(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)重合性単量体100質量部に対して、(B)平均粒子径が0.1〜0.5μmの範囲であり、粒子径分布の標準偏差値が該平均粒子径の1.30以内にある球状のシリカ系粒子〔I〕の配合量が100〜400質量部であり、(C)前記シリカ系粒子〔I〕を有機樹脂マトリックス中に分散させた有機無機複合フィラーの配合量が50〜450質量部であり、(D)重合開始剤の配合量が0.01〜10質量部である請求項1記載の歯科用複合修復材料。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の歯科用複合修復材料は、(A)重合性単量体、(B)オパール効果を有する特定の平均粒子径のシリカ系粒子〔I〕、(C)有機無機複合フィラー、および(D)重合開始剤を含有してなる。ここで、有機無機複合フィラーとは、ポリマーと無機フィラーとの複合フィラーを意味する。本発明の歯科用複合修復材料は、該有機無機複合フィラーが配合されているため、ペーストのべたつき感がなく、硬化時の重合収縮が小さい利点がある。
【0015】
本発明の最大の特徴は、この(C)有機無機複合フィラーとして、分散する無機フィラーが、上記(B)成分で使用しているものと同じシリカ系粒子〔I〕である有機無機複合フィラーを用いる点にある。これにより、歯科用複合修復材料のオパール効果が、高度に維持される。
【0016】
ここで、オパール性付与フィラーを配合した硬化性組成物において、有機無機複合フィラーを配合する場合、有機無機複合フィラー中に分散する無機フィラーの屈折率が、重合性単量体の硬化体の屈折率と大きく異なると、該硬化性組成物の硬化体は、透明性が損なわれ、オパール性が発現しなくなる。また、該無機フィラーが、可視光の波長より十分に小さい粒子径であり(0.0050〜0.09μm)、有効な光の散乱が生じずにオパール効果を奏し得ないものである場合には、硬化性組成物の透明性は良好であるものの、この場合においても、その硬化体中には、オパール効果を有しない該有機無機複合フィラーが相当な容積を占めて含有されることになるため、オパール性は均一に発現せず効果を弱める。
【0017】
これに対して、上記の如くに、有機無機複合フィラーとして、オパール性付与フィラーであるシリカ系粒子〔I〕が分散されたものを用いれば、得られる硬化性組成物は、その硬化体において、該有機無機複合フィラーの存在部分もオパール効果を発現するため、硬化体全体でオパール効果が均一に発現し、前記有機無機複合フィラーにおける無機フィラーによるオパール効果の低減問題は解消する。
【0018】
以下、本発明の歯科用複合修復材料の各成分について説明する。
【0019】
<(A)重合性単量体>
本発明の歯科用複合修復材料において、重合性単量体として、公知のものが特に制限なく使用でき、例えば、ラジカル重合性単量体やカチオン重合性単量体等が使用できる。歯科用途として見た場合、重合速度の観点から、ラジカル重合性単量体を用いるのが好ましく、多官能のものがより好ましい。特に好ましいラジカル重合性単量体は、多官能(メタ)アクリレート系重合性単量体である。
【0020】
多官能の(メタ)アクリレート系重合性単量体を例示すれば、下記(イ)〜(ハ)に示すものが挙げられる。
(イ)二官能重合性単量体
(I)芳香族化合物系のもの
2,2−ビス(メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス[4−(3−メタクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル]プロパン、
2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、
2(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2(4−メタクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、
2(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2−(4−メタクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン
およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;
2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等の−OH基を有するメタクリレートあるいはこれらメタクリレートに対応する−OH基を有するアクリレートと、ジイソシアネートメチルベンゼン、4,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネートのような芳香族基を有するジイソシアネート化合物との付加から得られるジアダクト等。
【0021】
(ii)脂肪族化合物系のもの
エチレングリコールジメタクリレート、
ジエチレングリコールジメタクリレート、
トリエチレングリコールジメタクリレート、
テトラエチレングリコールジメタクリレート、
ネオペンチルグリコールジメタクリレート、
1,3−ブタンジオールジメタクリレート、
1,4−ブタンジオールジメタクリレート、
1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、
1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エチル
およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;
2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等の−OH基を有するメタクリレートあるいはこれらメタクリレートに対応する−OH基を有するアクリレートと、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)のようなジイソシアネート化合物との付加体から得られるジアダクト等。
【0022】
(ロ)三官能重合性単量体
トリメチロールプロパントリメタクリレート、
トリメチロールエタントリメタクリレート、
ペンタエリスリトールトリメタクリレート、
トリメチロールメタントリメタクリレート
およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート等。
【0023】
(ハ)四官能重合性単量体
ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、
ペンタエリスリトールテトラアクリレート;
ジイソシアネートメチルベンゼン、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネートのようなジイソシアネート化合物とグリシドールジメタクリレートまたはグリシドールジアクリレートとの付加体から得られるジアダクト等。
【0024】
これらの多官能の(メタ)アクリレート系重合性単量体は、硬化体の屈折率(25℃)が、通常1.45〜1.60、より好適には1.52〜1.56の範囲である。これらの中から、使用するシリカ系粒子〔I〕の屈折率(25℃)〔シリカは1.45であり、シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物であれば通常1.48〜1.58〕に応じて、その差が小さくなるよう選定して使用するのが好ましい(屈折率の差の具体値については後述する)。重合性単量体の2種以上を組合せて、全体で所望の屈折率に調整して用いても良い。一般に、芳香族系重合性単量体は高屈折率を示すものが多く、脂肪族系重合性単量体は低屈折率を示すものが多い。通常は、芳香族系重合性単量体を、重合性単量体の全量に対して20質量%以上配合させて調整するのが好ましい。
【0025】
さらに、必要に応じて、重合性単量体には、
メチルメタクリレート、
エチルメタクリレート、
イソプロピルメタクリレート、
ヒドロキシエチルメタクリレート、
テトラヒドロフルフリルメタクリレート、
グリシジルメタクリレート等のメタクリレート、
およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート等
の単官能の(メタ)アクリレート系単量体や、上記(メタ)アクリレート系単量体以外のラジカル重合性単量体を用いても良い。
【0026】
<(B)平均一次粒子径が0.1〜0.5μmの範囲であり、該粒子径分布の標準偏差値が1.30以内にある球形のシリカ系粒子〔I〕>
本発明の歯科用複合修復材料には、オパール効果を与える目的で、平均粒子径が0.1〜0.5μmであるシリカ系粒子〔I〕が配合される。ここで、オパール効果の発現には、平均粒子径が0.1〜0.5μmであることが重要である。即ち、オパール効果の発現は、ブラッグ条件に則って回折干渉が起こり、特定波長の光が強調されることによるものであり、上記粒子径の粒子を配合すると、その複合修復材料の硬化体には、この現象が発現するようになる。オパール効果を一層に高める観点から、シリカ系粒子〔I〕の平均粒子径は、0.12〜0.3μmがより好適であり、0.14〜0.28μmが特に好適である。
【0027】
なお、シリカ系粒子〔I〕の平均粒子径について、粒子径とは、一次粒子径を意味する。シリカ系粒子〔I〕は、一次粒子径が上記平均値範囲にあることが重要であり、この要件を満足する粒子であれば、該一次粒子の個々は多少の凝集粒子として存在していても良い。しかしながら、できるだけ独立粒子として存在しているのが好ましく、具体的には、10μm以上の凝集粒子が10体積%未満であることが好ましい。
【0028】
本発明において、粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡により粉体の写真を撮影し、その写真の単位視野内に観察される粒子の30個以上を選択し、それぞれの粒子径(最大径)を求めた平均値をいう。
【0029】
また、シリカ系粒子〔I〕の形状は、散乱する光が均一になり、鮮やかな発色が現れるようになることから、球形であることが必要である。さらに、粒度が揃っている方が散乱する光の均一性が高まり、良好なオパール効果が得られるため、粒子径分布の標準偏差値が1.30以内、好適には1.20以内のものを用いる。
【0030】
ここで、粒子が球状とは、略球状であればよく、必ずしも完全な真球である必要はない。一般には、走査型電子顕微鏡で粒子の写真を撮り、その単位視野内にあるそれぞれの粒子(30個以上)について、その最大径に直交する方向の粒子径を、その最大径で徐した平均均斉度が0.6以上、より好ましくは0.8以上のものであればよい。
【0031】
他方、粒子径分布の標準偏差値は、走査型電子顕微鏡により粉体の写真を撮影し、その写真の単位視野内に観察される粒子の30個以上を選択し、下記算出式より求めた値をいう。
【0033】
本発明においてシリカ系粒子〔I〕とは、石英などの結晶質シリカ、非晶質シリカの他、シリカを主成分とする他の金属酸化物との複合金属酸化物等が挙げられる。非晶質シリカとしては、湿式法、乾式法のいずれの製造方法で合成されたものでも良い。シリカを主成分とする他の金属酸化物との複合金属酸化物は、その複合比を変化させることにより、フィラーの屈折率を調整できるため好ましい。この中でも、シリカとチタン族(周期律表第IV族元素)酸化物との複合酸化物(以下、これらを「シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物粒子」とも略する)は、複合修復材料にX線不透過性も付与できることから特に好ましい。
【0034】
シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物粒子の具体例を挙げると、シリカ・チタニア、シリカ・ジルコニア、シリカ・チタニア・ジルコニア等であり、X線不透過性の高さから、シリカ・ジルコニアが最適である。シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物粒子において、シリカとチタン族酸化物との複合比は、特に制限されないが、十分なX線不透過性を付与する、および屈折率を好適な範囲にするとの観点から、シリカの含有量が70〜95モル%であり、チタン族酸化物の含有量が5〜30モル%であるものが好ましい。シリカ・ジルコニアの場合、このように各複合比を変化させることにより、その屈折率(25℃)を、通常、1.48〜1.58の範囲で調整できる。
【0035】
なお、これらシリカ・チタン族酸化物系複合酸化物には、シリカおよびチタン族酸化物以外の金属酸化物を少量複合させても良い。具体的には、酸化ナトリウム、酸化リチウム等のアルカリ金属酸化物を10モル%以内で含有させても良い。
【0036】
こうしたシリカ・チタン族酸化物系複合酸化物粒子の製造方法は、特に限定されないが、例えば、加水分解可能な有機ケイ素化合物と加水分解可能な有機チタン族金属化合物とを含んだ混合溶液を、アルカリ性溶媒中に添加し、加水分解を行って反応生成物を析出させる、いわゆるゾルゲル法が好適に採用される。
【0037】
これらのシリカ系粒子〔I〕は、シランカップリング剤により表面処理されても良い。シランカップリング剤での表面処理により、(A)重合性単量体の硬化体部分との界面強度に優れたものになる。代表的なシランカップリング剤としては、例えば、γ−メタクリロイルオキシアルキルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等の有機珪素化合物が挙げられる。これらシランカップリング剤の表面処理量に特に制限はなく、得られる複合修復材料の機械的物性等を予め実験で確認したうえで最適値を決定すればよいが、好適な範囲を例示すれば、粒子100重量部に対して0.1〜15重量部の範囲である。
【0038】
前記したように、オパール効果は、硬化体の透明性が高い場合に、より鮮明に発現する。そのため、シリカ系粒子〔I〕として、(A)重合性単量体の硬化体との屈折率差(25℃)が0.1以下、より好ましくは0.05以下であって、透明性をできるだけ損なわないものを選定して用いることが好ましい。
【0039】
本発明における(B)シリカ系粒子〔I〕の配合量は、(A)重合性単量体100質量部に対して、100〜400質量部が好ましい。シリカ系粒子を100質量部以上配合することにより、オパール効果が良好に発現するようになる。他方、平均粒子径が0.1〜0.5μmの粒子を、400質量部を越えて多量に配合することは一般的には困難である。また、シリカ系粒子〔I〕として、(A)重合性単量体の硬化体との屈折率差が大きいものを用いる場合、硬化体の透明性が低下し、オパール効果も十分に発現しなくなる虞も生じる。これらを勘案すると、(B)シリカ系粒子〔I〕の配合量は、(A)重合性単量体100質量部に対して150〜350質量部がより好適であり、180〜320質量部が特に好適である。
【0040】
<(C)(B)シリカ系粒子〔I〕を有機樹脂マトリックス中に分散させた有機無機複合フィラー>
前記したように、本発明では、(C)有機無機複合フィラーとして、有機樹脂マトリックス中に分散される無機フィラーが、上記オパール性付与フィラーであるシリカ系粒子〔I〕のものを用いる。ここで、シリカ系粒子〔I〕の詳細は、前記(B)成分で説明した場合と全く同じである。なお、この有機無機複合フィラーに分散させるシリカ系粒子〔I〕は、(B)成分として使用するシリカ系粒子〔I〕と同種であることが好ましいが、規定する範囲内のものであれば、異種のものであっても構わない。
【0041】
また、(C)有機無機複合フィラーにおける有機樹脂マトリックスは、前述の(A)重合性単量体として記載したものと同じ重合性単量体の単独重合体又は複数種の重合性単量体の共重合体が、なんら制限なく採択可能である。
【0042】
有機無機複合フィラーにおけるシリカ系粒子〔I〕の含有量は、特に制限されるものでないが、本発明の歯科用複合修復材料中に含まれるオパール性付与フィラーが材料中に均一に分散していることにより、オパール効果がより鮮明に発現するため、(A)重合性単量体に分散させる(B)オパール性付与フィラーと同程度であることが好ましい。具体的には、有機無機複合フィラーの総質量に対して50〜85質量%であることが好ましい。シリカ系粒子〔I〕の含有量が50質量%未満では、上記オパール効果の発現が低下する虞があり、さらには複合修復材料の硬化体の機械的強度が十分でなくなる。また、85質量%を越えてシリカ系粒子〔I〕を有機無機複合フィラー中に均一に分散させることは、一般的に困難である。シリカ系粒子〔I〕のさらに好適な含有量は、有機無機複合フィラーに対して50〜80質量%であり、最も好適な含有量は60〜78質量%である。
【0043】
上記(C)有機無機複合フィラーとしては、その配合により、複合修復材料の透明性を低下させないために、(A)重合性単量体の硬化体との屈折率差が、0.1以下、より好ましくは0.05以下に調整されたものを用いる必要がある。これにより、オパール効果を良好に発現させることが可能になる。このような(C)有機無機複合フィラーの屈折率の調整は、使用するシリカ系粒子〔I〕および有機樹脂マトリックスの種類、配合比等を適宜に調整して実現すれば良い。
【0044】
本発明において、(C)有機無機複合フィラーは、無機フィラー、重合性単量体、および重合開始剤の各成分の所定量を混合して重合性組成物を調製し、これを加熱あるいは光照射等の方法で重合させた後、粉砕する、有機無機複合フィラーの一般的製造方法に従って製造すれば良い。重合開始剤としては、光重合開始剤や、熱重合開始剤の公知の重合開始剤が特に制限なく用いられるが、より好適には熱重合開始剤である。
【0045】
ところで、上記有機無機複合フィラーの製造方法において、重合性組成物を重合して得られた重合体の粉砕は、ボールミル、振動ボールミル、ジェットミル等の粉砕ミルにより行なわれるが、この際の衝撃や、摩擦により、フィラーは局部的に高い熱を帯び、黄色に変色することが避けられない。このような黄変は、脱色(特開平10−114616号公報)、予め無機フィラーを凝集させ、得られた無機凝集粒子に重合性単量体を含浸させ、重合して、原則的に上記粉砕ミルによる過酷な粉砕を行わず穏和に有機無機複合フィラーを製造すること(特開2008−37952号公報)等により、かなりの軽減が可能であるが、完全に抑えることは難しかったり、操作の煩雑性等から採用できない場合もある。
【0046】
しかして、このように黄色みを帯びた有機無機複合フィラーを用いた場合、得られる複合修復材料を使用して歯牙の切端部を修復すると、前記したように、この部分は透明性に格別に優れる部分であるため、僅かな黄色みであったとしても目立ち、審美性は大きく損なわれる。ところが、本発明の如く、有機無機複合フィラーの中に、オパール性付与フィラーであるシリカ系粒子〔I〕が分散されていると、これから発現されるオパール効果の青色が粒子内で上記黄色の反対色になり、これを相殺して目立たなくする。この結果、複合修復材料では、(B)シリカ系粒子〔I〕によるオパール効果の発現性も良好になり、複合修復材料の審美性が高度に維持される。
【0047】
具体的には、前記一般的方法、すなわち、無機フィラー、重合性単量体、および重合開始剤を含む重合性組成物を重合させた後、これを粉砕ミルにより粉砕する方法によって製造される有機無機複合フィラーは、場合によっては、背景色黒での青‐黄を表す色質指数であるb
*が−0.5〜−2.0程度になることもあるが、本発明に従って、無機フィラーとして前記オパール性付与フィラーを使用すると、一般的方法によって有機無機複合フィラーを製造する場合でも、この有機無機複合フィラーのb
*を−2.5以下、特に−3.0〜−4.5に改善することも可能であるため、一般的方法により製造された有機無機複合フィラーを使用することが可能である。無論、有機無機複合フィラーとして、前記有機樹脂マトリックス部分の黄色みが生じ難い方法により製造したものを用いると、複合修復材料におけるオパール効果の発現が最良になり好ましい。
【0048】
本発明において(C)有機無機複合フィラーの平均粒子径は、特に制限されるものではないが、硬化体の機械的強度や硬化性ペーストの操作性を良好にする観点から、2〜100μmが好ましく、さらには5〜50μmがより好ましく、15〜30μmであるのが特に好ましい。
【0049】
(C)有機無機複合フィラーには、その効果を阻害しない範囲で、公知の添加剤を配合することができる。具体的には、顔料、重合禁止剤、蛍光増白剤等が挙げられる。また、有機無機複合フィラーについて、歯科用複合修復材料での使用に先だって、更に洗浄やシランカップリング剤等による表面処理を行ってもよい。
【0050】
本発明の歯科用複合修復材料における(C)有機無機複合フィラーの配合量は、ペーストのべたつき感の解消、硬化時の重合収縮を小さくするとの観点からは、(A)重合性単量体100質量部に対して50〜450質量部が好ましい。さらに、(A)重合性単量体100質量部に対して70〜400質量部がより好ましく、90〜340質量部が最も好ましい。
【0051】
本発明の歯科用複合修復材料における(B)シリカ系粒子〔I〕と(C)有機無機複合フィラーとの合計の含有量は、それぞれの含有量の範囲内であればよいが、良好なオパール効果を得るためには、複合修復材料中において、(B)シリカ系粒子〔I〕および(C)有機無機複合フィラー中のシリカ系粒子〔I〕が、それぞれ、均一に分散している状態になっていることが好ましい。(B)シリカ系粒子〔I〕と(C)有機無機複合フィラーとを良好に分散させる観点からは、これらの合計量は、(A)重合性単量体100質量部に対して730質量部以下に抑えることが好ましく、700質量部以下に抑えることがより好ましく、660質量部以下であることが特に好ましい。また、オパール効果を十分に高めるためには、(B)シリカ系粒子〔I〕と(C)有機無機複合フィラーとの合計量は、(A)重合性単量体100質量部に対して270質量部以上であることが好ましい。
【0052】
<(D)重合開始剤>
本発明における重合開始剤は、複合修復材料を重合硬化させる目的で配合されるが、公知の如何なる重合開始剤をも特に制限することなく使用できる。
【0053】
中でも、口腔内で硬化させる場合が多い歯科の直接充填修復用途では、光重合開始剤(組成)、又は化学重合開始剤組成が好ましく、混合操作の必要が無く、簡便な点から、光重合開始剤(組成)が好ましい。
【0054】
光重合に用いる重合開始剤としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタールなどのベンジルケタール類、ベンゾフェノン、4,4'−ジメチルベンゾフェノン、4−メタクリロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類、ジアセチル、2,3−ペンタジオンベンジル、カンファーキノン、9,10−フェナントラキノン、9,10−アントラキノンなどのα−ジケトン類、2,4−ジエトキシチオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、メチルチオキサンソン等のチオキサンソン化合物、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドなどのビスアシルホスフィンオキサイド類等が使用できる。
【0055】
なお、光重合開始剤には、しばしば還元剤が添加されるが、その例としては、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、N−メチルジエタノールアミンなどの第3級アミン類、ラウリルアルデヒド、ジメチルアミノベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒドなどのアルデヒド類、2−メルカプトベンゾオキサゾール、1−デカンチオール、チオサルチル酸、チオ安息香酸などの含イオウ化合物などを挙げることができる。
【0056】
更に、上記光重合開始剤、還元性化合物に光酸発生剤を加えて用いる例がしばしば見られる。このような光酸発生剤としては、ジアリールヨードニウム塩系化合物、スルホニウム塩系化合物、スルホン酸エステル化合物、およびハロメチル置換−S−トリアジン誘導体、ピリジニウム塩系化合物等が挙げられる。
【0057】
これら重合開始剤は単独で用いることもあるが、2種以上を混合して使用してもよい。重合開始剤の配合量は、目的に応じて有効量を選択すればよいが、重合性単量体100重量部に対して通常0.01〜10重量部の割合であり、より好ましくは0.1〜5重量部の割合で使用される。
【0058】
<その他の添加剤>
本発明の歯科用複合修復材料には、その効果を阻害しない範囲で、上記(A)〜(D)成分の他に、公知の添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、具体的には、重合禁止剤、顔料、紫外線吸収剤等が挙げられる。また、粘度調整等を目的として、色調や透明性に影響を与え難い、光の波長より十分に小さい平均粒子径(具体的には、平均粒子径が0.005〜0.09μm)のフィラーを配合することも有効である。
【0059】
<歯科用複合修復材料の硬化体のオパール性>
本発明の歯科用複合修復材料の硬化体は、優れた透明性を有し、良好なオパール性状を有する。すなわち、透明性を示す指標である1mm厚の試験片のコントラスト比は、通常、0.3以下の優れた値であり、より好ましくは、硬化体は、コントラスト比0.25以下を有する。ここで、コントラスト比は、色差計を用いて、三刺激値のY値を背景色黒および白で測定し、下記式に基づいて求めた値である。
コントラスト比=背景色黒の場合のY値/背景色白の場合のY値
【0060】
そして、同1mm厚の試験片は、オパール効果を示す指標であるΔC
*が、通常、18以上の優れた値を有し、より好ましくは20以上、さらに好ましくは25.5以上の値を有する。ここで、ΔC
*は、下記式で求められる。なお、透過光のオレンジ色は、赤−緑を表すa
*、反射光の青色は青−黄を表すb
*で表されるものである。
ΔC
*=√(a
*b−a
*w)
2+(b
*b−b
*w)
2
(a
*b、b
*b:背景色黒での色質指数、a
*w、b
*w:背景色白での色質指数)
【0061】
ここで、ΔC
*は、JIS Z 8730(2009)『色の表示方法−物体色の色差』に記載されたL
*a
*b
*表色系による色差(colour difference)の計算式から明度指数(L
*)に関する項を除いた値で、a
*b
*平面内での2点間の距離に対応する量であり、背景色によって色調が異なるオパール効果を示すものである。なお、ΔC
*は、色差計のC光源における反射モードで測定(試料面の法線に対し45°の角度で光を照射した時の試料を反射した光を測定)し、上記式で算定される。オパール効果の特徴である試験片の透過光のオレンジ色は、赤−緑を表すa
*、試験片の反射光の青色は青−黄を表すb
*で表されるものである。
【0062】
このようなa
*b
*の関係から求めたΔC
*の数値が、オパール効果の良好さを示す指標となることは、例えば、特表2003−511400号公報、およびYK Leeら,「樹脂複合体のオパール硬化の測定(Measurement of opalescence of resin composites)」,Dent Mater. 2005年,21号,p1068−1078等により歯科分野において周知である。なお、これら文献では、上記ΔC
*の計算式における背景色白での色質指数(a
*w、b
*w)に相当する値は、透過モード(試料面の法線方向から光を照射した時の試料を透過した光を測定)で測定しているが、背景色白として反射モードで測定しても、試験片を透過した光は全波長で反射されて測定されることになるから、求められるΔC
*の数値は、上記文献に示されるオパール効果の指標と良好に相関する。
【0063】
さらに、同1mm厚の試験片の黒背景色の時の分光反射率は、420〜470nmの波長において極大となるものが得られる。黒背景色という条件は、試験片を反射した光の測定を意味し、本発明の歯科用複合修復材料の硬化体は、優れた透明性およびオパール性状のため、青色の光を示す420〜470nmの波長で極大を示す。
【0064】
本発明の歯科用複合修復材料は、一般に、前記各必須成分および必要に応じて各任意成分の所定量を量りとり、十分に混練し、さらに必要に応じて、このペーストを減圧下脱泡して気泡を除去することによって調製される。
【0065】
本発明の歯科用複合修復材料は、充填用コンポジットレジンの一般的使用方法に従って使用される。具体的には、(D)重合開始剤が光重合開始剤であれば、修復すべき歯の窩洞を適切な前処理材や、接着材で処理した後に、複合修復材料を直接充填し、歯牙の形に形成し、専用の光照射器にて強力な光を照射して重合硬化させる方法等が挙げられる。その歯牙に対する適用箇所は、特に制限されるものではないが、オパール効果が求められる箇所が好ましく、切端部用として用いることが最適である。
【実施例】
【0066】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0067】
本発明における各種物性測定方法は、それぞれ以下のとおりである。
【0068】
(1)シリカ系粒子の平均一次粒子径および粒子径分布の標準偏差値
走査型電子顕微鏡(日本電子社製、「T−330A」)で粉体の写真を撮り、その写真の単位視野内に観察される粒子の数(50個)および粒子径を測定し、測定値に基づき下記式により平均粒子径および標準偏差値を算出した。
【0069】
【数2】
【0070】
(2)シリカ系粒子の平均均斉度
走査型電子顕微鏡で粉体の写真を撮り、その写真の単位視野内に観察される粒子について、その数(n:50個)、粒子の最大径を長径(LI)、該長径に直交する方向の径を短径(BI)を求め、下記式により算出した。
【0071】
【数3】
【0072】
(3)シリカ系粒子の比表面積測定
比表面積測定装置「フローソーブII2300」(島津製作所製)を用い、BET法にて測定した。なお、窒素30%ヘリウム70%混合気を用い、冷媒として液体窒素を用いた。
【0073】
(4)シリカ系粒子の屈折率の測定
23℃の恒温室において、100mlサンプルビン中、シリカ系粒子1gを無水トルエン50ml中に分散させる。この分散液をスターラーで攪拌しながら、1−ブロモトルエンを少しずつ滴下し、分散液が最も透明になった時点の分散液の屈折率をアッベ屈折率計にて測定し、得られた値をシリカ系粒子の屈折率とした。
【0074】
(5)有機無機複合フィラーの黄色度評価
10mm角程度の黒いテープ(カーボンテープ)の粘着面に有機無機複合フィラーを吹付け、余分なフィラーをエアーで吹き飛ばした。この操作を3回繰り返し、ポリエステルフィルムにフィラーが付着した面をのせ、色差計(東京電色製、「TC−1800MKII」)を用いて、背景色黒で測定を行った。有機無機複合フィラーの黄色度を評価するため、背景色黒において青−黄を表すb
*を比較した。
【0075】
(6)歯科用複合修復材料のオパール効果の評価
歯科用複合修復材料のペーストを、7mm×1mmの孔を有する型にいれ、孔の両面をポリエステルフィルムで圧接した。可視光線照射器(トクヤマ製、パワーライト)により、両面に30秒ずつ光照射して硬化させた後、型から取り出し、試料とした。各試料について、色差計(東京電色製、分光測色計「TC−1800MKII」)を用いて、C光源における反射モードで2度視野に基づき、背景色黒(東京電色製、吸光筒、L
*:0.9、a
*:−1.4、b
*:−0.2)および白(東京電色製、セラミック標準白色板、L
*:97.2、a
*:−0.2、b
*:0.3)で測定を行い、下記式に基づいてΔC
*を求め、オパール効果の指標とした。ここで、オパール効果の特徴である透過光のオレンジ色は、赤−緑を表すa
*、反射光の青色は青−黄を表すb
*で表される。
ΔC
*=√(a
*b−a
*w)
2+(b
*b−b
*w)
2
(a
*b、b
*b:背景色黒での色質指数、a
*w、b
*w: 背景色白での色質指数)
【0076】
また、下記指標に基づいて、目視評価を行った。
◎:背景色黒において強い青色の発色が見られる。
○:背景色黒において弱いが青い発色が見られる。
△:背景色黒において僅かにしか青い発色が見られない。
×:背景色黒において青い発色が見られない。
【0077】
(7)歯科用複合修復材料の透明性の評価
(6)と同様にして歯科用複合修復材料の硬化体を作製した。次いで、この硬化体について、色差計を用いて、三刺激値のY値を、背景色黒および白で測定した。下記式に基づいてコントラスト比を計算し、透明性の指標とした。
コントラスト比=背景色黒の場合のY値/背景色白の場合のY値
【0078】
(8)歯科用複合修復材料のペーストの操作性
下記指標に基づいて評価した。
◎;べたつきのない良好な操作性
○;少しべたつく、あるいは、ざらつきがあるが、使用上問題ない操作性
×;べたつく、あるいは、ざらざらした性状
【0079】
実施例および比較例で用いた重合性単量体、重合開始剤、および各種添加剤は以下のとおりである。
[重合性単量体]
・2,2−ビス[(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル]プロパン(以下、「bIs−GMA」と略す。)
・トリエチレングリコールジメタクリレート(以下、「3G」と略す。)
・2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(以下、「D−2.6E」と略す。)
・1,6−ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)トリメチルオキサン(以下、「UDMA」と略す。)
[重合開始剤]
・アゾビスイソブチロニトリル(以下、「AIBN」と略す。)
・カンファーキノン(以下、「CQ」と略す)。
・N,N−ジメチルp−安息香酸エチル(以下、「DMBE」と略す)。
[重合禁止剤]
・ヒドロキノンモノメチルエーテル(以下、「HQME」と略す。)
・ジブチルヒドロキシトルエン(以下、「BHT」と略す。)
[紫外線吸収剤]
・2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン(以下、「BS110」と略す。)
【0080】
製造例1〔有機樹脂マトリックスの製造〕
表1に示すような重合性単量体を各混合し、実施例および比較例で使用したマトリックスM−1〜M−4を調製した。
【0081】
【表1】
【0082】
製造例2〔シリカ系粒子の製造〕
以下の方法により、実施例および比較例で使用するシリカ系粒子を製造した。
2−1)〔平均一次粒子径0.25μmの球状シリカ−チタニア粒子の合成〕
テトラエチルシリケート(コルコート社製,製品名:エチルシリケート28)170gをメタノール400gと混合し、0.04%塩酸水溶液を5g加え、温度30℃において約1時間攪拌しながら加水分解した。その後、この溶液に、テトラブチルチタネート27gおよびナトリウムメチラートメタノール溶液(濃度30重量%)10gをイソプロピルアルコール200gに溶かした溶液を、攪拌しながら混合して、テトラエチルシリケートとテトラブチルチタネートとの混合溶液を調製した。次に、攪拌装置付きのガラス製容器(内容積3l)にメタノール1000gを導入し、ついで、25重量%アンモニア水溶液250gを加えてアンモニア性アルコール溶液を調製した。これに、シリカ種粒子をつくるためのテトラエチルシリケート2gを添加し、30分間撹拌した後、上記テトラエチルシリケートとテトラブチルチタネートの混合溶液を、約5時間かけて滴下した。
【0083】
なお、反応中、反応槽の温度を40℃に保った。反応終了後、白濁した反応液から溶媒を留去し、乾燥し、950℃において1時間焼成して、シリカ−チタニア粒子(PF−1)を得た。このシリカ−チタニア粒子は、粒子径分布0.23〜0.27μm、平均一次粒子径0.25μmであり、その形状はSEM観察から球状であった。得られた粒子を、更に、γ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシシランで表面処理した。得られた粒子の各種物性を表2に示した。
【0084】
2−2)〔平均一次粒子径0.19μmの球状シリカ−ジルコニア粒子の合成〕
テトラエチルシリケート(コルコート社製,製品名:エチルシリケート28)120gをイソブチルアルコール(東然石油化学社製)400gと混合し、0.05%希硫酸水溶液5gを加え、40℃において約1時間攪拌しながら加水分解した。その後、この溶液に、テトラブチルジルコネート(日本曹達社製)25gおよびナトリウムメチラートメタノール溶液(濃度28重量%)10gをイソブチルアルコール200gに溶かした溶液を、攪拌しながら混合して、テトラエチルシリケートとテトラブチルジルコネートとの混合溶液を調製した。次に、攪拌装置付きガラス製容器(内容積3l)に、メタノール1000g、25%アンモニア水250gを導入し、得られたアンモニア性アルコール溶液中に、攪拌しながら、テトラエチルシリケートを4g添加し、30分間攪拌した後、上記テトラエチルシリケートとテトラブチルジルコネートとの混合溶液を、約6時間かけて滴下した。
【0085】
なお、反応中、反応槽の温度を40℃に保った。反応終了後、白濁した反応液から溶媒を留去し、乾燥し、950℃において1時間焼成して、シリカ−ジルコニア粒子(PF−2)を得た。このシリカ−ジルコニア粒子は、粒子径分布0.16〜0.20μm、平均一次粒子径0.19μmであり、球状であった。得られた粒子を、更に、γ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシシランで表面処理した。得られた粒子の各種物性を表2に示した。
【0086】
2−3)〔平均一次粒子径0.08μmの球状シリカ−チタニア粒子の合成〕
テトラエチルシリケート(コルコート社製,製品名:エチルシリケート28)170gをメタノール400gと混合し、0.04%塩酸水溶液5gを加えて、温度30℃において約1時間攪拌しながら加水分解した。その後、この溶液に、テトラブチルチタネート(日本曹達社製)26gとナトリウムメチラートメタノール溶液(濃度28重量%)10gとをイソプロピルアルコール200gに溶かした溶液を、攪拌しながら混合して、テトラエチルシリケートとテトラブチルチタネートとの混合溶液を調製した。次に、攪拌装置付きガラス製容器(内容積3l)にメタノール1000g、25%アンモニア水溶液250gを加えて、アンモニア性アルコール溶液を調製した。これに、シリカ種粒子をつくるためのテトラエチルシリケート2gを添加し、30分間撹拌した後、上記テトラエチルシリケートとテトラブチルチタネートの混合溶液を、約5時間かけて滴下した。
【0087】
なお、反応中、反応槽の温度を40℃に保った。反応終了後、白濁した反応液から溶媒を留去し、乾燥し、1000℃において1時間焼成して、シリカ−チタニア粒子(PF−3)を得た。このシリカ−チタニア粒子は、粒子径分布0.072〜0.095μm、平均一次粒子径0.079μmであり、SEM観察から球状であった。得られた粒子を、更に、γ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシシランで表面処理した。得られた粒子の各種物性を表2に示した。
【0088】
2−4)〔平均一次粒子径0.06μmの球状シリカ−ジルコニア粒子の合成〕
テトラエチルシリケート(コルコート社製,製品名:エチルシリケート28)80gをイソブチルアルコール(東然石油化学社製)400gと混合し、0.05%希硫酸水溶液5gを加えて、40℃において約1時間攪拌しながら加水分解した。その後、この溶液に、テトラブチルジルコネート(日本曹達社製)21gとナトリウムメチラートメタノール溶液(濃度28重量%)13gとをイソブチルアルコール200gに溶かした溶液を、攪拌しながら混合して、テトラエチルシリケートとテトラブチルジルコネートとの混合溶液を調製した。次に、攪拌装置付きガラス製容器(内容積3l)にメタノール1000g、25%アンモニア水200gを導入して調製したアンモニア性アルコール溶液に、攪拌しながら、上記テトラエチルシリケートとテトラブチルジルコネートとの混合溶液を、約3時間かけて滴下した。
【0089】
なお、反応中、反応槽の温度を40℃に保った。反応終了後、白濁した反応液から溶媒を留去し、乾燥し、950℃において1時間焼成して、シリカ−ジルコニア粒子(PF−4)を得た。このシリカ−ジルコニア粒子は、粒子径分布0.04〜0.08μm、平均一次粒子径0.064μmであり、球状であった。得られた粒子を、更に、γ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシシランで表面処理した。得られた粒子の各種物性を表2に示した。
【0090】
2−5)〔平均一次粒子径0.4μm球状シリカ−ジルコニア粒子の合成〕
テトラエチルシリケート(コルコート社製,製品名:エチルシリケート28)120gをイソブチルアルコール(東然石油化学社製)400gと混合し、0.05%希硫酸水溶液5gを加えて、40℃において約1時間攪拌しながら加水分解した。その後、この溶液に、テトラブチルジルコネート(日本曹達社製)24gとナトリウムメチラートメタノール溶液(濃度28重量%)10gとをイソブチルアルコール200gに溶かした溶液を、攪拌しながら混合して、テトラエチルシリケートとテトラブチルジルコネートとの混合溶液を調製した。次に、攪拌装置付きのガラス製容器(内容積3l)にメタノール1000g、25%アンモニア水250gを導入して調製したアンモニア性アルコール溶液に、攪拌しながら、テトラエチルシリケートを4g添加し、30分間攪拌した後、上記テトラエチルシリケートとテトラブチルジルコネートとの混合溶液を、約6時間かけて滴下した。
【0091】
なお、反応中、反応槽の温度を40℃に保った。反応終了後、白濁した反応液から溶媒を留去し、乾燥し、950℃において1時間焼成して、シリカ−ジルコニア粒子(PF−5)を得た。このシリカ−ジルコニア粒子は、粒子径分布0.36〜0.43μm、平均一次粒子径0.40μmであり、球状であった。得られた粒子を、更に、γ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシシランで表面処理した。得られた粒子の各種物性を表2に示した。
【0092】
2−6)〔平均一次粒子径0.6μmの球状シリカ−チタニア粒子の合成〕
テトラエチルシリケート(コルコート社製,製品名:エチルシリケート28)120gをメタノール400gと混合し、0.04%塩酸水溶液を5g加えて、温度30℃において約1時間攪拌しながら加水分解した。その後、この溶液に、テトラブチルチタネート20gとナトリウムメチラートメタノール溶液(濃度30重量%)10gとをイソプロピルアルコール100gに溶かした溶液を、攪拌しながら混合して、テトラエチルシリケートとテトラブチルチタネートとの混合溶液を調製した。次に、攪拌装置付きのガラス製容器(内容積3l)にメタノール1000g、25重量%アンモニア水溶液250gを導入してアンモニア性アルコール溶液を調製した。これに、シリカ種粒子をつくるためのテトラエチルシリケート2gを添加し、30分間撹拌した後、上記テトラエチルシリケートとテトラブチルチタネートとの混合溶液を、約5時間かけて滴下した。
【0093】
なお、反応中、反応槽の温度を40℃に保った。反応終了後、白濁した反応液から溶媒を留去し、乾燥し、950℃において1時間焼成して、シリカ−チタニア粒子(PF−6)を得た。このシリカ−チタニア粒子は、粒子径分布0.56〜0.64μm、平均一次粒子径0.61μmであり、SEM観察から球状であった。得られた粒子を、更に、γ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシシランで表面処理した。得られた粒子の各種物性を表2に示した。
【0094】
【表2】
【0095】
製造例3〔有機無機複合フィラーの製造〕
乳鉢に、表3に示したシリカ系粒子をそれぞれ量りとり、予め重合開始剤AIBNを重量比で0.5%溶解してある表3に示すマトリックスに徐々に添加し、混合して、ペースト化させた。各ペーストを、95℃、窒素雰囲気中、1時間重合化した。得られた重合物を、ロールクラッシャーで粉砕した後、さらに、振動ボールミル(中央化工機株式会社製、ニューライトミル)において、φ25mmのジルコニアボールを10個とともに400mlのポットに入れた条件で30分間粉砕して、有機無機複合フィラーを得た。得られた各有機無機複合フィラーを、更に、γ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシシランで表面処理した。
【0096】
有機無機複合フィラー各50gを、エタノール75mlおよび30%過酸化水素水6.6mlの混合液に加え、80℃でリフラックスし、その後、濾過洗浄乾燥して、脱色した有機無機複合フィラーを得た。得られた各有機無機複合フィラーを、更に、γ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシシランで表面処理した。得られた各有機無機複合フィラーの各種物性を表3に示した。
【0097】
【表3】
【0098】
表3においてCF−1〜9の有機無機複合フィラーは、本発明の歯科用複合修復材料において(C)成分として配合される有機無機複合フィラーとして、無機フィラーがシリカ系粒子〔I〕の要件を満足しているものである。他方、CF−10〜12の有機無機複合フィラーは、無機フィラーが、上記シリカ系粒子〔I〕の要件を満足していないものである。後者に比べ、前者の有機無機複合フィラーは、b*が小さく、より黄色みの少ないフィラーである。また、CF−13は、シリカ系粒子を含まないものであり、他の有機無機複合フィラーと同様の方法で製造した有機フィラーであるが、b
*が大きく、黄色味が強いものである。
【0099】
実施例1〜6
マトリックスM−1に対して、CQ0.2重量%、DMBE0.3重量%、HQME0.15重量%、BHT0.02重量%、BS110 0.5重量%を加えて混合し、均一な重合性単量体組成物を調製した。次に、乳鉢に、表4に示した各(B)シリカ系粒子および(C)有機無機複合フィラーを量りとり、上記マトリックスを、赤色光下にて、徐々に加え、暗所にて、十分に混練し、均一な硬化性ペーストとした。さらに、このペーストを減圧下脱泡して、気泡を除去し、歯科用複合修復材料を製造した。得られた複合修復材料について、上記の方法に基づいて、各物性を評価した。組成および結果を表4に示した。
【0100】
実施例7〜11
(A)マトリックスM−3、(B)シリカ系粒子PF−2、(C)有機無機複合フィラーCF−7、CF−4、またはCF−6を、表4に示した配合量で使用して、各歯科用複合修復材料を構成した点を除き、上記実施例1〜6と同様にしてペーストを調製した。得られた複合修復材料について、各物性を評価した。結果を表4に示した。
【0101】
実施例12〜14
(A)マトリックスM−4、(B)シリカ系粒子PF−5、(C)有機無機複合フィラーCF−9を、表4に示した配合量で使用して、各歯科用複合修復材料を構成した点を除き、上記実施例1〜6と同様にしてペーストを調製した。得られた複合修復材料について、各物性を評価した。結果を表4に示した。
【0102】
実施例15〜16
(C)有機無機複合フィラーCF−1に代えて、有機無機複合フィラーCF−5、あるいはCF−8を使用した点を除き、上記実施例1〜6と同様にしてペーストを調製した。得られた複合修復材料について、各物性を評価した。結果を表4に示した。
【0103】
【表4】
実施例1〜16の全てにおいて、ペーストの操作性が良好で、コントラスト比が小さく、オパール効果が強く、背景色黒の時の分光反射率が440nm付近で極大となる歯科用複合修復材料が得られた。特に、(B)成分のシリカ系粒子と(C)成分の有機無機複合フィラーに含まれるシリカ系粒子とが好適な粒径であり、(B)シリカ系粒子、(C)有機無機複合フィラーの配合量が好適である、実施例1、2、5、6、7、8、10、11、15は、強いオパール性が発揮され、格別に好適なものであった。
【0104】
比較例1〜9
表5に示す各成分を使用して複合修復材料を構成した点を除き、上記実施例1〜6と同様にしてペーストを調製して歯科用複合修復材料を製造した。得られた複合修復材料について、各物性を評価した。結果を表5に示した。
【0105】
【表5】
【0106】
比較例1〜3は、(B)シリカ系粒子として、オパール性付与フィラーでないシリカ系粒子を用いた例であり、比較例4〜6は、(C)有機無機複合フィラーに代えて、無機フィラーを含有しない組成ではあるが、上記有機無機複合フィラーの調製法と同様の方法で製造した有機フィラーを用いた例であり、比較例7〜9は(C)有機無機複合フィラーとして、無機フィラーがオパール性付与フィラーでないものを用いた例である。得られた複合修復剤は、いずれも前記実施例のような優れたオパール性は発現しないものであった。