(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5762446
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】光学的品質の高い耐化学薬品性フィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 5/00 20060101AFI20150723BHJP
【FI】
C08J5/00CFG
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-557459(P2012-557459)
(86)(22)【出願日】2011年2月9日
(65)【公表番号】特表2013-522402(P2013-522402A)
(43)【公表日】2013年6月13日
(86)【国際出願番号】EP2011051848
(87)【国際公開番号】WO2011113644
(87)【国際公開日】20110922
【審査請求日】2014年1月15日
(31)【優先権主張番号】102010038756.8
(32)【優先日】2010年8月2日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102010002978.5
(32)【優先日】2010年3月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390009128
【氏名又は名称】エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】アヒム ノイホイザー
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター ディックハウト
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ リヒター
(72)【発明者】
【氏名】ヨナス シェアブレ
(72)【発明者】
【氏名】ワンゲリス カランポウジオウキス
【審査官】
加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−227591(JP,A)
【文献】
特表2007−520377(JP,A)
【文献】
特開2004−256812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド成形材料から押出成形によりポリアミドフィルム又はポリアミド成形体を製造するための方法において、該ポリアミドが、実質的に、芳香族、脂肪族又は脂環式ジカルボン酸と脂環式ジアミンとから製造されたものであり、かつ、35mmol/kg未満のカルボキシル末端基割合及び/又はアミノ末端基割合を有しており、かつ、ダイボディとダイリップとからなるフィルムダイの一範囲が、押出工具の出口範囲で、該ダイボディよりも10℃〜100℃高い温度を有していることを特徴とする方法。
【請求項2】
ポリアミドが、実質的に、脂肪族又は脂環式ジカルボン酸と脂環式ジアミンとから製造されたものであり、かつ、35mmol/kg未満のカルボキシル末端基割合及び/又はアミノ末端基割合を有している、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ポリアミドが、実質的に、芳香族ジカルボン酸と脂環式ジアミンとから製造されたものであり、かつ、35mmol/kg未満のカルボキシル末端基割合及び/又はアミノ末端基割合を有している、請求項1記載の方法。
【請求項4】
ポリアミドが、脂肪族又は脂環式ジカルボン酸と脂環式ジアミンとから製造されたものであり、かつ、35mmol/kg未満のアミノ末端基割合を有している、請求項2記載の方法。
【請求項5】
ポリアミドが、芳香族ジカルボン酸と脂環式ジアミンとから製造されたものであり、かつ、35mmol/kg未満のアミノ末端基割合を有している、請求項3記載の方法。
【請求項6】
押出機のダイ出口での圧力が、溶融物中の全揮発性成分が完全に溶解するほどの高さである、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
10℃〜100℃高い温度を有するフィルムダイの範囲がダイリップであり、かつ、該ダイリップの温度がダイボディの温度よりも10℃〜100℃高い、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
ダイボディが250℃〜330℃の温度を有しており、かつダイリップが290℃〜370℃の温度を有している、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
ポリアミド成形材料が0.1質量%の最大含水率を有している、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
以下のプロセス工程:
・成形材料を、250℃〜330℃の温度で押出機中で溶融させる工程、
・該成形材料を、290℃〜370℃の温度を有するダイリップを通じて押出機から排出する工程、
・該成形材料を、10μm〜10mmの厚さで、少なくとも1のロール又は少なくとも1のベルトにより引き取る工程、
・該成形材料をさらに送り、その際に冷却する工程
を含む、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に高い耐化学薬品性、特に水中油型又は油中水型エマルションに対する極めて良好な耐久性、及び高い光学的品質を有する透明なプラスチックフィルムないしプラスチック成形体の製造法に関する。
【0002】
従来技術
光学的外観に関して特に高い要求を伴う適用について、耐候性及びとりわけ耐化学薬品性に関して高い要求が課せられている。例として、車両内部空間におけるプラスチック部材が挙げられる。該部材は、とりわけ化粧品又は食品からの油又は水中油型もしくは油中水型エマルションと規則的に接触する。その際に特に問題となるのが、例えばサンクリーム、サンオイル又はローションである。特に、サンクリーム及びサンオイルは無機UV吸収剤に加えて著量の有機UV吸収剤も含有しており、これは多くのプラスチックにおいて応力亀裂を引き起こす。車両内部空間において使用されている大部分のプラスチックは、サンクリームに対する十分な長期安定性を示さず、また比較的長時間使用した際には光学的品質が損なわれる。
【0003】
特に、ポリアミド PA PACM12又はPA MACM12といった成形材料が、化学薬品、油、脂肪又は脂質に対して極めて良好な安定性を示すことは公知である。該材料からのフィルムは、例えばEP1804094、JP2006−227591及びUS2009/0085019から公知である。しかしながら、該出願からは、シートの品質レベルに関する知見又は高い光学的品質を保障するための教示は明らかでない。むしろ、そのような成形材料を、比較的長い製造時間にわたって高い品質安定性を伴いながら、高い光学的品質を有するフィルム又は成形体へと加工することについては、今日まで記載されていない。
【0004】
いわゆるチルロール法での幅広スロット工具を用いたフラットフィルム装置上での押出試験によって、公知の方法を用いた場合、材料品質の恒常的な劣化が極めて迅速に生じることが判明した。例えば、フィルムないし成形体において条痕又は斑点の増加が即座に認められる。これは結果的に、製造プロセスの周期的な洗浄用休止及び中断を招く。従って、該ポリアミドの加工は、今日まで、押出によってではなく射出成形によってのみ可能であるものと見なされている。それによって、フィルムを製造することは全く不可能であり、シートの製造が限定的に可能であるに過ぎない。
【0005】
ポリアミド PACM12は、ジアミノジシクロヘキシルメタンとドデカン二酸とから製造される。ポリアミド MACM12は、3,3−ジメチル−p−ジアミノシクロヘキシルメタンとドデカン二酸とから製造される。
【0006】
課題
従来技術に鑑み、本発明の課題は、耐化学薬品性を有する透明なプラスチック表面の製造法を提供することであった。
【0007】
さらに、特に縞状物、条痕、ゲル状物及び他の汚染物に関して高い光学的品質を有するプラスチックフィルムないしプラスチック成形体を製造できる方法を提供することが課題であった。
【0008】
特に、化学薬品、及び特に油中水型もしくは水中油型エマルション、例えば化粧品、例えばサンクリームに対して特に高い安定性を有する、透明なプラスチックフィルムないしプラスチック成形体の製造法を提供することが課題であった。
【0009】
明示されていないその他の課題は、以下の記載、特許請求の範囲及び実施例の全文脈から明らかである。
【0010】
解決法
以下で、括弧内の数字は
図1及び
図2に関連するものである。
【0011】
前記課題は、ポリアミド成形材料からのポリアミド成形体又はポリアミドフィルムの新規の製造法の創作により解決された。該方法は、実質的に芳香族、脂肪族又は脂環式ジカルボン酸と脂環式ジアミンとから製造されたポリアミドの半製品を、フィルム押出ないし押出(以下で、簡略的にフィルム押出と称する)するための方法である。また、該ポリアミドは、アミノカルボン酸から製造可能なAB型のポリアミドであってもよい。しかしながら、ジカルボン酸とジアミンとから製造可能なAA/BB型のポリアミドが有利である。特に、ポリアミドはPA PACM12又はPA MACM12であってよい。すでに記載した通り、従来技術によれば、この種のポリアミドに関して、高いフィルム品質を維持しながら比較的長時間にわたって実施可能なフィルム押出法は存在していない。
【0012】
該課題は、本発明による方法において、特に170mmol/kg未満、有利には100mmol/kg未満の末端基割合を有するポリアミドを使用することにより解決された。
【0013】
特に、該課題は、以下の特徴を有するフィルム押出法により解決された:
1.)ポリアミドのカルボキシル末端基割合及び/又はアミノ末端基割合、有利にはアミノ末端基割合が、35mmol/kg未満である。
【0014】
2.)ダイボディ(1)とダイリップ(2)とからなるフィルムダイの一範囲、有利にはフィルムダイのダイリップ(2)が、押出工具の出口範囲で、該ダイボディ(1)よりも10℃〜100℃高い温度を有している。
【0015】
該方法を用いることにより、特に縞状物、条痕、ゲル状物又は他の汚染物に関して高い光学的品質を示すポリアミド成形体ないしポリアミドフィルムを、連続的に、長期間にわたって製造することが可能となる。本発明により使用されるポリアミドの選択によって、該フィルムは、特に良好な耐候性、及び、特にサンクリームに対する耐化学薬品性を有する。
【0016】
本発明の重要な観点は、フィルムダイを含むダイ出口である(
図1及び2)。該フィルムダイは、ダイボディ(1)とダイリップ(2)とから構成されている。フィルムダイという概念は、本願に関して、生成物の厚さとは無関係に、全ての幅広スロット工具(ポリマーシートの製造のためのものも含む)と同義に用いられる。
【0017】
従来技術により製造されたポリアミド成形体ないしポリアミドフィルムの品質は、比較的短い製造期間で低下してしまう。それというのも、ダイ出口、より厳密にはダイリップ(2)に固形物が堆積し、これがフィルムに縞状物又は条痕を残すためである。意想外にも、フィルムダイ、特にダイリップ(2)を変更することによって、この固形物の堆積、ひいては縞状物及び条痕の形成を阻止できることが見出された。
【0018】
本発明によれば、フィルムダイの少なくとも1の範囲、有利にはダイリップ(2)が、ダイボディ(1)よりも10℃〜100℃、有利には20℃〜80℃、特に有利には30℃〜70℃高い温度を有していることが重要である。特に有利には、ダイリップ(2)の温度は、ダイボディ(1)の温度よりも10℃〜100℃、有利には20℃〜80℃、特に有利には30℃〜70℃高く、かつ、ダイボディ(1)は、押出機よりも最大で5℃高い温度、有利には同じ温度を有している。
【0019】
より厳密には、ダイボディ(1)は通常は250℃〜330℃の温度を有している。同時に、ダイリップ(2)は290℃〜370℃の温度を有している。そのために、ダイリップ(2)は付加的な調温部(4)を有している。調温は、例えば挿入された加熱カートリッジ又は平面放熱器により実現可能である。これらは、とりわけ電気的に、又は調温媒体、例えば油により加熱可能である。温度は、例えば熱電対、抵抗温度計又は非接触型温度測定法、例えばIR温度計により測定することができる。
【0020】
表示される温度は、押出機シリンダーの内壁、又は押出機シリンダーの内壁の可能な限り近傍、ダイボディの内壁、又はダイボディの内壁の可能な限り近傍で、及び、ダイリップの内壁、又は、ダイリップの内壁の可能な限り近傍で測定されたものである。
【0021】
押出工具の内部範囲、ないし、ダイ出口の手前のフィルムダイの内部範囲において、溶融物圧力は、なおもポリマー中に溶解されている揮発性成分、例えば水又は場合によりモノマーを完全に溶解状態に保ち、それによって気泡の発生を防ぐのに十分な高さでなければならない。これは、例えば押出工具の形状、使用する成形材料中の残留湿分、溶融物の体積流量及び加工温度により保障することができる。
【0022】
特に、本発明による方法は以下のプロセス工程で実施される:
・成形材料を、250℃〜330℃の温度で押出機中で溶融させる工程、
・該成形材料を、290℃〜370℃の温度を有するダイリップ(2)を通じて押出機から排出する工程、
・該成形材料を、10μm〜10mmの厚さで、少なくとも1のロール又は少なくとも1のベルトにより引き取る工程、
・該成形材料をさらに送り、その際に冷却する工程。
【0023】
押出機として、ポリアミドの加工に好適な全ての一軸−、二軸−又は多軸スクリュー押出機を使用することができる。押出機には、脱気箇所が設けられていても設けられていなくてもよいが、設けられていないのが有利である。押出機は、押出機シリンダーの範囲内に、複数の温度帯域を有していてもよいし、単一の温度を有していてもよい。
【0024】
付加的に有利には、ポリアミド成形材料は、0.1質量%、有利には0.02質量%の最大含水率を有している。含水率がわずかであることによって、光学的品質が、特に防止すべき気泡形成及び/又は混濁に関して改善される。
【0025】
本発明によるポリアミド、ひいては製造されたポリアミド成形体ないしポリアミドフィルムは、有利には、実質的に芳香族、脂環式又は脂肪族ジカルボン酸、有利には芳香族又は脂肪族ジカルボン酸と、脂環式ジアミンとの重縮合によって製造される。実質的に、とは、他の成分、例えばアミノウンデカン酸、単官能性構成単位又は他のジカルボン酸及び/又はジアミンが、40質量%まで、有利には最大で10質量%組み込まれていてよく、特に有利にはこれらの他の成分が組み込まれていないことを意味する。また、該ポリアミドは、アミノカルボン酸から製造可能であるAB型のポリアミドであってもよい。しかしながら、ジカルボン酸とジアミンとから製造可能であるAA/BB型のポリアミドが有利である。
【0026】
使用される脂環式又は脂肪族ジカルボン酸は、4〜20個、有利には8〜16個の炭素原子を有する、脂環式、部分脂環式の直鎖又は分枝鎖ジカルボン酸である。特に有利には、これは12個の炭素原子を有するジカルボン酸であり、極めて特に有利にはドデカン二酸(式1)である:
【化1】
【0027】
使用される芳香族ジカルボン酸は、1以上の芳香環を有するジカルボン酸である。例は、フタル酸、イソフタル酸又はテレフタル酸である。
【0028】
脂環式ジアミンは、5〜8個、有利には6個の炭素原子からの脂肪族環を1〜3個有する脂肪族ジアミンである。有利には、これはジアミノジシクロヘキシルメタン(式2)又は3,3−ジメチル−p−ジアミノシクロヘキシルメタン(式3)である:
【化2】
【0029】
特別な一実施態様において、有利には、ポリアミド成形体又はポリアミドフィルムを本発明により製造するためのポリアミドは、PA PACM12又はPA MACM12である。
【0030】
もう1つの有利な実施態様において、該ポリアミドは芳香族ジカルボン酸をベースとするポリアミドである。
【0031】
本発明により製造された押出物、例えばフィルムは、一般に10μm〜10mmの厚さを有することができる。生成物の有利な厚さは、その都度適用に依存する。フィルムを適用するためには、20μm〜750μmの厚さが有利である。フィルムが特に酷使に耐え得ることが望ましい場合には、特に125μm〜750μmの厚さが有利である。例えば積層又は貼合せのために特に高い柔軟性が必要である場合には、20μm〜250μmの厚さを有するフィルムが特に有利である。裏面印刷されたフィルムにおける光学的深さの効果のためには、125〜750μmの厚さが有利である。
【0032】
フィルムという概念、ないし、フィルム押出という方法の名称は、特定の厚さ範囲に関する制限を表すものではなく、また、本発明により製造される生成物を巻き取ることができることを表すものでもない。これらの表現は、生成物が、一般には有利にはほぼ矩形の横断面を伴って製造される押出半製品であってもよいような方法、ないし、該方法からの生成物を表すものである。
【0033】
本発明により製造されたポリアミドフィルム、有利には柔軟なポリアミドフィルムは、とりわけ、成形材料、木材、ガラス又は金属、有利には成形材料への積層に用いることができる。
【0034】
そのために、該フィルムを積層前に1以上の以下の加工工程下におくことができる:有利には、スクリーン印刷、グラビア印刷、パッド印刷、デジタル印刷による裏面印刷;表面印刷;付着促進層を伴う被覆、その際、該被覆を印刷により行うこともでき、かつ、該被覆を予め印刷された層上に施与することもできる;フィルム加熱後の変形;適切にカット。フィルムの加工は上記方法に制限されるものではない。該加工法を上記とは別の順序で用いることもできる。同様に、加工工程を一度又は複数回繰り返すこともできる。
【0035】
積層を、成形体の表面への接着により行うことができる。ポリマー材料、例えば成形材料の場合には、ポリアミドフィルムを該成形材料と共に背面射出成形することもできる。また当然のことながら、成形材料とポリアミドフィルムとを互いに接着させることもできる。さらに、フィルムをもう1つの他のフィルムか又はシート上に高温積層することも可能である。本発明によるフィルムを、1以上のキャリアフィルムを用いて積層することもできる。その後、該ラミネートフィルムを、上でフィルムについて記載した通りにさらに加工する。有利には、積層前のフィルムに、特に有利にはグラビア印刷法でキャリアフィルムを印刷する。
【0036】
さらに、該フィルムを、装飾用フィルム、保護用フィルム、包装用フィルムとして、又はラミネートフィルムを製造するために使用することができる。
【0037】
しかしながら、ポリアミドフィルムは必ずしも柔軟なフィルムでなくてもよく、本発明による方法を用いて厚さ0.45mm〜7.0mmのポリアミドフィルムを製造することも可能である。従ってこの材料は、むしろポリアミド成形体、特に透明なポリアミドシートである。
【0038】
そのような厚さを有するポリアミド成形体、厳密にはポリアミドシートを、例えば透明なカバー、外装として、家具において、車両内部空間において、電気通信機器において、又はグレージングとして使用することができる。さらに、身体防護の分野において、例えば発射体、破片からの、又は爆発の際の防護体としての適用が可能である。
【0039】
また、該ポリアミド成形体又はポリアミドフィルムを、押出プロセスの間に、未処理の、透明な、及びクリアなフィルムないし相応する成形体へと変化させることもできる。例えば、該フィルム又は成形体を、着色剤、例えば顔料及び/又は染料の添加により着色することができる。さらに、好適な添加剤の添加により、耐引掻性、IR吸収性ないしUV吸収性又は触質性を改善するか、又はこれらに影響を与えることができる。マイクロ粒子を添加することによって、光散乱を変化させることもできる。耐引掻性、耐汚れ性、防汚性、又は、触質性の変化を、相応する被覆によって生じさせることもできる。さらに、該フィルム又は成形体の裏側又は上方に装飾用フィルムを接着し、それにより光学的効果、例えば木質の外観を生じさせることができる。
【0040】
さらに、ポリアミド成形体という用語は、ポリアミドフィルムと同義でもあり得る。
【0041】
図に関して:以下で、括弧内の数字は
図1及び
図2に関連するものである。
図1に、リップギャップ(3)を有しかつリップ調温部(4)を有しない、従来技術によるフィルムダイを示す。
図2に、ダイリップ(2)の調温部(4)を有する本発明により使用されるフィルムダイを示す。(1)はダイボディである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図2】本発明により使用されるフィルムダイを示す概略図。
【実施例】
【0043】
一般的な実施例
含水率をカールフィッシャー(Karl-Fischer)法により測定した。末端基の測定を滴定により行う。
【0044】
ポリアミドフィルムないしポリアミド成形体の製造
ポリアミドフィルムの製造を、自体公知の方法、例えばフラットフィルム押出、インフレートフィルム押出のような幅広スロットダイによる押出、又は溶液流延により行う。
【0045】
プラスチック成形体を、場合により、後続のプロセス工程において、接着、押出被覆又は積層によって多層に仕上げることもできる。
【0046】
実施例は、市販のCollin社製フラットフィルム装置で製造したものである。その際、ポリアミドを有利には顆粒形でホッパーに施与し(該添加形が本発明の実施可能性に影響を及ぼすことはない)、該ホッパーから押出機へと搬送する。押出機は、一般に金属製のシリンダー(該シリンダーは外側から加熱される)と、押出機スクリュー(該スクリューは押出機内で固有の軸の周りを回転し、それによりポリマーがホッパー開口部の後の取入口範囲から押出機を貫通して搬送される)とからなる。別の実施態様において、二軸−又は多軸スクリュー押出機を使用することもできる。外側から加熱し、かつポリマーを押出機内で剪断することによってポリマーが溶解し、かつ、押出機スクリューの先端の後でフィルムダイ(又は一般には幅広スロット工具)の形の押出工具に達する。ここで、ポリアミド溶融物が平面状の形になり、ダイギャップを経てフィルムダイから平面状で排出される。フィルムダイには複数の押出機から溶融物が供給されてもよく、それにより多層フィルムが生じる。引き続き、プラスチックウェブを少なくとも1のロール上で冷却し、後で巻き取る。
【0047】
試験に使用した、密閉シリンダー、互いに別個に調温可能な2つの押出機帯域を有し、かつ脱気開口部のない押出機は、スクリュー直径が35mmであり、かつL/D比(スクリュー長さ/スクリュー直径)は25である。市販の三帯域スクリューを使用する。試験のために、押出装置に以下の温度設定を行った:
【0048】
【表1】
【0049】
フィルムを試験セットアップにおいて単層でいわゆるチルロール法で製造し、厚さは50μmである。引き続き、該フィルムをその品質に関して目視により評価する。そのために、該フィルムを、市場性のある品質の対照サンプルと光学的等級に関して光学的に対比して比較及び評価する。ここで、光学的品質とは、とりわけ条痕のサイズ、表面等級、ゲル状物の数、汚染物の数及び分解した材料からの粒子の数であると解釈される。その際、市場性があると判断された全てのサンプルは(+)の評価を得た。かろうじて市場性のなかったサンプルは(o)の評価を得、明らかに、ないし極めて明らかに市場性のなかったサンプルは(−)ないし(−−)の評価を得た。
【0050】
チルロール法:溶融物ウェブを冷却ロール上に降ろす。もう一方のフィルム面はこの時点ではロールと接触していない。即ち、対向ロールないし均しニップは存在しない。
【0051】
ポリアミド PA1は、例えば組成物TROGAMID
(R) CX7323をベースとするEvonik Degussa GmbH社のポリアミド PA PACM 12である。ここで、PA1は低粘性のPA PACM 12であり、これは従来技術によれば特に射出成形用途で使用可能である。ポリアミドPA2は中粘性のPA PACM 12である。
【0052】
【表2】
【0053】
「V」のついた例は、本発明によらない比較例である。これらのポリアミドにおいて、2つの末端基はそれぞれポリアミド中に35mmol/kgを上回って含まれている。光学的評価によれば、これらのフィルムは該当量で気泡及び/又は条痕を有する(「−」)。比較例V1が最良の結果を示していた。これは気泡を含まず、かつ条痕がわずかであった。
【0054】
実施例3から、 −とりわけ比較例V3と対比して− 末端基の合計から読み取れる鎖長ではなく、個々の末端基種の割合によってフィルム品質が決まることが判明した。
【0055】
比較例V4では実施例7と同じポリアミドを使用したが、その際、ダイリップの温度を、フィルムダイ全体の温度及び押出機の温度と同一となるように調整した。この実施例において、押出時間が15分経過した後に、ダイリップ上での明らかな堆積物、及び相応してフィルム上での多数の条痕が認められた。
【符号の説明】
【0056】
1 ダイボディ、 2 ダイリップ、 3 リップギャップ、 4 ダイリップの調温部