特許第5762297号(P5762297)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大八化学工業株式会社の特許一覧

特許5762297環状アルキレンホスホロハリダイトおよび環状リン酸エステルの製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5762297
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】環状アルキレンホスホロハリダイトおよび環状リン酸エステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/6574 20060101AFI20150723BHJP
【FI】
   C07F9/6574 Z
【請求項の数】8
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2011-534204(P2011-534204)
(86)(22)【出願日】2010年9月21日
(86)【国際出願番号】JP2010066322
(87)【国際公開番号】WO2011040287
(87)【国際公開日】20110407
【審査請求日】2013年8月16日
(31)【優先権主張番号】特願2009-229622(P2009-229622)
(32)【優先日】2009年10月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000149561
【氏名又は名称】大八化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼田 利也
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼田 左希子
【審査官】 水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/049011(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/049010(WO,A1)
【文献】 特開昭58−109494(JP,A)
【文献】 特開平02−273688(JP,A)
【文献】 特開平08−176172(JP,A)
【文献】 特開平10−101687(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/108736(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/032277(WO,A1)
【文献】 国際公開第01/004204(WO,A1)
【文献】 特開平06−321974(JP,A)
【文献】 特開2005−023472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 9/6574
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】
(式中、R0は、炭素数2〜20の直鎖状もしくは分岐鎖状または炭素数3〜20の環状のアルキレン基であり、Xは、ハロゲン原子である)
で表される環状アルキレンホスホロハリダイトを、一般式(V):
R(OH)n (V)
[式中、nは1〜4の整数であり、Rは、次式
【化3】
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、炭素数1〜8の直鎖状もしくは炭素数3〜8の分岐鎖状のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状もしくは炭素数3〜4の分岐鎖状のアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜12のアリール基であるか、またはR1とR2はそれらが結合する酸素原子およびリン原子と一緒になって環状構造を形成する)
で表される置換基を有していてもよい、炭素数1〜8の脂肪族残基もしくは炭素数6〜18の芳香族残基である]
で表されるヒドロキシル基を有する化合物と反応させて、一般式(VI):
【化4】
(式中、R0、Rおよびnは、上記と同義である)
で表される反応生成物を得、さらに酸化させて、一般式(VII):
【化5】
(式中、R0、Rおよびnは、上記と同義である)
で表される、90.0%以上の純度および750ppm以下のハロゲン含有量を有する環状リン酸エステルを得ることからなり、
前記一般式(I)の環状アルキレンホスホロハリダイトが、一般式(II):
HO−R0−OH (II)
(式中、R0は、上記と同義である)
で表されるアルキレングリコール化合物と、
一般式(III):
PX3 (III)
(式中、Xは、上記と同義である)
で表される三ハロゲン化リンとを、反応系内に前記三ハロゲン化リンが前記アルキレングリコール化合物よりも過剰に存在する条件下で反応させて得られることからなり、
前記一般式(III)の三ハロゲン化リンと前記一般式(II)のアルキレングリコール化合物との反応が、前記反応系内に前記三ハロゲン化リンの使用量の全量を加え、次いで前記アルキレングリコール化合物を徐々に加えながら反応させることからな
環状リン酸エステルの製造方法。
【請求項2】
前記一般式(V)のヒドロキシル基を有する化合物が、エタノール、プロパノール、ブタノール、フェノール、クレゾール、キシレノール、フェニルフェノール、ジブチル(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ホスホネート、ジブチルヒドロキシメチルホスホネート、エチレングリコール、1,3−プロパンジオールまたは1,4−ブタンジオールである請求項1に記載の環状リン酸エステルの製造方法。
【請求項3】
前記一般式(VII)の環状リン酸エステルが、
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
または
【化10】
である請求項1または2に記載の環状リン酸エステルの製造方法。
【請求項4】
前記一般式(III)の三ハロゲン化リンが、前記一般式(II)のアルキレングリコール化合物1モルに対して0.99〜1.15モルの割合で用いられる請求項1〜3のいずれか1つに記載の環状リン酸エステルの製造方法。
【請求項5】
前記一般式(III)の三ハロゲン化リンと前記一般式(II)のアルキレングリコール化合物との反応が、温度−5〜60℃の範囲で行われる請求項1〜4のいずれか1つに記載の環状リン酸エステルの製造方法。
【請求項6】
前記一般式(II)のアルキレングリコール化合物が、一般式(IV):
【化2】
(式中、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜5の直鎖状もしくは炭素数3〜5の分岐鎖状のアルキル基である)
で表される1,3−プロパンジオール化合物である請求項1〜5のいずれか1つに記載の環状リン酸エステルの製造方法。
【請求項7】
前記一般式(II)のアルキレングリコール化合物が、ネオペンチルグリコールまたは2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールである請求項1〜6のいずれか1つに記載の環状リン酸エステルの製造方法。
【請求項8】
前記一般式(III)の三ハロゲン化リンが、三塩化リンまたは三臭化リンである請求項1〜7のいずれか1つに記載の環状リン酸エステルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素原子に直結するハロゲンを有する化合物の含有量が極めて少ない環状アルキレンホスホロハリダイトの製造方法、およびそれにより得られた環状アルキレンホスホロハリダイトを原料として用いた、ハロゲン含有量が極めて少ない環状リン酸エステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハロゲンは一般に環境有害物質として知られており、工業材料のノンハロゲン化が進められている。特に、OA機器の材料分野ではノンハロゲン化の要求が高く、パソコン、プリンターなどの筐体のほとんどにおいてノンハロゲン化が進められている。
また、ノンハロゲンの基準を独自に規格化している材料分野もあり、例えば、社団法人日本電子回路工業会は、プリント基板におけるノンハロゲンを「臭素900ppm以下、塩素900ppm以下、臭素と塩素合計1500ppm以下」と定めている(JPCA−ES01−2003)。
【0003】
一方、発泡ポリウレタンフォームは、他の樹脂材料よりも難燃化が難しく、難燃剤としてより効果の高いハロゲン系化合物や含ハロゲンリン酸エステル化合物などがこれまで使用されてきた。しかし、昨今のノンハロゲン化への動きによって自主的にノンハロゲン系難燃剤へとシフトする傾向が見られる。
ノンハロゲン系難燃剤としては、添加した樹脂材料中のハロゲン含有量が上記のプリント基板のノンハロゲンの定義と同等かそれよりも少ないことが要求される。
【0004】
ところで、リン酸エステルは、難燃剤や可塑剤などの樹脂用添加剤、医薬品などの原料または中間体として、化学工業における幅広い分野において有用な化学物質として知られている。
特に、環状アルキレン骨格を有するリン酸エステルは、その特徴的な構造から難燃剤として優れた性能を発揮することが知られている。例えば、特開平11−181428号公報(特許文献1)には、ホスホリナン骨格を有するリン酸エステルがポリウレタン樹脂用難燃剤として有用であることが記載されている。
【0005】
また、環状アルキレン骨格を有する亜リン酸エステル類は、上記のリン酸エステルの中間体であるだけでなく、樹脂や種々の化合物の安定剤として広く使用されており、一般的に化学工業における幅広い分野において有用な化学物質である。
例えば、特開平5−239264号公報(特許文献2)には、5,5−ジメチル−2−ノニルフェノキシ−1,3,2−ジオキサホスホリナンがセルロースエステル樹脂の安定剤として使用できること、エステル樹脂のポリマーの変色や重合度の低下による物理的性質の劣化を効果的に防止できることが記載されている。
【0006】
環状アルキレンホスホロハリダイトは、上記のような環状アルキレン骨格を有するリン酸エステルや亜リン酸エステル類を製造する際の中間体として使用され、一般的に三ハロゲン化リンとアルキレングリコール化合物との反応により得られる。
例えば、特開平2−273688号公報(特許文献3)には、氷冷下でネオペンチルグリコールに三塩化リンを添加し反応させて、5,5−ジメチル−2−クロロ−1,3,2−ジオキサホスホリナンを得ることが記載されている。
【0007】
国際公開WO2006/049010号パンフレット(特許文献4)には、2つの置換基を有するホスファイトとカルボニル化合物とを、窒素含有塩基性化合物と金属ハロゲン化物の共存下で付加反応させることによるアルコール性ヒドロキシル基を有するホスホネートの製造方法が記載され、国際公開WO2006/049011号パンフレット(特許文献5)には、アルコール性ヒドロキシル基を有するホスホネートとジ置換ホスホロハリダイトとを、窒素含有塩基性化合物の存在下で脱ハロゲン化水素反応させ、得られた反応生成物を、例えば過酸化水素を用いて酸化させることによるホスフェート−ホスホネート結合を有するリン化合物の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−181428号公報
【特許文献2】特開平5−239264号公報
【特許文献3】特開平2−273688号公報
【特許文献4】国際公開WO2006/049010号パンフレット
【特許文献5】国際公開WO2006/049011号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献3に記載されているネオペンチルグリコールと三塩化リンとの反応で得られたハリダイト化合物を用いてリン酸エステルを合成すると、リン酸エステル中のハロゲン濃度が高くなり、最終製品のハロゲン量削減(ノンハロゲン化)に不都合を生じる。
本発明者らは、リン酸エステル中のハロゲン濃度が高くなる原因について鋭意研究を行った結果、ハリダイト化合物の製造においてハロゲン化アルコール(炭素原子に直結するハロゲンを有する化合物)が多く副生していること、およびハリダイト化合物を用いてリン酸エステルを製造するときに、ハロゲン化アルコールが、精製工程での除去が困難なハロゲン化リン酸エステルなどの化合物に変化することを見出した。しかし、ハリダイト化合物を精製してハロゲン化アルコールを除去するには、工程が煩雑になる上に、収率の低下を招くおそれがある。
【0010】
また、ハロゲン化アルコールと同時にホスファイトが副生し、そのホスファイトは、空気酸化などにより酸性リン酸エステルとなり、製品品質の低下や収率の低下を招くおそれがある。
しかしながら、特許文献3では、上記のようなハロゲン化アルコールの副生やリン酸エステル中のハロゲン濃度について問題とされておらず、その記載もない。
【0011】
そこで、本発明は、炭素原子に直結するハロゲンを有する化合物の含有量が極めて少ない環状アルキレンホスホロハリダイトの製造方法、およびそれにより得られた環状アルキレンホスホロハリダイトを原料として用いた、ハロゲン含有量が極めて少ない環状リン酸エステルの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、環状アルキレンホスホロハリダイトの製造において、三ハロゲン化リンとアルキレングリコール化合物との反応中に、反応系内に三ハロゲン化リンが過剰に存在すれば、炭素原子に直結するハロゲンを有する化合物の生成を抑制できること、およびその条件により製造した環状アルキレンホスホロハリダイトを中間原料に用いれば、ハロゲン含有量が極めて少ない環状リン酸エステルを製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
かくして、本発明によれば、一般式(II):
HO−R0−OH (II)
(式中、R0は、炭素数2〜20の直鎖状もしくは分岐鎖状または炭素数3〜20の環状のアルキレン基である)
で表されるアルキレングリコール化合物と、
一般式(III):
PX3 (III)
(式中、Xは、ハロゲン原子である)
で表される三ハロゲン化リンとを反応させて、一般式(I):
【0014】
【化1】
【0015】
(式中、R0およびXは、上記と同義である)
で表される環状アルキレンホスホロハリダイトを得るにあたって、
反応系内に前記三ハロゲン化リンが前記アルキレングリコール化合物よりも過剰に存在する条件下で、前記三ハロゲン化リンと前記アルキレングリコール化合物とを反応させる環状アルキレンホスホロハリダイトの製造方法が提供される。
また、本発明によれば、上記の環状アルキレンホスホロハリダイトを原料として用いて環状リン酸エステルを得る環状リン酸エステルの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、炭素原子に直結するハロゲンを有する化合物の含有量が極めて少ない環状アルキレンホスホロハリダイトの製造方法、およびそれにより得られた環状アルキレンホスホロハリダイトを原料として用いた、ハロゲン含有量が極めて少ない環状リン酸エステルの製造方法を提供することができる。
すなわち、本発明の製造方法により得られた環状アルキレンホスホロハリダイトを中間体として用いれば、ハロゲン含有量が極めて少なく、各種工業材料の分野でノンハロゲン化合物と呼ぶにふさわしい環状リン酸エステルを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の環状アルキレンホスホロハリダイトの製造方法は、一般式(II)で表されるアルキレングリコール化合物と、一般式(III)で表される三ハロゲン化リンとを反応させて、一般式(I)で表される環状アルキレンホスホロハリダイトを得るにあたって、反応系内に前記三ハロゲン化リンが前記アルキレングリコール化合物よりも過剰に存在する条件下で、前記三ハロゲン化リンと前記アルキレングリコール化合物とを反応させることを特徴とする。
すなわち、本発明の特徴は、反応中に三ハロゲン化リンが過剰に存在する反応系でアルキレングリコール化合物と反応させることにあり、これにより炭素原子に直結するハロゲンを有する化合物の副生を抑制でき、その含有量が極めて少ない環状アルキレンホスホロハリダイトが得られる。これを中間原料として用いれば、不純物が少なく、ハロゲン含有量が極めて少ない環状リン酸エステルを得ることができる。
以下、本発明について、反応の順に説明する。
【0018】
(環状アルキレンホスホロハリダイトの製造)
環状アルキレンホスホロハリダイトの製造では、反応系内に三ハロゲン化リンがアルキレングリコール化合物よりも過剰に存在する条件下で、両者を反応させる。
この条件は、必ずしも反応の開始から終了まで持続させる必要はないが、反応の開始から終了までの時間において、反応系内の三ハロゲン化リンがアルキレングリコール化合物よりも過剰に存在する期間が長い程、炭素原子に直結するハロゲンを有する化合物の副生が抑えられる。したがって、反応開始から反応終了間際まで、三ハロゲン化リンが過剰である状態を持続させることが好ましく、反応開始から反応終了まで終始、三ハロゲン化リンが過剰である状態を持続させることがより好ましい。
例えば、反応系内に三ハロゲン化リンの使用量の全量を加え、次いでアルキレングリコール化合物を徐々に加えながら両者を反応させる方法、反応系内に常に三ハロゲン化リンが過剰に存在するように、両者を加えながら反応させる方法などが挙げられ、作業性などの点で前者が好ましい。
【0019】
本発明で使用されるアルキレングリコール化合物は、一般式(II):
HO−R0−OH (II)
(式中、R0は、炭素数2〜20の直鎖状もしくは分岐鎖状または炭素数3〜20の環状のアルキレン基である)
で表される。
環状アルキレンホスホロハリダイトの形成し易さおよび環構造形成後の安定性の点から、直接環状構造形成に関与する部分の炭素数が2〜4のアルキレングリコール類が好ましく、エチレングリコールおよび1,3−プロパンジオール類がより好ましく、一般式(IV):
【0020】
【化2】
(式中、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜5の直鎖状もしくは炭素数3〜5の分岐鎖状のアルキル基である)
で表される、直鎖部分の炭素数が3の1,3−プロパンジオール類が特に好ましい。
【0021】
アルキレングリコール化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジプロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジブチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジペンチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジヘキシル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジヘプチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジオクチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−ペンチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ペンチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ペンチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−ペンチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロペンタンジオールなどが挙げられる。
【0022】
これらの中でも、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジプロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジブチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジペンチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールが好ましく、ネオペンチルグリコールが特に好ましい。
これらのアルキレングリコール化合物は、単独で使用してもよく、または2種類以上を併用してもよい。
【0023】
本発明で使用される三ハロゲン化リンは、一般式(III)
PX3 (III)
(式中、Xは、ハロゲン原子である)
で表される。
Xとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられる。
三ハロゲン化リンとしては、コスト面や入手し易さの点から、三塩化リン、三臭化リンが好ましく、三塩化リンが特に好ましい。
【0024】
三ハロゲン化リンは、アルキレングリコール化合物1モルに対して0.99〜1.15モル、好ましくは1〜1.1、より好ましくは1〜1.05の割合で用いられる。
三ハロゲン化リンが0.99モル未満である場合、アルキレングリコール化合物が反応系内で過剰となる期間が生じて、ハロゲン化アルコールのような炭素原子に直結するハロゲンを有する化合物が多量に生成するおそれがある。一方、三ハロゲン化リンが1.15モルを超える場合、三ハロゲン化リンが残存し、結果として環状アルキレンホスホロハリダイトの純度が低下するおそれがある。
【0025】
また、反応に使用する装置によっては反応時に、非凝縮性ハロゲン化水素ガスの発生により未反応の三ハロゲン化リンが同時に揮発してロスすることもある。その場合には、三ハロゲン化リンのロス量を算出(想定)し、上記の割合になるように三ハロゲン化リンを添加してもよい。
【0026】
反応温度は、温度−5〜60℃の範囲が好ましく、0〜45℃の範囲がより好ましく、0〜20℃の範囲がさらに好ましく、5〜20℃の範囲が特に好ましい。
反応温度が60℃を超える場合、三ハロゲン化リンの揮発量が多くなり、またハロゲン化アルコールが生成し易くなるおそれがある。一方、反応温度が−5℃未満である場合、三ハロゲン化リンとアルキレングリコール化合物の反応速度が著しく低下するおそれがある。
【0027】
本発明の製造方法によれば、反応時間は、ハロゲン化アルコールの生成に与える影響が小さく、安全に反応が進行するように適宜設定すればよい。
また、反応は、三ハロゲン化リンや反応生成物などの加水分解や酸化を防止するために、不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどが挙げられ、コストや作業性の点で窒素ガスが好ましい。
反応中には反応混合物の攪拌などを適宜行えばよい。
【0028】
反応により副生するハロゲン化水素の濃度が高くなると、生成した環状アルキレンホスホロハリダイトの分解を引き起こし、ハロゲン化アルコールが副生されることがあるので、副生したハロゲン化水素を順次反応系外に排出させるのが好ましい。
このためには、例えば、塩酸回収装置(水スクラバーを連結したコンデンサー)を備えた反応系で反応を行えばよい。
【0029】
原料の追加終了後、未反応の三ハロゲン化リンとアルキレングリコール化合物を完全に反応させる必要がある。反応の進行は、系外へ排出されるハロゲン化水素量、系内のハロゲン量、系内の組成などにより確認することができる。反応が完結し難い場合には、昇温あるいは減圧などにより反応を調整すればよい。
【0030】
この反応工程は、必要に応じて有機溶剤の存在下で行ってもよい。
有機溶剤は、反応原料(三ハロゲン化リンおよびアルキレングリコール化合物)および反応生成物に不活性な溶剤であれば特に限定されない。
具体的には、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレンおよび石油スピリットなどの炭化水素系溶剤、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼンおよびジクロロベンゼンなどの後の工程で除去可能なハロゲン含有炭化水素系溶剤、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、1,4−ジオキサンおよびエチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル系溶剤などが挙げられる。
これらの中でも、取り扱い易さの点で炭化水素系溶剤が好ましく、トルエン、キシレンがより好ましい。
【0031】
このようにして得られた反応混合物は、溶剤および不純物を除去することなしに、リン酸エステルの製造に供することができる。
より高純度の環状アルキレンホスホロハリダイトを得たい場合には、公知の方法で溶剤および不純物を除去してもよい。この除去方法としては、減圧蒸留などが挙げられる。
得られた反応混合物である環状アルキレンホスホロハリダイトは、それを原料として製造した環状燐酸エステルが90.0%以上の純度および750ppm以下のハロゲン含有量を有するものであるのが好ましい。
ここで、「純度」とは、後述する(環状リン酸エステルの純度の測定)方法で求められた純度を意味する。「90%以上の純度を有する」とは、その純度が「90.0%を超えかつ100%以下である」ことを意味する。純度の下限は、好ましくは92.0%、より好ましくは94.0%であり、純度の上限は、100重量%のより近傍である。
また、「750ppm以下のハロゲン含有量を有する」とは、その含有量が「0ppmを超えかつ750ppm以下である」ことを意味する。ハロゲン含有量の上限は、好ましくは700ppm、より好ましくは600ppm、さらに好ましくは500ppmである。
【0032】
(リン酸エステルの製造方法)
本発明の製造方法により得られた環状アルキレンホスホロハリダイトを原料として用いて、ハロゲン含有量が極めて少ない環状リン酸エステルを製造できる。
例えば、環状アルキレンホスホロハリダイトとヒドロキシル基を有する化合物とを反応させ、得られた反応生成物(三価のリン化合物)を酸化させて環状リン酸エステルを得る。
さらに具体的には、次の製造方法が挙げられる。
本発明の製造方法により得られた環状アルキレンホスホロハリダイト(I)を、一般式(V):
R(OH)n (V)
[式中、nは1〜4の整数であり、Rは、次式
【0033】
【化3】
【0034】
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、炭素数1〜8の直鎖状もしくは炭素数3〜8の分岐鎖状のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状もしくは炭素数3〜4の分岐鎖状のアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜12のアリール基であるか、またはR1とR2はそれらが結合する酸素原子およびリン原子と一緒になって環状構造を形成する)
で表される置換基を有していてもよい、炭素数1〜8の脂肪族残基もしくは炭素数6〜18の芳香族残基である]
で表されるヒドロキシル基を有する化合物と反応させて、一般式(VI):
【0035】
【化4】
【0036】
(式中、R0、Rおよびnは、上記と同義である)
で表される反応生成物を得(工程(1))、さらに酸化させて、一般式(VII):
【0037】
【化5】
【0038】
(式中、R0、Rおよびnは、上記と同義である)
で表される環状リン酸エステルを得る(工程(2))。
これらの工程は、公知の方法であり反応条件などは適宜設定すればよい。
【0039】
(工程(1))
本発明で使用されるヒドロキシル基を有する化合物(V)の置換基について説明する。
1およびR2の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基としては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、iso−ペンチル、2−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、ネオペンチル、n−ヘキシル、iso−ヘキシル、3−メチルペンチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシルなどが挙げられる。
1およびR2のシクロアルキル基としては、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシルが挙げられる。
1およびR2のアリール基としては、例えばフェニル、クレジル、キシリル、1−ナフチル、2−ナフチル、2−フェニルフェニルなどが挙げられる。
【0040】
また、R1とR2はそれらが結合する酸素原子およびリン原子と一緒になって環状構造を形成していてもよい。R1とR2とが結合して形成される連結基−R1−R2−としては、R1およびR2に含まれる炭素原子数の和が2〜9になるアルキレン基が好ましく、環状構造における環は5〜7員環が好ましい。
【0041】
ヒドロキシル基を有する化合物としては、一般式(V)に含まれる任意のアルコール類、フェノール類を使用することができる。
例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、フェノール、クレゾール、キシレノール、フェニルフェノール、ジブチル(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ホスホネート、ジブチル(1−ヒドロキシエチル)ホスホネート、ジブチルヒドロキシメチルホスホネート、ジシクロヘキシル(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ホスホネート、ジシクロヘキシル(1−ヒドロキシエチル)ホスホネート、ジシクロヘキシルヒドロキシメチルホスホネート、ジフェニル(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ホスホネート、ジフェニル(1−ヒドロキシエチル)ホスホネート、ジフェニルヒドロキシメチルホスホネート、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンおよびペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0042】
これらの中でも、エタノール、プロパノール、ブタノール、フェノール、クレゾール、キシレノール、フェニルフェノール、ジブチル(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ホスホネート、ジブチルヒドロキシメチルホスホネート、エチレングリコール、1,3−プロパンジオールおよび1,4−ブタンジオールが好ましい。
【0043】
環状アルキレンホスホロハリダイトとヒドロキシル基を有する化合物との反応はハロゲン化水素捕捉剤の存在下で反応させるのが好ましい。
ハロゲン化水素捕捉剤としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミンなどの脂肪族3級アミンやアニリン、トルイジンなどの芳香族アミン、ピリジン、ルチジン、ピコリン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBU)などの複素環式アミン類が挙げられる。これらの中でも、入手のし易さ、取扱いの容易さなどの点から、トリエチルアミン、トリブチルアミンが好ましい。
【0044】
また、使用するヒドロキシル基を有する化合物の反応性に応じて、適宜触媒を使用してもよい。
触媒としては、例えば、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛などのルイス酸や硫酸、p−トルエンスルホン酸などのブレンステッド酸などが挙げられる。これらの中でも、触媒活性の点から、ルイス酸が好ましい。
【0045】
この反応工程は、必要に応じて有機溶剤の存在下で行ってもよい。
使用する有機溶剤は、反応原料(ヒドロキシル基を有する化合物および環状アルキレンホスホロハリダイト)、反応中間体、反応生成物(リン酸エステル)に不活性な溶剤であれば特に限定されない。
具体的には、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエンおよびキシレンなどの炭化水素系溶剤、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロベンゼンおよびジクロロベンゼンなどのハロゲン含有炭化水素系溶剤、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、p−ジオキサンおよびエチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル系溶剤などが挙げられる。
これらの中でも、取り扱い易さの点で炭化水素系溶剤が好ましく、トルエン、キシレンがより好ましい。
ホスホロハリダイト製造時と同じ溶剤を使えば、溶剤の回収工程が簡略化できるため好ましい。
【0046】
また、この反応工程の終了後に、副生したハロゲン化水素アミン塩を除去するのが好ましい。除去方法はろ過や水洗いなどの公知の方法を用いることができる。
【0047】
(工程(2))
次いで、工程(1)で得られた反応生成物を公知の方法で酸化して、リン酸エステルを得る。例えば、過酸化水素を塩基存在下で反応させる方法により反応生成物を酸化させる。
【0048】
使用する塩基としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物や炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属炭酸塩、アンモニア、ジメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのアミン類が挙げられる。これらの中でも、入手し易さなどの点で、水酸化ナトリウム、トリエチルアミンが好ましい。
本工程は、工程(1)から連続して同じ反応容器にて行うことも可能である。
【0049】
このようにして得られた反応混合物から、公知の方法により溶剤を除去して、目的のリン酸エステルを得る。
また、必要に応じてアミンや酸性成分などの不純物を公知の方法で除去してもよい。この除去方法としては、酸洗浄処理、アルカリ洗浄処理、水洗処理、減圧蒸留などが挙げられる。
【実施例】
【0050】
本発明を以下の実施例および比較例によりさらに具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0051】
(実施例1)
撹拌機、温度計、恒温装置、粉末添加装置、塩酸回収装置(水スクラバーを連結したコンデンサー)および還流管を備えた1リットルの4つ口フラスコに、三ハロゲン化リンとしての三塩化リン137.5g(1.0モル、ネオペンチルグリコールと等モル)および溶剤としてのトルエン135.2gを充填した。この混合溶液を窒素雰囲気下、恒温装置により温度5℃に冷却し、同条件で撹拌しながら、粉末添加装置を用いてアルキレングリコール化合物としてのネオペンチルグリコール104.0g(1.0モル)を4時間かけて徐々に添加した。添加終了後、得られた混合溶液を同条件(窒素雰囲気下、温度5℃)で1時間撹拌して反応させ、発生する塩化水素(塩酸ガス)69.4gを塩酸回収装置で回収した。その後、得られた反応混合物を温度40℃まで加熱し、フラスコ内の圧力を150torr(20kPa)まで減圧し、同条件で1時間撹拌して、残存する塩化水素を取り除き、ネオペンチレンホスホロクロリダイトを主成分とする溶液1を得た。
得られた溶液1を用いて、後述する化合物1を合成し、得られた化合物中の塩素含有量および環状リン酸エステルの純度を、後述する方法で測定した。
得られた結果を原料および反応条件と共に表1に示す。
表1では、アルキレングリコール化合物(II)に対する三ハロゲン化リン(III)の使用する割合を「仕込みモル比」として示す。
【0052】
(実施例2)
三塩化リンの使用量を136.2g(0.99モル、ネオペンチルグリコールに対して1モル%過小)にしたこと以外は実施例1と同様にして、ネオペンチレンホスホロクロリダイトを主成分とする溶液2を得た。
得られた溶液2を用いて、後述する化合物1を合成し、得られた化合物中の塩素含有量および環状リン酸エステルの純度を、後述する方法で測定した。
得られた結果を原料および反応条件と共に表1に示す。
【0053】
(実施例3)
三塩化リンの使用量を140.3g(1.02モル、ネオペンチルグリコールに対して2モル%過剰)にしたこと以外は実施例1と同様にして、ネオペンチレンホスホロクロリダイトを主成分とする溶液3を得た。
得られた溶液3を用いて、後述する化合物1を合成し、得られた化合物中の塩素含有量および環状リン酸エステルの純度を、後述する方法で測定した。
得られた結果を原料および反応条件と共に表1に示す。
【0054】
(実施例4)
三塩化リンの使用量を143.0g(1.04モル、ネオペンチルグリコールに対して4モル%過剰)にしたこと以外は実施例1と同様にして、ネオペンチレンホスホロクロリダイトを主成分とする溶液4を得た。
得られた溶液4を用いて、後述する化合物1を合成し、得られた化合物中の塩素含有量および環状リン酸エステルの純度を、後述する方法で測定した。
得られた結果を原料および反応条件と共に表1に示す。
【0055】
(実施例5)
ネオペンチルグリコールの添加時間を10時間にしたこと以外は実施例1と同様にして、ネオペンチレンホスホロクロリダイトを主成分とする溶液5を得た。
得られた溶液5を用いて、後述する化合物1を合成し、得られた化合物中の塩素含有量および環状リン酸エステルの純度を、後述する方法で測定した。
得られた結果を原料および反応条件と共に表1に示す。
【0056】
(実施例6)
ネオペンチルグリコールの添加時の温度を40℃にしたこと以外は実施例1と同様にして、ネオペンチレンホスホロクロリダイトを主成分とする溶液6を得た。
得られた溶液6を用いて、後述する化合物1を合成し、得られた化合物中の塩素含有量および環状リン酸エステルの純度を、後述する方法で測定した。
得られた結果を原料および反応条件と共に表1に示す。
【0057】
(実施例7)
ネオペンチルグリコールの代わりに2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール160.0g(1.0モル)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、5−ブチル−2−クロロ−5−エチル−1,3,2−ジオキサホスホリナンを主成分とする溶液7を得た。
得られた溶液7を用いて、後述する化合物1を合成し、得られた化合物中の塩素含有量および環状リン酸エステルの純度を、後述する方法で測定した。
得られた結果を原料および反応条件と共に表1に示す。
【0058】
(比較例1)
撹拌機、温度計、恒温装置、滴下装置(ロート)、塩酸回収装置(水スクラバーを連結したコンデンサー)および還流管を備えた1リットルの4つ口フラスコに、アルキレングリコール化合物としてのネオペンチルグリコール104.0g(1.0モル)および溶剤としてのトルエン135.2gを充填した。この混合溶液を窒素雰囲気下、恒温装置により温度5℃に冷却し、同条件で撹拌しながら、滴下装置を用いて三ハロゲン化リンとしての三塩化リン137.5g(1.0モル、ネオペンチルグリコールと等モル)を4時間かけて徐々に添加した。添加終了後、得られた混合溶液を同条件(窒素雰囲気下、温度5℃)で1時間撹拌して反応させ、発生する塩化水素(塩酸ガス)69.4gを塩酸回収装置で回収した。その後、得られた混合溶液を温度60℃まで加熱し、フラスコ内の圧力を150torr(20kPa)まで減圧し、同条件で1時間撹拌して、残存する塩化水素を取り除き、ネオペンチレンホスホロクロリダイトを主成分とする溶液1Cを得た。
得られた溶液1Cを用いて、後述する化合物1を合成し、得られた化合物中の塩素含有量および環状リン酸エステルの純度を、後述する方法で測定した。
得られた結果を原料および反応条件と共に表1に示す。
【0059】
(比較例2)
三塩化リンの使用量を136.2g(0.99モル、ネオペンチルグリコールに対して1モル%過小)にしたこと以外は比較例1と同様にして、ネオペンチレンホスホロクロリダイトを主成分とする溶液2Cを得た。
得られた溶液2Cを用いて、後述する化合物1を合成し、得られた化合物中の塩素含有量および環状リン酸エステルの純度を、後述する方法で測定した。
得られた結果を原料および反応条件と共に表1に示す。
【0060】
(比較例3)
三塩化リンの使用量を143.0g(1.04モル、ネオペンチルグリコールに対して4モル%過剰)にしたこと以外は比較例1と同様にして、ネオペンチレンホスホロクロリダイトを主成分とする溶液3Cを得た。
得られた溶液3Cを用いて、後述する化合物1を合成し、得られた化合物中の塩素含有量および環状リン酸エステルの純度を、後述する方法で測定した。
得られた結果を原料および反応条件と共に表1に示す。
【0061】
(比較例4)
三塩化リンの添加時間を10時間にしたこと以外は比較例1と同様にして、ネオペンチレンホスホロクロリダイトを主成分とする溶液4Cを得た。
得られた溶液4Cを用いて、後述する化合物1を合成し、得られた化合物中の塩素含有量および環状リン酸エステルの純度を、後述する方法で測定した。
得られた結果を原料および反応条件と共に表1に示す。
【0062】
(比較例5)
三塩化リンの添加時の温度を20℃にしたこと以外は比較例1と同様にして、ネオペンチレンホスホロクロリダイトを主成分とする溶液5Cを得た。
得られた溶液5Cを用いて、後述する化合物1を合成し、得られた化合物中の塩素含有量および環状リン酸エステルの純度を、後述する方法で測定した。
得られた結果を原料および反応条件と共に表1に示す。
【0063】
(比較例6)
三塩化リンの使用量を134.8g(0.98モル、ネオペンチルグリコールに対して2モル%過小)にしたこと以外は実施例1と同様にして、ネオペンチレンホスホロクロリダイトを主成分とする溶液6Cを得た。
得られた溶液6Cを用いて、後述する化合物1を合成し、得られた化合物中の塩素含有量および環状リン酸エステルの純度を、後述する方法で測定した。
得られた結果を原料および反応条件と共に表1に示す。
【0064】
(比較例7)
三塩化リンの使用量を165.0g(1.2モル、ネオペンチルグリコールに対して20モル%過剰)にしたこと以外は実施例1と同様にして、ネオペンチレンホスホロクロリダイトを主成分とする溶液7Cを得た。
得られた溶液7Cを用いて、後述する化合物1を合成し、得られた化合物中の塩素含有量および環状リン酸エステルの純度を、後述する方法で測定した。
得られた結果を原料および反応条件と共に表1に示す。
【0065】
(比較例8)
ネオペンチルグリコールの添加時の温度(反応温度)を−10℃にしたこと以外は実施例5と同様にして反応を試みたが、塩化水素の発生などによる反応の進行が確認できなかった。蓄積した未反応原料による暴走反応の危険があったため途中で実験を中止した。
【0066】
(比較例9)
ネオペンチルグリコールの添加時の温度(反応温度)を70℃にしたこと以外は実施例5と同様にして反応を試みたが、還流が激しくなり危険であったため途中で実験を中止した。
【0067】
(化合物1の合成)
撹拌機、温度計、恒温装置、滴下装置(ロート)、塩酸回収装置(水スクラバーを連結したコンデンサー)および還流管を備えた1リットルの4つ口フラスコに、アルコール化合物としてのジブチル(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ホスホネート226.8g(0.9モル)、ハロゲン化水素捕捉剤としてのトリエチルアミン111.1g(1.1モル)、触媒としての塩化マグネシウム1.14g(0.012モル)および有機溶剤としてのトルエン20.8gを充填し、撹拌した。得られた混合溶液を恒温装置により温度60℃に保持しつつ、実施例および比較例にて合成した溶液の全量を2時間かけて滴下装置を用いて徐々に添加した。添加終了後、得られた反応混合物を温度60℃で1時間撹拌して反応を完結させた。
【0068】
次いで、得られた反応混合物に水200gを加え、温度60℃で30分間撹拌した後、静置して分相させ、水相を回収し、副生したトリエチルアミン塩酸塩を除去した。
次いで、反応混合物に、30%水酸化ナトリウム水溶液3.0g(0.02モル)を添加し、恒温装置により温度20〜60℃に保持しつつ、35%過酸化水素水溶液97.1g(過酸化水素として1.0モル)を2時間掛けて滴下装置を用いて徐々に添加した。添加終了後、得られた反応混合物を温度60℃で1時間撹拌して反応を完結させた。
【0069】
次いで、得られた反応混合物を塩酸水溶液および炭酸ナトリウム水溶液で順次洗浄し、最後に水洗した。得られた反応混合物を温度100〜140℃まで加熱しつつ、圧力100torr(13.3kPa)まで減圧して、水とトルエンを回収した。さらに温度100〜140℃、圧力20torr(2.7kPa)の減圧下で水蒸気蒸留を行い、低沸点成分を除去して無色透明の液体(化合物1)を得た。
得られた液体をガスクロマトグラフィーで分析し、予め構造が既知の環状リン酸エステルのガスクロマトグラフィーの分析結果と比較することにより、得られた液体の主成分が下記の環状リン酸エステルであることを確認した。
【0070】
(環状リン酸エステルA:実施例1〜6および比較例1〜7)
【化6】
【0071】
(環状リン酸エステルB:実施例7)
【化7】
【0072】
【表1】
【0073】
表1の結果から、次のことがわかる。
(1)三ハロゲン化リン中にアルキレングリコール化合物を添加(追加)して反応させた実施例1〜7は、アルキレングリコール化合物に三ハロゲン化リンを添加(追加)して反応させた比較例1〜5と比較して、化合物1中のハロゲン含有量が格段に少なくなっていること
【0074】
(2)実施例3および4のようにアルキレングリコール化合物に対する三ハロゲン化リンの使用量が過剰になると、化合物1中のハロゲン含有量が減少する傾向にあるが、比較例7のように三ハロゲン化リンの過剰率が20%になると不純物が多くなり、目的とする環状リン酸エステルの純度が低下すること
【0075】
(3)実施例1と実施例5との比較から、三ハロゲン化リン中へのアルキレングリコール化合物の添加時間は、化合物1中のハロゲン含有量に殆ど影響を与えないこと
【0076】
(4)実施例1と実施例6との比較から、三ハロゲン化リン中へのアルキレングリコール化合物の添加時の温度が高くなると、化合物1中のハロゲン含有量が増加する傾向にあること
【0077】
(5)実施例1と実施例7との比較から、アルキレングリコール化合物のネオペンチルグリコールを2−ブチル−2−エチル−1,2−プロパンジオールに代えても、同様に化合物1中のハロゲン含有量の低減効果が得られること
【0078】
(実施例8)
実施例1と同様にしてネオペンチレンホスホロクロリダイトを主成分とする溶液1を得た。
次いで、溶液1を用い、ジブチル(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ホスホネートの代わりにn−ブタノール70.3g(0.48モル)を用いたこと以外は化合物1の合成と同様にして、無色透明の液体193.6gを得た。
得られた液体をガスクロマトグラフィーで分析し、予め構造が既知の環状リン酸エステルのガスクロマトグラフィーの分析結果と比較することにより、得られた液体の主成分が下記の環状リン酸エステルであることを確認し、塩素含有量を後述の方法で測定した。
得られた結果を表2に示す。
【0079】
(環状リン酸エステルC:実施例8)
【化8】
【0080】
(実施例9)
トルエンの代わりにクロロベンゼンを用いたこと以外は実施例1と同様にして、ネオペンチレンホスホロクロリダイトを主成分とする溶液1’を得た。
次いで、溶液1’を用い、ジブチル(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ホスホネートの代わりに1,4−ブタンジオール43.2g(0.48モル)を用いたこと以外は化合物1の合成と同様にして、白色粉末164.1gを得た。
得られた粉末をガスクロマトグラフィーで分析し、予め構造が既知の環状リン酸エステルのガスクロマトグラフィーの分析結果と比較することにより、得られた粉末の主成分が下記の環状リン酸エステルであることを確認し、塩素含有量を後述の方法で測定した。
得られた結果を表2に示す。
【0081】
(環状リン酸エステルD:実施例9)
【化9】
【0082】
(実施例10)
実施例1と同様にしてネオペンチレンホスホロクロリダイトを主成分とする溶液1を得た。
次いで、溶液1を用い、ジブチル(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ホスホネートの代わりにo−フェニルフェノール161.7g(0.95モル)を用いたこと以外は化合物1の合成と同様にして、白色粉末288.3gを得た。
得られた粉末をガスクロマトグラフィーで分析し、予め構造が既知の環状リン酸エステルのガスクロマトグラフィーの分析結果と比較することにより、得られた粉末の主成分が下記の環状リン酸エステルであることを確認し、塩素含有量を後述の方法で測定した。
得られた結果を表2に示す。
【0083】
(環状リン酸エステルE:実施例10)
【化10】
【0084】
(比較例10)
溶液1の代わりに比較例1の溶液1Cを用いたこと以外は実施例8と同様にして、環状リン酸エステルCを主成分とする無色透明の液体191.2gを得、その液体の塩素含有量を後述の方法で測定した。
得られた結果を表2に示す。
【0085】
(比較例11)
トルエンの代わりにクロロベンゼンを用いたこと以外は比較例1と同様にして、ネオペンチレンホスホロクロリダイトを主成分とする溶液1C’を得た。
次いで、溶液1の代わりに溶液1C’を用いたこと以外は実施例9と同様にして、環状リン酸エステルDを主成分とする白色粉末166.7gを得、その粉末の塩素含有量を後述の方法で測定した。
得られた結果を表2に示す。
【0086】
(比較例12)
溶液1の代わりに比較例1の溶液1Cを用いたこと以外は実施例10と同様にして、環状リン酸エステルEを主成分とする白色粉末292.6gを得、その粉末の塩素含有量を後述の方法で測定した。
得られた結果を表2に示す。
【0087】
【表2】
【0088】
実施例8〜10ならびに比較例1および10〜12の結果から、本発明の製造方法によれば、ハロゲン含有量が極めて少ない、目的とする環状リン酸エステルが製造できることがわかる
【0089】
(実施例11)
撹拌機、温度計、恒温装置、粉末添加装置、塩酸回収装置(水スクラバーを連結したコンデンサー)および還流管を備えた2500リットルの反応容器に、三ハロゲン化リンとしての三塩化リン889kg(6.47キロモル、ネオペンチルグリコールに対して4モル%過剰)および溶剤としてのトルエン850kgを充填した。この混合溶液を窒素雰囲気下、恒温装置により温度15℃に冷却し、15〜20℃で撹拌しながら、粉末添加装置を用いてアルキレングリコール化合物としてのネオペンチルグリコール650kg(6.25キロモル)を6時間かけて徐々に添加した。添加終了後、得られた混合溶液を同条件(窒素雰囲気下、温度15〜20℃)で2時間撹拌して反応させ、発生する塩化水素(塩酸ガス)433kgを塩酸回収装置で回収した。その後、得られた反応混合物を温度40℃まで加熱し、反応容器内の圧力を150torr(20kPa)まで減圧し、同条件で2時間撹拌して、残存する塩化水素を取り除き、ネオペンチレンホスホロクロリダイトを主成分とする溶液11を得た。
得られた溶液11を用いて、前述の化合物1を合成し、得られた化合物中の塩素含有量および環状リン酸エステルの純度を、後述する方法で測定した。
得られた結果を原料および反応条件と共に表3に示す。
表3では、アルキレングリコール化合物(II)に対する三ハロゲン化リン(III)の使用する割合を「仕込みモル比」として示す。
【0090】
(比較例13)
撹拌機、温度計、恒温装置、滴下装置、塩酸回収装置(水スクラバーを連結したコンデンサー)および還流管を備えた2500リットルの反応容器に、アルキレングリコール化合物としてのネオペンチルグリコール650kg(6.25キロモル)および溶剤としてのトルエン845kgを充填した。この混合溶液を窒素雰囲気下、恒温装置により温度5℃に冷却し、5〜10℃で撹拌しながら、滴下装置を用いて三ハロゲン化リンとしての三塩化リン859kg(6.25キロモル、ネオペンチルグリコールと等モル)を10時間かけて徐々に添加した。添加終了後、得られた混合溶液を同条件(窒素雰囲気下、温度5〜10℃)で2時間撹拌して反応させ、発生する塩化水素(塩酸ガス)437kgを塩酸回収装置で回収した。その後、得られた混合溶液を温度60℃まで加熱し、反応容器内の圧力を150torr(20kPa)まで減圧し、同条件で3時間撹拌して、残存する塩化水素を取り除き、ネオペンチレンホスホロクロリダイトを主成分とする溶液13Cを得た。
得られた溶液13Cを用いて、前述の化合物1を合成し、得られた化合物中の塩素含有量および環状リン酸エステルの純度を、後述する方法で測定した。
得られた結果を原料および反応条件と共に表3に示す。
【0091】
【表3】
【0092】
(環状リン酸エステルの純度の測定)
測定する化合物を、下記の装置および条件により、ガスクロマトグラフィーで分析し、予め既知の環状リン酸エステルのガスクロマトグラフィーの分析結果と対照することにより、環状リン酸エステルを同定し、ガスクロマトグラフィーにおける、そのリン酸エステルの面積%を環状エステルの純度とした。
装置:株式会社島津製作所製、型式:GC−17A
カラム:DB−1(Agilent製)
Length30m、I.D.0.32mm、Film0.25μm
温度条件:INJ200℃、DET250℃
COL35℃ 5min → 10℃/min → 200℃
25min hold → 10℃/min → 250℃
【0093】
(化合物中の塩素含有量の測定)
測定する化合物を、n−ブタノール中で金属ナトリウムにより分解し、電位差滴定装置(平沼産業株式会社製、型式:COM−2000)を用いた硝酸銀水溶液での電位差滴定により、化合物中の塩素含有量(ppm)を測定した。