(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5762540
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】はんだペースト用の有機酸−または潜在的有機酸−官能化ポリマー被覆金属粉末
(51)【国際特許分類】
B22F 1/02 20060101AFI20150723BHJP
B22F 9/00 20060101ALI20150723BHJP
B23K 35/22 20060101ALI20150723BHJP
B23K 35/363 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
B22F1/02 B
B22F9/00 B
B23K35/22 310A
B23K35/363 C
B23K35/363 E
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-524958(P2013-524958)
(86)(22)【出願日】2011年8月17日
(65)【公表番号】特表2013-538293(P2013-538293A)
(43)【公表日】2013年10月10日
(86)【国際出願番号】US2011048062
(87)【国際公開番号】WO2012024382
(87)【国際公開日】20120223
【審査請求日】2014年7月7日
(31)【優先権主張番号】12/860,497
(32)【優先日】2010年8月20日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514056229
【氏名又は名称】ヘンケル アイピー アンド ホールディング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100068526
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭生
(74)【代理人】
【識別番号】100103115
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 康廣
(72)【発明者】
【氏名】リウ・プウェイ
【審査官】
米田 健志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−269935(JP,A)
【文献】
特開2009−030111(JP,A)
【文献】
特開2010−053385(JP,A)
【文献】
特開2010−153118(JP,A)
【文献】
特開2010−150653(JP,A)
【文献】
特開2005−066672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00〜8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機酸−または潜在的有機酸−官能基を有するポリマーが、表面の少なくとも一部に被覆された金属粒子であって、
金属粒子がはんだ粉末であり、
有機酸−または潜在的有機酸−官能基を有するポリマーが、主鎖に無水マレイン酸基がグラフトされているポリアルキレンまたはポリブタジエン無水マレイン酸アダクトであり、
無水マレイン酸含有量が、5wt%〜0.1wt%である、
該金属粒子。
【請求項2】
請求項1に記載の被覆金属粒子を含んで成る、はんだベースト組成物。
【請求項3】
被覆金属粒子が、全成分の10〜98wt%の量で存在する、請求項2に記載のはんだペースト組成物。
【請求項4】
金属粒子上のポリマー被膜が、5μm未満の厚さである、請求項1に記載の金属粒子。
【請求項5】
金属粒子上のポリマー被膜が、0.0001〜3.0μmの厚さである、請求項1に記載の金属粒子。
【請求項6】
金属粒子上のポリマー被膜が、0.001〜1μmの厚さである、請求項1に記載の金属粒子。
【請求項7】
下記の工程を含む請求項1に記載のポリマー被覆金属粒子の製造法:
a)多数の金属粒子を準備し;
b)多数の金属粒子に、有機酸−または潜在的有機酸−官能基を有するポリマーを、好適条件下に適用し、それによって、大部分の金属粒子の表面の少なくとも一部を実質的に被覆し;
c)金属粒子の表面の有機酸−または潜在的有機酸−官能化ポリマー被覆剤を、好適条件に暴露して、有機酸−または潜在的有機酸−官能化ポリマーと金属粒子の表面との間にエステルまたは半エステル結合を形成する。
【請求項8】
下記の工程を含む、請求項1に記載のポリマー被覆金属粒子を含有するはんだペーストの製造法:
a)はんだ粉末の表面の少なくとも一部における被覆剤としての、有機酸−または潜在的有機酸−官能基を有するポリマーを準備し;
b)ロジン、活性剤、流動調節剤、増粘剤または溶剤から選択される2つ以上のはんだペースト成分を準備し;
c)有機酸−または潜在的有機酸−官能化ポリマー被覆はんだ粉末と、はんだペースト成分とをブレンドして、はんだペーストを形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2010年8月20日に出願された米国特許出願第12/860497号の優先権を主張し、その内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
背景
分野
本出願は、有機酸−または潜在的有機酸−官能化ポリマー被覆金属粉末、例えば、はんだ合金、球およびペーストの形成において適宜使用される金属粉末に関する。金属粉末は、有機酸または潜在的有機酸で被覆されている。
【背景技術】
【0003】
関連技術の簡単な説明
はんだは、半導体パッケージおよび半導体デバイスの組立てに広く使用されている。
【0004】
例えば、はんだボールまたは球は、半導体パッケージの組立てにおいて、例えばフリップチップ用途において、使用されている。そのようなはんだボールまたは球の表面に、ステアリン酸被膜を配置することが知られている。
【0005】
はんだペーストは、回路基板への電気部品の表面実装はんだ付けに一般に使用されている。基板がはんだリフロー工程を通る際に永久結合を形成する前に、はんだペーストが、付加的接着剤を使用せずに電気部品を適切な位置に保持することを可能にする粘着特性によって、回路基板の選択領域に適用することができるので有用である。
【0006】
はんだペーストは、一般に、はんだ粉末、樹脂成分、例えばロジン、活性剤、例えば有機酸またはアミン、流動調節剤、増粘剤および溶剤を含んで成る。はんだペーストは、一般に、スクリーン印刷、計量分配および転写印刷のような方法によって、回路基板にコーティングされる。次に、電気部品を回路基板に配置し、はんだペーストをリフローし、それによって、はんだが溶融するのに充分に加熱され、次に、はんだが凝固するのに充分に冷却する。
【0007】
はんだペーストの使用に関連した工業上の1つの課題は、はんだペーストが、多くの場合、短く予測不可能な貯蔵寿命、例えば、一般に、約1ヵ月〜6ヶ月を有することである。貯蔵寿命の予測不可能性は、少なくとも部分的に、下記の理由によって生じる:はんだ粉末を作製してから、それを融剤と混合してはんだペーストを形成するまでのタイムラグの変動があり、その結果として、はんだ粉末における酸化度の変動を生じる。そのような酸化粉末は、非酸化粉末と同じようにリフロー接合しない。さらに、はんだ粉末を、本質的に腐食性の融剤と組み合わした場合、はんだ粉末は融剤と反応することが多く、それによって粉末を酸化し、融剤の酸性度、即ち有効性を減少させる。その結果、はんだペーストの性能が経時に伴い低下することが多い。さらに、はんだ粉末と融剤との反応は、一般に、はんだペーストの粘度を実質的に増加させ、これにより、はんだペーストの印刷が、ピッチに依存して不可能でないにしても困難になりうる。
【0008】
はんだペーストを冷蔵条件下に貯蔵することによって、はんだ粉末と融剤との反応速度を減少させ、それにより、はんだペーストの貯蔵寿命を増加させる試みがなされている。しかし、冷蔵は、はんだ粉末のはんだペーストへの組込み前の、はんだ粉末における変動酸化度を補うのに有効ではない。
【0009】
はんだ粉末を、はんだペーストに非反応性の材料で被覆することも報告されている。例えば、米国特許第4994326号は、はんだペースト用のビヒクルに不溶性または難溶性の被覆剤を開示しており、該被覆剤はシリコーンおよびフッ素を基剤とする被覆剤を包含し、例えば、シリコーン油、シリコーン基剤高分子化合物、フッ素化シリコーン油、フルオロシリコーン樹脂、およびフッ素化炭化水素基剤高分子化合物が被覆剤として使用されている。
【0010】
該米国特許第4994326号は、はんだ粉末に適用される相対的に多量の被覆材料も開示している。相対的に多量の被覆材料は、はんだ粉末の酸化を阻害するのに有効でありうるが、一般に、多量の被覆材料は、はんだのリフローを阻害しうるバリヤを形成しうるので望ましくない。さらに、そのような多量の被覆材料は、物理的障害物および/または不純物を生じることがあり、その結果、低リフロー特性、例えば、融剤による不充分な基板湿潤を生じ、これにより、はんだの低展着および不連続はんだ接合を生じうる。
【0011】
さらに、該米国特許第4994326号は、はんだ粉末の被覆における溶剤として使用されるフッ素化炭化水素の使用を開示している。現在、フッ素化炭化水素は環境汚染物質と考えられており、その使用は一般に望ましくない。
【0012】
米国特許第6416863号は、はんだ金属粉末を封入する方法を指向し特許請求しており、該方法において、下記の工程を使用して、はんだ粉末の表面で起こる重合反応によって、粉末に薄いポリマー保護層を与えている:
a)粉末および疎水性液体の懸濁液を作製し;
b)C
1〜C
20の鎖長を有するカチオン界面活性剤を連続撹拌しながら添加して、工程(a)の疎水性層上にブラシ構造を形成することによって、各金属粒子上に疎水性表面層を形成し;
c)粘性均質素材が形成されるまで、工程a)およびb)の混合物を撹拌し;
d)工程c)の素材にラジカル重合モノマーを添加し、それは、はんだ粉末の固相線温度より少なくとも60℃低いガラス温度Tgを有する熱可塑性ポリマーを形成し;
e)有機開始剤を添加して、工程b)の疎水性層を組込み、融剤特性を有する熱可塑性ポリマーの保護層を形成して界面重合反応を開始し;
f)工程e)の素材を、水性調製物に連続撹拌しながら導入し、それにより該調製物は懸濁安定化のための乳化剤を含有し、50℃〜90℃に調節し、この温度に少なくとも120分間維持することによって、重合反応を制御し;
g)工程e)およびf)の封入はんだ粉末を冷却し、洗浄し、回収する。
封入壁を形成するのに好適なモノマーは、ラジカル重合モノマー、好ましくは、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチルエステルまたはメチルメタクリレートであると報告されている。
【0013】
米国特許第5328522号は、下記を含んで成るはんだペーストを指向し特許請求している:
(i)融剤、および
(ii)パリレン(はんだ粒子より低い融点を有する)で被覆されたはんだ粒子を含んで成る被覆はんだ粉末であって、該パリレンが、被覆はんだ粉末の全重量に基づいて約0.001〜約0.5wt%の量であり、被覆はんだ粉末のリフロー特性を実質的に阻害せずにはんだペーストにおけるはんだ粒子の酸化を阻害するのに有効である、被覆はんだ粉末。
【0014】
米国特許第4452861号(Okamoto)は、シアノアクリレートポリマーで封入された固体粒子を記載している。粒子は、反応性または腐食性環境による劣化を防ぐために封入されている。陰極線管等において被覆剤として使用されている燐光体粒子等を被覆するために、シアノアクリレートポリマーが使用されている。セリウム活性化硫化カルシウム燐光体粉末が、被覆される例示物質である。
【0015】
米国特許出願公開第2005/0171273号明細書は、異方性導電性結合剤の形成用の硬化性組成物を記載しており、該組成物は、下記成分:
(i)ある量の第一実質的未硬化硬化性成分;および
(ii)第二硬化性成分の硬化生成物で被覆された導電性粒子;
を含んで成り、該被覆導電性粒子が該第一硬化性成分中に分散されている。
【0016】
国際公開第WO 2010/059924号パンフレットは、表面の少なくとも一部が熱分解性ポリマーで被覆された金属粒子を指向し、該熱分解性ポリマーは、該熱分解性ポリマーの分解温度より低く、該金属粒子の融点より低い、天井温度を有する。熱分解性ポリマーの例として、シアノアクリレートポリマーまたはジシクロペンタジエンポリマーが開示されている。
【0017】
最先端技術にもかかわらず、有機酸または潜在的有機酸を、金属粒子、特にはんだペーストに使用するのに好適な金属粒子上に、被覆剤として与えることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第4994326号明細書
【特許文献2】米国特許第6416863号明細書
【特許文献3】米国特許第5328522号明細書
【特許文献4】米国特許第4452861号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/0171273号明細書
【特許文献6】国際公開第WO 2010/059924号パンフレット
【発明の概要】
【0019】
概要
従って、本発明は、金属粉末の表面の少なくとも一部に有機酸または潜在的有機酸被膜を形成するために、有機酸または潜在的有機酸官能基を有するポリマー物質との反応に使用できる1つ以上のヒドロキシル基を表面に有する金属粉末を提供し、該被覆金属粉末は、はんだペーストにおける使用に特に好適である。金属粉末の表面におけるヒドロキシル基は、酸または潜在的有機酸と反応して、それぞれエステルまたは半エステルを形成することができ、それらの反応生成物は高温条件下で分解する傾向がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】ポリブタジエン/無水マレイン酸アダクトを形成するための合成反応式を示す。
【
図2】対照と比較して、潜在的有機酸被覆はんだ粉末のはんだペーストにおける、より少ない粘度増加を示す粘度−時間プロットを示す。
【
図3】有機酸または潜在的有機酸が、金属粉末の表面の一部を被覆する仕方を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
前記のように、本発明は、表面の少なくとも一部に有機酸または潜在的有機酸被膜を有する金属粉末を提供し、該被覆金属粉末は、はんだペーストにおける使用に特に好適である。
【0022】
被覆剤として使用される有機酸または潜在的有機酸官能化ポリマーは、その主要機能として、金属粒子を環境劣化(例えば、酸化および融剤媒体との化学反応)から物理的に分離する役割を有する。一般に、被覆金属粒子が存在している金属粉末および/またははんだペーストが使用のために貯蔵されている間に、有機酸または潜在的有機酸被膜は酸化に対する物理的バリヤとして作用する。
【0023】
一実施形態において、被覆剤として使用される有機酸または潜在的有機酸官能化ポリマーは、オレフィンのコポリマーであり、無水マレイン酸は、はんだ被覆剤として使用するのに好適な潜在的有機酸の例である。主鎖に無水マレイン酸基がグラフトされているポリアルキレン、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリブチレンは、本発明に使用するのに特に関心がもたれる。より具体的には、そのようなポリアルキレンは、下記を包含する:種々のパーセンテージの無水マレイン酸でグラフトされたポリブタジエンであるRICON銘柄材料(Sartomerから商業的に入手可能)、例えば、RICON 130MA20、RICON 131MA8およびRICON 131MA15;種々のパーセンテージの無水マレイン酸(例えば0.5%の無水マレイン酸)でグラフトされたポリエチレンであるPEMA材料(Aldrichから商業的に入手可能);ダイマー酸;ステアリン酸;アジピン酸;および12−ヒドロキシステアリン酸。
【0024】
さらに、
図1は、ポリブタジエン無水マレイン酸アダクトの合成を示している。このアダクトのようなコポリマーは、事実上、疎水性になる傾向がある。疎水性の増加は、環境の影響(例えば、融剤が配合されている場合、または使用前の貯蔵時の周囲条件)に対する向上した耐性を示す。
【0025】
ある種の用途において、金属粒子は2つの基板の間、例えば、半導体パッケージ用途におけるような2つの導電性基板の間に配置され、従って、該粒子は、それが橋絡する基板間の導電性経路を形成するのに充分に非被覆でなければならない。そのような状況において、基板の結合は、金属粒子を「偏平化する」(加圧によって変形させる)のに充分であると考えられ、被膜を充分に壊しうる。
【0026】
金属粒子は、単一粒径、即ち、実質的に同じ寸法でありうる。半導体パッケージまたはアセンブリ内に形成される結合間隙が例えば特定の大きさであるのが望ましい場合に、これは重要となりうる。しかし、様々な寸法の粒子を使用することができ、それにより、平均値の周りの比較的広い粒径分布、例えば、少なくとも1つの寸法において約0.5〜約100μm、望ましくは約3〜約50μmを有する。特に、被覆粒子が球形であることが望ましい。
【0027】
望ましくは、粒子の被膜は、約3μm未満、特に約0.001〜約0.2μm、例えば0.004〜約0.4μm、例えば約0.01〜約0.1μmである。粒子の被膜は、被覆工程後の粒子の重量増加の関数として求めることもできる。
【0028】
金属粒子にコーティングされた有機酸または潜在的有機酸を有するポリマーは、環境汚染物質に対する、または、はんだペーストのような配合物の場合は配合物の製造に使用される他の成分に対する、金属粒子の反応性を減少させることによって、金属粒子、および被覆金属粒子が使用されている配合物に、安定性を与える。
【0029】
はんだリフロー工程において、はんだペーストの適用後に、少なくともいくらかの金属粒子のポリマー被膜が、リフローの間に達する高温への暴露によって少なくとも部分的に除去され、それによって金属粒子、即ち、この場合は、はんだ粉末の表面を露出させる。ポリマー被膜は、物理的破壊によって(例えば、粒子を変形させるために粒子に充分な圧力を加えて、被膜の破壊を生じさせることによって)、少なくとも部分的に除去することもできる。
【0030】
有機酸または潜在的有機酸を有するポリマーで被覆された金属粒子は、多くの用途に使用することができる。主要な最終用途の1つは、一般に電子工業、特にはんだペースト、例えばフリップ−チップ用途、およびはんだ球用途における使用である。
【0031】
有機酸または潜在的有機酸を有するポリマーで被覆された金属粒子、およびそれを使用して製造された配合物、例えばはんだペースト、およびはんだ球は、半導体チップと基板との間に電気的相互接続を確立するのに特に有用である。
【0032】
任意の型/形の金属粒子を使用しうる。特に、粒子は、球形または球形に近いものでありうる。金属粒子に好適な金属は、元素金属、例えば、錫、銀、銅、鉛、亜鉛、インジウム、ビスマス、および希土類金属または合金、例えば、錫/銀/銅、錫/亜鉛、錫/ビスマス、錫/鉛、および錫/インジウム/ビスマス合金を包含する。
【0033】
本発明は、さらに、金属粒子上にポリマー被膜を形成する方法に関し、該方法は下記の工程を含む:
a)多数の金属粒子を準備し;
b)多数の金属粒子に、有機酸または潜在的有機酸官能基を有するポリマーを、好適条件下に適用し、それによって、大部分の金属粒子の表面の少なくとも一部を実質的に被覆し;
c)金属粒子の表面の有機酸−または潜在的有機酸−官能化ポリマー被覆剤を、好適条件に暴露して、有機酸−または潜在的有機酸−官能化ポリマーと金属粒子の表面との間にアセタールまたはヘミアセタール結合を形成する。
【0034】
本発明は、さらに、はんだペーストの製造方法に関し、該方法は下記の工程を含む:
a)はんだ粉末の表面の少なくとも一部における被覆剤としての、有機酸または潜在的有機酸官能基を有するポリマーを準備し;
b)ロジン、活性剤、流動調節剤、増粘剤または溶剤から選択される2つ以上のはんだペースト成分を準備し;
c)有機酸−または潜在的有機酸−官能化ポリマー被覆はんだ粉末と、はんだペースト成分とをブレンドして、はんだペーストを形成する。
【0035】
典型的な被膜は、一般に、1μm未満の厚さである。反応性モノマーを適用してポリマー被膜を形成する他の方法、例えば、実質的未硬化量の反応性モノマーに粒子を入れるが容易に明らかであることを当業者は理解しうる。
【0036】
金属粉末の表面のより高い疎水性の層は、例えば、貯蔵時の環境汚染物質に対して、およびはんだペーストに配合された場合の尚早反応に対して、より優れた保護を与える。
【0037】
以下の非制限的実施例に関して、本発明を説明する。
【実施例】
【0038】
実施例A
潜在的有機酸の合成
いくつかのポリブタジエンおよび無水マレイン酸アダクトを、5wt%〜0.1wt%の範囲の様々な無水マレイン酸含有量で合成し、評価を行なった。合成を以下に説明し、
図1に示す。
【0039】
合成手順は下記の通りである:
【0040】
200gのポリブタジエン(MW3400)および無水マレイン酸(1.0g)を、250mLのトルエンに溶解させ、この混合物を圧力パールトゥーム(pressure parr tomb)に移し、ホットプレートで220〜250℃に加熱した。この密閉系をこの温度で約3〜4時間静置し、次に、室温に冷ました。反応混合物を2Lのトルエンで希釈し、シリカゲル薄層付きのガラス漏斗に通して、残留未反応無水マレイン酸を除去した。次に、溶媒を回転蒸発によって除去して、生成物を粘性黄色液状物として得た。
【0041】
実施例B
市販の潜在的有機酸
Aldrichにより市販されている下記のポリエチレン−コ−無水マレイン酸についても評価を行なった。
【化1】
【0042】
無水マレイン酸の重量パーセントは、5%〜0.1%である。
【0043】
実施例1
有機酸被覆方法
500gのタイプ4はんだ粉末(錫、CuおよびAg合金)(平均粒度30μm)を、2L丸底フラスコに、1Lの無水キシレンと共に入れ、次に、0.2gのポリエチレン−コ−無水マレイン酸を導入し、フラスコを回転蒸発器に配置し、60℃に加熱し、フラスコを100rpmで回転させて、均一混合した。30分後、反応混合物を濾過して溶媒を除去し、はんだ粉末を新しいキシレンで2回濯いで、はんだ粉末に直接的に結合していないすべての残留被覆ポリマーを除去した。被覆はんだ粉末を室温で乾燥させた。
【0044】
実施例2
はんだペーストの配合
被覆はんだ粉末(タイプ4;錫、CuおよびAg合金)(それらのいくらかは、実施例1に記載したのと同様)を、融剤および他のはんだペースト成分と組み合わして、はんだペーストを形成した。
【0045】
貯蔵寿命、保管寿命後のはんだペーストの性能を、2つの方法(それぞれ下記に説明する)によって試験した:
1.はんだボール試験
2.粘度試験
【0046】
はんだボール試験
はんだペーストを、ステンレス鋼ステンシルによってガラススライドに印刷し、次に、リフローし、はんだボールの形跡について調査する。
1.安全かみそりの刃をスクイージとして使用し、ペーストをステンシルによってガラススライドに印刷する。ステンシルは0.1mmの厚さであり、ステンシルに沿って均一に間隔をあけた約5mm直径の3つの穴を有する。
2.ガラススライドをはんだ浴上で250℃で5秒間、またはリフローするまで、加熱する。
3.スライドを浴から移動させ、冷却前に、主ボールをスライドから転がして取る。
4.双眼顕微鏡において倍率10倍で、各印刷におけるはんだボールの数を数えることによって、スライドの評価を行なう。
5.数の少ないほうの2つの印刷の平均を取り、下記の表と比較する。
【0047】
【表1】
【0048】
粘度試験
ブルックフィールド粘度計は、回転粘度測定法の原理を使用している:粘度は、試料に浸漬しているT型バースピンドルを一定速度で回転させるのに必要とされるトルクを感知することによって測定される。トルクは、浸漬したスピンドルへの粘性抵抗、即ちペーストの粘性に比例する。試験は、前記の方法で調製したはんだペーストについて特定の温度で行なわれる。
1.試料を25℃で6時間置く。
2.6時間後、試料を25℃から出し、開いて内部プランジャを出す。プランジャに付着しているすべてのペーストをこすり取って、試料に加える。
3.空気が入り込まないように注意しながら、ペーストをスパチュラで30秒間ゆっくり撹拌する。
4.TFスピンドルを取り付けたヘリパススタンド上のブルックフィールド粘度計RVDV−II+を使用する。回転速度を5rpmにセットする。
5.ヘリパス移動の最低点を、ペーストの表面から40mm下にセットする。スピンドルをペーストの表面から3mm下にセットする。
6.スピンドル回転およびヘリパススタンドの降下を開始する。
7.降下の最低点で粘度を記録する。