【実施例】
【0009】
<1>基本的構成。(
図1)
本発明の鋼管杭は、オーガー翼11を備えた中空の鋼管である杭体1と、杭体1の先端に取り付ける先端ビット2とによって構成する。
【0010】
<2>杭体。(
図1)
杭体1は通常の中空の鋼管であり、その先端付近にオーガー翼11を取り付けてある。
杭体1の地盤への挿入には、杭体1の最上部を公知の装置によって把持して回転を与えることによって行う。
【0011】
<3>先端ビット。(
図1)
先端ビット2は、杭体1の最先端に取り付ける部材であり、円錐体の一面に短筒21を設けて構成する。
この短筒21の内径を、杭体1の外径よりも大きくすることによって、杭体1の先端を短筒21内に挿入して一体化することができる。
なお図の実施例とは反対に、短筒21の外径を、杭体1の内径よりも小さく構成しても同様の機能を果たすことができる。
【0012】
<4>一体化。(
図3)
先端ビット2の短筒21と杭体1とが相互に嵌合する範囲に、両者の対応する位置にピン挿入口12、22を開口する。
そして側面から連結ピン3を挿入すれば、先端ビット2の短筒21と杭体1とが一体となる。
連結ピン3を挿入したら短筒21のピン挿入口22の外側から溶接キャップ23を被せ、ピン3の端部を溶接して途中での抜け出すことのないように処理する。
ピン3を直接溶接することも可能である。
以上の作業は杭体1を地盤へ挿入する前の段階で、地表面において行うことができる。
【0013】
<5>回転力の伝達。
杭体1は回転力を与えて地盤に挿入するから、杭体1の強力な回転を、先端ビット2に確実に伝達できる必要がある。
そのために先端ビット2の内側に鋼材の塊を溶接して嵌合ブロック24として機能させる。
一方の杭体1の先端には切欠きを設けて嵌合溝23として機能させる。
この両者を嵌合することによって、杭体1の回転を確実に先端ビット2に伝達することができる。
なお、図の実施例とは反対に、杭体1に嵌合ブロック24を突設し、先端ビット2に嵌合溝23を形成しても同様の機能を達成できる。
【0014】
<6>遊び代。(
図2)
上記のように、杭体1の回転力は先端ビット2には伝達するが、その回転力は連結ピン3には伝達させないように構成する必要がある。
そのために、嵌合ブロック24と嵌合溝23の遊び代t1と、溶接キャップ23内径と連結ピン3との遊び代t3と、連結ピン3とピン挿入口22との遊び代t2との関係は次の通りに設定することが好ましい。
t1×2+t3<t2
【0015】
<7>撤去用具。(
図4)
前記の連結ピン3を撤去するために撤去用具4を使用する。
これは、杭体1の内径よりも小さい外径を備えた棒状体であり、短い棒状体を順次連続して延長が可能である。
棒状体には、鍔状にリング42を取り付け、そのリング42の外径を、杭体1の内径に近いものとして形成する。
その結果、撤去用具4の棒状体を、常に杭体1の内部の中心に位置させることができる。
撤去用具4の先端にはフック41を形成する。
このフック41を連結ピン3を係合して、撤去用具4に地上から回転を与えることによって、連結ピン3に捩じりを与え、切断し、あるいは強引に引き上げて引き抜くなどの作用を行うものである。
【0016】
<8>工程。
次に杭の挿入、撤去工程について説明する。(
図5)
【0017】
<9>地盤への挿入。
上記の鋼管杭を使用して、先端ビット2と一体化した杭体1に回転を与えてオーガー翼11で地盤を切りながら地盤中に挿入する。
この工程は従来のオーガー翼11を設けた杭の挿入工程と同様である。
【0018】
<10>分離。
挿入工程が終了したら、杭体1と先端ビット2と分離可能の状態とする。
そのために両者を貫通していた連結ピン3を撤去する。
連結ピン3の撤去のために例えば先端にフック41を形成した撤去用具4を使用する。
この撤去用具4を杭体1の内部に挿入し、先端のフック41に連結ピン3を係合して回転を与え、あるいは強引に引き抜き、あるいは切断して連結ピン3を撤去する。
連結ピン3を撤去すれば、杭体1と先端ビット2との一体化が解除され、分離が可能となる。
【0019】
<11>構造物の支持。
杭体1と先端ビット2が分離可能となっても、分離しているわけではないから鉛直方向の支持力には影響を与えない。
その状態で、例えば構造物の基礎杭として機能させ、その上端で構造物5の重量を受けて支持杭としての本来の目的を達成させる。
【0020】
<12>回転の確認。
時代の要請で構造物5の解体などが始まり、支持杭の存在が不要になった場合に支持杭を撤去する。
杭体1は長年地中に設置してあるから、場合によっては周囲の地盤により強固に締付けられていることも想定される。
そこで杭体1の頭部から注水し、さらに上端にキャップ6を設置して加圧注水する。
すると杭体1内部の水が周囲に流出して杭体1と地盤との摩擦を低減することができる。
その状態で、挿入時と反対方向への回転力を杭体1に与えて、杭体1の回転の可能性を確認する。
【0021】
<13>充填材の充填。
杭体1に、挿入時と反対の回転を与えれば、オーガー翼11によって杭体1は上方へ移動して引き抜くことができる。
その際に、中空の杭体1の頭部から杭体1内に砂、珪砂などの粒状体を充填材7として充填しつつ杭体1を挿入時とは反対方向に回転して引き抜く。
充填材7としては砂以外にセメント系固化材を使用することもできる。
杭体1は地上で適当な寸法に切断しつつ全杭体1を引き抜いて撤去作業を終了する。
その後の地中には充填材7の柱が形成されており、その跡に空隙を生じることはないから、周囲の地盤を緩めることがない。