(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5762336
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】鉄道貨車
(51)【国際特許分類】
B61D 17/10 20060101AFI20150723BHJP
B61D 3/18 20060101ALI20150723BHJP
B61F 1/00 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
B61D17/10
B61D3/18 A
B61F1/00
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-36185(P2012-36185)
(22)【出願日】2012年2月22日
(65)【公開番号】特開2013-169935(P2013-169935A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2013年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】590003825
【氏名又は名称】北海道旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 尚史
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 誠
(72)【発明者】
【氏名】湊 隆治
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 博彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 頼光
(72)【発明者】
【氏名】稲場 匡
(72)【発明者】
【氏名】新井田 武久
【審査官】
志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−235000(JP,A)
【文献】
特開2007−131014(JP,A)
【文献】
特開2003−104199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 3/18
B61D 17/10
B61F 1/00 − 1/14
B60P 3/06 − 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1鉄道車両としての鉄道貨車を1両又は複数両連結して第1編成列車に編成されており、当該第1編成列車に、第2鉄道車両を1両又は複数両連結した第2編成列車を積載可能な鉄道貨車において、
前記第1鉄道車両の床面をなすアルミ合金製の台枠と、
前記床面に形成されたアルミ合金製の凹部と、
前記台枠の長手方向に沿って敷設される鉄製のレールとを備え、
前記鉄製のレールと前記アルミ合金製の凹部とが直に接触して電蝕するのを防止するライナーを介して、前記レールを前記凹部内に載置するようにしたこと、
を特徴とする鉄道貨車。
【請求項2】
請求項1に記載された鉄道貨車において、
前記レールは、複数本の短寸レールをその長手方向の端部間に所定の隙間を設けて直列に接続することによって前記台枠の長手方向に沿って敷設されていること、
を特徴とする鉄道貨車。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された鉄道貨車において、
前記台枠は、対向する2枚の面板がリブで接続された中空押出形材からなる床板と、前記台枠の長手方向に沿って配設される2本のレール座と、を備えており、
前記レールは前記レール座の上部に固定されていること、
を特徴とする鉄道貨車。
【請求項4】
請求項3に記載された鉄道貨車において、
前記レール座は上フランジと、下フランジと、前記上フランジと前記下フランジとを接続するウェブと、から構成されており、
前記レール座は前記台枠をなす横梁に交差する態様で備えられており、
前記上フランジの上面部には前記レールが載置される凹部が備えられていること、
を特徴とする鉄道貨車。
【請求項5】
請求項1又は2に記載された鉄道貨車において、
前記台枠は、対向する2枚の面板がリブで接続された中空押出形材からなる床板と、長手方向に対する垂直断面が略矩形状の二つのレール受と、から構成されており、
前記レールは、前記二つのレール受間に固定されていること、
を特徴とする鉄道貨車。
【請求項6】
請求項1又は2に記載された鉄道貨車において、
前記台枠は、対向する2枚の面板がリブで接続された中空押出形材からなる床板と、長手方向に対する垂直断面が略U字状のレール受と、から構成されており、
前記レールは、前記レール受に備えられること、
を特徴とする鉄道貨車。
【請求項7】
請求項5又は6に記載された鉄道貨車において、
前記レールは、
略水平面を有するとともに、その幅方向に第2鉄道車両の車輪が転動する頭部を有す底部と、
前記底部の幅方向の両端部に立設される垂直部と、
前記垂直部から水平方向に延伸する水平部と、
を備えていること、
を特徴とする鉄道貨車。
【請求項8】
請求項7に記載された鉄道貨車おいて、
前記水平部は前記レールの長手方向に沿って離散的に備えられるとともに、前記レールを前記台枠に固定するボルトを通すボルト孔が形成されていること、
を特徴とする鉄道貨車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1鉄道車両としての鉄道貨車を1両又は複数両連結して第1編成列車に編成されており、当該第1編成列車に、第2鉄道車両を1両又は複数両連結した第2編成列車を積載可能な鉄道貨車に関し、特に、鉄道車両を積載するために鉄道貨車の床面に敷設されるレールの取付構造、及びレール形状に関する。
【背景技術】
【0002】
軌間(2本のレールの間隔)の異なる路線を相互に直通運転する方法は複数考案されている。例えば、鉄道車両を支持する台車に、車軸の長手方向の両端部に備えられる2枚の車輪の間隔を、走行する軌間の間隔に合わせて変更できる軌間変換機構を備え、一方の軌間から他方の軌間に切り替わる地点に台車の軌間可変機構を動作させる軌間可変装置を備え、鉄道車両に当該切り替わり地点を通過させることで軌間の異なる路線を相互に直通運転する例がある。
【0003】
鉄道車両に軌間の異なる路線を走行させる別の方法として、複数の連結された貨車あるいは客電車等の鉄道車両を、別の軌間を有する軌道(レール)を走行可能な複数の連結された貨車の床面に敷設された軌道上に積載して輸送する方法がある。この場合、貨車から貨車へ積み荷である上記鉄道車両が円滑に移動できるように、貨車と貨車との連結部にはレール状の構造物を備えた渡り装置が掛け渡されている。
【0004】
後者の例に関しては、特許文献1において、複数の鉄道車両から構成され所定の軌間を持つ軌道を走行する鉄道列車を連結状態のまま搭載する列車搭載部を備えるとともに、所定軌道とは異なる寸法の軌間を有する特定軌道を走行する貨物列車及び列車搬入搬出方法として開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−262914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
第1鉄道車両としての鉄道貨車を1両又は複数両連結して第1編成列車に編成されており、当該第1編成列車に、第2鉄道車両を1両又は複数両連結した第2編成列車を積載して輸送する場合、積み荷となる一方の鉄道車両の重量が大きくなる傾向がある。特に、第2鉄道車両が貨物を運搬する貨車の場合、第1鉄道車両に積載される貨物の重量は、一方の貨車の自重とその貨車に積載された貨物の重量の和となり、積載される貨物の重量が50〜60重量トンに及ぶことが推定される。
【0007】
重量の大きい積載物を搭載した鉄道貨車を運行する場合、鉄道貨車を牽引する機関車の製造コスト、及び鉄道貨車が走行する軌道の保守コストを小さくするために、鉄道貨車の軽量化が望まれている。
【0008】
鉄道貨車を軽量化するために、台枠と、台枠の幅方向の両端部に立設される側構体と、側構体の上端部に載置される屋根構体と、を軽量のアルミ製合金で製作すること想定される。しかしながら、鉄道貨車に積載される鉄道車両は鉄製の車輪で支持されるため、鉄道貨車の台枠の上面に敷設され且つその鉄製の車輪が転動するレールも、強度及び保守等の観点から鉄製のレールが選定される。
【0009】
鉄道貨車のアルミ合金製の台枠の上面に鉄製レールを敷設する場合、鉄製レールの形状を工夫することで、鉄道貨車の軽量化を阻害しないことが望まれる。さらにアルミ合金製の台枠と鉄製のレールとの線膨張率の差が約2倍あるため、レールを台枠に固定するボルトの座面にすべりが生じて固定用ボルトが緩むようなことが生じにくいレールの固定構造とする必要がある。また、導電性のあるアルミ合金製の台枠と鉄製のレールの当接部において、鉄に比較してイオン化傾向の大きいアルミ合金の腐食が急速に進展する電蝕が発生するおそれがあるため、電蝕を回避できる固定構造としなければならない。
【0010】
このため、第1鉄道車両としての鉄道貨車を1両又は複数両連結して第1編成列車に編成されており、当該第1編成列車に、第2鉄道車両を1両又は複数両連結した第2編成列車を積載可能な鉄道貨車においては、アルミ合金で製作された鉄道貨車の台枠の上面に鉄製レールを配設する場合には、鉄製レールの形状を工夫して軽量化を促進する点と、線膨張率の相違に起因して鉄製レールをアルミ合金製の台枠に固定するボルトが緩むのを抑制する点と、鉄製レールが配設されるアルミ合金製台枠の電蝕を回避する点と、において解決すべき課題がある。
【0011】
本発明の目的は、アルミ合金で製作された台枠の上面に鉄製レールが配設される鉄道貨車において、軽量化を促進するとともに、線膨張率の相違に起因して鉄製レールをアルミ合金製の台枠に固定するボルトの緩みを抑制でき、さらに、鉄製レールが配設されるアルミ合金製台枠の電蝕を回避できる鉄道貨車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による鉄道貨車は、第1鉄道車両としての鉄道貨車を1両又は複数両連結して第1編成列車に編成されており、当該第1編成列車に、第2鉄道車両を1両又は複数両連結した第2編成列車を積載可能な鉄道貨車において、前記第1鉄道車両の床面をなすアルミ合金製の台枠と、
前記床面に形成されたアルミ合金製の凹部と、前記台枠の長手方向に沿って敷設される鉄製のレールと
を備え、前記
鉄製のレールと前記アルミ合金製の凹部とが直に接触して電蝕するのを防止するライナーを介して、前記レールを前記凹部内に載置するようにしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アルミ合金で製作された台枠の上面に鉄製レールが配設される鉄道貨車において、台枠とレールとの間にライナーを備えているので、鉄製レールが配設されるアルミ合金製台枠の電蝕を回避できる鉄道貨車を提供できる。また、台枠の上面に敷設されるレールについて、短寸の複数のレールを繋ぐとともに台枠への固定の形状及び構造に工夫を施すことで、レールに鉄の使用量を減らし、レール及び鉄道貨車の軽量化を促進するとともに、線膨張率の相違に起因して鉄製レールをアルミ合金製の台枠に固定するボルトの緩みを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明による鉄道貨車に別の鉄道車両が積載されている状態を示す側面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す鉄道貨車に別の鉄道車両を積載する様子を示す側面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す第1鉄道車両のA−A断面図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す第1鉄道車両のB部の拡大図である。
【
図6】
図6は、
図3に示す第1鉄道車両のB部の他の構成を示す拡大図である。
【
図7】
図7は、
図6に示す第1鉄道車両のD部の拡大図である。
【
図9】
図9は、
図6のD部に相当する図であって、他の構成を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明による鉄道貨車の実施形態を
図1から
図10を参照して説明する。
図1は、本発明による鉄道貨車に、別の鉄道車両が積載されている状態を示す側面図である。本発明による鉄道貨車は標準軌を走行可能な第1鉄道車両100であり、第1鉄道車両100の床面には狭軌の軌道をなす鉄製のレール205が敷設されている。第1鉄道車両100は、そのレール205に狭軌を走行可能な第2鉄道車両400の車輪を載せた状態で、当該第2鉄道車両400を積載して搬送可能である。
図1には第2鉄道車両400としてコンテナを積載した貨車を記しているが、貨車に代えて客車、機関車、電車、気動車(ディーゼルカー)、保線用車両などであってもよい。また、第1鉄道車両100としての鉄道貨車は、第2鉄道車両400が1両である場合には少なくとも1両あればよいが、編成された第2鉄道車両400を積載するには、少なくともその編成長さに対応した長さを確保するため、複数両連結して第1編成列車に編成される。
【0016】
第1鉄道車両100は、その長手方向の両端部と中央部とに計3台の台車50を備えている。第1鉄道車両100が両端部にのみ台車50を備えている場合には、重量の大きい第2鉄道車両400を積載すると、第1鉄道車両100に備えられる台車50の1軸当たりが負担する荷重(軸重)が大きくなるが、第1鉄道車両100の中央部にも台車50を備えることにより、台車50の1軸当たりが負担する荷重(軸重)が分散されて小さくなる。これによって、第1鉄道車両100が高速走行時に標準軌の軌道に与える衝撃が緩和される。各台車50には2軸の輪軸(2枚の車輪と1本の車軸からなる)が備えられている。なお、第1鉄道車両100が狭軌の第2鉄道車両400を積載した状態でも、第1鉄道車両100の軸重が許容値の範囲内であれば、台車50は第1鉄道車両100の長手方向の両端部の2箇所のみに備えても良い。
【0017】
第1鉄道車両100の床面の台枠110(
図3参照)上には、狭軌の軌道を構成する鉄製のレール205が敷設されるとともに、隣接する第1鉄道車両100同士の連結部にはレール205に連続する態様で渡り装置207が備えられている。複数の第1鉄道車両100を連結して第1編成車両を構成したときには、当該第1編成車両の長手方向の一方の端部から他方の端部まで、連続した狭軌の軌道が形成される。第1編成車両が曲線及び/又は縦曲線(例えば、上り勾配から下り勾配へ変わる点)を通過する際には、隣接する第1鉄道車両100同士の間で左右又は上下方向の相対変位を生じるが、渡り装置207は、このような相対変位を吸収できる機能を備えている。
【0018】
図2は、
図1に示す鉄道貨車に別の鉄道車両を積載する様子を示す側面図である。即ち、第1鉄道車両100に、その床面に敷設されている狭軌の軌道であるレール205に載せ移す態様で、狭軌の第2鉄道車両400である貨車を積載する様子を模式的に示している。まず、複数の第1鉄道車両100を連結した第1列車編成は、荷役設備250の近傍に誘導される。図示はしないが、荷役設備250は枕木方向に移動可能なトラバーサでもよいし、コンクリート等からなる常設された設備であってもよい。第1鉄道車両100と荷役設備250との間には、渡り装置207と類似の装置が備えられているので、第1鉄道車両100の台枠の上面に敷設されているレール205から荷役設備250の上面に敷設されているレール205に至る連続した狭軌の軌道が形成される。
【0019】
図3は、
図1に示す第1鉄道車両100のA−A断面図である。第1鉄道車両100は、車両構体として、床面をなす台枠110と、台枠110の幅方向の両端部に立設される側構体120,120と、側構体120,120の上端部に載置される屋根構体130とを備えている。なお、第2鉄道車両400を第1鉄道車両100の長手方向に沿って敷設されているレール205を利用して荷役するため、第1鉄道車両100の長手方向の両端部には妻構体を設置していない。
【0020】
台枠110及び側構体120,屋根構体130は、架台の上面に、所定の形状に押出成形されたアルミ合金製の押出形材をその押出方向と交差する方向に沿って所定の枚数並べて配設しておき、押出形材の接合面同士を突き合せた接合線に沿って摩擦撹拌接合又は溶接することによって製作される。その後、これら台枠110と側構体120,屋根構体130とを摩擦撹拌接合又は溶接によって組立てることによって、第1鉄道車両100が構成される。台枠110の上面には、その長手方向に沿って2本のレール205を敷設することによって、狭軌の軌道が構成されている。なお、側構体120,屋根構体130、後述する側梁122は、対向する2枚の面板とこれら面板とを接続する接続板とからなる中空押出形材で構成してもよい。
【0021】
各台車50において、輪軸10,10の両端部の側方には、レール5に沿う方向に配設される側梁16,16が備えられている。側梁16,16には空気バネ座20,20が備えられており、空気バネ座20,20の上面には空気バネ52,53が載置されている。台枠110には、上記したように、長手方向の両端部と中央部の部位で各台車50が備えられているが、台枠110は、当該各部位の台枠110の幅方向の両端部において、空気バネ52,53を介して各台車50に支持されている。空気バネ52,53は、標準軌のレール5を走行する際に側梁16,16(空気バネ座20,20)と台枠110との上下方向の相対変位や、レール5からの衝撃を緩和する。
【0022】
図4は、
図3に示す第1鉄道車両のB部の拡大図である。台枠110は、第1鉄道車両100の幅方向の両端部に配設されるとともに、側構体120,120の下端部に接続される側梁122,122(一方のみ図示)と、側梁122の長手方向(紙面に垂直な方向)に交差する態様で、側梁122の長手方向に沿って離散的に備えられるとともに、側梁122同士を接続する複数の横梁116と、床面をなす床板114,114aと、レール205が備えられるレール座300と、から構成される。床板114は対向する2枚の面板をリブで接続したアルミ合金製の中空押出形材からなり、床板114aは板材とこの板材の一方の面に備えられるリブ114b(一部のみ指す)とからなる。なお、横梁116およびレール座300は共に軽量化を促進するためにアルミ合金製の押出形材からなる。
【0023】
対向する2枚の面板とこれら面板を接続する接続板とからなる中空押出形材によって構成される床板114の幅方向の一方の端部は、側梁122に接続されており、床板114の他方の端部(1枚の面板)はレール座300の幅方向の一方の端部に接続されている。レール座300の他方の端部は床板114aの一方の端部に接続されることによって、台枠110の床面が一体に構成されている。
レール座300は、第1鉄道車両100の長手方向に交差する態様で配置されている複数の横梁116と交差する部位において、レール座300の長手方向の端部を横梁116の側面(紙面に沿う面)に突き合わせて溶接しても良いし、レール座300を第1鉄道車両100の長手方向に沿って連続的に配設した後、レール座300の側面(紙面に垂直な面)に横梁116を突き合わせ溶接しても良い。また、1枚の面板から構成される床板114aは一方の面にのみリブ114bを備えた例を示したが、両面にリブ114bを備えても良い。なお、床板114aを押出形材で構成すれば、リブ114bを容易に備えることができる。
【0024】
図5は、
図4に示すC部の拡大図である。レール座300は、レール205が載置される上フランジ320と、上フランジ320に沿う態様で配設される下フランジ310と、上フランジ320と下フランジ310とを交差する態様で接続するウェブ330と、からなる。上フランジ320の幅方向の両端部には、高さ方向に延伸するとともに、床板114および床板114aに接続する縁部324,324が備えられる。上フランジ320の幅方向の中央部には、その長手方向に沿ってレール205が載置される凹部322が備えられている。
【0025】
レール205は、底部213と、底部213の幅方向(紙面の左右方向)の中央部に隆起するとともに第2鉄道車両200の車輪が当接する頭部214と、から構成されており、頭部214の下面側には軽量化のための空隙215が設けられている。レール205の底部213を、上フランジ320に設けられた凹部322にはめ込む態様で、レール座300の上部に配設される。この時、鉄製のレール205と、アルミ合金製のレール座300とが直に接触して電蝕が生じないように、レール205とレール座300との間にはライナー216が備えられる。レール205は、レール座300の幅方向の両端部にその長手方向に沿って離散的に備えられた孔(図示なし)を用いて、ボルト240,240で固定されたバネ鋼340,340によって、レール座300に固定される。なお、図示はしないが、バネ鋼340と上フランジ320との間にも、電蝕を抑制するためにライナー216が備えられる。図示はしないが、レール205の底部213と、レール座300の上フランジ320と、を貫通する孔を施工したのち、電蝕を防止するカラーを備えるボルトナットを用いて、レール205をレール座300に固定しても良い。
【0026】
第1鉄道車両100の全長L1(
図1参照)に対して、レール205は、その全長をL1の約1/2から約1/4程度の長さとするとともに、レール205長手方向に向かい合う端部間に所定の隙間を設けてレール座300に固定されている。レール205の全長をアルミ合金製の台枠110の全長L1より短い長さとすることにより、第1鉄道車両100の周囲温度が変化する場合であっても、アルミ合金製のレール座300を含む台枠110の変形量と、鉄製のレール205の変形量との差を小さくすることができるので、レール座300に固定されたレール205の緩みを抑制することができる。さらに、鉄製のレール205を、底部213と頭部214のみから構成することによって、第1鉄道車両100の軽量化を促進することができる。
【0027】
図6は、
図3に示す第1鉄道車両のB部の他の構成を示す拡大図である。台枠110は、主に、対向する2枚の面板をリブで接続したアルミ合金製の中空押出形材114と、リブ114b(一部のみ指す)付きの床板114aとから構成されている。台枠110の車体幅方向の両端には側梁122,122(一方のみ図示)が溶接によって接続されている。離置された側梁122,122は、中空押出形材114及び床板114aと、側梁122の長手方向に交差する方向配置された複数の横梁116(第1鉄道車両100の長手方向において、台車50の位置を含む複数の部位に配置されている)によって連結されている。中空押出形材114と後述するレール受111,111との接合部は溶接によって接続されており、一体の台枠110を構成している。
【0028】
横梁116上部には、中空押出形材114と床板114aとの間で横梁116と交差するように車体長手方向に延びていて、第2鉄道車両400の車輪を転動可能に支えるレール205(一方のレールのみ図示)と、当該レール205をレール幅方向に挟んで置かれていてレール205を横梁116上に支持するレール受111,111とが、配設されている。
【0029】
図7は、
図6に示す第1鉄道車両のD部の拡大図である。レール受111,111は、長手方向の垂直断面が中空の矩形状のアルミ合金製であり、押出形材から構成することが可能である。レール205は鉄製であり長手方向に対する直交断面において、第2鉄道車両400の車輪のフランジ側に設けられた底部213と、当該車輪の踏面側に設けられており当該底部213に対して段差をなしていて当該車輪が転動する頭部214とを有している。レール205は、また、底部213と頭部214とを挟むように底部213と頭部214とに対して一体に立設される垂直部212,212と、垂直部212,212の高さ方向の中間部からほぼ水平方向外側に延伸する水平部210,210とを備えている。
【0030】
水平部210,210には、ボルト孔241,241(
図8参照)が備えられており、このボルト孔241に通されたボルト240,240によって、レール205はレール受111,111に固定される。レール205の水平部210,210と、当該水平部210,210に面するレール受111,111の上面部には、それぞれライナー216,216が介装されており、アルミ合金製のレール受111,111と鉄製のレール205とが、ボルト240,240による締め付け状態であっても、直に接触しない取付構造としている。また、レール受111,111の下面部にはその長手方向に沿って複数の空隙部113が備えられており、ボルト240を締結する際に締結工具等をレール受111の内部に挿入できる。
【0031】
図8は、
図7に示すレールの上面図である。レール205の幅方向の両端部に、その長手方向に沿って連続的に備えられる垂直部212,212の高さ方向中間部から、その幅方向にほぼ水平外側に水平部210,210が延伸している。レール205の幅方向の両側に備えられる水平部210は、軌道205の長手方向に沿って、所定の間隔P1にて離散的に複数個が備えられるとともに、各水平部210の中央部にはボルト孔241が形成されている。
【0032】
第1鉄道車両100の全長L1(
図1参照)に対して、レール205は、その全長L2がL1の約1/2から約1/4程度の長さの短寸レールであり、複数の短寸レール205が、隣り合うレール205,205の長手方向に向かい合う端部間に所定の隙間を設けて、台枠110の全長L1に渡って直列に配設される。鉄製のレール205の全長L2をアルミ合金製の台枠110の全長L1より短い長さとすることにより、温度が変化した場合のアルミ合金製の台枠110の変形量と鉄製のレール205の変形量との差を小さくすることができる。このため、レール205を台枠110側のレール受111,111に固定するボルト240,240の座面に、レール205との間で線膨張率の相違に基づく変形量の差が生じた場合であっても、その差が小さいため、ボルト240,240の座面のすべり(緩み)を抑制することができる。
【0033】
レール205に備えられる水平部210をその長手方向に沿って離散的に備えることによって、鉄製レール205の軽量化とともに第1鉄道車両100の軽量化を促進できる。さらに、複数のレール205を所定の隙間を空けて直列に、台枠110の長さ方向に沿って配設することにより、鉄製のレール205をアルミ合金製の台枠110に固定するボルト240の、線膨張率の相違に起因する緩みを回避できる。なお、レール205の底部213には、軽量化を兼ねた水抜き孔206が長手方向に離散的に形成されている。
【0034】
また、レール205の水平部210とそれに面するレール受111の各部位にはライナー216が備えられ、アルミ合金製のレール受111と鉄製のレール205とが、直に接触することを防止することによって、アルミ合金製の台枠110の電蝕を効果的に抑制することができる。
【0035】
図9は、
図6のD部に相当する図であって、他の構成を示す拡大図である。台枠110は、対向する2枚の面板をリブで接続したアルミ合金製の中空押出形材114から主に構成されており、レール205が敷設される台枠110の部位には、長手方向の垂直断面が略U字状のアルミ合金製の押出形材からなるレール受112が配設されている。中空押出形材114とレール受112との接合部は摩擦撹拌接合又は溶接によって接続されており、一体の台枠110を構成している。
【0036】
レール受112に敷設される鉄製のレール205は、レール受112の長手方向に交差する断面形状に略相似形状の断面形状を有しており、レール受112の上側に重ねられる態様で備えられる。レール205は、底部213と、底部213の幅方向(幅方向)の両端部に立設される垂直部212,212と、垂直部212,212の上端部からほぼ水平方向外側に延伸する水平部210,210を備えている。底部213の幅方向の中央部には、第2鉄道車両400の台車に備わる車輪の踏面が転動する頭部214を有している。
【0037】
レール205は、レール205の各垂直部212の上端部から延伸される水平部210に形成されるボルト孔241を利用して、ボルト240によって台枠110(レール受112)に固定される。レール205の底部213と、垂直部212,212と、水平部210とにそれぞれ面するレール受112の各部位には、それぞれライナー216が設けられ、アルミ合金製のレール受112と鉄製のレール205とが、ボルト240による締め付け状態でも、直に接触しない取付構造としている。
【0038】
図10は、
図9に示すレールの上面図である。レール205の幅方向の両端部に、その長手方向に沿って連続的に備えられる垂直部212,212の上端部から、その幅方向にほぼ水平外側に水平部210,210が延伸している。水平部210は、レール205の長手方向に連続に備えられておらず、所定の間隔P1にて離散的に備えられるとともに、その中央部にはボルト孔241が形成されている。
【0039】
第1鉄道車両の全長L1(
図1参照)に対して、レール205の全長L2は、L1の約1/2から約1/4程度の長さとして、複数のレール205を直列に配設して、温度が変化した場合のアルミ合金製の台枠110の変形量と鉄製のレール205の変形量との差を小さくし、線膨張率の相違に起因したボルト240の座面のすべり(緩み)を抑制すること、水平部210を離散的に備えることにより、鉄製レール205及び第1鉄道車両の軽量化を促進すること、レール205とレール受112との間にライナー216を備えることによりアルミ合金製の台枠110の電蝕を効果的に抑制することができる。
【符号の説明】
【0040】
5…レール(標準軌) 10…輪軸
16…側梁 20…空気ばね座
30…軸ばね 50…台車
52,53…空気ばね
100…第1鉄道車両 110…台枠
111,112…レール受 114…床板
120…側構体 130…屋根構体
205…レール 206…水抜き孔
207…渡り装置 210…水平部
212…垂直部 213…底部
214…頭部 216…ライナー
240…ボルト 241…ボルト孔
250…荷役設備 400…第2鉄道車両