【実施例】
【0061】
実施例
I:材料及び方法
I.1.抗アドレノメデュリン受容体抗体の取得
免疫化
抗CRLRポリクローナル抗体は、配列番号1又は配列番号2の配列のペプチドをウサギに注射することにより生じさせた。抗RAMP2ポリクローナル抗体は、配列番号3又は配列番号4配列のペプチドをウサギに注射することにより作製した。抗RAMP3ポリクローナル抗体は、配列番号5又は配列番号6の配列のペプチドをウサギに注射することにより作製した。
配列番号1:SPEDSIQLGVTRNKIMTAQYEAYQK、
配列番号2:PDYFQDFDPSEKVTKIADQDGNWFRHPASNR、
配列番号3:KNYETAVQFAWNHYKDQMDPIEK、
配列番号4:RPYSTLRDALEHFAELFDLGFPNPLAER、
配列番号5:LERLPLAGKAFADMMGKVDVWK、
配列番号6:GFITGIHRQFFSNATVDRVHLE。
【0062】
動物を、フロイントアジュバントを補った種々のペプチドで免疫にした。その後、追加免疫注射を3週間毎に行った。
対照として用いる非免疫血清(免疫前)は、注射開始前に同じ動物から回収した。
【0063】
免疫グロブリン(IgG)の精製及びエンドトキシンのアッセイ
ポリクローナル抗体を、プロテインAに結合したセファロースビーズのゲル(GE Healthcare)に通し、100mMグリシン(pH3)で溶出することにより精製した。抗体中のエンドトキシンの存在は、LAL試験(Limulus Amebocyte Lysate, Chambrex)を用いて検証した。結果は、種々の抗体調製物及び免疫前血清におけるエンドトキシンの許容可能なレベル(<1.25U)を示す。免疫グロブリン濃度はPierce法により算出した(ビシンコニン酸(BCA)プロテインアッセイ;Smithら, Anal Biochem, 1985, 150:76-85)。
【0064】
I.2.細胞培養
A498及びBIZ系統は、それぞれDSMZ(Germany)及びGogusev博士の研究室(Necker Hospital-Paris)からのものである。BIZ系統は腎臓癌に由来する。これは、3p13-pter領域の欠失及び他の遺伝子改変、例えばder(1) dup(1)(q21 qter)×2、der(1) t(1;15)×2、der(13) t(1;13)×2を有する。その他の細胞系統は、American Type Culture Collection(Rokville MD, USA)からのものである。腫瘍又は生検からの細胞は、細胞タイプに応じた適切な培地中で(下記の表1を参照)、5% CO
2及び95%空気で構成される湿潤環境において37℃にて維持する。
【0065】
【表1】
【0066】
培地は2日毎に新しくする。細胞は、90%コンフルーエンスに達したら、Trisバッファー(Gibco)中トリプシン溶液(0.25%)で37℃にて数分間剥離させる。この酵素の作用を、血清含有培地を加えることにより停止させる。細胞を、75cm
2チューブ又はマルチウェルプレートのいずれかにおいて適切な培地中に播種する。
【0067】
I.3.結合実験によるアドレノメデュリンとその受容体との結合の特異性
U87神経膠腫瘍細胞を24ウェルプレートに播種し(40000細胞/ウェル)、MEM中で10%胎仔ウシ血清(FBS)の存在下に48時間維持する。これらを1×PBS中で洗浄し、放射性ヨウ素化アドレノメデュリン(Amersham Biosciences GE)を100000cpmの割合で含有するMEM 0.1% BSA(ウシ血清アルブミン)と、抗CRLR抗体と抗RAMP2抗体と抗RAMP3抗体とで構成される抗体混合物の存在下でプレインキュベートする。抗CRLR抗体、抗RAMP2抗体及び抗RAMP3抗体は、それぞれ配列番号2、3及び5の配列のペプチドを注射することにより、ウサギで作製した。周囲温度にて1時間のインキュベーション後、細胞を氷上に置き、4℃に維持した1×PBS-0.1% BSA溶液で2回濯ぐ。0.2N水酸化ナトリウムで細胞を可溶化する。Riastarガンマカウンタ(Packard Instrument Company)中で結合した
125I-AMをカウントする。
【0068】
I.4.インビボ研究
動物モデル
4〜5週齢の無胸腺(nu/nu) Balb/C雌性マウス及びC57BL/6マウス(Harlan, France)を用いた。これらは、滅菌条件下で、安定温度及び適切な飼料で維持する。インビボ実験は、動物の新たな環境への適応期間が経過して初めて開始する(受け入れ後10〜15日)。
【0069】
異種移植片の作製及び動物の処置
種々の腫瘍系統U87、A549及びHT29を、動物あたり2.5×10
6細胞の割合で無胸腺(nu/nu)マウスの側腹部に皮下注射した。動物を定期的に秤量する。腫瘍容積は、1週間に3回測定し、楕円体の式V=長さ×幅×厚さ×0.5236 mm
3に従って算出する。
【0070】
腫瘍が腫瘍容積500〜1000mm
3に達したら(細胞注射の12〜15日後)、動物を、330μg/動物の最終濃度の抗CRLR抗体、抗RAMP2抗体若しくは抗RAMP3抗体又は抗CRLR抗体と抗RAMP2抗体と抗RAMP3抗体とで構成される混合物で3回/週の割合の腫瘍内注射又は腹腔内注射により処置した。抗CRLR抗体、抗RAMP2抗体及び抗RAMP3抗体は、それぞれ配列番号2、3及び5の配列のペプチドを注射することによりウサギで作製した。対照として用いた動物群は、無関係の抗体又は免疫前血清で同様に処置する。
【0071】
動物を、処置の間の種々の時間(d2、d7、d11、d16及びd21)で犠牲にし、直ちに腫瘍を取り出し、フォルモール中で固定する。次いで、免疫組織化学研究用にパラフィンに包埋する。
21日間処置した1つの動物群に、麻酔下に、ビオチン化レクチン(ビオチン化リコペルシコン・エスクレンタム(Lycopersicon esculentum)(トマト)レクチン、CliniSciences)を注射する。動物を4%パラホルムアルデヒド溶液で灌流し、これにより組織をインビボで固定することができる。腫瘍及び幾つかの器官(脳、肺、心臓及び腎臓)を取り出し、組織学及び免疫組織化学研究用に液体窒素中で凍結させる。
【0072】
インビボ血管新生
3群のC57BL/6マウスに、成長因子を含まないMatrigelの溶液(BD Biosciences)を皮下移植する。
* 群(1) Matrigel単独。
* 群(2) 500ngのVEGF
165(R&D Systems, France)を含有するMatrigel。
* 群(3) 500ngのアドレノメデュリン(Bachem)を含有するMatrigel。
【0073】
48時間後に、群(3)の動物を3つの亜群に分け、これらを、抗CRLR抗体と抗RAMP2抗体と抗RAMP3抗体との混合物で1週間あたり3回腹腔内処置する。以下の亜群を区別する:亜群(1):処置動物(25μg/動物)、亜群(2):処置動物(100μg/動物)及び亜群(3):処置動物(500μg/動物)。
並行して、第4の亜群の動物を、500μg/動物の用量の免疫前血清(IgG)で処置する。
【0074】
21日間の処置後に、動物を無作為化に2つの亜群に分ける。第1の亜群では、動物を犠牲にし、Matrigel移植片を回収し、フォルモール中で固定し、その後組織学的分析用にパラフィン包埋する。第2の亜群の動物には麻酔下にデキストラン-FITC(Sigma, France)を注射し、30分後に犠牲にする。その後、Matrigel移植片をジスパーゼ(Roche)で処理し、5000rpmで4℃にて遠心分離する。上清を回収し、蛍光を492nm(励起)−512nm(放射)で読み取る。
【0075】
I.5.ウェスタンブロッティング分析
タンパク質抽出物の調製
U87神経膠腫瘍細胞を起源とする細胞ペレット及びヌードマウスに異種移植した神経膠腫瘍から又は膠芽腫に罹患した患者の腫瘍から得たホモジネートを、溶解バッファー(20mM HEPES、pH7.9、10mM NaCl、1mM MgCl
2、10%グリセロール、0.2mM EDTA、0.5mM DTT、1%プロテアーゼ阻害剤及び0.35% Triton X-100)中に取り、4℃にてホモジナイズする。12000×gにて10分間の遠心分離後、タンパク質を含む上清を回収し、タンパク質をPierce法により定量する。
【0076】
ウェスタンブロッティング
細胞溶解物(50μg)を、12%ポリアクリルアミドゲル電気泳動により、変性及び還元条件下で分離する。1.92Mグリシン及び1% SDSを含有する0.25M Tris塩基バッファー中での泳動の最後に、1時間30分間、1mA/cm
2にてタンパク質をPVDFメンブレン上に移す。メンブレンを1時間、周囲温度にてPBS-5%スキムミルク中で飽和させる。2回の洗浄(PBS-0.2% Tween 20)後、メンブレンを撹拌しながら一晩4℃にてPBS-1%スキムミルク中1/400に希釈した抗CRLR抗体、抗RAMP2抗体又は抗RAMP3抗体の存在下でインキュベートする。3回の洗浄(PBS-0.2% Tween 20)後、メンブレンを周囲温度にて1時間30分間ペルオキシダーゼ標識二次抗体(ECL kit, GE Healthcare, Amersham)とインキュベートする。シグナルを、化学発光キット(ECL kit, GE Healthcare, Amersham)を用いて可視化する。
【0077】
I.6.免疫組織化学的研究
種々の組織学的分析を、腫瘍の6μm凍結切片(クリオスタット)又は腫瘍のパラフィン包埋切片(ミクロトーム)で行った。この切片は、ビオチン化レクチンを注射したマウスの腫瘍について30〜50μmである。
【0078】
切片を、キシレン浴及び続く3種のエタノール浴(100%、95%及び75%)の後に脱パラフィン化する。PBSでの洗浄後、非特異部位をVectastainキット(Abcys)の血清で飽和させる。次いで切片を一次抗体と一晩インキュベートする。用いた種々の抗体は、抗第VIII因子(Dako、1:300)、抗CD31(Dako、1:40)、抗CD34(Zymed laboratories)、抗αSMA(Dako、1:100)、抗NG2(Chemicon、1:150)及び抗デスミン(Abcam、1:50)である。白血球及び単球/マクロファージは、抗CD45抗体(BD Pharmingen、1:40)及びMOMA-2抗体(Chemicon、1:25)を用いて検出した。
【0079】
アポトーシスにある細胞を標識するためには抗体Mab F7-26(AbCys)を用い、細胞増殖のためには抗Ki67抗体を用いた(Dako、1:80)。
【0080】
0.1Mリン酸バッファー(pH7.4)で3回洗浄後、切片を周囲温度にて1時間30分間Dapi(Invitrogen、1/30000)及び蛍光色素結合二次抗体(Invitrogen:1/250)とインキュベートする。ビオチン化レクチンを、ストレプトアビジン-Alexa蛍光二次抗体(Invitrogen、1/250)で可視化する。3回の洗浄後、切片をカバーグラスで覆う。Zeiss顕微鏡及びLeikaソフトウェアを用いて写真を撮影する。
【0081】
I.7.統計解析
全ての実験は3〜4回繰り返した。統計解析はAnova検定/S検定により行った。結果は、P<0.05から有意とみなす。
【0082】
II:結果
II.1.抗AMR抗体(抗CRLR抗体、抗RAMP2抗体及び抗RAMP3抗体の混合物)は、神経膠細胞の増殖をインビトロで阻害する
抗アドレノメデュリン受容体抗体の特徴付けの間に、これら抗体は用量依存的様式で腫瘍細胞を起源とする膜調製物への放射活性アドレノメデュリン「
125I-AM」の結合を阻害できることが示された(
図1A)。
これらインビトロ実験により、腫瘍細胞の増殖にアドレノメデュリン並びにその受容体CRLR、RAMP2及びRAMP3を関与させるオートクリン及び/又はパラクリンループの存在を示すことも可能になる(
図1B)。これらデータはまた、抗CRLR抗体、抗RAMP2及び抗RAMP3抗体の混合物がアドレノメデュリン受容体を認識し、結果として、これら細胞の増殖を同じ細胞により分泌されるアドレノメデュリンの作用に起因にしてブロックすることを示す。
【0083】
II.2.抗AMR抗体(抗CRLR抗体、抗RAMP2抗体及び抗RAMP3抗体の混合物)は、神経膠腫瘍成長をインビボで阻害する
細胞系統(U87)の皮下注射後に無胸腺マウスにおいて発生した腫瘍は、腫瘍微小環境の全ての構成成分を考慮した実験モデルである。
【0084】
腫瘍内抗体投与
抗CRLR抗体、抗RAMP2抗体及び抗RAMP3抗体の混合物の腫瘍内投与は、21日間の処置後に、異種移植片腫瘍成長の60〜70%阻害を誘導する(
図2A)。16日間の処置後、抗AMR抗体で処置した動物の腫瘍は色が淡く、半透明で血管形成が少ないように見えることが観察された(
図2B)。対照的に、対照動物は、高度に血管形成された大きい腫瘍を示す。インビボで観察されたこれら重要な効果は、腫瘍細胞増殖に対する作用に加えて、抗AMR抗体での処置が、腫瘍成長に必須の基本機序を妨害することを示唆する。
【0085】
腹腔内抗体投与
腫瘍成長に対する抗AMR抗体の治療効果をインビボで評価するために、抗AMR抗体を腹腔内投与した。
各8匹のマウスからなる4群を、対照IgG(330μg)及び抗AMR(100、200、330μg)で1週間あたり3回処置した(
図3A)。
【0086】
この結果は、抗AMR抗体での処置後の神経膠腫瘍成長の用量依存的阻害を示す。330μgの濃度を、同じ注射プロトコルで残りの研究に採用した。
腹腔内処置は、神経膠腫瘍成長の非常に大きな阻害及び対照IgG処置マウスと比較して抗AMR抗体処置マウスの遥かに長い生存を示す(
図3B)。
腹腔内処置もまた、神経膠腫瘍成長の非常に大きな阻害及び単一の抗CRLR抗体、抗RAMP2抗体又は抗RAMP3抗体処置マウスと比較して3つの抗CRLR抗体、抗RAMP2抗体及び抗RAMP3抗体の混合物での処置マウスの遥かに長い生存を示す(
図3C)。
【0087】
II.3.抗AMR抗体(抗CRLR抗体、抗RAMP2抗体及び抗RAMP3抗体の混合物)は、インビボで腫瘍血管形成を不安定化する
抗AMR(抗CRLR/抗RAMP2/抗RAMP3)抗体での処置後の腫瘍退縮に関与する機構をよりよく理解するために、腫瘍切片で組織学的分析を行った。CD31又はvon Willebrand(vWF)因子のような内皮マーカーの使用は、血管サイズの減少をもたらす血管構造の著しい組織崩壊又は不安定化さえ示す。
【0088】
ビオチン化レクチン(内皮細胞に対して高親和性を有するマーカー)を、犠牲の15分前にマウスに注射することにより、対照IgG処置動物における安定で機能的な血管形成が示される一方、抗AMR抗体処置動物では血管組織崩壊が観察された。興味深いことに、周皮細胞マーカー(NG2、デスミン又はα-SMA)を用いる免疫組織化学研究は、対照腫瘍と比較して、処置腫瘍の血管周囲の周皮細胞の非常に顕著な減少又は消失さえ示す(
図4A)。2つの動物群間での血管形成及び細胞密度(周皮細胞と比較した内皮細胞)の定量は、処置腫瘍で顕著な減少を示す(
図4B)。よって、この実験は、アドレノメデュリンが、周皮細胞による血管の被覆を調節すること及び抗AMR抗体が血管で周皮細胞の動員をブロックできることを示唆する。このことは、抗AMR抗体が、腫瘍血管形成の退縮を、おそらく支持細胞である周皮細胞の喪失後の血管の不安定化を介して、誘導することを明らかにする。
【0089】
抗AMR抗体処置マウス及び対照IgG処置マウスの種々の群における、内皮/周皮細胞の同時標識による種々の器官(腎臓、心臓、肺など)の血管形成の免疫組織化学分析は、非腫瘍血管構造に対して処置の影響がないことを示す(
図4C)。この結果は、抗AMR抗体が、マウスの種々の器官の血管形成には影響することなく腫瘍にのみ作用することを明らかにする。
【0090】
周皮細胞は、細胞外マトリクス合成又は分解に対する効果により血管新生プロセスに寄与し、そして基底膜組立てに参加することにより血管壁の安定性に寄与し、また内皮細胞の増殖及び遊走を抑制するパラクリン調節因子であるようである(Sato及びRifkin, J Cell Biol., 1989, 109:309-15;Benjaminら, Development, 1998, 125:1591-8)。血管の樹状構造は、血流により、そして内皮細胞、周皮細胞、平滑筋細胞及び細胞外マトリクスの間に確立される相互作用によっても制御され安定化される(Allt及びLawrenson, Cells Tissues Organs, 2001, 169:1-11)。アポトーシスの存在を示すMab F7-26の使用は、内皮から剥離した内皮細胞が、抗AMR抗体での処置により引き起こされた周皮細胞不在に起因して、アポトーシスを受けることを示す(
図5A)。この同じ標識化が、処置腫瘍に存在する希な周皮細胞について観察された(
図5B)。他方で、処置16日目の全般的な細胞増殖の標識化は、対照腫瘍と比較して、処置腫瘍で25〜35%の減少しか示さない(
図5C)。この結果は、周皮細胞動員に対するアドレノメデュリンの潜在的な役割を強調する。よって、この細胞タイプは、腫瘍血管形成の重要な基本的な構成成分であることを意味している。
【0091】
II.4.抗AMR抗体(抗CRLR、抗RAMP2及び抗RAMP3抗体の混合物)での腹腔内処置の影響
C57BL/6マウスに皮下注射された、成長因子を含まずアドレノメデュリンのみが補われたMatrigelを用いるインビボ血管新生試験は、種々の細胞タイプの動員に対するこの因子の存在の影響を研究するための良好なモデルである。組織学的切片をヘマトキシリン/エオシンで染色することにより、因子を有さないMatrigelと比較して、アドレノメデュリン含有Matrigel内の細胞浸潤が示される。更に、細胞密度は、VEGF含有Matrigelと比較した場合に、より高い(
図6A)。循環細胞の動員に対する抗AMR抗体(抗CRLR/抗RAMP2/抗RAMP3)の役割を評価するために、これら抗体を用いる腹腔内処置の影響を試験した。結果は、抗AMR抗体での処置が、Matrigel移植片における循環細胞の動員の減少を、用量依存的様式で誘導することを示す(
図6A及びB)。抗AMR抗体の特異性は、免疫前IgGを用いる処置との比較で示される。
【0092】
II.5.インビボでの血管新生プロセスに対するアドレノメデュリンの影響
アドレノメデュリンを随意に含有するMatrigelを皮下に与えたC57BL/6マウスにおける、犠牲30分前のデキストラン-FITCの注射は、インビボでの血管新生に対するアドレノメデュリンの影響の研究を可能にする。蛍光FITCアッセイは、対照と比較して、アドレノメデュリン含有Matrigel中の大量のデキストランを示す。このことは、アドレノメデュリンの効果の下で機能的血管新生が確立されたことを証明している(
図7A)。FITC-デキストランの量は、抗AMR抗体処置マウスにおいて用量依存的様式で、対照IgG処置マウスと比較して減少する。
【0093】
血管の生成は、幾つかの細胞タイプを使用するプロセスである:血管壁を被覆する内皮細胞;これら血管壁を安定化する周皮細胞;及び循環細胞(炎症細胞、内皮細胞前駆体及び間葉系細胞)。内皮細胞及びその前駆体(抗CD31、抗FvIII、抗CD34)、周皮細胞(抗αSMA、抗デスミン、抗NG2)並びに炎症細胞(抗CD45及びMOMA-2)の種々のマーカーを用いる標識化により、アドレノメデュリンの存在により誘引される種々の細胞タイプを同定することができた(
図7B)。抗CRLR抗体、抗RAMP2抗体及び抗RAMP3抗体での標識化は、アドレノメデュリン受容体を発現し、その結果、アドレノメデュリンのパラクリン効果の下でMatrigel中に動員された細胞集団を識別することを可能にした。他方で、この結果はまた、この受容体を発現せず、アドレノメデュリンとの接触後に種々の細胞により放出され得る他の因子の効果の下でMatrigel中におそらく動員される細胞の存在を明らかにする。
【0094】
この結果は、アドレノメデュリンが、その受容体を介する腫瘍内新血管新生の種々のステップ、例えば細胞の遊走、浸潤及び分化にオートクリン/パラクリン効果を介して関与することを示す。よって、アドレノメデュリン受容体(AMR)のブロックは、腫瘍成長を阻害するのに十分であるようである。
【0095】
II.6.種々の腫瘍モデルに対する抗AMR抗体(抗CRLR抗体、抗RAMP2抗体及び抗RAMP3抗体の混合物)での処置の影響
得られた種々の結果は、腫瘍血管新生に関与する因子としてアドレノメデュリンを規定する。
抗癌療法を確立することを狙いとして、他の腫瘍モデル、例えば肺癌、結腸癌、腎臓癌、胸部癌及び皮膚癌に対する抗AMR(抗CRLR/抗RAMP2/抗RAMP3)抗体での処置の影響を検証した。
【0096】
種々の腫瘍系統、肺癌についてはA549、結腸癌についてはHT29、腎臓癌についてはA498、Caki 1、2及びBIZ、胸部癌についてはMDA-MB-231並びに皮膚癌についてはIGRのタンパク質抽出物について行ったウェスタンブロッティング法による分析は、アドレノメデュリン受容体を構成する種々のタンパク質CRLR、RAMP2及びRAMP3の存在を示す(
図8A)。
【0097】
これら種々の系統の増殖に対する抗AMR(抗CRLR/抗RAMP2/抗RAMP3)抗体の影響のインビトロ研究は、腎臓系統BIZにおける6日間の処置の後に70μg/mlにて70%に達する増殖阻害を示す(
図8B)。その他の系統、すなわちA549、IGR-37及びMDA-MB231に関しては、細胞増殖の阻害は、同じ抗体濃度でおよそ30%である(
図8B)。更に、この結果は、BIZ系統のインビトロ増殖が、研究したその他の系統と比較して、アドレノメデュリンの存在を必要とすることを示す。
【0098】
研究を、ヌードマウス(Balb-c nu/nu)においてインビボで継続した。このために、異所性異種移植を皮下に作製した。
HT29(
図8C)及びA549(
図8D)系統を異種移植したマウスにおける抗AMR抗体での腹腔内処置は、免疫前血清で処置したマウスと比較して、腫瘍増殖のかなりの阻害を示す。この最初の知見は、抗AMR抗体での処置の良好な全身耐性を示唆する(処置マウスの体重曲線及び全身状態)。処置マウスの腫瘍は、対照腫瘍より容積が3倍小さく、血管形成も少ないようである。この結果は、アドレノメデュリンが悪性腫瘍の発達で果たしているにちがいない重要な役割を示す。内皮細胞について第VIII因子及びCD31での、周皮細胞についてα-SMA及びデスミンでの標識による結腸異種移植片の切片における予備的免疫組織化学研究は、腫瘍血管新生に対する抗AMR抗体の非常に本質的な効果を示す。
【0099】
II.7.同所性に発達させた異種移植片における神経膠腫瘍成長に対する抗AMR(抗CRLR/抗RAMP2/抗RAMP3)抗体の影響
各10匹のマウスからなる3群に1百万のU87細胞を脳内注射した。10日後、疾患のために衰弱したマウスは、細胞の注射を受けなかった正常マウス(20g±2)と比較して体重の減少を経験する(14g±2)。マウスを幾つかの群に分け、1週間に3回腹腔内に330μgの対照IgG又は抗アドレノメデュリン(抗AM)抗体又は抗アドレノメデュリン受容体(抗AMR)抗体を与える(
図9A)。
【0100】
対照IgGを注射したマウスでは、生存は処置後5〜10日であり、体重が目覚ましく低下した(
図9B)。
他方で、抗AM抗体又は抗AMR抗体で処置したマウス群では、処置の数日後にマウスの60〜70%で体重増加が観察され、生存は230日を超えて延長した(
図9B)。
最後に、処置マウスでは、動物を犠牲にした後の器官に転移は観察されなかった。