突出部を形成しなくてもよく、係止部26との間隙がd程度であれば同様な効果を発揮できる。
【0029】
また、上述した実施例では、三角ベルト12に雌バックル17を取り付け、雄バックル18の基部25に顎ベルト13を巻き付けて固定するようにしたが、これに代えて、三角ベルト12に雄バックル18を取り付け、顎ベルト13に雌バックル17を取り付けて、雌バックル17に基部25を設けて、基部25に顎ベルト13を巻き付けて固定するようにしてもよい。
また、三角ベルト12に別のベルトを取り付け、この別のベルトに雌バックル17または雄バックル18を固定するようにしてもよい。
また、本実施例によるヘルメット10について、幼児や学童用としたが、本発明はこのような用途に限定されることなく工事用等、適宜の用途に使用できる。ヘルメット10に取り付けたバックル16についても顔の側部に位置する構成に限定されない。また、ベルト付きバックル16についても、ヘルメット用に限定されることなく、バック、カバン、リュックサック、カメラやそのケース等任意の用途に用いることができることはいうまでもない。