【文献】
Journal of Allergy and Clinical Immunology,2008年,Vol.121, No.2,p.471-478
下記(i)〜(iv)を含む工程によって得られた、長期凍結乾燥により死滅したマイコバクテリウム・ボビスBCG細菌を含む、アテローム性動脈硬化を予防又は治療するための組成物;
(i)生きたマイコバクテリウム・ボビスBCG細菌細胞の培養物を回収することと、 (ii)水中で又は塩の水溶液中で前記マイコバクテリウム・ボビスBCG細菌細胞を凍結することと、
(iii)凍結した前記マイコバクテリウム・ボビスBCG細菌細胞を、凍結乾燥器中で少なくとも98.5%の水を除去するのに十分な時間該細胞を乾燥させることにより、死滅させることと、
(iv)長期凍結乾燥した前記マイコバクテリウム・ボビスBCGの死滅した細菌細胞を回収すること。
前記マイコバクテリウム・ボビスBCG細菌が、1.5%未満の水を含有する、死滅しておりかつ変性していないマイコバクテリウム・ボビスBCG細菌からなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
100μgの長期凍結乾燥により死滅した前記マイコバクテリウム・ボビスBCG細菌を含み、前記組成物は1週間毎の皮下投与を目的とするものである、請求項5に記載の組成物。
100μgの長期凍結乾燥により死滅した前記マイコバクテリウム・ボビスBCG細菌を含み、前記組成物は1ヶ月毎の皮下投与を目的とするものである、請求項5に記載の組成物。
100μgの長期凍結乾燥により死滅した前記マイコバクテリウム・ボビスBCG細菌を含み、前記組成物は3ヶ月毎〜6ヶ月毎の皮下投与を目的とするものである、請求項5に記載の組成物。
【背景技術】
【0002】
アテローム性動脈硬化は、数十年かけて進行する複雑な慢性の炎症プロセスである。アテローム性動脈硬化は、酸化低密度リポタンパク質(LDL)の蓄積、細胞死の増大、及び動脈壁の肥大性の変性を特徴とし、チャネルの狭窄を引き起こすことにより血流が損なわれる。アテローム性動脈硬化は、身体のいずれの領域においても発症する可能性があるが、心臓、脳又は脳に通じる血管において発症する場合、最も重要である。狭窄は、動脈の内壁における粥腫(盛り上がった斑部)の形成に起因する。これらの粥腫は、低密度リポタンパク質、崩壊する筋肉細胞、線維組織、血小板の凝集物、コレステロール、マクロファージ、Tリンパ球、及び時としてカルシウムからなる。粥腫は、乱流の血流の領域において形成される傾向があり、血流中に高濃度のコレステロールを有する者において見出されることが最も多い。粥腫の数及び厚みは年齢とともに増大し、血管内面の円滑さの喪失を引き起こし、血栓(血餅)の形成を促進する。時には、血栓の断片が裂けて塞栓を形成し、これが血流中を移動し、より小さな血管を封鎖する。
【0003】
アテローム性動脈硬化及びその臨床病態は、男性及び女性の両方において罹患及び死亡の主因である。冠動脈(冠動脈心疾患)を含むアテローム硬化性心疾患は、全ての死の3分の1を占める最も一般的な死因である。脳への血液供給に対するアテローム硬化性の障害(脳卒中)は、がんに続く3番目に一般的な死因である。血管不全は、他の主幹動脈(例えば腎臓、下肢及び腸への)における血液の流れを低減させることにより多数の重度の疾病を引き起こすアテローム性動脈硬化の別の臨床病態である。
【0004】
残念なことに、アテローム性動脈硬化は、動脈に対する損傷が血流を制限するほどに重篤となるまで症状を生じない。アテローム性動脈硬化に起因する心筋への血流の制限により、狭心症又は心筋梗塞(心発作)が引き起こされる可能性がある。下肢の筋肉への血流の制限により、間欠性跛行(歩行により引き起こされ、休息により軽減される下肢の疼痛)が引き起こされる。脳に血液を供給する動脈の狭窄により、一過性の虚血性発作(24時間未満持続する脳卒中の症状及び徴候)及び眩暈のエピソード、又は最終的には脳卒中それ自体が引き起こされる可能性がある。
【0005】
アテローム性動脈硬化に関する現在の薬剤的処置としては、幾つかの薬剤、例えばスタチン系薬剤(ロスバスタチン)及びフィブラート系薬剤の使用が挙げられる。二次的な凝固及び塞栓形成を最小限に抑えようとする際に使用される抗凝血薬以外では、血管拡張薬は症状軽減をもたらすが、治癒的な価値はない。薬剤的処置に応答しないものに対して、又は或る特定の高リスク状況においては外科的処置が利用可能である。バルーン血管形成術は、狭くなった血管を拡張し、血液供給の改善を促進することができる。心臓への血液供給を冠動脈バイパス外科処置により回復させることもできる。大型アテローム性閉塞及び石灰化動脈閉塞を、動脈内膜切除術により除去することができ、疾患状態にある末梢血管部分全体を、織ったプラスチック管の移植片に置き換えることができる。
【0006】
アテローム性動脈硬化の発病は、炎症、自己免疫及び組織特異的変性の複雑な相互作用を伴う。
【0007】
アテローム性動脈硬化に関する多数のリスク因子としては、高血圧、喫煙、真性糖尿病、脂質異常症(高コレステロール血症)、メタボリック・シンドローム、肥満、虚血、男性であること、年齢、心疾患の家族歴、及びセデンタリー・ライフスタイルが挙げられる。
【0008】
因子が何であっても、結果として起こる動脈内膜の慢性炎症が、アテローム性動脈硬化の発症の主要な原動力である。アテローム性動脈硬化に関与する主要な細胞プロセスは、ケモカインを放出する内皮細胞の活性化を含む。酸化低密度リポタンパク質(LDL)は、炎症細胞の動員及び浸潤を助ける糖タンパク質接着分子(血管細胞接着分子−1(VCAM−1)、細胞内細胞接着分子−1(ICAM−1)及びE−セレクチン)を発現する内皮細胞の活性化を誘導する。内皮との結合後、白血球が内膜中に浸潤する。そこで、単球がマクロファージに分化し、マクロファージが酸化LDLからコレステロールを捕捉することにより泡沫細胞となる。結果として起こる動脈壁上への脂肪線条の蓄積の後に、進行性アテローム硬化性病変の形成が起こる。血管平滑筋細胞は増殖し、病変に向かって移動する。それらの動員の際、血管平滑筋細胞は、脂質アテローム上に線維性粥腫を形成する細胞外マトリクスを分泌する。最終的に、不安定な粥腫が、進行する慢性炎症の結果として崩壊することがある。結果として生じる血栓は、急性の冠動脈事象、例えば心筋梗塞及び脳卒中に関与する。
【0009】
NF−κBはアテローム硬化性病変における炎症応答の活性化と関連する関連マーカーであり(非特許文献1)、PPAR−γシグナル伝達は炎症性サイトカインの産生を阻害する(非特許文献2)。I−κBのリン酸化により、この疾患プロセスにおいて一定の役割を果たすNF−κBが活性化される。しかしながら、NF−κBの活性化がアテローム性動脈硬化に必要であるという直接的な証拠は存在しない(非特許文献3)。マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)経路はレチノイドX受容体α(RXRα)をリン酸化するが、非リン酸化型のRXRαは、PPARγとともにヘテロ二量体を形成し、炎症を相乗的に低減させる(非特許文献4)。
【0010】
炎症を標的にすることは、アテローム性動脈硬化に対する治療を開発するためのアプローチである。抗炎症薬の中には、アテローム形成の主要段階における心保護効果を発揮することが示されたものがある。チアゾリンジオンは、2型糖尿病の治療のために臨床的に使用されているペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)γアゴニストである。PPARγは、アテローム性動脈硬化に寄与する多数の細胞プロセスを調節する。in vitroの動物モデル及び臨床研究により、チアゾリンジオンが、内皮の機能不全を是正し、慢性の炎症プロセスを抑制し、脂肪線条形成を低減させ、粥腫発生及び血管壁肥厚化を遅延させ、粥腫安定化を増強することが示されている。したがってチアゾリンジオンは、2型糖尿病を有する患者においてアテローム性動脈硬化に関連するグルコースレベル及び長期的な心血管リスクの両方を改善させることができる抗炎症性抗トロンビン(antithrombic)剤としての可能性を示す(非特許文献5)。しかしながら、PPAR−γアゴニスト(心血管疾患のリスクが高い糖尿病患者においてインスリン増感剤として使用される)とPPAR−αアゴニスト(脂質異常症を治療するために使用される)との組合せにより、ApoE−/−においてアテローム性動脈硬化が増強され(非特許文献6)、ヒトにおいて主要な心血管の有害事象が誘導された(非特許文献7)。
【0011】
最近になって、免疫系がアテローム形成プロセスを変調させる主要な因子であることを示唆する証拠が増大している(概説に関しては、非特許文献8を参照されたい)。アテローム硬化性病変におけるほとんどの炎症細胞がマクロファージであるが、該細胞の多くて20%がTリンパ球である(非特許文献9)。この疾患プロセスは、自然免疫応答及び獲得免疫応答の両方により標的化される修飾型自己抗原(酸化LDL、HSP、アポトーシス性断片)の局所的な形成と関連する。これらの自己免疫応答は、酸化LDL及び死滅する細胞由来の潜在的に有害な残りの産物の除去を容易にする有益な効果を有する可能性がある。しかしながら、保護的な自己免疫と疾患促進性の自己免疫との間の均衡が失われると、自己免疫系は破壊的な炎症促進性プロセスに向かって加速することになり、粥腫の成長及び不安定化が引き起こされる。これらの観察結果は、粥腫抗原に対する免疫応答の変調に基づく、アテローム性動脈硬化に対する新たな治療の開発の可能性を指摘している。
【0012】
動物研究により、酸化LDLに存在する抗原に基づくワクチンにより粥腫抗原に対する免疫応答を変調させることによってアテローム性動脈硬化の発症を阻止することが可能であるという原理の証明の裏付けが提示された。しかしながら、酸化LDLは、標準化するのが困難な抗原組成物を有する複雑な粒子であるため、また、酸化LDLは潜在的に、有害な抗原を含有する可能性もあるため、酸化LDLそれ自体は理想的なワクチン成分ではない。したがって、ここ数年にわたり、相当な努力が、アテローム保護性免疫を誘導する酸化LDL中の正確な抗原を特徴付けることに費やされてきた。酸化LDLにおいて以下の2つの抗原が同定された:酸化リン脂質(ホスホリルコリン)及びアポB−100ペプチド(非特許文献10)。ホスホリルコリンに基づくワクチン及びアポBペプチドに基づくワクチンの両方に伴う制約は、作用メカニズムがあまり理解されていないことである。酸化リン脂質は、その発現の調節があまり理解されておらず、老化細胞及び細胞屑と関連する自己抗原と交差反応する、自然抗体と称されるIgMのサブクラスにより認識される。高い特異性及び標準化したワクチン調製物を産生する可能性は、アポBペプチドに基づくワクチンの幾つかの利点であり、現在ヒトワクチンが前臨床開発中である。このアプローチに伴う欠点としては、治療前に患者のヒト白血球抗原(HLA)遺伝子型判定を行う必要があること、及びHLA型に応じてワクチンを個人に合わせる必要があるというリスクが挙げられる。
【0013】
しかしながらこれまで、アポBペプチドに基づくワクチンの他には、免疫系を標的にする他の治療的アプローチは、アテローム性動脈硬化の治療に対しては開発されていない。
【0014】
身体が自己免疫応答の活性を制御するためには複数の方法が存在し、そのうち重要な方法の1つは、調節性T細胞(Treg)である。Tregの複数のサブタイプが同定されている。天然CD4
+CD25
+Foxp3
+Tregが、胸腺において発生し、その後末梢組織に入り、該組織において該Tregは全T細胞の5%〜10%を構成する。天然Tregとは対照的に、IL−10を産生する1型調節性T細胞(Tr1)及びTGF−βを産生する3型ヘルパーT細胞(Th3)は、樹状細胞(DC)による抗原提示及び活性化の後に、末梢においてナイーブT細胞から生成される。複数の証拠が、Tregの機能の調節不全がアテローム性動脈硬化に関係するとしている。アテローム性動脈硬化におけるTregの保護的役割に関する機能的な証拠も蓄積されている。CD80/86、CD28又はICOSの欠失、及び抗CD25抗体処理を介した天然Tregの除去により、粥腫形成が顕著に増大する(非特許文献11、非特許文献12)。同様に、TGF−βに関するT細胞受容体の欠失を介したTh3細胞の阻害により、疾患の進行が顕著に増強される(非特許文献13)が、その同種(cognate)抗原とともにオボアルブミン特異的なTr1細胞のクローンを投与することにより、アポリポタンパク質E欠損(ApoE
−/−)マウスにおいて粥腫の発達が阻害された(非特許文献14)。しかしながら、アテローム性動脈硬化における調節性T細胞の役割の理解は、依然として非常に不完全である。
【0015】
これらの知見は、免疫調節経路が誘起されて、炎症を低減させ、アテローム性動脈硬化を治療又は予防し得る可能性を提起した。興味深いことに、マイコバクテリウム・ボビスBCG(カルメット・ゲラン桿菌)ワクチン接種が乳児におけるアトピーの発症を防ぐことが示され、BCGが免疫応答の調節不全を予防することができることが示唆された(非特許文献15)。抗炎症治療としての生きたBCGの実現不可能な送達を回避するために、BCGを長期凍結乾燥により死滅させ(EFD BCG又はEFD)、それがアレルギー(喘息、PCTの国際出願の特許文献1、非特許文献16、非特許文献17)及び腸の炎症性疾患(炎症性腸疾患、PCTの国際出願の特許文献2)に関する複数の動物モデルにおいて強力な抗炎症剤であることが示された。EFDは、生きたBCG又は熱により死滅したBCGと関連する毒性の副作用を引き起こさず、DTH皮膚試験による結核の診断を妨害しない。EFDは、TNF−α、IL−12、IFN−γ及びT−betが関連するTh1シグナル伝達経路だけでなく、IL−4、IL−13及びGATA−3が関連するTh2シグナル伝達経路、並びにIL−17及びPPAR−γが関連すると考えられる新たなシグナル伝達経路にも作用するという独自の特性を有する(PCTの国際出願の特許文献2)。アレルギー及び腸の炎症性疾患の症状に対するEFDの保護/治癒効果は、IL−10を産生するCD4
+CD25
+調節性細胞の刺激と関連する(PCTの国際出願の特許文献1及び特許文献2)。
【0016】
しかしながら、アテローム性動脈硬化等の自己免疫疾患を治療するための調節性T細胞刺激因子の使用と関連し得る主要な副作用が存在する(非特許文献8)。調節性T細胞が過度に抑制的であり、免疫抑制が罹患した組織に限定されない場合、感染に対する防御、及びCD8 T細胞依存性の腫瘍細胞サーベイランスが損なわれるというリスクが存在する。例えば、週1回注射した場合、麻疹ウイルス由来のウイルスの核タンパク質が、マウスにおいてアテローム性動脈硬化を低減させることが示されている(非特許文献18)。しかしながら、この核タンパク質により、in vitroでの刺激に対してIL−10を分泌する抑制性Tregの発生が誘起され、マウスへのその投与により、T細胞によるIL−4及びIFN−γの産生が低減し、この麻疹核タンパク質処理が免疫抑制的である可能性があることが示唆された。
【0017】
本発明者らにより、以下の3つの相異なるマウスモデルにおいてEFD BCGがアテローム性動脈硬化を低減させることが実証された:1)30週で進行性のアテローム性動脈硬化病変を自発的に発症するアポリポタンパク質E欠損(ApoE
−/−)マウス、2)高脂肪食(hyperlipidemic diet)によりアテローム性動脈硬化を発症する低密度リポタンパク質受容体欠損(Ldlr
−/−)マウス、及び3)T細胞上に機能的TGF−β受容体を欠き、12週でアテローム性動脈硬化病変を自発的に発症するApoE
−/−×CD4dnTβRIIマウス。
【0018】
EFD BCGにより、標的化された遺伝子及びTGF−βシグナル伝達とは関係なく、3つのアテローム性動脈硬化誘発性(prone)マウスモデルにおいてアテローム硬化性病変の大きさが有意に低減した。
【0019】
EFD BCGにより、以下のことが同時に誘発された:1)IL−10産生及びTregの増殖を介した免疫調節効果、2)NF−κB活性化の阻害、並びに3)PPAR−αレベルの変化を伴わないPPAR−γの増大。
【0020】
このEFD BCGは、PPAR−γの選択的な誘導因子であり、PPAR−α活性化を誘導しないが、これは1つの利点であり、臨床的使用に関するその可能性を裏付ける。
【0021】
予期せぬことに、その免疫調節活性にもかかわらず、EFD BCGは、Th1免疫応答及びTh2免疫応答を起こすワクチン(ナイセリア・メニンジティディス(Neisseria meningitides)、BCG)によりもたらされる保護を弱力化せず、病原体感染(ウイルス(インフルエンザウイルス)、細菌(マイコバクテリウム・ツベルクローシス(M. tuberculosis:ヒト型結核菌))又は寄生虫(リーシュマニア・メジャー(Leishmania major)))の経過も悪化させなかった。宿主の効率的な免疫能の維持により、EFD BCGがヒトにおいて耐容性を有する治療剤であることが示唆される。
【0022】
EFD BCGに応答して、免疫抑制の徴候を有しない免疫調節プロファイルが誘導される。EFD BCGで処理したマウスにおける全身的炎症プロファイルの変調は、アテローム硬化性疾患における最大の危険である粥腫の崩壊を防止し得るものでもある、粥腫におけるMOMA
+マクロファージの局所的な蓄積の低減とも関連した。
【0023】
さらに、EFD BCGは本研究において、測定可能な程度の副作用を有しなかった。
【0024】
これらの結果により、EFDがアテローム性動脈硬化の予防及び治療のための新たな治療アプローチであることが示される。EFDは、長い活性持続時間(少なくとも2ヶ月)を有すると予想される。したがって、EFDは、1日1回の繰り返しの投与を必要とする現在使用されている薬剤と比較して、投与の回数が非常に限られるという利点を有する。加えて、EFD治療は、免疫抑制を誘導しないため、安全である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】国際公開第03/049752号
【特許文献2】国際公開第2007/072230号
【非特許文献】
【0026】
【非特許文献1】Bank et al., J. Clin. Invest., 1996, 97, 1715-1722
【非特許文献2】Jiang et al., Nature, 1998, 391, 82-86
【非特許文献3】T. Collins and M.I Cybulsky, J. Clinical Investigation, 2001, 107, 255-262
【非特許文献4】Yamazaki et al., Gut, 2007, 56, 1557-1563
【非特許文献5】B. Staels, Current Medical Research and Opinion, 2005, 21, suppl 1, S13-S20
【非特許文献6】Calkin et al., Atherosclerosis, 2007, 195, 17-22
【非特許文献7】Nissen et al., JAMA, 2005, 294, 2581-2586
【非特許文献8】Nilsson, J. and G.K. Hanson, Journal of Internal Medecine, 2008, 263, 464-478
【非特許文献9】Hansson, G.K., N. Engl. J. Med., 2005, 352, 1685-1695
【非特許文献10】Klingenberg et al., Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol., 2010, 30, 946-952
【非特許文献11】Ait-Oufella et al., Nat. Med., 2006, 12, 178-180
【非特許文献12】Gotsman et al., Circulation, 2006, 114, 2047-2055
【非特許文献13】Roberson et al., J. Clin. Invest., 2003, 112, 1342-1350
【非特許文献14】Mallat et al., Circulation, 2003, 108, 1232-1237
【非特許文献15】Shirakawa et al., Science, 1997, 275, 77-79
【非特許文献16】Lagranderie et al., J. Allergy Clin. Immunol., 2008, 121, 471-478
【非特許文献17】Lagranderie et al., The Journal of Immunology, 2010, 184, 1062-1070
【非特許文献18】Ait-Oufella et al., Circulation, 2007, 116, 1707-1713
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】長期的なEFD BCG処理により、ApoE
−/−マウスにおいて血清サイトカインレベルが変化し、免疫変調プロファイルが誘導されることを示す図である。サイトカインが、PBSで処理したマウス(白色のバー;1群当たりのマウス数n=6)と比較して、皮下注射による100μgのEFDで2ヶ月に1回、計3回処理したApoE
−/−マウス(SC;ストライプを付したバー)の個々の血清試料中で増大した。PBSで処理したマウスとの統計的差異を示す:
***:P≦0.001。
【
図2】長期的なEFD BCG処理により、ApoE
−/−マウスにおいて血清サイトカインレベルが変化し、免疫変調プロファイルが誘導されることを示す図である。サイトカイン及びケモカインが、PBSで処理したマウス(白色のバー;1群当たりのマウス数n=6)と比較して、皮下注射による100μgのEFDで2ヶ月に1回、計3回処理したApoE
−/−マウス(SC;ストライプを付したバー)の個々の血清試料中で低減した。PBSで処理したマウスとの統計的差異を示す:
**:P≦0.01、
***:P≦0.001。
【
図3】PBSで処理したマウス(白色のバー;1群当たりのマウス数n=6)と比較して、皮下注射による100μgのEFDで2ヶ月に1回、計3回処理したApoE
−/−マウス(SC;ストライプを付したバー)の個々の血清試料中で変化しないままであるサイトカイン及びケモカインを示す図である。
【
図4】EFD BCGが、ApoE
−/−マウスにおける炎症と関連する主要な転写因子の活性化に影響を及ぼすことを示す図である。PBSで処理したマウスと比較した、皮下注射(SC)による100μgのEFDで2ヶ月に1回、計3回処理したApoE−/−マウスの脾臓細胞核抽出物中の特定のDNAモチーフとのNF−κB(白色のバー)及びPPAR−γ(ストライプを付したバー)の結合。1群当たりのマウス数n=6。PBSで処理したマウスとの統計的差異を示す:
**:P≦0.01、
***:P≦0.001。EFD BCGは、PBSと比較したEFD BCG処理後のNFκBの転位の減少、及びPPARγの発現の増大により証明されるように、抗炎症効果を有する。
【
図5】長期的なEFD BCG処理により、ApoE
−/−マウスにおいて血清サイトカインレベルが変化し、免疫変調プロファイルが誘導されることを示す図である。サイトカイン及びケモカインが、PBSで処理したマウス(白色のバー;1群当たりのマウス数n=6)と比較して、皮下注射による100μgのEFDで月1回、計6回処理したApoE
−/−マウス(ストライプを付したバー)の個々の血清試料中で増大した。PBSで処理したマウスとの統計的差異を示す:
***:P≦0.001。
【
図6】長期的なEFD BCG処理により、ApoE
−/−マウスにおいて血清サイトカインレベルが変化し、免疫変調プロファイルが誘導されることを示す図である。サイトカイン及びケモカインが、PBSで処理したマウス(白色のバー;1群当たりのマウス数n=6)と比較して、皮下注射による100μgのEFDで月1回、計6回処理したApoE
−/−マウス(ストライプを付したバー)の個々の血清試料中で低減した。PBSで処理したマウスとの統計的差異を示す:
**:P≦0.01、
***:P≦0.001。
【
図7】PBSで処理したマウス(白色のバー;1群当たりのマウス数n=6)と比較して、皮下注射による100μgのEFDで月1回、計6回処理したApoE
−/−マウス(ストライプを付したバー)の個々の血清試料中で変化しないままであるサイトカインを示す図である。
【
図8】EFD BCGが、ApoE
−/−マウスにおける炎症及び免疫調節と関連する主要な転写因子の活性化に影響を及ぼすことを示す図である。RORγt、T−bet、GATA3及びFoxp3に関してウェスタンブロットにより解析した、PBS又はEFD BCGで月1回、計6回処理したマウス(1群当たりのマウス数n=6)由来の2つの脾細胞抽出物に関する3つのプール。β−アクチンを内部対照として使用した。EFD BCGは、T−bet(Th1のシグネチャー)及びFOXP3(Tregのシグネチャー)を増大させること、並びにRORγt及びGATA−3(それぞれTh17及びTh2のシグネチャー)を減少させることにより、免疫調節応答を開始する。
【
図9】EFD BCGが、ApoE
−/−マウスにおける炎症と関連する主要な転写因子の活性化に影響を及ぼすことを示す図である。PBSで処理したマウス(1群当たりのマウス数n=6)と比較した、皮下注射による100μgのEFDで月1回、計6回処理したApoE−/−マウスの脾臓細胞核抽出物中の特定のDNAモチーフとのNF−κB(白色のバー)及びPPAR−γ(ストライプを付したバー)の結合。PBSで処理したマウスとの統計的差異を示す:
***:P≦0.001。EFD BCGは、PBSと比較したEFD BCG処理後のNFκBの転位の減少により証明されるように、抗炎症効果を有する。
【
図10】長期的なEFD BCG処理により、ApoE
−/−マウスにおいて免疫調節プロファイルが誘導されたことを示す図である。マウスに6週齢、10週齢、14週齢、18週齢、22週齢及び26週齢で100μgのEFD(n=6)又は100μlのPBS(n=6)を皮下注射し、30週齢で屠殺した。(A)30週齢でのPBSで処理したマウス(n=6)又はEFD BCGで処理したマウス(n=6)の脾臓中のCD4
+Foxp3
+リンパ球の絶対数(フローサイトメトリーにより解析した)。(B)個々のPBSで処理したマウス(n=6)又はEFDで処理したマウス(n=6)の脾臓核抽出物中におけるSP−1の結合。PBSで処理したマウスとの統計的差異を示す:
**:P≦0.01、
***:P≦0.001。SP−1転写因子のより高い発現は、EFDで処理したマウスの血清中に見出されるIL−10のより高い産生(
図5)と相関する。これらのデータにより、EFD BCGが、IL−10に媒介される免疫調節の重要な成分であるSP−1を活性化することにより免疫調節応答を開始することが示される。EFDで処理したマウスは、PBSで処理したマウスより有意に多数のCD4
+FOXP3
+T細胞(Treg細胞)を有していた。
【
図11】長期的なEFD BCG処理により、ApoE
−/−マウスにおいて血清サイトカインレベルが変化し、免疫変調プロファイルが誘導されることを示す図である。TGF−βが、PBSで処理したマウス(黒色のバー;1群当たりのマウス数n=6)と比較して、皮下注射による100μgのEFD BCGで月1回、計6回処理したApoE−/−マウス(灰色のバー)の個々の血清試料中で増大した。
***:P≦0.001。
【
図12】長期的なEFD BCG処理により、Ldlr−/−マウスにおいて血清サイトカインレベルが変化し、免疫変調プロファイルが誘導されることを示す図である。サイトカインが、PBSで処理したマウス(白色のバー;1群当たりのマウス数n=6)と比較して、皮下注射による100μgのEFDで月1回、計6回処理したLdlr−/−マウス(ストライプを付したバー)の個々の血清試料中で増大した。PBSで処理したマウスとの統計的差異を示す:
**:P≦0.01、
***:P≦0.001。
【
図13】長期的なEFD BCG処理により、Ldlr−/−マウスにおいて血清中の炎症性サイトカイン及び炎症性ケモカインのレベルが変化することを示す図である。サイトカイン及びケモカインが、PBSで処理したマウス(白色のバー;1群当たりのマウス数n=6)と比較して、皮下注射による100μgのEFDで月1回、計6回処理したLdlr−/−マウス(ストライプを付したバー)の個々の血清試料中で低減する。PBSで処理したマウスとの統計的差異を示す:
*:P≦0.05、
**:P≦0.01、
***:P≦0.001。
【
図14】PBSで処理したマウス(白色のバー;1群当たりのマウス数n=6)と比較して、皮下注射による100μgのEFDで月1回、計6回処理したLdlr−/−マウス(ストライプを付したバー)の個々の血清試料中で変化しないままであるサイトカイン及びケモカインを示す図である。
【
図15】長期的なEFD BCG処理により、Ldlr−/−マウスにおいて血清サイトカインレベルが変化し、免疫変調プロファイルが誘導されることを示す図である。TGF−βレベルが、PBSで処理したマウス(黒色のバー;1群当たりのマウス数n=6)と比較して、皮下注射による100μgのEFD BCGで月1回、計6回処理したLdlr−/−マウス(灰色のバー)の個々の血清試料中で僅かに増大した。
【
図16】EFD BCGが、Ldlr−/−マウスにおける炎症と関連する主要な転写因子の活性化に影響を及ぼすことを示す図である。PBS(白色のバー)又はEFD BCG(ストライプを付したバー;1群当たりのマウス数n=6)で月1回、計6回処理したマウスの、3匹のマウスの2つのプール由来の血管組織(A)及び個々の脾臓(B)の核抽出物中の特定のDNAモチーフとのNF−κB及びPPAR−γの結合。EFD BCGは、PBSと比較したEFD BCG処理後の両方の器官におけるNFκBの転位の減少、及びPPARγの発現の増大により証明されるように、抗炎症効果を有する。(B)にPBSで処理したマウスとの統計的差異を示す:
*:P≦0.05、
**:P≦0.01。3つの試料の2つのプールを(A)に示したが、統計解析は行わなかった。
【
図17】EFD BCGが、Ldlr−/−マウスにおける炎症及び免疫調節と関連する主要な転写因子の活性化に影響を及ぼすことを示す図である。非リン酸化型及びリン酸化型のSTAT−1、STAT−4、STAT−5b及びSTAT−6に関してウェスタンブロットにより解析した、PBS又はEFD BCGで月1回、計6回処理したマウス(1群当たりのマウス数n=6)由来の3つの脾細胞抽出物の2つのプール。β−アクチンを内部対照として使用した。STATのリン酸化はその活性化を反映するものであった。EFD BCGは、STAT−1、STAT−4及びSTAT−6のリン酸化の減少により証明されるように、抗炎症効果を有する。EFD BCGは、p−STAT−5bの活性化により証明されるように、免疫調節応答を開始する。
【
図18】EFD BCGが、Ldlr−/−マウスにおける炎症及び免疫調節と関連する主要な転写因子の活性化に影響を及ぼすことを示す図である。非リン酸化型及びリン酸化型のRXR−α;RORγt、T−bet、GATA3及びFoxp3に関してウェスタンブロットにより解析した、PBS又はEFD BCGで月1回、計6回処理したマウス(1群当たりのマウス数n=6)由来の3つの脾細胞抽出物の2つのプール。β−アクチンを内部対照として使用した。EFD BCGは、T−bet(Th1のシグネチャー)及びFOXP3(Tregのシグネチャー)を増大させること、並びにRORγt及びGATA−3(それぞれTh17及びTh2のシグネチャー)を減少させることにより、免疫調節応答を開始する。EFD BCGはまた、RXR−αのリン酸化の減少により証明されるように抗炎症効果を有する。
【
図19】EFD BCGが、Ldlr−/−マウスにおける免疫調節と関連する主要な転写因子の活性化に影響を及ぼすことを示す図である。PBS(白色のバー)又はEFD BCG(ストライプを付したバー;1群当たりのマウス数n=6)で月1回、計6回処理したマウス由来の個々の脾臓核抽出物中のその特定のDNAモチーフとのSP−1の結合。IL−10に媒介される免疫調節の重要な成分であるSP−1が、EFD処理後に非常に有意に増強される。これらのデータにより、EFD BCGがSP−1を活性化することにより免疫調節応答を開始することが示される。PBSで処理したマウスとの統計的差異を示す:
***:P≦0.001。
【
図20】EFD処理が形質細胞様樹状細胞(pDC)の動員を誘導したことを示す図である。PBS又はEFD BCG(100μg)の1回目の注射の4日後における、Ldlr
−/−マウスの鼠径流入領域リンパ節(DLN)へと動員された細胞のフローサイトメトリー解析(CD11c
+集団内における、CD11c
hiB220
neg cDC(右下の細区画)及びCD11c
lowB220
hi pDC(左上の細区画))。EFDの1回目の皮下注射の4日後、PBSを注射したマウスと比較して、より多くのpDC(CD11c
lowB220
high)が、EFD BCGマウスにおいて検出された(ゲーティングされたCD11c
+細胞のうち0.3%に対して15%)。対照的に、PBSと比較して、より少ない従来型DC(cDC;CD11c
highB220
neg)が、EFD BCG注射後にDLNにおいて観察された(ゲーティングされたCD11c
+細胞のうち83%に対して32%)。
【
図21】形質細胞様樹状細胞(pDC)が、調節性T細胞(Treg)を促進したことを示す図である。PBS又はEFD BCG(100μg)の1回目の注射の4日後における、Ldlr
−/−マウスの鼠径流入領域リンパ節(DLN)へと動員された細胞のフローサイトメトリー解析(CD4
+集団内における、CD4
+Foxp3
+Treg)。EFDの1回目の皮下注射の4日後、EFD BCGで処理したマウスのDLNにおけるCD4+Foxp3+Tregのパーセンテージは、対照マウスと比較して上昇した(ゲーティングされたCD4
+細胞のうち5.5%に対して13.2%)。
【
図22】長期的なEFD BCG処理により、Ldlr−/−マウスにおいて免疫調節プロファイルが誘導されたことを示す図である。PBS又はEFD BCGの1回目の注射の4日後における、鼠径DLNへと動員された細胞のフローサイトメトリー解析。(A)両方の鼠径DLNにおけるICOS−Lを発現するpDCの数。(B)両方の鼠径DLNにおけるICOSを発現するCD4
+CD25
+Tregの数。
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001。
【
図23】長期的なEFD BCG処理により、ApoE−/−マウスにおいて病変の大きさ及び炎症が低減することを示す図である。マウスに6週齢、10週齢、14週齢、18週齢、22週齢及び26週齢で100μgのEFD(n=6)又は100μlのPBS(n=6)を皮下注射し、30週齢で屠殺した。PBS及びEFD BCGで処理したマウスの(A)大動脈根におけるアテローム性動脈硬化病変の平均横断面積(μm
2×1000)。(B)大動脈洞におけるマクロファージ染色(MOMA−2
+細胞)の代表的な顕微鏡写真。EFD BCG処理後において、大動脈根におけるアテローム硬化性病変の平均横断面積は、マクロファージ蓄積と同様に、対照と比較して有意に低かった。
【
図24】EFDで処理したマウス及びPBSで処理したマウスの大動脈弓、並びにヘマトキシリン・エオシンスライド上でアテローム粥腫の面積を半定量した種々の部位(a、b、c)を表す図である。
【
図25】長期的なEFD BCG処理により、Ldlr−/−マウスにおいてアテローム硬化性病変が低減することを示す図である。アテローム硬化性の食餌を与えたLdlr−/−マウスに、6週齢、10週齢、14週齢、18週齢、22週齢及び26週齢で100μlのPBS又は100μgのEFDを(皮下に)投与した。マウスを30週齢で屠殺し、病変の厚み及び大動脈の厚みの平均値を、各マウスの8個〜16個の大動脈弓の切片から算出した。病変の厚みを、Leica QWin画像解析ソフトウェアを使用して解析した。結果を、病変の厚み/大動脈の厚みの比率として表す。
【
図26】長期的なEFD BCG処理により、Ldlr−/−マウスにおいてアテローム硬化性病変が低減することを示す図である。アテローム硬化性の食餌を与えたLdlr−/−マウスに、6週齢、10週齢、14週齢、18週齢、22週齢及び26週齢で100μlのPBS又は100μgのEFDを(皮下に)投与した。マウスを30週齢で屠殺し、病変面積及び総大動脈面積の平均値を、各マウスの8個〜16個の大動脈弓の切片から算出した。病変面積を、Leica QWin画像解析ソフトウェアを使用して解析した。結果を、病変面積/大動脈面積の比率として表す。
【
図27】長期的なEFD BCG処理により、Ldlr−/−マウスにおいてアテローム硬化性病変が低減することを示す図である。アテローム硬化性の食餌を与えたLdlr−/−マウスに、6週齢、10週齢、14週齢、18週齢、22週齢及び26週齢で100μgのEFD BCG(n=6)又は100μlのPBS(n=6)を皮下注射し、30週齢で屠殺した。(A)大動脈根におけるアテローム性動脈硬化病変の平均横断面積(μm
2×1000)。(B)スーダンIVで染色した大動脈の代表的な顕微鏡写真。(C)病変横断面積に対する染色された面積のパーセンテージとして表したマクロファージ染色(MOMA−2
+細胞)。(D)PBS処理又はEFD BCG処理の後の大動脈病変中の大動脈MOMA−2
+細胞の代表的な顕微鏡写真。元の倍率:×400。
**P<0.01。
【
図28】EFD BCG処理により、Apoe−/−×CD4dnTβRIIマウスにおいて病変の大きさが低減し、免疫調節応答が誘導されることを示す図である。マウスに6週齢及び9週齢で100μgのEFD BCG(n=9)又は100μlのPBS(n=8)を皮下注射し、大動脈、脾臓及び血清を12週で回収した。(A)大動脈根におけるアテローム性動脈硬化病変の平均横断面積(μm
2×1000)。(B)オイルレッドO染色後における大動脈洞の代表的な顕微鏡写真。(C)Bio−Plexによる個々の血清中のIL−10及びTNF−αの測定。(D)脾細胞抽出物中のウェスタンブロットによるFoxp3の検出。各バンドが、3匹のマウス由来の脾細胞抽出物のプールを表す。
*P<0.05、
***P<0.001。
【
図29】漸増用量のEFD BCGがOF1非近交系スイスマウスにおいて副作用を誘導しないことを示す図である。様々な用量のEFD(0.01mg、0.1mg及び1mg)及び100μlのPBSを、OF1マウスに1日1回14日間皮下投与した(1群当たりn=6)。(A)直腸温度を各注射の24時間後にモニタリングした。(B)各日のマウスの重量。(C)実験の終了時(15日目)における脾臓核抽出物中のその特定のDNAモチーフとのPPAR−γ及びPPAR−αの結合。
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001。
【
図30】EFD処理がマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染又はBCGワクチン接種を妨害しないことを示す図である。モルモットを、BCG注射の前若しくは後に、又はBCG注射を行うことなく、EFDで処理した。それから、モルモットをマイコバクテリウム・ツベルクローシスに感染させ、脾臓中の病原性細菌のコロニー形成単位(CFU)を計数した。1群当たりのモルモット数n=6。
【
図31】EFD処理が、ナイセリア・メニンジティディス(Neisseria meningitidis)のワクチン接種を妨害しないことを示す図である。BALB/Cマウスを、EFD又はPBSで処理した後、ナイセリア・メニンジティディスのワクチン接種を行った。最後のワクチン注射の2週間後、ワクチン接種した及びワクチン接種していないマウスに、10
7CFUの病原性ナイセリア・メニンジティディスを(ip)負荷し、負荷の2時間後、6時間後及び24時間後に血中の細菌(bacteriemia)を測定した。1群当たりのマウス数n=6。(◆)EFD 100μg s.c.(d−21)+不活性化型ナイセリアワクチン接種(d1、d8、d15)。(●)PBS 100μl s.c.(d−21)+不活性化型ナイセリアワクチン接種(d1、d8、d15)。(■)PBS 100μl s.c.(d−21)(ナイセリアワクチン接種なし)。
【
図32】EFD処理により、インフルエンザウイルス感染の経過が変化しないことを示す図である。(◆)BALB/CマウスをEFD(100μl中100μg)で皮下的に(s.c.)処理した(d−21)。(●)BALB/CマウスをPBS(100μl)で皮下的に(s.c.)処理した(d−21)。21日後、両方の群をインフルエンザウイルススコットランドA株(5000pfu)に鼻腔内感染させ、マウスの臨床症状及び生存しているマウスの数を14日目まで1日1回記録した。
【
図33】脂質分析結果を示す図である。PBS又はEFD BCGで処理したマウスの血清中の総コレステロール及びトリグリセリドのレベルを測定した。(A)Ldlr
−/−マウス、(B)Apoe
−/−マウス、及び(C)Apoe−/−×CD4dnTβRIIマウス。値を、平均値±SD(1群当たりのマウス数n=4)として表す。n.s.=有意でない。
【
図34】コレステロールリポタンパク質プロファイルを示す図である。PBS又はEFD BCGで処理したマウスの血清由来のリポタンパク質プロファイルの大きさの分析。簡潔に述べると、マウス由来の血漿試料(50μl)を、Prominence UFLCシステム(株式会社島津製作所)に接続し、Tris緩衝食塩水(pH7.4)で平衡化したHR10/30 Superose 6カラム(GE HEALTHCARE)及びプレカラムとしてのDisocovery BIO GFC−500(5cm×7.8i.d.;Supelco(登録商標);SIGMA-ALDRICH)により分画した。200μlの画分をFoxy Jr(登録商標)(TELEDYNE ISCO INC.)により回収し、各画分中の総コレステロールを、酵素比色分析キット(RANDOX LAB.)を使用して測定した。各画分中のコレステロール濃度(y軸)を、保持画分番号(x軸)に対してプロットする。(A)Ldlr
−/−マウス、(B)Apoe
−/−マウス、及び(C)Apoe−/−×CD4dnTβRIIマウス。曲線は、EFD BCG免疫化マウス(暗灰色の線)及びPBS免疫化マウス(明灰色の線)に関する平均値±SDを示す。1群当たりのマウス数n=4。CR、カイロミクロンレムナント。
【
図35】EFD BCG処理後のoxLDLに対する抗体力価を示す図である。EFD BCGで処理したマウス及びPBSで処理したマウスの血清中のoxLDLに対する抗体を、ELISAにより測定した。(A)Ldlr
−/−マウス、(B)Apoe
−/−マウス、及び(C)Apoe−/−×CD4dnTβRIIマウス。曲線は、EFD BCG免疫化マウス(暗灰色の線)及びPBS免疫化マウス(明灰色の線)に関する平均値±SDを示す。1群当たりのマウス数n=6。簡潔に述べると、50μLの抗原(PBS(pH7.4)中10μg/ml)を96ウェルELISAプレートに添加し、4℃で終夜インキュベートした。コーティングしたプレートをPBSで洗浄し、PBS中の1%ゼラチン(GIBCO INVITROGEN)で室温で1時間ブロッキングした。次に、プレートを洗浄し、マウス血漿とともに更に2時間インキュベートし、Tris緩衝食塩水(TBS)/ゼラチン0.1%で希釈した。洗浄工程の後、総IgGレベルを、酵素結合型抗マウス抗体(BD BIOSCIENCES)を使用して測定した。プレートを洗浄し、比色分析反応物をTMB(BD BIOSCIENCES)により発色させた。吸光度を、マイクロプレートリーダー(VersaMax、MOLECULAR DEVICES)により測定した。
【発明を実施するための形態】
【0046】
実施例1:EFDの調製
長期凍結乾燥(EFD)により死滅したマイコバクテリウム・ボビスBCGパスツール株(1173P2)を、PCTの国際出願の特許文献1に以前に記載されたように調製した。EFD調製物は、カール・フィッシャー法を使用することによる電量計(METROHM)で決定されるように、手順の終了時に1.5%未満の水を含有していた。20ミリグラムのEFDをMiddlebrook 7H10(DIFCO)寒天プレート上で培養して、生きた細菌が存在しないことを確認した。
【0047】
EFDを、1mg/mLの最終濃度でマンニトール(5%)中に再懸濁し、0.040mBarの圧力下で72時間凍結乾燥させ(この工程では、凍結乾燥の目的は乾燥組成物を得ることのみである)、最後に、蒸留水(最終濃度1mg/ml)に再懸濁した後、マウスに注射した。
実施例2:ApoE
−/−C57Bl/6マウスモデル及びLdlr
−/−C57Bl/6マウスモデルにおけるアテローム性動脈硬化の発症に関するEFD処理の評価
1)材料及び方法
a)アテローム性動脈硬化の誘導/予防の実験モデル
雄性ApoE
−/−及びLdlr
−/−マウスを、2つの長期処理モデルとして使用した。アポリポタンパク質E欠損型(ApoE
−/−)及び低密度リポタンパク質受容体欠損型(Ldlr
−/−)雄性C57Bl/6マウスを、Jouy en JosasにあるINRAのキャンパスの動物飼育施設で繁殖させた。実験開始時に6匹〜7匹のマウス(5週齢〜6週齢)の群を分配した:
1)群1のApoE
−/−マウスには、10週間毎に(2ヶ月に1回)、計3回100μlのPBSを皮下に投与し、最後の注射の2ヶ月後(34週齢)に屠殺した。
【0048】
2)群2のApoE
−/−マウスには、群1と同じ間隔で100μgのEFD BCG(EFD)を皮下に投与し、3回目のEFD注射の2ヶ月後(34週齢)に屠殺した。
【0049】
3)群3のApoE
−/−マウスには、4週間毎に100μlのPBSを皮下に投与し(6週齢、10週齢、14週齢、18週齢、22週齢及び26週齢で計6回の注射)、最後の注射の1ヶ月後(30週齢)に屠殺した。
【0050】
4)群4のApoE
−/−マウスには、群3と同じ間隔で100μgのEFD BCG(EFD)を皮下に投与し、6回目の注射の1ヶ月後に屠殺した。
【0051】
5)群5のLdlr
−/−マウスには、4週間毎に100μlのPBSを皮下に投与し(6週齢、10週齢、14週齢、18週齢、22週齢及び26週齢で計6回の注射)、最後の注射の1ヶ月後(30週齢)に屠殺した。
【0052】
6)群6のLdlr
−/−マウスには、群5と同じ間隔で100μgのEFD BCG(EFD)を皮下に投与し、6回目の注射の1ヶ月後(30週齢)に屠殺した。
【0053】
EFDの1回目の注射(5週齢〜6週齢)から実験終了時まで、ApoE
−/−マウスには従来の食餌を与えたが、Ldlr
−/−マウスには脂質(15%豚脂)及び0.5%コレステロール(Genestil)を添加した食餌を投与した。
b)リンパ器官細胞のフローサイトメトリー解析
Treg及び樹状細胞(DC)を同定するために、Ldlr−/−マウスの鼠径流入領域リンパ節(DLN)を、1回目のEFD BCG又はPBSの注射の4日後に回収した。コラゲナーゼ−Dnase消化の後、流入領域リンパ節(DLN)をcell strainerにより粉砕し、細胞を抽出した後、製造業者の推奨に従って、CD4に対する抗体、CD11cに対する抗体、B220に対する抗体(BD PHARMINGEN)、Foxp3に対する抗体(EBIOSCIENCES)、ICOSに対する抗体、ICOS−Lに対する抗体(EBIOSCIENCES)及びPDCA−1に対する抗体(MILTENYI BIOTEC)を用いて染色した。
【0054】
ApoE−/−マウス由来の脾細胞を、30週目に脾臓の半分から単離し、CD4に対する抗体(BD PHARMINGEN)及びFoxp3に対する抗体(EBIOSCIENCES)で染色した。全ての試料を、CellQuestソフトウェア(BD BIOSCIENCES)を使用してFACSCaliburにより解析した。
c)脾臓細胞抽出物及び大動脈抽出物中の転写因子の検出
脾臓のもう一方の半分(2匹のマウスのプール)を−25℃で凍結して、数日間貯蔵した。タンパク質を、脾臓から抽出し、7.5%SDS−PAGEにより分離した。ニトロセルロースシートに移したタンパク質バンドを、マウスモノクローナル抗FOXP3、抗T−bet、抗GATA−3、抗RORγt、抗RXRα、抗p−RXRα、抗STAT−1、抗pSTAT−1、抗STAT−4、抗p−STAT−4、抗STAT−5b、抗p−STAT−5b、抗STAT−6、抗p−STAT−6(SANTA CRUZ BIOTECHNOLOGY)、又はβ−アクチンマウスモノクローナル抗体(Ac−15、ABCAM)を用いて調べた。ポリクローナルヤギ抗ウサギ(DAKO CYTOMATION)又はヤギ抗ウサギIgG(SANTA CRUZ BIOTECHNOLOGY)(両方ともHRP結合型)を二次抗体として使用した。免疫複合体を、増強型化学発光検出システム(AMERSHAM)を用いて可視化し、走査解析した。
【0055】
核タンパク質を、プロテアーゼ阻害剤処理後に脾臓又は大動脈のホモジネート(3匹のマウスのプール)から抽出し、製造業者の推奨に従ってTransAM(商標)転写因子アッセイキット(ACTIVE MOTIF)を用いて、NFκBp65、PPARγ、PPAR−α又はSP−1で処理した。簡潔に述べると、10μgの核抽出物を96ウェルプレート(各プレートは、それぞれの転写因子のコンセンサス結合部位を含有する特定のオリゴヌクレオチドでコーティングされている)に添加した。結合を光学密度(OD)として表した。各実験における処理した試料又はプールの数を、図の説明文において報告する。
d)血清学的分析
血清を、30週目にLdlr−/−マウスから、及び30週目又は34週目にApoE−/−マウスから回収した。血清中の炎症促進性サイトカイン及びケモカイン(IL−1α、IL−1β、IL−6、IL−13、IL−17、KC(IL−8)、IL−12p40、IL−12p70、IFNγ、TNFα、MIP−1β、エオタキシン)並びに抗炎症性サイトカイン(IL−10)のレベルを、Bio−Plexサイトカインアッセイ(BIO-RAD)を使用して測定した。TGF−βを、ELISAキット(EBIOSCIENCE)により測定した。
【0056】
EFD BCGで処理したマウス及びPBSで処理したマウスの血漿中のコレステロール及びトリグリセリドのレベルを、製造業者のプロトコルに従って酵素比色分析キット(RANDOX LAB.)を使用して測定した。血漿コレステロールリポタンパク質プロファイルを、Okazaki et al., J. Biochem., 1981, 89,879-887の変更した方法を使用して検証した。簡潔に述べると、マウス由来の血漿試料(50μl)を、Prominence UFLCシステム(株式会社島津製作所)に接続し、Tris緩衝食塩水(pH7.4)で平衡化したHR10/30 Superose 6カラム(GE HEALTHCARE)及びプレカラムとしてのDisocovery BIO GFC−500(5cm×7.8i.d.;Supelco(登録商標);SIGMA-ALDRICH)により分画した。200μlの画分をFoxy Jr(登録商標)(TELEDYNE)により回収し、各画分中の総コレステロールを、酵素比色分析キット(RANDOX LAB.)を使用して測定した。
【0057】
EFD BCGで処理したマウス及びPBSで処理したマウスの血清中のoxLDLに対する抗体を、ELISAにより測定した。簡潔に述べると、50μLの抗原(PBS(pH7.4)中10μg/ml)を96ウェルELISAプレートに添加し、4℃で終夜インキュベートした。コーティングしたプレートをPBSで洗浄し、PBS中1%ゼラチン(GIBCO INVITROGEN)で室温で1時間ブロッキングした。次に、プレートを洗浄し、マウス血漿とともに更に2時間インキュベートし、Tris緩衝食塩水(TBS)/ゼラチン0.1%で希釈した。洗浄工程の後、総IgGレベルを、酵素結合型抗マウス抗体(BD BIOSCIENCES)を使用して測定した。プレートを洗浄し、比色分析反応物をTMB(BD BIOSCIENCES)により発色させた。吸光度を、マイクロプレートリーダー(VersaMax、MOLECULAR DEVICE)により測定した。
e)アテローム硬化性病変の組織学的解析及び免疫染色
心臓及び大動脈を、EFDで処理したApoE−/−マウス及びPBSで処理したApoE−/−マウス、並びにEFDで処理したLdlr
−/−マウス及びPBSで処理したLdlr
−/−マウスから回収し、最適切断温度(OCT;サクラファインテックジャパン株式会社)において凍結した。凍結したブロックを、低温切開するまで−80℃に維持した。
【0058】
ApoE−/−マウス及びLdlr
−/−マウスの心臓及び上行大動脈を、以前に記載されたように低温切開した(Nicoletti et al., J. Clin. Invest. 1998, 102, 910-918)。10ミクロン厚の切片を、大動脈弁の開始部分から100μmから始めて100μm間隔で回収した。切片を風乾させ、それぞれ組織学的解析及び免疫組織化学的解析のためにPBS及び氷冷アセトン中で4%ホルムアルデヒドで固定した。ホルムアルデヒドで固定した切片を、ヘマトキシリン及びオイルレッド−O又はヘマトキシリン・エオシン(HE)で染色し、光学顕微鏡下で可視化した。病変及び大動脈の横断面の面積を、Leica QWin(LEICA)及びAtherose(商標)画像解析ソフトウェアプログラム(MICROVISION INSTRUMENTS)を使用して定量化した。病変の横断面の絶対面積を、100μm間隔の大動脈根の8個の切片に関して算出した。群間の比較を、3つの最も大きい切片の平均値を使用して行った。Ldlr
−/−マウスの大動脈弓を低温切開した。切片を風乾させ、氷冷アセトンで固定し、それからヘマトキシリン・エオシン染色を行った。大動脈弓の3つの異なる部位(a、b、c)における病変の面積及び厚みを、Leica QWin画像解析ソフトウェアを使用して解析した。結果を、各部位に関するスコア(病変面積)として表した。加えて、病変の厚み及び表面積の平均値、並びに大動脈の厚み及び表面積の平均値を、各マウスの8個〜16個の大動脈弓の切片から算出した。結果を、病変の厚み/大動脈の厚み、病変面積/大動脈面積の比率として、及び病変面積として表した。
【0059】
大動脈弓を、4%ホルムアルデヒドで固定し、縦方向に開き、スーダンIV(MERCK)で染色した。脂質病変は赤色で示された。
【0060】
免疫細胞を、MOMA−2(マクロファージ)に対する抗体を使用する従来の免疫染色により検出した。
f)統計解析
データを、平均値±SDとして表す。Graph PadソフトウェアのInstatパッケージを、ウェルチの補正を用いるt検定を使用してデータを解析するために使用した。
2)結果
a)血清中のサイトカイン及びケモカイン
3回又は6回のEFD注射を行ったApoE
−/−マウス(群2及び群4)では、抗炎症性サイトカインIL−10の血清レベルが有意に増大した(8倍;
図1、
図5及び
図11)。同時に、炎症性サイトカイン及びケモカインIL−1α、IL−1β、IL−4、IL−6、IL−12p40、IL−12p70、IL−13、IL−17、エオタキシン、KC(IL−8)、MIP−1β及びTNF−αの血清レベルは、PBSで処理したマウスと比較して有意に減少したが、IFN−γの血清レベルは有意に減少しなかった(
図1、
図2、
図5、
図6及び
図11)。TGF−βの血清レベルは、群4のEFDで処理したApoE
−/−マウスでは有意には増大しなかった(2.6倍)(
図11)。試験した他のサイトカイン及びケモカイン(IL−2、IL−3、IL−5、IL−9、G−CSF、GM−CSF、MCP−1、MIP−1α及びRANTES)は、EFD処理後、変化しないままであった(
図3及び
図7)。
【0061】
6回のEFD注射を行ったLdlr
−/−マウス(群6)では、IL−10の血清レベルが、ApoE
−/−に関して観察された結果と同様に増大した(
図12及び
図15)。試験した「炎症促進性の」サイトカイン及びケモカインの中では、非処理マウスと比較して、IL1−β、MIP1−β、IL−13、KC(IL−8)及びTNF−αが有意に低減し、IFN−γがやや増大した(
図13及び
図15)。TGF−βレベルは、PBSで処理したマウスと比較して、EFDで処理したLdlr
−/−マウスの血清中で1.9倍(しかし有意でなく)増大した(
図15)。Ldlr−/−マウスにおいてはEFD処理によりIL−6、IL−12p40、IL−17及びエオタキシンは有意に低減しなかったが、ApoE
−/−マウスにおいては3回又は6回のEFD処理後にこれらのサイトカイン及びケモカインが有意に低減したことに留意しなければならない。他のサイトカイン及びケモカインは変化しないままであった(IL−5、MIP−1α、MIG;
図14)。
【0062】
これらのデータにより、ApoE
−/−マウス及びLdlr
−/−マウスへのEFD BCGの投与により全身的な(systemic)IL−10産生が増大し、炎症性サイトカイン(IFN−γを除く)のレベルが減少することが示される。
b)脾臓細胞抽出物及び大動脈抽出物中の転写因子
3回又は6回のEFD注射を行ったApoE
−/−マウスの脾細胞核抽出物では、NFκBp65は有意に減少し、PPARγの発現は増強又は安定化された(
図4及び
図9)。
【0063】
6回のEFD注射を行ったApoE
−/−マウスの脾臓抽出物では、PBSで処理したApoE
−/−マウスと比較して、RORγt(Th17の発生を統制する転写因子(Ivanov et al., Cell, 2006, 126, 1121-1133);炎症性Th17細胞のシグネチャー)及びGATA−3(Th2細胞のシグネチャー)の発現は減少し、T−bet(Th1の発生に重要な転写因子(Szabo et al., Cell, 2000, 100, 655-669);Th1細胞のシグネチャー)及びFOXP3(Treg細胞)の発現は強く増強された(
図8)。IL−10に媒介される免疫調節の重要な成分であるSP−1転写因子(Chanteux et al., Respiratory Research, 2007, 8, 71-80)が、EFDで処理したマウスの血清において見出された高レベルのIL−10と相関して、脾臓核抽出物中で有意に増強された(
図10)。脾臓細胞のFACS分析により、PBSで処理したマウス(6回の注射)よりEFDで処理したマウスにおいて、有意に多数のCD4+FOXP3+Treg細胞が示された(
図10)。
【0064】
Ldlr
−/−マウスでは、6回のEFD注射により、6匹のマウス由来の脾細胞核抽出物においてNFκB活性化が有意に低減し、PPARγの発現が増強された(
図16B)。3匹のマウスのプールの血管樹状(tree)組織の2つの抽出物から、同様の結果が得られた(プールの数が低すぎるため統計解析を行うことができなかった)(
図16A)。
【0065】
転写を活性化するために、PPARγはレチノイドX受容体α(RXRα)とのヘテロ二量体化を必要とするが、リン酸化型RXRα及びp−RXRα−PPARγ複合体は不活性である。EFDで処理したマウスの脾細胞核抽出物中のPPARγの発現の増強と相関して、そのリン酸化の遮断と関連してEFD処理後にRXRαの発現が増強されるが、PBSで処理したマウスにおいてはp−RXRαの不活性形態が発現された(
図18)。さらに、IL−10産生と相関する転写因子であるSP−1のより高い発現が、ApoE
−/−マウスに関して先に報告された(
図10)のと同様に、Ldlr
−/−マウスのEFD処理後に観察された(
図19)。
【0066】
それから、T細胞のコミットメントを調節する転写因子に対するEFD BCGの効果を決定した。EFD処理は、ApoE
−/−マウスにおいても見出された(
図8)のと同様に、Ldlr
−/−マウスの脾細胞抽出物におけるT−bet及びFOXP3の増大、並びにRORγt及びGATA−3の減少と関連した(
図18)。EFD処理は、STAT−1、STAT−4、STAT−6(全て、Th1及びTh2炎症応答のシグネチャー)のより低いリン酸化と相関した。加えて、STAT−4はTh1細胞の発生を調節する重要な因子であり(Thieu et al., Immunity, 2008, 29, 679-690)、p−STAT−4は近年、Tregの発生を損なうことが示されている(O'Malley JT et al., Immunology, 2009, 127, 587-5953)。対照的に、Tregの応答及び血管平滑筋細胞(VSMC)の成長を活性化することが報告されている転写因子であるp−STAT−5bが増大した(
図17)。
【0067】
したがって、これらのデータにより、EFD BCGが、SP−1及びp−STAT−5bを活性化することにより、Th2及びTh17の分化を調節する転写因子の発現を低下させることにより、並びにFoxp3
+Treg集団を増大させることにより、免疫調節応答を開始することが示される。これらの知見により、EFD BCGが、RXRα、STAT−1、STAT−4及びSTAT−6のリン酸化の減少、NF−κBの活性化の障害、並びにPPAR−γの発現の増大により証明されるように、抗炎症効果を有することも示唆される。
c)形質細胞様樹状細胞(pDC)及び調節性T細胞(Treg)
樹状細胞(DC)の様々な発生段階及びサブセットが他の免疫T細胞を調節又は抑制するT細胞の増殖及び分化に寄与する(Steinman RM et al., Annu. Rev. Immunol., 2003, 21, 685-711)ため、Ldlr
−/−マウスの鼠径DLNにおけるDCサブセット及びTregの解析を行った。EFD処理により、形質細胞様樹状細胞(pDC)の動員が誘導された。100μgのEFDの1回目の皮下注射の4日後、PBSを注射したマウスと比較して、より多くの形質細胞様(plasmacytoid)DC(pDC;CD11c
lowB220
high)が、EFD BCGを注射したマウスの流入領域リンパ節において検出された(ゲーティングされたCD11c
+細胞のうち0.3%に対して15%;
図20)。対照的に、PBSと比較して、より少ない従来型DC(cDC;CD11c
highB220
neg)が、EFD BCG注射後にDLNにおいて観察された(ゲーティングされたCD11c
+細胞のうち83%に対して32%;
図20)。さらに、EFD BCG又はPBSの注射後に鼠径DLNに存在するpDC(CD11c
lowB220
hi)のうち99%〜100%が、マウスpDCのマーカーであるPDCA−1を発現した(Asselin et al., J. Immunol., 2003, 171, 6466-6477)。
【0068】
成熟(Maturing)pDCは、高レベルの誘導性同時刺激リガンド(ICOS−L)を発現することによりTregを生成することができる(Ito T, et al., J. Exp. Med., 2007, 204, 105-115)。Ldlr−/−マウスの鼠径DLN中において、PBS処理後よりEFD BCG注射後に、ICOS−Lを発現するpDCをより多く検出した(ゲーティングされたCD11cのうち0.7%に対して8%、絶対数では415±48に対して38529±1906、P<0.001;
図22A)。同時に、対照マウスと比較して、EFD BCGで処理したマウスの鼠径DLN中のCD4
+Foxp3
+Tregのパーセンテージは、増大した(ゲーティングされたCD4
+細胞のうち5.5%に対して13.2%;
図21)。ICOSの発現はアテローム性動脈硬化の低減に関与する(非特許文献12)ため、EFD−BCGにより誘導されるICOS
+Tregの数を測定した。鼠径リンパ節中のCD4
+Foxp3
+ICOS
+細胞は、PBS注射後よりEFD−BCG注射後ではるかに多かった(22814±2626に対して119091±5890、P<0.001;
図22B)。
d)アテローム硬化性病変
ApoE
−/−マウス及びLdlr
−/−マウスにおけるアテローム性動脈硬化の発症に対するEFD BCGの効果を決定した。
【0069】
ApoE
−/−マウスのEFD BCG処理(6回の注射)後、大動脈根におけるアテローム硬化性病変の平均横断面積は、マクロファージ蓄積(MOMA−2
+細胞)(
図23B)と同様に、対照と比較して有意に低かった(92502±43607μm
2に対して59442±24695μm
2;
図23A)。
【0070】
Ldlr−/−マウスへのEFD BCGの投与により、アテローム硬化性病変の大きさが低減した(表I、
図24、
図25及び
図26)。
【0071】
表Iは、PBS処理群の各Ldlr
−/−マウス(6匹のマウス)及びEFD処理群の各Ldlr
−/−マウス(6匹マウス)に関する、大動脈弓の3つの異なる部位(a、b又はc)(
図24)におけるアテローム硬化性病変面積の半定量結果を示す。PBS処理群及びEFD処理群に関する各部位の平均値も示す(表I)。
【0073】
EFDで処理したマウスでは、病変は部位bにおいて統計的に小さかった(p=0.015;マン・ホイットニー検定)。
【0074】
6匹のEFDで処理したLdlr
−/−マウス及びPBSで処理したLdlr
−/−マウスにおける病変の面積及び厚みの定量(
図25及び
図26)により、EFDで処理したLdlr
−/−マウスにおいて病変の面積及び厚みが有意に低減することが実証された。
【0075】
Ldlr−/−マウスへのEFD BCGの投与により、PBSで処理したマウスと比較して、大動脈根における病変の横断面積が低減し(204051±73623μm
2に対して87072±28079μm
2、P<0.01;
図27A)、
図27Bに示されるように、表面の(en face)大動脈標本における脂質病変面積が減少した。
【0076】
免疫組織化学的検査により、PBSで処理したマウスと比較して、EFD BCGで処理したマウスにおいて、アテローム硬化性疾患における最大の危険である粥腫の崩壊を防止し得るものでもある、アテローム硬化性病変の横断面におけるMOMA2
+マクロファージの浸潤がより少ないことが示された(P<0.01;
図27C及び
図27D)。
e)脂質プロファイル、及び酸化LDL(oxLDL)に対する抗体力価
血清コレステロール、トリグリセリド及びコレステロール脂質プロファイルは、EFD BCG処理後に変化しなかった(
図33及び
図34)。
【0077】
加えて、血清oxLDLに対する抗体のレベルは、EFD BCGで処理したマウスとPBSで処理したマウスとの間で異なっておらず、EFD BCGによる保護がアテローム性動脈硬化特異的抗原と無関係であることが示唆された(
図35)。
実施例3:ApoE
−/−×CD4dnTβRIIマウスモデルにおけるアテローム性動脈硬化の発症に対するEFD BCG処理の評価
1)材料及び方法
CD4プロモーター下でドミナントネガティブTGF−β受容体IIを発現するC57BL/6Jバックグラウンドの雌性ApoE
−/−×CD4dnTβRIIマウス(非特許文献13)を、アテローム性動脈硬化の短期間モデルとして使用した。マウスは、ストックホルム州地域倫理委員会の許可を得て、カロリンスカ大学病院の繁殖施設で作製及び飼育した。これらのマウスに、6週齢及び9週齢で、尾の根元に100μlのPBS又は100μgのEFD BCGの2回の皮下注射を行った。これらのマウスに標準的な飼料を与え、12週齢で屠殺した。サイトカイン及び転写因子の分析、並びに免疫組織化学的研究を、実施例2に記載されるように行った。
2)結果
TGF−βは、Tregが産生することができるものであり、T細胞の活性化を阻止することによりアテローム性動脈硬化の発症を低減させる(Gojova et al., Blood, 2003, 102, 4052-4058;非特許文献13;非特許文献11)。EFD BCGで処理したマウスの血清中でTGF−βのレベルの増大の傾向が観察された(
図11及び
図15)ため、Apoe−/−×CD4dnTβRIIマウスにおけるEFD BCGの効果が検証された。
【0078】
EFD BCGによる短期の処理にもかかわらず、大動脈根におけるアテローム硬化性病変の大きさは、PBSと比較して30%低減した(278086±87089μm
2に対して193600±85948μm
2、P<0.05;
図28A、
図28B)。
【0079】
アテローム性動脈硬化の従来のモデル(Ldlr−/−及びApoe−/−)では、EFD BCGにより、それぞれ、IL−10産生が4倍〜8倍増大し、EFD BCG処理したApoe−/−×CD4dnTβRIIマウスでは、非処理マウスに対して16倍増大した(P<0.001;
図28C)。血清TNF−αレベルは、EFD BCGで処理したマウスではPBSで処理したマウスと比較して僅かに減少した(
図28C)が、IFN−γ、IL−4、IL−5、IL−13及びIL−17の血清レベルは2群間で異ならなかった。特に、EFD BCGにより、Apoe−/−×CD4dnTβRIIマウスの脾細胞抽出物中におけるFoxp3タンパク質の発現が増強された(
図28D)。
【0080】
これらの結果により、EFD BCGが、TGF−βシグナル伝達の非存在下でTregの増殖及びIL−10の産生を促進することによりアテローム性動脈硬化を低減させることが示唆される。
実施例4:EFD BCG処理は、測定可能な毒性学的副作用を有しない
1)材料及び方法
毒性学研究に通常使用される雌性OF1スイスマウスを、パスツール研究所の動物実験部で飼育し、100μlのPBS又は0.01mg、0.1mg若しくは1mgのEFD BCGを14日間連続して注射した(1群当たりのマウス数10)。体重及び直腸温度を、以前に記載されたように、1日毎に、各注射の24時間後に測定した(非特許文献16)。実施例2に記載されるように、最後の注射の24時間後、マウスを屠殺し、核内のPPAR−γ及びPPAR−αの測定のために脾臓を回収した。
2)結果
複数回のEFD注射は、測定可能な副作用を誘導しない
EFD BCGによる処理の繰り返しの副作用を、集団レベルでの多様性が高く毒性学的研究に使用されることが多いOF1非近交系スイスマウスにおいて評価した。様々な用量のEFD BCG(0.01mg、0.1mg、1mg)の14回の連続注射の後、PBSで処理したマウスと比較して、直腸温度の変化は観察されなかった(
図29A)。EFD BCGで処理したマウス及びPBSで処理したマウスの体重は、0日目から14日目までに同程度(6%〜7%)増大した(
図29B)。
【0081】
最後に、本発明者らは、EFD BCG処理によりPPARαの発現に影響を及ぼすことなくPPARγの発現が増強されることも示した。実際に、PPAR−γアゴニスト(心血管疾患のリスクが高い糖尿病患者においてインスリン増感剤として使用される)及びPPAR−αアゴニスト(脂質異常症を治療するために使用される)の組合せにより、ApoE−/−においてアテローム性動脈硬化が増強され(非特許文献6)、ヒトにおいて主要な心血管の有害事象が誘導された(非特許文献7)。
【0082】
したがって、漸増用量のEFD BCGを14日間連続して投与したOF1スイスマウス由来の脾細胞抽出物中における2つのPPARアイソフォーム(α及びγ)の発現を測定した。PBSを注射したマウスと比較して、EFD BCG注射後に、PPAR−γの発現は用量依存的に増大したが、PPAR−αレベルは、最高用量のEFD BCGであっても同一のままであった(
図29C)。EFD BCGがPPAR−γの選択的な誘導因子であり、PPAR−αの活性化を誘導しないことは利点であり、ヒトにおける臨床的な使用のためのその可能性を支持する。
実施例5:EFD処理は、マイコバクテリウム・ツベルクローシス、リーシュマニア・メジャー若しくはインフルエンザウイルスの感染を妨害せず、又はBCG若しくはナイセリアのワクチン接種を損なわない。
【0083】
最後に、宿主の防御能に対するEFD BCGの効果を評価した。
a)マイコバクテリウム・ツベルクローシス感染、及びBCGワクチン接種
マウスよりマイコバクテリウム・ツベルクローシスに対する感受性の高い種であるモルモットに、以下のものを注射した:
群1:0日目にPBS(100μl)(対照)
群2:0日目にBCG(100μlのPBS中10
6コロニー形成単位(CFU))
群3:42日目にBCG(100μlのPBS中10
6コロニー形成単位(CFU))
群4:0日目にEFD(100μlのPBS中(100μg))
群5:0日目にEFD(100μlのPBS中(100μg))、及び42日目にBCG(100μlのPBS中10
6コロニー形成単位(CFU))
群6:0日目にBCG(100μlのPBS中10
6コロニー形成単位(CFU))、及び42日目にEFD(100μlのPBS中(100μg))。
【0084】
80日目に、全ての群(1群当たりのモルモット数n=6)にマイコバクテリウム・ツベルクローシス(H37Rv;5×10
5CFU)を負荷した。モルモットを122日目に屠殺した。脾臓を回収し、ホモジナイズした。ホモジナイズした脾臓の適当な希釈物を、Middlebrook 7H10寒天培地(DIFCO)上で平板培養した。プレートを、37℃で1ヶ月間インキュベートし、病原性細菌のコロニー形成単位(CFU)を計数した。
【0085】
BCGワクチン接種の前若しくは後の、又はBCGワクチン接種を伴わないEFD処理は、マイコバクテリウム・ツベルクローシス感染に対して感作させず、又はBCGワクチン接種を損なわなかった(
図30)。
b)リーシュマニア・メジャー感染アッセイ
BALB/cマウス(ノンヒーラー(non healer)マウス)及びC57Bl/6マウス(ヒーラーマウス)(1群当たり8匹)の尾の根元に、100μlのPBS又は100μlのPBS中100μgのEFDを注射した(0日目)。45日目に、マウスの右耳に、10μl中10個〜20個の生きたリーシュマニア・メジャー寄生虫を投与した。
【0086】
局所的な炎症を6ヶ月間観察し、測定した。PBS処理群とEFD処理群との間で差異は観察されなかった。
【0087】
転移性の病変が、160日目に記録された。
【0088】
PBS処理群では、全てのマウス(1匹を除く)が、小〜中程度の局所的な病変を有していた。5匹は正常な尾を有しており、1匹は尾の根元に小さい病変を有しており、2匹は尾を失くしてしまっており、後足底(rear footpads)に病変を有していた。
【0089】
EFD処理群では、全てのマウスが小〜中程度の局所的な病変を有していた。7匹は尾を有しており、2匹は尾の根元に小さい病変を有しており、1匹は尾を失くしてしまっており、両方の後足底に病変を有していた。BALB/cマウス(ノンヒーラーマウス)のPBS処理群とEFD処理群との間で差異は観察されなかった(同様の病変)。PBSを注射したC57Bl/6マウス(ヒーラーマウス)及びEFDを注射したC57Bl/6マウス(ヒーラーマウス)の間で差異は観察されなかった(全てのマウスで病変なし)。
【0090】
EFD処理がマウスをリーシュマニア・メジャー感染に対して感作させないことを示すこれらの結果により、EFDが病原体感染を妨害しないことが示される。
c)ナイセリアワクチン接種
1つの群のBALB/cマウスを、100μl中100μgのEFDで皮下的に処理し、2つの他の群には100μlのPBSを投与した(1群当たりのマウス数n=6)。21日後、EFD処理群及びPBS処理群のうちの1群に、熱により死滅したナイセリア・メニンジティディス(Nesseiria meningitidis)をワクチン接種した(1週間間隔で3回投与)。PBSを注射したマウスの2つ目の群にはワクチン接種しなかった(対照)。最後のワクチン注射の2週間後、ワクチン接種したマウス及びワクチン接種していないマウスに10
7CFUの病原性ナイセリア・メニンジティディスを負荷(ip)し、負荷の2時間後、6時間後及び24時間後に血中の細菌を測定した。EFD処理により、ワクチン接種の保護効果は変化しなかった(
図31)。
d)インフルエンザウイルス感染
1つの群のBALB/cマウスを、100μl中100μgのEFDで皮下的に処理し、他の群には、100μlのPBSを投与した。21日後、両方の群をインフルエンザウイルススコットランドA株(5000pfu)に鼻腔内感染させ、マウスの臨床症状及び生存しているマウスの数を14日間1日1回記録した。EFD処理群とPBS処理群との間で差異は見出されず(
図32)、EFD処理によりインフルエンザウイルス感染の経過が変化しないことが示された。
【0091】
これらのデータにより、その免疫調節効果にもかかわらず、EFD BCGが、モルモットにおいてマイコバクテリウム・ツベルクローシス、マウスにおいてナイセリア・メニンジティディスに対するワクチン(それぞれ、Th1に媒介される免疫応答及びTh2に媒介される免疫応答を誘導する感染)によりもたらされる保護を弱力化することもなく、モルモットにおけるマイコバクテリウム・ツベルクローシス感染、及びマウスにおけるインフルエンザウイルス感染又はリーシュマニア・メジャー感染を悪化させることもなかったことが実証される。したがって、EFD BCGは、2つの動物種において、種々のマウス株において、及び高用量で投与した場合に、測定可能な程度の有害作用を何ら引き起こさない。
実施例1〜実施例5からの結論
本研究により、EFD BCGが3つの相異なるマウスモデルにおいてアテローム性動脈硬化の発症に対する保護効果を発揮することが実証される。EFD BCGにより、以下のことが同時に誘発された:1)IL−10産生及びTregの増殖を介した免疫調節効果、2)NF−κB活性化の阻害、並びに3)PPAR−αレベルの変化を伴わないPPAR−γの増大。EFD BCGは、本研究において測定可能な程度の副作用を有さず、また、その免疫調節活性にもかかわらず、Th1免疫応答及びTh2免疫応答を生じるワクチンによりもたらされる保護を弱力化することもなく、マイコバクテリウム・ツベルクローシス感染を悪化させることもなかった。
【0092】
全てのモデルにおいて、EFD BCGにより、アテローム硬化性病変の大きさが有意に低減し、IL−10産生が有意に誘導された。さらに、Ldlr−/−マウスにおいて、EFD BCG処理により、注射直後に、流入領域リンパ節における形質細胞様樹状細胞(pDC)及びFoxp3
+Tregの数が増大した。実験の終了時に、脾臓におけるTregの蓄積、炎症促進性サイトカインの血清レベルの減少、NF−κBの低減、並びに脾臓核抽出物及び血管核抽出物におけるPPAR−γの発現の増大が、Ldlr−/−マウスにおいて観察された。EFD BCGで処理したLdlr−/−マウスにおけるIL−10の血清レベルの上昇は、IL−10の活性化を統制する転写因子(SP−1及びp−STAT5b)の脾臓抽出物における発現の増大を伴い、IL−10がアテローム保護(atheroprotection)を媒介するという考えを支持した。IL−10シグナル伝達を増強することに加えて、Ldlr−/−マウス及びApoE−/−マウスにおけるEFD BCGでの長期的処理は、本発明者らが試験した炎症性サイトカインのほとんど(IFN−γを除く)を減少させた。Ldlr−/−マウスにおいて同時に起こる核内NF−κBの低減、及びリン酸化型RXR−αレベルの低減を伴うPPARγの増大により、EFD BCGが炎症状態を強く阻止することが示唆される。転写因子及びサイトカインの発現プロファイルは、IL−13のより低い血清レベル、及び脾臓中のGATA3及びp−STAT−6の減少により証明されるように、EFD BCGによるTh2分化の下方調節を反映していた。Th1系列(arm)に関しては、パターンはあまり明らかではなかった。実際、EFD BCGにより、Ldlr−/−マウス及びApoE−/−マウスの血清中においてTh1サイトカインのシグネチャーであるIFN−γのより高いレベルが誘起され、脾臓細胞抽出物中において、Th1の発生の重要な転写因子であるT−betの発現が増強された。しかしながら、EFD BCGにより、Th1細胞の発生を調節する別の重要な因子であるSTAT−4のリン酸化が低下した。p−STAT−4は近年、Tregの発生を損なうことが示されているため、EFD BCGにより誘導されるp−STAT−4の低減は、本研究において、Tregの増殖に利益をもたらした可能性がある。最後に、Th17細胞の役割を、Th17細胞の発生を統制する転写因子であるRORγtを研究することにより検証した。RORγtのレベルは、EFD BCG処理後にLdlr−/−マウス及びApoe−/−マウスにおいてより低く、Apoe−/−マウスモデルではIL−17のレベルの減少を伴っていた。Th17の低減及びより強いTregプロファイルと関連する、免疫のTh1系列の部分的な変調は、EFD BCGで処理したマウスにおいてマイコバクテリウム・ツベルクローシス及びナイセリア・メニンジティディスに対する免疫防御が変化しなかったことにより裏付けられるように、宿主の効率的な免疫能を維持しながらアテローム性動脈硬化を防ぐのに十分なものであり得る。EFD BCGで処理したマウスにおける全身的炎症プロファイルの変調は、アテローム硬化性疾患における最大の危険である粥腫の崩壊を防止し得るものでもある、病変におけるMOMA
+マクロファージの局所的な蓄積の低減とも関連していた(
図23B、
図27C及び
図27D)。EFD BCGによる免疫化後には、マイコバクテリウム・ツベルクローシスに対する反応性(Th1に媒介される保護)又はナイセリア・メニンジティディスに対する反応性(Th2に媒介される保護)により評価されたように、免疫抑制の痕跡は観察されなかった。EFD BCG処理後における感染に対する免疫能の維持により、EFD BCGがヒトにおいて耐容性を有する治療剤であることが示唆された。最後に、EFD BCGはPPAR−γの選択的な誘導因子であり、PPAR−αの活性化を誘導しないが、これは1つの利点であり、臨床的使用に関するその可能性を裏付ける。結論として、EFD BCGは、アテローム性動脈硬化の予防及び治療のための、免疫治療用調製物としての有望な候補である。