特許第5762238号(P5762238)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5762238
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】鋼管杭の構造と撤去方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/56 20060101AFI20150723BHJP
   E02D 5/72 20060101ALI20150723BHJP
   E02D 11/00 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
   E02D5/56
   E02D5/72
   E02D11/00
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-220355(P2011-220355)
(22)【出願日】2011年10月4日
(65)【公開番号】特開2013-79533(P2013-79533A)
(43)【公開日】2013年5月2日
【審査請求日】2014年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】598027847
【氏名又は名称】株式会社設計室ソイル
(73)【特許権者】
【識別番号】511230543
【氏名又は名称】日建商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(72)【発明者】
【氏名】藤田 雅一
【審査官】 石井 哲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−008146(JP,A)
【文献】 特開2000−054375(JP,A)
【文献】 特開2002−155530(JP,A)
【文献】 特開2009−256999(JP,A)
【文献】 特開2005−207081(JP,A)
【文献】 特開2003−027468(JP,A)
【文献】 特開平09−242069(JP,A)
【文献】 特開平07−286324(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0076479(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/56
E02D 5/72
E02D 9/00
E02D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーガー翼を備えた中空の鋼管である杭体と、
杭体の先端に取り付ける先端ビットとによって構成し、
杭体と先端ビットとは、先端ビットの短筒に杭体を挿入可能に構成し、
杭体と先端ビットの短筒を貫通する連結ピンを備え、
杭体と先端ビットとは、一方の嵌合溝に他方の嵌合ブロックを嵌合できるように構成した、
鋼管杭の構造。
【請求項2】
請求項1記載の鋼管杭を使用し、
杭体を回転して地盤中に挿入し、
挿入工程が終了したら、杭体と先端ビットとを貫通していた連結ピンを撤去しておき、
引き抜きに際しては杭体内に砂などの充填材を充填しつつ杭体を挿入時とは反対方向に回転して引き抜くことを特徴とした、
鋼管杭の撤去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管杭の構造と撤去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物の基礎に鋼管杭が用いられ、先端にオーガー翼を装着した鋼管杭を回転と圧入で支持盤に埋設する鋼管杭は多くの特徴と備えているので広く採用されている。
ところで杭が支持していた建築物などが、建て替えや売却で撤去する必要が生じる場合がある。
そこで特許文献1および図6に示すように、既設杭aの外側に新たに、既設杭aの外径よりも内径の大きい鋼管ケーシングbを回転挿入し、既設杭aと地盤との縁を切った後に既設杭aを挿入時とは反対方向に回転して引き抜くような技術が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−8146号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記したような従来の鋼管杭の撤去方法、引き抜き方法にあっては、次のような問題点がある。
<1> 既設杭を引き抜くと、その体積分だけ空隙ができることになるので、周囲の地盤が緩む原因となる。
<2> 多数本の既設杭が設置してあるのが通常であるから、すべての既設杭の周囲に、各杭ごとにそれよりも内径の大きい鋼管ケーシングを回転挿入するという工程が必要となり、不経済なものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記のような課題を解決するために、本発明の鋼管杭の構造は、オーガー翼を備えた中空の鋼管である杭体と、杭体の先端に取り付ける先端ビットとによって構成し、杭体と先端ビットとは、先端ビットの短筒に杭体を挿入可能に構成し、杭体と先端ビットの短筒を貫通する連結ピンを備え、杭体と先端ビットとは、一方の嵌合溝に他方の嵌合ブロックを嵌合できるように構成したことを特徴とするものである。
また鋼管杭の撤去方法は、上記の鋼管杭を使用し、杭体を回転して地盤中に挿入し、挿入工程が終了したら、杭体と先端ビットとを貫通していた連結ピンを撤去しておき、引き抜きに際しては杭体内に砂などの充填材を充填しつつ杭体を挿入時とは反対方向に回転して引き抜くことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の鋼管杭の構造と撤去方法は以上説明したようになるから次のような効果を得ることができる。
<1> 杭の設置時に、将来の撤去を予定して杭体と先端ビットを分離しておくので、撤去時には杭体に挿入時と反対方向の回転を与えるだけで対応でき、きわめて経済的である。
<2> 杭体の撤去時に、中空の杭体を通して充填材を充填しつつ引き抜くので、撤去後に地盤中に空間が残ることがない。そのために周囲の地盤の緩みを生じることがない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の鋼管杭の構造の実施例の説明図。
図2】遊び代の説明図。
図3】杭体と先端ビットを一体化する工程の説明図。
図4】一体化した杭体と先端ビットを分割する工程の説明図。
図5】杭を撤去する工程の実施例の説明図。
図6】従来の鋼管杭の撤去方法の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図面を参照にしながら本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【実施例】
【0009】
<1>基本的構成。(図1
本発明の鋼管杭は、オーガー翼11を備えた中空の鋼管である杭体1と、杭体1の先端に取り付ける先端ビット2とによって構成する。
【0010】
<2>杭体。(図1
杭体1は通常の中空の鋼管であり、その先端付近にオーガー翼11を取り付けてある。
杭体1の地盤への挿入には、杭体1の最上部を公知の装置によって把持して回転を与えることによって行う。
【0011】
<3>先端ビット。(図1
先端ビット2は、杭体1の最先端に取り付ける部材であり、円錐体の一面に短筒21を設けて構成する。
この短筒21の内径を、杭体1の外径よりも大きくすることによって、杭体1の先端を短筒21内に挿入して一体化することができる。
なお図の実施例とは反対に、短筒21の外径を、杭体1の内径よりも小さく構成しても同様の機能を果たすことができる。
【0012】
<4>一体化。(図3
先端ビット2の短筒21と杭体1とが相互に嵌合する範囲に、両者の対応する位置にピン挿入口12、22を開口する。
そして側面から連結ピン3を挿入すれば、先端ビット2の短筒21と杭体1とが一体となる。
連結ピン3を挿入したら短筒21のピン挿入口22の外側から溶接キャップ23を被せ、ピン3の端部を溶接して途中での抜け出すことのないように処理する。
ピン3を直接溶接することも可能である。
以上の作業は杭体1を地盤へ挿入する前の段階で、地表面において行うことができる。
【0013】
<5>回転力の伝達。
杭体1は回転力を与えて地盤に挿入するから、杭体1の強力な回転を、先端ビット2に確実に伝達できる必要がある。
そのために先端ビット2の内側に鋼材の塊を溶接して嵌合ブロック24として機能させる。
一方の杭体1の先端には切欠きを設けて嵌合溝23として機能させる。
この両者を嵌合することによって、杭体1の回転を確実に先端ビット2に伝達することができる。
なお、図の実施例とは反対に、杭体1に嵌合ブロック24を突設し、先端ビット2に嵌合溝23を形成しても同様の機能を達成できる。
【0014】
<6>遊び代。(図2
上記のように、杭体1の回転力は先端ビット2には伝達するが、その回転力は連結ピン3には伝達させないように構成する必要がある。
そのために、嵌合ブロック24と嵌合溝23の遊び代t1と、溶接キャップ23内径と連結ピン3との遊び代t3と、連結ピン3とピン挿入口22との遊び代t2との関係は次の通りに設定することが好ましい。
t1×2+t3<t2
【0015】
<7>撤去用具。(図4
前記の連結ピン3を撤去するために撤去用具4を使用する。
これは、杭体1の内径よりも小さい外径を備えた棒状体であり、短い棒状体を順次連続して延長が可能である。
棒状体には、鍔状にリング42を取り付け、そのリング42の外径を、杭体1の内径に近いものとして形成する。
その結果、撤去用具4の棒状体を、常に杭体1の内部の中心に位置させることができる。
撤去用具4の先端にはフック41を形成する。
このフック41を連結ピン3を係合して、撤去用具4に地上から回転を与えることによって、連結ピン3に捩じりを与え、切断し、あるいは強引に引き上げて引き抜くなどの作用を行うものである。
【0016】
<8>工程。
次に杭の挿入、撤去工程について説明する。(図5
【0017】
<9>地盤への挿入。
上記の鋼管杭を使用して、先端ビット2と一体化した杭体1に回転を与えてオーガー翼11で地盤を切りながら地盤中に挿入する。
この工程は従来のオーガー翼11を設けた杭の挿入工程と同様である。
【0018】
<10>分離。
挿入工程が終了したら、杭体1と先端ビット2と分離可能の状態とする。
そのために両者を貫通していた連結ピン3を撤去する。
連結ピン3の撤去のために例えば先端にフック41を形成した撤去用具4を使用する。
この撤去用具4を杭体1の内部に挿入し、先端のフック41に連結ピン3を係合して回転を与え、あるいは強引に引き抜き、あるいは切断して連結ピン3を撤去する。
連結ピン3を撤去すれば、杭体1と先端ビット2との一体化が解除され、分離が可能となる。
【0019】
<11>構造物の支持。
杭体1と先端ビット2が分離可能となっても、分離しているわけではないから鉛直方向の支持力には影響を与えない。
その状態で、例えば構造物の基礎杭として機能させ、その上端で構造物5の重量を受けて支持杭としての本来の目的を達成させる。
【0020】
<12>回転の確認。
時代の要請で構造物5の解体などが始まり、支持杭の存在が不要になった場合に支持杭を撤去する。
杭体1は長年地中に設置してあるから、場合によっては周囲の地盤により強固に締付けられていることも想定される。
そこで杭体1の頭部から注水し、さらに上端にキャップ6を設置して加圧注水する。
すると杭体1内部の水が周囲に流出して杭体1と地盤との摩擦を低減することができる。
その状態で、挿入時と反対方向への回転力を杭体1に与えて、杭体1の回転の可能性を確認する。
【0021】
<13>充填材の充填。
杭体1に、挿入時と反対の回転を与えれば、オーガー翼11によって杭体1は上方へ移動して引き抜くことができる。
その際に、中空の杭体1の頭部から杭体1内に砂、珪砂などの粒状体を充填材7として充填しつつ杭体1を挿入時とは反対方向に回転して引き抜く。
充填材7としては砂以外にセメント系固化材を使用することもできる。
杭体1は地上で適当な寸法に切断しつつ全杭体1を引き抜いて撤去作業を終了する。
その後の地中には充填材7の柱が形成されており、その跡に空隙を生じることはないから、周囲の地盤を緩めることがない。
【符号の説明】
【0022】
1:杭体
2:先端ビット
3:ピン
4:撤去用具
5:構造物
7:充填材
図1
図2
図3
図4
図5
図6