特許第5762310号(P5762310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5762310チャージフレーム及び該チャージフレームを備えた急冷装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5762310
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】チャージフレーム及び該チャージフレームを備えた急冷装置
(51)【国際特許分類】
   C21D 1/00 20060101AFI20150723BHJP
   C21D 1/18 20060101ALI20150723BHJP
   F27D 3/12 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
   C21D1/00 F
   C21D1/00 119
   C21D1/18 X
   F27D3/12 S
【請求項の数】17
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-545648(P2011-545648)
(86)(22)【出願日】2009年12月2日
(65)【公表番号】特表2012-515263(P2012-515263A)
(43)【公表日】2012年7月5日
(86)【国際出願番号】EP2009066206
(87)【国際公開番号】WO2010081588
(87)【国際公開日】20100722
【審査請求日】2011年9月14日
(31)【優先権主張番号】102009000201.4
(32)【優先日】2009年1月14日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ベアンハート ミュラー
【審査官】 田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−087459(JP,A)
【文献】 特表2006−527351(JP,A)
【文献】 実開昭57−102556(JP,U)
【文献】 特開2004−107705(JP,A)
【文献】 実開昭61−181297(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0175130(US,A1)
【文献】 国際公開第2006/042538(WO,A1)
【文献】 特開2002−294333(JP,A)
【文献】 特開平10−060524(JP,A)
【文献】 特開平05−005171(JP,A)
【文献】 特開2001−123219(JP,A)
【文献】 特開昭53−56111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 1/00 − 1/84
F27D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
急冷ガスにより急冷すべき急冷処理品(2)の受容のためのチャージフレームにおいて、該チャージフレーム(5)は、急冷処理品(2)が載せられる少なくとも1つの底部(14)と、該底部(14)から急冷処理品(2)の支持側において突出しかつ急冷処理品(2)を取り囲んでいて、結果としてバイパス流れを防止する1つの流れ通路(8)を形成する全周にわたって閉じられた周壁(16)とを有していて、急冷処理品(2)の急冷のための急冷装置(1)に設けられた急冷室(3)にドア(4)を介して装入可能かつ取り出し可能に構成されており、底部(14)が、格子構造で形成されており、前記底部(14)から、該底部(14)の上下両側において前記周壁(16)が突出しており、該周壁(16)は、前記底部(14)の下側において、前記底部(14)と急冷装置(1)の流れ通路(8)との間の領域で、前記底部(14)を上側から下側へ流過する全急冷ガスを直接的に前記流れ通路内へ導く案内部材(19)を形成していることを特徴とする、チャージフレーム。
【請求項2】
前記チャージフレーム(5)は、少なくとも部分的に、炭素繊維強化された炭素から形成されている請求項1に記載のチャージフレーム。
【請求項3】
前記チャージフレーム(5)は、全体的に、炭素繊維強化された炭素から形成されている請求項2に記載のチャージフレーム。
【請求項4】
前記底部(14)は、自由に流過可能な面積割合を有している請求項1から3のいずれか1項に記載のチャージフレーム。
【請求項5】
前記急冷処理品(2)が載せられた前記底部(14)の前記自由に流過可能な面積割合は、0.4〜0.5の範囲から選ばれている請求項4に記載のチャージフレーム。
【請求項6】
前記周壁(16)の内側の領域には、該周壁(16)のほかには、流れ通路を画定する壁は設けられていない請求項1から5のいずれか1項に記載のチャージフレーム。
【請求項7】
前記急冷処理品(2)は、金属製のワークから成っている、請求項1から6のいずれか1項に記載のチャージフレーム。
【請求項8】
急冷処理品(2)の急冷のための急冷装置であって、急冷室(3)、請求項1から7のいずれか1項に記載の少なくとも1つのチャージフレーム(5)、閉じられた流れ回路の形成のための、前記急冷室(3)に接続された流れ通路(8)、及び、前記流れ回路内における急冷ガスの循環のための少なくとも1つのブロワー(9)を含んでいる形式のものにおいて、前記チャージフレーム(5)の少なくとも1つの底部(14)の下側に案内部材(19)が設けられており、該案内部材は、前記底部(14)を上側から下側へ流過する全急冷ガスを直接的に前記流れ通路(8)内へ導くように形成して配置されていることを特徴とする、急冷装置。
【請求項9】
前記案内部材(19)は、前記チャージフレーム(5)の構成部分であり、かつ前記急冷室(3)内に密接に収容可能となっている請求項8に記載の急冷装置。
【請求項10】
前記流れ回路内に、前記急冷ガスから熱を奪うための熱交換器(11)が配置されている請求項8又は9に記載の急冷装置。
【請求項11】
前記流れ回路にガス入口が開口している請求項8から10のいずれか1項に記載の急冷装置。
【請求項12】
前記急冷室(3)にガス入口が開口している請求項11に記載の急冷装置。
【請求項13】
前記ブロワー(9)に回転数制御装置(10)が配設されている請求項8から12のいずれか1項に記載の急冷装置。
【請求項14】
前記ブロワーの出力は、少なくとも100kWである請求項8から13のいずれか1項に記載の急冷装置。
【請求項15】
前記ブロワーの出力は、少なくとも200kWである請求項14に記載の急冷装置。
【請求項16】
前記ブロワーの出力は、少なくとも700kWである請求項14又は15に記載の急冷装置。
【請求項17】
前記急冷処理品(2)は、金属製のワークから成っている、請求項8から16のいずれか1項に記載の急冷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、急冷ガスにより急冷すべき急冷処理品から成る装入物の受容のための、請求項1の上位概念に記載の形式のチャージフレームに関し、かつ急冷処理品、特に複数の金属製のワークを急冷ガスにより急冷するための、請求項8の上位概念に記載の形式の急冷装置に関する。
【0002】
規定された材料特性、例えば高い硬度や十分な耐摩耗性を得るために、一般的に金属製の工作物若しくはワークには熱処理が施される。熱処理効果にとって重要なことは、特に、予め加熱されたワークを急冷する速度である。このために必要な急冷プロセスにとって、水、油や急冷ガスを用いることは周知である。急冷用液体の代わりに急冷ガスを用いる主な利点は、急冷処理品(熱処理品)を急冷の後に洗浄する必要がなく、かつ装填量の急冷処理品(装填物又はチャージ)における高い急冷均質性を達成することができることにある。しかしながら、急冷ガスにより得られる急冷能力を高めるためには、液体、例えば冷却油若しくは溶融塩のように、急冷処理品と急冷ガスとの間の、有利には3000W/m2K以上の極めて高い熱伝達を達成する必要があり、このような高い熱伝達は、高い流速によってしか得られない。必要な極めて高い流速を達成するためには、使用されるブロワーは、著しく大きな容積流を供給しなければならず、従って大きなモータ出力を必要とすることになる。このことは、高い設備費用及び運転中の高いエネルギーコストにつながる。極めて高いモータ出力を有するブロワーを使用する場合には、問題点として、流速の増大に伴って、チャージ内において圧力損失が増大し、結果として、急冷ガスの大部分が、チャージ内を流過するのではなく、チャージを受容するチャージフレームの側方を通過して、つまり、チャージを迂回(バイパス)してしまっている。つまり、ブロワーの容積流は増大されるものの、チャージ内の流速はほとんど高められず、従って急冷能力もほとんど高められていない。慣用のチャージフレームは、複数の格子から形成されており、格子は高さ方向に延びるロッドに結合されており、これにより、チャージ内においても付加的なバイパス・流れが発生している。
【0003】
急冷能力を高めるために、欧州特許第0129701B1号明細書及び独国実用新案出願公開第29603022U1号明細書により、ガスノズル域を設けることが公知である。しかしながらこのような構成においては欠点として、高い流速はノズルの領域でのみ得られ、チャージ全体の中央では得られていない。
【0004】
欧州特許第1154024B1号明細書に開示の急冷装置においては、急冷室内に、複数の流れ通路を有する調節可能なフードが配置されており、フードは、バイパス・流れを避けるために、チャージフレーム内に受容された急冷処理品上へ移動させられるようになっている。該公知の急冷装置においては欠点として、急冷装置の構成が複雑である。更に、運動させられ、ひいては摩耗する構成部分(フードや作動機構)を急冷室内に設けなければならないことも欠点である。
【0005】
本発明の課題は、急冷能力を簡単かつ経済的な手段で高めることである。
【0006】
本発明の上記課題は、請求項1に記載の構成を有するチャージフレーム(装填フレーム又は装入フレーム)により解決され、また、チャージフレームを備えていて請求項8に記載の構成を有する急冷装置により解決される。本発明は、明細書、請求の範囲及び図面に記載の少なくとも2つの構成事項のあらゆる組み合わせによっても実施され得るものである。
【0007】
本発明の技術思想は、チャージフレームに、全周にわたって閉じられた周壁を装備して、これにより、チャージフレームからの急冷ガスの側方への広がり流れを防止することにある。言い換えれば、チャージフレームは、側方に対して閉じられ、つまり、チャージフレームにより一種の流れ通路を形成して、該流れ通路が、チャージフレームから急冷処理品の側方への急冷ガスの広がり流れを防止するようになっている。全周にわたって閉じられた周壁を設けることに基づき達成される急冷ガス流の束ね作用(まとめ作用若しくは集合作用)により、チャージ内全体における高い流速が得られ、結果として、高い急冷能力を実現することができる。有利には、周壁の、急冷ガス流の流れ方向の寸法は、急冷処理品が周壁を超えないように規定されている。欧州特許第1154024B1号明細書に記載の急冷装置とは逆に、本発明の技術思想に基づき形成されるチャージフレームにおいて、周壁は、チャージフレームの構成部分であり、急冷室内でチャージフレームに対して相対的に移動させられる必要がなく、従って、チャージフレームにより構成される急冷装置の全体的に極めて簡単な構造を実現することができる。特に有利な形態によれば、全周にわたって閉じられた周壁は、チャージフレームの、急冷処理品の支持のための底部(支持台)に固着されている。
【0008】
特に有利な形態によれば、チャージフレームは、少なくとも部分的に、有利には大部分を、特に有利には全体を、高い熱負荷下でも形状安定性を有する材料である炭素繊維強化された炭素(CFC)によって形成されている。このような構成により、チャージフレームは、チャージフレームを形成する炭素繊維強化された炭素の高い強度に基づき、全周にわたって閉じられた周壁を設けることにより得られる高い流れ速度に伴う高い流力を受け止めることができる。
【0009】
本発明の有利な別の形態によれば、チャージフレームは、急冷処理品の支持のための、周壁に固着された底部若しくは周壁と固着可能になっている底部を有している。底部は、自由に流過可能な十分に大きな面積割合を有するように形成されている。このような構成は、底部を例えば格子構造で形成することにより実施される。流体、例えば急冷ガスが自由に流過可能な横断面(具体的には貫通部の横断面)の面積割合は、1つの形態ではチャージフレームの底部の面全体にわたって一定であり、或いは別の形態では局所的に異なっていてよい。底部の設計は、チャージ内における中間の流速が、自由に流過可能な面積割合(自由な横断面)に対して反比例するように考慮される。チャージ内における最大の流速は、水平面における急冷処理品間のX・方向及びY・方向の間隔を適切に変化させることにより規定される。
【0010】
急冷処理品のための、有利には互いに平行に向けられた複数の底部(支持台又は支持棚)を上下に設けることも可能であり、このような構成において、周壁は、有利には全底部にわたって延びている。しかしながら極めて有利な形態によれば、急冷処理品の装填(装入)は、追加的な底部を設ける構成では、圧力損失が増大し、ひいては高いブロワー出力が必要になるので、急冷処理品の1つの層でのみ行われ、つまり、1つの底部(支持台又は支持棚)のみを用いて行われる。複数の底部を上下に設ける構成においては、一般的に下の層(下の段の底部)の急冷処理品の冷却作用は更に低下することになる。
【0011】
上述の全周にわたって閉じられた周壁を設けることにより、少なくとも1つの底部、有利には専ら1つの底部は、自由に流過可能な面積割合(底部の全面積に対する比)が0.6以下、つまり6割以下であるように形成され若しくは装備される。特に有利には、自由に流過可能な面積割合は、最適な装填、つまりチャージ量を保証するために0.4〜0.5の値で選ばれる。このように比の小さい値の流過可能な自由な横断面の実現により、急冷処理品間を流れる流れの流速を著しく高めることができ、チャージ内における相応に増大する流れ抵抗による流れ広がりは、全周にわたって閉じられた周壁によって確実に防止される。
【0012】
チャージフレームの極めて有利な形態によれば、急冷処理品は、周壁の内側に自由に配置されるようになっており、つまり、急冷すべき個々の各ワーク(各急冷処理品)のための個別の流れ通路は、周壁の内側には設けられていない。このような構成は、チャージフレームの構造を著しく簡単にし、かつチャージフレームの少なくとも1つの底部、有利には専ら1つの底部に対するワークの素早い装填及び取り除きを可能にするものである。周壁の内側において場所を取る中間壁又は仕切壁を省略する上述の構成は、より大きなチャージ量の冷却を可能にするものである。更に、上述の構成による簡単な装備の利点として、全チャージが一回で装填及び取り除きされる。有利には、周壁の内側における個々の流れ通路は、もっぱら急冷処理品自体によってのみ形成され、つまり、急冷処理品間の隙間によって形成されるものであり、急冷処理品は、互いに一定間隔を置いて離間され、かつ/又は周壁に対して一定距離を置いて離間されている。
【0013】
本発明は、急冷処理品、特に金属製のワークを、特に予め加熱された後の材料組織の調整のために、例えば炭素質のオーステナイト層のγ・面心立方格子からフェライト層のα・体心立方格子への転移のために、急冷する急冷装置にも関する。急冷処理品、特に金属製のワークの急冷のための急冷装置は、1つの急冷室を有しており、急冷室を通して急冷ガスが導かれるようになっており、急冷室内に、急冷処理品の支持のための少なくとも1つのチャージフレームが収容されるようになっている。急冷装置の極めて有利な形態によれば、チャージフレームは、全周にわたって閉じられた周壁を装備するチャージフレームとして形成されている。流れ回路を形成するために、急冷装置は、急冷室に加えて、急冷室と流体的に接続(連通)された少なくとも1つの流れ通路、並びに、形成される流れ回路内における急冷ガスの循環のための少なくとも1つのブロワーを含んでいる。特に有利な形態によれば、ブロワー(ファン又は送風機)はラジアルブロワーとして形成されている。急冷ガスとしてヘリウムを使用する場合には、有利には、1つのチャージの約500×500mm2の標準面積及び20バールのガス圧に対して、約100kW以上の出力の1つのブロワーが用いられる。急冷ガスとして窒素を使用する場合には、700kW以上の出力のブロワーを用いると有利である。必要なブロワー出力が急冷ガスの密度に比例するので、密度の小さい急冷ガス、例えばヘリウム又は水素の使用が特に有利である。容積分率の高いガスと密度の小さいガスとの混合物、例えば窒素とヘリウム又は水素との混合物も有利である。本発明の別の形態によれば、急冷装置は、チャージフレームに配設された案内部材を有しており、案内部材(案内手段)は、チャージフレームを通って流れる全ての急冷ガスが流れ通路内へ導かれるように構成して配置される。言い換えれば、案内部材は、チャージフレームと流れ通路との間の気密な結合部を成し、つまり、チャージフレームと流れ通路との間の接続部の形での付加的な流れ通路を形成しており、チャージフレームを通って流過した急冷ガスが、チャージフレームの最下位の底部の下方の領域で側方へ急冷室内に流れ広がることを防止するものである。このように急冷ガスの流れ広がりを防止することにより、つまり急冷ガス流の束ね案内若しくは集合案内により、最適な流速が得られる。
【0014】
チャージフレームと流れ通路との間の領域に配置される案内部材と、全周にわたって閉じられた周壁を有する前述のチャージフレームとの組み合わせが、特に有利である。全周にわたって閉じられた周壁と案内部材とは、急冷室内に配置される共通の1つの流れ通路にまとめられ、これにより、チャージフレームからの急冷ガスの側方への広がり流れを防止するようになっている。つまり、上記構成により、外側へのバイパス・流れ(迂回流れ)の発生が完全に防止され、全容積流が、チャージを通して導かれるようになっており、従って、各ワークのための個別の調節可能な流れ通路を有していて急冷室内に配置されるような従来のフードが不要となっている。周壁が底部の両側で底部から突出している場合には、案内部材は、周壁の、底部から下方へ、つまり急冷ガスの流れ方向に突出する区分により形成されてよい。
【0015】
案内部材の構成に関して種々の形態が可能である。1つの形態によれば、案内部材は、チャージフレームの構成部分であり、有利には専ら1つの最下位の底部から出発して、急冷室の出口開口部(流出開口部)、即ち流れ通路の流入開口部に向かって延びている。該形態において、案内部材は、急冷室の底部領域に対するほぼ気密な、有利には完全に気密な結合部を形成するように構成して配置されるようになっている。別の形態によれば、案内部材は、急冷室及び/又は流れ通路の構成部分であり、チャージフレームが、有利には周壁として形成された案内部材に気密にドッキングされるようになっており、有利には、全周にわたって閉じられた案内部材上に留められ若しくは装着されるようになっている。
【0016】
急冷室の効率を最適化するために、有利な形態によれば、流れ回路内に熱移送装置(熱伝達装置、つまり熱交換器)が配置されており、該熱移送装置により、急冷ガスに意図的に受け取られた熱が奪われるようになっている。
【0017】
特に有利な形態によれば、流れ回路に、有利には直接に急冷室にガス入口が開口しており、該ガス入口を介して、有利には高圧タンクから所定の圧力の急冷ガスが導入されるようになっている。有利には、急冷室の排気のための手段が追加的に設けられている。
【0018】
本発明の有利な別の形態によれば、少なくとも1つ、有利には専ら1つのブロワーが、流量の制御のために、回転数制御装置、有利には周波数変換器を備えている。このような構成により、付加的な利点として、ブロワー出力、ひいては流速を各チャージの必要な熱伝達率に適合させることができる。
【0019】
好適には、ブロワー出力は、有利には0.4〜0.5の自由に流過可能な面積割合と関連して、急冷すべき各急冷処理品に対して少なくとも3000W/m2Kの伝熱を達成するように選ばれる。
【0020】
次に、本発明を図示の有利な実施形態に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】チャージフレームを備える急冷装置を概略的に示す図である。
図2】急冷処理品が載せられたチャージフレームの平面図である。
【0022】
図1には、急冷される製品、つまり急冷処理品2、図示の実施形態では金属製のワークの急冷のための急冷装置1が示されている。急冷装置1の急冷室3は、該急冷室3に対する、急冷処理品2の支持用のチャージフレーム5の装入及び取り出しのための耐圧性のドア4(装入ドア)を備えており、前記チャージフレーム(装填フレーム又は装入フレーム)は、急冷処理品のチャージ(一回の処理工程のためにチャージフレーム上に装填される所定量又は所定数の急冷処理品(装填物又は装入物)、つまり一回毎の装填量の装填物又は装入物)を受容するためのものであり、炭素繊維強化された炭素から成っている。急冷室3には、高圧容器7からの急冷ガスの供給のための圧力ガス通路6が開口している。
【0023】
急冷室3には、流れ通路8が、流体的に、つまり流体移送可能に接続されており、該流れ通路は、急冷室3と一緒に急冷ガスのための流れ回路を形成している。流れ通路8内には、ラジアルブロワーとして形成されたブロワー9が配置されており、該ブロワーに回転数制御装置10が配設されている。
【0024】
更に流れ通路8内には、急冷ガスから熱を奪うための熱交換器11が設けられている。ブロワー9により、冷却ガスは加速されて、熱交換器11に向けて送られ、ひいては流れ通路8の終端開口部12を経て急冷室3内に達し、そこから出口開口部13を経て流出するようになっている。
【0025】
図1及び図2から明らかなように、チャージフレーム5は、格子状の平らな底部14を有しており、該底部には、複数の貫通開口部15が形成されている。底部14上には、急冷処理品2が、X・方向で相互の間隔dxを置いて、かつY・方向で相互の間隔dyを置いて載置されている。底部14の寸法は、X・方向でa=0.5mであり、かつY・方向でb=0.5mである。急冷処理品2が載せられた底部14の自由に流過可能な所定の面積割合は、底部14の全面積a×bから全急冷処理品2の横断面面積を引いた差の値と底部14の全面積a×bの値との間の比で表され、図示の実施形態では、自由に流過可能な面積割合は0.4〜0.5の範囲で選ばれている。
【0026】
図面から明らかなように、周囲を取り囲む全周にわたって閉じられた1つの周壁16が、底部14の平面に対して垂直に延びている。周壁16は、図示の実施形態では、底部14から出発して、流れ通路の終端開口部12に向かって延びて、終端開口部12に対して距離を置いて終わっており、チャージフレーム5全体は、急冷ガスの流れ方向17と逆向きに突出している。このような構成により、周壁16は急冷ガスを束ねていて、つまり、まとめていてチャージフレーム5から側方へ、つまり急冷室3内への広がり流れを防止し、つまり、チャージを迂回(バイパス)するような迂回流れ(バイパス流れ)を防止している。
【0027】
図1から明らかなように、チャージフレーム5の底部14には、支柱22が設けられており、チャージフレーム5は、支柱22を用いて急冷室3の外側に置かれるようになっている。支柱22は、急冷ガスの流れ方向に案内部材19の内側の領域内へ突出している。
【0028】
図2から、周壁16の図示の実施形態の正方形の全周輪郭が見て取れ、周壁16の上側の端面18は、終端開口部12に対して距離を置いて配置されており、これにより、急冷ガスは、流れ通路8からその進路に沿って直的に急冷室を流過するようになっている。
【0029】
更に、図2から見て取れるように、チャージフレーム5は、周壁16の内側に配置されて急冷処理品2のための個別の流れ通路を形成するような壁若しくは仕切壁を有していない。周壁16の内側における個別の流れ通路は、専ら急冷処理品2によって形成(画定)され、つまり急冷処理品間に形成され、或いは専ら急冷処理品2及び周壁16によって形成される。
【0030】
底部14を通って流過する急冷ガスの、急冷室3内への側方広がりを避けるため、つまり、急冷ガスを束ねた状態で、即ち集合した状態で流れ通路8内へ案内するために、案内部材19が設けられており、該案内部材は、図示の実施形態では、前記急冷室内に不動に組み込まれていて、出口開口部13を側方から取り囲んでいる。案内部材19は、全周にわたって閉じられた周壁16の形式で形成されており、該周壁は、急冷室3のベース面20(底部)から出発して流れ方向17と逆向きにチャージフレーム5まで延びている。案内部材19の全周にわたる上側の端面21には、チャージフレーム5が隙間なしに密に接触しており、これにより、周壁16は、周壁状の案内部材19と一緒に、1つの上流流れ通路を形成しており、該上流流れ通路は、本来の流れ通路8の上流に、つまり流れ通路8の開口部13の上流に配置されている。チャージフレーム5の外側で急冷室3内に形成されているよどみ圧に基づき、ほぼ全急冷ガス容積流が、チャージフレーム5を通って流れ通路8内に達する。
【符号の説明】
【0031】
1 急冷装置、 2 急冷処理品、 3 急冷室、 4 ドア、 5 チャージフレーム、 6 圧力ガス通路、 7 高圧容器、 8 流れ通路、 9 ブロワー、 10 回転数制御装置、 11 熱交換器、 12 終端開口部又は流出開口部、 13 出口開口部、 14 底部、 16 周壁、 17 流れ方向、 18 端面、 19 案内部材、 20 ベース面、 21 端面、 22 支柱
図1
図2