特許第5762493号(P5762493)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5762493エリア別パラメータ制御方式ハイブリッドチラーを用いた循環液温度調節方法
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  • 特許5762493-エリア別パラメータ制御方式ハイブリッドチラーを用いた循環液温度調節方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5762493
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】エリア別パラメータ制御方式ハイブリッドチラーを用いた循環液温度調節方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20150723BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALN20150723BHJP
【FI】
   F25B1/00 399Y
   F25B1/00 304F
   F25B1/00 361D
   !H01L21/302 101G
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-194878(P2013-194878)
(22)【出願日】2013年9月20日
(65)【公開番号】特開2015-59726(P2015-59726A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2014年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】509329682
【氏名又は名称】株式会社ナカヤ
(74)【代理人】
【識別番号】100104488
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 良夫
(72)【発明者】
【氏名】酒井 豊
(72)【発明者】
【氏名】谷口 啓旨
【審査官】 ▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−205876(JP,A)
【文献】 特開2011−141072(JP,A)
【文献】 特開2002−277138(JP,A)
【文献】 特開2011−179757(JP,A)
【文献】 特開2006−046883(JP,A)
【文献】 特開2004−132651(JP,A)
【文献】 特開2005−055011(JP,A)
【文献】 特開2007−106045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F24F 5/00
F25D 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各種の装置、プロセス等の温度制御を必要とする制御対象に循環液を循環させることで前記制御対象を予め設定した設定温度に維持する循環液温度調節方法であって、
冷媒を循環させる循環回路(3)の途上に、気化した気体状の冷媒を圧縮して高圧にするためのインバータ制御可能なコンプレッサー(4)と、該コンプレッサー(4)により高圧にされた冷媒を熱交換により凝縮するための凝縮器(5)と、該凝縮器(5)で液化された冷媒を低圧にするための電子膨張弁(6)と、該電子膨張弁(6)で低圧にされた冷媒を熱交換により気体にする熱交換器(7)と、を具備した冷凍サイクル(2)と、
前記凝縮器(5)に冷却水を供給するための冷却水循環回路(8)と、
前記熱交換器(7)と前記制御対象間で循環液を循環させながら、予め設定された液温に制御された循環液を前記制御対象に供給する循環液循環回路(9)と、
前記制御対象に供給する循環液を予め設定した温度に制御するための第2の熱交換器(15)と、
該第2の熱交換器(15)と前記制御対象との間で循環液を循環させながら、予め設定された液温に制御された循環液を前記制御対象に供給する第2の循環液循環回路(17)と、
前記第2の熱交換器(15)に冷却水を供給する第2の冷却水循環回路(16)と、
該第2の冷却水循環回路(16)の途上に配置した電磁弁(18b)と、を具備したエリア別パラメータ制御方式ハイブリッドチラーを用いて、
予め、設定される可能性のある循環液の設定温度を複数のエリアに分割しておくとともに、それぞれのエリアに応じて、コンプレッサー(4)の運転周波数、電子膨張弁(6、12、14)の開度、電磁弁(18b)のオンタイムをパラメータ化して設定しておき、
前記制御対象に供給する循環液温度が予め設定した温度よりも低い場合には、前記冷凍サイクル(2)を作動させるとともに、前記冷却水循環回路(8)を介して前記凝縮器(5)に冷却水を供給し、熱交換器(7)において循環液を所定の温度に調整し、前記循環液循環回路(9)を用いて制御対象に循環液を循環させ、前記予め設定したパラメータに従って、コンプレッサー(4)の運転周波数と電子膨張弁(6)の開度を調節し、
前記制御対象に供給する循環液温度が予め設定した温度よりも高い場合には、前記冷凍サイクル(2)を停止するとともに、凝縮器(5)への冷却水の供給を停止し、更に、前記第2の冷却水循環回路(16)を介して第2の熱交換器(15)に冷却水を供給し、前記第2の熱交換器(15)において循環液を所定の温度に調整しながら、前記第2の循環液循環回路(17)を用いて制御対象に循環液を循環させ、前記予め設定したパラメータに従って、前記第2の熱交換器(15)に冷却水を供給する時間を調節することとした、ことを特徴とするエリア別パラメータ制御方式ハイブリッドチラーを用いた循環液温度調節方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体製造装置等の各種装置やプロセス等の温度を制御するために用いられるチラーを用いた循環液温度調節方法に係り、より詳しくは、設定温度に応じて、コンプレッサーを用いて循環液を冷却する方法と冷却水を用いて循環液を冷却する方法を使い分けることを特徴としたエリア別パラメータ制御方式ハイブリッドチラーを用いた循環液温度調節方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の通り、半導体製造に際しては、各工程内において、温度を一定に制御する必要があり、そのために、液温を管理した循環液を循環させることで温度制御を行うチラーが用いられている。
【0003】
そして、従来から半導体業界で用いられているチラーでは、一定速のコンプレッサーを使用しているとともに、このコンプレッサーを最大能力で設定することにより、チラーの冷却能力の設定を行っていた。
【0004】
即ち、チラーでは、温度制御の対象となるプロセス等に供給する循環液の温度を所定温度に調節するための冷凍サイクルを有しており、この冷凍サイクルでは、コンプレッサー、凝縮器、膨張弁、及び蒸発器間で冷媒を循環させながら、この冷媒と、温度調節の対象となるプロセス等から戻ってきた循環液とを熱交換することで、循環液温度を必要温度以下に下げて、その後に、循環液を、ヒーターで加熱することで必要温度にすることとしている。
【0005】
一方、例えば半導体のエッチングのプロセスはポリ、メタル、オキサイドの3種類で代表されるが、各プロセスで必要とされる循環液の温度は異なっているために、従来は、チラーの設定に際しては、すべてのプロセスに対応できるように、コンプレッサーを最大能力で設定することで、チラーの冷却能力が最大になるようにしていた。即ち、従来の使用に際しては、循環液の設定温度にかかわらず、コンプレッサーを最大能力で運転することでチラーの冷却能力を最大にして循環液の冷却を行い、その後に、ヒーターによって循環液の温度を上昇させることで、循環液の温度を所定の温度にしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−20509号公報
【特許文献2】特開2011−114279号公報
【特許文献3】特開2003−148852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、半導体製造における多数のプロセスの中には、チラーの冷却能力が必要冷却能力を大幅に上回る場合も出てきており、即ち、循環液を、必要冷却温度を大幅に下回る温度に冷却してしまい、その結果、必要以上の冷却を行うことになり、それに伴い必要以上の加熱が必要になってしまい、エネルギーを無駄にしてしまう事態が発生していた。そのために、特に昨今は、省エネルギーを求められることが多くなっているために、従来の、いわゆる力任せの制御は敬遠されている。
【0008】
そこで、本発明は、コンプレッサーの能力を可変することで、省エネルギー化を達成可能な循環液温度調節方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
また、本発明のエリア別パラメータ制御方式ハイブリッドチラーを用いた循環液温度調節方法は、
各種の装置、プロセス等の温度制御を必要とする制御対象に循環液を循環させることで前記制御対象を予め設定した設定温度に維持する循環液温度調節方法であって、
冷媒を循環させる循環回路の途上に、気化した冷媒を圧縮して高圧にするためのインバータ制御可能なコンプレッサーと、該コンプレッサーにより高圧にされた冷媒を熱交換により凝縮するための凝縮器と、該凝縮器で液化にされた冷媒を低圧にするための電子膨張弁と、該膨張弁で低圧にされた冷媒を熱交換により気体にする熱交換器と、を具備した冷凍サイクルと、
前記凝縮器に冷却水を供給するための冷却水循環回路と、
前記熱交換器と前記制御対象間で循環液を循環させながら、予め設定された液温に制御された循環液を前記制御対象に供給する循環液循環回路と、を具備するとともに、
前記制御対象に供給する循環液を予め設定した温度に制御するための第2の熱交換器と、
該第2の熱交換器と前記制御対象との間で循環液を循環させながら、予め設定された液温に制御された循環液を前記制御対象に供給する第2の循環液循環回路と、
前記第2の熱交換器に冷却水を供給する第2の冷却水循環回路と、
該第2の冷却水循環回路の途上に配置した電磁弁と、を具備したエリア別パラメータ制御方式ハイブリッドチラーを用いて、
予め、設定される可能性のある循環液の設定温度を複数のエリアに分割しておくとともに、それぞれのエリアに応じて、コンプレッサー(4)の運転周波数、電子膨張弁(6、12、14)の開度、電磁弁(18b)のオンタイムをパラメータ化して設定しておき、
前記制御対象に供給する循環液温度が予め設定した温度よりも低い場合には、前記冷凍サイクル(2)を作動させるとともに、前記冷却水循環回路(8)を介して前記凝縮器(5)に冷却水を供給し、熱交換器(7)において循環液を所定の温度に調整し、前記循環液循環回路(9)を用いて制御対象に循環液を循環させ、前記予め設定したパラメータに従って、コンプレッサー(4)の運転周波数と電子膨張弁(6)の開度を調節し、
前記制御対象に供給する循環液温度が予め設定した温度よりも高い場合には、前記冷凍サイクル(2)を停止するとともに、凝縮器(5)への冷却水の供給を停止し、更に、前記第2の冷却水循環回路(16)を介して第2の熱交換器(15)に冷却水を供給し、前記第2の熱交換器(15)において循環液を所定の温度に調整しながら、前記第2の循環液循環回路(17)を用いて制御対象に循環液を循環させ、前記予め設定したパラメータに従って、前記第2の熱交換器(15)に冷却水を供給する時間を調節することとした、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明のエリア別パラメータ制御方式ハイブリッドチラーを用いた循環液温度調節方法では、冷凍サイクルによって所定温度まで下げた循環液を制御対象に供給する循環液循環回路と、冷却水によって所定温度まで下げた循環液を制御対象に供給する第2の循環液循環回路を有しており、制御対象に供給する循環液の設定温度が、コンプレッサーの運転を必要とする低温域の場合には、冷凍サイクルを作動させて所定温度まで下げた循環液を制御対象に供給し、一方、制御対象に供給する循環液の設定温度が冷却水で冷却可能な高温域の場合には、冷凍サイクルを使用せずに、冷却水によって所定温度まで下げた循環液を制御対象に供給することとしている。
【0012】
従って、循環液の設定温度にかかわらず、即ち、チラーの冷却能力が必要冷却能力を大幅に上回る場合であっても、冷凍サイクルを最大能力で運転することでチラーの冷却能力を最大にして循環液の冷却を行い、それにより、循環液を必要冷却温度を大幅に下回る温度に冷却するとともに、それに伴い必要以上の加熱を行っていた従来のチラーと異なり、制御対象に供給する循環液の設定温度が冷却水で冷却可能な高温域の場合には、冷凍サイクルの稼働が不要であるとともにヒーターの負担も少なくて済むために、省エネルギーを達成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のエリア別パラメータ制御方式ハイブリッドチラー用いた循環液温度調節方法の実施例に用いるエリア別パラメータ制御方式ハイブリッドチラーの構成を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に用いるエリア別パラメータ制御方式ハイブリッドチラーでは、一般的なチラーと同様にコンプレッサーを有しており、このコンプレッサーも、一般的なチラーと同様に、気化した冷媒を高圧に圧縮するためのコンプレッサーと、このコンプレッサーにより高圧にされた冷媒を熱交換により凝縮するための凝縮器と、この凝縮器で液体にされた冷媒を低圧にするための膨張弁と、膨張弁で低圧にされた冷媒を熱交換により気体にする熱交換器を具しており、コンプレッサーはインバータ制御可能とし、更に、膨張弁は電子膨張弁を用いている。
【0015】
また、本発明に用いるエリア別パラメータ制御方式ハイブリッドチラーでは、前記凝縮器に冷却水を供給するための冷却水循環回路を有しており、この冷却水循環回路は、例えばクーリングタワーと凝縮器間を循環して、凝縮器に冷却水を供給している。
【0016】
更に、本発明に用いるエリア別パラメータ制御方式ハイブリッドチラーでは循環液循環回路を具備しており、この循環液循環回路は、熱交換器と制御対象間で循環液を循環させながら、熱交換器とヒーターによって予め設定された温度に制御された循環液を制御対象に供給するために用いられる。
【0017】
そして、本発明に用いるエリア別パラメータ制御方式ハイブリッドチラーでは、第2の熱交換器、第2の循環液循環回路、及び第2の冷却水循環回路を有しており、この第2の熱交換器、第2の循環液循環回路、第2の冷却水循環回路によって、冷凍サイクルを使用することなく、循環液を所定温度に制御することを可能にしている。
【0018】
そして、本発明に用いるエリア別パラメータ制御方式ハイブリッドチラーでは、第2の熱交換器を有しており、この第2の熱交換器には、例えばクーリングタワー等から供給される冷却水を供給する第2の冷却水循環回路が構成されており、第2の熱交換器と制御対象との間で循環液を循環させるための第2の循環液循環回路が連結されており、第2の冷却水循環回路の途上には電磁弁が配置されている。そして、循環液は、第2の熱交換器内において冷却水との熱交換によって液温が下げられ、その後、ヒーターによって設定温度に調整された後に制御対象に供給される。
【0019】
そして、このように構成されるエリア別パラメータ制御方式ハイブリッドチラーによって循環液の温度制御を行う場合には、制御対象に供給する循環液温度が予め設定した温度よりも低い場合には、冷凍サイクルを作動させるとともに、冷却水循環回路を介して凝縮器に冷却水を供給し、熱交換器において循環液を所定の温度に調整しながら、循環液循環回路を用いて制御対象に循環液を循環させる。
【0020】
一方、制御対象に供給する循環液温度が予め設定した温度よりも高い場合には、冷凍サイクルを停止するとともに、凝縮器への冷却水の供給を停止し、更に、第2の冷却水循環回路を介して第2の熱交換器に冷却水を供給する。そして、第2の熱交換器において循環液を所定温度に調整しながら、第2の循環液循環回路を用いて制御対象に循環液を循環させる。
【0021】
ここで、循環液循環回路を使用して制御対象に循環液を供給している場合において、制御対象に供給する循環液温度に応じて、予め設定したパラメータに従って、コンプレッサーの周波数と電子膨張弁の開度を調節するとよく、これにより、コンプレッサーを最大能力で運転することを防止でき、また、循環液温度に適した冷媒の蒸発温度を設定する事も出来、省エネルギーと最適な蒸発温度での運転を実現する事が可能となる。
【0022】
また、第2循環液循環回路を使用して制御対象に循環液を供給している場合において、制御対象に供給する循環液温度に応じて、第2の冷却水循環回路の途上に配置した電磁弁の作動を制御し、それにより、予め設定したパラメータに従って、第2の熱交換器に冷却水を供給する時間を調節するとよく、これにより、循環液の液温を必要以上に下げることを回避し、ヒーターの負担を少なくし、それによっても省エネルギーを達成する事が出来る。
【実施例1】
【0023】
本発明のエリア別パラメータ制御方式ハイブリッドチラー(以下単に「チラー」と言う。)を用いた循環液温度調節方法の実施例について、図面を参照して説明すると、図1は、本実施例に用いるチラーの構成を示すブロック図であり、図において1が本実施例に用いるチラーである。
【0024】
また、図において2は冷凍サイクルであり、本実施例において前記チラーに用いられる冷凍サイクル2は一般的に用いられている冷凍サイクルと同様に、冷媒を循環させる循環回路3を有しており、この循環路3の途上には、気化した冷媒を圧縮して高圧にするためのコンプレッサー4と、このコンプレッサー4により高圧にされた冷媒を熱交換により凝縮するための凝縮器5と、この凝縮器5で液化された冷媒を低圧にするための膨張弁6と、膨張弁6で低圧にされた冷媒を熱交換により気化させる蒸発器としての熱交換器7を具備している。そして、本実施例において前記コンプレッサー4はインバータ制御可能なコンプレッサーを用いており、更に、前記膨張弁6は電子膨張弁としている。
【0025】
次に、図において8は冷却水循環回路であり、この冷却水循環回路8は、コンプレッサー4で高圧高温にされた気体状の冷媒を熱交換によって凝縮するために用いられている。
【0026】
即ち、前記冷却水循環回路8は、クーリングタワー等で冷却された冷却水を前記凝縮器5へ供給する冷却水供給路801と、凝縮器5において冷媒との間で熱交換を行い温度が上昇した後の冷却水を再びクーリングタワー等に戻す冷却水戻り路802とを有しており、クーリングタワー等と凝縮器との間を循環する循環路としている。
【0027】
次に、図において9は循環液循環路であり、この循環液循環回路9は、半導体のエッチングプロセス等の、温度制御を行う制御対象と、前記熱交換器7との間で循環液を循環させながら、この循環液を、予め設定された液温に制御して前記制御対象に供給するために用いられている。
【0028】
即ち、この循環液循環回路9は、熱交換器7で温度が下げられた循環液を制御対象に供給するための循環液供給路901と、制御対象に置いて温度が上昇された循環液を熱交換器7に戻すための循環液戻り路902を有しており、循環液供給路901の途上には、熱交換器で温度が下げられた循環液を加熱して設定温度にするためのヒーター903が配置され、循環液戻り路902の途上にはポンプ904が配置されている。
【0029】
なお、図において11は、前記熱交換器7の手前において熱交換器7にホットガスを供給するためのホットガス供給路で、12はホットガスの流量等を調節するための電子膨張弁である。また、図において13は、コンプレッサー4を冷却するためにコンプレッサー4に冷媒を供給するための冷却用冷媒供給路であり、14は、コンプレッサー4に供給する冷却用冷媒の流量等を調節するための電子膨張弁である。
【0030】
また、図において20は循環液タンク、21はフロートスイッチ、18a、18b、18c、18dは電磁弁、更に、24は温度センサー、23、25は圧力センサー、19は制水弁、26はドレイン用バルブである。
【0031】
次に、図において15は、第2の熱交換器である。即ち、本実施例に用いるチラー1では、冷凍サイクル2を用いて循環液の温度を下げる蒸発器としての熱交換器の他に、冷凍サイクルを用いずに冷却水によって循環液の液温を下げるための第2の熱交換器15を有しており、制御対象に供給する循環液の設定温度が、コンプレッサー4の運転を必要とする低温域の場合には、冷凍サイクル2を作動させて循環液の液温を所定温度まで下げ、一方、制御対象に供給する循環液の設定温度が、コンプレッサー4の運転を必要としない高温域の場合には、冷凍サイクル2を使用せずに、冷却水によって循環液の液温を所定温度まで下げることとしている。
【0032】
即ち、前記第2の熱交換器15には、クーリングタワー等で冷却された冷却水を前記第2の熱交換器15へ供給する第2の冷却水循環回路16と、温度制御を行う制御対象と前記第2の熱交換器15との間で循環液を循環させる第2の循環液循環回路16が連結されている。
【0033】
そして、前記第2の冷却水循環回路16は、クーリングタワー等で冷却された冷却水を前記第2の熱交換器15へ供給する第2の冷却水供給路1601と、第2の熱交換器15において、設定温度よりも高温になって制御対象から戻ってきた循環液の間で熱交換を行って温度が上昇した後の冷却水を、再びクーリングタワー等に戻す第2の冷却水戻り路1602とを有しており、クーリングタワー等と第2の熱交換器15との間を循環する循環路としている。
【0034】
また、前記第2の循環液循環回路17は、第2の熱交換器15で温度が下げられた循環液を制御対象に供給するための第2の循環液供給路1701と、制御対象において温度が上昇された循環液を第2の熱交換器15に戻すための第2の循環液戻り路1702を有している。
【0035】
そして、この構成において、制御対象に供給され、制御対象において設定温度よりも高温になって戻ってきた循環液は、第2の熱交換器15において、第2の冷却水供給路1601によって供給されてきた冷却水との間で熱交換が行われて、液温が所定温度まで下げられる。
【0036】
従って、本実施例に用いるチラーでは、制御対象に供給する循環液の設定温度が、コンプレッサー4の運転を必要としない高温域の場合には、第2の熱交換器15において循環液の液温を下げることができるので、これにより、コンプレッサー4の作動を不要として、省エネを達成することが可能である。
【0037】
なお、本実施例に用いるチラーでは、図にも示されているように、冷却水供給路801を分岐させて第2の冷却水供給路1601を構成するとともに、第2の冷却水戻り路1602は前記冷却水戻り路802に合流させ、冷却水供給路801における第2の冷却水供給路1601の分岐箇所よりも凝縮器5側と、第2の第2の冷却水供給路1601の途上に電磁弁18a、18bを配置し、電磁弁18a、18bの切り替えによって冷却水の供給先を凝縮器5と第2の熱交換器15のいずれかに切り替え可能としている。また19は制水弁でコンプレッサー4の圧力に応じて冷却水の流量を調整している。
【0038】
更に、本実施例に用いるチラーおける前記第2の循環液循環回路17では、循環液戻り路902におけるポンプ904よりも熱交換器7側を分岐させて第2の循環液戻り路1702を構成するとともに、第2の循環液供給路1701を前記循環液供給路901におけるヒーター903の手前側に合流させて、循環液戻り路902における第2の循環液戻り路1702の分岐箇所よりも熱交換器側と、第2の循環液戻り路1702の途上に電磁弁18c、18dを配置し、電磁弁18c、18dの切り替えによって循環液の戻り先を熱交換器(蒸発器)7と第2の熱交換器15のいずれかに切り替え可能としている。そのため、本実施例のチラー1では、コンプレッサー4の運転を行っている場合とコンプレッサー4を停止している場合の双方において、ポンプ904とヒーター903を共有可能とし、コスト削減を達成可能としている。
【0039】
但し、必ずしもこのように構成する必要は無く、第2の冷却水循環回路16、第2の循環液循環回路17を冷却水循環回路8、循環液循環回路9とは別に構成しても良い。
【0040】
次に、このように構成されるチラーを用いて、制御対象に供給する循環液の温度を調節する本発明のエリア別パラメータ制御方式ハイブリッドチラーを用いた循環液温度調節方法(以下単に「循環液温度調節方法」という。)の実施例について説明すると、本実施例の循環液温度調節方法では、予め、冷凍サイクル2によって循環液の液温を下げる場合と冷却水によって循環液の液温を下げる場合の境となる循環液の設定温度(基準温度)を設定しておく。即ち、循環液の設定温度が基準温度よりも低い場合には冷凍サイクル2を作動させ、冷凍サイクル2によって循環液の液温を下げ、一方、循環液の設定温度が基準温度よりも高い場合には、冷凍サイクル2は作動させず、冷却水によって循環液の液温を下げることとしている。
【0041】
また、本実施例の循環液温度調節方法では、設定される可能性のある循環液の設定温度を、予め複数のエリアに分割しておくとともに、それぞれのエリアに応じて、コンプレッサー4の運転周波数、電子膨張弁6、12、14の開度、第2の冷却水供給路の途上に配置した電磁弁18bのオンタイム等をパラメータ化して予め設定しておく。
【0042】
そして、制御対象に供給する循環液の設定温度が基準温度よりも低い場合には、前記電磁弁18a、18bを切り替えて冷却水が凝縮器5に循環されるようにするとともに、循環液は熱交換器7と制御対象間を循環するように、電磁弁18cと18dを切り替える。そして、冷凍サイクル2を作動させるとともに、ポンプ904を駆動して熱交換器7と制御対象間で循環液を循環させ、冷却水循環回路8を介して凝縮器5に冷却水を供給し、熱交換器7において、循環液を所定温度迄下げ、更に所定温度まで下げた循環液をヒーター903によって設定温度まで上昇させながら、循環液循環回路9を用いて制御対象に循環液を供給する。
【0043】
また、このとき、本実施例の循環液温度調節方法では、設定された循環液の温度が属するエリアに応じて、コンプレッサー4の運転周波数、電子膨張弁6、12、14の開度等のパラメータを、手動、あるいは自動で設定することとしている。
【0044】
そのために、本実施例の循環液温度調節方法では、循環液の設定温度にかかわらずにコンプレッサー4を最大能力で運転してチラーの冷却能力を最大にしていた従来の方法と異なり、循環液の設定温度に応じてコンプレッサーの運転を制御することができ、省エネルギーを達成することが可能である。なおこのとき、前述したように、本実施例のチラー1では、前記熱交換器7の手前において熱交換器7にホットガスを供給するためのホットガス供給路11と、ホットガスの流量等を調節するための電子膨張弁12を有しているため、コンプレッサー4の運転周波数の調整だけでは希望の冷却能力に冷却能力の調整ができない場合等のときに、電子膨張弁12を用いて熱交換器7に流入するホットガスの流量を制御することで、冷却能力を希望の冷却能力に調整することが可能である。
【0045】
次に、本実施例の循環液温度調節方法では、制御対象に供給する循環液の設定温度が基準温度よりも高い場合には、前記冷凍サイクル2を作動させず、前記電磁弁18a、18bを切り替えて冷却水が第2の熱交換器15に循環されるようにするとともに、電磁弁18c、18dを切り替えて、循環液は第2の熱交換器15と制御対象間を循環するようにする。そして、ポンプ904を駆動して第2の熱交換器15と制御対象間で循環液を循環させ、第2の冷却水循環回路16を介して第2の熱交換器15に冷却水を供給し、第2の熱交換器15において、冷却水との熱交換で循環液を所定温度まで下げ、更に所定温度まで下げた循環液をヒーター903によって設定温度に調整しながら、制御対象に循環液を供給する。
【0046】
また、このとき、本実施例の循環液温度調節方法では、前記予め決めたパラメータに従って、設定された循環液の温度が属するエリアに応じて、オンタイムによる冷却水供給の時間を設定し、それにより、必要以上の循環液の冷却を回避することにより省エネルギーを達成する事が可能である。
【0047】
即ち、循環液の設定温度が高温の場合には、冷却水を継続して第2の熱交換器15に供給して循環液との熱交換を行うと、循環液を必要以上に冷却してしまい、それによりヒーター容量が大きくなってしまうことが考えられる。そこで、本実施例の循環液温度調節方法では、予め循環液の設定温度を複数のエリアに分割するとともにそれぞれのエリアに応じて電磁弁18bのオンタイムによる冷却水供給の時間を決めておき、設定された循環液の温度が属するエリアに応じて、電磁弁18bのオンタイムによる冷却水供給の時間を、自動、あるいは手動で設定することとしている。
【0048】
そのために、本実施例の循環液温度調節方法では、循環液を必要以上に冷却してヒーター容量を大きくしてしまうことを回避でき、それにより、省エネルギーを達成することが可能である。
【0049】
なお、冷却水によって循環液の冷却を行う従来のヒートイクスチェンジャーにおいては、広い温度範囲を制御するために、複数の熱交換器を使って対応していたが、この点、本実施例では、第2の熱交換器に冷却水を供給する時間を時間比例制御するために、熱交換器を複数設置する必要が無くなり、装置をコンパクトにすることが可能である。
【0050】
このように、本実施例の循環液温度調節方法では、冷凍サイクルによって循環液の温度を下げる回路と、冷凍サイクルを使用せずに、冷却水によって循環液の温度を下げる回路の2系統の回路を有しており、制御対象に供給する循環液の設定温度が、予め設定した基準温度よりも低い場合には冷凍サイクルを作動させて循環液の温度を下げ、一方、制御対象に供給する循環液の設定温度が基準温度よりも高い場合には冷凍サイクルを使用せずに冷却水によって循環液の温度を下げることとしているために、無駄なエネルギーの使用を回避することが可能である。
【0051】
またそのとき、本実施例の循環液温度調節方法では、循環液の設定温度を複数のエリアに分割するとともに、それぞれのエリアにおいて、コンプレッサーの運転周波数、電磁膨張弁6、12、14の開度、更に、第2の熱交換器15に冷却水を供給する電磁弁18bのオンタイム等のパラメータを決めておき、設定された循環液の温度が属するエリアに応じて、冷凍サイクルを作動させているときにはコンプレッサー4の周波数と電子膨張弁6、12、14の開度を設定し、冷凍サイクルを作動していないときには第2の熱交換器15に循環液を供給する電磁弁18bのオンタイムを設定することとしているために、循環液を必要以上に冷却してヒーターの出力を大きくすることを回避でき、それにより、省エネルギーを達成することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、各種装置、プロセス等の制御対象の温度を制御するに際して、冷凍サイクルによって循環液の温度を下げる回路と冷凍サイクルを使用せずに冷却水によって循環液の温度を下げる回路の2系統の回路を有したチラーを用いて、循環液の設定温度に応じて2系統の回路を使い分け、且つ循環液の設定温度に応じて設定温度のエリア別にコンプレッサーの運転周波数、電子膨張弁の開度、電磁弁のオンタイムの時間等をパラメータ化して運転する事で省エネルギーを達成可能としているため、所定温度の循環液を制御対象に供給する循環液温度調節方法の全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 チラー
2 冷凍サイクル
3 循環路
4 コンプレッサー
5 凝縮器
6 電子膨張弁
7 熱交換器(蒸発器)
8 冷却水循環回路
801 冷却水供給路
802 冷却水戻り路
9 循環液循環回路
901 循環液供給路
902 循環液戻り路
903 ヒーター
904 ポンプ
11 ホットガス供給路
12 電子膨張弁
13 コンプレッサー冷却用冷媒供給路
14 電子膨張弁
15 第2の熱交換器
16 第2の冷却水循環回路
1601 第2の冷却水供給路
1602 第2の冷却水戻り路
17 第2の循環液循環回路
1701 第2の循環液供給路
1702 第2の循環液戻り路
18a、18b、18c、18d 電磁弁
19 制水弁
20 循環液タンク
21 フロートスイッチ
22 電磁弁
23 圧力センサー
24 温度センサー
25 圧力センサー
26 ドレイン用バルブ
図1