(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5762406
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】樹脂注入による航空機部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 43/12 20060101AFI20150723BHJP
B29C 43/32 20060101ALI20150723BHJP
B29K 105/08 20060101ALN20150723BHJP
B29L 31/30 20060101ALN20150723BHJP
【FI】
B29C43/12
B29C43/32
B29K105:08
B29L31:30
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-522210(P2012-522210)
(86)(22)【出願日】2010年7月16日
(65)【公表番号】特表2013-500180(P2013-500180A)
(43)【公表日】2013年1月7日
(86)【国際出願番号】FR2010051498
(87)【国際公開番号】WO2011015747
(87)【国際公開日】20110210
【審査請求日】2013年7月12日
(31)【優先権主張番号】0955290
(32)【優先日】2009年7月28日
(33)【優先権主張国】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509347273
【氏名又は名称】エアバス オペラシオン ソシエテ パ アクシオンス シンプリフィエ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ブロ
(72)【発明者】
【氏名】ブノワ オシャール
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ベクテル
【審査官】
田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第6048488(US,A)
【文献】
特開2004−309332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/12
B29C 43/32
B29K 105/08
B29L 31/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリフォーム(14)に少なくとも1つの層(22,29)を積み重ねて配置すると共に、上記プリフォームにおける上記層に最も近い一部の透過性よりも小さい透過性を所定の樹脂に与える材料によって上記層を構成する工程と、
上記プリフォームから離れて上記層(22,29)の表面に樹脂の存在を検知するセンサ(24)を配置する工程と、
上記層(22,29)から離れた上記プリフォーム(14)の端より当該プリフォームに樹脂を該樹脂が該プリフォーム全体に含浸するように注入する工程と、
上記センサ(24)が上記プリフォーム(14)から上記層(22,29)に浸透した樹脂に触れて該樹脂の存在を検知したときに樹脂の注入を停止する工程とを含む
ことを特徴とする航空機部品の製造方法。
【請求項2】
上記請求項1に記載された製造方法によって製造された航空機(2)の部品であって、
胴体部品(4)と、翼部品(6)と、スタビライザー部品と、構造的部品、支柱部品、及び/又は積荷室部品とのうち少なくとも1つの種類であることを特徴とする航空機部品。
【請求項3】
上記請求項1に記載された製造方法によって製造された少なくとも1つの部品を含むことを特徴とする航空機。
【請求項4】
航空機部品を製造するための製造装置であって、
プリフォーム(14)と、
上記プリフォームに積み重ねて配置された少なくとも1つの層(22,29)であって、当該層に最も近い上記プリフォームの一部における透過性よりも小さい透過性を所定の樹脂に与える材料からなる上記層と、
上記プリフォームから離れた上記層(22,29)の表面に配置され、樹脂の存在を検知するセンサ(24)と、
上記層(22,29)から離れた上記プリフォームの端(14)より当該プリフォームに樹脂を該樹脂が該プリフォーム全体に含浸するように注入する注入手段(18)と、
上記注入手段(18)を制御する制御手段(20)とを備え、
上記制御手段(20)は、上記センサ(24)が上記プリフォーム(14)から上記層(22,29)に浸透した樹脂に触れて該樹脂の存在を検知したときに上記注入手段(18)による上記樹脂の注入を停止することを特徴とする製造装置。
【請求項5】
上記請求項4に記載された製造装置であって、
上記材料からなる複数の層(22,29)を有し、
上記センサ(24)は、望ましくは、2つの上記層の間又は2組の複数の上記層の間に配置されていることを特徴とする製造装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載された製造装置であって、
上記材料の層(22,29)は、当該層に最も近い上記プリフォーム(14)の部分における繊維体積分率よりも大きい繊維体積含有率を示していることを特徴とする製造装置。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれか1つに記載された製造装置であって、
上記材料の層(22,29)は、上記層に最も近い上記プリフォーム(14)の部分における織り状態よりも細かい織り状態を示すことを特徴とする製造装置。
【請求項8】
請求項4乃至7のいずれか1つに記載された製造装置であって、
上記透過性は、上記層(22,29)の接平面に垂直な方向(Z)における上記材料の透過性であり、
上記層の材料は、望ましくは上記接平面に平行な方向(X,Y)における上記プリフォームの一部の透過性よりも小さい上記樹脂に対する透過性も示すことを特徴とする製造装置。
【請求項9】
請求項4乃至8のいずれか1つに記載された製造装置であって、
上記センサ(24)は、上記樹脂と接触しているときに所定の静電容量を示し、上記樹脂と接触していないときに異なる静電容量を示す材料を有していることを特徴とする製造装置。
【請求項10】
請求項4乃至9のいずれか1つに記載された製造装置であって、
上記センサは、上記樹脂の硬化の程度に関する情報を送信するように構成されていることを特徴とする製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料からなる航空機部品の製造方法に関し、特に樹脂注入を実行する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
複合材料からなる航空機部品を製造する公知の方法では、繊維を含むプリフォームに樹脂を注入するために、真空の効果を利用したステップを実行する必要がある。より正確に、プリフォームに比べて樹脂に高い透過性を示す媒質を用いることにより、樹脂は全体の繊維プリフォームの下表面に広がる。その後、樹脂を、層であるプリフォームを構成する補強層に対して垂直方向にプリフォームを通して注入させる。
【0003】
型の注入口において流れが止まったとき、又は、樹脂の注入量が理論的に必要とされる重量となったときに、樹脂の注入は停止される。それは半透膜を利用した方法に関する。このような半透膜により、樹脂は半透膜の下方で型内に閉じ込められる。このような半透膜が存在しない場合、注入動作の終了は、型内の真空を生成するために使用された通気孔から樹脂が流出することによって検出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この方法を実行している間、注入された樹脂の量は、部品の強固さに影響を与える。注入される量が十分でない場合、その部品に1つ又は複数の乾燥領域が生じる問題がある。注入が真空バッグの下で実行される場合、その注入量も部品の厚みに影響を与える。その部品における繊維の体積分率は低下し、その部品の機械的特性となる。
【0005】
残念ながら、半透膜の下に設けられた繊維プリフォームに樹脂を注入して複合材料の部品を形成している間、様々な理由で、プリフォームが樹脂で満たされた時点を検出することは困難である。
【0006】
第一に、注入容器の重さによって計測することは十分に正確でないため、樹脂の流れが止まった時点を検出することは困難である。容器と型との間の配管の存在が測定を妨害する。さらに、大量の樹脂を正確に測定することは困難である。最後に、型内において、又はその環境に設けられた材料において、漏れが樹脂回路で発生する可能性がある。
【0007】
さらに、プリフォームの体積を決定することが困難であるため、プリフォームに注入する必要がある樹脂の量を算出することは困難である。
【0008】
同様に、樹脂の供給管の長さは、装置の機能として、及び、注入後の樹脂を重合するために用いられる加熱手段として、使用者に決定されるので、樹脂の供給管の内部容積を制御することはできない。最終的に、樹脂の物理的特性(膨張係数、密度、圧縮率)に関する不確実性が残る。
【0009】
さらに、閉じた型の中でなく真空バッグの下方に注入するとき、樹脂の流量は初めに一時的な方法で停止することが判明した。樹脂の理論的な量が注入されたときに、樹脂の流量はゼロに向かう傾向がある。それによって、射出ポットとプリフォームの上部との間の損失ヘッドが低減する。損失ヘッドは流量の二乗に比例する。損失ヘッドが低減することにより、射出ポットとプリフォームの上部領域との間における圧力差は低減する。射出ポットの圧力が大気圧に等しければ(真空バッグの下に注入するときは一般に真である)、プリフォーム内の圧力は、例えば真空バッグの下において、大気圧に近くなる。これは、成形圧力(真空バッグの下の圧力と大気圧に等しい圧力との差に等しい圧力)の低減につながる。その結果、繊維プリフォームの厚みが増加し、さらに、追加の樹脂が吸い込まれる。そのことによって、樹脂の流量が一度ゼロに下がる前に、その流量が一時的に上昇する。
【0010】
本発明の目的は、樹脂注入を実行する様々な方法により、注入する樹脂の量をよりよく制御することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために、本発明に係る航空機部品の製造方法は、
・プリフォームに少なくとも1つの層を積み重ねて配置すると共に、上記プリフォームにおける上記層に最も近い一部の透過性よりも小さい透過性を所定の樹脂に与える材料によって上記層を構成する工程と、
・上記プリフォームから離れて上記層の表面に樹脂の存在を検知するセンサを配置する工程と、
・上記層(22,29)から離れた上記プリフォーム(14)の端より当該プリフォームに樹脂を
該樹脂が該プリフォーム全体に含浸するように注入する工程と
、
・上記センサ(24)が上記プリフォーム(14)から上記層(22,29)に浸透した樹脂に触れて該樹脂の存在を検知したときに樹脂の注入を停止する工程とを含む。
【0012】
したがって、相対的に不透過である層から離れたプリフォームの端より当該プリフォームに樹脂を注入することにより、プリフォームが樹脂により満たされた後でのみ、樹脂含浸は上記層において行われる。
【0013】
これにより、プリフォームの他方側にその透過性を与えると、樹脂がプリフォーム全体に注入された後にのみ、各追加の層の材料は樹脂で満たされる。
【0014】
樹脂は、このように追加の層を含浸させる前に、プリフォームの最後の層を含浸し終える傾向にある。
【0015】
樹脂が存在することを示すセンサから情報が受信されたときに、注入は停止される。
【0016】
この段階で、樹脂は既にプリフォームを満たしている。
【0017】
好ましくは、センサは、装置の半透膜の下に配置されます。
【0018】
本発明はまた、本発明の方法を使用して製造され、1つ以上の次のタイプの部品、すなわち、胴体部品と、翼部品と、スタビライザー部品と、構造的部品、支柱部品、及び/又は積荷室部品とのうち、少なくとも1つの種類の航空機部品を提供する。
【0019】
本発明はまた、本発明の方法によって製造された少なくとも1つの部品を含む航空機を提供する。
【0020】
また、本発明は、航空機部品を製造するための装置を提供する。上記装置は、
・プリフォームと、
・上記プリフォームに積み重ねて配置された少なくとも1つの層であって、当該層に最も近い上記プリフォームの一部における透過性よりも小さい透過性を所定の樹脂に与える材料からなる上記層と、
・上記プリフォームから離れた上記層の表面に配置され、樹脂の存在を検知するセンサと、
・上記層(22,29)から離れた上記プリフォームの端(14)より当該プリフォームに樹脂を
該樹脂が該プリフォーム全体に含浸するように注入する
注入手段(18)と、
・上記注入手段(18)を制御する制御手段(20)とを備え、
上記制御手段(20)は、上記センサ(24)が上記プリフォーム(14)から上記層(22,29)に浸透した樹脂に触れて該樹脂の存在を検知したときに上記注入手段(18)による上記樹脂の注入を停止する。
【0021】
好ましくは、上記装置は、上記材料からなる複数の層を有し、上記センサは、望ましくは、2つの上記層の間又は2組の複数の上記層の間に配置されている。
【0022】
これにより、上記樹脂が付加的な層に到達する前に上記プリフォームが適切に含浸されていることを確認する方法の信頼性が向上する。
【0023】
実施形態では、上記材料の層は、半透膜と装置のカウルプレートと間に設けられている。
【0024】
好ましくは、上記材料の層は、当該層に最も近い上記プリフォームの部分における繊維体積分率よりも大きい繊維体積含有率を示し、及び/又は、上記層に最も近い上記プリフォームの部分における織り状態よりも細かい織り状態を示す。
【0025】
これら最後の2つの状況は、上記材料の層が、上述の透過特性を与えることができるように実施形態を構成する。
【0026】
好ましくは、上記透過性は上記層の接平面に垂直な方向における上記材料の透過性であり、上記層の材料は、望ましくは上記接平面に平行な方向における上記プリフォームの一部の透過性よりも小さい上記樹脂に対する透過性も示す。
【0027】
従って、上記付加的な層に垂直な方向に沿って伝播する前に、樹脂層はプリフォームの最後の層を含浸し終える傾向にあることが保証される。
【0028】
上記材料の透過性がまた上記層の全体的な平面に平行な方向におけるプリフォームの透過性よりも小さい場合、上記樹脂は、上記付加的な層に早期に伝播することが防止されて、プリフォームの他の領域に含浸するため、その部分に乾燥領域が残ることとなる。
【0029】
上記平面に平行な方向におけるプリフォームでの損失ヘッドが一定でない場合、特にプリフォームの厚み及びその一部の厚みが上記方向において変化する場合、この構成は特に有利である。
【0030】
好ましくは、上記センサは、上記樹脂と接触しているときに所定の静電容量を示し、上記樹脂と接触していないときに異なる静電容量を示す材料を有している。
【0031】
これは、実施することが特に簡単であるセンサの一実施形態である。
【0032】
好ましくは、上記センサは、上記樹脂の硬化の程度に関する情報を送信するように構成されている。
【0033】
これにより、重合の完了に対応した時点を決定することができ、例えば、ストーブやオートクレーブなどの加熱手段の中に部品を配置させる時間を短縮できる。
【0034】
好ましくは、上記センサは、上記樹脂の粘度に関する情報を送信するように構成されている。
【0035】
上記装置が複数のセンサを有するようにしてもよい。
【0036】
そのことにより、もしいずれかが例えば部品の表面に近づけば、充填の不均一性を検出することができる。
【0037】
本発明の他の特徴および利点は、非限定的な例の方法により、添付図面を参照して与えられた実施形態の以下の説明からさらに現される。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、樹脂注入を実行する様々な方法により、注入する樹脂の量をよりよく制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図2】
図2は、4つの連続した工程で方法を実行する一般的な原理を示す本発明の装置における断面図である。
【
図3】
図3は、4つの連続した工程で方法を実行する一般的な原理を示す本発明の装置における断面図である。
【
図4】
図4は、4つの連続した工程で方法を実行する一般的な原理を示す本発明の装置における断面図である。
【
図5】
図5は、4つの連続した工程で方法を実行する一般的な原理を示す本発明の装置における断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の装置の例を示す断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の装置の例を示す断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の装置の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、ここでは重航空機である本発明の航空機2を示しており、本実施形態では飛行機を例として示している。飛行機は胴体4と、それぞれエンジン8を有する2つの翼6を備えている。飛行機はまた尾翼10を備えている。
【0041】
図2〜
図5に示すように、以下に、本発明の方法を実行する一般的な原則を説明する。本発明の思想は、特にガラス繊維により補強されたプラスチック材料等の複合材料からなる飛行機2において、1つ以上の部品を製造することにある。
【0042】
上記方法を実行するために、製造装置12は、具体的には平面又は略平面形状の複数の重畳層又は層16を有するプリフォーム14を備えている。これらの各層は、繊維により構成されている。ここで、上記繊維は炭素繊維であるが、繊維は同様に例えばガラス繊維等の他の繊維とすることが可能である。プリフォームは、互いに積層された繊維織物からなる複数の層によって構成されている。しかし、より一般に、上記繊維は、織物、縫い合わされたシート、又は実際に積層されたシートを構成している長い繊維又は短い繊維であってもよい。上記繊維はまた、繊維又は切断された繊維のマットであってもよい。
図2において、積層された4つの層16は、繊維プリフォーム14を形成している。
【0043】
製造装置12は、上記積層体に樹脂を注入するための注入手段18を有している。
製造装置12は、特に、樹脂容器と、注入手段を制御するための制御手段20とを有している。
【0044】
本方法は、いかなるタイプのエポキシ樹脂を用いて実行してもよい。具体的に、サプライヤーであるHexcelにおける参照番号RTM6を有する樹脂を使用してもよい。その他にもポリエステル、フェノール、又はビスマレイミド樹脂などの注射可能な他のタイプの樹脂を使用してもよい。
【0045】
上記装置は、例えば層(プライ)を形成する1つ以上の付加的な層22をさらに有している。具体的には、2つの層22が設けられている。これらの層はプリフォーム14の上部に配置され、それらの層は積層体における層16の上に重ねられている。具体的に、それらの層はガラス繊維織物の層(プライ)である。しかしながら、それらの層は、例えば炭素繊維等のいくつかの他のタイプの繊維によって同様に形成することが可能である。
【0046】
ここで、参照のX,Y,Z,フレームが用いられており、方向X,Yは、互いに直交し、層16,22の平面に対して平行及び接線方向である。また、方向Zは、それら方向X,Yに対して垂直である。
【0047】
付加的な層22は、本方法に用いられ、プリフォーム14の層における透過性よりも小さい樹脂の透過性を有する。特に、上記透過性が各層22を形成するXY平面内の任意の方向で測定されたとき、及び、上記透過性がZ方向で測定されたときに、この特性は同様に適用される。さらに、上記透過性が、プリフォーム14の上層の透過性又はさらにその上層の透過性よりも小さくなるように準備することは可能であるが、本実施例において上記透過性はプリフォームの各層における透過性よりも小さい。
【0048】
この透過性特性を得るためには、特に各層22が、層14のいずれよりも細かく織られるように、すなわち各層14よりも大きい単位面積あたりの繊維量を与えるように準備する。その代わりに、又はそのことに加え、層22における繊維の体積分率が層14よりも大きくなるように準備してもよい。
【0049】
特に、上記装置12は、このように構成された積層体の底部に、すなわちプリフォームの底部の層に、樹脂が注入されるように設けられている。
【0050】
上記装置12は、樹脂の存在及び関連した取得を検出するセンサ24と、測定システムとを有している。例えば、これは誘電体センサであってもよい。上記センサは、樹脂と接触しているかどうかによって異なる静電容量を示す。
【0051】
この実施例では、センサ24は、触れている材料の機能として変化する電界の電気的特徴と共に、センサ表面での電界を生成する電流を伝えるのに適し、互いにかみ合った(織り合わされた格子状を含む)電極のシステムによって構成されている。したがって、センサが樹脂に接触していないとき、センサは、半導体材料や樹脂などの絶縁材料の透過性とは非常に異なる空の空間の透過性を測定する。とりわけ、センサは、樹脂成形材料の誘電特性を測定すること、及び、実行している間に特にその一部が重合している間にどのように変化するのかを追跡することを可能にする。それは、このように追跡する方法を可能にする。したがって、樹脂の存在及びその硬化の度合いは、誘電センサのインピーダンスを変更させる。センサによって提供された信号(位相シフト)を比較することにより、まず樹脂の存在、続いて硬化の度合い(又はその重合度の度合い)を検出することが結果として可能になる。センサが電流を流しかみ合っていることを考えると、センサは局所的に電気的に絶縁されているが、センサは樹脂と接触できるに違いない。これは、本実施例に見られるように、付加的な層22に、ガラス繊維のような非導電性材料を用いることができるからであり、それにより、電極間の短絡を避けることができる。センサ24は、2つの付加的な層22との間に配置されている。センサは、回路25を介して、電気的に適切な方法で例えば制御手段20に接続されている。
【0052】
積層体において、剥離布の層29は、方法の最後に層22からプリフォーム14を分離するのを簡単にするために、プリフォーム14と層22との間に介在されている。
【0053】
本発明の方法は、本実施例では次のように実施されている。
【0054】
液状樹脂は、その下の層を介して積層体に注入される。
図2は、層の面内及び方向Zで積層体に注入し始めている樹脂の含浸層16を示している。
【0055】
その後、樹脂は、次の層16に、そして次の層にも注入され、特にZ方向に沿って拡がっていく。
図3では、3つの下層16に樹脂が含浸され、一方で最後又は最も上の層16と2つの付加的な層22にはまだ樹脂が到達していないことがわかる。
【0056】
図4においてプリフォーム14全体
に樹脂が含浸するように、注入は第4層16に起こる。層16と22の透過性の差を考えると、樹脂は最初の追加層22に注入され始める前に、プリフォームの上部層16への含浸は完結する。
【0057】
最終的に、
図5に示されるように、一旦プリフォームが完全に含浸されると、樹脂は剥離布の層29に浸透し、さらに下層の付加的な層22に浸透することによって、センサ24が樹脂に触れることとなる。センサはこのようにして、制御手段20、つまり樹脂が層22のうちの一層を通って注入したことを示すオペレーターに、情報を伝達する。そして、これらの方法により、樹脂の積層体への注入が妨げられる。
【0058】
この方法が続くと、樹脂は硬化し、その硬化の度合いは、センサにより提供される情報を用いて直接に監視される。この情報が、樹脂の重合完了を示したときに、その部品は積層体から抽出される。
【0059】
上記装置12の第1の詳細な実施形態を
図6に示す。これは、密閉型に注入するための装置である。この装置は上部型26と下部型28とを示しており、両型とも内部は非成形物質により覆われている。ここで、下部型は平面である一方、上部型は積層体を囲む空洞を形成している。型26の内部では、付加的な層22を担時するプリフォーム14を見ることができるが、この図では、それらを区別していない。上記装置は、剥離布からなる3つの層29を有している。その下部層29は、プリフォーム14と下部型28との間に配置されている。最上層29は、付加的な層22と上部型26との間に配置されている。3つめの層29は、プリフォーム14と付加的な層22との間に置かれている。剥離布の3つの層29により、その方法の最後において、作成された部分と型と層22とを分離することが容易になる。センサ24は、また層22の間に挿入される。ここで、非形成物質があらかじめ積層されている場合には、剥離布が下部の型28とプリフォーム14の間で必要とされていないことがわかるはずである。
【0060】
上記装置の第2の実施形態は、
図7で示されており、装置は半透膜36を備えている。
図6に示されるように、型26と型28との間に配置された積層体の全体が見てとれる。本実施例には、下部の型28のみが存在している。剥離布の一番上の層29の上に、半透膜30が配置されており、その半透膜は密封ガスケット32を用いて型28と接続させるために、積層体の側面を越えて落ちる。排液布の層34は、半透膜上の積層体に位置しており、実施例では両者とも示されている。最後に、その組み立て部分は、密封ガスケット32に向かって下降し、そこで固定されている真空バッグ36を載せている。
【0061】
型が半透膜を含んでいるいる場合、本発明は大きな利点を示す。それにより、注入終了に関する情報が入手されると同時に、その部品に残る乾燥領域のリスクを最小限にする。付加的な層22は、注入の終了時にプリフォーム内で真空圧の排出を改善するが、作成部分が含浸される質のみを改善するものである。
【0062】
また、上記実施形態とは異なり、まだ真空バッグが備わっている
図8の実施形態は、カウルプレート40が設けられている。上記装置のこの実施形態は、単に、剥離布の中間層29下に挿入されているプレート40によって、そしてプレート40下にありプリフォーム上にある剥離布の付加的な層29の存在によって、上記実施形態とは異なっている。カウルプレートそれ自体が、繊維状プリフォーム14と半透膜の間に位置している限り、付加的な層22はこのようにカウルプレート40と半透膜30の間に位置している。
【0063】
本発明の方法は、
図2から
図5に示されるように、これらの装置のいずれかを用いて実施される。特に、樹脂は、最初に繊維状プリフォームに含浸し、その後で付加的な層22に含浸し始めるように、どんな場合にも積層体の底へ向かって注入される。センサは、一旦樹脂に接触すると、このようにプリフォームが適切に含浸されていることを示す信号を送信する。
【0064】
本発明の方法及び装置は、
図2の航空機の部品を作るために使用されることがある。本発明の方法及び装置は、パネル、縦通材、スパー、又は胴体4のパネルに適用される得る。それらは、フラップや補助翼などの領域又はスタビライザを有する部品であってもよい。或いは、それらは、縦通材、スパー、マット、エンジン室のような構造的部品であってもよい。もしくは、それらは翼部品であってもよい。
【0065】
当然のことながら、多くの修正は、その範囲を越えることなく、本発明に適用することができる。
【0066】
プリフォーム及びその派生部品は、形状が平面である必要はない。
【0067】
本発明は、航空機部品の製造に限定されない。本発明は、複合材料からなるいかなる部品(例えばパネル、カバー、船体)、特に樹脂を注入して作られる船(船体とデッキ)や鉄道車両(ハッチ、パーテーション、車体)や自動車(ボンネット等)の部品に適用され得る。
【0068】
図面を参照して説明したように、注入が上方向にではなく、層の最上部から下方向に起こるように条件を設定することができる。このような状況下では、付加的な層22は、プリフォームの下に配置される。
【0069】
剥離布が一般的に、プリフォームの層16よりも透過性が小さいことを示していることを考えれば、プリフォームからセンサを分離する付加的な層として剥離布の層を用いることが可能である。たとえば、
図2の積層体では、付加的な層22を省略することができる。
【0070】
付加的な層22、あるいはその層のうちの一層が、積層体における他の層の範囲よりも狭い範囲、特にプリフォームの範囲よりも狭い範囲を有するよう条件付けることができる。層22は、積層体の一端から他端へ至らない局部的な層であってもよい。したがって、単にガラス繊維マットにより形成されると共にプリフォームから分離させるためにセンサ24が配置された層22は、たった一つしかないことを予測することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上説明したように、本発明は、複合材料からなる航空機部品の製造方法に関し、特に樹脂注入を実行する方法について有用である。
【符号の説明】
【0072】
2 航空機
4 胴体
6 翼
12 製造装置
14 プリフォーム
22 層
24 センサ
29 剥離布の層