特許第5762233号(P5762233)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5762233
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】継手部洗浄装置および継手部洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/18 20060101AFI20150723BHJP
   E02D 5/20 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
   E02D5/18 103
   E02D5/20 103
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-207754(P2011-207754)
(22)【出願日】2011年9月22日
(65)【公開番号】特開2013-68013(P2013-68013A)
(43)【公開日】2013年4月18日
【審査請求日】2014年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100129067
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 能章
(72)【発明者】
【氏名】前田 收治
(72)【発明者】
【氏名】野呂 克良
【審査官】 富山 博喜
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−060465(JP,A)
【文献】 実開昭63−027558(JP,U)
【文献】 特開平06−346445(JP,A)
【文献】 特開平10−266207(JP,A)
【文献】 特開平07−269499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/18
E02D 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削機に装備された排泥ポンプと、前記排泥ポンプに着脱可能に接続された吐出管と、前記掘削機の側面に設けられた洗浄ブラシと、を備える継手部洗浄装置であって、
前記吐出管は、吐出口が側方に向けて開口しており、
前記排泥ポンプにより吸い上げた液体が前記吐出口から噴射されることを特徴とする継手部洗浄装置。
【請求項2】
前記吐出管が、複数の吐出口を有していることを特徴とする、請求項1に記載の継手部洗浄装置。
【請求項3】
前記吐出管が、相反する向きに形成された二つの前記吐出口を有するT字管であることを特徴とする、請求項1に記載の継手部洗浄装置。
【請求項4】
壁本体部に沿って継手溝を掘削した掘削機を引き上げるとともに、前記掘削機に装備された排泥ポンプに吐出管を接続する準備工程と、
前記掘削機を前記継手溝に挿入する配置工程と、
前記掘削機の側面に設けられた洗浄ブラシにより前記壁本体の壁面の付着物を掻き落としつつ、前記排泥ポンプにより安定液を吸い上げるとともに、前記吐出管から前記壁本体部の壁面に向けて前記安定液を噴射する洗浄工程と、を備えることを特徴とする、継手部洗浄方法。
【請求項5】
前記吐出管が、相反する向きに二つの吐出口が形成されたT字管からなり、
前記洗浄工程において、継手溝を挟んで対向する二つの壁本体部に対して同時に安定液を噴射することを特徴とする、請求項4に記載の継手部洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中連続壁工における継手部洗浄装置および継手部洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地下構造物を構築する際には、土留め壁(遮水壁)として、地中連続壁が採用される場合がある。
地中連続壁は、地面に掘削溝を掘削して、この掘削溝にコンクリートを打設することにより構築される。
【0003】
地中連続壁の構築方法として、複数の壁本体部を適宜間隔あけて形成した後、隣り合う壁本体部同士の間の地面を掘削するとともに、壁本体部の端面を切削することで継手溝を形成し、この継手溝にコンクリートを打設して継手部を形成することで連続した地中連続壁を構築する場合がある。
【0004】
継手溝にコンクリートを打設する際には、地中連続壁の密着性、止水性および一体性の向上を目的として、予め壁本体部の端面に付着した土砂を取り除く必要がある。
【0005】
壁本体部の端面に付着した土砂を取り除く洗浄方法として、例えば特許文献1では、掘削機により継手溝の掘削が終了した後、掘削機に代えて洗浄ブラシを備えた洗浄装置を継手溝内に吊下ろして洗浄する方法が開示されている。
特許文献1の洗浄装置は、上下昇降するフレームと、このフレームに回転自在に軸支された駆動回転する回転ブラシを備えており、この回転ブラシを洗浄対象面に押し付けることで洗浄を行うものである。
【0006】
また、特許文献2には、掘削機の回転ドラムのカッタービットを洗浄ブラシに交換して、回転ドラムを回転させつつ継手溝に掘削機を挿入することで、継手溝の壁面の洗浄を行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−21064号公報
【特許文献2】特開2000−273902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
洗浄ブラシによる壁本体部の端面の洗浄は、壁本体部の端面の凹凸に洗浄ブラシが入り込まないために、付着物を落としきれない場合があった。
また、特許文献1の洗浄方法は、機械の吊代え作業に要する手間や、洗浄装置の移動、洗浄装置の保管場所などに手間や費用が嵩むという問題点を有していた。
また、特許文献2の洗浄方法は、多数のカッタービットを洗浄ブラシに交換する作業に手間を要していた。
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、簡易かつ効率的に継手溝の洗浄を行うことを可能とした継手部洗浄装置および継手部洗浄方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明の継手部洗浄装置は、掘削機に装備された排泥ポンプと、前記排泥ポンプに着脱可能に接続された吐出管と、前記掘削機の側面に設けられた洗浄ブラシとを備える継手部洗浄装置であって、前記吐出管は、吐出口が側方に向けて開口しており、前記排泥ポンプにより吸い上げた液体が前記吐出口から噴射されることを特徴としている。
【0011】
かかる継手部洗浄装置によれば、液体を噴射することにより壁面の洗浄を行うため、壁面に凹凸があったとしても付着物をかき出すことが可能である。
また、継手溝を掘削した掘削機を継手部洗浄装置として利用しているため、吊代え作業等に要する手間を削減し、簡易かつ効率的に作業を行うことができる。
また、ブラシ等の消耗品を必要としないため、メンテナンスコストも低減できる。
【0012】
なお、前記吐出管が、複数の吐出口を有した管材や、相反する向きに形成された二つの前記吐出口を有するT字管であれば、より効率的に洗浄作業を行うことが可能となる。
【0013】
また、本発明の継手部洗浄方法は、壁本体部に沿って継手溝を掘削した掘削機を引き上げるとともに、前記掘削機に装備された排泥ポンプに吐出管を接続する準備工程と、前記掘削機を前記継手溝に挿入する配置工程と、前記掘削機の側面に設けられた洗浄ブラシにより前記壁本体の壁面の付着物を掻き落としつつ、前記排泥ポンプにより安定液を吸い上げるとともに、前記吐出管から前記壁本体部の壁面に向けて前記安定液を噴射する洗浄工程と、を備えることを特徴としている。
【0014】
かかる継手部洗浄方法によれば、継手溝の掘削に利用した掘削機を継手部洗浄装置として利用するため、吊代え作業等の手間を省略でき、簡易かつ効率的である。
また、安定液を噴射することで洗浄を行うため、洗浄面に凹凸があったとしても、付着物をより効果的に取り除くことができる。
【0015】
なお、前記吐出管が、相反する向きに二つの吐出口が形成されたT字管からなり、前記洗浄工程において、継手溝を挟んで対向する二つの壁本体部に対して同時に安定液を噴射すれば、より効率的に洗浄作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の継手部洗浄装置および継手部洗浄方法によれば、簡易かつ効率的に継手溝の洗浄を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係る継手部洗浄装置を示す正面図である。
図2】(a)は掘削機による切削状況を示す断面図、(b)は準備工程を示す断面図、(c)は配置工程および洗浄工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本実施形態では、地中連続壁工における壁本体部W,W同士を接続する継手部を形成する場合において、壁本体部W,Wの端部の壁面(端面)洗浄を行う継手部洗浄装置と継手部洗浄方法について説明する。
【0019】
本実施形態に係る継手部洗浄装置1は、図1に示すように、掘削機2に装備された排泥ポンプ3と、排泥ポンプ3に着脱可能に接続された吐出管4とを備えている。
【0020】
掘削機2の下端には、回転駆動する回転ドラム21,21が設けられている。
回転ドラム21は、外面に多数のカッタービット22,22,…を有し、回転することで、地盤等を切削する。
【0021】
掘削機2は、吊ワイヤー23,23を介してクレーン(図示せず)等に吊持された状態で、継手溝J内に配置されている。
なお、掘削機2の支持方法は限定されるものではなく、例えば、地上部において保持されたシャフト等により支持してもよい。
【0022】
排泥ポンプ3は、回転ドラム21,21の上方に配置されている。
排泥ポンプ3は、回転ドラム21,21同士の間に開口する吸引管31に接続されていて、継手溝J内の安定液を吸引することができる。
【0023】
本実施形態の吐出管4は、T字管により構成されている。すなわち、吐出管4には、2つの吐出口41,41が相反する向きに形成されている。各吐出口41,41は、それぞれ継手部洗浄装置1の側方の洗浄対象面(壁本体部Wの壁面)に向けて開口している。
【0024】
排泥ポンプ3により吸い上げた安定液は、吐出口41,41から噴射される。
なお、吐出口41の数は限定されるものではなく、1つでもよいし、3つ以上形成されていてもよい。また、吐出口41の形状も限定されるものではない。
【0025】
次に、本実施形態の継手部洗浄方法について説明する。
継手部洗浄方法は、隣り合う壁本体部W,W同士の間に、壁本体部W,Wを接続する継手部Jを形成する場合において、継手溝Jを挟んで対向する両壁本体部W,Wの端面を同時に洗浄する。
【0026】
先ず、継手部洗浄方法に先立って、図2の(a)に示すように、掘削機2により、継手溝Jを形成する。
本実施形態では、隣り合う壁本体部W,Wの間の地盤Gを掘削するとともに、両壁本体部W,Wの端部の切削することで、継手溝Jを形成する。このとき、排泥ポンプ3には、排泥管32が接続されている。
排泥管32は、排泥ポンプ3から地上にまで配管されていて、掘削機2による切削に伴い発生した掘削土砂やコンクリート片等を地上に搬出する。
【0027】
掘削機2のよる掘削・切削は、溝(継手溝J)内に安定液を満たした状態で行い、切削面が崩落することを防止する。安定液の材質は限定されるものではないが、例えば、ベントナイト溶液を使用する。
【0028】
継手溝Jを形成したら、壁本体部W,Wの壁面に付着した土砂等の汚れを洗浄する。
本実施形態の継手部洗浄方法は、準備工程と、配置工程と、洗浄工程とを備えている。
【0029】
準備工程は、図2の(b)に示すように、継手溝Jを掘削した掘削機を引き上げるとともに、掘削機2に装備された排泥ポンプ3に吐出管4を接続する工程である。
【0030】
本実施形態では、排泥管32に代えて、吐出管4を排泥ポンプ3の吐出部に接続する。吐出管4は、図示しないビクトリックジョイント等の取付部材を介して簡易に着脱可能に接続されている。
【0031】
なお、吐出管4の設置方法は限定されるものではなく、例えば、排泥管32に切換弁等を介して枝管(分岐管)が接続されている場合には、排泥管32を排泥ポンプ3に接続したまま、吐出管4を枝管に接続すればよい。切換弁および枝管を介して吐出管4を排泥ポンプ3に接続した場合には、排泥ポンプ3から吐出された安定液の全部が吐出管4に流入するように切換弁により流路を切り換える。
【0032】
配置工程は、図2の(c)に示すように、掘削機2を継手溝J内に挿入する工程である。
【0033】
洗浄工程は、排泥ポンプ3により吸引管31から安定液を吸い上げるとともに、吸い上げられた安定液を吐出管4から継手溝Jの壁面に向けて安定液を噴射する工程である。
【0034】
安定液の噴射は、掘削機2を上下動させながら実施するものとし、壁本体部Wの端面全体に対して行う。
【0035】
安定液の噴射は、T字管である吐出管4により、対向する二つの壁面(両壁本体部W,Wの端面)に対して同時に行う。
対向する二つの壁面に対して安定液を噴射することで、壁面に付着した土砂等が安定液の圧力により取り除かれる。また、相対する方向に同時に噴射することで、安定液の噴射圧による継手部洗浄装置1のブレを抑制する。
【0036】
本実施形態の継手部洗浄装置および継手部洗浄方法によれば、継手溝Jに面する壁本体部Wの壁面(端面)の全面にわたって、簡易に均一かつ高い洗浄力を付与することができる。その結果、継手部を高品質に施工することが可能となり、ひいては継手部と壁本体部との密着性、止水性、一体性が向上し、高品質の連続地中壁を構築することができる。
【0037】
高圧で吐出された安定液により洗浄するため、洗浄対象面に凹凸があったとしても、安定液が入り込んで洗浄することが可能である。従来のブラシでは洗浄できなかった部分(ブラシが入り込まない部分)も洗浄することができる。
消耗するブラシを使用しないため、メンテナンスコストの低減化も可能である。
【0038】
また、掘削機2(排泥ポンプ3)を利用しているため、新たに洗浄用の機械を用いる必要がなく、設備費の低減化が可能となるとともに、機械の吊り代え作業を要しないため工期の短縮化も可能である。
排泥管32を吐出管4に付け替えるのみで準備が完了するため、簡易である。
【0039】
以上、本発明について、好適な実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の各実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能であることはいうまでもない。
【0040】
例えば、前記実施形態では、隣り合う壁本体部W,Wの間に継手部を形成する場合について説明したが、継手部を省略して、先行して構築された壁本体部に接続する壁本体部を形成する場合において、本発明の継手部洗浄装置および継手部洗浄方法を採用してもよい。この場合には、吐出管4の吐出口41は、一方の側面にのみ開口していればよい。
【0041】
壁本体部Wの端面を洗浄する場合について説明したが、洗浄対象面を構成する構造体は壁の端面に限定されるものではない。
【0042】
掘削機2の側面に洗浄ブラシを設置しておくことで、補助的に洗浄対象面(壁本体部の端面)の付着物を掻き落とす構成としてもよい。
壁本体部Wの壁厚に応じて、吐出管4の吐出口41を増加させてもよい。
【0043】
掘削機として、ドラム式のものを採用したが、バケット式の掘削機でもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 継手部洗浄装置
2 掘削機
3 排泥ポンプ
4 吐出管
41 吐出口
J 継手溝
W 壁本体部
図1
図2