(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジンと、前記エンジンの下流に配置され、前記エンジンから出力される出力トルクが個別に入力される2つのクラッチと、前記各々のクラッチのトルク容量を変化させる2つのアクチュエータと、前記各々のクラッチの下流に配置され、共通の出力軸を有するドグクラッチ式の2つの変速機構と、を備える車両に設けられ、
前記変速期間中に、前記出力トルクの伝達経路を一方のクラッチ及び変速機構から他方のクラッチ及び変速機構に切り替える切替制御と、前記出力トルクと前記トルク容量とに差を設けることで前記エンジンの回転速度を変化させる回転制御と、を実行する制御装置であって、
前記出力トルクの目標値を決定する目標値決定部と、
前記エンジンの回転速度が閾値を超える場合に、前記伝達経路から前記エンジンに入力される負荷トルクよりも前記出力トルクが小さくなるように、前記目標値を制限する目標値制限部と、
前記変速期間における前記回転制御が開始されるまでに、前記目標値の制限を解除する制限解除部と、
を備えることを特徴とする車両の制御装置。
エンジンと、前記エンジンの下流に配置され、前記エンジンから出力される出力トルクが個別に入力される2つのクラッチと、前記各々のクラッチのトルク容量を変化させる2つのアクチュエータと、前記各々のクラッチの下流に配置され、共通の出力軸を有するドグクラッチ式の2つの変速機構と、を備える車両に設けられ、
前記変速期間中に、前記出力トルクの伝達経路を一方のクラッチ及び変速機構から他方のクラッチ及び変速機構に切り替える切替制御と、前記出力トルクと前記トルク容量とに差を設けることで前記エンジンの回転速度を変化させる回転制御と、を実行する制御装置であって、
前記出力トルクの目標値を決定する目標値決定部と、
前記エンジンの回転速度が閾値を超える場合に、前記伝達経路から前記エンジンに入力される負荷トルクよりも前記出力トルクが小さくなるように、前記目標値を制限する目標値制限部と、
前記変速期間において、前記閾値を超えた前記エンジンの回転速度が低下して前記閾値を下回る前までに、前記閾値を増加させることによって前記目標値の制限を解除する制限解除部と、
を備えることを特徴とする車両の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の車両の制御装置、車両及び原動機の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る制御装置10を備えた自動二輪車1の側面図である。
図2は、エンジン20から後輪3に至るトルク伝達経路に設けられた機構の概略図である。
図3は、本発明の車両の一実施形態である自動二輪車1の構成を示すブロック図である。
【0015】
図1に示すように、自動二輪車1は、本発明の原動機の一実施形態であるエンジンユニット11を備えている。エンジンユニット11の前方に配置される前輪2は、フロントフォーク4の下端で支持されている。フロントフォーク4の上部には車体フレーム(不図示)の最前部で回転可能に支持されたステアリングシャフト5が連結されている。ステアリングシャフト5の上方にはステアリング6が設けられている。ステアリング6とフロントフォーク4と前輪2は、ステアリングシャフト5を中心にして一体的に左右に回転可能となっている。
【0016】
ステアリング6の後方には搭乗者が跨って座ることのできるシート7が配置されている。エンジンユニット11の後方には後輪3が配置されている。変速機30(
図2参照)から出力されるトルクはチェーンやベルト、ドライブシャフトなどのトルク伝達部材(不図示)を介して後輪3に伝達される。
【0017】
図2に示すように、エンジンユニット11はエンジン20と変速機30とを備えている。自動二輪車1は所謂ツインクラッチ式の車両であり、第1クラッチ40Aと第2クラッチ40Bとがエンジンユニット11に設けられている。エンジン20はその駆動によって回転するクランクシャフト21を備えている。
【0018】
エンジン20のトルク(クランクシャフト21の回転)は、第1クラッチ40Aと第2クラッチ40Bのそれぞれに入力される。第1クラッチ40Aと第2クラッチ40Bは、クランクシャフト21の回転に連動する駆動部材41を有している。
図2に示す例では、クランクシャフト21は2つのプライマリギア21aを有している。第1クラッチ40Aの駆動部材41と第2クラッチ40Bの駆動部材41とにはプライマリギア41aが設けられている。プライマリギア41aはプライマリギア21aと噛み合っている。
【0019】
第1クラッチ40Aと第2クラッチ40Bは、後述する変速機構30A,30Bの入力軸31に連動する従動部材42を有している。第1クラッチ40Aと第2クラッチ40Bは例えば単板又は多板の摩擦クラッチである。駆動部材41と従動部材42が互いに軸方向で押し付けられることにより、それらの間でトルクの伝達がなされる。なお、駆動部材41は例えばフリクションディスクであり、従動部材42は例えばクラッチディスクである。
【0020】
変速機30は第1変速機構30Aと第2変速機構30Bとを備えている。第1変速機構30Aと第2変速機構30Bは第1クラッチ40Aと第2クラッチ40Bの下流にそれぞれ配置されている。すなわち、第1変速機構30Aと第2変速機構30Bのそれぞれに入力軸31が設けられている。第1変速機構30Aの入力軸31は第1クラッチ40Aの従動部材42に連結されており、第1変速機構30Aには第1クラッチ40Aを介してトルクが入力される。第2変速機構30Bの入力軸31は第2クラッチ40Bの従動部材42に連結され、第2変速機構30Bには第2クラッチ40Bを介してトルクが入力される。第1変速機構30A,30Bは共通の出力軸32を有している。このように、自動二輪車1はエンジン20のクランクシャフト21から変速機30の出力軸32に至るトルク伝達経路として2つの経路を有している。第1の経路は、第1変速機構30Aと第1クラッチ40Aとによって構成され、第2の経路は第2変速機構30Bと第2クラッチ40Bとによって構成される。変速機30の出力軸32は、チェーンやベルト、シャフトなどで構成されたトルク伝達部材介して後輪3の車軸に連結されている。
【0021】
第1変速機構30Aと第2変速機構30Bは複数のギア1i〜6i及び1h〜6hを含んでいる。ギア1i〜6iは入力軸31に設けられ、ギア1h〜6hは出力軸32に設けられている。ギア1iとギア1hは互いに噛み合っており、それらの減速比は1速に対応している。同様に、ギア2i乃至6iはギア2h乃至6hとそれぞれ噛み合っており、それらの減速比は2速乃至6速にそれぞれ対応している。この例では、第1変速機構30Aは奇数変速段に対応するギア1i,3i,5i,1h,3h,5hによって構成され、第2変速機構30Bは偶数変速段に対応するギア2i、4i,6i,2h,4h,6hによって構成されている。
【0022】
変速機構30A,30Bは所謂選択摺動式の変速機構である。各変速段に対応したギア対(例えば、ギア1iとギア1h)のうちいずれか一方は、当該一方のギアが設けられた軸に対して相対回転自在となっている。これに対して、他方のギアは当該他方のギアが設けられた軸とスプラインで噛み合っており、当該軸と一体的に回転する。この例では、ギア1h,5i,3h,4h,6i,2hが、それらのギアが設けられた軸に対して相対回転自在となっている。一方、ギア1i,5h,3i,4i,6h,2iは、それらが設けられた軸と噛み合っており、当該軸と一体的に回転する。そのため、中立状態(いずれの変速段にも設定されていない状態)においては、ギア対(5i,5h)及び(6i,6h)は出力軸32に連動し、ギア対(1i,1h)、(3i,3h)、(4i,4h)及び(2i,2h)は入力軸31に連動する。
【0023】
入力軸31に連動するギアと出力軸32に連動するギアは、軸方向で互いに隣り合うように配置され、且つ、軸方向に相対移動可能(接近方向及び離れる方向への移動が可能)となっている。また、複数のギア1i〜6i,1h〜6hは、ドッグクラッチ(dog clutch)が形成されたギアを含んでいる。入力軸31に連動するギアと出力軸32に連動するギアは、ドッグクラッチによって係合可能となっている。これらの2つのギアの係合によって、第1変速機構30Aの入力軸31又は第2変速機構30Bの入力軸31の回転(トルク)は、出力軸32に伝達される。なお、
図2の例では、ギア5h,3i,4i,6hが軸方向に移動可能となっている。
【0024】
図2に示すように、変速機30には軸方向に移動可能なギア5h,3i,4i,6h(以下、可動ギア)を軸方向に移動させるシフトアクチュエータ39が設けられている。シフトアクチュエータ39は、可動ギアに引っ掛かる複数のシフトフォーク39aや、回転することによってシフトフォーク39aを軸方向に動かすシフトカム39b、シフトカム39bを回転させる動力を発生する電動モータ39c等を含んでいる。シフトアクチュエータ39は制御装置10による制御の下で可動ギアを動かし、変速段を切り換える。
【0025】
クラッチ40A,40Bには、これらを制御装置10による制御の下で動かす(すなわちクラッチ40A,40Bを係合状態にしたり、解放状態にする)クラッチアクチュエータ49A,49Bが設けられている。クラッチアクチュエータ49A,49Bは例えば電動モータを含んでいる。電動モータの動力は、油圧やロッドを介してプレッシャープレート43に伝えられ、駆動部材41と従動部材42とを軸方向で互いに押し付ける。
【0026】
図3に示すように、エンジン20には、燃料噴射装置22とスロットルアクチュエータ23と点火プラグ24とが設けられている。燃料噴射装置22はエンジン20の燃焼室で燃焼させる燃料をエンジン20に供給する。スロットルアクチュエータ23はエンジン20の吸気路を流れる空気量を調整するスロットルバルブ(不図示)の開度を制御する。点火プラグ24はエンジン20の燃焼室に流れ込んだ空気と燃料の混合気に点火する。燃料噴射装置22の燃料噴射量、点火プラグ24の点火タイミング、及び、スロットルバルブの開度(以下、スロットル開度)は制御装置10によって制御される。
【0027】
自動二輪車1は、エンジン回転速度センサ19aと、ギア位置センサ19bと、クラッチセンサ19c,19dと、出力側回転センサ19eと、シフトスイッチ19fと、アクセルセンサ19gと、を含んでいる。これらのセンサは制御装置10に接続されている。
【0028】
エンジン回転速度センサ19aはエンジン回転速度に応じた周波数のパルス信号を出力する回転センサによって構成される。制御装置10はエンジン回転速度センサ19aの出力信号に基づいてエンジン回転速度(クランクシャフト21の回転速度)を算出する。
【0029】
ギア位置センサ19bは例えばシフトカム39bの回転角に応じた電圧信号を出力するポテンショメータによって構成される。制御装置10はギア位置センサ19bの出力信号に基づいて、可動ギア5h,3i,4i,6hの位置や現在の変速段などを検知する。
【0030】
出力側回転センサ19eは後輪3の車軸や、出力軸32に設けられる。出力側回転センサ19eは、例えば後輪3の回転速度や、出力軸32の回転速度に応じた周波数のパルス信号を出力する回転センサである。制御装置10は出力側回転センサ19eの出力信号に基づいて車速や出力軸32の回転速度を算出する。
【0031】
シフトスイッチ19fは搭乗者によって操作されるスイッチであり、搭乗者の変速指令(変速段を上げるシフトアップ指令を示す信号、変速段を下げるシフトダウン指令を示す信号)を制御装置10に対して入力する。なお、シフトスイッチ19fはシフトアップ用のスイッチとシフトダウン用のスイッチとが設けられる。
【0032】
アクセルセンサ19gはステアリング6に設けられたアクセルグリップ(不図示)の操作量(回転角)に応じた信号を出力する。アクセルセンサ19gは例えばポテンショメータによって構成される。制御装置10はアクセルセンサ19gの出力信号に基づいてアクセルグリップの操作量(アクセル操作量)を検知する。
【0033】
クラッチセンサ19cは、第1クラッチ40Aの伝達トルク容量(現在の第1クラッチ40Aの状態(現在の係合度合い)で伝達可能な最大トルク)を検出するためのセンサである。また、クラッチセンサ19dは、第2クラッチ40Bの伝達トルク容量(現在の第2クラッチ40Bの状態(現在の係合度合い)で伝達可能な最大トルク)を検出するためのセンサである。クラッチ40A,40Bが係合状態にある時に伝達トルク容量は最大となり、クラッチ40A,40Bが解放状態にある時に伝達トルク容量は最小(例えば0Nm)となる。クラッチセンサ19c,19dは、例えば、プレッシャープレート43の変位量を検出する。
【0034】
伝達トルク容量はクラッチ40A,40Bの位置(クラッチのストローク量)に対応している。クラッチセンサ19c,19dは、例えば、クラッチ40A,40Bの位置に応じた信号(クラッチアクチュエータ49A,49Bの動作量に応じた信号)を出力するポテンショメータである。制御装置10は、クラッチセンサ19c,19dの出力信号に基づいて検知されるクラッチ位置から伝達トルク容量を検知する。例えば、制御装置10は、クラッチ位置と伝達トルク容量とを対応付けるマップや演算式を用いて、検知したクラッチ位置から伝達トルク容量を算出する。
【0035】
クラッチアクチュエータ49A,49Bが油圧によってクラッチ40A,40Bを動かす構造においては、伝達トルク容量はクラッチ40A,40Bに作用する油圧(以下、クラッチ圧)に対応している。そういった構造においては、クラッチセンサ19c,19dはクラッチ圧に応じた信号を出力する油圧センサでもよい。この場合、制御装置10は、クラッチセンサ19c,19dの出力信号に基づいて検知されるクラッチ圧から伝達トルク容量を検知する。例えば、制御装置10は、クラッチ圧と伝達トルク容量とを対応付けるマップや演算式を用いて、検知したクラッチ圧から伝達トルク容量を算出する。
【0036】
また、伝達トルク容量はクラッチアクチュエータ49A,49Bからクラッチ40A,40Bに作用する力(駆動部材41と従動部材42の間に作用する押し付け力)に対応している。クラッチアクチュエータ49A,49Bからクラッチ40A,40Bに作用する力によって、その力を受けている部分(例えば、クラッチ40A,40Bのケースなど)が歪む。そこで、クラッチセンサ19c,19dは、当該クラッチ40A,40Bから力を受ける部分の歪みの大きさに応じた信号を出力する歪みセンサでもよい。その場合、制御装置10は、クラッチセンサ19c,19dの出力信号に基づいて検知する歪みから伝達トルク容量を検知する検知する。例えば、制御装置10は、クラッチの歪みと伝達トルク容量とを対応付けるマップや演算式を用いて、検知した歪みから伝達トルク容量を算出する。
【0037】
制御装置10はCPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などのメモリとを備えている。制御装置10はメモリに格納されたプログラムをCPUにおいて実行し、エンジン20、変速機30、及びクラッチ40A,40Bを制御する。
【0038】
具体的には、制御装置10は、エンジン20の出力トルクについての目標値(以下において目標エンジントルクとする)を設定し、実際の出力トルクが目標エンジントルクになるようにスロットルアクチュエータ23や燃料噴射装置22、点火プラグ24を駆動する。また、制御装置10は、第1クラッチ40Aの伝達トルク容量と第2クラッチ40Bの伝達トルク容量とについて目標値(以下において目標トルク容量とする)を設定し、実際の伝達トルク容量が目標トルク容量になるように、クラッチアクチュエータ49A,49Bを動かす。さらに、制御装置10は、第1変速機構30A及び第2変速機構30Bで設定される変速段が変速指令に応じたものとなるように、シフトアクチュエータ39を動かす。
【0039】
変速制御の概要について説明する。なお、以下の説明において、第1クラッチ40Aと第2クラッチ40Bのうち、変速の前にエンジン20のトルクを伝達しているクラッチを前クラッチとし、他方のクラッチ(すなわち、エンジン20のトルクの伝達を変速指令によって開始するクラッチ)を次クラッチとする。同様に、第1変速機構30Aと第2変速機構30Bのうち、変速の前にエンジン20のトルクを伝達している変速機構を前変速機構とし、他方の変速機構(すなわちエンジン20のトルクの伝達を変速指令によって開始する変速機構)を次変速機構とする。
【0040】
図4は変速制御の概要を説明するための図である。同図においは、
図2に示す変速機構30A,30B、クラッチ40A,40Bがさらに簡略化して示されている。同図においてクラッチCpが前クラッチであり、クラッチCnが次クラッチである。また、変速機構Tpが前変速機構であり、変速機構Tnが次変速機構である。また、前変速機構TpのギアGp1は、前の変速段でトルクを伝達している可動ギア(5h、3i、4i、又は6h)を示し、ギアGp2は前の変速段でトルクを伝達している固定ギア(1h、5i、3h、4h、6i、又は2h)を示している。さらに、次変速機構TnのギアGn1は、次の変速段でトルクを伝達する可動ギアを示し、ギアGn2は次の変速段でトルクを伝達する固定ギアを示している。この図では、簡略化のために、1つの可動ギアGp1,Gn1と1つの固定ギアGp2,Gn2が示されている。この図においては、固定ギアGp2,Gn2が出力軸32に固定されており(すなわち出力軸32とスプラインで噛み合っており)、出力軸32と一体的に回転する。可動ギアGp1,Gn1は、出力軸32に対して自由に相対回転できる。また、可動ギアGp1,Gn1は、入力軸31に固定されたギアGp3,Gn3とそれぞれ噛み合っており、ギアGp3,Gn3や入力軸31の回転に連動する。
【0041】
図4(a)に示すように、通常走行においては、2つのクラッチCp,Cnは係合状態(伝達トルク容量が最大の状態)に設定されている。前変速機構Tpにおいては、前の変速段に対応する可動ギアGp1と固定ギアGp2とがドッグクラッチによって係合している。また、次変速機構Tnにおいては全ての可動ギアが中立位置(いずれの固定ギアとも係合しない位置)に配置される。そのため、エンジン20のトルクは、2つのトルク伝達経路のうち一方の経路(前クラッチCp及び前変速機構Tp)を介して、後輪3に向けて伝達されている。他方の経路においては次変速機構Tnにおいてトルク伝達が遮断されている。
【0042】
変速指令が生じたとき、制御装置10はトルクを伝達する経路を一方から他方に切り換える。すなわち、制御装置10は次変速機構Tnの可動ギアGn1と固定ギアGn2とを係合させ、前変速機構Tpの可動ギアGp1を中立位置にする。具体的には、変速機構Tp,TnとクラッチCp,Cnは、変速制御において次のように動かされる。まず、制御装置10は、
図4(b)のS1に示されるように次クラッチCnの係合を解除し、S2に示されるように次変速機構Tnの可動ギアGn1を動かし、隣の固定ギアGn2に係合させる(所謂ドグ係合フェーズ)。その後、制御装置10は、
図4(c)のS3に示されるように次クラッチCnを解放状態から係合状態に戻し、それと共に前クラッチCpを解放状態にする(所謂トルクフェーズ)。最後に、制御装置10は、
図4(d)のS4に示されるように前変速機構Tpの可動ギアGp1を中立位置まで移動させた後に、前クラッチCpを係合状態にする(所謂ドグ解放フェーズ)。
【0043】
なお、こうした変速制御を実行する際、変速中の後輪3の駆動力の増減(変速ショック)を抑えるために、前クラッチCp又は次クラッチCnの駆動部材41の回転速度と従動部材42の回転速度とを一致させるための回転制御(所謂イナーシャフェーズ)が、トルクフェーズ(
図4(c)のS3を参照)の前または後に必要となる場合がある。以下に説明する制御装置10の変速制御の複数の制御モードは、トルクフェーズがイナーシャフェーズの前に行われるものと、イナーシャフェーズがトルクフェーズの前に行われるものと、に大きく分けられる。
【0044】
図5は、制御装置10の変速制御の複数の制御モードを示す図である。制御装置10は変速制御として4つの制御モードを備えている。第1の制御モードは、アクセルを開いた状態でのシフトアップ制御(パワーオンシフトアップ制御)である。第2の制御モードは、アクセルを開いた状態でのシフトダウン制御(パワーオンシフトダウン制御)である。第3の制御モードは、アクセルを閉じた状態でのシフトアップ制御(パワーオフシフトアップ制御)である。第4の制御モードは、アクセルを閉じた状態でのシフトダウン制御(パワーオフシフトダウン制御)である。
【0045】
以下、上記第1〜第4の制御モードの中から代表して、第1の制御モード(パワーオンシフトアップ制御)の具体的な動作例を説明する。
図6は、第1の制御モード(パワーオンシフトアップ制御)の例を説明するためのタイムチャートである。同図において、上部の実線は目標エンジントルクTeを表し、破線は次クラッチCnの目標トルク容量Tcnを表し、二点鎖線は前クラッチCpの目標トルク容量Tcpを表し、下部の実線はエンジン回転速度Seを表している。このうち、破線及び二点鎖線は、目標トルク容量を一次減速比で除した値となっている。なお、同図では、各々の線を互いに重ならないよう縦又は横方向に僅かにずらしている。この第1の制御モードでは、トルクフェーズとイナーシャフェーズとがこの順に実行される。
【0046】
まず、制御装置10は、ドグ係合フェーズを開始する(t1)。具体的には、制御装置10は、次クラッチCnを係合状態から解放状態に変化させる。係合状態とは伝達トルク容量が最大となる状態であり、解放状態とは伝達トルク容量が最小(例えば0Nm)となる状態である。また、制御装置10は、シフトアクチュエータ39を駆動して、次変速機構Tnの可動ギアGn1を固定ギアGn2に向けて移動させる。また、制御装置10は、前クラッチCpを係合状態から半係合状態に変化させる。ここでは、前クラッチCpの目標トルク容量TcpがエンジントルクTeに対応する値まで下げられる。
【0047】
次に、制御装置10は、トルクフェーズを開始して、エンジン20のトルクを伝達する経路を切り換える(t2)。制御装置10は、前クラッチCpを半係合状態から解放状態に変化させ、次クラッチCnを解放状態から半係合状態に変化させる。具体的には、制御装置10は、次クラッチCnの目標トルク容量TcpをエンジントルクTeに対応する値まで上げる。
【0048】
次に、制御装置10は、イナーシャフェーズを開始して、エンジン回転速度Seを低下させる(t3)。具体的には、制御装置10は、エンジントルクTeを次クラッチCnの目標トルク容量Tcnより相対的に下げることで、エンジン回転速度Seを低下させる。換言すると、制御装置10は、次クラッチCnの目標トルク容量TcnをエンジントルクTeより相対的に上げることで、エンジン回転速度Seを低下させる。
【0049】
次に、制御装置10は、ドグ解放フェーズを開始する(t4)。具体的には、制御装置10は、シフトアクチュエータ39を駆動して、前変速機構Tpの可動ギアGp1を中立位置に向けて移動させる。その後、制御装置10は、前クラッチCpと次クラッチCnを係合状態に戻す(t5)。これにより、第1の制御モードに係る変速制御が終了する。
【0050】
図7は、第1の制御モードの動作例を表すフローチャートである。S201において、制御装置10は、変速制御が第1の制御モード(パワーオンシフトアップ制御)であるか否かを判定する。第1の制御モードではない場合(S201:NO)、制御装置10は処理を終了する。
【0051】
S202において、制御装置10は、ドグ係合指令を出力して、ドグ係合フェーズを実行する(上記
図6のt1)。ドグ係合指令は、次クラッチCnを係合状態から解放状態に変化させる指令と、次変速機構Tnの可動ギアGn1を固定ギアGn2に向けて移動させる指令と、を含んでいる。また、ドグ係合指令は、前クラッチCpを係合状態から半係合状態に変化させる指令を含んでいる。具体的には、前クラッチCpの目標トルク容量は、これを一次減速比で除した値が目標エンジントルクと同じになるように設定される。
【0052】
S203において、制御装置10は、ドグ係合フェーズが完了したか否かを判定する。判定方法としては、次の方法が考えられる。例えば、ギア位置センサ19bからの信号に基づき、シフトカム39bの位置がドグ係合に対応する範囲内にあるときに、ドグ係合フェーズの完了が判定される。また、入力軸32の回転速度を検出するセンサが設けられる場合には、エンジン回転速度を一次減速比で除した値と入力軸回転速度との差がドグ係合に対応する範囲内にあるときに、ドグ係合フェーズの完了が判定されてもよい。
【0053】
S204において、制御装置10は、トルクフェーズを実行する(上記
図6のt2)。トルクフェーズの開始時には、前クラッチCpを解放状態に変化させる指令と、次クラッチCnを半係合状態に変化させる指令と、が出力される。具体的には、次クラッチCnの目標トルク容量は、目標エンジントルクがある値(例えば0Nm)より大きい場合には、これを一次減速比で除した値が目標エンジントルクと同じになるように設定される。他方、目標エンジントルクがある値(例えば0Nm)より小さい場合には、当該ある値(例えば0Nm)に設定される。
【0054】
S205において、制御装置10は、トルクフェーズが完了したか否かを判定する。具体的にはクラッチセンサ19c,19dからの信号に基づいて、クラッチ40A,40Bの伝達トルク容量が目標トルク容量に到達したか否かが判定される。
【0055】
S206において、制御装置10は、イナーシャトルクを算出する。イナーシャトルクは、イナーシャフェーズにおいて適用される目標エンジントルクである(上記
図6のTe)。イナーシャトルクは、例えば、(現在エンジン回転速度−変速後到達エンジン回転速度)/イナーシャフェーズ発生時間×クランク周りイナーシャの式により求められる。イナーシャフェーズ発生時間は、例えば、
図8に示されるようなイナーシャフェーズ発生時間が変速段とアクセル開度とに対応付けられたテーブルから読み出される。また、クランク周りイナーシャは、クランクシャフト21の軸回りに存在する重量物によるイナーシャであり、エンジン20の設計段階などにおいて予め求めることができる。
【0056】
S207において、制御装置10は、イナーシャフェーズを実行し、エンジン回転速度Seを低下させる(上記
図6のt3)。イナーシャフェーズが開始されると、目標エンジントルクは上記S206で算出されたイナーシャトルクに設定される。また、前クラッチCpの目標伝達トルクは最小値(例えば0Nm)に設定される。また、次クラッチCnの目標伝達トルクは、アクセル開度から決まる目標エンジントルクに1次減速比を乗じ、さらにオフセットトルクを加算した値に設定される。ここで、オフセットトルクは、次クラッチCnの目標伝達トルクTcnが実際の伝達トルク容量と異なるためにイナーシャフェーズが進行しないような状況を解消するための値で、例えばS207が開始されてからの経過時間に応じて定まる値とされる。
【0057】
S208において、制御装置10は、イナーシャフェーズが完了したか否かを判定する。例えば、|ドライブ軸回転速度×変速後ギア比×1次減速比−エンジン回転速度|< 閾値 の式が成立したときに、イナーシャフェーズの完了が判定される。また、例えば、(ドライブ軸回転速度×変速前ギア比×1次減速比−エンジン回転速度)/(ドライブ軸回転速度×(変速前ギア比−変速後ギア比)×1次減速比)> 閾値 の式が成立したときに、イナーシャフェーズの完了が判定されてもよい。また、例えば、上記2つの式の一方または両方が成立したときに、イナーシャフェーズの完了が判定されてもよい。
【0058】
S209において、制御装置10は、目標エンジントルクを、アクセル開度から求まる通常の値に戻す。
【0059】
S210において、制御装置10は、ドグ解放指令を出力して、ドグ解放フェーズを実行する(上記
図6のt4)。ドグ解放指令は、前変速機構Tpの可動ギアGn1を中立位置に移動させる指令を含んでいる。
【0060】
S211において、制御装置10は、ドグ解放フェーズが完了したか否かを判定する。判定方法としては、次の方法が考えられる。例えば、ギア位置センサ19bからの信号に基づき、シフトカム39bの位置がドグ解放に対応する範囲内にあるときに、ドグ解放フェーズの完了が判定される。また、入力軸32の回転速度を検出するセンサが設けられる場合には、エンジン回転速度を一次減速比で除した値と入力軸回転速度との差がドグ解放に対応する範囲内にあるときに、ドグ解放フェーズの完了が判定されてもよい。
【0061】
S212において、制御装置10は、前クラッチCp及び次クラッチCnを係合状態に変化させる指令を出力する。以上により、第1の制御モード(パワーオンシフトアップ制御)に係る変速制御が終了する。
【0062】
図9は、制御装置10の機能構成例を表すブロック図である。制御装置10は、変速制御部51と、エンジン制御部53と、目標値決定部55と、目標値制限部57と、制限解除部(目標値変更部)59と、を備えている。制御装置10に含まれる各部は、制御装置10のCPUがメモリに格納されたプログラムを実行することで実現される。
【0063】
変速制御部51は、シフトスイッチ19fから変速指令が入力されると、変速制御を実行し、クラッチアクチュエータ49A,49B及びシフトアクチュエータ39を駆動する(上記
図5〜
図7を参照)。また、変速制御部51は、目標値決定部55から供給される目標エンジントルクに基づいて、クラッチ40A,40Bの目標トルク容量や、イナーシャフェーズで用いるイナーシャトルクを算出する。また、変速制御部51は、変速期間の開始や、変速期間に含まれる各フェーズの開始を、制限解除部59に通知する。
【0064】
エンジン制御部53は、目標値決定部55から供給される目標エンジントルクに、エンジン20の実際の出力トルクが近づくように、エンジン20に設けられた燃料噴射装置22、スロットルアクチュエータ23及び点火プラグ24を駆動する。例えば、エンジン20の出力トルクを上昇させる場合には、スロットルアクチュエータ23により調整されるスロットル開度を増加させる。また、エンジン20の出力トルクを下降させる場合には、スロットルアクチュエータ23により調整されるスロットル開度を減少させたり、燃料噴射装置22により噴射される燃料の量を減少させたり、点火プラグ24による点火タイミングを遅らせる。
【0065】
目標値決定部55は、主にアクセルセンサ19gから入力されるアクセル操作量に基づいて目標エンジントルクを決定し、変速制御部51及びエンジン制御部53に供給する。例えば、目標値決定部55は、メモリに格納されたアクセル操作量と目標エンジントルクとの関係を表すマップを参照することで、目標エンジントルクを決定する。また、目標値決定部55は、イナーシャフェーズにおいて、変速制御部51から供給されるイナーシャトルクを目標エンジントルクとして設定する。また、目標値決定部55は、目標値制限部57からオーバーレブ状態である旨を通知されると、目標エンジントルクを負の値に制限する。
【0066】
目標値制限部57は、エンジン回転速度センサ19aから入力されるエンジン回転速度が閾値を超えているか否か(すなわち、オーバーレブ状態であるか否か)を判断し、オーバーレブ状態である場合に、その旨を目標値決定部55に通知することで、目標エンジントルクを負の値に制限させる。オーバーレブ状態である旨の通知を受けた目標値決定部55は、目標エンジントルクを負の値に制限して、エンジン制御部53にエンジンブレーキをかけさせる(いわゆる、オーバーレブ制御)。エンジンブレーキとは、エンジン20からトルク伝達経路に出力される出力トルクが、トルク伝達経路からエンジン20に入力される負荷トルクよりも小さい状態である。
【0067】
例えば、
図10に示されるように、オーバーレブ状態であるか否かを判断するための閾値は、スロットル開度に応じて変化してよい。
図10の例では、閾値となるエンジン回転速度が、スロットル開度の増加に伴って減少している。
【0068】
制限解除部59は、変速制御部51が変速制御を実行する場合に、所定のタイミングで目標エンジントルクの制限の解除指令を目標値制限部57に出力する。また、制限解除部59は、解除指令を出力するタイミングを判断するために、変速期間の開始や、変速期間に含まれる各フェーズの開始の通知を、変速制御部51から受ける。解除指令を受けた目標値制限部57は、目標値決定部55に対するオーバーレブ状態である旨の通知を終了して、目標値決定部55に目標エンジントルクの制限を解除させる。
【0069】
具体的には、制限解除部59は、目標エンジントルクを制限する閾値を増加させることによって、目標エンジントルクの制限を解除する。すなわち、エンジン回転速度を上回る程度に閾値を増加させた場合、エンジン回転速度が閾値を下回って、目標エンジントルクの制限が実行されないことになる。
【0070】
目標エンジントルクの制限の解除では、負の値に制限していた目標エンジントルクが正の値に戻される。例えば、目標エンジントルクは、アクセル操作量から求まる通常の値に設定される。但し、イナーシャフェーズの場合には、目標エンジントルクはイナーシャトルクに設定される。
【0071】
以下、目標エンジントルクの制限を解除するタイミングが異なる3つの動作例について説明する。
【0072】
[第1の動作例]
図11は、第1の動作例を説明するためのタイムチャートである。以下、上記
図6と異なる部分について主に説明する。
図11中の一点鎖線は、実際に出力されるエンジントルクTaを表している。また、
図11では、変速期間の開始時点t1よりも前の時点t0においてエンジン回転速度Seが閾値Stを超える場合を示しているが、この場合に限られない。
【0073】
エンジン回転速度Seが閾値Stを超えたことを目標値制限部57が検知すると(t0)、目標値決定部55は、目標エンジントルクTeを負の値に設定して、エンジン制御部53にエンジンブレーキをかけさせる。その後、変速制御部51が変速制御を開始すると(t1)、制限解除部59は、目標エンジントルクTeの制限の解除指令を出力する。これにより、目標エンジントルクTeは、変速制御の開始に伴って、アクセル操作量から求まる通常の値に戻る。
【0074】
具体的には、
図12に示すように。変速期間中であって(S301:YES)、エンジン回転速度が閾値を超えている場合に(S302:YES)、制限解除部59は、閾値を増加させることによって、目標エンジントルクの制限を解除する(S303)。そして、変速制御部51は、変速制御を実行する(S304)。
【0075】
これによると、変速制御が開始すると目標エンジントルクの制限が終了され、イナーシャフェーズ(すなわち、回転制御)の前までに目標エンジントルクが通常の値に戻る。このため、イナーシャフェーズ中の変速ショックを抑制することが可能であると共に、エンジン20の出力トルクを効率的に利用することが可能である。また、変速期間中は目標エンジントルクの制限を行わないとすることで、処理の簡易化を図ることが可能である。
【0076】
[第2の動作例]
図13は、第2の動作例を説明するためのタイムチャートである。以下、上記第1例と異なる部分について主に説明する。
【0077】
エンジン回転速度Seが閾値Stを超えたことを目標値制限部57が検知すると(t0)、目標値決定部55は、目標エンジントルクTeを負の値に設定して、エンジン制御部53にエンジンブレーキをかけさせる。その後、変速制御部51がイナーシャフェーズを開始すると(t3)、制限解除部59は、目標エンジントルクTeの制限の解除指令を出力する。これにより、目標エンジントルクTeは、イナーシャフェーズの開始に伴って、イナーシャトルクに設定される。
【0078】
具体的には、
図14に示すように、変速期間中であって(S301:YES)、エンジン回転速度が閾値を超え(S302:YES)、さらにイナーシャフェーズ中である場合に(S305:YES)、制限解除部59は、閾値を増加させることによって、目標エンジントルクの制限を解除する(S303)。そして、変速制御部51は、変速制御を実行する(S304)。
【0079】
これによると、イナーシャフェーズが開始すると、目標エンジントルクの制限が終了され、目標エンジントルクがイナーシャトルクに設定される。このため、イナーシャフェーズ中の変速ショックを抑制することが可能であると共に、エンジン20の出力トルクを効率的に利用することが可能である。また、イナーシャフェーズの開始まで目標エンジントルクが制限されるので、エンジン回転速度の過度な上昇を抑制させやすい。
【0080】
[第3の動作例]
図15は、第3の動作例を説明するためのタイムチャートである。以下、上記第1例及び第2例と異なる部分について主に説明する。
【0081】
エンジン回転速度Seが閾値Stを超えたことを目標値制限部57が検知すると(t0)、目標値決定部55は、目標エンジントルクTeを負の値に設定して、エンジン制御部53にエンジンブレーキをかけさせる。その後、変速制御部51がトルクフェーズを開始すると(t2)、制限解除部59は、目標エンジントルクTeの制限の解除指令を出力する。これにより、目標エンジントルクTeは、トルクフェーズの開始に伴って、アクセル操作量から求まる通常の値に戻る。
【0082】
具体的には、
図16に示すように、変速期間中であって(S301:YES)、エンジン回転速度が閾値を超え(S302:YES)、さらにトルクフェーズ中である場合に(S306:YES)、制限解除部59は、閾値を増加させることによって、目標エンジントルクの制限を解除する(S303)。そして、変速制御部51は、変速制御を実行する(S304)。
【0083】
これによると、トルクフェーズが開始すると目標エンジントルクの制限が終了され、イナーシャフェーズの前までに目標エンジントルクが通常の値に戻る。このため、イナーシャフェーズ中の変速ショックを抑制することが可能であると共に、エンジン20の出力トルクを効率的に利用することが可能である。また、トルクフェーズの開始と共に目標エンジントルクの制限を終了することで、イナーシャフェーズの開始までに実際のエンジントルクTaが戻るための時間を確保することが可能である。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が当業者にとって可能であるのはもちろんである。
【0085】
上記3つの例では、変速期間の開始時点t1、トルクフェーズの開始時点t2、イナーシャフェーズの開始時点t3の何れかに合わせて、目標エンジントルクの制限を終了していたが、この態様に限られない。例えば、ドグ係合フェーズ又はトルクフェーズの途中に目標エンジントルクの制限を終了してもよい。また、
図17に示されるように、イナーシャフェーズの途中であっても、エンジン回転速度が閾値を下回る前までに目標エンジントルクの制限を終了すれば、従来技術よりも変速ショックを抑制することが可能である。