(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5762456
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】広告提供装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/02 20120101AFI20150723BHJP
【FI】
G06Q30/02 150
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-48821(P2013-48821)
(22)【出願日】2013年3月12日
(65)【公開番号】特開2014-174871(P2014-174871A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2013年9月5日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500257300
【氏名又は名称】ヤフー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】真田 勉
【審査官】
川▲崎▼ 博章
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−141785(JP,A)
【文献】
Facebook広告プライバシー設定 ”○○さんが「いいね!」と言っています”がでないようにする方法,[online],米国,インターネットアーカイブ,2012年 6月 2日,[検索日2014.8.26]、インターネット,URL,https://web.archive.org/web/20120602142623/http://facebook.boo.jp/facebook-ad-privacy
【文献】
平野 未来、堀田 創、加藤 秀行、大久保 淳,ソーシャルネットワークマーケティングエンジンの開発,日本,<URL:http://www.ipa.go.jp/files/000006470.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 − 50/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1もしくは複数のユーザからなるユーザ群に対して広告を提供する第1の広告提供手段と、
前記ユーザ群に含まれるユーザのうち、前記広告をクリックしたユーザの友人リストを取得する友人リスト取得手段と、
前記友人リストに含まれる各ユーザについて当該ユーザのクリック志向の強度値と当該ユーザのソーシャルグラフ上の特性を反映したスコアを算出するスコア算出手段と、
前記スコアが所定の条件を満たすユーザに対して前記広告と同じ広告を提供する第2の広告提供手段と
を備え、
前記友人リスト取得手段は、前記第2の広告提供手段が提供した広告をクリックしたユーザについても友人リストを取得し、当該友人リストに含まれる各ユーザについて前記スコア算出手段および前記第2の広告提供手段は処理を行ない、前記友人リスト取得手段、前記スコア算出手段および前記第2の広告提供手段は繰り返し処理を行う
ことを特徴とする広告提供装置。
【請求項2】
請求項1に記載の広告提供装置において、
前記第1の広告提供手段は、クリック志向の強度値が所定値を超えるユーザを選定して広告を提供する
ことを特徴とする広告提供装置。
【請求項3】
請求項1に記載の広告提供装置において、
前記第1の広告提供手段は、ランダムに選択したユーザに対して広告を提供する
ことを特徴とする広告提供装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の広告提供装置において、
前記スコア算出手段は、前記友人リストに含まれる各ユーザについて、当該ユーザのクリック志向の強度値に、当該ユーザのソーシャルグラフ上の友人数を乗算することでスコアを算出する
ことを特徴とする広告提供装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の広告提供装置において、
前記スコア算出手段は、前記友人リストに含まれる各ユーザについて、当該ユーザのクリック志向の強度値に、当該ユーザのソーシャルグラフ上の全ての友人のクリック志向の強度値を加算することでスコアを算出する
ことを特徴とする広告提供装置。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の広告提供装置において、
前記スコア算出手段は、前記友人リストに含まれる各ユーザについて、当該ユーザのクリック志向の強度値に、当該ユーザのソーシャルグラフ上の友人数を乗算した値と、当該ユーザのクリック志向の強度値に、当該ユーザのソーシャルグラフ上の全ての友人のクリック志向の強度値を加算した値とからスコアを算出する
ことを特徴とする広告提供装置。
【請求項7】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の広告提供装置において、
前記スコア算出手段は、前記友人リストに含まれる各ユーザについて、前記友人リストの取得元のユーザを経由したとした場合のクリック志向の強度値に、前記友人リストに含まれるユーザのソーシャルグラフ上の友人数を乗算することでスコアを算出する
ことを特徴とする広告提供装置。
【請求項8】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の広告提供装置において、
前記スコア算出手段は、前記友人リストに含まれる各ユーザについて、前記友人リストの取得元のユーザを経由したとした場合のクリック志向の強度値に、前記友人リストに含まれるユーザのソーシャルグラフ上の当該ユーザを経由したとした場合のクリック志向の強度値が所定値以上の友人数を乗算することでスコアを算出する
ことを特徴とする広告提供装置。
【請求項9】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の広告提供装置において、
前記スコア算出手段は、前記友人リストに含まれる各ユーザについて、前記友人リストの取得元のユーザを経由したとした場合のクリック志向の強度値に、前記友人リストに含まれるユーザのソーシャルグラフ上の全ての友人のクリック志向の強度値を加算することでスコアを算出する
ことを特徴とする広告提供装置。
【請求項10】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の広告提供装置において、
前記スコア算出手段は、前記友人リストに含まれる各ユーザについて、前記友人リストの取得元のユーザを経由したとした場合のクリック志向の強度値に、前記友人リストに含まれるユーザのソーシャルグラフ上の当該ユーザを経由したとした場合のクリック志向の強度値を、友人の全てについて加算することでスコアを算出する
ことを特徴とする広告提供装置。
【請求項11】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の広告提供装置において、
前記スコア算出手段は、
前記友人リストに含まれる各ユーザについて、前記友人リストの取得元のユーザを経由したとした場合のクリック志向の強度値に、前記友人リストに含まれるユーザのソーシャルグラフ上の友人数を乗算した値、
前記友人リストに含まれる各ユーザについて、前記友人リストの取得元のユーザを経由したとした場合のクリック志向の強度値に、前記友人リストに含まれるユーザのソーシャルグラフ上の当該ユーザを経由したとした場合のクリック志向の強度値が所定値以上の友人数を乗算した値、
前記友人リストに含まれる各ユーザについて、前記友人リストの取得元のユーザを経由したとした場合のクリック志向の強度値に、前記友人リストに含まれるユーザのソーシャルグラフ上の全ての友人のクリック志向の強度値を加算した値、
前記友人リストに含まれる各ユーザについて、前記友人リストの取得元のユーザを経由したとした場合のクリック志向の強度値に、前記友人リストに含まれるユーザのソーシャルグラフ上の当該ユーザを経由したとした場合のクリック志向の強度値を、友人の全てについて加算した値
のうちの複数からスコアを算出する
ことを特徴とする広告提供装置。
【請求項12】
広告提供装置が実行する方法であって、
1もしくは複数のユーザからなるユーザ群に対して広告を提供する第1の広告提供工程と、
前記ユーザ群に含まれるユーザのうち、前記広告をクリックしたユーザの友人リストを取得する友人リスト取得工程と、
前記友人リストに含まれる各ユーザについて当該ユーザのクリック志向の強度値と当該ユーザのソーシャルグラフ上の特性を反映したスコアを算出するスコア算出工程と、
前記スコアが所定の条件を満たすユーザに対して前記広告と同じ広告を提供する第2の広告提供工程と
を備え、
前記友人リスト取得工程は、前記第2の広告提供工程が提供した広告をクリックしたユーザについても友人リストを取得し、当該友人リストに含まれる各ユーザについて前記スコア算出工程および前記第2の広告提供工程は処理を行ない、前記友人リスト取得工程、前記スコア算出工程および前記第2の広告提供工程は繰り返し処理を行う
ことを特徴とする広告提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターネット等のネットワークを介して広告を提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の条件を満たすユーザに対して広告を提供するターゲティング広告が知られている。
【0003】
効率の良いターゲティング広告としては、
・広告の内容がユーザの興味・関心・属性などと合っていること
・広告に反応しやすいユーザに提供すること
の2条件が重要である。
【0004】
前者については、例えば、
例1.自動車に興味あるユーザに自動車の広告を提供
例2.女性ユーザにアクセサリーなどの女性向けの広告を提供
例3.東京に住んでいるユーザに東京のマンションの広告を提供
といったように用いられる。
【0005】
後者については、クリック志向の強いユーザ(=クリッカー)をターゲットとするのが望ましい。これは、
・暇な人はクリックしやすい。
・多忙な人はたとえ興味ある広告を見てもクリックしない。
・広告のクリックが禁止されている職場では効果がない。
といったことに関係している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−141785号公報(特許第5094956号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ユーザの興味・関心・属性に合ったターゲティング広告を提供するためには、あらかじめ広告のカテゴリーを特定し、さらにユーザの行動内容からユーザが興味・関心のあるカテゴリーを特定したり、ユーザの属性情報を取得したりすることが必須である。具体的には、
・広告のカテゴリーの特定 (例)自動車、不動産、旅行・・・
・ユーザが検索したキーワードのカテゴリーの特定
・ユーザが見たページ内容のカテゴリーの特定
・ユーザの性別・年齢などの属性情報の特定
・その他
といった作業が必要になる。
【0008】
ここで、カテゴリーの特定を行うためには、カテゴリーの分類方法や階層構造を予め決めておかなければならない。例えば、
例1.自動車の分類方法→国産車と外国車、大型・中型・小型自動車、高級車と大衆車など
例2.ユーザの属性の分類方法→年齢区分、職業区分など
といった、いろいろな分類方法や階層構造がある。
【0009】
カテゴリーの分類方法や階層構造を決めた後、カテゴライズ作業(広告・キーワード・ページがどのカテゴリーに属するかを決める作業)が必要になるが、人手によるカテゴライズ作業は、高精度ではあるが手間がかかり、大量のカテゴライズには不向きである。
【0010】
また、ソフトウエアによる自動カテゴライズでは、大量のカテゴライズは可能であるが、精度が人手の場合より劣る。
【0011】
一方、本発明者は、ユーザが興味・関心を持っているカテゴリーに関わらず、広告をクリックする可能性が高いユーザに広告を配信する手法(クリッカーターゲティング広告)を提案している(特許文献1)。この手法では、ユーザの興味・関心を具体的に特定する必要がなく、カテゴライズ作業も不要である。
【0012】
しかし、上述した1番目の条件を考慮していないため、広告の内容がユーザの興味・関心や周囲の環境に合わないことがあり、広告主にとって最重要なユーザを逃しやすいという問題があった。
【0013】
本発明は上記の従来の問題点に鑑み提案されたものであり、その目的とするところは、クリッカーターゲティング広告のカテゴライズ作業を不要とする利点を残したまま、ユーザの興味・関心に合ったターゲティング広告を効率よく行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するため、本発明にあっては、1もしくは複数のユーザからなるユーザ群に対して広告を提供する第1の広告提供手段と、前記ユーザ群に含まれるユーザのうち、前記広告をクリックしたユーザの友人リストを取得する友人リスト取得手段と、前記友人リストに含まれる各ユーザについて
当該ユーザのクリック志向の強度値と当該ユーザのソーシャルグラフ上の特性を反映したスコアを算出するスコア算出手段と、前記スコアが所定の条件を満たすユーザに対して前記広告と同じ広告を提供する第2の広告提供手段とを備え、前記友人リスト取得手段は、前記第2の広告提供手段が提供した広告をクリックしたユーザについても友人リストを取得し、当該友人リストに含まれる各ユーザについて前記スコア算出手段および前記第2の広告提供手段は処理を行ない、前記友人リスト取得手段、前記スコア算出手段および前記第2の広告提供手段は繰り返し処理を行うようにしている。
【発明の効果】
【0015】
本発明にあっては、ユーザのクリック志向の強さを予測する手法とソーシャルグラフとを組み合せることにより、クリッカーターゲティング広告のカテゴライズ作業を不要とする利点を残したまま、ユーザの興味・関心に合ったターゲティング広告を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態にかかるシステムの構成例を示す図である。
【
図4】ソーシャルグラフDBのデータ構造例を示す図である。
【
図5】クリック志向強度情報のデータ構造例を示す図である。
【
図6】広告提供対象ユーザ情報のデータ構造例を示す図である。
【
図7】実施形態の処理例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態につき説明する。
【0018】
<構成>
図1は本発明の一実施形態にかかるシステムの構成例を示す図である。
【0019】
図1において、インターネット等のネットワーク1には、ユーザが操作するスマートフォン、携帯電話、PC(Personal Computer)等の端末装置2が複数接続されている。端末装置2は、一般的なブラウザ(Webブラウザ)21を備えている。ブラウザ21は、インターネットの標準プロトコルであるHTTP(Hyper Text Transfer Protocol)等に従い、HTML(Hyper Text Markup Language)等の言語で記述されたページデータの要求・取得・表示およびフォームデータの送信等を行う機能を有している。
【0020】
また、ネットワーク1には、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の提供を行うSNSサイト3と、一般的な情報提供を行うWebサイト4と、広告を提供する広告提供装置5とが接続されている。
【0021】
広告提供装置5は、機能部として、クリック志向強度算出部51と初回広告提供対象ユーザ決定部52と友人リスト取得部53とスコア算出部54と次回以降広告提供対象ユーザ決定部55と広告提供部56とを備えている。
【0022】
これらの機能部は、広告提供装置5を構成するコンピュータのCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のハードウェア資源上で実行されるコンピュータプログラムによって実現されるものである。これらの機能部は、単一のコンピュータ上に配置される必要はなく、分散される形態であってもよい。
【0023】
また、広告提供装置5が利用するデータベース等として、ユーザDB501とログDB502とソーシャルグラフDB503とクリック志向強度情報格納部504と広告提供対象ユーザ情報格納部505とが設けられている。これらのデータベース等は、広告提供装置5を構成するコンピュータ内のHDD(Hard Disk Drive)等の記憶媒体上に所定のデータを体系的に保持するものである。なお、ユーザDB501やログDB502やソーシャルグラフDB503やクリック志向強度情報格納部504や広告提供対象ユーザ情報格納部505は、広告提供装置5内に配置される必要はなく、他の装置上に配置してもよい。
【0024】
図2はユーザDB501のデータ構造例を示す図であり、「ユーザID」「属性」等の項目(フィールド)を含んでいる。「ユーザID」は、ユーザを特定する情報であり、ユーザを詳細に特定できる会員IDのほか、同じブラウザからのアクセスであることを特定できるブラウザクッキー(初回のアクセス時にブラウザのクッキー情報として書き込み、以後のアクセス時に参照)等を含む。「属性」は、当該ユーザの氏名、住所、性別、年齢、嗜好等の種々の情報である。
【0025】
図3はログDB502のデータ構造例を示す図であり、「日時」「ユーザID」「行動内容」等の項目を含んでいる。「日時」は、ログを取得した事象の発生日時の情報である。「ユーザID」は、ユーザを特定する情報である。「行動内容」は、例えば、ユーザが閲覧した広告の広告ID(広告を特定する情報)、経由ユーザID(その広告の提供が、友人であるユーザAの行動により引き起こされた場合、そのユーザAを特定する情報)、クリック有無(その広告に対してユーザがクリックしたか否かを示す情報)等が含まれている。
【0026】
図4はソーシャルグラフDB503のデータ構造例を示す図であり、「ユーザID」「友人ユーザID」等の項目を含んでいる。「ユーザID」は、ユーザを特定する情報である。「友人ユーザID」は、当該ユーザの友人を特定する情報である。友人には、家族、出身校が同じ人、職場が同じ人(会社の同僚、上司、部下)、仕事上の取引関係にある人(セールスマンとクライアント)、同世代の人、趣味仲間、遊び仲間、買物仲間、Eメールを頻繁にやり取りしている人等が含まれる。ソーシャルグラフでは、友人関係にあるユーザがリンクされており、興味・関心・属性が近いユーザが友人になりやすい。
【0027】
図5はクリック志向強度情報格納部504に格納されるクリック志向強度情報のデータ構造例を示す図であり、「ユーザID」「ユーザ単体クリック志向強度」「経由ユーザ毎クリック志向強度」等の項目を含んでいる。「ユーザID」は、ユーザを特定する情報である。「ユーザ単体クリック志向強度」は、当該ユーザの広告に対するクリックのしやすさを示す値である。これは、例えば、当該ユーザの過去の所定期間内のアクセスログから広告提供数に対するクリック数の比であるCTR(Click Through Rate)を算出することで取得することができる。
【0028】
「経由ユーザ毎クリック志向強度」は、他のユーザの友人として広告の提供(広告の伝搬)を受けたとした場合の、他のユーザ(伝搬元のユーザ)毎の、広告の提供を受けたユーザの広告に対するクリックのしやすさを示す値である。これは、SNS上を伝搬させた広告のログデータがある場合、着目するユーザ毎にログデータを集計した上で、伝搬元のユーザ毎に広告提示数に対するクリック数の比であるCTRを算出することで取得することができる。
【0029】
SNS上を伝搬させた広告のログデータがない場合、着目するユーザをA、伝搬元のユーザをXとした場合、
・同じ広告を、ユーザXとユーザAが共にクリックした回数=N1
・同じ広告を、ユーザXはクリックしたがユーザAはクリックしていない回数=N2
として、ユーザXを伝搬元とするユーザAのクリック志向強度は、
N1/(N1+N2)
により算出することで取得することができる。
【0030】
図6は広告提供対象ユーザ情報格納部505に格納される広告提供対象ユーザ情報のデータ構造例を示す図であり、「広告ID」「ユーザID」等の項目を含んでいる。「広告ID」は、広告を特定する情報である。「ユーザID」は、ユーザを特定する情報である。
【0031】
図1に戻り、広告提供装置5のクリック志向強度算出部51は、ログDB502のログデータおよびソーシャルグラフDB503のソーシャルグラフデータに基づいて、ユーザ毎に、「ユーザ単体クリック志向強度」と「経由ユーザ毎クリック志向強度」を算出し、クリック志向強度情報格納部504に格納する機能を有している。
【0032】
初回広告提供対象ユーザ決定部52は、所定の広告について、伝搬の開始位置となるユーザ(ユーザ群)を決定し、広告と対応付けて広告提供対象ユーザ情報格納部505に格納する機能を有している。このユーザ群は、クリック志向強度情報格納部504の「ユーザ単体クリック志向強度」が所定値を超えるユーザ群としてもよいし、ユーザDB501からランダムに選択したユーザ群としてもよい。
【0033】
友人リスト取得部53は、ログDB502のログデータを使って、初回広告提供対象ユーザから、提供された広告をクリックしたユーザを特定し、その各ユーザについて、ソーシャルグラフDB503のソーシャルグラフデータから友人リストを取得する機能を有している。クリックしたユーザを対象とするのは、広告がそのクリックしたユーザの興味・関心・属性とマッチしているはずであり、そのユーザの友人の興味・関心・属性ともマッチしている可能性が高いためである。その結果、友人も広告をクリックする可能性が高く、興味・関心・属性がマッチしたユーザの間に広告が連続的に伝搬していくことが期待される。
【0034】
スコア算出部54は、友人リスト取得部53が取得した友人リストに含まれる各ユーザについて、クリック志向を反映したスコアを算出する機能を有している。スコアの算出手法としては、
a.友人リストに含まれる各ユーザAについて、当該ユーザAのクリック志向の強度値(ユーザ単体クリック志向強度)に、当該ユーザAのソーシャルグラフ上の友人数を乗算することでスコアを算出
b.友人リストに含まれる各ユーザAについて、当該ユーザAのクリック志向の強度値(ユーザ単体クリック志向強度)に、当該ユーザAのソーシャルグラフ上の全ての友人のクリック志向の強度値(ユーザ単体クリック志向強度)を加算することでスコアを算出
c.上記のa、bによりスコアとして求めた値から総合的なスコアを算出
d.友人リストに含まれる各ユーザAについて、友人リストの取得元のユーザXを経由したとした場合のクリック志向の強度値(経由ユーザ毎クリック志向強度)に、友人リストに含まれるユーザAのソーシャルグラフ上の友人数を乗算することでスコアを算出
e.友人リストに含まれる各ユーザAについて、友人リストの取得元のユーザXを経由したとした場合のクリック志向の強度値(経由ユーザ毎クリック志向強度)に、友人リストに含まれるユーザAのソーシャルグラフ上の当該ユーザAを経由したとした場合のクリック志向の強度値(経由ユーザ毎クリック志向強度)が所定値以上の友人数を乗算することでスコアを算出
f.友人リストに含まれる各ユーザAについて、友人リストの取得元のユーザXを経由したとした場合のクリック志向の強度値(経由ユーザ毎クリック志向強度)に、友人リストに含まれるユーザAのソーシャルグラフ上の全ての友人のクリック志向の強度値(ユーザ単体クリック志向強度)を加算することでスコアを算出
g.友人リストに含まれる各ユーザAについて、友人リストの取得元のユーザXを経由したとした場合のクリック志向の強度値(経由ユーザ毎クリック志向強度)に、友人リストに含まれるユーザAのソーシャルグラフ上の当該ユーザAを経由したとした場合のクリック志向の強度値(経由ユーザ毎クリック志向強度)を、友人の全てについて加算することでスコアを算出
h.上記のd〜gによりスコアとして求めた値のうちの複数から総合的なスコアを算出
等がある。
【0035】
上記のa、d、eの手法で「友人数」を乗算しているのは、友人が多いほど広告が遠くのユーザまで伝搬する可能性が高いからである。
【0036】
なお、同じユーザであっても、広告が誰を経由して伝搬してきたかによってクリック志向強度が変化する。例えば、ユーザAは友人Xから伝搬してきた広告はクリックしやすい(クリック志向強度が強い)場合、ユーザAと友人Xは、興味関心が近いといえる。また、ユーザAは友人Yから伝搬してきた広告はクリックしにくい(クリック志向強度が弱い)場合、ユーザAと友人Yは、それほど興味関心が近くないといえる。
【0037】
上記のa〜cの手法では、友人リストに含まれる各ユーザについて、広告が誰を経由して伝搬してきたかを問わないユーザ単体クリック志向強度を用いているため、特定のユーザを経由して伝搬されてきた広告については強いクリック志向を示しても、平均的なクリック志向が弱ければ広告提供対象から漏れる可能性がある。
【0038】
これに対し、上記のd〜hの手法では、経由したユーザ毎に細分化したクリック志向強度である経由ユーザ毎クリック志向強度を用いているため、潜在的なクリック志向の強いユーザを漏らさずに広告提供対象に加えられるという利点がある。
【0039】
次回以降広告提供対象ユーザ決定部55は、スコア算出部54が算出したスコアが所定の条件(スコアの定義に応じて所定値を超えるもしくは所定値を下回る、または所定の範囲内等)を満たすユーザを、初回広告と同じ広告を提供するユーザ(ユーザ群)として決定し、広告と対応付けて広告提供対象ユーザ情報格納部505に格納する機能を有している。既に、同じ広告とユーザとを対応付けたデータが広告提供対象ユーザ情報格納部505に存在する場合には、重ねて追加を行わないようにすることができる。
【0040】
広告提供部56は、Webサイト4からの広告要求(ユーザから要求のあったページに掲載する広告を取得するための要求)や、SNSサイト3への広告記事の投稿や、ユーザへのメール等による広告提供につき、広告提供対象ユーザ情報格納部505の格納データに基づき、そのユーザIDを広告提供対象ユーザとして持つ広告IDを取得して提供する機能を有している。広告を提供した場合、広告提供対象ユーザ情報格納部505の広告とユーザとを対応付けたデータは削除してもよいし、無効フラグを付して再度使用しないようにしてもよい。また、同じ広告を同じユーザに繰り返して提供する場合には、広告とユーザとを対応付けたデータの削除・無効化は行わなくてもよいし、回数を管理して所定の回数に達した場合に削除・無効化を行ってもよい。
【0041】
また、友人リスト取得部53は、次回以降広告提供対象ユーザ決定部55により決定されたユーザのうち、提供された広告をクリックしたユーザについても同様の処理を行ない、それに基づいてスコア算出部54と次回以降広告提供対象ユーザ決定部55は同様の処理を行ない、広告をクリックするユーザがいなくなるまでこれらの処理を繰り返す。
【0042】
なお、ユーザDB501、ログDB502およびソーシャルグラフDB503を管理する機能部は図示を省略してあるが、各データベースで管理するデータに変更があった場合には、所定のタイミングで更新が行われる。
【0043】
<動作>
図7は上記の実施形態の処理例を示すシーケンス図である。
【0044】
図7において、広告提供装置5のクリック志向強度算出部51は、所定のタイミングでログDB502のログデータおよびソーシャルグラフDB503のソーシャルグラフデータに基づいて、ユーザ毎にユーザ単体クリック志向強度と経由ユーザ毎クリック志向強度を算出し、クリック志向強度情報格納部504に格納する(ステップS101)。
【0045】
その後、広告提供装置5の初回広告提供対象ユーザ決定部52は、所定の広告について、伝搬の開始位置となるユーザ(ユーザ群)を決定し、広告と対応付けて広告提供対象ユーザ情報格納部505に格納する(ステップS102)。
【0046】
その後、端末装置2からWebサイト4にページ要求を行ない(ステップS103)、Webサイト4が広告提供装置5にユーザIDを伴って広告要求を行うと(ステップS104)、広告提供装置5の広告提供部56は、広告提供対象ユーザ情報格納部505の格納データに基づき、そのユーザIDを広告提供対象ユーザとして持つ広告IDを取得し(ステップS105)、Webサイト4に広告情報(広告コンテンツへのリンク情報もしくはコンテンツデータ本体)を返送する(ステップS106)。Webサイト4は、取得した広告情報を含むページ情報を端末装置2に返送する(ステップS107)。端末装置2ではページ情報の表示により広告が表示される。
【0047】
また、広告提供装置5の広告提供部56は、所定のタイミング(自発的な場合とSNSサイト3から要求があった場合とを含む)で、広告提供対象ユーザ情報格納部505の格納データに基づき、そのユーザIDを広告提供対象ユーザとして持つ広告IDを取得し(ステップS108)、SNSサイト3に対して広告記事の投稿要求を行う(ステップS109)。端末装置2からSNSサイト3にアクセスした場合、自分に関連するものとして広告記事が表示される。また、広告提供部56は、ユーザへのメールに対応する広告を含めて送信するようにしてもよい。
【0048】
その後、広告提供装置5の友人リスト取得部53は、ログDB502のログデータを使って、初回広告提供対象ユーザからクリックしたユーザを特定し、その各ユーザについてソーシャルグラフDB503のソーシャルグラフデータから友人リストを取得する(ステップS110)。
【0049】
次いで、広告提供装置5のスコア算出部54は、友人リスト取得部53が取得した友人リストに含まれる各ユーザについて、クリック志向を反映したスコアを算出する(ステップS111)。
【0050】
次いで、広告提供装置5の次回以降広告提供対象ユーザ決定部55は、スコア算出部54が算出したスコアが所定値を超えるユーザを、初回広告と同じ広告を提供するユーザ(ユーザ群)として決定し、広告と対応付けて広告提供対象ユーザ情報格納部505に格納する(ステップS112)。
【0051】
その後、広告提供装置5の広告提供部56は、上述した処理(ステップS103〜S109)と同様に端末装置2のユーザに広告を提供する。
【0052】
そして、広告提供装置5の友人リスト取得部53、スコア算出部54、次回以降広告提供対象ユーザ決定部55は、広告をクリックするユーザがいなくなるまでこれらの処理を繰り返す。
【0053】
<総括>
以上説明したように、本実施形態によれば、ユーザのクリック志向の強さを予測する手法とソーシャルグラフとを組み合せることにより、クリッカーターゲティング広告のカテゴライズ作業を不要とする利点を残したまま、ユーザの興味・関心に合ったターゲティング広告を効率よく行うことができる。すなわち、ソーシャルグラフ上の広告の伝搬状況から、ユーザの興味・関心内容を暗に取り込んで、クリッカーターゲティング広告の特徴を保持したまま、さらに効率良く広告を提供することができる。
【0054】
より詳しくは、初回の広告を提供したユーザの中で広告をクリックしたユーザの友人のうち、クリック志向を反映したスコアが高いユーザに同じ広告を提供し、そのユーザについても同様の処理を繰り返す。ソーシャルグラフ上の友人は興味・関心・属性が近いことが担保されるため、広告の伝搬は長い期間にわたって継続され、広告の内容がユーザの興味・関心や周囲の環境に合わないという状況を大幅に減らすことができる。
【0055】
また、広告の伝搬がすぐに終了した場合、初回の広告提供ユーザの選択が不適切であったか、または広告自体がユーザ一般に受け入れられないことが早期に明確になり、初回ユーザを選択し直したり、広告を差し替える等の措置に繋げることができる。
【0056】
以上、本発明の好適な実施の形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に定義された本発明の広範な趣旨および範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正および変更を加えることができることは明らかである。すなわち、具体例の詳細および添付の図面により本発明が限定されるものと解釈してはならない。
【符号の説明】
【0057】
1 ネットワーク
2 端末装置
21 ブラウザ
3 SNSサイト
4 Webサイト
5 広告提供装置
51 クリック志向強度算出部
52 初回広告提供対象ユーザ決定部
53 友人リスト取得部
54 スコア算出部
55 次回以降広告提供対象ユーザ決定部
56 広告提供部
501 ユーザDB
502 ログDB
503 ソーシャルグラフDB
504 クリック志向強度情報格納部
505 広告提供対象ユーザ情報格納部