特許第5762398号(P5762398)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5762398
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】セラミック製カッティングテンプレート
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/10 20060101AFI20150723BHJP
   A61B 17/56 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
   C04B35/10 Z
   A61B17/56
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-502696(P2012-502696)
(86)(22)【出願日】2010年4月1日
(65)【公表番号】特表2012-522712(P2012-522712A)
(43)【公表日】2012年9月27日
(86)【国際出願番号】EP2010054424
(87)【国際公開番号】WO2010112589
(87)【国際公開日】20101007
【審査請求日】2013年3月15日
(31)【優先権主張番号】102009002084.5
(32)【優先日】2009年4月1日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511004645
【氏名又は名称】セラムテック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】CeramTec GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【弁理士】
【氏名又は名称】篠 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100167852
【弁理士】
【氏名又は名称】宮城 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】ローマン プロイス
(72)【発明者】
【氏名】ハインリヒ ヴェッカー
(72)【発明者】
【氏名】マティアス エシュレ
【審査官】 原田 隆興
(56)【参考文献】
【文献】 特表平06−500762(JP,A)
【文献】 特表2001−521874(JP,A)
【文献】 国際公開第1993/016647(WO,A1)
【文献】 特表2013−540012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/10
A61B 17/56
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カッティングテンプレートであって、
クロムドープを有する酸化アルミニウム(Al23:Cr) 70〜90体積部、
Y安定化を有する酸化ジルコニウム(ZrO2:Y) 12〜22体積部及び
可変のCrドープを有する式SrAl12-xCrx19のアルミン酸ストロンチウム 1〜5体積部
を含有することを特徴とする、カッティングテンプレート。
【請求項2】
成分酸化ジルコニウム及びアルミン酸ストロンチウムが酸化アルミニウムマトリックス中で挿入されている、請求項1記載のカッティングテンプレート。
【請求項3】
アルミン酸ストロンチウムが小片状クリスタリット及び/又は小板の形態で存在する、請求項1又は2記載のカッティングテンプレート。
【請求項4】
この材料に付加的に、適した材料からなるウィスカー及び/又は繊維又は網状構造体又は織物が混入されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のカッティングテンプレート。
【請求項5】
医療技術において使用するための、請求項1から4までのいずれか1項記載のカッティングテンプレート。
【請求項6】
人工膝関節置換術の際に使用するための、請求項5記載のカッティングテンプレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、カッティングテンプレートもしくはソーブロック、好ましくは医療技術において使用するためのカッティングテンプレートもしくはソーブロックである。
【0002】
人工膝関節置換術(Knie-TEP-Implantation)毎に、いわゆるカッティングテンプレート又はソーブロックが大腿骨上に固定される。このカッティングテンプレートを用いて、大腿骨表面を大腿骨コンポーネントの形状寸法に適合させるために、通常の場合に3回の切断が実施される。各切断用に、カッティングテンプレート中にはガイド(1個のテンプレート中に3もしくは4個のカッティングガイド)が存在する。このガイド中で、振動ソーブレードを用いて切断が実施される。ソーブレード並びにカッティングテンプレートは今日、原則として生体適合性の金属合金から製造されている。
【0003】
ソーブロック中のガイドレールは、製造者に応じて、1.2〜1.5mmの幅を有する。ソーブレードの振動及びソーブレードとガイドレールとの間で生じる摩擦が原因となって、高度の金属摩耗がガイドレールの側に生じる。この摩耗は外科手術中に傷から除去されないかもしくは不十分にのみ除去されることができる。それゆえ、この摩耗は他方では感染の原因になりうるものであり、とりわけ患者のアレルギー反応をまねきうる。この理由から、この摩耗を原則として、しかしながら特に潜在的なアレルギー患者の場合のセラミック大腿骨コンポーネントの使用により移植反応が回避されるべきである場合に、減少させることが重要である。
【0004】
今日の知識水準によれば、金属摩耗の大部分はカッティングテンプレート中のガイドレールの摩滅により生じる。人工膝関節置換術の枠内でカッティングテンプレートを約20〜40回使用した後に、ガイドレールは、約0.5〜1.5mmだけ広がったガイド間隙を有する。その結果として、カッティングテンプレートのガイド精度はかなり低下する。外科医の結論は適切であり、ソーブレードの正確なカッティングガイドがもはや不可能であり、大腿骨の切断面の整合及び平坦性はますます偏りを有する。このことは、切断面と大腿骨コンポーネントとの間のより大きな間隙をまねく。この間隙は外科手術中に、さもなければ普通よりも多い体積の骨セメントで充填されなければならず、このことはこのシステムの耐用年数に不利な影響を及ぼしうる。
【0005】
本発明の基礎となる課題は、技術水準のカッティングテンプレート/ソーブロックの欠点を取り除くこと及び特に:
・金属摩耗を減少させること、その際に金属摩耗の減少は、これまでの金属による解決手段に比べて90%まで努力されるべきである;
・カッティングテンプレートの耐用年数を延長し、ひいてはコストを節約すること;
・アレルギーリスク並びに感染のリスクを減少させること
にあった。
【0006】
本発明による課題は意外なことに、独立請求項の特徴を有するセラミック製のカッティングテンプレート/ソーブロック(以下に、本発明によるカッティングテンプレート/本発明によるソーブロックについては、焼結成形体又は焼結体という概念も使用される)により解決された。好ましい態様は従属請求項に見出される。意外なことに、懸案の課題の解決が、極めて特別な組成を有する焼結成形体を必要とすることが確かめられた:
クロムドープを有する酸化アルミニウム70〜90体積部(Al23:Cr)、
Y安定化を有する酸化ジルコニウム12〜22体積部(ZrO2:Y)及び
可変のCrドープを有する式SrAl12-xCrx19のアルミン酸ストロンチウム1〜5体積部を含有する。
【0007】
本発明による教示では、金属摩耗は、金属製のこれまでのカッティングテンプレートもしくはソーブロックに比べて90%まで減少されている。使用中のカッティングテンプレートもしくは本発明によるソーブロックの耐用年数は明らかに延長されている、それというのも、カッティングテンプレートの少ない摩滅が生じるに過ぎないからである。このことはコストを減少させる。そのうえ、患者のアレルギーリスクもしくはアレルギー反応並びに感染のリスクは低下されている。
【0008】
本発明による一態様において、成分酸化ジルコニウム及びアルミン酸ストロンチウムは、酸化アルミニウムマトリックス中に挿入されている。
【0009】
好ましくは、アルミン酸ストロンチウムは、小片状の(plaettchenfoermigen)クリスタリット及び/又は小板(Platelets)の形で存在する。
【0010】
本発明による一態様において、カッティングテンプレートの材料には付加的に、適した材料からなるウィスカー及び/又は繊維又は網状構造体又は織物が混入されている。
【0011】
好ましくは、カッティングテンプレートは、医療技術において、特に骨を加工する(Bearbeitung)ための手術の際に、好ましくは人工膝関節置換術の際に使用される。
【0012】
本発明によるセラミックカッティングテンプレートの利点もしくはこれから製造されているセラミックの利点は次のとおりである:
・カッティングテンプレートは、極度に少ない摩耗を有する。
・材料は、生体適合性である。
・本発明によるカッティングテンプレートにレーザーで書き込む場合に、これは目で極めて良く見え、かつ読み取ることができ、それゆえカッティングテンプレートを使用する際の誤った取り扱いを減少させることができる。
・カッティングテンプレートは、良好なトライボロジー特性を有する。
【0013】
意外なことに、材料の次の組成を有するカッティングテンプレートが、医療技術分野における使用に卓越して適していることがわかった。
【0014】
【表1】
【0015】
そのようなカッティングテンプレートの支配的な集合組織成分(Gefuegebestandteil)は、酸化アルミニウムである。故に、硬さ、弾性率及び熱伝導率のような性質を決定する特徴が純粋な酸化アルミニウムの性質と密接している。成分酸化ジルコニウム及びアルミン酸ストロンチウムは、酸化アルミニウムマトリックス中に挿入されている。アルミン酸ストロンチウムは、本質的に強さ増加に寄与する、特徴的な小片状クリスタリット、小板を形成する。
【0016】
成分酸化ジルコニウム及びアルミン酸ストロンチウムは、純粋な酸化アルミニウムの場合よりも約60%高い破壊靭性の増加に寄与する。これらの強化成分により、強さはほぼ2倍増加され、同時にカッティングテンプレートの損傷許容性、すなわち考えられる損傷の場合にもなお高い残留強度を維持する性質が上昇する。
【0017】
本発明によるカッティングテンプレートの高い機械負荷の際に、意外なことに、例えば亀裂進展を阻害又は停止させる機構が活性化される。最も重要な機構は、その際に、正方晶相から単斜晶相への酸化ジルコニウムの応力誘起変態である。酸化ジルコニウムの変態に付随する体積増加は、外部の引張荷重に抵抗し、ひいては亀裂成長を防止する局所的な圧縮応力の形成を生じさせる。
【0018】
挿入された小板により、意外なことに亀裂の伸び道がそれるので、亀裂進展の際に付加的なエネルギーが吸収される。
【0019】
本発明によるカッティングテンプレートの特殊性として、双方の機構が相互に強化されるので、破壊靭性の効果的な増加がそれどころか、個々の機構の単なる相加により予測されうるかもしれなかったものよりも大きい。
【0020】
カッティングテンプレートの製造は、常用のセラミック技術を用いて行われる。
【0021】
本質的なプロセス工程は次のとおりである:
a)所定の組成による粉末混合物を水中で調製する、沈降の回避のための流動化剤(Verfluessigern)の使用。
b)ディソルバー(高速撹拌機)中での均質化。
c)撹拌ボールミル中での粉砕、その際に、粉末混合物の比表面積の増加(=破砕(Zerkleinerung))。
d)有機結合剤の添加。
e)噴霧乾燥、その際に、定義された性質を有する易流動性顆粒が生じる。
f)水での顆粒の湿潤、
g)アキシアルプレス又はアイソスタチックプレス。
h)切削による生素地加工(Gruenbearbeitung)、その際に、焼結収縮を考慮しながら大体において最終輪郭が形どられる。
i)予備焼成、その際に理論密度の約98%への収縮。なお残留している残留細孔は、外へ向けて閉じられている。
j)高温及び高いガス圧下でのホットアイソスタチックプレス、それにより事実上完全な最終緻密化。
k)いわゆるクリーン焼成(Weissbrand)、それによりホットアイソスタチックプレスの際に発生されたセラミック中の酸素イオンの非平衡は相殺される。
I)研削及び研磨による硬質加工。
m)熱処理する(Tempern)。
【0022】
カッティングテンプレートの性質は挿入によりさらに強化されることができる。たとえば、ウィスカー及び/又は繊維をカッティングテンプレートの成形の前に材料へ混合すること又は網状構造体又は織物を生状態の材料へ導入することが可能である。ウィスカー、繊維又は網又は織物は、セラミック材料に対してその性質の劣悪化が生じるような相互作用をしない材料からなっていなければならない。そのうえ、焼結中に前記材料は、前記材料が損傷されるように変化してはならない。
【0023】
本発明によるカッティングテンプレートは、意外なことに、純粋な酸化アルミニウム及び酸化ジルコニウムのそれぞれ最良の性質を兼ね備えている:硬さ、耐老化性、水に対する湿潤挙動及び高い熱伝導率は、酸化アルミニウム製の焼結成形体から知られている性質であり、高い強さ及び高い破壊靭性、すなわち損傷許容性は、酸化ジルコニウム製の焼結成形体から知られている性質である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明によるセラミック製ソーテンプレート1を示す図。
図2】本発明によるセラミック製ソーテンプレート1を示す図。
図3】本発明によるセラミック製ソーテンプレート1を示す図。
図4】本発明によるセラミック製ソーテンプレート1を示す図。
図5】金属製の常用のソーテンプレートの形及び外科出術中の使用を示す図。
【0025】
図1〜4は、本発明によるセラミック製ソーテンプレート1を多様な方向から見た図で示す。図5は、金属製の常用のソーテンプレートの形及び外科出術中の使用についての図を示す。
【0026】
図1〜4には、ソーブロックとも呼ばれる本発明によるソーテンプレート1が示されている。この種のソーテンプレート1は、人工膝関節の埋込みの際の外科用ソーブレードのガイドに利用される。
【0027】
ソーテンプレートは、板状ソーブレードを通しかつ正確にフィットしてガイドするためのスリット状切抜き3が設けられている母体2からなり、その際にスリット状切抜き3は、互いに向かい合ったガイド面4を有する。これらのガイド面4上にソーブレード(図5参照)は切断過程の際に密接している。母体2中へ、大腿骨上でのソーテンプレート1のねじ止めに利用される貫通孔5が導入されている。
【0028】
本発明の範囲内で、焼結成形体/焼結体という概念は、カッティングテンプレートもしくはソーブロックの形のもしくはカッティングテンプレートもしくはソーブロックとして使用するためのセラミックを呼ぶ。
【符号の説明】
【0029】
1 ソーテンプレート、 2 母体、 3 スリット状切抜き、 4 ガイド面、 5 貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5