特許第5762568号(P5762568)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5762568
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】紙管および、これを用いた香味吸引具
(51)【国際特許分類】
   A24F 47/00 20060101AFI20150723BHJP
   A24F 13/02 20060101ALI20150723BHJP
   A24C 5/46 20060101ALI20150723BHJP
   A61M 15/06 20060101ALN20150723BHJP
   D21H 27/00 20060101ALN20150723BHJP
【FI】
   A24F47/00
   A24F13/02 A
   A24C5/46
   !A61M15/06 A
   !D21H27/00 D
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-550327(P2013-550327)
(86)(22)【出願日】2012年12月20日
(86)【国際出願番号】JP2012083054
(87)【国際公開番号】WO2013094681
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2014年4月22日
(31)【優先権主張番号】特願2011-279868(P2011-279868)
(32)【優先日】2011年12月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 靖宏
(72)【発明者】
【氏名】畔上 洋介
(72)【発明者】
【氏名】秋山 健
(72)【発明者】
【氏名】山田 学
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 毅
(72)【発明者】
【氏名】太郎良 賢史
【審査官】 杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4740506(JP,B2)
【文献】 特許第4530371(JP,B2)
【文献】 特許第3782394(JP,B2)
【文献】 特公平06−097982(JP,B2)
【文献】 特表2010−535530(JP,A)
【文献】 特開2009−191393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 47/00
A24C 5/46
A24F 13/02
A61M 15/06
D21H 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形形状の厚紙を、円筒状に湾曲させて両側縁部を合わせて中空の円筒体に形成してある、厚紙単層による紙管であって、
前記厚紙は坪量100〜300g/m2、厚さ150〜500μm、密度0.5g/cm3以上であると共に、前記円筒体の直径が5mm〜8mmであり、
前記円筒体の軸線と平行となる複数の溝部が、前記円筒体の外周面または内周面に設けてある、ことを特徴とする紙管。
【請求項2】
矩形形状の厚紙を、円筒状に湾曲させて両側縁部を合わせて中空の円筒体に形成してある、厚紙単層による紙管であって、
前記厚紙は坪量100〜300g/m2、厚さ150〜500μm、密度0.5g/cm3以上であると共に、前記円筒体の直径が5mm〜8mmであり、
前記円筒体の軸線と格子状となる複数の溝部が、前記円筒体の外周面または内周面に設けてある、ことを特徴とする紙管。
【請求項3】
前記両側縁部をオーバーラップさせたオーバーラップ部が形成されて、前記両側縁部同士が接着されている、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の紙管。
【請求項4】
前記両側縁部の端縁同士が突合された状態とされ、該両側縁部を架橋するシール部材を用いて接着して円筒体としてある、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の紙管。
【請求項5】
前記溝部は、前記厚紙の一部を前記円筒体の軸線に沿って直線状に除去して形成されたライン状のカット部を含む、ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の紙管。
【請求項6】
前記溝部は、前記厚紙の表面に前記円筒体の軸線に沿って形成した直線状の圧痕凹条部を含む、ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の紙管。
【請求項7】
前記溝部は、前記円筒体の周方向でみて等間隔に配置してある、ことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の紙管。
【請求項8】
前記溝部は、その深さが前記厚紙の厚さの60%〜90%であり、隣り合う溝部の間隔が1mm〜2mmである、ことを特徴とする請求項7に記載の紙管。
【請求項9】
前記両側縁部の接着は、CMC−Na、酢酸ビニル、EVA、プルラン及びペクチンの群から選択される食品関連材用の接着剤による、ことを特徴とする請求項3または4に記載の紙管。
【請求項10】
前記厚紙は、バインダを使用せず抄紙したものである、ことを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の紙管。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかの紙管と、
前記紙管の先端に保持された熱源と、
前記紙管内に配置され、前記熱源から発生する熱を利用して香味を発生させる香味発生源とを含む、ことを特徴とする香味吸引具。
【請求項12】
前記熱源と前記香味発生源との間に配置され、前記熱源により加熱され且つ前記香味発生源に向かう加熱空気を冷却するための冷却要素を更に含む、ことを特徴とする請求項11に記載の香味吸引具。
【請求項13】
前記香味発生源は、香味成分を内包した破壊可能なカプセルを更に含む、ことを特徴とする請求項11に記載の香味吸引具。
【請求項14】
請求項1〜10のいずれかの紙管を、内部の空洞部の補強材または構成要素の位置決め材として更に含む、ことを特徴とする請求項10から13のいずれかに記載の香味吸引具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱源を有する香味吸引具のホルダとして好適に適用できる紙管、そして、このような紙管を採用した香味吸引具に関する。
【背景技術】
【0002】
先端に熱源(例えば、炭素熱源)を有し、この熱源から発生する熱を利用して香味発生源を加熱する香味吸引具については、近年、種々の提案がなされている。例えば、特許文献1による香味吸引具は、エーロゾル発生基体(香味発生源)の下流側に拡張チャンバを設ける場合を示し、この拡張チャンバとして中空の厚紙チューブ(紙管)を採用した構造を例示する。
【0003】
上記中空の厚紙チューブは、加熱により発生する煙霧質であるエーロゾル(エアロゾル)の冷却や物品全長の長さ調整などを目的に配備されている。特許文献1においては、採用している紙管については特段の記載はない。しかし、ここで開示するような香味吸引具は、一般的なシガレット(紙巻たばこ)と同様、ユーザが指で摘みながら(挟みながら)使用されるものである。よって、特許文献1における厚紙チューブは、指で軽く摘んだ程度の力では、容易には潰れない剛性と共に、耐火・耐熱性能を備えた紙管であろうとの予想はできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2010−535530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、一般に紙管には、スパイラル巻き紙管と平巻き紙管とがある。スパイラル巻き紙管は、マンドレルと称されるシャフトに薄紙を所定厚みとなるまで螺旋に巻き付けたタイプの紙管である。また、平巻き紙管は矩形(長方形)形状の紙をマンドレルの軸に対して垂直方向に巻き付けて製造するタイプの紙管で、スパイラルの場合と同様に薄紙を所定厚みとなるまで巻き付けて製造する多層タイプと、1枚の厚紙を円筒状に湾曲させて互いに突当る辺の端部同士を一部オーバーラップして製造する単層タイプとがある。
【0006】
上記のように紙管には複数のタイプが存在しているが、薄紙を多層に巻き付けた紙管の場合、紙全面に接着剤を塗布しながら製造される。ところが、香味吸引具は紙管内に香味発生源が配置された構造を有している。よって、このような香味吸引具の一部として、多量の接着剤が使用されている紙管を含むと、製造・輸送・保管中に多量の香味成分が接着剤に収着され、使用者に十分な香味を提供できないことが懸念される。
【0007】
上記の懸念は、オーバーラップ部だけに少量の接着剤を使用する単層タイプの平巻き紙管を用いて対処するのが好ましい。ところが、この単層タイプの平巻き紙管は、帽子用の収納容器(箱)などのように、内径が比較的大きなものに好適に使用されていた経緯がある。
【0008】
その理由として、厚紙は一般に剛性が高く、可撓性に欠ける。そのため内径の細い紙管を形成しようとすると、その坪量や厚さにもよるが、厚紙の反発力で接着したオーバーラップ部が剥離したり、紙管表面に折れ目が入ったりするなどの不具合が生じ易い、ということがある。それが為、通常のシガレットと同様に細い(最大でも直径10mm程度)径である細径の平巻き紙管を、厚紙単層で製造することは極めて困難であった。
【0009】
よって、本発明の目的は、香味吸引具に好適に採用できる紙管、そして、このような紙管を、構成要素を保持するためのホルダ(紙管ホルダ)として採用する香味吸引具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的は、矩形形状の厚紙を、円筒状に湾曲させて両側縁部を合わせて中空の円筒体に形成してある、厚紙単層による紙管であって、前記厚紙は坪量100〜300g/m2、厚さ150〜500μm、密度0.5g/cm3以上であると共に、前記円筒体の直径が5mm〜8mmであり、前記円筒体の軸線と平行となる複数の溝部が、前記円筒体の外周面または内周面に設けてある、ことを特徴とする紙管により達成される。
【0011】
そして、前記両側縁部をオーバーラップさせたオーバーラップ部が形成されて、前記両側縁部同士が接着されている形態としてもよい。
【0012】
また、前記両側縁部の端縁同士が突合された状態とされ、該両側縁部を架橋するシール部材を用いて接着して円筒体とした形態としてもよい。
【0013】
前記溝部は、前記厚紙の一部を前記円筒体の軸線に沿って直線状に除去して形成されたライン状のカット部、ないしは前記厚紙の表面に前記円筒体の軸線に沿って形成した直線状の圧痕凹条部とすることができる。
【0014】
そして、前記溝部は、前記円筒体の周方向でみて等間隔に配置するのが望ましい。また、溝部は、その深さが前記厚紙の厚さの60%〜90%であり、隣り合う溝部の間隔(配置間隔)を1mm〜2mmとするのが望ましい。
【0015】
前記両側縁部の接着は、CMC−Na、酢酸ビニル、EVA、プルラン及びペクチンの群から選択される食品関連材用の接着剤によるのが好ましい。そして、厚紙は、バインダを使用せず抄紙したものを用いるのが望ましい。
【0016】
また、上述の目的は、上記いずれかの紙管と、前記紙管の先端に保持された熱源と、前記紙管内に配置され、前記熱源から発生する熱を利用して香味を発生させる香味発生源とを含む、ことを特徴とする香味吸引具により達成される。
【0017】
そして、前記熱源と前記香味発生源との間に配置され、前記熱源により加熱され且つ前記香味発生源に向かう加熱空気を冷却するための冷却要素を更に含む、香味吸引具としてもよい。
【0018】
さらに、前記紙管のいずれかの紙管を、内部の空洞部の補強材または構成要素の位置決め材として更に含んだ香味吸引具としてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明による紙管は、一枚の厚紙を円筒状に湾曲させて側縁部を合わせて中空の円筒体に形成した単層タイプの平巻とし、軸線と平行に設けた複数の溝部を備えるので、使用する接着剤の使用量を抑制しつつ、可撓性も改善して、細径に形成した新規な紙管となる。
このような紙管は、接着剤の使用量が少ないので香味成分が接着剤に収着される影響を軽減でき、またオーバーラップ部の剥離や紙管表面の折れ目発生を抑制できるので、香味吸引具に含まれる構成要素を保持するホルダとして好適である。
【0020】
よって、このような細型の厚紙単層の平巻き紙管を、ホルダとして採用する香味吸引具は、紙管の剛性で形状を安定に維持でき、接着剤による香味への影響もなく、更にはホルダを金属、プラスチック等の他の部材で製造する場合と比較して低コストでの製造が可能になるというメリットもある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明に係る紙管を製造する様子を示した模式図である。
図2図2は、本発明に係る紙管を製造する他の様子を示した模式図である。
図3図3は、図1に示した紙管を、紙管ホルダとして採用する無煙型の香味吸引具について示した図である。
図4図4は、図1に示した紙管を、紙管ホルダとして採用する他の無煙型の香味吸引具について示した図である。
図5図5は、変形例1に係る紙管を製造する様子を示した模式図である。
図6図6は、厚紙の曲げモーメントの測定方法の様子を示した図である。
図7図7は、厚紙の曲げモーメントの測定結果をまとめて示した図である。
図8図8は、図1に示した紙管の剛性を測定する様子を示した図である。
図9図9は、紙管の剛性の測定の測定結果をまとめて示した図である。
図10図10は、ライン状にカットして形成した溝部の深さを変更した紙管の剛性の測定結果をまとめて示した図である。
図11図11は、圧痕線によって形成した溝部の深さを変更した紙管の剛性の測定結果をまとめて示した図である。
図12図12は、図1に示した紙管を、紙管ホルダとして採用するオリジナル型の香味吸引具について示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態を説明する。
【0023】
図1は、本発明に係る紙管を製造する様子を示した模式図である。
【0024】
本発明に係る紙管1は、矩形形状の厚紙2を、円筒状に湾曲させて両側縁部を合わせて中空の円筒体に形成してある。
【0025】
なお、本発明に係る紙管は、厚紙を湾曲させた際に向かい合う側縁部の端縁(辺)同士を、オーバーラップを設けずに単に突き合わせて形成した円筒体、そして、側縁部を互いにオーバーラップさせて形成した円筒体を含むことができる。またさらに、オーバーラップ部を設けた円筒体とした場合、オーバーラップ部を接着する場合と、接着しない場合との形態を含めてもよい。
【0026】
ここでは、先ず好適な紙管1Aとして、側縁部を互いにオーバーラップさせて、オーバーラップ部2wrを形成し、接着して形成した円筒形について説明する。すなわち、この紙管1Aは、オーバーラップ部2wrで両側縁部同士を接着剤で接着して中空の円筒体に形成してある。そのような構造は、従来における1枚(単層)厚紙による平巻き紙管と同様である。しかし、ここで例示する紙管1Aは、シガレット程度の相当に細い径に形成してある新規な細型紙管である。
【0027】
以下では、香味吸引具で採用するホルダとして好適な紙管について、具体的に説明をする。
【0028】
上記厚紙2は、好ましくは坪量100〜300g/m2、厚さ150〜500μm、密度0.5g/cm3以上であり、より好ましくは坪量200g/m2以上で、厚さが250μm以上である。そして、この厚紙2については、抄紙の際にバインダを使用していないものが好適である。
【0029】
また、上記厚紙2には、円筒体の紙管1Aとしたときに軸線CLと平行な複数の溝部3となる、複数のライン状カット部3aが長手方向LDに沿って形成してある。図示のように、ライン状カット部3aは、一端から他端までの全長に形成するのが望ましい。また、複数の溝部3は、円筒体となる紙管1Aの周方向CDで見て等間隔に配置することで剛性(強度)の均一化を図り、紙管1Aの外周面1pfにいずれの方向から外力が作用しても同様に対抗可能な構造にできる。溝部3の間隔は、1〜2mmとするのが望ましい。
【0030】
なお、図1では紙管1Aの内周面(内側)に溝部3を設けた紙管1Aを例示しているが、必要に応じて紙管の外周面(外側)に溝部3を設けたものとしてもよい。
【0031】
ところで、上記のように厚紙2の表面に設けるライン状のライン状カット部3aは、表面の一部を直線状に除去して形成した形態とするのが好ましい。例えば、カッター等を用いて表面を線状に除去する。その際、カッターの切込み幅(溝幅)、切込み角度、切込み深さなどを適宜に調整して、任意の溝形状を調整する。このように形成される溝部は、紙管の周方向にて、ほぼ等間隔に存在する切欠部分となるので、湾曲させる際の可撓性を改善する。よって、剛性が高い厚紙から、細径の紙管を作製できる。
【0032】
上記では、溝部3をライン状カット部3aとして形成する場合を説明したが、溝部3を形成する手法はこれに限らない。例えば、直線状の圧子(所定以上の硬度を備えて線状の圧痕を厚紙上に形成可能に作製されている治具)を、厚紙2の表面に圧接して、円筒体の軸線CLに沿って直線状の圧痕凹条部(圧痕線)を設けて、これを溝部3としてもよい。
【0033】
なお、ここで例示する紙管1Aは、シガレット(紙巻きたばこ)の代替嗜好品などとして使用される香味吸引具であるから、その直径は5mm〜8mm程度とするのが好ましい。
【0034】
そして、上記オーバーラップ部2wrの接着に用いる接着剤については、食品関連用材に採用可能な接着剤を使用するのが好ましく、例えばCMC−Na、酢酸ビニル、EVA、プルランおよびペクチンの群から選択して好適に使用できる。
【0035】
上記のように直径を5mm〜8mmとした、紙管1Aを形成する際のオーバーラップ部2wrのラップ幅は2mm〜4mm程度であり、オーバーラップ部2wrの接着に、上記接着剤が使用されるだけである。よって、薄紙を多層に巻き付ける紙管のように多量の接着剤を使用しないので、先に指摘した接着剤による不都合を発生させることがない。
【0036】
更に、図2は、本発明に係る紙管を他の方法で製造する様子を示した模式図である。この方法では、前記厚紙2を円筒状に湾曲させて両側縁部の端縁(辺)同士を単に突き合わせてオーバーラップを設けずに円筒形とし、ここでシール部材4を前記厚紙2の両側縁部を架橋するように接着することにより円筒体の紙管1Bが形成されている。
【0037】
上記シール部材4としては、例えば長尺形状の薄紙を前記厚紙2の両側縁部に跨って被覆するように配置する。そして、前述したと同様に食品関連用材に採用可能な接着剤によって接着すればよい。また、それ自体に粘着性や接着性を有する食品に採用可能なテープ材を用いて、同様に前記厚紙2の両側縁部を接着してもよい。この図2による紙管1Bは、厚紙のオーバーラップ部が存在しないので段差が殆ど無いか、段差があっても極めて小さく、外周がより均一な円筒になるという利点がある。
【0038】
以下では、前述した紙管1(1A、1B)を、ホルダ(以下、紙管ホルダ1)として採用する香味吸引具について説明する。このような香味吸引具には、一端に配置される熱源で加熱された加熱空気を吸引するに際して適度な温度にまで低減する冷却要素を配備し、例えば視覚でエアロゾルを確認できない程度まで無煙化を図った、いわゆる無煙型の香味吸引具や、特に冷却要素を設けていない、いわゆるオリジナル型の香味吸引具がある。
【0039】
図3に示す香味吸引具10Aは先の無煙型であり、熱源11と、この熱源11から発生する熱を利用して香味を発生させる香味発生源12と、これら熱源11と香味発生源12との間に配置されて熱源により加熱された加熱空気を冷却するための冷却要素13とを少なくとも含んでいるものである。香味発生源12の下流側には吸口部材14が接続されている。
【0040】
上記熱源11としては、例えば炭素粒子、不燃添加物、有機又は無機のバインダおよび水からなる混合物からなる成形物などを好適に採用できる。また、香味発生源12としては、シガレットに使用される一般的な刻みたばこ、嗅ぎたばこに使用される粒状たばこ、ロールたばこ、又は成形たばこを型成形したものなどを採用できる。このような、たばこ原料には、所望の香料などを含んでもよい。
【0041】
更に、香味成分を内包した破壊可能なカプセルが香味発生源12に配置されていてもよい。カプセルは、香味発生源12に埋め込まれていてもよい。また、カプセルは、香味発生源12と香味発生源12との間に形成された空隙部に配置されていてもよい。カプセルは、1つ配置されていてもよいし、2つ以上配置されていてもよい。カプセルは、食用油等の低揮発性溶剤、ゼラチン及び天然ガムなどを含む皮膜から生成されることが好ましい。カプセルの直径は、3.5mmから5.5mmであることが好ましい。
【0042】
そして、上記冷却要素13は通過する加熱空気の温度を下げるための構成であれば、特に限定されず、例えば紙管ホルダ1内に設けた単なる冷却空間としての長めの貫通通路などでもよい。ただし、冷却要素13の好ましい形態は、例えばセラミック、海泡石、ガラス、金属、炭酸カルシウムなどの無機物や水和物又は吸水性ポリマなどの材料から形成して、内表面を増した構造である。ハニカム構造、発泡構造または充填構造などとするのが望ましい。なお、充填構造はペレット、粒又は繊維状の材料を型内に充填して得られる。
【0043】
そして、香味吸引具10Aでは、上記熱源11の先端、冷却要素13、香味発生源12の外周を覆いこれらを保持するようにして、前述の紙管ホルダ1が配置してある。なお、上記吸口部材14は、香味発生源12を通過して香味を含む空気流をユーザの口腔内に誘導する貫通路として機能する構造であればよいが、例えばシガレットと同様にアセテート繊維または紙等によるフィルタ材を採用してもよい。そして、フィルタ材の外周を覆うチップペーパ14aを香味発生源12側に突出するように配置しておけば、紙管ホルダ1で全体を支持された香味吸引具10Aを製造できる。
【0044】
図4は、他の無煙型の香味吸引具10Bについて示した図である。本発明に係る紙管は、上記香味吸引具10Aで採用している吸い口部材14の機能を兼ねるように作製することもできる。これについて示したのが、香味吸引具10Bである。香味吸引具10Bでは、紙管ホルダ1を香味発生源よりも下流側へ伸長させて、上記吸い口部材14と同様に、香味発生源12を通過して香味を含む空気流をユーザの口腔内に誘導する貫通路としての機能も備えるように構成したものである。
【0045】
そして、例えば紙管ホルダ1の下流末端に、必要に応じてアセテート繊維または紙等によるフィルタ材を更に配置してもよい。このような香味吸引具10Bによれば、香味吸引具10Aにおけるチップペーパ14aを省略できる。
【0046】
図3図4で例示している香味吸引具10A、10Bは本発明に係る紙管を、その構造体の支持骨格(フレーム)として活用する場合である。本発明に係る紙管はこのような使用に限らない。
【0047】
すなわち、本発明に係る紙管は、上記のような香味吸引具で他の箇所にも採用できる。例えば、香味吸引具内に存在する空洞部の環状の補強材として、また前述した熱源や香味発生源等の構成要素の位置決めなどにも活用できる。例えば本発明の紙管を、ホルダ内の所定に位置、例えば上記冷却要素13の位置に配置することで、香味吸引具の空洞部を補強するとともに、熱源および香味発生源を所定の位置に正しく配置することができる。なお、両側縁部を接着しないで、前記厚紙2を円弧状に湾曲してホルダ内に配置することでも、補強材や構成要素の位置決めとしての機能を期待できる。
【0048】
(変形例1)
以下において、第1実施形態の変形例1について説明する。以下においては、第1実施形態に対する相違点について説明する。第1実施形態と同様の構成については、同符号を用いて説明を省略する。
【0049】
第1実施形態では、厚紙2の軸線CLと平行に複数の溝部3が形成される。これに対して、変形例1では、厚紙2に格子状に複数の溝部3が形成される。
【0050】
図5は、変形例1に係る紙管を製造する様子を示した模式図である。
【0051】
上記厚紙2には、格子状に複数の溝部3となる、複数のライン状カット部3aが長手方向LDに沿って形成してある。格子状とは、いわゆる格子縞のように、複数の縦の線と横の線とが交差した状態になっている状態を示す。図示のように、ライン状カット部3aは、一端から他端までの全長に形成するのが望ましい。また、複数の溝部3は、円筒体となる紙管1Aの周方向CDで見て等間隔に配置することで剛性(強度)の均一化を図り、紙管1Aの外周面1pfにいずれの方向から外力が作用しても同様に対抗可能な構造にできる。溝部3の間隔は、1〜2mmとするのが望ましい。
【0052】
なお、図5では紙管1Aの内周面(内側)に溝部3を設けた紙管1Aを例示しているが、必要に応じて紙管の外周面(外側)に溝部3を設けたものとしてもよい。
【0053】
以下では、更に本発明に係る紙管の実施例を説明する。この実施例は、オーバーラップ部を設けて接着してある紙管であり、これを香味吸引具に適用する場合の例である。
【0054】
(実施例)
新巴川製紙株式会社から下記表1に示すA〜Fの6種類の厚紙試料を入手して、本願発明による単層、厚紙による平巻き紙管を作製した。ここで使用した厚紙はいずれもバインダを使用せずに抄紙した紙である。
【0055】
【表1】
【0056】
上記厚紙A〜Fの表面に、横方向に1mm間隔でカッターにより、ライン状カット部(図1の左図の符号3a、参照)を設けた(以下では、これをハーフカット溝加工と称す)
。そして、このようにハーフカット溝加工した厚紙A〜Fそれぞれについて、紙の曲げ易さおよび反発力の指標として、図6で示すように、(a)表面方向および(b)裏面方向に曲げたときの曲げモーメントを測定した。より具体的には、厚紙A〜Fそれぞれについて70mm×20mm試料を作製して、(株)東洋精機製作所製の測定装置デジタルテーバー剛性度試験機を用いて、曲げモーメントを測定した。
【0057】
その測定結果を図7にまとめて示す。厚紙A〜Fそれぞれについて、図7(a)は溝加工した場合、図7(b)は溝加工しない場合について示したグラフである。
【0058】
そして、厚紙A〜Fの内から、更に厚紙Dについては、溝加工を施したもの、施していないものそれぞれについて、長さ50mmの紙片を種々の直径の鉄棒に巻きつけ、直径がそれぞれ8.0mm、7.2mm、6.2mm、4.9mmの紙管を作製した。これら形成した紙管について、外観検査を実施し、1本当たりの紙管表面の折れ(しわ)の発生数を算出した。
【0059】
その外観検査結果を下記、表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
図7(a)、(b)からいずれの厚紙も溝加工を施すと、表面方向および裏面方向での曲げモーメントが低下することが確認できる。すなわち、厚紙の可撓性が改善されて曲げ易くなっていることが確認できる。
【0062】
特に、厚紙への溝加工は、厚紙の表面(紙の表面、裏面での表面)で、横方向(抄紙方向に対して垂直な方向)に溝が延在するようにした場合に、最も曲げモーメントを低下させて、加工し易い厚紙となる。そして、上記表2に示す外観評価結果の通り、このような厚紙であれば直径5mm〜8mm程度の単層、平巻きの細径紙管にしても、均一で表面に折れなどの発生がなく安定な剛性で、外観にも優れた細径の紙管を製造できる。
【0063】
上記のように溝加工を施した厚紙A〜Fそれぞれを用いて単層、平巻きの細径紙管を製造した。具体的には、厚紙A〜Fそれぞれを長さ100mm、幅26mmに切断し、直径(φ)6.5mmの鉄棒に巻き付け、2mmのオーバーラップ部を設けて、このオーバーラップに接着剤として、CMC−Naを塗布して加熱して接着固定して平巻紙管を作製した(図1、参照)。
【0064】
製造した各平巻紙管を切断して長さ25mmの試験体として、図8(a)で示すように紙管の周方向、および図8(b)で示すように紙管の軸方向での剛性を測定した。この測定は、島津製作所製の小型卓上試験機 EZ Testを用いた。
【0065】
その測定結果を図9にまとめて示す。厚紙A〜Fそれぞれについて、図9(a)は円周方向の強度(N)、また図9(b)は軸方向の強度(N)ついて示したグラフである。
【0066】
更に、上記厚紙Dについては、下記表3に示す通りハーフカット溝加工および圧痕凹条部(圧痕線)によって溝部を設ける方法(以下では圧痕線溝加工と称す)の2つの溝加工方法を用いて、溝の深さを変更した試料D1〜D8について、長さ100mm、幅26mmに切断し、直径(φ)6.5mmの鉄棒に巻き付け、2mmのオーバーラップ部を設けて、このオーバーラップに接着剤として、CMC−Naを塗布して加熱して接着固定して平巻紙管を作製した。なお比較例として、溝部を設けない試料D0を作製している。
【0067】
溝部の形成方法については、刃角30度の金属製ローラーブレードを、厚紙上面からの圧入深さを設定して押し当て、厚紙上を転がすことで形成した。ハーフカット溝加工の場合は刃先が鋭利なブレードを使用し、圧痕線溝加工の場合は刃先が鈍く厚紙繊維を裁断しないものをそれぞれ用いた。試料D1〜D8について溝部を形成した際のローラーブレードの設定は、表3に示す通りとなる。
【0068】
なお、表3で、「厚紙下面から刃先端までの距離」というパラメータは、「(試料厚さ)―(刃深さ)」を意味する。すなわち、加工なしD0では刃深さ=0のため、244-0=244と算出され、これは試料の厚さとなる。
【0069】
【表3】
【0070】
上記D0及びD1〜D4を用いて作製した平巻紙管の測定結果は下記表4、上記D0及びD5〜D8を用いて作製した平巻紙管の測定結果は下記表5にそれぞれ示す通りであり、そのグラフを図10および図11にまとめて示す。
【0071】
なお、比較例として、市販されている一般的なシガレットMSの単巻部(刻充填部)およびフィルタ部についても、上記平巻紙管と同様の方法で剛性の測定を行ってその結果を示してある。
【0072】
【表4】
【0073】
【表5】
【0074】
図10は上記表4に対応したハーフカット溝加工の測定結果、図11は上記表5に対応した圧痕線溝加工の測定結果を示している図である。図9と同様、厚紙D1〜D8および比較例それぞれについて、図10(a)、図11(a)は円周方向の強度(N)、また図10(b)、図11(b)は軸方向の強度(N)ついて示したグラフである。
【0075】
上記から溝加工を施してある厚紙による平巻紙管の剛性は、円周方向でやや弱くなる傾向が図9(a)、(b)あるものの、軸方向については初期(溝加工前)の厚紙と同等であった。
【0076】
また、上記図10(a)、(b)および図11(a)、(b)から、上記2つの溝加工方法のいずれも溝の深さが増大するにつれて円周方向で弱くなる傾向があるものの、比較例であるシガレット単巻と比較して顕著に高い剛性を有しており、喫味吸引具でホルダとして採用するには十分な剛性を有することを確認できた。溝加工の方法については、いずれの方法でも十分な剛性を有することが確認できる。
【0077】
特に図10(a)および図11(a)から、溝深さが厚紙厚さの60%〜80%の範囲では、ハーフカット溝加工の方が円周方向で圧痕線加工のものより高い剛性を有する。
【0078】
以上、説明した本発明による紙管は、接着剤の使用量が少ないので香味成分が接着剤に収着される影響を軽減でき、またオーバーラップ部の剥離や紙管表面の折れ目発生を抑制できるので、香味吸引具に好適である。
【0079】
そして、上記紙管をホルダとして採用する香味吸引具は、紙管の剛性で形状を安定に維持でき、接着剤による香味への影響がなく、ユーザが香味を楽しめる香味吸引具として提供できる。更にホルダを金属、プラスチック等の他の部材で製造する場合と比較して、香味吸引具を低コストで製造できる。
【0080】
上記では好適例として、図3図4に示した冷却要素13を備えたいわゆる無縁型の香味吸引具10A、10Bの紙管ホルダとして紙管を用いる場合を説明したが、これに限らない。特に、冷却要素を備えない、図12に示すようなオリジナル型の香味吸引具10Cに前述した紙管1を用いてもよい。なお、図12では、図3図4と同じ部位に同じ符号を付すことで、重複する説明は省略する。
【0081】
香味吸引具内に存在する空洞部の環状の補強材として、また前述した熱源や香味発生源等の構成要素の位置決めに活用する場合には、厚紙を湾曲させて、向かい合う側縁部の端縁(辺)を単に突き合わせただけの形態、または前記厚紙を湾曲させて前記空洞部周長の2/3以上の周長を有する円弧状の形態として採用できる。そして、このような使用形態の場合には接着剤を使用しないで筒状とした場合でも同様に、補強材や位置決めとしての効果を期待できる。
【0082】
以上で説明した本発明は前述した実施形態に限定されるものではない。本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 紙管(紙管ホルダ)
2 厚紙
2wr オーバーラップ部
3 溝部
3a ライン状のカット部
4 シール部材
10A、10B 無煙型の香味吸引具
10C オリジナル型の香味吸引具
11 熱源
12 香味発生源
13 冷却要素
14 吸口部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12