特許第5762534号(P5762534)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5762534二酸化ケイ素粒子及びカチオン化剤を有する分散液の製造法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5762534
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】二酸化ケイ素粒子及びカチオン化剤を有する分散液の製造法
(51)【国際特許分類】
   C09D 17/00 20060101AFI20150723BHJP
   C01B 33/148 20060101ALI20150723BHJP
   B01F 17/18 20060101ALI20150723BHJP
   B01F 17/54 20060101ALI20150723BHJP
   B01F 17/52 20060101ALI20150723BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20150723BHJP
   B41M 5/50 20060101ALI20150723BHJP
   B41M 5/52 20060101ALI20150723BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
   C09D17/00
   C01B33/148
   B01F17/18
   B01F17/54
   B01F17/52
   B41M5/00 B
   C09D201/00
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-519000(P2013-519000)
(86)(22)【出願日】2011年5月23日
(65)【公表番号】特表2013-537568(P2013-537568A)
(43)【公表日】2013年10月3日
(86)【国際出願番号】EP2011058342
(87)【国際公開番号】WO2012004044
(87)【国際公開日】20120112
【審査請求日】2013年11月20日
(31)【優先権主張番号】102010031184.7
(32)【優先日】2010年7月9日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501073862
【氏名又は名称】エボニック デグサ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン シャーフェ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア ホイスヒェン
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ バッツ−ゾーン
(72)【発明者】
【氏名】ブルクハルト シュタントケ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ヴァスマー
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ ラッハ
【審査官】 仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−110770(JP,A)
【文献】 特表2008−521980(JP,A)
【文献】 特開平08−034160(JP,A)
【文献】 特開平11−348416(JP,A)
【文献】 特開2006−321978(JP,A)
【文献】 特開2007−056240(JP,A)
【文献】 特表2013−535431(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 17/00
B01F 17/00−56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化ケイ素粒子及びカチオン化剤を有する分散液の製造法において、
水50〜75質量部、30〜500m2/gのBET表面積を有する二酸化ケイ素粒子25〜50質量部、及び該二酸化ケイ素粒子のBET表面積1平方メートル当たりカチオン化剤100〜300μgを分散させ、ここで、
該カチオン化剤は、少なくとも1種のハロゲンアルキル官能性アルコキシシラン、その加水分解生成物又は縮合生成物及び/又は前述の物質の混合物を、少なくとも1種のアミノアルコール及び規定量の水と反応させ、そして形成された加水分解アルコールを、任意に少なくとも部分的に反応混合物から除去することによって得られ、ここで、
該ハロゲンアルキル官能性アルコキシシランは、一般式I
(R1O)3-x-y(R2xSi[(R3nCH2Hal]1+y(I)を有し、該式中、
1基は、同じであるか若しくは異なっており、かつR1は、水素、線状、分枝状若しくは環状の、炭素原子1〜8個を有するアルキル基、アリール基、アリールアルキル基又はアシル基を表し、
2基は、同じであるか若しくは異なっており、かつR2は、線状、分枝状若しくは環状の、炭素原子1〜8個を有するアルキル基、又はアリール基、アリールアルキル基又はアシル基を表し、
3基は、同じであるか若しくは異なっており、かつR3は、線状、分枝状若しくは環状の、炭素原子1〜18個を有するアルキレン基を表し、
nは、0又は1であり、かつHalは、塩素又は臭素を表し、かつ
x、は0、1又は2であり、yは、0、1又は2であり、かつ(x+y)は、0、1又は2であり、
該アミノアルコールは、一般式II
[HO−(CH2m−]zN(R43-z(II)を有し、該式中、
4基は、同じであるか若しくは異なっており、かつR4基は、炭素原子1〜16個を含む基を表し、mは、1〜16の整数を表し、かつzは、1又は2又は3を表す、
ことを特徴とする、該製造法。
【請求項2】
前記ハロゲンアルキル官能性アルコキシシランがクロロプロピルトリエトキシシランであり、かつ前記アミノアルコールが、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン及びトリエタノールアミンから成る群から選択されていることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
二酸化ケイ素粒子及びカチオン化剤を有する分散液の製造法において、
a)水50〜75質量部、
b)30〜500m2/gのBET表面積を有する二酸化ケイ素粒子25〜50質量部、及び
c)該二酸化ケイ素粒子のBET表面積1平方メートル当たりカチオン化剤100〜300μg
を分散させ、ここで、カチオン化剤は、一般式III
【化1】
[式中、Ru及びRvは、それぞれ互いに無関係に、炭素原子2〜4個を有するアルキル基であり、m=2〜5及びn=2〜5である]の1種以上のアミノアルコール官能性第四級有機ケイ素化合物及び/又はその縮合生成物を包含することを特徴とする、該製造法。
【請求項4】
前記アミノアルコール官能性第四級有機ケイ素化合物が500〜5000の数平均分子量Mnを有することを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
20〜60質量%の前記アミノアルコール官能性第四級有機ケイ素化合物の濃度を有する水溶液を用いることを特徴とする、請求項3又は4記載の方法。
【請求項6】
熱分解により製造された二酸化ケイ素粒子を用いることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記熱分解により製造された二酸化ケイ素粒子が200m2/g以上のBET表面積を有することを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記分散を、1種以上の塩基性作用物質又は酸性作用物質又はそれらの塩の存在下で実施することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記分散を、ローター/ステーターユニットを用いて行うことを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項記載の方法によって得られる分散液。
【請求項11】
動的光散乱によって測定された平均粒径が120〜250nmであることを特徴とする、請求項10記載の分散液。
【請求項12】
250〜350m2/gのBET表面積を有する、熱分解により製造された二酸化ケイ素粒子35〜40質量%を含有し、かつ動的光散乱によって測定された平均粒径が130〜180nmであることを特徴とする、請求項10記載の分散液。
【請求項13】
請求項9から12までのいずれか1項記載の分散液及び少なくとも1種のバインダーを含有する塗工カラー。
【請求項14】
インクを受容するインクジェット媒体をコーティングするための、請求項9から12までのいずれか1項記載の分散液及び請求項13記載の塗工カラーの使用。
【請求項15】
インク受容層を包含する、インクを受容する媒体であって、該インク受容層が請求項13記載の塗工カラー、及び担体を包含する、該媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化ケイ素粒子及びカチオン化剤を有する分散液の製造法、分散液自体並びに該分散液により製造可能な塗工カラー(Streichfarbe)に関する。
【0002】
二酸化ケイ素を含有する水性分散液を、インクジェット分野におけるインク受容層のための塗工カラーを製造するために用いることが公知である。結果生じるインク受容層の品質、殊に耐水性及びインク密度を改善するために、EP−A−1013605、DE−A−10033054又はEP−A−1331254の中では、これらの分散液にカチオン性ポリマーが添加される。結果生じる塗工カラーのより良好な配合性並びに経済的及び自然環境的な理由(乾燥に際しての水分蒸散及びエネルギー消費の低下)のために特に所望されている高充填分散液の場合、しかしながら、公知のカチオン性ポリマーの添加は、粘度の上昇を引き起こし、かつ充填度の高い分散液の加工を不可能にする可能性がある。
【0003】
EP−A−1413451の中では、インクジェット印刷適用のための媒体シートの製造法が開示されており、該方法においては、多孔質の無機マクロ粒子とオルガノシラン試薬が基材上で反応させられる。無機マクロ粒子は、二酸化ケイ素粒子であってよい。オルガノシラン試剤は、構造
【化1】
[ここで、x+y=4、R1及びR2はアミノプロピルであり、かつ相対分子質量は270〜550である]のオリゴマーである。
【0004】
従来技術における進歩にも関わらず、高い固形分で用いられる分散液の加工性及びインクジェット分野における印刷品質の改善は、依然として改善されるべきパラメーターであり続けている。
【0005】
それゆえ、本発明の課題は、従来技術の欠点を有さない分散液を提供することであった。更なる課題は、この分散液から出発する、高い固形分を有する改善された塗工カラーの提供であった。
【0006】
本発明の対象は、
a)水50〜75質量部、
b)30〜500m2/gのBET表面積を有する二酸化ケイ素粒子25〜50質量部及び
c)二酸化ケイ素粒子のBET表面積1平方メートル当たりカチオン化剤100〜300μgを分散させ、ここで、カチオン化剤は、少なくとも1種のハロゲンアルキル官能性アルコキシシラン、その加水分解生成物又は縮合生成物及び/又は前述の物質の混合物を、少なくとも1種のアミノアルコール及び規定量の水と反応させ、そして形成された加水分解アルコールを、任意に少なくとも部分的に反応混合物から除去することによって得られ、ここで、
ハロゲンアルキル官能性アルコキシシランは、一般式I(R1O)3-x-y(R2xSi[(R3nCH2Hal]1+y(I)を有し、式中、
1基は、同じであるか若しくは異なっており、かつR1は、水素、線状、分枝状若しくは環状の、炭素原子1〜8個を有するアルキル基、アリール基、アリールアルキル基又はアシル基を表し、
2基は、同じであるか若しくは異なっており、かつR2は、線状、分枝状若しくは環状の、炭素原子1〜8個を有するアルキル基、又はアリール基、アリールアルキル基又はアシル基を表し、
3基は、同じであるか若しくは異なっており、かつR3は、線状、分枝状若しくは環状の、炭素原子1〜18個を有するアルキレン基を表し、
nは、0又は1であり、かつHalは、塩素又は臭素を表し、かつ
x、は0、1又は2であり、yは、0、1又は2であり、かつ(x+y)は、0、1又は2であり、
アミノアルコールは、一般式II[HO−(CH2m−]zN(R43-z(II)を有し、式中、
4基は、同じであるか若しくは異なっており、かつR4基は、炭素原子1〜16個を含む基を表し、mは、1〜16の整数を表し、かつzは、1又は2又は3を表す、
ことを特徴とする、二酸化ケイ素粒子及びカチオン化剤を有する分散液の製造法である。
【0007】
本発明の更なる説明において、ハロゲンアルキル官能性アルコキシシラン、その加水分解生成物又は縮合生成物及び/又は前述の物質の混合物は成分A、そしてアミノアルコールは成分Bと呼ぶことにする。
【0008】
成分Aと成分Bの反応は、規定量の水の存在下で実施するか、又は成分Aを成分Bと反応させ、引き続き規定量の水の存在下で加水分解し、好ましくは、殊に式Iの成分Aは、R1が、炭素原子1〜4個を有するアルキル、アシルであり、かつR3が、炭素原子1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、有利には炭素原子2個を有する線状アルキレン基であることを示す。
【0009】
有利には使用可能なハロゲンアルキル官能性アルコキシシランは、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリプロポキシシラン、クロロプロピルメチルジメトキシシラン、クロロプロピルメチルジエトキシシラン、クロロプロピルジメチルエトキシシラン、クロロプロピルジメチルメトキシシラン、クロロエチルトリメトキシシラン、クロロエチルトリエトキシシラン、クロロメチルジメトキシシラン、クロロエチルメチルジエトキシシラン、クロロエチルジメチルメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、クロロメチルメチルジメトキシシラン、クロロメチルメチルジエトキシシラン、クロロメチルジメチルメトキシシラン、クロロメチルジメチルエトキシシラン、2−クロロイソプロピルトリス(メトキシエトキシ)シラン、3−クロロプロピルシクロヘキシルジエトキシシラン、3−クロロイソブチルトリメトキシシラン、3−クロロイソブチルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルシクロヘキシルジメトキシシラン、3−ブロモイソプロピルジエチルシクロヘキソキシシラン、3−クロロプロピルシクロペンチルジエンエトキシシラン、3−ブロモイソブチルトリメトキシシラン、3−クロロイソブチルビス(エトキシエトキシ)メチルシラン、4−ブロモ−n−ブチルトリエトキシシラン、4−クロロ−n−ブチルジエトキシシクロペンチルシラン、5−クロロ−n−ペンチルトリ−n−ブトキシシラン、5−ブロモ−n−ペンチルトリエトキシシラン、4−ブロモ−3−メチルブチルジメトキシフェニルシラン、5−ブロモ−n−ペンチルトリ−n−ブトキシシラン、5−クロロ−n−ペンチルトリエトキシシラン、6−クロロ−n−ヘキシルエトキシジメチルシラン、6−ブロモ−n−ヘキシルプロピルジプロポキシシラン、6−クロロ−n−ヘキシルジエトキシエチルシラン、7−クロロ−n−ヘプチルトリエトキシシラン、7−クロロヘプチルジメトキシシクロヘプチルシラン、7−ブロモ−n−ヘプチル−ジエトキシシクロオクチルシラン、8−クロロ−n−オクチルトリエトキシシラン、8−ブロモ−n−オクチルジメチルシクロヘキソキシシラン、3−クロロプロピルジエトキシフェニルシラン、3−クロロプロピルメトキシエトキシベンジルシラン、3−ブロモプロピルジメトキシベンジルシラン及び/若しくはそれらの加水分解生成物及び/若しくは単独縮合生成物及び/若しくは共縮合生成物、又は適切には1,4−クロロフェニルトリメトキシシラン、1,4−クロロベンジルトリエトキシシラン及びクロロメチル−p−メチルフェニルトリメトキシシラン及び/若しくはそれらの加水分解生成物及び/若しくは単独縮合生成物及び/若しくは共縮合生成物である。
【0010】
特に有利には、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、3−クロロプロピルジメチルエトキシシラン又は3−クロロプロピルジメチルメトキシシラン又は前述のアルコキシシランの加水分解生成物若しくは縮合生成物を用いてよい。
【0011】
特に好ましくは、成分A及びBは、成分Aのハロゲンアルキル基及び成分Bの第三級窒素を基準として、2:1〜1:100のモル比、殊に2:1〜1:10のモル比、有利には2:1〜1:5のモル比、特に有利には約1:1〜約1:1.5のモル比で用いられ、その際、場合によっては、まず1:1の比に調整し、続けてさらに、存在する成分Aを基準として、バッチ1回当たり0.2の成分Bを1〜4回のバッチ量で加える。
【0012】
特に好ましいと判明したのは、水を、成分Aの存在するケイ素原子1モル当たり0.5〜500モルの量で用い、有利には加水分解工程の少なくとも1つにおいてシラン上の加水分解可能なアルコキシ基1モル当たり0.5モルの水を用いた方法処理であって、その際、全部で、有利には、用いられる成分Aに関するケイ素原子1モル当たり殊に0.5〜20モルの水、有利には5〜25モルの水が、特に有利には、ケイ素原子1モル当たり10〜25モルが、殊に、ケイ素原子1モル当たり12〜25モルが用いられる。
【0013】
方法処理次第で好ましいと判明したのは、反応を、溶媒、殊にアルコールの存在下で、有利には、アルコキシシランの加水分解に際して発生するアルコールの存在下で、特に有利には、エタノール、メタノール、n−プロパノール又はイソプロパノールの存在下で実施する場合である。その際、添加した溶媒は、適切な仕方で、反応に際して発生した加水分解アルコールを除去する際に系から除去される。反応に際して形成された加水分解アルコールは、ほぼ完全に除去され、好ましくは蒸留によって、殊に反応中にすでに行われる。特に有利な方法処理によれば、例えば、蒸留によって除去された加水分解アルコールと水の量を、共沸混合物の形で水の付加的な添加によって平衡させることができる。
【0014】
揮発性溶媒、例えば添加された溶媒及び/又は反応に際し加水分解によって形成されたアルコール、すなわち、場合によっては揮発性溶媒へと加水分解可能な基、殊に加水分解アルコールが、組成物全体において12質量%未満〜0質量%の含有率にまで、好ましくは蒸留によって、当業者によく知られた方法に従って除去されることができる。組成物が溶媒不含と見なされるのは、組成物全体における溶媒の含有率が、10質量%未満〜0質量%、特に有利には5質量%未満、極めて有利には2質量%未満〜0.0001質量%、殊に1〜0.5質量%以下、有利には0.5〜0.1質量%以下に調整することができた場合であって、その際、揮発性溶媒の除去は、反応中及び/又はその後に蒸留によって、殊に1〜1000mbarの範囲、有利には80〜300mbarの範囲、特に有利には80〜180mbarの範囲の減圧下で行ってよい。適切な仕方で、或いはまた、圧力を、反応の過程で周囲圧力から減少した圧力に下げてもよい。蒸留は、不連続的に又はそれとも連続的に、蒸留塔、薄膜式蒸発器並びに当業者によく知られた更なる装置を用いて行ってよい。蒸留に際して、好ましくは、分離塔の頂部で、もはや水しか検出可能でなくなるまで蒸留される。留去された水は、新たに水を加えることによって補充してよい。蒸留の最後に、溶液の所望の最終濃度を、更なる水の添加によって調整してよい。
【0015】
反応は、有利には、1mbar〜100barの圧力で、好ましくは約1mbar〜1.1barの圧力で、有利には周囲圧力(常圧)で、かつ20〜150℃の温度、有利には40〜120℃の温度、特に有利には60〜100℃の温度、殊に80〜95℃の温度で実施される。
【0016】
加水分解触媒及び/若しくは縮合触媒、例えば有機酸若しくは無機酸、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、クエン酸、塩化水素を、ガスとして、濃縮された若しくは水性の塩酸、ホウ酸、硝酸、硫酸又はリン酸を加えることが目的に適い得るとわかる。相応して、組成物又は反応混合物のpH値を調整するために、無機酸又は有機酸を随時添加してもよい。
【0017】
さらに、有利には、金属酸化物、好ましくは縮合性ヒドロキシ基を有する金属酸化物を用いることが好ましくあり得る。これらは、殊にシリカ、熱分解シリカ、沈降シリカ、シリケート、ホウ酸、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム水和物、ATH(三酸化アルミニウム、Al(OH)3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化カルシウム、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ホウ素、酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化スズ、酸化ゲルマニウム並びに相応する水酸化物及び酸化物水和物並びに前述の化合物の少なくとも2種を混ぜた混合物である。
【0018】
揮発性溶媒又は加水分解して揮発性溶媒を生成する基は、アルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、及び加水分解してアルコールを生成するアルコキシ基、アシルオキシ基含有基並びに、加水分解によって誘導された酢酸又はギ酸、さもなければフェノールを形成し得るアリールオキシ基、それにグリコール並びに部分エーテル化されたグリコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール又はメトキシエタノールと理解され、これらは配合物に添加されるか、又はそれらのシリルエステルの加水分解によって生じる。
【0019】
本発明の対象は、さらに、
a)水50〜75質量部、
b)30〜500m2/gのBET表面積を有する二酸化ケイ素粒子25〜50質量部及び
c)二酸化ケイ素粒子のBET表面積1平方メートル当たり100〜300μgの1種以上のアミノ官能性第四級有機ケイ素化合物
を分散させ、ここで、カチオン化剤は、一般式III
【化2】
[式中、Ru及びRvは、それぞれ互いに無関係に、炭素原子2〜4個を有するアルキル基であり、m=2〜5及びn=2〜5である]の1種以上のアミノアルコール官能性第四級有機ケイ素化合物及び/又はその縮合生成物を包含する、二酸化ケイ素粒子及びカチオン化剤を有する特別な分散液の製造法である。
【0020】
特に有利なのは、u=v=Me、m=3及びn=2の実施形態である。
【0021】
アミノアルコール官能性第四級有機ケイ素化合物の縮合生成物は、線状、分枝状及び/又は環状の構造若しくはM構造、D構造、T構造を有する構造領域を有してよい。29Si−NMR分光分析法によれば、これらは、モノマー構造の有利には0.5〜5%、特に有利には1〜3%のほかに、M構造の有利には3〜15%、特に有利には5〜10%及びD構造の有利にはそのつど35〜60%、特に有利には40〜55%である。M構造、D構造、T構造の定義は、Walter Noll,Chemie und Technologie der Silicone,1968,Verlag Chemie GmbH,Weinheim,Kapitel 1に見つけられる。
【0022】
さらに、アミノアルコール官能性第四級有機ケイ素化合物は、有利には500〜5000、特に有利には1000〜2500の数平均分子量Mnを有する。
【0023】
アミノアルコール官能性第四級有機ケイ素化合物の水溶液中での割合は、有利には30〜60質量%、特に有利には40〜50質量%である。
【0024】
二酸化ケイ素粒子
用いられる二酸化ケイ素粒子は、非晶質の二酸化ケイ素粒子である。該二酸化ケイ素粒子は、それらの表面に、縮合可能な基、例えばOH基を持つ。構成要素として二酸化ケイ素を有する混合酸化物又は二酸化ケイ素で覆われた金属酸化物粒子も一緒に包含されているべきである。非晶質の二酸化ケイ素粒子は、例えば、電孤法、プラズマ法、湿式化学法、例えば沈殿法及びゲル化法を用いて、並びに熱分解法によって製造されることができる。有利には、二酸化ケイ素粒子は、熱分解により製造された粒子である。熱分解とは、一般に水素と酸素の反応によって作り出される、火炎中での気相におけるケイ素化合物の加水分解又は酸化と解される。その際、まず、微細な、多孔質でない一次粒子が形成され、該粒子は更なる反応の過程で癒着してアグリゲートとなり、これらは会合してさらにアグロメレートとなり得る。
【0025】
用いられる二酸化ケイ素粒子のBET表面積は、30〜500m2/gの幅広い範囲にわたり変化してよい。しかしながら、200m2/g以上のBET表面積を有する、熱分解により製造された二酸化ケイ素粒子、殊に240〜330m2/gのBET表面積を有する該粒子の使用が、インクジェット分野において特に良好な特性を示す分散液をもたらすことが見出された。
【0026】
分散液を製造するための更なる原料
本発明による方法の場合、付加的に1種以上の塩基性作用物質が用いられることができる。一般に、これらはアミン及び/又はその塩であってよい。本発明による分散液の安定性をさらに改善することができるように、酸を用いてもよい。適した酸、は、塩酸、C1〜C4−カルボン酸、C1〜C4−ヒドロキシカルボン酸又はC1〜C4−ジカルボン酸であってよい。通常、酸は、2〜6、有利には3〜5、特に有利には3.5〜4.5の分散液のpH値が結果生じるような量で添加される。しかしながら、酸の添加なしでも安定な分散液が得られることに言及しておく。さらに、分散液の製造に際しては、有機溶媒、殺菌剤及び/又は殺真菌剤を用いてもよい。
【0027】
一般に、分散液の製造に際しては、まず、僅かなエネルギー投入下で、例えばディソルバーを用いて、二酸化ケイ素粒子を分散液の液状成分に加えることにより予備分散液を製造して行われる。次いで、第二の工程では、エネルギー投入量が第一の工程での投入量より高い本来の分散が行われる。適した分散ユニットは当業者に公知である。ローター/ステーターユニットが、例として挙げられる。
【0028】
本発明の更なる対象は、本発明による方法によって得られる分散液である。これは、120〜250nm、特に有利には130〜180nmの、動的光散乱によって測定された平均粒径を有する。
【0029】
有利な実施形態において、本発明による分散液は、250m2/g〜350m2/gのBET表面積を有する、熱分解により製造された二酸化ケイ素粒子35〜40質量%を含有し、かつ動的光散乱によって測定された平均粒径は130〜180nmである。
【0030】
塗工カラー
本発明の更なる対象は、本発明による分散液と少なくとも1種のバインダーを含有する塗工カラーである。バインダーとして、例えば以下のものが用いられる:部分的に若しくは完全にけん化されたポリビニルアルコール、並びに第一級、第二級若しくは第三級アミノ基又は第四級アンモニウム基を主鎖又は側鎖に有するカチオン化ポリビニルアルコール。そのうえ、これらのポリビニルアルコール相互の組合せ物及びポリビニルピロリドン、酢酸ポリビニル、シラン化ポリビニルアルコール、スチレン−アクリレートラテックス、スチレン−ブタジエンラテックス、メラミン樹脂、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリウレタン樹脂、合成樹脂、例えばポリメチルメタクリレート、ポリエステル樹脂(例えば不飽和ポリエステル樹脂)、ポリアクリレート、化工デンプン、カゼイン、ゼラチン及び/又はセルロース誘導体(例えばカルボキシメチルセルロース)である。有利には、ポリビニルアルコール又はカチオン化ポリビニルアルコールを用いてよい。
【0031】
さらに、塗工カラーは、なお1種以上の他の顔料、例えば炭酸カルシウム、層状ケイ酸塩、ケイ酸アルミニウム、プラスチック顔料(例えばポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン)、シリカゲル、アルミニウム化合物(例えばアルミニウムゾル、コロイド状アルミナ及びそれらのヒドロキシ化合物、例えば擬ベーマイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、炭酸亜鉛、しゅす白、リトポン、ゼオライトも含有してよい。
【0032】
塗工カラーは、10〜60質量%の含有率の混合酸化物粒子を有してよい。有利には、それは15質量%より高く、特に有利には25質量%より高くてよい。
【0033】
バインダー系ひいてはコーティングの耐水性を高めるために、架橋剤、例えば酸化ジルコニウム、ホウ酸、メラミン樹脂、グリオキサール及びイソシアネート及び他の分子が利用され、これらはバインダー系の分子鎖を互いに結合する。
【0034】
さらに、助剤、例えば蛍光増白剤、消泡剤、湿潤剤、pH緩衝剤、UV吸収剤及び粘性助剤を用いてもよい。
【0035】
本発明による塗工カラーは、有利には、10〜30質量%、特に有利には15〜30質量%の固形分を有する。
【0036】
本発明の更なる対象は、本発明による分散液の使用及びインクを受容するインクジェット媒体をコーティングするための塗工カラーである。
【0037】
本発明の更なる対象は、インクを受容するインク受容層を包含する媒体であり、その際、インク受容層は、本発明による塗工カラー及び担体を包含する。担体として、例えば紙、コート紙、樹脂フィルム、例えばポリエステル樹脂であって、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ポリビニル、ポリイミド樹脂、セロハン、セルロイドを含めた樹脂及びガラス板を用いてよい。
【0038】
有利なのは、いわゆる写真基紙、すなわち、単層又は多層のポリエチレンフィルムが表面及び/又は裏面に施与されている紙である。さらに、ポリエステルフィルム、PVCフィルム又はプレコート紙が挙げられる。
【0039】
本発明によるインク受容媒体は、インク受容層が同じタイプの複数のコーティング膜又は他の膜から成る媒体も包含する。本発明による塗工カラーは、単層でのみか又は多層で存在してよい。そのため、例えばインク吸収コーティングがさらになお含まれていてよい。さらに、機械的安定性及び/又はコーティングにおける光沢を高めるために、1つ以上のポリマー膜(例えばポリエチレン)を基材及び/又はコーティング上に施与してもよい(例えば写真基紙、積層)。
【0040】
担体は、透明又は半透明であってよい。担体の厚さは、制限されておらず、有利には50〜250μmの厚さで使用される。
【0041】
インク受容媒体の製造のために、塗工カラーを担体上に施与し、かつ乾燥してよい。塗工カラーの施与は、全ての通常の塗工法、例えばロール塗工、ドクターブレード均整化(ブレード塗布)、エアブラシ、ブレード(異形、平滑、スリット)、キャスト塗工法、フィルムプレス、サイズプレス、カーテン塗工法及びスロットダイ塗工(例えば塗工ブレード、スロットダイ)及びそれらからの組合せにより行われることができる。有利には、非常に均一なコーティングを可能にする方法、例えばキャスト塗工、カーテン塗工及びスロットダイ塗工が用いられる。
【0042】
コーティングされた基材は、全ての通常の方法、例えば空気乾燥方式又は熱風邪乾燥方式(例えば熱風ダクト)、接触乾燥方式又は伝導乾燥方式、エネルギー線乾燥方式(例えば赤外線及びマイクロ波)により乾燥してよい。
【0043】
例:
測定法:
加水分解性塩化物を、硝酸銀を用いてポテンシオグラフィーにより滴定を行った(例えばMetrohm、682型、指示電極としての銀ロッド及びAg/AgCl基準電極又は他の適した基準電極)。ウルツシュミット溶解(Wurtzschmitt-Aufschluss)による全体の塩化物含有量。このために、試料をウルツシュミットボンベ(Wurtzschmittbombe)中で過酸化ナトリウムを用いて溶解した。硝酸を用いた酸性化後に、塩化物をポテンシオグラフィーにより硝酸銀を用いて、前述のように測定する。
【0044】
クロロアルキル官能基と第三級アミンとの完全な反応の場合、加水分解性塩化物と全体の塩化物についての分析値は同一であり、そのため反応の完全性についての尺度であり、それというのも、全体の塩化物により、塩様の塩化物(アミンヒドロクロリド)及び共有結合した塩素(クロロアルキル官能基)からの合計が、そして加水分解性塩化物により、もっぱら塩様の又は水で分離可能な塩化物(ここでのアミンヒドロクロリド)が測定されるためである。反応の開始時、加水分解性塩化物の値はゼロであり、完全に反応すると、全体の塩化物について測定される値に上昇する。それゆえ、これらの分析は、1H及び13C NMR分光分析法に加えて、反応制御として際立って適している。
【0045】
加水分解後のアルコール含有量を、ガスクロマトグラフィーにより測定する。このために、規定量の試料を硫酸(試料5g、H2SO425ml、w=20%)を用いて加水分解する。蒸留水75mlを添加する。引き続き苛性ソーダ液で中和し、水蒸気蒸留を実施する。内部標準2−ブタノール。
【0046】
有機結合したN若しくはアンモニウム等の窒素測定に際しては、有機結合した窒素が、ケルダール分解によりアンモニウムに変換されることができ、そして苛性ソーダ液の添加後にアンモニアとして酸滴定により測定されることができる。手順:試料5gまでを、分解溶液が明るくなり、かつ場合により沈殿したケイ酸とは別に透明になるまで、硫酸10ml(濃縮)及びケルダールタブレット(Merck1.15348)で加熱する。分解容器を蒸留装置につなぎ、苛性ソーダ液の添加(27%)によって脱離したアンモニアを受器中に留出させる。アンモニア含有量を、ホウ酸添加(2%)下で硫酸(c(H2SO4)=0.05モル/l若しくは0.005モル/l)により滴定する。V=硫酸の消費量(ml)、c=硫酸の濃度(モル/l)、z=硫酸の当量数=2、E=正味重量(ml)
評価:N[%]=(100・V・c・z・14.01)/E。
【0047】
SiO2の測定は、硫酸及びケルダール触媒による分解後に、沈殿したSiO2の重量を測定することによって行う。手順:試料1gを、250mlのビーカー内で、ケルダールタブレット(例えばMerck No.15348)及び硫酸20ml(濃縮)と混ぜる。この溶液をゆっくりと加熱する。有機成分を、分解溶液が硫酸の発煙に際して透明で明るくなり続けるまで酸化する。冷却し、かつ約200mlに慎重に希釈した後、その際に沈殿したケイ酸を、ホワイトリボンフィルターによって濾過分離する。このフィルターを、洗浄水のpH値が>4となるまで、水で洗浄し、次いで白金るつぼ内で乾燥及び灰化する。残留物を800℃でか焼し、そして秤量する。フッ化水素酸(濃縮)で加熱した後、新たに800℃でか焼し、そして秤量する。m=フッ化水素酸による加熱前及び加熱後の重量差(g);E=正味重量(g)
評価:SiO2[%]=100・m/E。
【0048】
続けて、上記パラメーターを測定するために用いたDIN標準を表す:DIN38409−1(1987−01−00)に従った固形分、DIN51423(2010−02−00)に従った屈折率、DIN51757(1994−04−00)に従った密度、DIN53015(2001−02−00)に従った粘度、DIN EN ISO6271(2005−03−00)に従った色数及びDIN EN ISO 7027(2000−04−00)に従った曇り度。
【0049】
例1:クロロプロピルトリエトキシシラン(CPTEO)及びN,N−ジメチルエタノールアミンとからのカチオン化剤の製造
4lの四つ口フラスコ内に、1283.0gのCPTEO(5.328モル)及び160.0gのエタノールを装入する。室温にて、143.9gの完全脱塩水(1.5モル H2O/1モル Si)を16分にわたって滴下する。その際、底部温度は約40℃に上昇する。
【0050】
引き続き、570.5g(6.400モル)のジメチルエタノールアミンを6分にわたり供給する。底部温度は、その際、約40℃から約48℃に上昇する。引き続き、約45分間、還流しながら煮沸させる(底部温度 約85℃)。
【0051】
標準圧力で、約6時間にわたり、1706.6gの水/エタノール/ジメチルエタノールジアミンを留去する。この期間、7回に分けて2038.3gの水を供給する。3時間の蒸留後、3回に分けて計432.4gの完全脱塩水を導入した。その時、底部の試料は、完全脱塩水に良好な溶解性を示す。
【0052】
1.7時間にわたり、50℃〜55℃の底部温度及び約140mbarの絶対圧で、529.4gの水/エタノール/ジメチルエタノールジアミン混合物を留去する。蒸留の最後に、560.17gの完全脱塩水を供給する。僅かに混濁した/僅かに黄色がかった低粘性液体が得られる。収率:2521.7g。
【0053】
例1からのカチオン化剤の物理化学データは第1表に見出される。
【0054】
1H及び13C−NMR:目的化合物の純度 約95.8モル%、遊離ジメチルエタノールアミン 4.2モル%。アミノエタノール基のエステル交換によるSiORの生成は検出されなかった。
【0055】
29Si−NMR:シラン Si1%、M構造 Si7%、D構造 Si45%、T構造 Si47%。
【0056】
例2:分散液D1〜D3の製造
次の分散液例D1〜D3を、該分散液が流動性のものとして使用可能であり、かつ細孔構造及び細孔容積の点で紙コーティングにおける類似の働きを有することを条件に開発した。コーティングの多孔性の基準として明らかになったのが、動的光散乱により測定された、分散液における平均アグリゲート径である。系内部で、分散を通じての比較的高い充填度が、平均粒径の減少につながる。これらの例は、本発明によるシラン系の使用によって、所望のアグリゲート径を同時に維持しながら非常に高い充填度が実現可能であることを示す。
【0057】
D1:AEROSIL(R)300 二酸化ケイ素とポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(p−DADMAC)とから出発する分散液(比較例)
1350gの完全脱塩水に、60gのp−DADMACを加える。次いで、320gのAEROSIL(R)300をディソルバーによって1500〜4000rpmで40分間にわたり撹拌導入し、引き続き2000rpmで5分間さらに予備分散させる。続けて、それからローター/ステーター分散装置を用いて15000rpmで、冷却しながら(<30℃)30分間分散させる。最後に、この分散液を500μmの篩で濾過する。
【0058】
D2:AEROSIL(R)300 二酸化ケイ素とN−ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン(Dynasilan(R)1189)とから出発する分散液(比較例)
1200gの完全脱塩水に、425gのAEROSIL(R)300gをディソルバーによって1500〜4000rpmで30分間にわたり撹拌導入し、引き続き2000rpmで5分間さらに予備分散させる。続けて、それからローター/ステーター分散装置を用いて15000rpmで、冷却しながら(<30℃)10分間分散させる。
【0059】
次いで、再びディソルバーを用いて2000rpmで撹拌し、かつ5分以内に、21.3gのDynasylan(R)1189.67gのメタノール及び20gのギ酸とから成る混合物(水中で50%の溶液)の添加を行い、その後に、さらに60分間、ローター/ステーターシステムにおいて5000rpmにて60℃で最終的な分散を行い、かつ完全に反応させる。最後に、この分散液を冷却し、かつ500μmの篩で濾過する。
【0060】
D3:AEROSIL(R)300 二酸化ケイ素と例1からのカチオン化剤とから出発する分散液(本発明による)
428gのAEROSIL(R)300gを、ディソルバーを用いて1500〜5000rpmで、805gの完全脱塩水と47.4gの例1からの溶液とから成る混合物中に17分にわたって撹拌導入し、そして2000rpmで10分間さらに分散させる。引き続き、ローター/ステーター分散装置(Kinematica Polytron PT6100)を用いて30分間にわたり10000rpmで分散させる。最後に、この分散液を500μmの篩で濾過する。
【0061】
D1〜D3の物理化学データは第2表に見出される。
【0062】
例3:分散液D4〜D6の製造
分散液例D4〜D6は、粒径のパラメーターとは無関係に、いくらの固形分がそれぞれのカチオン化添加剤と最大で可能であるかを示す。該分散液は、期待した通り、非常に高い粘度を有し、しかし、依然として液状であり、かつ加工可能である。
【0063】
D4:AEROSIL(R)300 二酸化ケイ素とポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(p−DADMAC)とから出発する分散液(比較例)
1190gの完全脱塩水に、60gのp−DADMACを加える。次いで、320gのAEROSIL(R)300をディソルバーによって1500〜4000rpmで撹拌導入し、引き続き2000rpmで5分間さらに予備分散させる。続けて、それからローター/ステーター分散装置を用いて15000rpmで、冷却しながら(<30℃)10分間分散させる。最後に、分散液を500μmの篩で濾過する。
【0064】
D5:AEROSIL(R)300 二酸化ケイ素とN−ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan(R)1189)とから出発する分散液(比較例)
1035gの水を装入し、かつ21.2gのDynasilan(R)1189をこの水へと撹拌する。30分の加水分解時間後、装入された溶液を63.7gの酢酸(水中で25質量%の溶液)を用いてpH4.2に調整する。それから423.9gのAEROSIL(R)300を、ディソルバーを用いて1500〜4000rpmで撹拌導入し、引き続き5分間にわたり2000rpmでさらに予備分散させる。続けて、それからローター/ステーター分散装置を用いて10000rpmで、冷却しながら(<30℃)30分間、最終的に分散させる。最後に、この分散液を500μmの篩で濾過する。
【0065】
D6:AEROSIL(R)300 二酸化ケイ素と例1からの溶液とから出発する分散液(本発明による)
557gのAEROSIL(R)300を、ディソルバーを用いて1500〜5000rpmで、885gの完全脱塩水と58gの例1からの溶液とから成る混合物中に10分にわたって撹拌導入し、そして2000rpmで10分間さらに分散させる。引き続き、ローター/ステーター分散装置(Kinematica Polytron PT6100)を用いて30分間にわたり10000rpmで分散させる。最後に、この分散液を500μmの篩で濾過する。
【0066】
D4〜D6の物理化学データは第3表に見出される。
【0067】
例4:分散液D7〜D10の製造
AEROSIL(R)300(BET表面積 約300m2/g)に加えて、本発明による分散液は、他のAEROSIL(R)型をベースにしても製造することができる。このために、該AEROSIL(R)粉末を、ディソルバーを用いて1500〜5000rpmで、885gの完全脱塩水と例1からのカチオン化剤の相応量とから成る混合物中に撹拌導入し、2000rpmで10分間さらに分散させる。引き続き、ローター/ステーター分散装置(Kinematica Polytron PT6100)を用いて30分間にわたり10000rpmで分散させる。最後に、この分散液を500μmの篩で濾過する。使用した原料及び量、並びに分散液D7〜D10の物理化学データを表4は示す。
【0068】
例:塗工カラーS1〜S3の製造
S1:そのつど分散液D1に、ディソルバーを用いて500rpmで、ポリビニルアルコールPVA235(Kuraray Europe社)の12質量%の溶液を加え、かつ10分間撹拌する。PVA(乾燥)に対する二酸化ケイ素の比が4:1(若しくはS2及びS3については5:1)となるだけの量のPVA235を添加する。粘度の調整のために、表に記載の固形分が生じるだけの量の水を添加する。続けて、水中で7質量%のホウ酸の溶液を添加する。ホウ酸の量は、ポリビニルアルコールの量の12.5質量%に等しい。最後に、Clariant社のグリオキサール含有組成物"Cartabond TSI"を添加する。この量は、ポリビニルアルコールの量の4.8質量%に相当する。
【0069】
インクジェット塗工カラーの粘度を、24時間後にブルックフィールド粘度計を用いて測定する。
【0070】
S2及びS3をS1と同じように製造するが、それぞれ分散液D2及びD3を使用する。塗工カラーの固形分及び粘度を、第5表に示している。
【0071】
例:インクジェットコーティングの製造
塗工カラーS1〜S3をそのつど、プロファイルドドクターナイフを用いて写真基紙(厚さ300μm)上に塗布する。それぞれの塗工カラーのウェット膜を、比較可能な塗工量が達成されるように選択する。
【0072】
このコーティングを、105℃にて8分間にわたり乾燥させる。22g/m2の均一な塗工量が得られる。コート紙を、Canon製PIXMA iP6600D型のインクジェットプリンターで最高解像度により印刷した。印刷結果の評価を、第6表に示している。
【0073】
本発明による塗工カラーの利点は、従来技術と比べて改善された加工性、VOC含有成分が無いことによって減少した環境負荷及び、より僅かな含水量に基づくより迅速な塗工性である。その際、画像強度及び画像品質に関しての欠点を受け入れる必要はない。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
【表4】
【0078】
【表5】
【0079】
【表6】