(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバを保持固定する光フェルールが知られている。
図9及び
図10を参照して、従来例に係る光フェルールについて説明する。
図9は従来例に係る光フェルールを備えた光コネクタの平面図である。
図10は従来例に係る光フェルールを備えた光コネクタの断面図(
図9中のYY断面図)である。
【0003】
光コネクタ500を構成する光フェルール510は、その後端側から被覆付きの光ファイバ521が挿入される挿入孔511と、光ファイバ521の被覆部先端から口出しされた裸ファイバ520を位置決めするための光ファイバ穴512と、裸ファイバ520及び光ファイバ521の被覆部先端付近を固定するために接着剤が充填される第1接着剤充填凹所513及び第2接着剤充填凹所514とを備えている。光ファイバ穴512によって裸ファイバ520が位置決めされた状態で、第1接着剤充填凹所513及び第2接着剤充填凹所514に液状の接着剤がそれぞれ充填され、その後UV照射等により硬化された接着剤531,532によって、裸ファイバ520及び光ファイバ521の被覆部先端付近が固定される。
【0004】
ここで、第1接着剤充填凹所513及び第2接着剤充填凹所514に接着剤を充填する際には、スポイドやディスペンサを用いて、上方より各凹所の開口部の中心を狙って液状の接着剤を滴下させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光フェルールが比較的大きな場合には、接着剤充填凹所の開口部も比較的大きくできるため、接着剤充填凹所内に的確に接着剤を滴下させることは容易である。MTコネクタの場合、上方側から見た光フェルールの寸法形状は、例えば、長さ8.0mm,幅6.4mmの長方形となり、接着剤充填凹所の開口部は、長さ2mm,幅3mmの長方形状となる。このような場合には、接着剤充填凹所内に的確に接着剤を滴下させることができる。
【0007】
これに対して、光フェルールが小型の場合には、接着剤充填凹所の開口部の寸法を大きくすることができない。例えば、当該開口部の寸法形状を、短手方向の長さが0.75mm〜1.0mm程度の細長い長方形としなければならない。このような場合には、接着剤充填凹所内に的確に接着剤を滴下させることが難しく、光フェルールの表面に接着剤が付着して盛り上がってしまうことがある。
図10には、第1接着剤充填凹所513と第2接着剤充填凹所514との間、及び第2接着剤充填凹所514よりも後端側において、光フェルール510の表面に接着剤533,534が付着して盛り上がってしまった場合を示している。
【0008】
このような場合には、接着剤533,534を硬化する前に拭き取る必要がある。その
ため、光コネクタ500を組み立てる工程において、接着剤の拭き取り作業が必要となり、手間が増えてしまい、製造コストを高める原因となっていた。
【0009】
本発明の目的は、光フェルールが小型の場合であっても、接着剤の拭き取り作業の手間を低減することのできる光フェルール及び光コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0011】
すなわち、本発明の光フェルールは、
後端側の入口から挿入した光ファイバをその長手方向と直交方向に位置決めする位置決め構造と、
前記位置決め構造の出口に形成され、前記位置決め構造に挿入した前記光ファイバの先端が前記出口から突出して前記出口と対向する内壁に当接され、その状態で前記光ファイバが充填した接着剤により接着固定される
、前記光ファイバの長手方向に短い第1の接着剤充填凹所と、
を備え、
前記第1の接着剤充填凹所には、当該光ファイバ長手方向両側の辺縁部だけに
、前記第1の接着剤充填凹所よりも浅く、且つ、前記光ファイバの直交方向の長さである幅が前記第1の接着剤充填凹所の幅よりも狭い接着剤収容凹所が
、前記第1の接着剤充填凹所と連続して設けられている
と共に、
前記光ファイバは、被覆部を有し、その被覆部先端から裸ファイバが口出しされ、
前記光ファイバが後端側から挿入される挿入孔と、
前記挿入孔と前記位置決め構造の入口との間にそれらに連通するように設けられ、挿入された前記光ファイバの被覆部先端が充填した接着剤により接着固定される、前記光ファイバの長手方向に短い第2の接着剤充填凹所を更に備え、
この第2の接着剤充填凹所にも、光ファイバ長手方向両側の辺縁部だけに、前記第2の接着剤充填凹所よりも浅く、且つ、幅が前記第2の接着剤充填凹所の幅よりも狭い接着剤収容凹所が、前記第2の接着剤充填凹所と連続して設けられており、
前記第1の接着剤充填凹所と前記第2の接着剤充填凹所の間で、前記第1の接着剤充填凹所の後端側に設けられた接着剤収容凹所と、前記第2の接着剤充填凹所の先端側に設けられた接着剤収容凹所とが繋がって形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、第1の接着剤充填凹所に接着剤を滴下する際に、第1の接着剤充填凹所における光ファイバ長手方向両側の辺縁部に接着剤がはみ出してしまっても、当該辺縁部には、はみ出した接着剤を収容可能な接着剤収容凹所が備えられているので、接着剤の盛り上がりを抑制できる。従って、接着剤の拭き取り作業を低減させることが可能となる。
また、第1の接着剤充填凹所の後端側に設けられた接着剤収容凹所と、第2の接着剤充填凹所の先端側に設けられた接着剤収容凹所とが繋がって形成されているため、光フェルールの構造を簡素化できる。これに伴い、光フェルールを成形する金型も簡素化できる。
【0013】
前記位置決め構造に位置決めされた前記光ファイバの軸線上に設けられた光路変換用のミラーを更に備えるとよい。
【0014】
このようにミラーによって光路を変換する機能を有する光フェルールにおいても上記発明を適用することができる。
【0017】
また、本発明の光コネクタは、
光ファイバと、
後端側の入口から挿入した前記光ファイバをその長手方向と直交方向に位置決めする位置決め構造と、
前記位置決め構造の出口に形成され、前記位置決め構造に挿入した前記光ファイバの先端が前記出口から突出して前記出口と対向する内壁に当接され、その状態で前記光ファイバが充填した接着剤により接着固定されている
、前記光ファイバの長手方向に短い第1の接着剤充填凹所と、
を備え、
前記第1の接着剤充填凹所には、当該光ファイバ長手方向両側の辺縁部だけに
、前記第1の接着剤充填凹所よりも浅く、且つ、前記光ファイバの直交方向の長さである幅が前記第1の接着剤充填凹所の幅よりも狭い接着剤収容凹所が
、前記第1の接着剤充填凹所と連続して設けられている
と共に、
前記光ファイバは、被覆部を有し、その被覆部先端から裸ファイバが口出しされ、
前記光ファイバが後端側から挿入される挿入孔と、
前記挿入孔と前記位置決め構造の入口との間にそれらに連通するように設けられ、挿入された前記光ファイバの被覆部先端が充填した接着剤により接着固定される、前記光ファイバの長手方向に短い第2の接着剤充填凹所を更に備え、
この第2の接着剤充填凹所にも、光ファイバ長手方向両側の辺縁部だけに、前記第2の接着剤充填凹所よりも浅く、且つ、幅が前記第2の接着剤充填凹所の幅よりも狭い接着剤収容凹所が、前記第2の接着剤充填凹所と連続して設けられており、
前記第1の接着剤充填凹所と前記第2の接着剤充填凹所の間で、前記第1の接着剤充填凹所の後端側に設けられた接着剤収容凹所と、前記第2の接着剤充填凹所の先端側に設けられた接着剤収容凹所とが繋がって形成されていることを特徴とする。
【0018】
なお、上記各構成は、可能な限り組み合わせて採用し得る。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、光フェルールが小型の場合であっても、接着剤の拭き取り作業の手間を低減することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。なお、以下の説明においては、光フェルールの方向に関して、光フェルールに固定される光ファイバの先端側を先端側(例えば、
図1において左側)、その反対側を後端側、接着剤を充填する際に鉛直方向の上向きとなる方向を上方(例えば、
図4において上方向)とする。
【0022】
(実施形態1)
図1〜
図5を参照して、本発明の実施形態1に係る光フェルール及びこれを備えた光コネクタについて説明する。
【0023】
<光コネクタの全体構成>
特に、
図1及び
図2を参照して、本発明の実施形態に係る光コネクタ100の全体構成について説明する。なお、
図1は本発明の実施形態1に係る光コネクタ100の外観図であり、同図(a)は先端側から見た図であり、同図(b)は平面図である。また、
図2は
図1(b)中のXX断面図である。
【0024】
光コネクタ100は、被覆付きの光ファイバ121の先端に光フェルール(光コネクタ光フェルール)110が取り付けられた構成である。光ファイバ121の先端側は被覆が除去されており、光ファイバ121の被覆部先端から裸ファイバ120が口出しされている。この裸ファイバ120の先端面は、裸ファイバ120が伸びる方向に対して垂直面とするのが望ましい。なお、図示の例では、光ファイバ素線の場合を示しているが、これに限らず、光ファイバ心線や光ファイバコードを適用することも可能である。また、裸ファ
イバ120の材料についても限定されるものではなく、石英系のものやアクリル樹脂などのプラスチック系のものなどを採用し得る。更に、裸ファイバ120の伝播モードについても限定されるものではなく、シングルモード及びマルチモードのいずれも採用し得る。
【0025】
<光フェルール>
特に、
図1〜
図3を参照して、光フェルール110について詳細に説明する。なお、
図3は裸ファイバの位置決め構造部分の一部断面図(裸ファイバの伸びる方向に対して垂直な断面図)である。
【0026】
光フェルール110は、光ファイバ121の先端に取り付けられ、他の光学部品と光接続するために設けられるものである。また、光フェルール110は、光コネクタ100において、光ファイバ121及び裸ファイバ120を位置決めするための役割を担っている。本実施形態に係る光フェルール110は、ポリカーボネート、変性ポリオレフィン、エポキシ系樹脂、ポリエーテルイミドなどの透明の樹脂材料によって構成される。このような樹脂材料を用いることにより、光フェルール110は射出成形によって成形することが可能である。なお、光フェルール110を構成する材料としては、光路となる部分は使用する光(可視光の他、紫外線や赤外線を使用してもよい)の波長に対して透明である必要があるが、その他の部位は当該波長に対して透明でなくても構わない。
【0027】
そして、光フェルール110は、その後端側から光ファイバ121が挿入される挿入孔111と、裸ファイバ120を光ファイバ長手方向と直交方向に位置決めするための光ファイバ穴112と、裸ファイバ120及び光ファイバ121の被覆部先端付近を固定するために接着剤が充填される第1の接着剤充填凹所113及び第2の接着剤充填凹所114とを備えている。
【0028】
挿入孔111は、光フェルール110の後端側から第2の接着剤充填凹所114に貫通するように設けられている。この挿入孔111の内径は、光ファイバ121の外径と略同径となるように設定されている。また、光ファイバ穴112は、第1の接着剤充填凹所113から第2の接着剤充填凹所114に貫通するように設けられている。この光ファイバ穴112の内径は、裸ファイバ120の外径と略同径となるように設定されている。そして、光ファイバ穴112の中心線と、挿入孔111の中心線は一致するように構成されている。
【0029】
そして、第1の接着剤充填凹所113は光ファイバ穴112の出口に形成されている。また、第2の接着剤充填凹所114は、挿入孔111(の出口)と光ファイバ穴112(の入口)との間に設けられている。
【0030】
ここで、本実施形態では、裸ファイバ120の位置決め構造として、断面円形の貫通孔によって構成される光ファイバ穴112を採用する場合を示したが(
図3(a)参照)、当該位置決め構造はこれに限られるものではない。例えば、
図3(b)に示すように断面がV字形状のV字溝112aや、特に図示はしないが断面がU字形状のU字溝の他、適宜の技術を採用し得る。なお、V字溝112a等を採用する場合には、
図3(b)に示すように、その上部に平板状の部材などにより構成されるカバー112bを設ける必要がある。以上のように、光ファイバ穴112や光ファイバ溝(V字溝やU字溝)に裸ファイバ120を挿入することによって、裸ファイバ120を光ファイバ長手方向と直交方向に位置決めすることができる。また、位置決め構造として、光ファイバ穴だけでなく、光ファイバ溝を採用できる点については、後述する他の実施形態でも同様である。
【0031】
光ファイバ121及びその先端の裸ファイバ120は、光フェルール110の後端側から、挿入孔111,光ファイバ穴112の順に、第1の接着剤充填凹所113の内壁(第
1接着剤凹所113における光ファイバ穴112の出口と対向する内壁)に突き当たる位置まで挿入される。上記の通り、挿入孔111及び光ファイバ穴112の中心線は一致しており、また、光ファイバ121及びその先端の裸ファイバ120の挿入過程においては、これらの内部の空気等は、それぞれ第1の接着剤充填凹所113及び第2の接着剤充填凹所114に排出される。そのため、光ファイバ121及びその先端の裸ファイバ120をスムーズに挿入することができる。
【0032】
そして、裸ファイバ120の先端面が第1の接着剤充填凹所113の内壁に突き当たり、光ファイバ穴112によって位置決めされた状態で、第1の接着剤充填凹所113及び第2の接着剤充填凹所114にそれぞれ液状の接着剤が充填される。その後、第1の接着剤充填凹所113及び第2の接着剤充填凹所114の内部で硬化された接着剤131,132によって、光ファイバ121及びその先端の裸ファイバ120は固定される。なお、第1の接着剤充填凹所113においては、裸ファイバ120が固定される。また、第2の接着剤充填凹所114においては、第2の接着剤充填凹所114を通過する光ファイバ121の被覆部先端付近が固定される。
【0033】
ここで、接着剤は光ファイバ穴112に浸透させてもよく、その場合には光ファイバ穴112内においても裸ファイバ120を固定させることができる。接着剤は光透過性のものが好ましく、特に、その屈折率が裸ファイバ120のコアの屈折率と同等であるのが好ましい。また、接着剤は光フェルール110及び光ファイバ121の被覆及び裸ファイバ120のそれぞれに対して接着力を高くできる性質のものが望ましい。接着剤の具体例としては、熱硬化性のエポキシ系のものやアクリル系のものの他、紫外線硬化型のものなどを挙げることができる。
【0034】
ここで、裸ファイバ120の先端面が第1の接着剤充填凹所113の内壁に突き当たったまま固定されるように、光ファイバ121を押圧しながら接着剤を充填するなどの工夫をするのが望ましい。ただし、裸ファイバ120の先端面が第1の接着剤充填凹所113の内壁と略平行であれば、これらの間に隙間があっても構わない。すなわち、隙間があった場合でも、この隙間内に充填硬化された接着剤が屈折率整合剤としての機能を発揮するので、光損失を抑制することができる。
【0035】
<接着剤の充填>
特に、
図1、
図4及び
図5を参照して、接着剤の充填に関する光フェルール110の構成について、より詳細に説明する。なお、
図4は光フェルール110に接着剤を充填する様子を示す図であり、光フェルール110については、
図1中のXX断面図を用いている。更に、
図5は光フェルール110に接着剤を充填した後の様子を示す図であり、光フェルール110については、
図1中のXX断面図を用いている。
【0036】
本実施形態に係る光フェルール110は小型であり、第1の接着剤充填凹所113及び第2の接着剤充填凹所114の開口部の寸法を大きくすることができない。すなわち、本実施形態に係る光フェルール110はおおよそ直方体であり、上方側から見た光フェルール110の寸法形状は、例えば、長さL0が6.0mm,幅W0が3.0mmの長方形となる(
図1参照)。そのため、第1の接着剤充填凹所113及び第2の接着剤充填凹所114の開口部は、
図1から明らかなように、光フェルール幅方向に細長く伸びる長方形状となっている。例えば、長さL1が0.75mm以上1.00mm以下、幅W1が0.75mm以上2.50mm以下の長方形となる。なお、本実施形態においては、第1の接着剤充填凹所113と第2の接着剤充填凹所114の寸法形状は同一となるように構成されている。
【0037】
第1の接着剤充填凹所113及び第2の接着剤充填凹所114に接着剤を充填する際に
は、
図4に示すように、ディスペンサ300(その他、スポイドなどでも可)を用いて、上方より開口部の中心を狙って、液状の接着剤130を滴下させる。すなわち、第1の接着剤充填凹所113及び第2の接着剤充填凹所114の各開口部を通じて、接着剤130を滴下させる。
【0038】
しかしながら、上記の通り、開口部は細長く伸びる長方形状であり、その短手方向の距離(つまり、長さL1)が、滴下された略球形(玉状)の接着剤130の直径と同程度である。そのため、第1の接着剤充填凹所113及び第2の接着剤充填凹所114内に的確に接着剤を滴下させることが難しい。すなわち、長方形状の開口部における短手方向(光ファイバ長手方向)の両側の辺縁部付近に接着剤が付着してしまう。
【0039】
そこで、本実施形態に係る光フェルール110においては、第1の接着剤充填凹所113及び第2の接着剤充填凹所114の各開口部の短手方向両側(光ファイバ長手方向両側)の辺縁部だけに、はみ出した接着剤を収容可能な接着剤収容凹所をそれぞれ設けている。以下、説明の便宜上、適宜、第1の接着剤充填凹所113の先端側の辺縁部に設けられたものを第1接着剤収容凹所115、第2の接着剤充填凹所114の後端側の辺縁部に設けられたものを第2接着剤収容凹所116、第1の接着剤充填凹所113と第2の接着剤充填凹所114との間に設けられたものを第3接着剤収容凹所117と称する。第3接着剤収容凹所117は、第1の接着剤充填凹所113の短手方向の辺縁部に設けられた接着剤充填凹所と、第2の接着剤充填凹所114の短手方向の辺縁部に設けられた接着剤充填凹所とを兼ねている。言い換えれば、隣り合う接着剤充填凹所である第1の接着剤充填凹所113及び第2の接着剤充填凹所114間に備えられる接着剤収容凹所は繋がった状態で形成されている。
【0040】
これら第1接着剤収容凹所115,第2接着剤収容凹所116及び第3接着剤収容凹所117は、開口部の中心を狙って液状の接着剤130を滴下した際に、接着剤130がはみ出し易い領域に形成されている。また、これらの接着剤収容凹所は、光フェルール110の上方側の表面に対して、その深さが0.03mm以上0.30mm以下の一定の深さを有する段差で構成されている。更に、これら接着剤収容凹所の容積(底面の表面積と上記深さとの積によって定められる)は、滴下する液状の接着剤130の量の誤差に応じて適宜設定されるのが望ましい。すなわち、滴下する液状の接着剤130が直接的に接着剤収容凹所に付着する場合だけでなく、第1の接着剤充填凹所113及び第2の接着剤充填凹所114の容積が小さく、滴下する接着剤130の量も安定させ難いことから、接着剤が上方にこぼれ出してしまうこともあり得る。そこで、接着剤収容凹所の容積は、接着剤が接着剤充填凹所の上方にこぼれ出した場合でも、接着剤が光フェルール110の上方側の表面よりも盛り上がってしまわないように、接着剤130の量の誤差に応じて設定されるのが望ましい。
【0041】
図5においては、液状の接着剤130を充填する工程において、一例として、第2接着剤収容凹所116及び第3接着剤収容凹所117に接着剤133,134がはみ出してしまった場合を示している。
【0042】
<本実施形態に係る光フェルール及び光コネクタの優れた点>
本実施形態に係る光フェルール110は、小型のため、第1の接着剤充填凹所113及び第2の接着剤充填凹所114の各開口部の寸法を大きくすることができず、その内部に的確に接着剤を滴下することが難しい。しかしながら、本実施形態に係る光フェルール110(及びこれを備えた光コネクタ100)においては、上記開口部を通じて接着剤130を滴下する際に、長方形状の開口部の短手方向の辺縁部に接着剤がはみ出してしまっても、当該辺縁部には、はみ出した接着剤を収容可能な接着剤収容凹所が備えられているので、接着剤の盛り上がりを抑制できる(
図5参照)。従って、接着剤の拭き取り作業を低
減させることが可能となる。これに伴い、製造コストを下げることも可能となる。
【0043】
また、本実施形態においては、隣り合う接着剤充填凹所である第1の接着剤充填凹所113及び第2の接着剤充填凹所114間に備えられる接着剤収容凹所は繋がった状態で形成される構成を採用している。従って、第1の接着剤充填凹所113側に設ける接着剤収容凹所と第2の接着剤充填凹所114側に設ける接着剤収容凹所とを別々にする場合と比べて、光フェルール110の構造を簡素化できる。従って、光フェルール110を成形する金型を簡素化できる。これに伴い、製造コストが高くなってしまうことを抑制することができる。
【0044】
(実施形態2)
図6には、本発明の実施形態2が示されている。上記実施形態1では、第1接着剤充填凹所と第2接着剤充填凹所の寸法形状は同一となるように構成される場合を示したが、本実施形態では、これらの寸法形状が異なる場合の構成について示す。その他の構成および作用については実施形態1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0045】
図6は本発明の実施形態2に係る光コネクタ100の断面図であり、
図1中のXX断面に相当する図である。本実施形態に係る光フェルール110も、上記実施形態1の場合と同様に、第1の接着剤充填凹所113a及び第2の接着剤充填凹所114aと、これらの各開口部の短手方向両側(光ファイバ長手方向両側)の辺縁部だけに設けられる第1接着剤収容凹所115a,第2接着剤収容凹所116a及び第3接着剤収容凹所117とを備えている。
【0046】
本実施形態の場合には、上記実施形態1の場合とは異なり、第1の接着剤充填凹所113aの寸法形状が、第2の接着剤充填凹所114aの寸法形状よりも小さく、容積が小さくなっている。
【0047】
実施形態1の中で説明した通り、滴下する接着剤の量を安定させるのが難しいため、接着剤充填凹所の上方に接着剤がこぼれ出してしまうことがある。通常、接着剤充填凹所の容積が小さいほど、接着剤がこぼれ出してしまい易い。
【0048】
そこで、本実施形態においては、容積が小さな第1の接着剤充填凹所113aの先端側に設けられる第1接着剤収容凹所115aの寸法形状を、第2の接着剤充填凹所114aの後端側に設けられる第2接着剤収容凹所116aよりも大きくして、容積をより大きくしている。こうすることで、接着剤が接着剤充填凹所の上方にこぼれ出した場合でも、接着剤が光フェルール110の上方側の表面よりも盛り上がってしまうことを好適に抑制することができる。
【0049】
(実施形態3)
図7には、本発明の実施形態3が示されている。上記実施形態1及び2では、接着剤充填凹所が2か所設けられる場合を示したが、本実施形態では、接着剤凹所が一か所にのみ設けられる場合の構成について示す。その他の構成および作用については実施形態1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0050】
図7は本発明の実施形態3に係る光コネクタ100の断面図であり、
図1中のXX断面に相当する図である。本実施形態に係る光フェルール110の場合には、上記実施形態1の場合とは異なり、光ファイバ穴112の先端側の一か所にのみ接着剤充填凹所113bが設けられている。そして、この接着剤充填凹所113bの開口部の短手方向両側(光ファイバ長手方向両側)の辺縁部だけに、はみ出した接着剤を収容可能な接着剤収容凹所1
18,119をそれぞれ設けている。
【0051】
以上の構成により、本実施形態に係る光フェルール110(及びこれを備えた光コネクタ100)においても、上記実施形態1の場合と同様の効果を得ることは言うまでもない。
【0052】
(実施形態4)
図8には、本発明の実施形態4が示されている。本実施形態においては、接着剤の盛り上がりを抑制するための構成を、光路変換コネクタに応用した場合を示す。すなわち、光を反射させるミラーを光フェルールに設けた場合の構成を示す。その他の基本的な構成及び作用については、上記各実施形態の場合と同一であるので、その説明は適宜省略する。
図8は本発明の実施形態4に係る光路変換コネクタ200の断面図であり、
図1中のXX断面に相当する図である。
【0053】
本実施形態に係る光路変換コネクタ200も、実施形態1の場合と同様に、光フェルール210と、光ファイバ221とを備えている。また、本実施形態に係る光ファイバ221の先端側は被覆が除去されており、光ファイバ221の被覆部先端から裸ファイバ220が口出しされている。更に、本実施形態に係る光フェルール210も、上記実施形態1の場合と同様に、挿入孔211、光ファイバ穴212、第1の接着剤充填凹所213、第2の接着剤充填凹所214、第1接着剤収容凹所215、第2接着剤収容凹所216及び第3接着剤収容凹所217を備えている。これらの構成及び作用については、上記実施形態1の場合と同様である。
【0054】
そして、本実施形態に係る光フェルール210の場合には、上記実施形態1の場合とは異なり、その先端面と上面との間に傾斜面218が設けられている。このように傾斜面218を設けたことにより、光フェルール210と外部の媒質(通常、空気)との屈折率差に基づき、光フェルール210の内部を通る光を、傾斜面218の内面にて反射させることが可能となる。すなわち、傾斜面218に光を反射させるミラー218aを形成させることが可能となる。これにより、位置決め固定された光ファイバ221(裸ファイバ220)の先端から出射された光をミラー218aによって反射して、光フェルール210の外部に配置された光学部品250に入射させることができる。この場合、光学部品250の一例として、フォトダイオードなどの受光素子を挙げることができる。また、光フェルール外部に配置された光学部品250から出射された光をミラー218aによって反射して、光ファイバ221(裸ファイバ220)に入射させることもできる。この場合、光学部品250の一例として、半導体レーザなどの発光素子を挙げることができる。
【0055】
以上のように、実施形態1で説明した接着剤の盛り上がりを抑制するための構成を、光路変換コネクタにも応用可能である。本実施形態に係る光フェルール210(及びこれを備えた光路変換コネクタ200)においても、上記実施形態1の場合と同様の効果を得ることは言うまでもない。
【0056】
(その他)
上記各実施形態においては、単心のコネクタまたは光路変換コネクタの場合を例にして説明したが、接着剤の盛り上がりを抑制するための構成を、複数本の光ファイバが固定される多心用のコネクタや光路変換コネクタにも適用可能である。