特許第5762421号(P5762421)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5762421
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】節水コマ
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/086 20060101AFI20150723BHJP
【FI】
   E03C1/086
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-533002(P2012-533002)
(86)(22)【出願日】2011年9月7日
(86)【国際出願番号】JP2011070379
(87)【国際公開番号】WO2012033127
(87)【国際公開日】20120315
【審査請求日】2013年8月13日
(31)【優先権主張番号】特願2010-203810(P2010-203810)
(32)【優先日】2010年9月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507255994
【氏名又は名称】高野 雅彰
(74)【代理人】
【識別番号】100134669
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 道彰
(72)【発明者】
【氏名】高野 雅彰
【審査官】 油原 博
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−081428(JP,A)
【文献】 特開2007−138662(JP,A)
【文献】 特開2000−096683(JP,A)
【文献】 特開2002−194798(JP,A)
【文献】 特開平11−336145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/00−1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水吐出管に装着して吐出する水量を抑制するための節水コマにおいて、
内部に水流の通り道となる隙間を備え、前記隙間から下流側に打ち出された加速水流が膜状の水流膜となる水流膜形成部と、
前記水流膜の形成場所として水流管の途中に設けられ、前記水流膜の水流が流れ込んだ状態でも空気が充満された状態が保持される空気キャビティと、
前記空気キャビティに対して外気を導通する導通孔を持つ通気路と、
前記導通孔から前記空気キャビティ内に吹き込まれる空気を前記水流膜に対して巻き込ませることにより泡沫水を形成する泡沫水生成手段と、
前記水流膜形成部の前記隙間を形成する部材に少なくとも1つの小溝を刻みつけ、前記隙間を通る水流の流れを調整する水流膜ガイドと、
前記水流膜形成部の前記隙間の幅を可変とし、形成される前記水流膜の速度を可変とする隙間幅可変機構と、前記導通孔の幅を可変とし、前記導通孔より引き込む前記空気の速度を可変とする導通孔幅可変機構を備え、
前記隙間から打ち出されて形成される水流膜の形状を安定させるとともに、前記水流膜の打ち出し速度および空気の巻き込み速度を調整可能としたことを特徴とする節水コマ。
【請求項2】
前記水流膜形成部において前記隙間が周回状の隙間であり、前記隙間から下流側に打ち出された加速水流が周回方向に連続した立体的な周回状の水流膜となるものであり、前記水流膜ガイドとなる前記小溝を前記周回状の隙間に略均等間隔に複数個設けたものである請求項に記載の節水コマ。
【請求項3】
前記導通孔が前記空気キャビティに形成された周回状の前記水流膜によって囲まれている密閉空間に対して外気を導通するものであり、
前記泡沫水生成手段が、前記導通孔から前記密閉空間内に吹き込まれる空気を前記周回水流膜に対して巻き込ませることにより泡沫水を形成するものであり、
前記通気路が導通する前記密閉空間の気密性が維持された状態にて、前記周回水流膜の流れと前記空気の巻き込みで生じる気圧低下により、前記導通孔から前記空気を引き込んで前記泡沫水を生成できる請求項に記載の節水コマ。
【請求項4】
前記水流膜が形成する立体の下面を封止して前記密閉空間の気密性を高めつつ水流を下流側に流す周回水流膜密封体を備えた請求項2または3に記載の節水コマ。
【請求項5】
前記隙間の長さ方向に、前記水流膜ガイドとなる前記小溝を適度な間隔で複数個設けることにより、前記隙間から打ち出されて形成される水流膜が厚さに対して幅が十分に大きい薄い水流膜の場合でも、前記水流膜が前記隙間の長さ方向に欠損することなく安定した形状で形成する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の節水コマ。
【請求項6】
前記小溝が、前記隙間を形成する長さ方向に対向する部材のうち一方に対して設けられている請求項1乃至5のいずれか1項に記載の節水コマ。
【請求項7】
前記小溝が、前記隙間を形成する長さ方向に対向する部材の両方に対して設けられている請求項1乃至5のいずれか1項に記載の節水コマ。
【請求項8】
前記小溝が、前記隙間を形成する長さ方向に対向する2つの部材に交互に設けられている請求項1乃至5のいずれか1項に記載の節水コマ。
【請求項9】
前記小溝が、前記隙間を形成する長さ方向に対向する2つの部材に対向し合うように設けられている請求項1乃至5のいずれか1項に記載の節水コマ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、水道の蛇口(一般用水道蛇口のみならず、実験室用の水道蛇口等の特殊用途のものも含む)や、シャワーヘッド等の水吐出管に装着して吐出する水量を抑制するための節水コマに関するものである。吐出する水量を抑制しつつ吐出する水を泡沫水とする泡沫水生成機能付きの節水コマにも応用可能である。
【背景技術】
【0002】
従来から一般家庭や商業施設などにおいて節水が求められている。節水手段の一つとして、水道の蛇口等の水吐出菅に節水コマを装着する技術が知られている。従来技術における節水コマは、例えば、水道の蛇口等の水吐出菅の内部に円柱状の節水コマを内装して組み込み、その節水コマの存在により、水道の流量を強制的に絞り、蛇口の開栓量が大きい場合でも流水量を小さく抑えるものである。
【0003】
例えば、従来の節水コマとしては、筒状の給水管にあわせて基本形状を円柱状とし、流入側の上面から流出側の下面まで貫通する貫通孔を開けた構造のものが一般的である。このような節水コマを取付けると、水の流出は吐出管の口径より小さい口径の貫通孔を経由するため、水の流出量が制御されて節水効果をあげるものである。貫通孔の本数は中央に1つ設けたものもあれば、2つまたは3つ程度を適度に配置したものもある。
【0004】
例えば、特開平9−095985号公報に開示された節水コマでは、円柱状のコマ本体と、このコマ本体の水流入側端面から他方の水流出側端面に渡って形成された少なくとも3本の貫通孔とを有し、これらの貫通孔を、コマ本体の水流入側端面から水流出側端面に向けて相互の間隔が広がるように形成した構成となっている。また、コマ本体の水流入側の縁端には大径のフランジを一体形成しておき、水道蛇口等の内部に固定できるようになっており、3本の貫通孔はコマ本体の水流入側端面に形成され、貫通孔の流入口は同心円状に等角度間隔で配置し、貫通孔の流出口も同心円状に等角度間隔で位置する工夫などが開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平9−095985号公報
【特許文献2】特開2000−104300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術における特開平9−095985号公報に示すような節水コマには以下に示す問題があった。従来の節水コマでは、水吐出管の口径より小さい口径の貫通孔を経由するために、水の流出径は確かに小さくなるところ、水吐出管にかかる水圧によって小さい径の貫通孔から流出する水流は勢い良くなり、使用に支障が生じる程に強くなってしまうという問題があった。つまり、小さい径の貫通孔から激しく強い水流となってしまい、手をかざすと痛いくらいの激しい水流となってしまうおそれがあった。これは、単に、水吐出管の口径より小さい口径の貫通孔を経由する構造であれば発生してしまう問題である。
一般家庭の水道蛇口であれば、手洗いなどには不向きなほど強くなってしまう場合があり、実験室の水道蛇口であれば、実験器材などを洗うにも不向きなほど強くなってしまう場合があった。
【0007】
発明者高野雅彰は、節水コマの開発に取り組んでくる中、以下のことに気がついた。
一般の蛇口に取り付ける節水コマのタイプで節水率を上げるためには、節水コマ内において水吐出管の面積より小さい面積の貫通孔を用いることは必要であるが、節水コマ内における貫通孔の面積を小さくしつつも、貫通孔の形状を工夫すれば貫通孔から打ち出される水流の形を制御することは可能である。特に、貫通孔の形状をスリット状の隙間とし、貫通孔から打ち出される水を水流膜の形にすれば、節水コマの内部で様々な工夫を施して良質な節水コマを得ることができることに着想した。そこで、節水コマの内部で水流膜を形成し、水流膜の性質を利用した種々のタイプの節水コマや、水流膜に対して効率良く空気を包含させて泡沫水を生成することのできる泡沫水生成節水コマなどを研究してきた。
発明者高野雅彰が多様な研究を重ねる中、節水コマ内において水流の通り道となる隙間の形を工夫して、当該隙間から打ち出される水流を薄い水流膜として多様な機能を備えた節水コマを開発している。なお、当該技術は本特許出願の出願時点では未だ公開されていない発明者高野雅彰自身が所有する技術であり、既に特許出願がなされている。
【0008】
ここで、高節水率かつ高機能な節水コマを作るためには、節水コマの内部で形成する水流膜を薄いものとすることが好ましい。水流膜が薄くなる分、全体の水量を抑えることができる。
【0009】
節水コマは、複数点の金属部材を削り出し、それらをネジなどで組み合わせて製造するが、内部で大きな水圧を受けつつ水流膜を設計通りの形状、設計通りの薄さに制御するためには、金属部材の高い削り出し加工精度が求められ、加工に伴うコスト増大、加工時間増大を招き、歩留まりも低下する。特に、単に金属の内部にスリットの孔を削り出すのではなく、スリットの隙間の大きさを外部から調節できるように複数の金属部材の隙間によりスリットを形成する場合には、単に一つの金属部材の削り出し加工のみならず複数点の部品の組み合わせ精度にも関わることであり、極めて高い加工精度が求められることとなる。
【0010】
もし、必要とされる加工精度が得られない場合、複数の金属部材の隙間によりスリットを形成したとしても、水流を流して得られる水流膜は所望の形状・薄さとはならない問題が生じる。
例えば、水流膜が綺麗に展開した膜ではなく一部欠損したような歪んだ膜になったり、水流膜の厚さが偏って一部の部分から勢いよく流れ出すものの、残りの部分は弱い水流となり不均一な水流膜となったりする問題が生じる。
【0011】
図1は、隙間111のバランスが均等であり、想定している水流膜が流れる様子を示す図である。この例では図1(b)に示すように、弧状の隙間から噴き出した水流が弧状の水流膜として形成されている。
一方、図2は、隙間111のバランスが崩れており、水流膜が想定した形では形成されず、一部が欠損した形状となってしまう問題を簡単に示した図である。図1(b)に示すように、弧状の隙間の一部からは水流が出ず、その結果、一部が欠損した状態の水流膜となっている。
このように、水流膜が想定した形では形成されず、一部が欠損した形状となってしまうと、節水コマにおいて設計した通りの種々の機能を正常に発揮させることができない。
【0012】
上記のように、節水コマ内部で薄い水流膜を所望の形状・薄さに制御するためには、極めて高い加工精度が求められるが、スリットの形成に、複数の金属部材をネジなどで組み合わせる要因が影響する場合、ネジ加工による限界があることも分かってきた。ネジは一方の金属を削り出して製造した雄ネジと他方の金属を削り出して製造した雌ネジを螺合するが、金属部材同士を螺合するためにはいわゆるあそびのマージンが必要である。節水コマ内部で薄い水流膜を制御するために必要とされる加工精度がネジに必要なあそびのマージンよりも高い精度となってしまい、スリットの形成に複数の金属部材をネジなどで組み合わせる要因が影響する以上、加工精度を上げることには限界があり、その結果、水流膜が綺麗に展開した膜ではなく一部欠損したような歪んだ膜になるなどの不具合が生じるものが多くなり、歩留まりが低下してしまう問題が生じていた。
【0013】
そこで、簡便な方法により、隙間から噴き出す水流の流れを制御し、形成される水流膜の形状を安定させるという技術が必要となってくる。発明者高野雅彰は、複数の金属部材をネジにより組み合わせて節水コマ内部でスリットを形成し、当該スリットから水流膜を節水コマ内部で打ち出す機能を付与しつつ、如何に加工の歩留まりを上げるかという問題に取り組み、新しい節水コマの開発を行ってきた。
【0014】
上記問題点に鑑み、本発明は、節水コマ内部において隙間から噴き出す水流の流れが均質になるように制御し、形成される水流膜の形状を安定させることができる節水コマを提供することを目的とする。また、上記目的を達成しつつ、さらに泡沫水を生成する機能を付与した泡沫水生成機能付き節水コマを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記本発明の第1の目的を達成するため、本発明にかかる節水コマは、水吐出管に装着して吐出する水量を抑制するための節水コマにおいて、内部に水流の通り道となる隙間を備え、前記隙間から下流側に打ち出された加速水流が膜状の水流膜となる水流膜形成部と、 前記水流膜の形成場所として水流管の途中に設けられ、前記水流膜の水流が流れ込んだ状態でも空気が充満された状態が保持される空気キャビティと、前記空気キャビティに対して外気を導通する導通孔を持つ通気路と、前記導通孔から前記空気キャビティ内に吹き込まれる空気を前記水流膜に対して巻き込ませることにより泡沫水を形成する泡沫水生成手段と、前記水流膜形成部の前記隙間を形成する部材に少なくとも1つの小溝を刻みつけ、前記隙間を通る水流の流れを調整する水流膜ガイドと、前記水流膜形成部の前記隙間の幅を可変とし、形成される前記水流膜の速度を可変とする隙間幅可変機構と、前記導通孔の幅を可変とし、前記導通孔より引き込む前記空気の速度を可変とする導通孔幅可変機構を備え、前記隙間から打ち出されて形成される水流膜の形状を安定させるとともに、前記水流膜の打ち出し速度および空気の巻き込み速度を調整可能としたことを特徴とする節水コマである。
【0016】
例えば、前記隙間の長さ方向(スリットの長さ方向)に、前記水流膜ガイドとなる前記小溝を適度な間隔で複数個設けることにより、前記隙間から打ち出されて形成される水流膜が厚さに対して幅が十分に大きい薄い水流膜の場合でも、前記水流膜が前記隙間の長さ方向に欠損することなく安定した形状となるものとすることができる。
【0017】
また、例えば、前記水流膜形成部において前記隙間が周回状の隙間であり、前記隙間から下流側に打ち出された加速水流が周回方向に連続した立体的な周回状の水流膜となるものにも適用でき、その場合、水流膜ガイドとなる前記小溝を前記周回状の隙間に略均等間隔に複数個設けたものとすることができる。
【0018】
発明者高野雅彰が研究を重ねる中、隙間において小溝を設けることにより、局所的に当該部分の隙間幅が太く流れやすい箇所ができ、当該箇所をきっかけとしてその周辺では流れが途切れることがなくなる。このような小溝を狭い隙間に適度な間隔で設けておくことにより、結果としてどの部分にも欠損ができず、安定して均一な水流膜を形成することができる。なお、小溝は小さなもので良いので、形成される水流膜自体に厚さにムラができることもない。
【0019】
なお、水流の通り道となる隙間に小溝を設けるパターンとして多様なものが可能である。
例えば、前記小溝が、前記隙間を形成する長さ方向に対向する部材のうち一方に対して設けるパターンがある。
また、例えば、前記小溝が、前記隙間を形成する長さ方向に対向する部材の両方に対して設けるパターンがある。
また、例えば、前記小溝が、前記隙間を形成する長さ方向に対向する2つの部材に交互に設けるパターンがある。
また、例えば、前記小溝が、前記隙間を形成する長さ方向に対向する2つの部材に対向し合うように設けるパターンがある。
【0020】
なお、隙間についても水流量の調整機能を設けておくことができる。つまり、前記隙間の幅を可変とする隙間幅可変機構を備えたものとすれば、形成される前記水流膜の厚みおよび速度の調整が可能となる。
【0021】
上記のように、本発明の節水コマにおいて、安定した水流膜を形成し、泡沫水を生成することができる。
【0022】
また、細かい気泡が多量に包含された良質な泡沫水を得るため、上記した構成のうち、前記水流膜形成部において前記隙間が周回状の隙間であり、前記隙間から下流側に打ち出された加速水流が周回方向に連続した立体的な周回状の水流膜となる構成において、さらに、前記空気キャビティに形成された周回状の前記水流膜によって囲まれている密閉空間に対して外気を導通する導通孔を持つ通気路と、前記導通孔から前記密閉空間内に吹き込まれる空気を前記周回水流膜に対して巻き込ませることにより泡沫水を形成する泡沫水生成手段を備えたものである。この構成であれば、前記通気路が導通する前記密閉空間の気密性が維持された状態にて、前記周回水流膜の流れと前記空気の巻き込みで生じる気圧低下により、前記導通孔から前記空気を引き込んで細かい気泡が多量に包含された良質な泡沫水を得ることができる。
【0023】
また、前記水流膜の速度および空気の巻き込み速度が調整できるため、良質な泡沫水を生成することが可能である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の泡沫水生成コマによれば、複数の金属部材をネジにより組み合わせて節水コマ内部に流通孔を形成し、当該流通孔から水流膜を節水コマ内部で打ち出す機能を付与しつつ、流通孔の壁面に小溝を隙間に適度な間隔で設けておくことにより水流を制御することができ、節水コマ内部において隙間から噴き出す水流の流れが均質になるように制御し、形成される水流膜の形状を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】隙間111のバランスが均等で想定している水流膜200が流れる様子を示す図である。
図2】隙間111のバランスが崩れており水流膜200の一部が欠損している場合を説明する図である。
図3】小溝112を設けることにより隙間111から打ち出されて形成される水流膜の形状を安定させる機能を付与した様子を示す図である。
図4】小溝112付近を拡大した図であり、小溝112をきっかけとして水流膜200が形成されやすくなる様子を示す図である。
図5】小溝112の設け方の代表的なパターンを示す図である。
図6】隙間の幅を可変とする隙間幅可変機構の概念を簡単に説明する図である。
図7】実施例2にかかる本発明の泡沫水生成コマ100cの一構成例を示す図である。
図8】部材101c、部材102c、部材103cの3つの部材に分解して示した図である。
図9】3つの部材101c、部材102c、部材103cを組み上げる手順を示した図である。
図10】部材101cと部材102cを組み上げた状態の上端面(周回水流膜形成部110c)と下端面(通気路140、泡沫水流出部150)を示した図である。
図11】泡沫水生成コマ100cに水を流し、形成される周回水流膜200cに対して内面側から空気を巻き込ませて泡沫水が形成される仕組みを示した図である。
図12】隙間111に周回状に小溝112が介在する場合に、周回水流膜200が欠損することなく打ち出される様子を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
100 泡沫水生成コマ
101 部材
102 部材
103 部材
110 周回水流膜形成部
111 隙間
113 内側空間
114 外側空間
120 空気キャビティ
130 周回水流膜形成部密封体
140 通気路
141 導通孔
150 泡沫水流出部
160 アタッチメント部
161 水キャビティ
200 周回水流膜
300 水吐出管
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の節水コマの実施例を説明する。ただし、本発明の範囲は以下の実施例に示した具体的な用途、形状、個数などには限定されないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0028】
以下、実施例1は、本発明の節水コマ100の基本構成例である。分かりやすく説明するため、一例として形成される水流膜が弧状に連続した水流膜としたが、形成される水流膜の形状は弧状に連続したものに限定されるものではない。
また、以下に図示した部材は、例えば、ステンレス鋼、真鍮、アルミニウム、チタン合金、マグネシウム合金などの金属部材、セラミック素材、特殊樹脂素材など切削加工が可能な部材で節水コマ部材としての強度があるものであれば良いが、ここでは一例としてステンレス鋼とする。
【0029】
本発明の節水コマにおいて、小溝112を設けることにより水流の流れを制御する原理を図1から図3を用いて説明する。図1図2の例では小溝112は設けられておらず、図3の例では小溝112が設けられている例となっている。
図1から図3は、上流から流れ込んでくる水流を絞って下流に流す節水コマ本体部分の一部を概念的に取り出した図であるが、説明を簡単するため、形成される水流膜200は単なる弧状に連続した一枚の水流膜200の例となっている。
【0030】
水流膜形成部110は、上側の部材101aと下側の部材101bを備え、部材101aと部材101bがネジにより接合されているものとする。
図1から図3に示すように、上側の部材101aと下側の部材101bとの隙間が水流の通り道となる隙間111となっている。この隙間111の形状がいわゆるスリット状の細いものであり、この隙間111を通過することにより水流は絞られて加速水流膜として下流側に打ち出される。
今、図1(a)の例では、上側の部材101aと下側の部材101bとのネジの接合によるバランスの崩れなどがない様子を示しており、小溝112を設ける工夫を施していなくても、図1(b)に示すように、隙間111の全体から均質に水流膜200が打ち出されている。隙間112から打ち出されて形成される水流膜が厚さに対して幅が十分に大きい薄い水流膜の場合でも、水流膜が隙間の長さ方向に欠損することなく安定した形状で形成されている。
【0031】
空気キャビティ120は、水流膜形成部110から打ち出された水流膜200の形成場所として水流管の途中に設けられた空間であり、水流膜200の水流が流れ込んだ状態でも空気が充満された状態が保持される空気キャビティとなっている。図1では説明を簡単にするため、オープンな状態の開空間として描かれているが、実際の節水コマ100の内部では壁面などに囲まれた閉空間である。
【0032】
次に、図2は上側の部材101aと下側の部材101bとのネジの接合によるバランスの崩れなどが生じ、水流の流れが悪く水流膜の一部が欠損している場合の例を簡単に示す図である。図2に示すように、実際には隙間111aが形成されているにもかかわらず、微妙な金属部品同士の偏りなどで、水流が欠損している部分の隙間111aに隣接する他の隙間111bが広くなり、その隙間111bから水流が流れるものの、当該隙間111aは狭くなっているために当該隙間111aから水流が流れなくなってしまう現象が起きている。つまり、隙間111のバランスが崩れていることにより水流膜の一部が欠損するという現象が生じている。
【0033】
次に、図3は、水流膜形成部110の隙間111を形成する部材に小溝112を刻み付けることにより水流膜ガイドを設け、隙間111から打ち出されて形成される水流膜の形状を安定させる機能を付与した様子を示す図である。図3(a)の例では、隙間111の長さ方向に、小溝112を適度な間隔で複数個(図中では3個)設けられている。
小溝112は、隙間111を通る水流の流れを調整する水流膜ガイドとなり、隙間111から打ち出されて形成される水流膜の形状を安定させる機能を発揮する。
【0034】
図4は、小溝112付近を拡大した図であり、小溝112をきっかけとして水流膜200が形成されやすくなる様子を示す図である。
図4(a)には、小溝112の部分を拡大した拡大図が示されているが、拡大図に示すように、隙間111aを形成する部材に小溝112が設けられている。この小溝112は周囲に比べて僅かであるが隙間の深さが深いため水流が通りやすくなっている。
【0035】
いま、図4(a)に示すように、部材101aと部材101bをネジ移動させた際に相対的な姿勢のバランスが崩れ、一時的にある隙間111aの部分が狭く、水流膜が途切れやすい現象が誘引される条件が生じたとしても、水流を流すと、図4(b)に示すように、小溝112をきっかけとして常に水流膜が噴き出すポイントが得られ、不意に水流膜200が欠損してしまう箇所が生じることがない。このように水流を噴き出すポイントが得られれば、図4(c)に示すように、噴き出す水流の水圧などによりその周辺の隙間111からも水流膜が打ち出されるようになる。一度隙間111aに水流が流れ始めるとその水流の水圧などにより隙間111aが適度に広がり隙間111に生じていた偏りや歪みが解消され、均等にバランスが取れた状態となり、隙間111全体から安定して水流膜が流れ始める。このように小溝112が適切な間隔で設けられておれば、水流膜200が隙間111の長さ方向に欠損することなく安定した形状で形成される。
【0036】
つまり、図3(a)のように、小溝112が適切な間隔で設けられておれば、たとえ部材101aと部材101bをネジ移動させた際に相対的な姿勢のバランスが崩れていても、図3(b)に示すように、水流膜形成部110の隙間111を形成する部材に少なくとも1つの小溝112を刻みつけることにより、隙間111のバランスが崩れていることにより水流膜の一部が欠損するという現象が解消でき、隙間111から打ち出されて形成される水流膜の形状を安定させることができる。
【0037】
次に、小溝112を設けるパターンについて説明する。
スリットとなる隙間111の長さは長いものも想定される。例えば、小さな節水コマ100の内部であるものの、スリットとなる隙間111を周回状のものなどにするとそれなりの長さがある。そこで、隙間111の長さ方向に水流膜ガイドとなる小溝112を適度な間隔で複数個設ける工夫が可能である。長い隙間111に対して複数の小溝112a,112b,112cを適度な間隔で複数個設ければ、これら小溝112a,112b,112cの各点がガイドとなり、それらの箇所で水流膜が流れるきっかけとなり、常にその周辺の隙間111に正常な水流膜が形成されるが、小溝112a,112b,112cの間隔が適切であると、小溝112a,112b,112cの各点を中心とした水流膜がつながり合い、その結果、常に隙間111全体から正常な水流膜が形成され、水流膜200が隙間111の長さ方向に欠損することなく安定した形状で得られる。
【0038】
小溝112の設け方には複数のパターンがある。図5は、小溝112の設け方の代表的なパターンを示す図である。なお、小溝112の設け方はこの図5のパターンに限定されず、隙間111に介在するパターンとしては多様な設け方がある。
【0039】
第1のパターンは、隙間111を形成する部材101aと部材101bのうち一方の部材に対して小溝112が設けられているパターンである。図5(a)は、この第1のパターンにて部材101a側に3つの小溝112a,112b,112cを設けた例を示す図である。図5(a)に示すように、部材101aのみに3つの小溝112a,112b,112cが均等間隔で設けられ、部材101bには小溝112は設けられていない。
【0040】
第2のパターンは、隙間111を形成する部材101aと部材101bの両方の部材に対して小溝112が設けられており、特に、小溝112が2つの部材に交互に設けられているパターンである。図5(b)は、この第2のパターンにて部材101aと部材101bに対して交互に小溝112a,112b,112cが設けられた例である。図5(b)に示すように、小溝112aが部材101aに設けられ、小溝112bが部材101bに設けられ,小溝112cが部材101aに設けられ、それぞれが均等間隔で設けられている。
【0041】
第3のパターンは、隙間111を形成する部材101aと部材101bの両方の部材に対して小溝112が設けられており、特に、小溝112が2つの部材101aと部材101bの両方に対向し合うように設けられているパターンである。図5(c)は、この第2のパターンにて部材101aと部材101bの両方に対して対向するように小溝112が設けられた様子を示す図である。図5(c)に示すように、小溝112a、小溝112b、小溝112cが部材101aに設けられ、小溝112d、小溝112e、小溝112fが部材101bに設けられ、それぞれが対向するように均等間隔で設けられている。
上記のように、部材101aと部材101bに小溝112を設けるパターンは様々あるが、その選択は、節水コマ100の内部の構造や機能、また、取り付ける蛇口の水圧などを考慮して決めれば良い。
【0042】
次に、隙間幅可変機構の工夫に付いて述べる。
水流膜形成部110は、隙間111を備えることにより、下流の空気キャビティ120に対して水流膜200を形成するが、節水コマ100の内部に形成される水流膜200の厚さを外部から調整できることが好ましい。利用者が水道利用の目的に応じて節水コマ100の節水効率を上げたり下げたりする要求がある場合、この水流膜の厚さを変えることにより下流側に流す水流量を調整できるからである。また、水道の水圧が何らかの事情で変化した場合、節水コマ100の内部に形成される水流膜200の厚さを外部から調整できれば、水道の水圧の変動分を調整することができる。
【0043】
図6は、隙間の幅を可変とする隙間幅可変機構の概念を簡単に説明する図である。
図6(a)に示すように、この例では部材101aと部材101bが相互に相対的に移動するものとなっている。例えば、部材101aが部材101bに対して移動できる隙間幅可変機構(図示せず)を備え、図中上下できるものとする。
図6(b)に示す状態では、隙間幅可変機構により部材101aを上に移動させて部材101aと部材101bの間の隙間111を大きくした状態である。部材101aと部材101bの間の隙間111において水流膜200が打ち出されているが、隙間幅がより広くなったために水流膜200の速度は遅くなり、噴き出し方が弱くなる。
【0044】
次に、図6(c)に示す状態では、隙間幅可変機構により部材101aを下に移動させて部材101aと部材101bの間の隙間111を狭くした状態である。図6(b)の状態における部材101aと部材101bの間の隙間111に比べて、図6(c)の状態は部材101aが下に移動して部材101aと部材101bの間の隙間111が小さくなっている。隙間幅がより狭くなったために水流膜200の速度は速くなり、噴き出し方が強くなる。
【0045】
以上、本実施例1の節水コマ100では、小溝112が適切な間隔で設ける工夫を施しているために以下の利益が得られる。つまり、ネジのマージンなどにより部材101aと部材101bの相対的な姿勢のバランスが崩れ、一時的にある部分が狭く、他の部分が広くなった場合、広い部分から水流膜が打ち出され、狭い部分では水流膜が途切れるという現象が誘引される条件が生じたとしても、隙間を形成する部材に小溝112が適切な間隔で設けられているので、適切な間隔で常に水流膜が噴き出すきっかけが得られ、不意に水流膜200が欠損してしまう箇所が生じることがない。
【実施例2】
【0046】
実施例2は、水流膜の長さを大きくし、節水コマの内部で周回状となっている場合について、小溝を設けて節水コマ内部の水流の流れを制御する原理を適用した例である。
ここでは、水流膜形成部は、周回水流膜形成部となっており、周回水流膜形成部が形成する隙間は周回状となっており、上流からの水流を受けて下流側のキャビティ空間内に周回方向に連続した立体的な周回水流膜を形成する例である。
なお、実施例1に示したように、2つの金属片の対向し合う部分に対して小溝112を設けるパターンは複数パターンがあるが、ここでは、一例として一方の金属片、例えば、下側の金属片に小溝112を設けるパターンを例として説明する。
【0047】
本実施例2の泡沫水生成コマ100cは、周回水流膜形成部110c、空気キャビティ120、周回水流膜密封体130、通気路140、アタッチメント部160、泡沫水流出部150を備えたものである。
【0048】
以下、まず、泡沫水生成コマ100cの構成部品とその組み上げについて説明し、その次に、小溝112を設けることにより、水吐出管から泡沫水生成コマ100cに水を流して形成される周回水流膜200cが欠損することなく、周回状の水流膜となることを説明する。
【0049】
図7は実施例2にかかる本発明の泡沫水生成コマ100cの一構成例を示す図である。
図7に示した構成例は、部材101c、部材102c、部材103cの3つの部材から構成された例となっている。図8は、部材101c、部材102c、部材103cの3つの部材に分解して示した図である。図9は、3つの部材101c、部材102c、部材103cを組み上げる手順を示した図である。図10は、部材101cと部材102cを組み上げた状態の上端面(周回水流膜形成部110c)と下端面(通気路140、泡沫水流出部150)を示した図である。図11は、図7に示した構成において、水吐出管から本発明の泡沫水生成コマ100cに水を流し、形成される周回水流膜200cに対して内面側から空気を巻き込ませることにより泡沫水が形成される仕組みを示した図である。図12は、部材101cと部材102cにより形成される隙間111に周回状に小溝112が介在する場合に、周回水流膜200が欠損することなく打ち出される様子を示す図である。
なお、図7図8図9図11は、内部の構造が分かりやすいように縦断面として示している。
【0050】
また、図7図8図9図11の図示において、泡沫水生成コマ100cは縦軸を中心とした回転体となっているが、導通孔141は回転体ではなく、後述する周回水流膜200cの内側の密封空間に導通するように通気路140の壁面に複数個開けられた孔となっている。また、泡沫水流出部150は後述する周回水流膜200cの水流が流れ出るため底面部分に複数個設けられた孔となっている。
【0051】
部材101cは、図8(a)に示すように回転体であり、図示のような縦断面を持つ筒状の部材である。上部筒体1011、鍔状体1012、中部筒体1013、下部筒体1014が設けられており、下部筒体1014の内周には雌ネジが設けられている。
この例では、部品点数を減らすために、部材101cに対して、後述する周回水流膜形成部110cや空気キャビティ120の構成の一部を担う構造物を一体化して形成した構造例となっている。
【0052】
部材102cは、図8(b)に示すように、上部に円板体1021が設けられており、その下方には筒状体1022が設けられている。この構成例では円板体1021は略円錐台形となっており、側壁面は外側に緩やかに開いた傘状となっている。
筒状体1022の内面は通気路140となっており、筒状体1022の壁面には複数の孔が設けられており、この孔が導通孔141となっている。また、筒状体1022の外壁面には傘状に開いた傘状体1023が設けられており、この傘状体1023が周回水流膜密封体130である。さらに、筒状体1022の底部付近には円板1024が設けられている。筒状体1022と円板1024は後述する図8(b)に示すように、放射状の橋梁により接続されている。円板1024に開けられている孔が泡沫水流出部150となっている。また、円板1024の外周には雄ネジが設けられている。
この例では、部品点数を減らすために、部材102cに対して、後述する周回水流膜形成部110cや空気キャビティ120や周回水流膜密封体130や通気路140の構成の一部を担う構造物を一体化して形成した構造例となっている。
【0053】
なお、この構成例では、図7(b)に示すように、部材102cの上部の円板体1021の側壁面には、複数個の小溝112が設けられている。この構成例では、周回状に8個設けられている例となっている。この小溝112は実施例1で説明した小溝112と同様のものである。
【0054】
部材103cは、図8(c)に示すように回転体であり、図示のような縦断面を持つ筒状の部材である。筒状体1031とその底面には中空円板体1032が設けられている。筒状体1031の内壁面には雌ネジが設けられており、これが水吐出管の外周に取り付けるアタッチメント部160となる。また、部材103の中空円板体1032は、部材101cの鍔状体1012を係止する構造物となる。
【0055】
これらの部材101c、部材102c、部材103cの組み上げは、まず、図9(a)に示すように、部材101cの内部に部材102cを挿入し、部材101cの下部筒体1014の内周の雌ネジに対して、部材102cの円板1024の外周の雄ネジを螺合して取り付ける。
【0056】
図10は部材101cと部材102cを取り付けた状態の上端面と下端面を示している。
部材101cに対して部材102cを螺合して取り付けた状態において、上端面では、図10(a)に示すように、部材101cの上部筒体1011と部材102cの円板体1021により周回水流膜形成部110cが形成される。部材101cの上部筒体1011の内周と部材102cの円板体1021の外周との間には隙間111cが開くように径が調整されている。当該隙間111cが泡沫水生成コマ100c内の水流路の一部となっている。
【0057】
ここで、部材102cの円板体1021には小溝112cが適切な間隔で設けられているので、部材101cの上部筒体1011と部材102cの円板体1021が対向して形成された周回水流膜形成部110cには、小溝112が介在している。この例では、周回状に8カ所に小溝112が介在している。
【0058】
また、部材101cと部材102cを螺合して取り付けた状態において、下端面では、図10(b)に示すように、部材102cの円板1024に開けられている孔として泡沫水流出部150が形成され、部材101cの中部筒体1013の内周に通気路140が形成されている。
【0059】
次に、部材101cと部材102cを取り付けた状態で、部材103cの中空円板体1032に対して、部材101cの鍔状体1012を係止させて本発明の泡沫水生成コマ100cを組み上げる。つまり、部材103cに対して部材101cと部材102cが吊り下がった状態となる。
このように組み上げた本発明の泡沫水生成コマ100cを水吐出管に取り付けることにより、図7の状態を得る。
【0060】
次に、水吐出管から泡沫水生成コマ100cに水を流して形成される周回水流膜200cが小溝112cの働きにより欠損することなく、周回状の水流膜となり、さらに泡沫水が形成されることを説明する。
隙間111cは、部材101cの上部筒体1011の内周と部材102cの円板体1021の外周との間に形成されているが、部材101cと部材102cとの組み上げにおいて、部材101cの下部筒体1014の内周の雌ネジと部材102cの円板1024の外周の雄ネジとの螺合により取り付けられているため、ネジのあそびなどのマージンが存在し、部材101cの上部筒体1011の姿勢と、部材102cの円板体1021の姿勢は、微視的に見ればバランスが完全には均一ではない。そのため、部材101cの上部筒体1011の内周と部材102cの円板体1021の外周との隙間に歪みが生じ、ある部分の隙間は広いが他の部分の隙間は狭いというバランスの崩れが存在することがある。
【0061】
周回水流膜形成部110cは、内部に水流の通り道となる隙間111cを備え、上流からの水流を受けて隙間111cから加速水流を打ち出し、下流側のキャビティ空間内に周回方向に連続した立体的な周回水流膜200cを形成する。
この隙間111の内壁形状により打ち出される加速水流の方向が決まり、加速水流が形成する周回水流膜200cの形状が決まる。
【0062】
ここで、上記のように、部材101cの上部筒体1011の内周と部材102cの円板体1021の外周との隙間に歪みが生じていると、広い隙間の部分からは水流膜が勢いよく流れ出しやすく、狭い隙間の部分からは水流膜が流れにくい。もし、小溝112がない場合、図12(a)に示すように、広い隙間の部分から水流膜が形成されるだけで、狭い隙間の部分からは水流膜が流れ出さず、欠損してしまう場合も起こり得る。
【0063】
しかし、本実施例2では、図7(b)や図10(a)に示したように、周回水流膜形成部110cの隙間111cを形成する部材102cの円板体1021には周回状に均等に小溝112が8カ所形成されており、いずれの箇所においても水流膜が流れ出すきっかけとなる小溝112が介在していることとなる。そのため、図12(b)に示すように、狭い隙間の部分からも水流膜が流れ出し、水流膜が欠損することなく、周回水流膜200cが正常に形成される。また、流れ出した水流膜の圧力が狭い隙間を押し広げる方向にも働き、部材101cの雌ネジと部材102cの雄ネジにあるネジのあそびなどのマージンに起因するバランスのずれが解消され、その後、安定して周回水流膜200cが正常に形成されるという効果も得られる。
【0064】
周回水流膜形成部110の隙間111cに水流が流されると周回水流膜200cが形成されるが、周回水流膜200cは周回方向に連続した立体的な水流膜となり、水流膜により周回水流膜200cの内側空間と外側空間が隔てられ、この周回水流膜200cには周回方向には切れ目がなく、その内側空間は気密性が維持された密閉空間となる。図9に示した構成例では、図11に示すように、形成される周回水流膜200cの形状は略円錐台側面形となる。
【0065】
なお、周回水流膜形成部110cによって節水効果も得られる。水キャビティ161の径よりも隙間111cの幅が小さいものであれば、隙間111cにおいて吐出される水量が絞られる結果、節水効果が得られることとなる。なお、本発明の泡沫水生成コマ100cでは、水流中に多量の空気を巻き込んで空気含有量の大きな泡沫水を形成することにより、実際の水量に対して、本発明の泡沫水生成コマ100cから吐出される水の見た目の体積が大きくなり、利用者の水使用感を落とすことがない。
【0066】
以上のように、本実施例2の節水コマ100cでは、小溝112を設けることにより、部材の組み上げ時にネジのあそびなどのマージンに起因するバランスのずれが生じても水流膜が一部欠損するような事態は解消され、その後、安定して周回水流膜200cが正常に形成されるという効果が得られる。
【0067】
次に、本実施例2の節水コマ100cでは、周回水流膜200cが形成された後、泡沫水が形成されることを説明する。
泡沫水生成コマ100内における泡沫水生成手段は、周回水流膜200cの水流の流れにより密閉空間113内の気圧を下げて導通孔141から密閉空間113内に吹き込まれる空気を周回水流膜200cに対して内面側から巻き込ませることにより泡沫水を生成する手段である。この泡沫水生成手段によって泡沫水が生成される仕組みについて説明する。
【0068】
図11(a)は、図7に示した泡沫水生成コマ100cに対して水吐出管300から水流を流した状態を示す図である。図7と同様、内部の水流の状態が分かりやすいように縦断面にて示している。水流の流れ、空気の流れ、形成される泡沫水を模式的に示している。
水吐出管300cから水キャビティ161に吐出された水は、周回水流膜形成部110cの上面に受けられるが、水圧によって隙間111cから下方へ導かれて行く。
【0069】
水吐出管300から水キャビティ161に吐出された水は、周回水流膜形成部110cの上面に受けられるが、水圧によって隙間111cから下方へ導かれ、図11(b)に示すように、周回方向に切れ目のない連続した略円錐台側面状の立体的な周回水流膜200cとなる。
【0070】
周回水流膜200cは周回方向に切れ目なく連続しているため、図11(a)および図11(b)に示すように、空気キャビティ120内において、周回水流膜200cの内側空間113と外側空間114とは水流膜により遮断される。この構成例では周回水流膜200cの外側空間114は、周回水流膜200cと壁面1013により囲まれ、気密性が維持された密閉空間となる。
【0071】
ここで、空気キャビティ120は、周回水流膜200cの形成場所として水流管の途中に設けられた空気が充満した空間である。周回水流膜200cの水流が流れ込んだ状態でも空気が充満された状態が保持される空間となっている。この構成例では、空気キャビティ120は、部材101cの壁面1013と部材102cの壁面1022により囲まれた空間である。空気キャビティ120内には、形成される周回水流膜の200cの内側に位置する箇所に後述する通気路140の導通孔141が設けられており、外気より空気が供給される構造となっている。通気路140は、周回水流膜200内の密閉空間内と外気とを導通する通気路であり、周回水流膜200内の密閉空間内に導通孔141が位置するように設けられている。この構成例では、部材102の筒状体1022の中空部分が通気路140となっており、筒状体1022の壁面に開けられた複数の孔が導通孔141となっている。
【0072】
このように、周回水流膜200cの外側空間114は気密性が維持され、かつ、空気で充満された密閉空間となっている。なお、周回水流膜200cの内側空間113も空気で充満された状態となっている。
【0073】
隙間111cから打ち出された周回水流膜200cに対して空気が巻き込まれて行く原理は以下のようである。
この構成例では、図11(a)および図11(b)に示すように、周回水流膜200cが外側に向かって拡がって打ち出されるが、その先方に壁面1013があり、略円錐台側面形の周回水流膜200cの水流がこの壁面1013に当接すると水流の向きが下側方向に曲げられるように変化している。ここでは、このように周回水流膜200cの水流が当接する部材を周回水流膜当接体130cと呼ぶ。つまり、この周回水流膜200cの水流が周回水流膜当接体130cに当接する箇所において密閉空間である外側空間114が下側に拡がることとなり、密閉空間が拡げられる当該箇所において気圧低下が生じることとなる。
【0074】
隙間111cから打ち出された加速水流が勢い良く下流に流れてゆくことによって周回水流膜200cの面している空気が巻き込まれて行くが、図11(a)に示すように、気圧低下が生じている周回水流膜200cの水流が下側に曲げられている箇所において一気に空気が周回水流膜200cに引き込まれ、多量の空気が包含された泡沫水となる。薄い膜状に拡がった状態の周回状の水流膜に対して外面から空気が打ち込まれるため、水流膜中に空気泡が均一に拡散してゆくという効果が得られる。その結果、良質な泡沫水を生成することができる。
【0075】
泡沫水となった水流は下方へ流れて行き、部材1025と壁面1013との間の隙間から外部へ流れ出し、泡沫水流出部150から泡沫水として流れ出て行く。
泡沫水流出部150は、周回水流膜200cが部材102cの壁面1022にあたって下方に流れ出た水流を排出する部分であり、この泡沫水流出部150から泡沫水が流れ出す。この構成例では、部材101cの中部筒体1013の内壁面と部材102cの傘状体1023との隙間部分と、部材102cの傘状体1023と円板1024との間に設けられた孔が泡沫水流出部150を形成している。
【0076】
なお、図11(a)に示すように、密閉空間内で生成された泡沫水は部材1025と壁面1013との隙間である泡沫水流出部150から流出していくが、泡沫水流出部150全面にわたり泡沫水が占有した状態で流れ出し、外気が泡沫水流出部150を介して密閉空間内に入り込まず、密閉空間が直接外気と導通しない状態となっている。このように、泡沫水流出部150を介して密閉空間と外気が直接導通しないものとすることにより、泡沫水が密閉空間から流出しつつも密閉空間内内部の気密性を維持することができる。
【0077】
ここで、周回水流膜200の内側の密閉空間113内に導通孔141が設けられているため、密閉空間113の気圧が下がると、導通孔141付近の気圧も下がり、その結果、通気路140から導通孔141を介して外気が勢い良く密閉空間113に吸い込まれることとなる。空気が勢い良く引き込まれると導通孔141を通過する空気流の速度が大きいものとなり、導通孔141の近隣に形成されている周回水流膜200に対して内側から空気が打ち込まれることとなる。薄い膜状に拡がった状態の周回状の水流膜に対して内面から空気が打ち込まれるため、水流膜中に空気泡が均一に拡散してゆくという効果が得られる。その結果、良質な泡沫水を生成することができる。
【0078】
従来技術の泡沫水生成の仕組みは、水流で充満されている水流管の壁面に設けられた導通孔から空気が巻き込まれるものが多いが、本発明の泡沫水生成コマ100は水流が流れて入れも水で満たされずに空気が充満している空気キャビティ120が設けられるとともに、その空気キャビティ120内に周回水流膜200が形成され、水の膜により気密性の維持された密閉空間を形成し、その気圧の低下により勢い良く引き込まれる空気を水流膜に打ち込むという新しい発想の技術である。また、空気が充満された空間内に膜状に拡がった水に対して内側から空気を打ち込むので、空気との接触面積が大きい状態で空気が打ち込まれることとなり、空気含有量が大きく品質の良い泡沫水を生成することができる。
【0079】
また、加速水流の速度が速いほど空気キャビティ120から吸い込まれて加速水流に打ち込まれる空気の速度も速くなり、より一層空気との混合が促進される。なお、加速水流の側面から内部に打ち込まれた空気は水流中に拡散して均質で微細な空気泡となる。
このように、泡沫水生成手段により、周回水流膜200の少なくとも一部が泡沫水により形成された泡沫水周回水流膜面となる。
【0080】
周回水流膜密封体130cを通過した泡沫水は排出孔150から流れ出て行くため、周回水流膜密封体130cによって、加速状態である泡沫水周回水流膜の速度が手洗い用などに適度な速度に弱められて下流側に導かれるという効果(速度調整効果)が得られるとともに、部材102cの内周壁面1022に沿って泡沫水が流れ出すため、手洗い用などに適度な径に拡張されるという効果(水径調整効果)が得られ、吐出する泡沫水の速度と直径が調整される。
【0081】
以上、実施例2の泡沫水生成コマによれば、周回状に連続した円筒状の周回水流膜200cを形成して内側空間を密閉空間113とし、水流膜の流れ、空気の巻き込みにより密閉空間113の気圧を低下させ、導通孔141から周回水流膜200cに対して空気を打ち込み、良質の泡沫水を生成することができる。
【0082】
本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。従って本発明の技術的範囲は添付された特許請求の範囲の記載によってのみ限定されるものである。
【産業上の利用分野】
【0083】
本発明の好ましい実施形態を図示して説明してきたが、本発明は、一般用水道蛇口のみならず、実験室用の水道蛇口、プールで目を洗う水洗蛇口、シャワーなど水が出るものであれば、その用途に限定されることなく、節水機能と泡沫機能を適用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12